JP3779491B2 - 光沢仕上げ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光沢仕上げ方法に係り、特に、熱転写印刷において、印刷表面のインクを再溶融させることにより光沢仕上げを施す光沢仕上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プリンタにおけるカラー印刷等の画像を、より写真に近い画像に仕上げるための光沢仕上げに関する方法が開発されている。
【0003】
例えば、レジン系インクを用いた熱転写印刷の場合、前記光沢仕上げは、所望の印刷を行った後にその印刷された領域の表面をプリンタのサーマルヘッドにより加熱して前記画像を構成するレジン系インクを再溶融させ、再凝固の際に印刷領域表面を平滑に仕上げることにより行われている。この光沢仕上げを施すことにより、光沢仕上げを施す前の印刷領域表面に形成されていた付着インクの凹凸によって生じていた光の乱反射を防止することができ、良好な光沢感のある印刷を得ることができる。
【0004】
そして、この従来の光沢仕上げ方法においては、サーマルヘッドによる加熱温度が仕上がりの良否を分ける大事なポイントとなっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
つまり、前記加熱温度が付着インクの表面を溶融させるための温度よりも低温である場合には、付着インクの表面を十分に溶融させることができないので、当然に光沢仕上げは不十分なものとなる。
【0006】
逆に、前記加熱温度が付着インクの表面を溶融させるための温度よりも高温である場合には、サーマルヘッドを構成する各発熱体間の温度にばらつきが生じてむらとなって表れたり、シリアルからはみ出した部分に熱が籠もって筋状のむらを生じさせる等の問題があった。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みなされたもので、光沢感にむらのない高品質な印刷を提供することができ、使用感の良好な光沢仕上げ方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の請求項1に記載の光沢仕上げ方法は、プリンタにより、印刷情報に基づく印刷を施した後、前記プリンタのサーマルヘッドの温度をサーミスタにより検出し、前記サーマルヘッドの裏面の温度が所望の予備加熱温度範囲の下限より低い場合には、前記サーマルヘッドの発熱部に通電することにより前記サーマルヘッドの裏面の温度を所望の加熱温度とする加熱を行い、前記サーマルヘッドの温度が所望の予備加熱温度範囲の上限より高い場合には前記サーマルヘッドの蓄熱を放熱させる温度調整を行う予備加熱を行った後、前記サーマルヘッドの全発熱体に通電することにより前記サーマルヘッドの温度を所望の本加熱温度とする本加熱を行いながら、前記サーマルヘッドを前記フィルムリボンを介して印刷情報の印刷表面に当接させて前記印刷表面のインクを再溶融させる一連の工程を行い、印刷に光沢仕上げを施す光沢仕上げ方法であって、前記予備加熱は、プリンタに配設したサーミスタにより検出したプリンタの環境温度と予め入力した環境基準温度との差により通電パルス長を調整することによる1乃至複数回の加熱動作、あるいは前記サーマルヘッドを放熱部材に対して接触させることによる冷却動作の少なくともどちらか一方の動作を一定時間行なって所望の予備加熱温度を得るようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
例えば、プリンタに配設したサーミスタにより検出した環境温度が普段より低い場合には、従来においては、予備加熱時間も環境温度が高い場合と比較して長くなるため、使用者は使用感を悪く感じることがあったが、本発明によれば、環境温度に関係なく予備加熱時間を一定としたので、予備加熱時間が普段よりも長いあるいは短いと感じることがなく、使用感を良好にすることができ、また、環境温度と環境基準温度との差により、通電のパルス長を調整することにより、予備加熱の所要時間も短くすることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の光沢仕上げ方法は、請求項1に記載の光沢仕上げ方法であって、所望の印刷情報のすべての印刷が完了した印刷表面に対し、光沢仕上げを施すことを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、光沢仕上げを、常に適正な温度により施すことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図5を参照して説明する。
