JP3774789B2 - 3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法 - Google Patents

3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族エーテル類、芳香族エーテルイミド類等各種ポリマーの原料として有用な3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を生産効率良く製造する方法、特に連続反応プロセスを可能とする3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類、特にフェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとの反応生成物である1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに関しては、その製法に関し、ビスフェノール類の一般的な製造方法である、酸類とチオール類を併用してフェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンを反応させる処方を基本とした製造方法が数種知られている。
【0003】
たとえば特開平2−88634号公報には、塩化水素ガスおよびアルキルメルカプタン類からなる触媒の存在下に、フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとのモル比(フェノール/3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン)を6/1にして、フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを反応させた後、反応液から未反応フェノールを水蒸気蒸留で除去し、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを得る製造方法が開示されている。
【0004】
また、特表平8−505644号公報には、反応触媒として塩酸とオクタンチオール等のアルカンチオールとからなる混合触媒の存在下に、フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを反応させてフェノールとの付加物の形で1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを含有する反応混合物を調製し、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを得る製造方法が開示されている。
【0005】
また、特表平9−507250号公報には、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとジオール類もしくはメルカプトアルコール類とから合成できるケタールまたはチオケタールをフェノールと反応させることにより、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを得る製造方法が開示されている。
【0006】
さらに、特開平5−213803号公報および特開平4−282334号公報には、スルホン酸基を含有する無水の不溶性カチオン交換樹脂(酸性の、無水縮合触媒)およびβ- メルカプトプロピオン酸等の共触媒の存在下に、シクロヘキサノン類とフェノール類とを反応させて置換シクロヘキシリデンビスフェノール類を得る連続プロセスに適用可能な製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンを原料とした場合には、反応が非常に遅く(反応開始から24時間後におけるケトンの転化率=55%(特開平4−282334号公報に記載の【比較例】c)))、しかも、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの選択率も低い(選択率72%(特開平5−213803号公報に記載の実施例6))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
連続反応プロセスは、工業生産において生産効率を上げる大きな手段であり、その要求条件の一つとして反応液が連続的に液送できるものであることが挙げられる。
【0009】
しかしながら、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類、特に1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンは、反応が進むと反応液粘度が異常に高くなる性質を備えているため、前記公報に記載されている従来の製造方法では、反応収率が高くなる条件では反応液を連続液送することが困難であるか、または連続液送は可能であるが、反応速度が非常に遅く選択率も低いものである。
【0010】
したがって、反応液の粘度上昇を抑制することができ、かつ、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類が高収率で得られる、バッチプロセスでの生産効率向上のみならず、連続反応プロセスにも適用可能な3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法の出現が望まれている。
【0011】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、反応液の粘度上昇を抑制することができ、かつ、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類が高収率で得られる、バッチプロセスでの生産効率向上のみならず、連続反応プロセスにも適用可能な3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】
本発明に係る3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法は、
フェノール類と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを、酸触媒の存在下に反応させて3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を製造する方法において、
酸触媒の存在下に、下記一般式[I]
【0013】
【化3】
Figure 0003774789
【0014】
[式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であって、R1 およびR2 が共に炭素原子数4のアルキル基であることはない。]
で表わされるフェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)をモル比((A)/(B))で3〜7になる量にして、該フェノール類(A)と該3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)とを反応(前反応)させ、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後、前記フェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)を追加して後反応を行なうことを特徴としている。
【0015】
本発明の目的物である3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類は、下記一般式[II]で表わされる。
【0016】
【化4】
Figure 0003774789
【0017】
[式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であって、R1 およびR2 が共に炭素原子数4のアルキル基であることはない。]
