JP3774327B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外側面に沿って段付凹部を有するセラミック基板とその底面に金属板等の放熱部材を有する配線基板であって、特に上記段付凹部に割れが生じないようにした配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のセラミック層とその間に導体層を形成したセラミック基板は、近年技術の高度化や複雑化に応じて、その厚みを最小限に薄肉化することが求められている。また、セラミック基板の内側のキャビティ内に集積回路(IC)素子等の電子部品を配置して、係るIC素子等とセラミック基板内の回路とを導通すると共に、セラミック基板内の回路を外部の機器と導通して、係る機器を複雑に制御又は稼働することも成されている。
上記セラミック基板内の回路やIC素子の稼働に伴う発生する熱を外部に放出するため、図4(A)及び(B)に示す配線基板40が用いられている。この配線基板40は、全体を矩形枠状としたセラミック基板42と、そのキャビティ43内に配置するIC素子52とを有し、セラミック基板42とIC素子52の各底面に接触する放熱用の金属板48を上記基板42の底面にロウ付けしている。
【0003】
配線基板40のセラミック基板42は、アルミナ等からなり且つ平面視で矩形枠を呈すると共に、その外側面とキャビティ43側の内側面とに沿って段付凹部44,45,45aを形成している。また、セラミック基板42の出隅側コーナ部には2辺に跨る幅広の段付凹部44aが形成されている。更に、金属板48は、銅又は銅合金等の熱伝導性が高い材質からなり、セラミック基板42と略相似形の矩形を呈する。且つ、金属板48を強固に固着するため、図4(B)に示すように、金属板48の各端縁はセラミック基板42の外側面よりも約0.1〜0.5mm程度内側に引き下がった状態でセラミック基板42の底面にロウ付けされる。
【0004】
図4(C)に示すように、セラミック基板42の内・外側面の段付凹部44,45は内・外側面に沿って対に形成されることが多い。キャビティ43側の大きめの段付凹部45(及び45a)の表面には端子54が形成され、上記IC素子52と図示しないワイヤを介して導通される。また、外側の段付凹部44の表面には端子56が形成され、ロウ材59を介してリード58に接続される。この段付凹部44はセラミック基板42を小型・薄肉化するため、リード58と接続する端子56の位置を基板42の外側面における垂直方向の中間に形成したものである。係る外側の段付凹部44は基板42の底面との間に薄肉の水平片46を有する。
【0005】
更に、セラミック基板42の底面全体にはメタライズ層47が被覆され、基板42内の回路におけるインピーダンス等の電気特性の整合や基板42からの電波の漏洩を防止している。そして、このメタライズ層47に金属板48をロウ付けして、金属板48とセラミック基板42とを固着した配線基板40が得られる。
図4(C)中の符号50は上記ロウ付け時に金属板48の周囲に形成される銀ロウ等のロウ材のメニスカスを示す。尚、キャビティ43の底面に露出する金属板48の上面に上記IC素子52が固着され、その放熱を図っている。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
ところで、セラミック基板42の底面のメタライズ層47に加熱溶融された銀ロウを介して金属板48をロウ付けした際、ロウ材のメニスカス50が冷却して収縮する。これにより、セラミック基板42の外側面付近に内向きの張力が働く。更に、熱膨張率の高い金属板48もロウ付け後に冷却して収縮し上記張力を大きくする。この結果、図4(D)に示すように、セラミック基板42の外側面における特に段付凹部44の薄肉の水平片46には、上記張力によりその基端付近に割れを生じることがある。
【0007】
特に、セラミック基板42の外側面のコーナ部の2辺に跨って形成される段付凹部44aでは割れを生じ易い。そのため、図4(D)に示すように、水平片46上面の端子56が変形し、且つこの端子56とリード58とのロウ付けが不十分になったり、困難になる場合があった。
本発明は、以上に説明した従来の技術の問題点を解決し、セラミック基板の底面に金属板等の放熱部材をロウ付けしてもセラミック基板の外側面の段付凹部に割れが生じない配線基板を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、金属等よりなるヒートシンクやヒートスプレッダ等の放熱部材のロウ付け時に、放熱部材の周囲に形成されるロウ材のメニスカスが、セラミック基板の段付凹部の裏面に流れ出ないようにすることに着想して成されたものである。
