JP4036038B2 - サイドエアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車輌側方からの衝突(以下、単に側突という)により車両のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、エアバッグがボディサイド部と車室内に配置されたシートとの間に展開膨張されるようにしたサイドエアバッグ装置に関するものである。特に、この発明は、エアバッグが乗員の側方で上下に大きく展開膨張するようにしたエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のサイドエアバッグ装置としては、例えば特開2000−177527号公報(第1従来構成)、特開2000−280853号公報(第2従来構成)、及び米国特許明細書第5112079号(第3従来構成)に開示されるような構成のものが提案されている。
【0003】
第1従来構成においては、図16に示すように、車室内のシート41の背もたれ部41aにサイドエアバッグ装置42が装備されている。このサイドエアバッグ装置42のエアバッグ43内には分割シーム44を介して、シート41に着座する乗員Pの胸郭部Pcの側方で膨張可能な第1チャンバ45と、腰部Phの側方で膨張可能な第2チャンバ46とが区画形成されている。
【0004】
前記エアバッグ43を展開膨張させるためのガス発生器47の周側には、前置チャンバ48が区画形成されている。前置チャンバ48と前記第1及び第2チャンバ45,46との間には複数の小孔よりなる第1及び第2流入開口部49,50がそれぞれ設けられ、第1流入開口部49の開口面積が第2流入開口部50の開口面積よりも小さくなるように形成されている。
【0005】
そして、車両の側突によりボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、ガス発生器47から発生されるガスが前置チャンバ48に供給された後、開口面積の異なった第1及び第2流入開口部49,50を介して、第1及び第2チャンバ45,46に異なった流入量で導入される。このガス流入量の相違により、第1チャンバ45の内圧が第2チャンバ46の内圧よりも低くなるように、両チャンバ45,46が展開膨張されるようになっている。
【0006】
また、第2従来構成においては、図17に示すように、サイドエアバッグ装置42のエアバッグ43内に隔壁51を介して、乗員Pの腕部Paよりも後側で膨張可能な第1展開領域52と、腕部Paに当接して膨張可能な第2展開領域53とが区画形成されている。そして、車両の側突時に、ガス発生器47から発生されるガスにより、第1展開領域52が直ちに下方から上方に展開膨張された後、第2展開領域53が遅れて下方から上方に展開膨張されるようになっている。
【0007】
さらに、第3従来構成においては、乗員の頭部から腰部までを一体にカバーするように大きく展開膨張するエアバッグを備えたサイドエアバッグ装置が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記の第1従来構成においては、前記のように乗員Pの胸郭部Pcに対応する第1チャンバ45が、腰部Phに対応する第2チャンバよりも低い内圧で展開膨張されるようになっている。このため、衝撃に比較的弱い胸郭部Pcが腰部Phよりも柔らかく緩衝される。よって、この第1従来構成のサイドエアバッグ装置では、側突による衝撃が胸郭部Pcに対してあまり作用しないように構成されているものの、車両のボディサイド部が室内側に大きく変形進入した場合には、胸郭部Pcに対応する第1チャンバ45の内圧が低いため、胸郭部Pcを保護する点で不安が残る。
【0009】
また、第2従来構成においては、前記のようにエアバッグ43内が垂直方向へ第1及び第2展開領域52,53に分割して形成されているが、それらの展開領域52,53がほぼ同一の内圧及び形態で展開膨張されるようになっている。このため、エアバッグ43が展開膨張状態で、乗員Pの肩部Psから腰部Phにかけてほぼ一様に接触し、前記第1従来構成の場合と同様に、胸郭部Pcを保護する点で不安が残る。
【0010】
さらに、第3従来構成においては、単にエアバッグが広い領域で展開膨張して、保護領域を拡大するように構成されているのみで、乗員の身体の部位に応じてエアバッグの展開形態を変化させる点については開示されていない。このため、人間の身体の特質を考慮して、乗員を有効に保護するという効果を期待することができない。
【0011】