【0015】
図1に示す本実施形態のプリンタ1は熱転写プリンタであり、光沢仕上げのための駆動制御可能なプリンタとされている。
【0016】
前記プリンタ1のフレーム(図示せず)の所望の位置には平板状のプラテン2がその記録面2aがほぼ垂直となるように配設されている。
【0017】
本実施形態において、後述するサーマルヘッド7による印刷範囲外においてこのサーマルヘッド7に対向する部位となる前記プラテン2の印刷桁方向の上流側には、熱伝導率の高い材料からなる放熱部材3が配設されており、この放熱部材3の表面は、前記プラテン2の表面に対してほぼ均一の高さに形成されている。
【0018】
また、前記プラテン2の前側下方には、ガイドシャフト4がプラテン2と平行に配設されている。そして、ガイドシャフト4の適宜な位置には、キャリッジ5が取付けられており、前記キャリッジ5は、1対のプーリ(図示せず)に巻回されている適宜な駆動ベルト6を、図示しないステッピングモータ等のキャリッジモータにより駆動させてガイドシャフト4に沿って往復動自在に駆動されるようになっている。
【0019】
前記キャリッジ5には、プラテン2に対向しかつプラテン2に対して駆動モータの駆動力をもって動作可能な周知のヘッド移動機構(ともに図示せず)により、接離自在とされ、プラテン2に対して図示しない用紙等を介して圧接可能とされたサーマルヘッド7が配設されている。そして、このサーマルヘッド7は、キーボードなどの適宜な入力装置(図示せず)により入力された所望の印刷情報等に基づいて選択的に発熱される整列配置された複数の発熱体(図示せず)を備えている。また、前記サーマルヘッド7には、サーマルヘッド7の裏面の温度を検出するためのサーミスタ8が配設されている。そして、このサーミスタ8は、プリンタ1の所望の位置に配設され、プリンタ1の各部の駆動制御をつかさどる制御部9に接続されている。
【0020】
さらに、キャリッジ5の上面中央部には、相互に所定間隔を隔てて1対の回転可能なボビン10が上方に突出するようにして配設されており、このボビン10によりインクリボンが所定の方向に走行可能とされている。この1対のボビン10は、一方がインクリボンを巻取る巻取りボビン10aとされ、他方がインクリボンを送出する送出ボビン10bとされている。
【0021】
また、前記キャリッジ5には、サーマルヘッド7のプラテン2への接離動作を行なうためのステッピングモータや、前記インクリボンの巻取制御のためのステッピングモータ(以下、リボン巻取りモータという)が配設されており、図示しない伝達ギアを介して前記サーマルヘッド7や前記巻取りボビン10aに動力を伝達するようになっている。
【0022】
ところで、前記制御部9は図示しないメモリ11、CPU12などから形成されており、プリンタ1の通常の印字動作を制御する他、本実施形態においては、環境温度等に基づいて予備加熱データを検出し、この予備加熱データに基づく予備加熱を行なう等の光沢仕上げの駆動制御を行なうようになされている。
【0023】
本実施形態において、前記メモリ11には、光沢仕上げを良好に施すための環境基準温度、予備加熱温度範囲、本加熱温度範囲等が入力され、記憶されている。本実施形態においては、環境基準温度は20℃、予備加熱温度範囲は40℃〜60℃の所望の温度範囲内にある45〜46℃、本加熱温度範囲はサーマルヘッドの裏面温度が40℃〜60℃の所望の温度であって、前記予備加熱温度範囲の上限温度以上の温度となる46℃〜50℃とする。このように設定することにより、予備加熱においてサーマルヘッド7はあらかた加熱されているため、本加熱の設定温度を得やすく、また、本加熱を、低温すぎず、高温すぎない適温で行うことが可能となる。
【0024】
さらに、前記メモリ11には、光沢仕上げのために、予備加熱を環境温度に拘わらず一定の予備加熱時間にて行なうための前記通電パルスのON・OFF時間を図示しないサーミスタにより検出したプリンタ1の環境温度と予備加熱温度との差に基づいて検出する予備加熱データが予め記憶されている。
【0025】
前記プリンタ1による印刷動作は従来より公知のものとし、説明を省略し、以下、本実施形態の光沢仕上げ方法について説明する。
【0026】
まず、記憶データに基づき、所望の印刷を記録紙等の印刷媒体(以下、記録紙等)に行って印刷を完了し、その後に、本実施形態の光沢仕上げを施す。
【0027】
図2は、光沢仕上げ方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0028】