即ち、本発明の配線基板は、外側面に沿って段付凹部を有するセラミック基板と、該セラミック基板の底面に形成したメタライズ層と、該メタライズ層の外周よりも内側に端縁が位置するように該メタライズ層にロウ付けされる放熱部材と、を有し、少なくとも上記段付凹部の裏面に相当し且つ上記放熱部材が位置していない上記メタライズ層の表面にロウ材不濡れ部を形成した、ことを特徴とする。
【0009】
これによれば、段付凹部の裏面にロウ材のメニスカスが形成されないか小さく形成されるため、放熱部材のロウ付け後において段付凹部の付近に前記張力が生じにくくなり、段付凹部における割れの発生を防止することができる。
また、前記ロウ材不濡れ部が、セラミック被覆層から形成されている、配線基板も含まれる。これによれば、ロウ材が段付凹部の裏面に流れ出すことを確実に防ぐことが可能になる。
【0010】
更に、前記セラミック被覆層が、前記セラミック基板と同種のセラミックからなる、配線基板も含まれる。これによれば、ロウ材の濡れ防止と共に、セラミック被覆層自体がセラミック基板と同じか同様の熱膨張率となり、段付凹部の付近における前記張力の発生を一層確実に防ぐことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1(A)及び(B)は、本発明の1つの形態の配線基板1を示す。この配線基板1は、平面視で全体を矩形枠状としたセラミック基板2と、そのキャビティ3内にIC素子12を配置すると共に、セラミック基板2の底面に金属板からなる放熱部材8を固着している。キャビティ3の底面に露出する放熱部材8の上面には、IC素子12が接触した状態で固着される。
【0012】
上記セラミック基板2は、厚さ約0.8mmで複数のアルミナ製グリーンシートとその間の図示しない導体層とを積層して焼成したもので、その外側面とキャビティ3側の内側面とに沿って段付凹部4,4a,5,5aを形成している。
また、放熱部材8は、厚さ約0.7mmで銅又は銅合金等の熱伝導性が高い材質の金属板からなる。且つ、放熱部材8は、セラミック基板2と略相似形の矩形を呈し、各辺の端縁はセラミック基板2の外側面よりも約0.1〜0.5mm程度内側に引き下がってセラミック基板2の底面にロウ付けされている。
【0013】
図1(C)に示すように、セラミック基板2は、その内・外側面に沿って対の段付凹部4,5を有する。キャビティ3側における大きめの段付凹部5の表面には、タングステンやモリブデンからなる端子14が形成され、前記IC素子12と図示しないワイヤを介して接続される。また、セラミック基板2の外側面の段付凹部4は、厚さ約0.3mmの薄い水平片6を有し、その上面に基板2内部の導体層と導通する端子16が形成される。この端子16もタングステン等からなり、基板2内の導体層を介して前記端子14や、ロウ材19を介してリード18と接続され、セラミック基板2内の導体層が形成する回路と外部の機器とを導通する。尚、段付凹部5aの表面に形成される図示しない端子も、端子14と同様ワイヤによってIC素子12と接続され、且つコーナの段付凹部4aの表面に形成される図示しない端子に導出される。
【0014】
また、図1(C)に示すように、セラミック基板2の底面には、その略全面に渉ってタングステン又はモリブデン等の高融点金属又はそれらをベースとする合金の粉末を焼結した薄いメタライズ層7が形成される。これにより、セラミック基板2内の回路の特性インピーダンスの整合や基板2からの電波漏洩を防止する。
更に、図1(C)に示すように、外側面の段付凹部4における水平片6の裏面において、そのメタライズ層7の表面にアルミナペーストをスクリーン印刷にて所要幅に印刷し、焼成したセラミック被覆層(ロウ材不濡れ部)10が形成される。
【0015】
一方、金属板からなる放熱部材8は、配線基板1を小型化するため、予め各辺ともセラミック基板2よりも約0.2〜1mm程小さく形成される。そして、セラミック基板2底面のメタライズ層7と放熱部材8との重複面に溶融した銀ロウを塗布して、セラミック基板2と放熱部材8とをロウ付けする。
係るロウ付けの際、上記ロウ材の余剰分は放熱部材8の周囲に流出し、図1(C)に示すように、メニスカス9が形成される。しかし、このメニスカス9は段付凹部4における水平片6の裏面に形成した上記セラミック被覆層10により、その流れ出しを阻止された状態で固化する。尚、被覆層10の厚みは、ロウ材をせき止められる程度の厚みにおいて適宜選定される。
【0016】