この発明は、このような従来の技術に存在する着目点に基づいてなされたものである。その目的は、側突時において、ボディサイド部が室内側に大きく変形進入した場合にも、乗員を有効に保護できるサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、ボディサイド部と車室内に配置されたシートに着座する乗員との間にて展開するエアバッグと、同エアバッグを展開膨張させるガス発生源とを備えるサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグには、展開膨張状態で前記乗員の肩部に対応する上部展開部と、前記乗員の腰部に対応する下部展開部と、前記乗員の肩部と腰部との間の胸郭部に対応する中間部分とが設けられ、前記乗員の肩部から腰部にかけての胴体をカバーする状態まで前記上部展開部、前記下部展開部及び前記中間部分が展開膨張したときに、前記上部展開部及び前記下部展開部の厚さが前記中間部分の膨出を規制する規制手段により前記中間部分の厚さよりも大きなものとされることを特徴とするものである。
【0013】
従って、この請求項1に記載の発明によれば、車両の側突時において、ボディに所定値以上の衝撃が加わったとき、ガス発生源からガスが発生して、エアバッグが展開膨張される。このとき、乗員の肩部に対応する上部展開部及び腰部に対応する下部展開部の厚さが、胸郭部に対応する中間部分の厚さよりも大きくなる。これにより、ボディサイド部が室内側に大きく変形進入した場合にも、それに先立って、外部からの衝撃に対して抗堪性を有する乗員の肩部及び腰部を押して、乗員を室内側に移動させることができる。よって、胸郭部を含む乗員の身体全体を保護しながら、衝撃を効果的に吸収することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記規制手段が前記エアバッグの中間部分の基布間を接合するシームからなることを特徴とするものである。
【0017】
従って、この請求項2に記載の発明によれば、規制手段のための専用部品が不要であって、部品点数が増加するのを防止することができ、この結果、構造が簡単になってエアバッグを安価に製作することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記規制手段が前記エアバッグの中間部分の側縁に形成された括れ部からなることを特徴とするものである。
【0019】
従って、この請求項3に記載の発明によれば、前記請求項3の場合とほぼ同様の作用を得ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記規制手段が前記エアバッグの中間部分の周囲に設けられた規制布からなることを特徴とするものである。
【0020】
従って、この請求項4に記載の発明によれば、エアバッグの中間部分の周囲に規制布を設ければよい。このため、部品点数が大幅に増加することがなく、規制手段の構造が簡単であるとともに、中間部分の膨出を確実に規制することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置において、前記ガス発生源から供給されるガスを前記上部展開部及び前記下部展開部にほぼ同時に導くもの、すなわち前記ガス発生源から供給されるガスを前記下部展開部に導いた後に前記上部展開部に導くものであって、前記上部展開部及び前記下部展開部を前記中間部分よりも早く展開膨張させる誘導手段を設けたことを特徴とするものである。
従って、この請求項5に記載の発明によれば、エアバッグの上部展開部と下部展開部とがほぼ同時に展開膨張され、乗員の肩部及び腰部をほぼ同時に押して、乗員を室内側へ迅速に移動させることができて、保護効果を一層高めることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記誘導手段が前記エアバッグの基布間を接合するシームからなることを特徴とするものである。
【0022】
従って、この請求項6に記載の発明によれば、誘導手段のための専用部品が不要であって、部品点数が増加するのを防止することができ、この結果、構造が簡単になってエアバッグを安価に製作することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明において、前記エアバッグの上部展開部が前記エアバッグの下部展開部及び中間部分よりも幅広となるように形成したことを特徴とするものである。
従って、この請求項7に記載の発明によれば、エアバッグの展開膨張時に、幅広の上部展開部が乗員の肩部に有効に当接して、乗員を室内側へ確実に移動させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。
【0025】
図1〜図3には、車室内に配置された左側のフロントシート11が示され、このフロントシート11は腰掛け部11aと背もたれ部11bとを備えている。ボディサイド部の一部を構成するドア12と対応するように、フロントシート11の背もたれ部11bの左側内部にはサイドエアバッグ装置13がケース14内に収容した状態で埋設配置されている。なお、図面においては、左側のフロントシート11のみが図示されているが、右側のフロントシートの右側内部にも同様なエアバッグ装置が内装されている。
【0026】
前記サイドエアバッグ装置13は、ケース14内に固定されたガス発生源としてのインフレータ15と、そのインフレータ15を被覆するように装着された袋状のエアバッグ16とを備えている。インフレータ15のケースの内部にはエアバッグ16を展開膨張させるための図示しないガス発生剤が収容され、インフレータ15のケースの下部にはガスを噴出させるためのガス噴出部としてのガス噴出口15aが形成されている。
