JP3772921B2 - 内燃機関のアイドル回転数制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のアイドル回転数を制御する機能を備えた内燃機関のアイドル回転数制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関のアイドル回転数制御(以下「ISC」と略記する)は、スロットルバルブをバイパスするバイパス空気量をアイドルスピードコントロールバルブ(ISCバルブ)で制御するバイパスエア方式を採用したり、或は、スロットルバルブをモータで駆動する電子スロットルシステムでは、アイドル時にスロットルバルブの開度を調整して吸気量を調整するようにしている。これらいずれの方式のものでも、アイドル時に内燃機関に供給する吸気量を調整することで、機関回転数を目標アイドル回転数に一致させるように制御するようにしている。
【0003】
従来のISCは、アイドル時に機関回転数と目標アイドル回転数とを比較してその差に応じて吸気量(ISCバルブ開度又はスロットル開度)を調整する機関回転数フィードバック制御を行うようにしている。しかし、吸気量を調整してから機関回転数が変化するまでには若干の時間遅れがあるため、上記従来の機関回転数フィードバック制御によるISCでは、例えば無負荷レーシング直後のように、機関回転数が高回転域から急激に低回転域に低下する場合に、吸気量の増加補正が手遅れになり、機関回転数が大きく落ち込んで、アイドル回転が不安定になって運転者に不快な振動を与えたり、最悪の場合にはエンジンストール(エンスト)を引き起こすおそれがある。
【0004】
これを避けるために、特開平3−37351号公報に示すように、機関回転数の変化量を検出し、その変化量が減少方向で且つ所定値以上の場合に該変化量に応じてバイパス空気量を増加する方向に補正することが提案されている。このようにすれば、機関回転数が目標アイドル回転数以上でも、機関回転数の低下量が所定値以上になった時点で、バイパス空気量が増加方向に補正されるので、バイパス空気量の増加補正が従来よりも早期に行われ、その分、機関回転数の落ち込みが抑えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報のISCでも、結局は機関回転数に応じた補正であるため、機関回転数の落ち込み方によっては、吸気量の増加補正が間に合わないことがあり、ISCの応答性が十分ではない。つまり、機関回転数が目標アイドル回転数付近で制御されている状態から瞬間的に低下する場合、例えばアイドル中に新たにエアコン負荷、トルコン負荷、電気負荷等が加えられた場合には、上記公報のように機関回転数の変化量を見てバイパス空気量を増加補正していたのでは、機関回転数が落ち込んでから吸気量の増加補正を行う結果となり、吸気量の増加補正が明らかに手遅れとなり、機関回転数が落ち込んでアイドル回転が不安定になって運転者に不快な振動を与えたり、最悪の場合にはエンストを引き起こすおそれがある。
【0006】
特に、電子スロットルでISCを行うものにおいては、スロットル開度を検出するスロットルセンサの出力値でスロットル開度をフィードバック制御するが、実際には、スロットルセンサの出力値の誤差によりスロットルバルブの位置決め誤差が発生するため、無負荷レーシング直後の機関回転数の落ち込みがバイパスエア方式のISCよりも更に大きくなる傾向があり、上述したISCの応答性の遅れの問題が益々顕著になる。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、アイドル回転数制御(ISC)の応答性を向上できて、機関過渡時の機関回転数の落ち込みを効果的に抑えることができる内燃機関のアイドル回転数制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関のアイドル回転数制御装置は、内燃機関の回転数を目標アイドル回転数に少なくとも積分項を含み吸気量を制御対象とし機関回転数をフィードバック制御するアイドル回転数制御時に過渡状態検出手段により機関過渡状態が検出されたとき(以下「機関過渡時」という)に、実際の吸気量又は実際の吸気管圧力に基づいてアイドル回転数制御開始当初の開度補正量を一回だけ演算し、該補正量に基づいて補正手段により内燃機関の吸気量を補正する。つまり、機関回転数の変化は、吸気量又は吸気管圧力が変化したことの結果として現れるため、吸気量又は吸気管圧力に基づいて内燃機関の制御量を補正することで、機関回転数に基づく補正よりも応答の速いアイドル回転数制御が可能となる。