JP3774303B2 - 非水リチウム二次電池用リチウムマンガン複合酸化物の製造方法及びその用途 - Google Patents
非水リチウム二次電池用リチウムマンガン複合酸化物の製造方法及びその用途 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電サイクル特性に優れた非水リチウム二次電池用リチウムマンガン複合酸化物の製造方法及びその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非水リチウム二次電池の正極材料としては、これまでにチタンやモリブデンの硫化物や酸化物、並びにバナジウムやリンの酸化物等が提案されているが、これらは保存性が悪く高価なため、未だ実用化されるまでには至っていない。
一方、非水一次電池の正極活物質としては二酸化マンガンが代表的に用いられ、既に実用化されている。
二酸化マンガンは、資源的にも豊富で安価であり、更に化学的に安定であるため、電池としての保存性に優れている。しかしながら、二酸化マンガンは可逆性に難があるため、非水系二次電池の正極活物質としては不適当であり、そのため改質されたマンガン酸化物が種々提案されている。
【0003】
例えば、特開昭63−114064号や、特開昭63−187569号、特開平1−235158号の各公報に開示されているように、二酸化マンガンと、リチウム塩との混合物を熱処理して、その結晶構造中にリチウムを含有したマンガン酸化物が提案されている。
これらのマンガン酸化物は熱処理温度によって、生成するリチウム含有マンガン酸化物の構造が変動し、例えば、熱処理温度が250〜300℃では、X線回折図において、2θ=22°、31.7°、37°、42°、55°付近にピークを有する結晶構造のマンガン酸化物となり、300〜430℃では、Li2 MnO3 を含有したマンガン酸化物となり、そして800〜900℃では、スピネル型構造を有するマンガン酸化物となる。
【0004】
また、これらの改良法では二酸化マンガンとリチウム塩とを固相同士で反応させるため、二酸化マンガン粒子の内部まで改質が及ばず、高電流密度での充放電サイクルでは劣化が早いという欠点があった。
そこで、例えば、特開平2−183963号公報に開示されているように、リチウム塩を溶解した水溶液中に二酸化マンガンを浸漬し、水分を蒸発乾固した後に熱処理し、二酸化マンガン粒子の細孔内部にまで改質反応を進める方法が提案されている。
しかしながら、これまでに提案されているリチウム含有二酸化マンガンでは、電気化学活性が不十分であり、正極に用いた場合、優れた初期容量及び容量保持率を有し、優れたサイクル特性を有する非水リチウム二次電池を製造することは困難であった。
【0005】
なお、特開平6−203834号や、特開平7−245106号、特開平7−307155号の各公報には、二酸化マンガン又はマンガン塩と、リチウム塩との混合物を熱処理して、リチウムイオン電池用のリチウムとマンガンとの複合酸化物が提案されている。しかしながら、何れの技術でも、高い初期容量及び高い容量保持率を提供するリチウムマンガン複合酸化物は得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、優れた初期容量及び容量保持率を有し、サイクル特性に優れた非水リチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、水酸化リチウムと、二酸化マンガン及び炭酸マンガンから選ばれるマンガン化合物とを混合し、350〜500℃で一次焼成し、100℃以下に冷却し、解砕した後、600〜800℃で二次焼成し、更に二酸化マンガン及び/又は炭酸マンガンを加えて、均一混合し、600〜800℃で焼成することにより、サイクル特性に優れた非水リチウム二次電池を製造することのできるリチウムマンガン複合酸化物が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明で使用する水酸化リチウムとしては、例えば、LiOH・H2 Oで示される一水塩として市販されているものが好適に使用される。水酸化リチウムとしては、粒状のものが使用されることが適当である。粒状物の平均粒径は、通常20〜100 μm、好ましくは40〜80μmであることが適当である。
本発明で使用されるマンガン化合物としては、二酸化マンガン又は炭酸マンガンが使用される。マンガン化合物としては、粒状のものが使用されることが適当である。粒状物の平均粒径は、通常20〜100 μm、好ましくは40〜80μmであることが適当である。