まず、プリンタ1のサーマルヘッド7の裏面に配設したサーミスタにより、サーマルヘッド7の裏面温度を検出し、このサーマルヘッド7の裏面温度が予め設定した予備加熱温度範囲の下限値よりも高温であるか否かを判断する(ステップST1)。つまり、本実施形態においては45℃より高温であるか否かを判断することとなる。
【0029】
サーマルヘッド7の裏面温度が45℃に充たない場合、予備加熱(プリヒート)を行なう(ステップST2)。
【0030】
この予備加熱はプリンタに配設された作業環境温度を検出するサーミスタにより検出した温度を基準に求められる通電パルス長にてサーマルヘッド7の発熱体に対し、通電することで行われる。即ち、図3に示すサブルーチンのフローチャートに示すように、まず、プリンタに配設された作業環境温度を検出するサーミスタにより環境温度を検出する(ステップST11)。続いて、この環境温度と環境基準温度との差を求め、前記メモリに入力されている予備加熱データから通電パルス長を求め(ステップST12)、前記サーマルヘッド7の発熱体に対し通電して予備加熱を施す(ステップST13)。
【0031】
例えば、サーミスタの検出する環境温度が15℃であった場合と、10℃であった場合とでは、通電パルス長は10℃であった場合の方が長いものとなる。なお、サーミスタの検出する環境温度が設定した環境基準温度よりも高温である場合には、極短い通電パルスとするか、全く通電させない制御となる。
【0032】
そして、プリンタ1のサーマルヘッド7の裏面に配設したサーミスタにより、サーマルヘッド7の裏面温度を検出し、このサーマルヘッド7の裏面温度が予め設定した予備加熱温度範囲の下限値よりも高温であるか否かを判断する(ステップST1)。
【0033】
このときに、未だサーマルヘッド7の裏面温度が45℃に充たない場合には、予備加熱のサブルーチンに示す工程を繰り返し行う。
【0034】
サーマルヘッド7の裏面温度が45℃に達した場合には、このサーマルヘッド7の裏面温度が予め設定した予備加熱温度範囲の上限値よりも高温であるか否かを判断する(ステップST3)。つまり、本実施形態においては46℃より高温であるか否かを判断することとなる。
【0035】
サーマルヘッド7の裏面温度が46℃よりも高温である場合、冷却(クーリング)を行なう(ステップST4)。
【0036】
この冷却は、前記サーマルヘッド7の蓄熱を放出すべく、前記サーマルヘッド7を前記放熱部材3に対して接触するように前記キャリッジ4、サーマルヘッド7の駆動を制御することにより行う。
【0037】
具体的には、前記制御部9の制御により、前記キャリッジ5を移動させてサーマルヘッド7をプラテン2の長手方向一端部に配設された放熱部材3部分に移動させる。続いて、前記サーマルヘッド7をヘッドダウンさせてこのサーマルヘッド7を放熱部材9に対して当接させる。このとき、前記サーマルヘッド7の発熱素子への通電は行なわないことはいうまでもない。こうすることにより、前記サーマルヘッド7の蓄熱は放熱されることとなる。なお、本実施形態においてはプラテン2に放熱部材3を配設したが、この放熱部材3を配設しない場合においても、プリンタ1にセットされた記録紙等に接触させることによってもサーマルヘッド7を放熱させることは可能である。
【0038】
そして、プリンタ1のサーマルヘッド7の裏面に配設したサーミスタにより、サーマルヘッド7の裏面温度を検出し、1乃至複数回の予備加熱および/または1回乃至複数回の冷却をもって、一定時間内に、このサーマルヘッド7の裏面温度が予め設定した予備加熱温度範囲内となるように調整する。
【0039】
このように、本実施形態における予備加熱では、環境温度やサーマルヘッド7の裏面温度に拘わらず、常に一定の時間で予備加熱を施すことができる。
【0040】
そして、予備加熱のための一定時間が経過した後(ステップST5)は、サーマルヘッド7をキャリッジ5に搭載されたリボンカセットに巻回されたリボンを介して記録紙の印刷表面に当接させるとともに、サーマルヘッド7のすべての発熱体に対し通電を行う本加熱を行ないながら前記キャリッジを1印刷行分走査させ、前記印刷表面の付着インクを再溶融させる光沢仕上げを施す(ステップST6)。このとき、前本加熱のための通電は、サーマルヘッド7の裏面温度が40℃〜60℃の範囲、好ましくは46℃〜50℃の範囲内となるように調整した通電とする。
【0041】
このように、本実施形態の光沢仕上げ方法においては、サーマルヘッド7の温度管理をすることにより、サーマルヘッド7の必要以上の加熱や蓄熱によって、再溶融領域ではない領域に対して誤って光沢仕上げを施してしまい、光沢むらや印刷汚れを発生させるということを防止することができる。
【0042】
続いて、記憶データから、直前の光沢仕上げを施した印刷行が最終行であるか否かを判断し(ステップST7)、最終行であった場合には光沢仕上げを終了させる。
