JP3776579B2 - スタッドレスタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、氷上性能と耐摩耗性能とをともに向上しうるスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
スパイクタイヤが、路面の損傷及び粉塵公害を防止するために使用が禁止されて以来、積雪地帯においては、いわゆるスタッドレスタイヤが広く普及しつつある。特に近年では、低温環境下においても柔軟なトレッドゴム材料の開発や、サイピングを設けたブロックパターンの採用などにより、スタッドレスタイヤの雪上走行性能は格段に向上しているが、依然として氷上走行性能に関しては、スパイクタイヤに劣る。
【0003】
本発明者らは、サイピングの改善によりスタッドレスタイヤの氷上性能を向上するべく、同一パターンのスタッドレスタイヤにおいて、サイピングの溝巾のみを種々変化させて氷上走行テストを行った。代表的な結果として、サイピングの溝巾を0.4mmとしたタイヤの氷上ロック摩擦係数とブロック1mm当たりの耐摩耗性を、それぞれ100とする指数で表した場合、サイピングの溝巾を0.3mmに狭めたタイヤでは、氷上ロック摩擦係数は指数92、耐摩耗性は指数130となった。これらの結果から、サイピングの溝巾を相対的に大きくしていくと氷上走行性能が向上し、逆に小さくしていくと耐摩耗性能が向上するとの知見を得た。
【0004】
本発明者らは、これらの相反する氷上性能と耐摩耗性能とを両立すべく鋭意研究を重ねたところ、従来のスタッドレスタイヤのサイピングは溝巾が全て一定巾で形成されていることに着目し、1本のサイピング中に異なる溝巾部分を種々設けてさらに実験を重ねたところ、主としてサイピングの中間部分の溝巾が耐摩耗性能に強く影響しているとの知見を得た。そして、このサイピングの中間部分の溝巾をその両側に位置するサイピングの端部分の溝巾に比して小さくすることにより、相反する氷上性能と耐摩耗性能とを高い次元で向上しうることを見出したのである。
【0005】
以上のように本発明は、氷上性能と耐摩耗性能とを高い次元において両立させうるスタッドレスタイヤを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち、請求項1記載の発明は、スタッドレスタイヤであって、トレッド面に複数のブロックが区画形成されるとともに、該ブロックの両側縁側の端部分と端部分間の中間部分とを有しかつ該ブロックの両側縁間を連ねてタイヤ周方向と交わる向きにのびるサイピングを形成したサイピング入りブロックを含み、
前記中間部分のサイピングの溝巾a1は、前記端部分のサイピングの溝巾a2よりも小であり、かつ下記式を満足するとともに、
中間部分の深さはブロック高さBHの0.5〜1.2倍、
しかも前記端部分は、ブロック側縁から一定の深さd1をなす一定深さ部を具えるとともに、この一定深さ部の深さd1を、前記ブロック高さBHの0.05〜0.3倍としたことを特徴とする。
0.3(mm)≦a1(mm)≦0.8×a2(mm)
ただし、a2(mm)≦1.0(mm)
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記中間部分は、サイピングの全長さLの1/3倍以上かつ3/5倍以下の長さかつサイピング全長さLの中央部に位置するとともに、
サイピングは波状、ジグザグ状又は波状に屈曲させた折り曲がり部により前記中間部分を形成したことを特徴とす前記中間部分は、サイピングの全長さLの1/3倍以上かつ3/5倍以下の長さかつサイピング全長さLの中央部に位置することを特徴とする。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記サイピングは、前記一定深さ部の軸方向内側から前記サイピングの中間部分の深さd2まで深さを漸増する漸増深さ部を具えることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、乗用車用スタッドレスタイヤのトレッドパターンを例示している。トレッド面2には、本例ではタイヤ周方向にのびる複数本の縦溝3…と、この縦溝3に交わる向きにのびる横溝4とを設け、略平行四辺形状をなす複数のブロック5…を区画形成したブロックパターンが形成されている。