【0027】
前記インフレータ15には、ボディサイド部に対する衝撃を検出するための図示しないセンサが電気的に接続されている。そして、ボディサイド部に対する他の車両の側突により、ボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、前記センサからの検出信号に基づいて図示しない制御回路を介してインフレータ15に対して駆動電流が出力される。この駆動電流に基づく発火により、インフレータ15内のガス発生剤からガスが発生され、そのガスがガス噴出口15aからエアバッグ16内に噴出供給されるようになっている。
【0028】
図2及び図3に示すように、前記エアバッグ16は、織布等からなる一対の基布16a,16bをそれらの周縁において全体として袋状をなすように縫着することによって形成され、通常は折り畳み状態でケース14内に収容されている。
【0029】
そして、インフレータ15が作動されてガスが発生されたとき、図1及び図2に示すように、エアバッグ16がドア12とフロントシート11との間に向かって展開膨張され、フロントシート11に着座する乗員Pの胴体を肩部Psから腰部Phにかけてカバーするようになっている。
【0030】
前記エアバッグ16の上下方向のほぼ中央には、両基布16a,16bを互いに縫着接合した側面形ほぼ横U字状のシーム17が形成され、このシーム17により、第1実施形態の規制手段及び誘導手段が構成されている。エアバッグ16の内部にはシーム17により、上部展開部としての上部区画室18及び下部展開部としての下部区画室19が形成されている。また、上下区画室18,19間には、中間部分としての中間区画室20が車両後方に向かって開口するように形成されている。インフレータ15と反対側において、エアバッグ16の周縁部とシーム17との間にはガス通路21が形成されている。
【0031】
そして、図1に矢印で示すように、インフレータ15のガス噴出口15aから噴出されるガスが、下部区画室19内に導入され、その下部区画室19からシーム17の外周に沿って、ガス通路21を介して上部区画室18に導入される。その後、上部区画室18内のガスがシーム17の上縁を迂回するようにして中間区画室20内に導入される。これにより、図4から明らかなように、下部区画室19が膨張されて乗員Pの腰部Phに対応配置されるとともに、それとほぼ同時に上部区画室18が膨張されて乗員Pの肩部Psに対応配置される。そして、その後に中間区画室20が膨張されて乗員Pの胸郭部Pcに対応配置される。なお、エアバッグ16の一部には、膨張後に内部のガスを排出するための図示しないベント孔が形成されている。
【0032】
また、このエアバッグ16においては、シーム17が基布16a,16bの上下方向の中間部分を緊張させた状態で側面形ほぼ横U字状に形成されている。これにより、エアバッグ16の展開膨張時に、シーム17にて中間区画室20の膨出が規制され、図2に示すように、乗員Pの肩部Ps及び腰部Phに対応する上部区画室18及び下部区画室19の厚さが、胸郭部Pcに対応する中間区画室20の厚さよりも大きくなるように構成されている。ここで、各区画室18〜20は、以下の範囲内の厚さとなるように、シーム17の位置等の各種条件が設定される。すなわち、上下の区画室18,19の厚さが、150〜200mm,中間区画室20の厚さが、50〜130mmとなるように、前記条件が設定される。この場合、中間区画室20の厚さは、上下の区画室18,19の厚さが等しい場合は、その厚さの4分の1〜4分の3となるのが望ましく、上下の区画室18,19の厚さが異なる場合には、低いほうの区画室18,19の4分の1〜4分の3となるのが望ましい。なお、これらの区画室18〜20の厚さの値は、エアバッグ16に衝突等の外部荷重が作用していない条件下において、いわゆる静展開の条件下において設定される値である。
【0033】
次に、前記のように構成されたサイドエアバッグ装置13について動作を説明する。
さて、車両のボディサイド部に対する他の車両による側突により、ボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わると、図示しないセンサがそれを検出し、その検出に基づいてインフレータ15からガスが発生される。すると、図1に矢印で示すように、そのガスがインフレータ15のガス噴出口15aからエアバッグ16の下部区画室19に噴出供給されるとともに、ガス通路21を介して上部区画室18に導入され、その後に中間区画室20に導入される。これにより、図4に示すように、乗員Pの肩部Psに対応する上部区画室18と腰部Phに対応する下部区画室19とがほぼ同時に膨張され、その後に胸郭部Pcに対応する中間区画室20が膨張される。
【0034】