【0043】
また、最終行でない場合には、再びステップST1に戻り、前述と同様に次の光沢仕上げのための予備加熱を経て光沢仕上げを施し、また、印刷最終行であるか否かの判断を行う。この一連の工程を印刷行回数だけ繰り返し行って光沢仕上げを完了させる。
【0044】
このように、本実施形態の光沢仕上げ方法によれば、ステップST1乃至ステップST5までの工程において予備加熱を施し、サーマルヘッド4の裏面温度を適正温度とした後にステップST6において本加熱を行うことができるので、光沢にむらの無い、高品質な光沢画像を得ることができ、また、予備加熱時間を環境温度に関わりなく一定時間とすることができるので、使用者に、予備加熱時間が普段よりも長いあるいは短いと感じさせることがなく、使用感を良好にすることができる。また、環境温度と環境基準温度との差により、通電のパルス長を調整することにより、予備加熱の所要時間も短くすることができる。
【0045】
なお、前述の光沢仕上げ方法においては、カラーインクを塗布したリボンとは別に用意した、PET等からなる光沢仕上げ用のフィルムリボンのみを巻回したものを用い、シアン、マゼンタ、イエローと、必要に応じてはブラックのインクを用いて所望の印刷を最終行まで完了した状態で、光沢仕上げを後から施す場合(図4に示す印刷開始から光沢仕上げ完了までのフローチャート参照)をもって説明したが、本発明の光沢仕上げ方法は、シアン、マゼンタ、イエローと、必要に応じてブラックのインクが塗布された部分が順に繰り返し形成されている、いわゆるだんだらリボンの最上位に重ねられるインクの次位に前記光沢仕上げ用のリボン部分を形成したものを用いて、印刷と光沢仕上げとを各行毎に行う場合(図5に示す印刷開始から光沢仕上げまでのフローチャート参照)にも適用可能である。その場合の光沢仕上げは、図2に示すフローチャートのステップST6において、最終行か否かの判断をし、最終行でない場合には、図5に示すフローチャートの最初のステップである、シアンインクを用いたライン印刷の直前に戻ることとなる。
【0046】
さらに、ブラック単色の印刷に対して光沢仕上げを施すことも可能であり、その場合の光沢仕上げは、すべての印刷行の印刷を完了した後に、光沢仕上げを施すことも可能であるし、前述のように行毎の印刷の後に光沢仕上げを施すことも可能である。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る光沢仕上げ方法は、光沢感にむらのない高品質な印刷を提供することができ、使用者の使用感を高めることができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光沢仕上げ方法に用いるプリンタの一実施形態を示す斜視図
【図2】 本発明の光沢仕上げ方法を示すフローチャート
【図3】 図2のプリヒートに関するサブルーチンのフローチャート
【図4】 印刷工程と本発明の光沢仕上げ方法を実施する工程との関係を示すフローチャート
【図5】 印刷工程と本発明の光沢仕上げ方法を実施する工程との関係を示す別のフローチャート
Claims (2)
- プリンタにより、印刷情報に基づく印刷を施した後、前記プリンタのサーマルヘッドの温度をサーミスタにより検出し、前記サーマルヘッドの裏面の温度が所望の予備加熱温度範囲の下限より低い場合には、前記サーマルヘッドの発熱部に通電することにより前記サーマルヘッドの裏面の温度を所望の加熱温度とする加熱を行い、前記サーマルヘッドの温度が所望の予備加熱温度範囲の上限より高い場合には前記サーマルヘッドの蓄熱を放熱させる温度調整を行う予備加熱を行った後、前記サーマルヘッドの全発熱体に通電することにより前記サーマルヘッドの温度を所望の本加熱温度とする本加熱を行いながら、前記サーマルヘッドを前記フィルムリボンを介して印刷情報の印刷表面に当接させて前記印刷表面のインクを再溶融させる一連の工程を行い、印刷に光沢仕上げを施す光沢仕上げ方法であって、
前記予備加熱は、プリンタに配設したサーミスタにより検出したプリンタの環境温度と予め入力した環境基準温度との差により通電パルス長を調整することによる1乃至複数回の加熱動作、あるいは前記サーマルヘッドを放熱部材に対して接触させることによる冷却動作の少なくともどちらか一方の動作を一定時間行なって所望の予備加熱温度を得るようにしたことを特徴とする光沢仕上げ方法。 - 所望の印刷情報のすべての印刷が完了した印刷表面に対し、光沢仕上げを施すことを特徴とする請求項1に記載の光沢仕上げ方法。
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