【0010】
前記縦溝3は、本例では、タイヤ赤道Cの両側に配されかつタイヤ軸方向の左右に屈曲しつつタイヤ周方向にのびる中央縦溝3a、3aと、この中央縦溝3a、3aのタイヤ軸方向外側で略ストレート状でのびる外縦溝3b、3bとを含み、合計4本設けられたものを例示している。
【0011】
また、前記横溝4は、本例では、前記中央縦溝3a、3a間を継ぐ中央横溝4aと、中央縦溝3aと外縦溝3b間を継ぐ中間横溝4bと、外縦溝3bからトレッド縁Eに向けてのびるショルダー横溝4cとを含む。
【0012】
各横溝4は、例えばタイヤ軸方向に対し小角度で傾斜することによって、ブロック5のエッジ成分の剛性を低下させずに有効に増加させることができ、これによって排雪性を十分に確保して雪上でのグリップ性能を高めている。前記小角度としては、例えば5〜30°、好ましくは5〜20°、より好ましくは5〜15°とするのが良い。
【0013】
また、本例では、中央横溝4aと中間横溝4bとの傾き方向を、互いに逆方向にすることによって、雪柱剪断力及び排雪時の力のバランスを保つことができるから、雪道での直進走行性能が高く確保される。
【0014】
なお、これらの縦溝3、横溝4は、例示の他、波状或いはジグザグ状に屈曲するものなど種々の形状を含み、タイヤに正規内圧を充填した時に、トレッド表面にて測定した溝巾が、好ましくは5mm以上とするのが望ましく、また、溝深さも例えば5mm以上確保することが望ましい。
【0015】
また前記ブロック5は、該ブロック5の両側縁e、e間(なおブロックの側縁eは、トレッド縁E又は縦溝によって形成される)を連ねてタイヤ周方向と交わる向きにのびるサイピング6を形成したサイピング入りブロック5a〜5dを含む。本例では全てのブロックが、サイピング入りブロックとなり、またサイピング6がタイヤ軸方向にのびるとともに、各ブロック当たり、サイピング6の本数は2本以上、本例では3〜4本形成しているものを示す。
【0016】
このようなサイピング6を設けることにより、例えば制動時の状態を図4に示すように、接地部において、ブロック5は制動力によりブロック倒れを起こすが、このサイピング6によって分割されたブロック小片5A、5B、5C、5Dにも倒れ込みが生じ、そのエッジにより、氷路面とトレッド表面の圧力により融け出た水分を排出できかつサイピング6内に毛細管現象により吸い上げでき、氷路でのグリップ性能を向上させうる。
【0017】
前記サイピング6は、図2に拡大して示すように、ブロック5の両側縁e、e側の端部分6e、6eと端部分6e、6e間の中間部分6cとを有し、この中間部分6cのサイピングの溝巾a1を、前記端部分6eのサイピングの溝巾a2よりも小とすることを特徴の一つとしている。
【0018】
本発明者らの種々の実験の結果、相反する氷上性能と耐摩耗性能とを高い次元で向上させるためには、さらに前記中間部分6cのサイピングの溝巾a1と端部分6eのサイピングの溝巾a2とは、下記の関係を満たすことが必要であることが判明した。
0.3(mm)≦a1(mm)≦0.8×a2(mm)
ただし、a2(mm)≦1.0(mm)
【0019】
すなわち、製造上の理由やブロックの剛性の低下を防止する観点から前記中間部分6cのサイピングの溝巾a1は0.3mm以上、前記端部分6eのサイピングの溝巾a2を1.0mm以下に制限することを前提とし、前記中間部分6cのサイピングの溝巾a1は、端部分6eのサイピングの溝巾a2の0.8倍以下の小巾とすることが望ましいのである。
【0020】
このようにしてサイピング6の溝巾を規定することにより、前記サイピングの中間部分6cと端部分6eとの協働作用によって相反する氷上性能と耐摩耗性能とを高い次元で向上することが可能となる。
【0021】
また前記サイピング6の中間部分6cは、サイピングの全長さLの1/4倍以上かつ4/5倍以下、より好ましくは1/3倍以上かつ3/5倍以下の長さLcを有し、しかもこのサイピング全長さLの中央部に位置するものを示す。
【0022】
前記サイピング6の中間部分6cの長さLcが、サイピング6の全長さLの1/3倍未満であるとき、耐摩耗性の効果が相対的に低下する傾向があり、逆に3/5倍を超えると、氷上性能が低下する傾向が促進される。このような観点より、サイピング6の中間部分6cの長さLcを設定するのが良い。