【0018】
前記前反応は、フェノール類(A)またはフェノール類(A)と芳香族炭化水素類(C)との混合液と、水、および酸触媒を含む系に、反応温度15〜40℃において、前記フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液、またはフェノール類(A)と芳香族炭化水素類(C)と、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液を滴下して行なわれることが好ましく、また、前記後反応は、前反応により得られた反応液に、前記フェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)を一括あるいは分割して添加して行なわれることが好ましい。
【0019】
前記後反応を行なうに際して、前反応により得られた反応液に添加される前記フェノール類(A)の添加量は、前反応および後反応でのフェノール類(A)の添加総量が3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の添加量に対し、モル比((A)/(B))で5〜10となる量であることが好ましく、また、後反応を行なうに際して、前反応により得られた反応液に添加される前記芳香族炭化水素類(C)の添加量は、前反応により得られた反応液量に対し10〜30重量%であることが好ましい。
【0020】
前記酸触媒としては、鉱酸類(a1)とチオール類(a2)とからなる混合触媒であって、鉱酸類(a1)が塩化水素ガスであり、チオール類(a2)が炭素原子数1〜12のアルキルメルカプタンであることが望ましい。
【0021】
前記フェノール類(B)としては、フェノールが望ましい。
【0022】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法について具体的に説明する。
【0023】
本発明に係る3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法では、酸触媒の存在下に、フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)とを反応(前反応)させ、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後、前記フェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)を追加して後反応を行なう。
酸触媒
本発明で用いられる酸触媒は、少なくとも鉱酸類(a1)からなる触媒である。
【0024】
このような鉱酸類(a1)としては、具体的には、濃塩酸、塩化水素ガス、60〜98%硫酸、85%燐酸、メタンスルホン酸等が適しており、これらの内の1種もしくは2種以上の混合物として使用するのが好ましい。特に好ましい鉱酸類(a1)は、塩化水素ガスであり、反応系内の空気を窒素ガス等の不活性ガスで置換した後、反応系内が飽和となるように塩化水素ガスを連続的に吹き込むのが好ましい。
【0025】
また、鉱酸類(a1)のみからなる触媒でも、フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)とを反応させることができるが、フェノール類(A)の種類によっては、鉱酸類(a1)とチオール類(a2)とを併用することが好ましい。
【0026】
本発明で用いられるチオール類(a2)は、炭素原子数1〜12のアルキルメルカプタン類であり、たとえばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ラウリルメルカプタン等が好ましく用いられる。
【0027】
このようなチオール類(a2)と鉱酸類(a1)との混合物からなる触媒(混合触媒)を用いることによって、フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との反応を加速することができる。
【0028】
チオール類(a2)の添加量については特に限定しないが、通常、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)に対し1〜30モル%が好ましい。
フェノール類(A)
本発明で用いられるフェノール類(A)は、下記一般式[I]で表わされる。
【0029】
【化5】
Figure 0003774789
【0030】
一般式[I]において、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であって、R1 およびR2 が共に炭素原子数4のアルキル基であることはない。
【0031】
1 およびR2 の炭素原子数1〜4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基が挙げられる。
【0032】
上記一般式[I]で表わされるフェノール類としては、具体的には、
フェノール;
o-クレゾール、2-エチルフェノール、2-n-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、2-n-ブチルフェノール、2-イソブチルフェノール、2-s-ブチルフェノール、2-t-ブチルフェノール等の2-アルキルフェノール類;
2,6-キシレノール、2-メチル-6- エチルフェノール、2-メチル-6- イソプロピルフェノール、2-メチル-6- イソブチルフェノール、2-メチル-t- ブチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-エチル-6- イソプロピルフェノール、2-エチル-6- イソブチルフェノール、2-エチル-t- ブチルフェノール、2,6-ジ-n- プロピルフェノール、2-n-プロピル-6- イソプロピルフェノール、2-n-プロピル-6- イソブチルフェノール、2-n-プロピル-t- ブチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-イソプロピル-6- イソブチルフェノール、2-イソプロピル-t- ブチルフェノール等の2,6-ジアルキルフェノール類が挙げられる。中でも、特に、40℃以下での反応液がスラリー状となるフェノール、2,6-キシレノールが好ましい。
【0033】
酸触媒を形成する鉱酸類(a1)として塩化水素ガスを用いる場合、前反応の工程で使用するフェノール類(A)の凝固点を下げるとともに、塩化水素ガスの吸収を良くして反応速度を速めるために、少量たとえばフェノール類(A)に対して3〜20重量%の水をフェノール類(A)に添加することが好ましい。また、原料として使用するフェノール類(A)が水に対する溶解性が低く、かつ、凝固点が40℃以上のフェノール類の場合には、このフェノール類は、後述する芳香族炭化水素類(C)との混合液として使用するのが好ましい。
【0034】
前反応の工程において、フェノール類(A)は、通常、反応系内に塩化水素ガスを吹き込む前に、水(または後述の芳香族炭化水素類(C))および必要に応じチオール類(a2)とともに加えられ、また、反応系内に塩化水素ガスを吹き込んだ後、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液として滴下され、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)と反応する。
【0035】
前反応の工程におけるフェノール類(A)の添加量は、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の添加量に対するモル比((A)/(B))で3〜7、好ましくは4〜6になる量である。
【0036】
また、前反応においては、芳香族炭化水素類(C)を添加してもよい。芳香族炭化水素類(C)の添加量は反応液中に10重量%以下であることが望ましい。