従って、段付凹部4の裏面において幅が狭くなったメニスカス9は、その冷却時の収縮によっても段付凹部4の水平片6に対し、従来のような張力を与えなくなる。また、放熱部材8の冷却収縮による張力も水平片6に伝達しにくくなる。
これらの結果、図1(C)に示すように、ロウ付け後において外側面の段付凹部4における水平片6には、従来のような割れが生じなくなる。これにより、信頼性の高いセラミック基板2を有する配線基板1が得られ、段付凹部4の端子16とリード18とのロウ付けも容易且つ確実に行うことができる。尚、メニスカス9はセラミック基板2のキャビティ3側にも形成されるが、内側面の段付凹部5は放熱部材8に裏打ちされているため、割れを生じることはない。
【0017】
図2(A)は、セラミック基板2の外側面における前記段付凹部4の斜視図を示す。この段付凹部4の水平片6の上面に端子16が形成され、矩形のロウ材19を介してリード18と接続される。また、水平片6の底面、即ち段付凹部4の裏面に相当する前記メタライズ層7(図示せず)の表面には所定長さのセラミック被覆層10が形成されている。
図2(B)は、図2(A)のセラミック基板2をその底面側から見た状態を示し、上記セラミック被覆層10は、段付凹部4の幅よりも長く且つ段付凹部4の奥行き寸法の約半分の幅寸法を有する。従って、セラミック被覆層10は、放熱部材8との間に同程度の寸法の隙間を形成し、この隙間内に前記ロウ材のメニスカス9を留めることができる。これにより、少なくとも、段付凹部4の裏面に相当する部分では、幅の狭いメニスカス9しか形成されないため、段付凹部4の水平片6が割れる事態を防止することができる。
【0018】
図2(C)は異なるセラミック被覆層10′を示し、セラミック基板2の底面、即ちメタライズ層7の表面における一辺に沿ってその全長に渉り一定幅に、アルミナペーストをスクリーン印刷し、且つ焼成したものである。このセラミック被覆層10′により、放熱部材8の全周囲に形成されるメニスカス9の流れ出しを阻止できる。従って、段付凹部4の裏面付近は基より、セラミック基板2の外側面寄り全体をロウ付け後の張力から解放し、割れや微細なクラックが生じること防止することができ、信頼性の高い配線基板1を一層確実に得ることができる。尚、コーナ部の段付凹部4aの裏面にもセラミック被覆層10,10′が形成される。
【0019】
以上のように、配線基板1によれば、そのセラミック基板2の外側面における少なくとも段付凹部4,4aの裏面に相当するメタライズ層7の表面にセラミック被覆層10(10′)を形成したので、放熱部材8とのロウ付けによっても段付凹部4,4aに割れが生じず、信頼性の高いセラミック基板2を有し、段付凹部4,4aの端子16とリード18とのロウ付けも容易に行うことができる。
【0020】
ここで、配線基板1と前記従来の配線基板40とについて行った割れのテスト結果を示す。同じアルミナからなり同じ形状及び寸法を有し、且つ同じ位置に幅0.5mmで奥行き0.5mmの段付凹部4,44を有するセラミック基板2,42と、同じ銅合金で同じ形状と寸法の放熱部材(金属板)8,48とを同じ銀ロウを用い、同じ条件でロウ付けした50個ずつの配線基板1,40を得た。配線基板1のセラミック基板2の外側面における各段付凹部4の裏面には、図1(C)及び図2(B)に示したセラミック被覆層10を長さ1mm、幅0.2mmで形成した。
【0021】
各配線基板1,40について、ロウ付け後における割れを含む数を調べた結果、配線基板1では50個全てについて割れは発見されなかった。これに対し、従来の配線基板40では全体の約30%に当る14個に割れが生じていた。
次いで、50個の配線基板1と残った36個の配線基板40に対して、温度サイクルテスト(MIL−STD−883E 1010 Cond B 10サイクル)を行った。
【0022】
これは、−55℃(+0℃−10℃)に10分間保持した後、加熱して1分以内に+125℃(+0℃−10℃)に10分間保持し、更に、1分以内に−55℃に冷却して保持することを10回繰り返す熱衝撃試験である。その結果、配線基板1では50個全てにおいて割れが発見されなかったのに対し、配線基板40では更に13個に割れが生じていた。従って、従来の配線基板40では、ロウ付け後と上記熱衝撃試験とによって、全体の50%以上に割れが生じた。この試験結果から、本発明の配線基板1の作用が理解され、且つその効果が裏付けられた。
【0023】
図3は、本発明における異なる形態の配線基板20を示す。