【0023】
なおサイピングの全長さLは、図2に示したように、途中に波状部などを有する場合でも、サイピングの両開口を結ぶ直線と平行に測定する。また前記中間部分6c、端部分6eの長さについても、これと同様に測定する。またサイピング6の溝巾a1、a2は、図2に示すように測定位置において、サイピング6ののびる向きと直交して測定する。これらの測定は、いずれもタイヤをリム組みして使用内圧を充填して行われる。
【0024】
また前記サイピング6は、ジグザグ又は波状にトレッド面で向き変えしつつのびる折り曲がり部7を有することが望ましい。本例では、図1、図2に示す如く、サイピング6は波状、より具体的には正弦波状に屈曲させた折り曲がり部7を、前記溝巾a1を端部分6eに比して相対的に小とした中間部分6cに設けることにより、サイピング6の本数を著しく増加させることなくこの中間部分6cにおいて実質的にサイピング6のエッジ成分を増加させ、耐摩耗性を向上しながらも氷上性能の低下をも防止している。このように、サイピング6は波状、ジグザグ状又は波状に屈曲させた折り曲がり部7により前記中間部分6cを形成している。
【0025】
前記折り曲がり部7は、例えば波長(W)が2〜15mmであり、かつこの波長(W)と振幅(h)との比(h/W)が、0.2〜0.75の1.0周期以上の長さを有することが好ましい。これにより、氷上コーナリング時など、サイピング6の折り曲がり部7が互いに噛み合いブロックの軸方向剛性を高め、氷上での旋回性能を向上するのに役立つ。
【0026】
また本例では、タイヤ赤道C上に配されたブロック5aと、その両隣のブロック5bに施されたサイピング6は、約2周期の折り曲がり部7を有する。また、最もトレッド縁Eに近いブロック5cに施されたサイピング6は、それよりも大、本例では約2.5周期の折り曲がり部7を有している。
【0027】
一般に、車両旋回時には、トレッド部2のショルダ部側において特に大きな横力が作用するため、本例の如く、トレッドクラウン部分に配されたブロック5a、5bよりも、ショルダ部側に配されたブロック5cにおいて、サイピングの折り曲がり部7の周期を大きくすることによりショルダ部でのブロック横剛性をクラウン部に比して高めることができ、さらに氷上旋回性能などを高めうる。
【0028】
次に、図3にはブロック5の周方向断面図を示す。サイピング6は、この例では、ブロック5の表面からほぼ垂直に形成される。また、サイピング6は、ブロック5の表面側からから溝底側に向けて均一巾となるものを示す。
【0029】
図6に示すように、サイピング6は、その中間部分6cの深さd2を一定、例えば前記ブロック高さBHの0.5〜1.2倍として形成している。他方、サイピング6の端部分6e、6eは、ブロック側縁eから一定の深さd1をなす一定深さ部11と、この一定深さ部11の軸方向内側から前記サイピングの中間部分6cの深さd2まで深さを漸増する漸増深さ部10とを具える。
【0030】
前記一定深さ部11の深さd1は、前記ブロック高さBHの0.05〜0.3倍、好ましくは0.1〜0.3倍とするのが望ましく、本例では約0.1倍としているものを示す。サイピング深さをこのように形成した場合には、ブロックの端部分の剛性低下を効果的に防止しつつサイピングのエッジ効果を発揮できる。また、サイピングの溝巾が相対的に小となる中間部分6cを一定深さとすることにより、この中間部分6cの溝底での応力集中を防止でき、ブロックの耐久性が増す点で好ましい。なお、サイピングの端部分6eは、漸増深さ部10のみから構成しても良い。
【0031】
以上詳述したが、本発明は、種々の形状のブロックに採用できるのは言うまでもなく、又トレッドパターンの一部にリブ等を含むものにも採用しうる。さらには、サイピングの折り曲がり部は、前記実施形態で示した正弦波状のもの以外にも図5(a)、(b)に示すようなZ字状やジグザグ状など種々の態様で構成しうる。
【0032】
【実施例】
タイヤサイズが175/80R14(リム14−5 1/2JJ、内圧200KPa)であり、かつ図1のトレッドパターンを有し、表1の仕様にて種々のタイヤ(実施例1〜8)を試作するとともに、氷上での制動テストと、乾燥舗装路での耐摩耗テストとを行った。また、同一のパターンでサイピングの溝巾が全て一定である従来タイヤ(従来例)についても併せて試作し性能を比較した。