次に、後反応工程として、フェノール類(A)は、前反応で3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後に、この反応液に単独で添加することができるし、また芳香族炭化水素類(C)とともに添加することができる。さらに、フェノール類(A)の代わりに芳香族炭化水素類(C)のみを添加することもできる。
【0037】
3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後に添加するフェノール類(A)の添加量は、フェノール類(A)の添加総量[前反応を行なう際に仕込んだフェノール類(A)、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液として反応液に滴下したフェノール類(A)、および3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後に添加するフェノール類(A)よりなる]が、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)に対し5〜10モル倍となる量、好ましくは6〜8モル倍となる量が望ましい。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後に添加するフェノール類(A)の添加量を上記範囲内の量にすると、反応液の粘度上昇を抑制することができるため操作性が良好で、しかも、目的物である3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を高収率で得ることができる。ここに、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(C;TMC)の反応率(%)は、次の式により定義される。
【0038】
TMCの反応率(%)={(TMCの仕込量−未反応TMC量)/TMCの
仕込量}×100
また、後反応の反応系に、芳香族炭化水素類(C)を添加する場合、その芳香族炭化水素類(C)の添加量は、前反応により得られた反応液量に対して10〜30重量%であることが望ましい。
【0039】
上記後反応でのフェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)の添加時期は、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後であり、未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)が多い状態でフェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)を添加すると、反応速度および目的物の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の収率が低下する。また、フェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)の添加時期が遅過ぎると、反応液の粘度が高くなる。
【0040】
また、後反応時に添加するフェノール類(A)の添加方法については、後反応開始時に一括して添加してもよいが、後反応開始時と後反応中に分割添加する方がよい。後反応で添加するフェノール類(A)を分割添加する場合であって、フェノール類(A)がフェノールの場合、フェノールは、上記フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液を滴下終了後、後反応を開始してから1時間以内に添加することが好ましく、特に後反応開始後30分以内に添加することが好ましい。
3,3,5- トリメチルシクロヘキサノン(B)
本発明で用いられる3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)は、下記の式で表わされる。
【0041】
【化6】
Figure 0003774789
【0042】
3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)は、少なくとも酸触媒が存在する反応系に、単独で、あるいはフェノール類(A)との混合液として滴下することができる。本発明では、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)は、フェノール類(A)との混合液、またはフェノール類(A)および芳香族炭化水素類(C)との混合液として用いることが好ましい。このような滴下により、フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との反応(前反応)が開始される。
【0043】
3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の添加量は、前反応の工程におけるフェノール類(A)の添加量とのモル比((A)/(B))で3〜7、好ましくは4〜6になる量である。
芳香族炭化水素類(C)
本発明で前反応および/または後反応の反応系に添加される芳香族炭化水素類(C)としては、具体的には、トルエン、キシレン類、メシチレン、プソイドクメン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン類等のアルキルベンゼン類が挙げられる。これらの芳香族炭化水素類は、1種単独、または2種の混合物が好ましい。中でも、特にトルエン、キシレン、メシチレン等のメチルベンゼン類が好ましい。
【0044】
また、これらの芳香族炭化水素類(C)は、目的物の分離精製の際に溶剤として好適に用いることができる。
フェノール類(A)の項で上述したように、前反応および/または後反応の反応系に、芳香族炭化水素類(C)を添加する場合には、芳香族炭化水素類(C)の添加量は前反応の反応液中に10重量%以下の量が好ましく、後反応における添加量は、前反応により得られた反応液量に対して10〜30重量%の範囲であることが望ましい。芳香族炭化水素類(C)を上記条件を満たす量で滴下ないし添加すると、反応液の粘度上昇を抑制することができ、しかも、反応速度を低下させことなく、目的物である3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を高収率で得ることができる。
【0045】
後反応時に添加する芳香族炭化水素類(C)の添加方法については、後反応開始時に一括して添加してもよいが、後反応開始時と後反応中に分割添加する方がよい。
反応条件
本発明における前反応および後反応における反応温度は、通常15〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲内であることが望ましい。本発明では、反応温度も非常に重要であり、反応温度が低過ぎると反応液の粘度が極端に高くなって攪拌ができなくなり、また、反応温度が高過ぎると副生物の生成量が増加し、目的物の収率低下を招く。反応温度が15〜40℃の範囲内であれば、反応液の攪拌が可能で、しかも目的物を高収率で得ることができる。
【0046】
前反応および後反応は、通常、大気圧下で行なわれるが、大気圧以上の下でも、あるいは減圧下でも所望の圧力を採用することができる。
上記のような反応条件で前反応および後反応を行なうと、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類−フェノール類(A)アダクトを含む反応液が得られる。この反応液中の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の存在収率は、添加した3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)に対し、85モル%以上、通常は87〜92モル%である。