この配線基板20は、平面視で矩形を呈するセラミック基板21と、その底面にロウ付けした金属板からなる放熱部材28とを含む。セラミック基板21は、その内側に矩形に凹んだキャビティ22とその周囲に段付凹部23を有し、且つその表面に端子34を形成し、キャビティ22内に固着したIC素子32とワイヤ33を介して接続される。また、セラミック基板21は、その外側面に段付凹部24を有し、その表面に形成した端子36をリード38とロウ付けする。尚、キャビティ22内のIC素子32は金属製の蓋板35で封着される。
【0024】
上記セラミック基板21の底面にも、図示しないメタライズ層が形成され、その表面で且つ少なくとも上記段付凹部24の裏面に相当する位置にセラミック被覆層30が形成される。セラミック基板21の底面にロウ材を介してこれと略相似形の放熱部材28をロウ付けする。その際に、放熱部材28の周囲にロウ材のメニスカス29が形成される。しかし、セラミック被覆層30が形成された段付凹部24の水平片26の底面ではメニスカス29の幅が狭くなるため、それによる張力も激減し、水平片26に割れが生じるのを阻止することができる。この配線基板20は、セラミック基板21のキャビティ22の底面部分を薄肉して、IC素子32やセラミック基板21内の導体層の発熱を放熱部材28に放熱する。
【0025】
本発明は以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記セラミック被覆層10等は放熱部材8(メニスカス9)等寄りの位置に沿ってメタライズ層7の表面に細長く形成したり、或いは、段付凹部の裏面付近を幅広くしそれ以外の部分の幅を狭くしても良い。
また、セラミックス被覆層の材質も窒化アルミニウムやムライト等の前記形態以外のセラミックを用いることもできる。但し、セラミック基板と同じか同種のセラミックを適用することが望ましい。
【0026】
更に、放熱部材の材質も、前記銅や銅合金の他に、アルミニウム又はアルミニウム合金を適用することもできる。且つ、その形状も板形状だけでなく、ヒートスプレッダのように表面に凹凸を有する形状としても良い。例えばアルミニウム合金からなる押出型材を矩形に切断して用いる場合には、セラミック基板とロウ付けしない底面に細かな凹凸条を多数連続して付設でき、一層放熱効果を高めることが可能となる。
尚、段付凹部には、その表面に複数の端子を併設した幅広の形態も含まれる。
【0027】
【発明の効果】
以上において説明した本発明の配線基板によれば、セラミック基板の外側面における段付凹部の裏面にロウ材のメニスカスが形成されないか小さく形成されるため、金属板等の放熱部材のロウ付け後において上記段付凹部の付近に張力が生じにくくなり、段付凹部における割れの発生を防止することができる。従って、段付凹部に形成される端子にリードが容易且つ確実にロウ付けでき、これらを介してセラミック基板内の回路と外部の機器とを確実に導通できる信頼性の高い配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明の1形態の配線基板を示す平面図、(B)は(A)中のB−B断面図、(C)は(B)中の一点鎖線部分Cの拡大図。
【図2】 (A)は図1の配線基板における段付凹部付近を示す斜視図、(B)は(A)中の矢印B方向から見た部分底面図、(C)は異なる形態のセラミック被覆層を示す(B)と同様な部分底面図。
【図3】本発明の異なる形態の配線基板を示す断面図。
【図4】 (A)は従来の配線基板を示す平面図、(B)は(A)中のB−B断面図、(C)は(B)中の一点鎖線部分Cの拡大図、(D)は上記基板の一部が割れた状態を示す(C)と同様の拡大断面図。
【符号の説明】
1,20……………配線基板
2,21……………セラミック基板
4,4a,24………段付凹部
8,28……………金属板(放熱部材)
9,29……………メニスカス(ロウ材)
10,10′,30…セラミック被覆層(ロウ材不濡れ部)
Claims (3)
- 外側面に沿って段付凹部を有するセラミック基板と、該セラミック基板の底面に形成したメタライズ層と、該メタライズ層の外周よりも内側に端縁が位置するように該メタライズ層にロウ付けされる放熱部材と、を有し、
少なくとも上記段付凹部の裏面に相当し且つ上記放熱部材が位置していない上記メタライズ層の表面にロウ材不濡れ部を形成した、ことを特徴とする配線基板。 - 前記ロウ材不濡れ部が、セラミック被覆層から形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
- 前記セラミック被覆層が、前記セラミック基板と同種のセラミックからなる、ことを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
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