【0009】
二酸化マンガン又は炭酸マンガンとしては、各種の材料を使用することができる。例えば、二酸化マンガンとして、マンガン鉱石を400℃以上の温度で焼成して得られるMn2 O3 又はMn3 O4 等の低級マンガン酸化物を硫酸や硝酸、又はこれらの混合物等の鉱酸により不均化反応させることによって得られる化学合成二酸化マンガンを使用することができる。また、電解によって得られる電解二酸化マンガンを使用することができる。
水酸化リチウムと、マンガン化合物とは、湿式混合でも乾式混合でも、混合することができる。湿式混合では、水酸化リチウムは、スラリー状に水に溶解した状態にあり、この溶解状態にある水酸化リチウムが、マンガン化合物中に高度に分散された状態となるので、得られるリチウムマンガン複合酸化物は、組成的に非常に均一となり、好ましい。
【0010】
水酸化リチウムと、マンガン化合物との混合は、例えば、水酸化リチウム(LiOH・H2 O)と、マンガン化合物とを、通常、LiとMnとのモル比で0.95:2〜1.20:2、好ましくは、1.05:2〜1.10:2となるように配合し、これをポットミルを用いて水を加えて湿式又は水を加えないで乾式で混合することによって行うことができる。
このようにして得られた混合物は、水を加えたものは水を蒸発させた後、350〜500℃、好ましくは400〜500℃、更に好ましくは450〜500℃の温度において焼成(一次焼成)する。水酸化リチウムの融点は、445℃であるので、好ましくは、500℃以下の温度で焼成することにより、リチウムイオンがマンガン化合物の細孔内部に、浸透し、均一なマンガン酸リチウムが得られる。
【0011】
このようにして得られた一次焼成物は、一旦、100℃以下、好ましくは45℃以下、更に好ましくは20℃以下に冷却した後、解砕する。冷却温度の下限としては、実際の操作上、0℃以上が適当である。この冷却操作によって、更に均一なリチウムマンガン複合酸化物を得ることが出来る。
解砕物の平均粒径は、通常20〜100 μm、好ましくは40〜80μmであることが好ましい。100μm以上では、解砕、均一混合が十分ではない傾向にある。20μm以下では、解砕過剰で、化合物の構造を破壊する懸念があり好ましくない。更に、作業者への微粉吸入を増大させ易い。
このようにして得られた解砕物は、再度焼成(二次焼成)される。二次焼成は、600〜800℃、好ましくは650〜750℃で行うことが適当である。
【0012】
このようにして得られた二次焼成物には、再度、二酸化マンガン及び/又は炭酸マンガンを配合し、均一に混合する。
マンガン化合物の添加量は、Li 1モルに対し、追加添加分Mnのモル比で、0.01〜0.20モル、好ましくは、0.03〜0.15モルとなるように加えることが好ましい。
均一な混合は、例えば、ポットミルを用いて乾式で混合することによって達成することができる。
混合物はついで、600〜800℃で焼成(三次焼成)することにより、二次焼成の段階で、結晶に組み込まれていない、反応不十分なLiが、更なるMn添加により、構造に組み込まれ、高い初期容量及び高い容量保持率を有するリチウムマンガン複合酸化物が得られるものと考えられる。これに対して、二次焼成までの工程のみで混合すると、混合は不十分となり、得られるリチウムマンガン複合酸化物におけるマンガン酸リチウムの組成が全体的に不均一となり、放電容量及び容量保持率の高いリチウムマンガン複合酸化物を得ることができない。
【0013】
得られたリチウムマンガン複合酸化物は、非水リチウム二次電池の正極材料として好適に使用される。正極材料としての使用方法等は、従来の正極材料の使用方法等の場合と同様である。この場合、非水リチウムニ次電池における負極としては従来より使用されている金属リチウムや、リチウム合金及びリチウムがドープ、脱ドープできる炭素質素材や、酸化物等を使用することができる。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明する。
実施例1
水酸化リチウム(LiOH・H2 O)と、電解二酸化マンガンとを、LiとMnとのモル比が1.075 :2となるように配合し、配合物の合計の20重量%の脱イオン水を加えて、スラリーを形成した。このスラリーをポットミル中で混合した後、150℃で乾燥し、大気雰囲気下で470℃、12時間一次焼成した。次いで、焼成物を室温(20℃)まで下げた後、平均粒径が55μmとなるように解砕し、大気雰囲気下で700℃、12時間二次焼成した。