3,3,5- トリメチルシクロへキシリデンビスフェノール類
本発明では、上記のような前反応および後反応を行なうことにより、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類−フェノール類(A)アダクトを含む反応液が得られる。このアダクトを形成している本発明の目的物である3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類は、次の一般式[II]により表わされる。
【0047】
【化7】
Figure 0003774789
【0048】
一般式[II]において、R1 およびR2 は、それぞれ上記一般式[I]におけるR1 、R2 と同じであり、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であって、R1 およびR2 が共に炭素原子数4のアルキル基であることはない。
【0049】
一般式[II]で表わされる3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の具体例としては、
1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-メチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-エチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-n-プロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-イソプロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-n-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-イソブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-s-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-t-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-メチル-5- エチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-メチル-5- イソプロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-メチル-5- イソブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-メチル-5-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3,5-ジエチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-エチル-5- イソプロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-エチル-5- イソブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3,5-ジ-n- プロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-n-プロピル-5- イソプロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-n-プロピル-5- イソブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-n-プロピル-5-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3,5-ジイソプロピル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-イソプロピル-5- イソブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス-(3-イソプロピル-5-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン
などが挙げられる。
精 製
上記の前反応および後反応により得られた3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類−フェノール類(A)アダクトを含む反応液から、本発明の目的物である3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の精製は、たとえば次のようにして行なうことができる。
【0050】
先ず、反応終了液をカセイソーダ等のアルカリ水溶液で中和する。その後、未反応フェノール類(A)を減圧蒸留で回収した後、芳香族炭化水素類(C)、もしくはアルコール類と水との混合溶剤等を使用して再結晶し、ろ過および乾燥して目的物を得ることができる。
【0051】
また、目的物が原料フェノール類(A)とアダクトを形成するものについては、中和液からアダクトを結晶としてろ過分離し、さらにそのアダクト結晶を芳香族炭化水素類(C)、もしくはアルコール類と水との混合溶剤等を使用して再結晶し、ろ過および乾燥してフェノール類(A)を殆ど含有しない高純度の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を得ることができる。
【0052】
上記のようにして精製された3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の単離収率は、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(B)に対し、70モル%以上、通常は70〜75モル%である。ただし、再結晶ろ液を繰り返し使用すれば、上記収率よりさらに5〜10%程度の収率向上が見込める。
【0053】
ところで、本発明の目的物が1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5- トリメチルシクロヘキサンの場合、「従来技術」の項で上述した先行文献(公報)に記載されている従来の製造方法では、反応収率が高くなる条件でフェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを反応させると(フェノールの追添加なし)、反応液の粘度が異常に高くなるため、反応液を連続移送することができなくなる(本願比較例3)。また、反応系にフェノールの添加量(モル比大)を多くしたり(本願比較例2)、あるいは反応温度を高くしたり(本願比較例1)、あるいは希釈溶剤を添加すると(本願比較例4)、反応液の粘度は下がるものの、副生物が多くなり目的物の1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5- トリメチルシクロヘキサンの収率が極度に低下する。さらには、触媒としてイオン交換樹脂を使用すると、反応液粘度は上昇しないものの、目的物の収率が低くなる(本願比較例5)。
【0054】
これに対し、本発明に係る3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法では、原料であるフェノール類(A)を前反応と後反応の両反応系に分割して添加する方法、または前反応系にフェノール類(A)を添加し、かつ後反応系に芳香族炭化水素類(C)を添加する方法を採用することによって、本願比較例と同一の原料添加量でも反応液の粘度が低下し、目的物の収率が向上する。この理由は定かでないが、反応で生成してくる1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが未反応のフェノールとの付加物を形成するに際して、1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに対するフェノールの付加モル数が変化する、すなわちフェノールの付加モル数が少なくなるためではないかと考えられる。