この場合、図2に示すように、上部区画室18及び下部区画室19の厚さが中間区画室20の厚さよりも大きくなる。このため、中間区画室20と乗員Pの胸郭部Pcとの間には空間Sが形成され、この状態で上部区画室18及び下部区画室19により、乗員Pの肩部Ps及び腰部Phが室内側へ押される。これにより、乗員Pが室内側に移動されて、胸郭部Pcを保護しながら側突に伴う衝撃が緩和される。よって、ボディサイド部が室内側に大きく変形進入した場合でも、その変形進入に先だって乗員Pがボディサイド部から離隔されて、乗員Pを保護できるとともに、胸郭部Pcに対する衝撃が抑制され、胸郭部Pcを有効に保護することができる。
【0035】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このサイドエアバッグ装置13においては、エアバッグ16に展開膨張状態で、乗員Pの肩部Psに対応する上部区画室18と、腰部Phに対応する下部区画室19と、胸郭部Pcに対応する中間区画室20とが形成されている。そして、エアバッグ16の展開膨張時に、上部区画室18及び下部区画室19の厚さが中間区画室20の厚さよりも大きくなるように、中間区画室20の膨出が規制されるようになっている。
【0036】
このため、車両の側突時において、ボディサイド部が室内側に大きく変形進入した場合にも、それに先立って、外部からの衝撃に対して抗堪性を有する乗員Pの肩部Ps及び腰部Phを押して、乗員Pを室内側に移動させることができる。よって、胸郭部Pcを充分に保護しながら、側突による衝撃から乗員Pを効果的に防護することができる。
【0037】
(2) このサイドエアバッグ装置13においては、エアバッグ16の展開膨張時に、インフレータ15から供給されるガスが上部区画室18及び下部区画室19にほぼ同時に導かれるようになっている。このため、上部区画室18と下部区画室19とがほぼ同時に展開膨張され、乗員Pの肩部Ps及び腰部Phをほぼ同時に押して、乗員Pを室内側へ迅速に移動させることができる。よって、乗員Pの保護効果を一層高めることができる。
【0038】
(3) このサイドエアバッグ装置13においては、中間区画室20の膨出規制構成及びガスの誘導構成が、エアバッグ16の基布16a,16b間を縫着接合するシーム17からなっている。このため、規制構成及び誘導構成として専用部品を設ける必要がなく、部品点数が増加するのを防止することができる。よって、構造が簡単になってエアバッグ16を安価に製作することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0040】
さて、この第2実施形態においては、図5及び図6に示すように、エアバッグ16の上下ほぼ中間部における基布16a,16b間に幅広のシーム17Aが基布16a,16bの縫着接合により設けられ、このシーム17Aによりエアバッグ16内に上部区画室18と下部区画室19とが区画形成されている。また、この幅広のシーム17Aにより、エアバッグ16の中間部分の膨出を規制する規制手段及びガスの誘導手段が構成されている。そして、図5に矢印で示すように、インフレータ15のガス噴出口15aから噴出されるガスが、上部区画室18及び下部区画室19にほぼ同時に導入されるようになっている。
【0041】
これにより、エアバッグ16の展開膨張時には、上部区画室18及び下部区画室19が乗員Pの肩部Ps及び腰部Phに対応配置されるとともに、両区画室18,19の中間部分のシーム17Aが胸郭部Pcに対応配置される。この場合、図6に示すように、両区画室18,19の厚さがシーム17Aの部分の厚さより大きくなるため、シーム17Aと乗員Pの胸郭部Pcとの間には空間Sが形成される。よって、前記第1実施形態の場合と同様に、乗員Pの肩部Ps及び腰部Phとの2箇所がほぼ同時に押されて、乗員Pが室内側に移動され、胸郭部Pcを保護しながら側突時の衝撃を緩和することができる。
【0042】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) このサイドエアバッグ装置13において、前記中間部分の膨出規制構成及びガスの誘導構成は、エアバッグ16の上部区画室18と下部区画室19との中間位置で、両基布16a,16bを縫着接合する幅広のシーム17Aを設けただけである。
【0043】
従って、エアバッグ16の作製が容易になって、製作コストを低減することができる。また、エアバッグ16の展開膨張時に、この幅広のシーム17Aが上部区画室18と下部区画室19との中間部分において、両区画室18,19よりも厚さのきわめて薄い状態で乗員Pの胸郭部Pcに対応する。このため、エアバッグ16の展開膨張時に、胸郭部Pcの保護効果を一層高めることができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0045】