これにより、無負荷レーシング直後や、アイドル中に新たにエアコン負荷、トルコン負荷、電気負荷等が加えられた場合でも、直ちに機関回転数の落ち込みを抑えることができて、アイドル回転を安定させることができ、内燃機関の不快な振動やエンストを未然に防止することができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、機関過渡時に吸気量又は吸気管圧力の検出値又はその変化量に応じて内燃機関の制御量を補正するようにしても良い。つまり、吸気量又は吸気管圧力の検出値又はその変化量から機関回転数やその回転数変化量を予測できるため、吸気量又は吸気管圧力の検出値又はその変化量に応じて制御量を補正することで、機関過渡時の機関回転数の落ち込みを効果的に抑えることができる。
【0011】
更に、請求項3のように、アイドル回転数制御中に吸気量又は吸気管圧力の目標値を学習手段により学習するようにしても良い。このようにすれば、学習効果により補正精度が向上する。
【0012】
この場合、請求項4のように、機関過渡時に前記学習手段による学習値と吸気量又は吸気管圧力の検出値との偏差に応じて内燃機関の制御量を補正するようにしても良い。これにより、学習効果を更に的確に補正量に反映させることができる。
【0013】
また、請求項5のように、前記補正手段による補正の対象となる内燃機関の制御量を、アイドル回転数制御時の吸気量としても良い。この場合、バイパスエア方式のアイドル回転数制御システムでは、バイパス路に設けられたISCバルブの開度を補正してバイパス空気量を補正することで、内燃機関に供給する吸気量を補正し、一方、電子スロットルシステムでは、請求項7のようにスロットルバルブの開度を補正して吸気量を補正すれば良い。このようにして吸気量を補正することで、効果的なアイドル回転数制御が可能となる。但し、補正の対象となる制御量は、吸気量に限定されず、点火時期や燃料噴射量等であっても良い。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図16に基づいて説明する。まず、図1に基づいて内燃機関11の制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関11の吸気管12の上流側にはエアクリーナ13が装着され、その下流側に吸気量Ga を測定するエアフローメータ14が設置され、更にその下流側にスロットルバルブ15が設けられている。このスロットルバルブ15の回転軸には電磁クラッチ16を介してDCモータ17(スロットル駆動手段)が連結され、DCモータ17の駆動力によってスロットルバルブ15の開度(スロットル開度)が制御され、このスロットル開度がスロットルセンサ18によって検出される。この場合、アイドル時も、DCモータ17の駆動力によってスロットル開度を制御し、それによって吸気量Ga を制御して機関回転数を目標アイドル回転数に一致させるようにフィードバック制御する。
【0015】
スロットルバルブ15を通過した吸入空気を内燃機関11の各気筒に導入する吸気マニホールド19には、インジェクタ20が取り付けられ、また、内燃機関11の各気筒のシリンダヘッドには点火プラグ21が取り付けられている。内燃機関11のクランク軸22に嵌着されたシグナルロータ23の外周に対向してクランク角センサ24が取り付けられ、このクランク角センサ24から出力されるパルス状の機関回転数信号Neが電子制御ユニット(ECU)25に取り込まれ、機関回転数信号Neのパルス間隔によって機関回転数が検出される。
【0016】
一方、アクセルペダル26の踏込み量(アクセル操作量)がアクセルセンサ27によって検出され、アクセル操作量に応じた電圧信号Apが電子制御ユニット25にA/D変換器28を介して取り込まれる。エアフローメータ14で検出した吸気量Ga やスロットルセンサ18で検出したスロットル開度TAの各電圧信号も、電子制御ユニット25にA/D変換器28を介して取り込まれる。
【0017】
この電子制御ユニット25は、CPU29、ROM30、RAM31等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成され、ROM30に格納されている内燃機関制御用の各種プログラムをCPU29で実行することで、点火プラグ21の点火時期を制御すると共に、インジェクタ駆動回路45を介してインジェクタ20に与える噴射パルスを制御し、燃料噴射量を制御する。更に、この電子制御ユニット25は、アクセルペダル26が全閉位置から踏み込まれた時に、電磁クラッチ駆動回路46を介して電磁クラッチ16を接続(ON)すると共に、アクセル操作量Apに応じてドライバ32を介してDCモータ17を制御し、その駆動力によって後述するようにスロットル開度TAを調整するスロットル制御手段として機能する。
