JP3780328B2 - 真空注型用シリコン型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種工業製品等で使用される成形品、特にインサート成形品を成形するために好適な真空注型用シリコン型に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来の真空注型用シリコン型の例を示している。シリコン型100において、割型可能な一対の成形型101,102を接合部103にて接合し、内部にキャビティ104(図12参照)が形成される。このキャビティ104内に素材注入口105から成形素材を注入するようになっている。
【0003】
この種のシリコン型において特にインサート成形品の成形において、たとえば図11(A)に示すようなインサート成形品Wを製造する例で説明する。成形品Wは乗用車等に使用する樹脂部品等であってもよいが、その所定部位にネジ部品(ビス、ボルト等)106がインサートされている。まず、図11(B)のように成形品Wをモデルとして型作り(すなわち、シリコン流し)を行う。これによりシリコン型100′が形成される。
【0004】
つぎに、シリコン型100′は、図12のように型割りされる。これにより一対の成形型101,102が得られる。この一対の成形型101,102の対向面には、図示のようにキャビティ104が形成され、2つ割りにした部分は接合部103となる。このように型割りして、モデルとしての成形品Wを取り出す。成形品Wの取り出し後、インサートされるべきビスもしくはボルト106が、この型作りで形成された一方の成形型102のネジ穴107に差し込まれる(図13参照)。そして、再び一対の成形型101,102を型合わせすることにより、既に説明したように図10のようなシリコン型100が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシリコン型100において、注型を多数回繰り返すうちに特にネジ穴107が劣化し(へたってしまう)、そのまま注型を行うとビスもしくはボルト106のネジ部に樹脂(成形素材)が被ってしまうことがあった。このため製品である成形品Wの品質を維持すために、シリコン型100を何度も作り直さざるを得なかった。また、従来のシリコン型100ではインサートされるビスもしくはボルト106は、1種類(特にネジサイズ)に限られるため、実質的に多品種生産に対応することができない。
【0006】
この発明は以上の点に鑑み、型寿命を有効に延ばすとともに、多品種生産に対応可能な真空注型用シリコン型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明は、割型可能な一対の成形型を接合部にて接合し、キャビティ内に成形素材を注入してインサート成形するようにした真空注型用シリコン型であって、キャビティの所定部位に着脱可能に、インサート成形されるべきネジ部品が螺合されてなるネジ部品セット部を有し、ネジ部品セット部は、キャビティ所定部位に設けた装着穴に嵌合する固定カラーと、固定カラーに着脱可能に内嵌する雌ネジカラーと、雌ネジカラーに螺合する雄ネジ部品とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の真空注型用シリコン型において、前記雌ネジカラーおよび雄ネジ部品のネジサイズを可変であるようにすれば好ましい。
【0009】
また、本発明の真空注型用シリコン型において、好ましくは、雄ネジ部品は、成形品にインサートされるヘッド部もしくは基部を有している。
上記雄ネジ部品を、成形品から離脱可能に螺着するようにすれば好ましい。
【0010】
この発明によれば、キャビティ所定部位には、インサート成形されるべきネジ部品を螺合してなるネジ部品セット部が備えられている。このネジ部品セット部は、固定カラーを介して着脱可能に型とは別物として構成される。したがって、雌ネジカラー等のネジ部が劣化した場合にはその部分だけを簡単に交換することができ、この結果、型寿命を有効に延ばすことができる。また、インサートされるビスもしくはボルトのサイズに応じたネジ部品セット部を用いることで、ネジサイズの変更に有効に対応することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき、この発明による真空注型用シリコン型の好適な実施の形態を説明する。
図1はこの実施形態における真空注型用シリコン型の例を示している。シリコン型10は、割型可能な一対の成形型、すなわち上型11および下型12を接合部13にて接合し、図示のように内部にキャビティ14が形成される。このキャビティ14内にゲート15から成形素材を注入するようになっている。
【0012】
ここで、図2はこの発明を適用するインサート成形品Wの例を示している。図2(A)は表面側を、また図2(B)は裏面側をそれぞれ示している。成形品Wは乗用車等に使用する樹脂部品等であってもよいが、その所定部位(A′部等)にネジ部品(ビス、ボルト等)がインサートされている。
【0013】
シリコン型10は、キャビティ14の所定部位(成形品WのA′部に対応するA部等)に着脱可能に、インサート成形されるべきネジ部品が螺合されてなるネジ部品セット部20を備えている。本実施形態では、ネジ部品セット部20にセットされるネジ部品として、図3のようなストレート状のボルト21と図4のような成形品Wにインサートされるヘッド部もしくは基部22aを有するビス22を選択的に使用する。ボルト21は図8のように成形品Wに凹ネジW1を形成する場合に使用し、またビス22は図9のように成形品Wにインサートされる場合に使用する。
【0014】
また、真空注型用シリコン型10においてネジ部品セット部20は、図5に示したようにキャビティ14の所定部位に設けた装着穴16に嵌合する固定カラー23と、固定カラー23に着脱可能に内嵌する雌ネジカラー24と、雌ネジカラー24に螺合する雄ネジ部品(ボルト21またはビス22)とを含む。
【0015】
つぎに、ネジ部品セット部20の形成方法等について説明する。図6および図7は、ネジ部品セット部20を形成するための主要工程を順に示している。なお固定カラー23は予め、旋盤等による機械加工で所定の形状、サイズに形成されている。すなわち、図5にも示したように固定カラー23は、典型的には金属製とし、雌ネジカラー24が嵌挿される内孔23aと外周面に突出形成された抜け止め用突部23bを有している。
【0016】
図6は主に、雌ネジカラー24を形成するための主要工程を順に示している。図6(A)において、樹脂製プレート1上に固定カラー23を置くとともに、下側からビス2を挿入する。なお、このビス2は、インサート成形されるネジ部品(ボルト21またはビス22)と同一のネジサイズである。
次に、図6(B)において、各部品を接着剤3等を用いてセット固定する。