さて、この第3実施形態においては、図7に示すように、エアバッグ16に規制手段を構成する2本のシーム17が上下に所定間隔をおいて基布16a,16bの縫着接合により設けられ、この2本のシーム17によりエアバッグ16内に上部区画室18、下部区画室19及び中間区画室20が区画形成されている。中間区画室20は2本のシーム17間に形成されている。また、この第3実施形態においては、2本のシーム17がそれらの間の基布16a,16bを上下方向に緊張させた状態で形成されている。これによって、エアバッグ16の展開膨張時に、中間区画室20の厚さが薄くなって、上下区画室18,19の厚さが中間区画室20の厚さよりも大きくなるように構成されている。インフレータ15の周側にはカバー24が配設され、このカバー24によりインフレータ15のガス噴出口15aから噴出供給されるガスを導入するための誘導手段としての導入室25が形成されている。
【0046】
前記各区画室18,19,20と対応するように、カバー24には誘導手段としての誘導孔26A,26B,26Cが形成され、これらの誘導孔26A〜26Cを介して、導入室25から各区画室18,19,20内にガスが導入されるようになっている。そして、上部区画室18及び下部区画室19に対応する誘導孔26A,26Bのそれぞれの全開口面積が、中間区画室20に対応する誘導孔26Cの全開口面積よりも大きくなるように形成されている。これにより、上下の区画室18,19が同時に展開膨張するとともに、中間区画室20の厚さが上部区画室18及び下部区画室19の厚さよりも薄く展開膨張する。
【0047】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果と同様な効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0048】
さて、この第4実施形態においては、図8に示すように、エアバッグ16の規制手段を構成するシーム17が側面形ほぼG字状に形成され、このシーム17によりエアバッグ16内に上部区画室18、下部区画室19及び中間区画室20が区画形成されている。このシーム17により構成された中間区画室20は膨張展開状態において上部区画室18及び下部区画室19より薄くなるように規制される。また、インフレータ15には上下2箇所にガス噴出口15aが形成され、これらのガス噴出口15aから同時にガスが噴出されるようになっている。そして、この第4の実施形態では、前記シーム17とガス噴出口15aの2箇所の配設構成とによりガスの誘導手段が構成され、これによって上部区画室18及び下部区画室19がほぼ同時に膨張された後に、中間区画室20が膨張されるようになっている。
【0049】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(5) このサイドエアバッグ装置13においては、前記ガスの誘導構成が上部区画室18及び下部区画室19に対応してインフレータ15に設けられた上下2箇所のガス噴出口15aからなっている。このため、上部区画室18及び下部区画室19の膨張展開の時間差を小さくすることができる。
【0050】
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0051】
この第5実施形態においては、図9に示すように、規制手段を構成するシーム17にて区画形成された中間区画室20の開口20aがインフレータ15の反対側である車両前方に向かうように形成され、この開口20aの上下の周縁に流入ガイド部20bが形成されている。さらに、中間区画室20の部分の一方の基布16aまたは16bには、外部に向かって開口するベント孔22が形成されている。前記シーム17により、上部区画室18及び下部区画室19は、中間区画室20より厚く膨張展開する。
【0052】
従って、この第5実施形態においては、前記各実施形態における効果に加えて以下のような効果を発揮する。
(6) このサイドエアバッグ装置13においては、インフレータ15からのガスが上下の区画室18,19をまわってから中間区画室20内に流入する。このため、上下の区画室が18,19がほぼ同時に展開膨張した後に、若干遅れて中間区画室20が膨張展開するとともに、上下の区画室18,19の内圧を中間区画室20の内圧よりも高圧にすることができる。従って、胸郭部Pcの保護を有効に行うことができる。
【0053】
(7) このサイドエアバッグ装置13においては、中間区画室20の流入ガイド部20bにより、中間区画室20へのガスの流入が円滑になり、中間区画室20の展開膨張が遅れすぎるのを防止でき、その展開膨張を的確なタイミングで行わせることができる。
【0054】
(8) このサイドエアバッグ装置13においては、ベント孔22から中間区画室20内のガスが好適に排出され、中間区画室20の内圧が必要以上に高くなるのを防止でき、胸郭部Pcの保護に有効である。
【0055】
(第6実施形態)
次に、この発明の第6実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0056】
この第6実施形態においては、図10及び図11に示すように、エアバッグ16が内部を区画することなく、ほぼワンルーム状態に形成されている。そして、このエアバッグ16には展開膨張状態で、乗員Pの肩部Psに対応する上部展開部27と、腰部Phに対応する下部展開部28と、胸郭部Pcに対応する中間部分としての中間展開部29とが設けられている。