【0018】
次に、図2に基づいて電子スロットルシステムの構成を説明する。アクセルペダル26は、ワイヤ33を介してアクセルレバー34に連結されている。このアクセルレバー34は、アクセルリターンスプリング35,36によって図示下方(アクセル閉鎖方向)に付勢されている。そして、アクセルペダル26を操作しない状態(アクセルOFF)では、アクセルレバー34はアクセルリターンスプリング35,36によってアクセル全閉ストッパ37に当接した状態に保持される。機関運転中は、アクセルレバー34の位置がアクセルセンサ27によってアクセル操作量Apとして検出される。
【0019】
一方、スロットルバルブ15の回動軸にはバルブレバー38が連結され、このバルブレバー38が退避走行用スプリング39によって図示上方(スロットルバルブ15の開放方向)に付勢されている。DCモータ17とスロットルバルブ15との間に介在された電磁クラッチ16が切られているとき(クラッチOFF時)には、図2(b)に示すように、退避走行用スプリング39によってバルブレバー38が中間レバー40に当接した状態に保持される。この中間レバー40は、バルブリターンスプリング41によって図示下方(スロットルバルブ15の閉鎖方向)に付勢されている。
【0020】
このバルブリターンスプリング41の引張力は退避走行用スプリング39の引張力よりも大きく設定されている。従って、電磁クラッチ16が切られているとき(クラッチOFF時)には、図2(b)に示すように、バルブリターンスプリング41の引張力が退避走行用スプリング39の引張力に打ち勝って、中間レバー40が中間ストッパ42に当接した状態に保持され、それによって、スロットルバルブ15の開度が中間ストッパ42で規制される開度(約3deg)に保持される。
【0021】
一方、電磁クラッチ16が接続されているとき(クラッチON時)には、アクセルペダル26の操作に応じてDCモータ17を正転又は逆転させてスロットルバルブ15の開度を調整し、そのときのスロットルバルブ15の開度(スロットル開度)TAがスロットルセンサ18によって検出される。この際、スロットル開度TAを開く場合には、DCモータ17を正回転させて、図2(a)に示すようにバルブレバー38がバルブリターンスプリング41の引張力に抗して中間レバー40を押し上げながら、スロットルバルブ15の開度を開く方向に駆動する。これとは逆に、スロットル開度TAを閉じる場合には、DCモータ17を逆回転させてバルブレバー38を下降させながらスロットルバルブ15を閉じる方向に駆動し、スロットルバルブ15を全閉ストッパ位置(スロットル開度=0deg)まで閉じたときに、バルブレバー38がスロットル全閉ストッパ43に突き当たって、それ以上の回動が阻止される。
【0022】
内燃機関11の運転中に、アクセルペダル26を操作すると、電子制御ユニット25は、アクセルセンサ27で検出されるアクセル操作量Apに応じて目標開度TACCを演算し、スロットル開度TAを目標開度TACCに一致させるようにスロットルセンサ18の出力信号に基づいてフィードバック制御すると共に、アクセル全閉後又は機関負荷変動後の機関過渡時に吸気量Ga に基づいてスロットル開度を補正する補正手段として機能する。以下、この電子制御ユニット25によるスロットル開度の制御・補正のための各処理について説明する。
【0023】
図3に示すメインルーチンは、イグニッションスイッチ(図示せず)のON後に、電子制御ユニット25によって例えば4msの周期にて繰り返し実行される。このメインルーチンの処理が開始されると、まずステップ101で、イニシャルチェック(初期化処理)を実行する。このイニシャルチェックでは、電気系統各部の通信異常の有無についてのチェックやRAM31の初期値のミラーチェック等が行われる。この後、ステップ102で、上述した各種センサやスイッチからの信号を読み込み、次のステップ103で、上記各種の信号に基づいて非線形制御ルーチンを実行し、図4に示すマップを用いて、アクセル操作量Apに対して非線形に制御するスロットルバルブ15の目標開度TACCを演算する。
【0024】
この後、ステップ104で、トラクション制御ルーチンを実行し、車両のトラクション制御量に応じたスロットルバルブ15の目標開度TTRCを演算する。そして、次のステップ105で、定速走行制御ルーチンを実行し、定速走行制御モード移行時のスロットルバルブ15の初期開度を演算すると共に、車速センサ(図示せず)を通じて検出される車両の実車連を目標車速に一致させるためのスロットルバルブ15の目標開度TCRCを演算する。