【0055】
【発明の効果】
本発明に係る3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法によれば、反応液の粘度上昇を抑制することができ、かつ、目的物の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を高収率で得ることができるため、バッチプロセスでの生産効率向上のみならず、従来困難と思われていた連続反応プロセスにも適用可能である。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
なお、反応の追跡は、ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)により、未反応3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の残存量を分析し、液体クロマトグラフィー(HPLC分析)により、反応によって生成した目的物の残存量を定量した。
【0058】
以下の実施例および比較例において目的物の存在収率は、原料3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)に対するモル%で示す。
【0059】
【実施例1】
攪拌機、トルクメーター、温度計、滴下ろ斗および還流コンデンサーを備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール62.5g(0.665モル)、水7.6gおよびオクチルメルカプタン4.2gを仕込み、内温を20〜30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0060】
内温を25〜30℃に保持しつつ、フェノール78.5g(0.835モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン42.0g(0.300モル)との混合液を3時間で滴下反応した。滴下反応前の溶液状態での攪拌機のトルクは、1.2kg/cmであり、滴下反応終了時点のスラリー状態での攪拌機のトルクは、2.5kg/cmであった。また、滴下反応終了時点での3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの転化率は97.4モル%であった。
【0061】
滴下反応終了後、フェノール28.2g(0.30モル)を追加し、後反応3時間で反応を終えた時点での攪拌機のトルクは、3.0kg/cmであり、後反応を終えた時点での反応液の粘度は、滴下反応終了時点の反応液とほぼ同じ粘度であった。
【0062】
その反応液に16%NaOH水溶液を添加してpH5〜6に中和すると、攪拌トルクは1.2kg/cmとなり、滴下反応前の溶液状態と同じトルク値を示した。
【0063】
反応終了液をガスクロマトグラフィー分析した結果、未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC)は殆どゼロであり、また液体クロマトグラフィー分析により目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は90.7モル%であった。なお、この1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンは、フェノールとの付加物として存在している。
【0064】
【実施例2】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール62.5g(0.665モル)、水7.7gおよびドデシルメルカプタン5.8gを仕込み、内温を20〜30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0065】
内温を25〜30℃に保持しつつ、フェノール78.5g(0.835モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン42.0g(0.300モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0066】
滴下反応前の溶液状態での攪拌機のトルクは、1.7kg/cmであり、滴下反応終了時点でのスラリー状態での攪拌機のトルクは、4.3kg/cmであった。また、滴下反応終了時点での3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの転化率は96.0モル%であった。
【0067】
滴下反応終了後、フェノール28.2g(0.30モル)を追加し、後反応5時間で反応を終えた時点での攪拌トルクは、4.5kg/cmであり、後反応を終えた時点での反応液の粘度は、滴下反応終了時点の反応液とほぼ同じ粘度であった。
【0068】
その反応液に16%NaOH水溶液を添加してpH5〜6に中和すると、攪拌機のトルクは1.7kg/cmとなり、中和後の反応液の粘度は、滴下反応前の溶液状態と同じ粘度を示した。
【0069】
反応終了液をガスクロマトグラフィー分析した結果、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC)の転化率は99モル%以上であり、また、液体クロマトグラフィー分析により、目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は91.0モル%であった。なお、この1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンは、フェノールとの付加物として存在している。
【0070】
【実施例3】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール37.2g(0.396モル)、水9.0gを仕込み、内温を20〜30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込み、その後に10%メチルメルカプタンソーダ水溶液3.8gを仕込んだ。
【0071】
内温を25〜30℃に保持しつつ、フェノール110.4g(1.174モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン42.2g(0.301モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0072】
滴下反応前の溶液状態での攪拌機のトルクは、1.1kg/cmであり、滴下反応終了時点でのスラリー状態での攪拌機のトルクは、1.7kg/cmであった。また、滴下反応終了時点での3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの転化率は97.0モル%であった。
【0073】
滴下反応終了後、フェノール22.3g(0.237モル)を追加し、後反応5時間で反応を終えた時点での攪拌トルクは、3.5kg/cmであった。
その反応液に16%NaOH水溶液を添加してpH5〜6に中和すると、攪拌機のトルクは1.2kg/cmとなり、中和後の反応液の粘度は、滴下反応前の溶液状態とほぼ同じ粘度を示した。
反応終了液をガスクロマトグラフィー分析した結果、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC)の転化率は99モル%以上であり、また、液体クロマトグラフィー分析により目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は90.5モル%であった。なお、この1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンは、フェノールとの付加物として存在している。