【0057】
前記エアバッグ16の中間展開部29における厚さ方向の側縁には、乗員Pの胸郭部Pcと対応するように括れ部30が形成され、この括れ部30によって、中間展開部29の膨出を規制するための規制手段が構成されている。また、図10に示すように、エアバッグ16の上部展開部27の幅が、下部展開部28及び中間展開部29の幅よりも広くなるように形成されている。括れ部30は、例えば、乗員P側の基布16bにおける中間展開部29と対応する部分の緯糸として伸張性に乏しいものを使用することにより、実現できる。従って、この場合には、伸張性に乏しい緯糸が規制手段を構成する。
【0058】
これにより、エアバッグ16の展開膨張時には、図11に示すように、括れ部30にて中間展開部29の膨出が規制され、上部展開部27及び下部展開部28の厚さが中間展開部29の厚さよれも大きくなる。それとともに、図10に示すように、上部展開部27が下部展開部28及び中間展開部29よりも幅広になる。よって、前記第1実施形態の場合とほぼ同様に、乗員Pの肩部Ps及び腰部Phとの2箇所が押されて、乗員Pが室内側に移動され、胸郭部Pcを保護しながら側突時の衝撃が緩和される。
【0059】
従って、この第6実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(9) このサイドエアバッグ装置13においては、エアバッグ16の中間展開部29の側縁に括れ部30を形成するのみでよい。このため、中間展開部29の膨出規制構成として専用部品を設ける必要がなく、部品点数が増加するのを防止することができる。よって、構造が簡単になってエアバッグ16を安価に製作することができる。
【0060】
(10) このサイドエアバッグ装置13においては、エアバッグ16の上部展開部27が、下部展開部28及び中間展開部29よりも幅広となるように形成されている。このため、エアバッグ16の展開膨張時に、幅広の上部展開部27が乗員Pの肩部Psに有効に当接して、乗員Pを室内側へ確実に移動させることができる。
【0061】
(第7実施形態)
次に、この発明の第7実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0062】
この第7実施形態においては、図12及び図13に示すように、エアバッグ16に、前記第6実施形態と同様の上部展開部27、下部展開部28及び中間展開部29が設けられている。エアバッグ16の中間展開部29の外周または内周には、難燃不織布等よりなる規制布31が縫着接合され、この規制布31によって、中間展開部29の膨出を規制するための規制手段が構成されている。
【0063】
これにより、エアバッグ16の展開膨張時には、図13に示すように、規制布31にて中間展開部29の膨出が規制され、上部展開部27及び下部展開部28の厚さが中間展開部29の厚さよりも大きくなる。よって、前記第6実施形態の場合と同様に、乗員Pが肩部Ps及び腰部Phを押されて室内側に移動され、胸郭部Pcを保護しながら側突時の衝撃が緩和される。
【0064】
従って、この第7実施形態においても、前記第6実施形態における効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0065】
・ 前記各実施形態において、エアバッグ16,16A,16Bを、一対の基布16a,16bの縫着によることなく、例えば袋織りした1枚の織布で形成すること。
【0066】
・ 前記各実施形態において、エアバッグ16を、織布の他に例えば不織布、合成樹脂シート等の他の材料を用いて形成すること。
・ 前記第1及び第3〜第5実施形態において、図4に2点鎖線で示すように、ガス発生時における中間区画室20の内圧が上下の区画室18,19の内圧よりも低くなるように構成すること。このためには、例えば、中間区画室20に至るガス通路の断面積を絞る等の手段を講じればよい。そして、このようにすれば、乗員Pの胸郭部Pcに対する外部圧力を低くすることができ、乗員Pの保護に有効である。
【0067】
・ 前記第1,第4実施形態において、中間区画室20の開口縁に前記第5実施形態と同様な流入ガイド部を設けること。
・ 前記第1〜第4,第6及び第7実施形態において、中間区画室20または中間展開部29と対応する部分に第5実施形態を同様なベント孔を設けること。
【0068】
・ 前記第6及び第7実施形態のエアバッグ16において、規制手段として、図14及び図15に示すように、基布16a,16b間に上下方向へ延びる複数のシーム17Bを縫着形成すること。
【0069】
【発明の効果】
以上実施形態で例示したように、この発明においては、側突時において、ボディサイド部が室内側に大きく変形進入した場合にも、乗員を有効に保護できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図2】 図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】 図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】 図1の各区画室の展開膨張時における圧力変化を示すグラフ。