【0025】
次のステップ106では、後述する図11のアイドル回転数制御(ISC)ルーチンを実行し、アイドル時におけるスロットルバルブ15の目標開度TIDLを演算する。この後、ステップ107で、フェイル制御ルーチンを実行し、例えば電磁クラッチ16の固着フェイル又はリターンスプリング41切損時等、モータ17の制御により退避走行する場合のスロットルバルブ15の開度、すなわちフェイル時のスロットルバルブ15の目標開度TFAILを演算する。
【0026】
この後、ステップ108にて、上述したステップ103〜107で演算した非線形制御、トラクション制御、定速走行制御、1SC、及びフェイル制御に関する各目標開度に基づいて最終目標開度TTAを演算する。この演算方法は、図5に示すように、非線形目標開度TACCと定速走行目標開度TCRCとを比較して大きい方を選択した後、この選択値とトラクション目標開度TTRCとを比較して小さい方を選択し、更に、この選択値とフェイル目標開度TFAILとを比較して小さい方を選択し、最後に、この選択値にISC目標開度TIDLを加算して最終目標開度TTAを算出する。
【0027】
一般に、ポテンショメータで構成されるスロットルセンサ18は、取付誤差や温度特性、軸のがたつき等によって図6に示すようにセンサ出力に誤差が生じる。このため、スロットルセンサ18の出力電圧が同じでも、制御されるスロットル開度が誤差δθの範囲でばらつく。このような状況で、スロットルセンサ18の出力信号に基づいて従来同様のフィードバック制御を行うと、例えば無負荷レーシング直後に図7に示すようにスロットル開度が誤差δθ分だけ絞られ過ぎるおそれがあり、それによって機関回転数Neが極端に落ち込んでアイドル回転が不安定になって運転者に不快な振動を与えたり、最悪の場合にはエンストを引き起こすおそれがある。
【0028】
これを回避するために、図3のステップ108で、最終目標開度TTAを演算した後、ステップ109で、基準位置学習ルーチンを実行し、基準位置(全閉ストッパ位置)でのスロットルセンサ18の出力OTPo により基準位置(図10に示す基準電圧OTP)を補正する。これにより、スロットルセンサ18の取付誤差や温度特性、軸のがたつき等によるスロットルセンサ出力の誤差が吸収される。
【0029】
ここで、基準位置の学習方法としては図8と図9に示す2通りの方法がある。
図8に示す基準位置学習ルーチンは、例えば8ms毎に繰り返し処理され、イグニッションスイッチ(IG)がOFFからONに切り替えられた直後に、ステップ121からステップ122に進み、スロットルバルブ15を全閉ストッパ43に当接させるまで駆動し、その全閉ストッパ位置でのスロットルセンサ18の出力を読み込んでOTPo とする。そして、次のステップ123で、この全閉ストッパ位置でのスロットルセンサ出力OTPo に後述する図14の開度補正ルーチンによって演算された補正量Δθを加算して基準位置(基準電圧OTP)を補正する。これにより、図10に示す開度−電圧変換マップが補正される。
【0030】
また、図8の基準位置学習ルーチンに代えて、図9の基準位置学習ルーチンを実行しても良い。図9の基準位置学習ルーチンでは、図8のステップ122に代えて、ステップ122aの処理を実行する。すなわち、イグニッションスイッチ(IG)がOFFからONに切り替えられた直後に、ステップ121からステップ122aに進み、電磁クラッチ16がONする前にスロットルセンサ18の出力を読み込み、この出力値から全閉ストッパ位置でのスロットルセンサ出力OTPo を推定する。つまり、電磁クラッチ16がONする前(OFF状態のとき)は、図2(b)に示すように、バルブレバー38が中間レバー40に当接し、且つ中間レバー40が中間ストッパ42に当接した位置(以下この位置を「中間ストッパ位置」という)に保持される。このようにして、電磁クラッチ16がONする前は、スロットルバルブ15の開度が中間ストッパ位置(約3deg)に保持されるため、この中間ストッパ位置でのスロットルセンサ出力から全閉ストッパ位置でのスロットルセンサ出力OTPo を推定することができる。これの処理は、図8の基準位置学習ルーチンと同じである。
【0031】
以上のようにして図8又は図9に示す基準位置学習ルーチンを実行した後、図3のステップ110に戻り、図10に示す開度−電圧変換マップを用い、ステップ108で求めた最終的な目標開度TTAを目標電圧TTPに変換する。この後、ステップ111で、目標電圧TTPとスロットルセンサ18の出力電圧TAとを比較し、その偏差を小さくすべく、比例(P)・積分(I)・微分(D)処理をしてDCモータ17の駆動量(制御量)を演算する。