得られた二次焼成物に更に、電解二酸化マンガンをLi、1.075 モルに対して0.05モルとなるように加えて、ポットミル中で混合した後、大気雰囲気下で750℃、12時間焼成した。
この焼成物を正極活物質として、82重量部を使用し、更に、アセチレンブラック10重量部、バインダーとしてポリ弗化ビニリデン8重量部を予めN−メチル−2−ピロリドン58重量部に溶解したものを加えて十分に混合し、ペーストを得た。
このペーストをアルミニウム網に塗布し、圧着、乾燥させることによって正極板を作成した。対極には、正極と同じ大きさの金属リチウム板を使用し、正極電位測定には金属リチウム基準電極を用いた。
電解液とし1モル/dm3 のLiPF6 を溶解したエチレンカーボネート及びジエチルカーボネート1:1の混合溶媒を用いることによって試験電池を作成した。
実施例2
正極活物質を生成するに際し、電解二酸化マンガンを化学合成二酸化マンガンに代えること以外は、実施例1と同様にして試験電池を作成した。
実施例3
マンガン化合物として炭酸マンガン(MnCO3 )を使用すること以外は、実施例1と同様にして試験電池を作成した。
【0015】
比較例1
水酸化リチウム(LiOH・H2 O)と、電解二酸化マンガンとを、LiとMnとのモル比が1.05:2となるように配合し、配合物合計の20重量%の脱イオン水を加えて、スラリーを調製した。このスラリーをポットミル中で湿式混合を行い、150℃で乾燥した後、大気雰囲気下で700℃、12時間一次焼成した。この焼成物を正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様にして試験電池を作成した。
比較例2
水酸化リチウム(LiOH・H2 O)と、電解二酸化マンガンとを、LiとMnとのモル比が1.05:2となるように配合し、配合物合計の20重量%の脱イオン水を加えて、スラリーを調製し、これをポットミル中で湿式混合を行った。このスラリーを、150℃で乾燥した後、大気雰囲気下で470℃、12時間一次焼成し、続けて更に700℃、12時間二次焼成した。この焼成物を正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様にして試験電池を作成した。
比較例3(特開平6−203834号公報記載の技術)
酢酸リチウムと、酢酸マンガン四水和物とを1:2のモル比となるように、配合し、配合物合計の220重量%のエチレングリコール中で加熱溶解し、酢酸臭がなくなり、エチレングリコールが除去されるまで加熱を続け、固化させた。次いで、得られた混合物を400℃で3時間熱処理し、空気中700℃で焼成し、得られた焼成物を実施例1と同様にしてペースト状にし、試験電池を作成した。
物性試験
以上のようにして作成した試験電池を電流密度 0.5mA/cm2の定電流で 4.3Vまで充電した後、 3.0Vまで放電する充放電サイクルを繰り返すことによって放電特性を評価した。その際、1サイクル目の放電容量を初期容量(mAh/g )とし、初期容量に対する10サイクル目の放電容量を容量保持率(%)とした。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
表1に示すように、本発明の実施例1〜3の電池は、所定の充放電条件下で、高い初期容量及び容量保持率が得られた。
【0017】
一方、正極活物質を生成するに際し、700℃における一次焼成のみの比較例1、一次焼戌後、室温まで冷却することなしに二次焼成を行なう比較例2、公知例に従って製造した比較例3では、初期容量、容量保持率は低く、サイクル特性が悪かった。
【0018】
【発明の効果】
本発明の方法によって製造したリチウムマンガン複合酸化物は、非水リチウムニ次電池の正極として使用する場合に、サイクル特性に優れた非水リチウム二次電池を提供する。
Claims (1)
- 水酸化リチウムと、二酸化マンガン及び炭酸マンガンから選ばれるマンガン化合物とをLiとMnとのモル比が0.95:2〜1.20:2となるように混合し、350〜500℃で一次焼成し、100℃以下に冷却し、解砕した後、600〜800℃で二次焼成した後、更に二酸化マンガン及び/又は炭酸マンガンをLi 1 モルに対し追加添加分Mnのモル比が0.01〜0.20モルとなるように加えて、均一混合し、600〜800℃で焼成することを特徴とする非水リチウム二次電池用のリチウムマンガン複合酸化物の製造方法。
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