【図5】 第2実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側面図。
【図6】 図5の6−6線における部分断面図。
【図7】 第3実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図8】 第4実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図9】 第5実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図10】 第6実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図11】 図10の11−11線における部分断面図。
【図12】 第7実施形態のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図13】 図12の13−13線における部分断面図。
【図14】 エアバッグのシームの別の構造を示す部分断面図。
【図15】 エアバッグのシームのさらに別の構造を示す部分断面図。
【図16】 従来のサイドエアバッグ装置を示す側断面図。
【図17】 従来のサイドエアバッグ装置の別の構成を示す側断面図。
【符号の説明】
11…フロントシート、11b…背もたれ部、12…車両のボディサイド部を構成するドア、13…サイドエアバッグ装置、15…ガス発生源としてのインフレータ、15a…ガス噴出口、16…エアバッグ、16a,16b…基布、17,17A,17B…規制手段及び誘導手段を構成するシーム、18…上部展開部としての上部区画室、19…下部展開部としての下部区画室、20…中間部分としての中間区画室、25…導入室、26〜26C…誘導手段を構成する誘導孔、27…上部展開部、28…下部展開部、29…中間部分としての中間展開部、30…規制手段を構成する括れ部、31…規制手段を構成する規制布、P…乗員、Ps…肩部、Pc…胸郭部、Ph…腰部。
Claims (7)
- 車両のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、ボディサイド部と車室内に配置されたシートに着座する乗員との間にて展開するエアバッグと、同エアバッグを展開膨張させるガス発生源とを備えるサイドエアバッグ装置において、
前記エアバッグには、展開膨張状態で前記乗員の肩部に対応する上部展開部と、前記乗員の腰部に対応する下部展開部と、前記乗員の肩部と腰部との間の胸郭部に対応する中間部分とが設けられ、前記乗員の肩部から腰部にかけての胴体をカバーする状態まで前記上部展開部、前記下部展開部及び前記中間部分が展開膨張したときに、前記上部展開部及び前記下部展開部の厚さが前記中間部分の膨出を規制する規制手段により前記中間部分の厚さよりも大きなものとされる
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 請求項1に記載のサイドエアバッグ装置において、
前記規制手段は、前記エアバッグの中間部分の基布間を接合するシームからなる
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 請求項1に記載のサイドエアバッグ装置において、
前記規制手段は、前記エアバッグの中間部分の側縁に形成された括れ部からなる
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 請求項1に記載のサイドエアバッグ装置において、
前記規制手段は、前記エアバッグの中間部分の周囲に設けられた規制布からなる
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置において、
前記ガス発生源から供給されるガスを前記上部展開部及び前記下部展開部にほぼ同時に導くもの、すなわち前記ガス発生源から供給されるガスを前記下部展開部に導いた後に前記上部展開部に導くものであって、前記上部展開部及び前記下部展開部を前記中間部分よりも早く展開膨張させる誘導手段を設けた
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 請求項5に記載のサイドエアバッグ装置において、
前記誘導手段は、前記エアバッグの基布間を接合するシームからなる
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置において、
前記エアバッグの上部展開部が前記エアバッグの下部展開部及び中間部分よりも幅広となるように形成した
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。
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