【0032】
そして、次のステップ112で、上記駆動量をデューティ比信号に変換し、このデューティ比信号をドライバ32を介してDCモータ17に印加するPWM出力処理を行う。これにより、スロットルバルブ15は、DCモータ17の駆動によって、上記目標電圧TTPにより指令される開度にフィードバック制御されることとなる。このフィードバック制御中は、電磁クラッチ16がON状態に保持される。
【0033】
一方、図11に示すアイドル回転数制御(ISC)ルーチンでは、まずステップ201で、アクセルセンサ27の出力に基づいてアクセルOFFであるか否かを判定し、アクセルONの場合には、ISCの処理を行わずに、ステップ211に進み、機関負荷に応じた見込み補正を行う。これに対し、アクセルOFFの場合には、ステップ201からステップ202に進み、冷却水温センサ(図示せず)により検出された冷却水温THWが70℃以上(つまり暖機完了温度以上)であるか否かを判定し、70℃未満(暖機完了前)の場合には、ステップ205に進み、予め設定された所定のマップに従って冷却水温THWに応じて目標開度TIDLを設定して、ステップ211に進む。
【0034】
また、アクセルOFFで、冷却水温THWが70℃以上の場合には、ステップ203〜205で、▲1▼アクセルOFF後3秒以上経過したか、▲2▼機関負荷変動後3秒以上経過したか、▲3▼車両停止か否かを判定する。ここで、▲1▼と▲2▼は内燃機関11が過渡状態でないための条件であり、従って、▲1▼と▲2▼の判定を行うステップ203,204の処理は、特許請求の範囲でいう過渡状態検出手段として機能する。そして、アクセルOFF後3秒以上経過し、且つ機関負荷変動後3秒以上経過している場合(つまり機関過渡時ではない場合)でも、車両が動いている場合には、ISCフィードバック処理を行わない。上記▲1▼〜▲3▼の条件を全て満した時に、ステップ207に進み、機関回転数Neが目標アイドル回転数Netに一致するように目標開度TIDLを下記式により設定し、機関回転数Neをフィードバック制御する。
【0035】
TIDL(i) =TIDL(i-1) +f(Net−Ne)
ここで、TIDLの添字の(i) は今回の値を示し、(i-1) は前回の値を示す。f(Net−Ne)は開度補正量であり、予め設定されたマップによりNet−Neに応じて設定される。
【0036】
そして、次のステップ208で、後述する図12の目標吸気量学習ルーチンを実行し、その後、ステップ211に進み、機関負荷に応じた見込み補正を行い、本ルーチンを終了する。
【0037】
ところで、機関回転数Neを目標アイドル回転数Netに制御するために必要な吸気量は、内燃機関11に加わる負荷の大小で異なるため、図12の目標吸気量学習ルーチンでは、機関負荷に応じて4つの学習値Gaisc1 〜Gaisc4 を次のようにして求める。まず、ステップ131で、機関回転数Neが目標アイドル回転数Net付近であるか否かを判定し、機関回転数Neが目標アイドル回転数Net付近である場合に、ステップ132以降の学習処理を行う。この学習処理では、まずステップ132〜134で、エアコンのON/OFFと自動変速機のシフト位置とに基づいて機関負荷を判定し、その判定結果に応じて次の▲1▼〜▲4▼のいずれかの学習処理が行われる。
【0038】
▲1▼エアコンがONで自動変速機のシフトがDレンジの場合には、ステップ135に進み、その時の吸気量Ga を用いて目標空気量の学習値Gaisc1 を次式により1/8なまし処理して求める。
Gaisc1(i)={Ga +7・Gaisc1(i-1)}/8
ここで、Gaisc1 の添字の(i) は今回の学習値を示し、(i-1) は前回の学習値を示す(以下、同様)。
【0039】
▲2▼エアコンがONで自動変速機のシフトがNレンジの場合には、ステップ136に進み、その時の吸気量Ga を用いて目標空気量の学習値Gaisc2 を次式により1/8なまし処理して求める。
Gaisc2(i)={Ga +7・Gaisc2(i-1)}/8
【0040】
▲3▼エアコンがOFFで自動変速機のシフトがDレンジの場合には、ステップ137に進み、その時の吸気量Ga を用いて目標空気量の学習値Gaisc3 を次式により1/8なまし処理して求める。
Gaisc3(i)={Ga +7・Gaisc3(i-1)}/8
【0041】
▲4▼エアコンがOFFで自動変速機のシフトがNレンジの場合には、ステップ138に進み、その時の吸気量Ga を用いて目標空気量の学習値Gaisc4 を次式により1/8なまし処理して求める。