【0074】
【実施例4】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール90.0g(0.957モル)、水7.6gおよびオクチルメルカプタン4.2gを仕込み、内温を20〜30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0075】
内温を25〜30℃に保持しつつ、フェノール113.0g(1.202モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン42.0g(0.300モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0076】
滴下反応前の溶液状態での攪拌機のトルクは、0.9kg/cmであり、滴下反応終了時点でのスラリー状態での攪拌機のトルクは、1.2kg/cmであった。また、滴下反応終了時点での3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの転化率は95.0モル%であった。
【0077】
滴下反応終了後、トルエン28.5gを添加し、さらに後反応1時間後にトルエン18.0gを添加した。後反応5時間で反応を終えた時点での攪拌トルクは、1.0kg/cmであり、後反応を終えた時点での反応液の粘度は、滴下反応前の溶液状態とほぼ同じ粘度であった。
【0078】
その反応液に16%NaOH水溶液を添加してpH5〜6に中和し、反応終了液をガスクロマトグラフィー分析した結果、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC)の転化率は99%モル以上であり、また、液体クロマトグラフィー分析により、目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は88.9モル%であった。なお、この1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンは、フェノールとの付加物として存在している。
【0079】
【実施例5】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、2,6-キシレノール40.3g(0.33モル)、トルエン12.0gおよびオクチルメルカプタン4.2gを仕込み、内温を30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0080】
内温を30℃に保持しつつ、2,6-キシレノール119.5g(0.98モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン42.2g(0.301モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0081】
滴下反応前の溶液状態での攪拌機のトルクは、1.8kg/cmであり、滴下反応終了後30分経過した時点での攪拌機のトルクは、2.2kg/cmであり、その時点での3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの転化率は93.1モル%であった。
【0082】
その時点で2,6-キシレノール24.1g(0.20モル)を追加し、後反応を継続した。後反応5時間で反応を終えた時点での攪拌トルクは、2.4kg/cmであり、後反応を終えた時点での反応液の粘度は、滴下反応終了後30分経過した時点の反応液とほぼ同じ粘度であった。
【0083】
その反応液に16%NaOH水溶液を添加してpH5〜6に中和し、反応終了液をガスクロマトグラフィー分析した結果、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC)の転化率は99モル%以上であり、また、液体クロマトグラフィー分析により、目的とする1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は87.1モル%であった。なお、この1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンは、2,6-キシレノールとの付加物として存在している。
【0084】
【比較例1】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール62.8g(0.668モル)、オクチルメルカプタン4.2gを仕込み、内温を50℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、濃塩酸33.9g(0.33モル)を添加し、内温を50℃に保持しつつ、フェノール78.5g(0.835モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン42.0g(0.300モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0085】
滴下反応終了後、フェノールを追加することなく、さらに50℃で反応を5時間続けた。反応前後での攪拌トルクは、殆ど変わらず1.2kg/cmと低いものであったが、反応液の液体クロマトグラフィー分析結果では、目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は45モル%と非常に低いものであった。
【0086】
【比較例2】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール94.0g(1.0モル)、水14.1gおよびオクチルメルカプタン2.2gを仕込み、内温を30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0087】
内温を30℃に保持しつつ、フェノール94g(1.0モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン14.0g(0.10モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0088】
滴下反応終了後、フェノールを追加することなく、さらに30℃で反応を5時間続けた。反応前後での攪拌トルクは、1.2kg/cmと殆ど変わらず低いものであったが、反応液の液体クロマトグラフィー分析結果では、目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は27.6モル%(対TMC)と非常に低いものであった。
【0089】
【比較例3】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール75.2g(0.80モル)、水11.3gおよびオクチルメルカプタン5.6gを仕込み、内温を30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0090】
内温を30℃に保持しつつ、フェノール75.2g(0.80モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン56.0g(0.400モル)との混合液を3時間で滴下反応した。滴下反応終了時点での攪拌機のトルクは、2.5kg/cmであった。
【0091】
滴下反応終了後、フェノールを追加することなく、さらに30℃で反応を3時間続けた。この反応終了後の攪拌機のトルクは、6.0kg/cmまで上昇して攪拌不能となった。
【0092】