テストの内容は次の通りである。
【0033】
<氷上性能>
試供タイヤをテスト車両に装着し、気温0℃の環境下の氷路で、速度15km/hからフルロックの急制動をかけて制動距離を調べるとともに、その逆数を、従来例を100とする指数で表示している。数値が大きいほど制動距離が短く氷上性能に優れる。
【0034】
<耐摩耗性能>
試供タイヤで乾燥舗装路疑似表面を有するテストドラムを走行させ、摩耗1mm当たりの走行距離を調べ、従来例を100とする指数で表示している。た。数値が大きいほど摩耗1mm当たりの走行距離が長く耐摩耗性に優れている。
テストの結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
テストの結果、実施例は、良好な氷上性能と耐摩耗性能とを両立していることが確認できた。特に、サイピングの中間部分の長さLcをサイピングの全長さLの1/3〜3/5倍としたものは特に良性の内側をバランス良く向上していることが解る。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明では、サイピングの中間部分のの溝巾a1をその両側に位置するサイピングの端部分の溝巾a2に比して一定範囲で小さくすることにより、相反する氷上性能と耐摩耗性能とを高い次元で向上しうる。
【0038】
また請求項2記載の発明では、前記サイピングの全長さLに占めるサイピングの中間部分の長さLcを限定したことにより、さらに高い次元で氷上性能と耐摩耗性能とをともに向上しうる。
【0039】
また請求項2記載の発明では、前記サイピングは、ジグザグ又は波状にトレッド面で向き変えしつつのびる折り曲がり部を有することにより、サイピングの本数を著しく増加させることなくこの折り曲がり部により実質的にサイピングのエッジ成分を増加させ、耐摩耗性を向上しながらも氷上性能の低下をも防止している。また折り曲がり部は、氷上コーナリング時などの横力作用時において、互いに噛み合いブロックの軸方向剛性を高め、氷上での旋回性能を向上するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すトレッドパターン図である。
【図2】そのブロックの詳細を示す平面図である。
【図3】そのブロックの詳細を示す断面図である。
【図4】接動時のブロックの挙動を示す模式図である。
【図5】折り曲がり部の他の例を示す平面図である。
【図6】サイピングの深さを説明する他の例を示す線図である。
【符号の説明】
2 トレッド面
3 縦溝
4 横溝
5 ブロック
6 サイピング
7 折り曲がり部
a1 サイピングの中間部分の溝巾
a2 サイピングの端部分の溝巾
L サイピングの全長さ
Lc サイピングの中間部分の長さ
Claims (3)
- トレッド面に複数のブロックが区画形成されるとともに、該ブロックの両側縁側の端部分と端部分間の中間部分とを有しかつ該ブロックの両側縁間を連ねてタイヤ周方向と交わる向きにのびるサイピングを形成したサイピング入りブロックを含み、
前記中間部分のサイピングの溝巾a1は、前記端部分のサイピングの溝巾a2よりも小であり、かつ下記式を満足するとともに、
中間部分の深さはブロック高さBHの0.5〜1.2倍、
しかも前記端部分は、ブロック側縁から一定の深さd1をなす一定深さ部を具えるとともに、この一定深さ部の深さd1を、前記ブロック高さBHの0.05〜0.3倍としたことを特徴とするスタッドレスタイヤ。
0.3(mm)≦a1(mm)≦0.8×a2(mm)
ただし、a2(mm)≦1.0(mm) - 前記中間部分は、サイピングの全長さLの1/3倍以上かつ3/5倍以下の長さかつサイピング全長さLの中央部に位置するとともに、
サイピングは波状、ジグザグ状又は波状に屈曲させた折り曲がり部により前記中間部分を形成したことを特徴とする請求項1記載のスタッドレスタイヤ。 - 前記サイピングは、前記一定深さ部の軸方向内側から前記サイピングの中間部分の深さd2まで深さを漸増する漸増深さ部を具えることを特徴とする請求項1又は2記載のスタッドレスタイヤ。
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