続いて、図6(C)に示すように、固定カラー23の内孔23a内にシリコン材mが注入される。
そして、図6(D)に示すように、各部品の接着剤3を除去して固定カラー23から雌ネジカラー24を取り出す。このうよにして形成された雌ネジカラー24内部には、ビス2によって雌ネジ部24aが形成されている。
【0017】
図7は主に、ボルト21を形成するための主要工程を順に示している。なお、この場合ボルト21の成形用型として、既に形成した雌ネジカラー24を使用するものとする。
先ず、図7(A)において、両面テープ5が貼られた樹脂製プレート4上に雌ネジカラー24を置くとともに、下側からビス6を挿入する。
次に、図7(B)において、各部品をセット固定する。
続いて、図7(C)に示すように、雌ネジカラー24の雌ネジ部24a内にシリコン材mが注入される。
そして、図7(D)に示すように、雌ネジカラー24からシリコン製のボルト21が取り出される。
【0018】
上記構成において、たとえば、所定部位に凹ネジW1を有する成形品Wを成形する場合、ネジ部品セット部20に、図5のように固定カラー23および雌ネジカラー24を介してボルト21をセットする。そして、上型11および下型12を位置ずれしないように型合わせし、ゲート15から成形素材を注入する。注入された成形素材の固化後、型開して内部から図2のような成形品Wを取り出す。このときボルト21を成形品Wから抜去することにより、図8のように成形品Wに凹ネジW1が形成されている。この凹ネジW1には、製品段階でビスW2を螺着するようにしてもよい。
【0019】
また、所定部位にビス22がインサートされる成形品Wを成形する場合、ネジ部品セット部20に、図4のように固定カラー23および雌ネジカラー24を介してビス22をセットする。同様にして、注入された成形素材の固化後、型開して内部から図2のような成形品Wを取り出す。この場合には、図9のように成形品Wにビス22がインサートされている。このビス22には、製品段階でナットW3を螺着するようにしてもよい。
【0020】
上述のようにネジ部品セット部20は、固定カラー23を介して着脱可能に型とは別物として構成される。そしてネジ部品セット部20にボルト21あるいはビス22が螺着することにより、凹ネジW1を有する成形品W、またはビス22がインサートされた成形品Wを選択的に成形することができる。このようにタイプの異なる複数種類の成形品Wを得ることができる。
【0021】
これらの場合、雌ネジカラー24等のネジ部が劣化した場合にはその部分だけを簡単に交換することができ、この結果実質的に型寿命を延ばすことができる。すなわち、固定カラー23から雌ネジカラー24を取り外して、新品のものと交換することによりシリコン型10全体を作り直すことなく、つねに適性な成形加工を行って製品の品質を保証することができる。
【0022】
また、ネジ部品セット部20にセットされるボルト21あるいはビス22は、必要に応じてそれらのサイズを変更することができる。雌ネジカラー24の部分の交換だけで多種類のネジサイズに対応することができる。
【0023】
なお、上記実施形態におけるネジ部品セット部20の配置や個数等は、必要に応じて適宜変更可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、この種の真空注型において型寿命を有効に延ばすとともに、多品種生産に対応することができる。その場合、製品の品質が維持され、製品の種類変更にも即座に対応することができる等の利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における真空注型用シリコン型の例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインサート成形品の例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態におけるネジ部品セット部の一例を示す斜視図および断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるネジ部品セット部の別の例を示す斜視図および断面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるネジ部品セット部の構成例を示す斜視図および断面図である。
【図6】本発明の実施形態におけるネジ部品セット部を形成するための主要工程を順に示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるネジ部品セット部を形成するための主要工程を順に示す図である。
【図8】本発明の実施形態における成形品の例を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態における成形品の別の例を示す斜視図である。
【図10】従来の真空注型用シリコン型の例を示す斜視図である。
【図11】従来の真空注型用シリコン型における型作り工程を示す図である。
【図12】従来の真空注型用シリコン型における型作り工程を示す図である。
【図13】従来の真空注型用シリコン型における型作り工程を示す図である。
【符号の説明】
1 樹脂製プレート
2 ビス
3 接着剤
4 樹脂製プレート
5 両面テープ
6 ビス
10 シリコン型
11 上型
12 下型
13 接合部
14 キャビティ
15 ゲート
16 装着穴
20 ネジ部品セット部
21 ボルト
22 ビス
23 固定カラー
23a 内孔
23b 抜け止め用突部
24 雌ネジカラー
24a 雌ネジ部
W 成形品
W1 凹ネジ
Claims (4)
- 割型可能な一対の成形型を接合部にて接合し、キャビティ内に成形素材を注入してインサート成形するようにした真空注型用シリコン型であって、
上記キャビティ所定部位に着脱可能に、インサート成形されるべきネジ部品が螺合されてなるネジ部品セット部を有し、
上記ネジ部品セット部は、上記キャビティ所定部位に設けた装着穴に嵌合する固定カラーと、この固定カラーに着脱可能に内嵌する雌ネジカラーと、この雌ネジカラーに螺合する雄ネジ部品とを含むことを特徴とする真空注型用シリコン型。 - 前記雌ネジカラーおよび雄ネジ部品のネジサイズが可変であることを特徴とする、請求項1に記載の真空注型用シリコン型。
- 前記雄ネジ部品は、成形品にインサートされるヘッド部もしくは基部を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空注型用シリコン型。
- 前記雄ネジ部品は、成形品から離脱可能に螺着することを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空注型用シリコン型。
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