この反応液をNaOH水溶液で中和した後、液体クロマトグラフィー分析した結果、目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は84.5モル%であった。
【0093】
【比較例4】
実施例1と同様な装置を備えた1000ml四つ口フラスコに、フェノール94g(1.0モル)、水14.1g、オクチルメルカプタン2.2gおよびトルエン47gを仕込み、内温を30℃に維持しつつ反応系内を窒素ガスで置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和となるまで吹き込んだ。
【0094】
内温を30℃に保持しつつ、フェノール75.2g(0.80モル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン56.0g(0.400モル)との混合液を3時間で滴下反応した。
【0095】
滴下反応終了後、フェノールを追加することなく、さらに30℃で反応を5時間続けた。この反応を終えた時点での攪拌トルクは、1.5kg/cmであり、滴下反応前より多少高い粘度であった。
【0096】
しかしながら、その反応液に16%NaOH水溶液を添加してpH5〜6に中和し、反応終了液をガスクロマトグラフィー分析した結果、未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC)は15%であり、また、液体クロマトグラフィー分析により目的とする1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの存在収率は78モル%と低かった。
【0097】
【比較例5】
実施例1に準じた装置を備えた500ml四つ口フラスコに、フェノール112.8g(1.20モル)、β- メルカプトプロピオン酸6.4g(0.06モル)、水0.6g、および予めメタノール洗浄した陽イオン交換樹脂(Lewatit k1131) 60gを各々仕込み、攪拌混合しつつ3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン5.6g(0.04モル)を添加して、反応温度が40℃の場合と60℃の場合について比較した。
【0098】
反応液の粘度は、反応前後で殆ど変わらなかったが、第1表に示すように、40℃では反応速度が非常に遅く、また60℃では1,1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの選択率が低いため、いずれも目的物の存在収率が非常に低かった。
【0099】
【表1】
Figure 0003774789

Claims (9)

  1. フェノール類と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを、酸触媒の存在下に反応させて3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類を製造する方法において、酸触媒の存在下に、下記一般式[I]
    Figure 0003774789
    [式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であって、R1 およびR2 が共に炭素原子数4のアルキル基であることはない。]
    で表わされるフェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)をモル比((A)/(B))で3〜7になる量にして、該フェノール類(A)と該3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)とを、反応温度15〜40℃で反応(前反応)させ、
    3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の反応率が90モル%以上に達した後、前記フェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)を追加して反応温度15〜40℃で後反応を行うことを特徴とする、下記一般式[II]で表わされる3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法;
    Figure 0003774789
    [式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であって、R1 およびR2 が共に炭素原子数4のアルキル基であることはない。]。
  2. 前記前反応が、フェノール類(A)またはフェノール類(A)と芳香族炭化水素類(C)との混合液と、水および酸触媒を含む系に、反応温度15〜40℃において、前記フェノール類(A)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液、またはフェノール類(A)と芳香族炭化水素類(C)と3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)との混合液を滴下して行なわれることを特徴とする請求項1に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  3. 前記前反応において、反応液中の芳香族炭化水素類(C)の量は10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  4. 前記後反応が、前反応により得られた反応液に、前記フェノール類(A)および/または芳香族炭化水素類(C)を一括あるいは分割して添加して行なわれることを特徴とする請求項1に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  5. 前記後反応を行うに際して、前反応により得られた反応液に添加される前記フェノール類(A)の添加量は、前反応および後反応でのフェノール類(A)の添加総量が3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(B)の添加量に対し、モル比((A)/(B))で5〜10となる量であることを特徴とする請求項1または4に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  6. 前記後反応を行うに際して、前反応により得られた反応液に添加される前記芳香族炭化水素類(C)の添加量は、前反応により得られた反応液量に対して10〜30重量%であることを特徴とする請求項1または4に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  7. 前記酸触媒が、鉱酸類(a1)とチオール類(a2)とからなる混合触媒であって、鉱酸類(a1)が塩化水素ガスであり、チオール類(a2)が炭素原子数1〜12のアルキルメルカプタンであることを特徴とする請求項1または2に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  8. 前記フェノール類(A)がフェノールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
  9. フェノール類がフェノールであって、水の量がフェノール類に対して3〜20
    重量%であることを特徴とする請求項2に記載の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法。
JP29820498A 1998-10-20 1998-10-20 3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール類の製造方法 Expired - Lifetime JP3774789B2 (ja)

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