Gaisc4(i)={Ga +7・Gaisc4(i-1)}/8
【0042】
一方、図11のステップ203,204のいずれかで「No」と判定された場合、つまりアクセルOFF後3秒未満の場合、又は機関負荷変動後3秒未満の場合(つまり機関過渡時の場合)には、通常のISCフィードバック制御(ステップ207の処理)では、機関回転数Neが極端に落ち込んでアイドル回転が不安定になったり、最悪の場合にはエンストを引き起こすおそれがあるので、これをステップ209,210の処理によって未然に防ぐ。
【0043】
この場合、ステップ209では、図13に示す目標空気量設定ルーチンを実行し、機関負荷に応じて目標空気量Gaiscを次のように設定する。まずステップ141〜143で、エアコンのON/OFFと自動変速機のシフト位置とに基づいて機関負荷を判定し、▲1▼エアコンがONで自動変速機のシフトがDレンジの場合には、ステップ144に進み、目標空気量Gaiscとして図11のステップ135で求めた学習値Gaisc1 を選択する。▲2▼エアコンがONで自動変速機のシフトがNレンジの場合には、ステップ145に進んで、目標空気量Gaiscとして図11のステップ136で求めた学習値Gaisc2 を選択する。▲3▼エアコンがOFFで自動変速機のシフトがDレンジの場合には、ステップ146に進んで、目標空気量Gaiscとして図11のステップ137で求めた学習値Gaisc3 を選択する。▲4▼エアコンがOFFで自動変速機のシフトがNレンジの場合には、ステップ147に進み、目標空気量Gaiscとして図11のステップ138で求めた学習値Gaisc4 を選択する。
【0044】
以上のようにして機関負荷に応じて目標空気量Gaiscを設定した後、図11のステップ210に進み、図14に示す開度補正量算出ルーチンを実行し、吸気量Ga と目標空気量Gaiscとに基づいて目標開度を補正し、その後、ステップ211に進み、機関負荷に応じた見込み補正を行い、本ルーチンを終了する。
【0045】
図14に示す開度補正量算出ルーチンは、ISCが行われる毎に、そのISC開始当初に開度補正量Δθを1回だけ演算する。具体的には、まずステップ151で、アクセルONになったか(つまりアクセルペダル26が踏まれたか)否かを判定し、アクセルONになった場合には、ステップ152に進み、ISC補正フラグXISCを0にセットして本ルーチンを終了する。一方、アクセルOFFの場合には、ステップ153に進み、ISC補正フラグXISCが0か否かを判定し、XISC=1の場合には、既に開度補正量Δθを算出済みであるので、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0046】
これに対し、XISC=0の場合、つまりISC開始当初で、開度補正量Δθが算出されていない場合には、ステップ154に進み、吸気量Ga を目標空気量Gaiscと比較し、Ga <Gaisc−α(但しαはしきい値)であるか否かを判定する。もし、Ga <Gaisc−αであれば、ステップ155に進み、開度補正量Δθを0.5degに設定する。これにより、スロットル開度を0.5deg開く方向に補正して、機関回転数Neの落ち込みを防ぐ。そして、次のステップ156で、ISC補正フラグXISCを1にセットして本ルーチンを終了する。
【0047】
一方、Ga ≧Gaisc−αの場合には、ステップ154からステップ157に進み、吸気量Ga の変化量の絶対値|Ga(i)−Ga(i-1)|が所定値K以下であるか否かを判定し、|Ga(i)−Ga(i-1)|≦Kの場合には、ステップ158に進み、予め設定された補正マップを用いて、開度補正量Δθを目標空気量Gaiscと吸気量Ga との偏差に応じて設定する。この後、ステップ156で、ISC補正フラグXISCを1にセットして本ルーチンを終了する。
【0048】
このようにして、ステップ155又は158で算出された開度補正量Δθは、前述した図8又は図9の基準位置学習ルーチンのステップ123において基準位置(スロットル全閉位置)の基準電圧OTPを補正するのに用いられ、これによりアクセルOFF後又は機関負荷変動後の機関過渡時にスロットル開度が補正され、機関回転数Neが落ち込むことが未然に防止される。
【0049】
以上の処理を行った場合の挙動を図15のタイムチャートに従って説明する。アクセルが全閉(OFF)されると、直ちにスロットル開度が絞られて、吸気量Ga が急激に減少する。そして、ISCフィードバック制御時の目標吸気量学習値Gaiscと吸気量Ga との偏差ΔGa =Gaisc−Ga がしきい値αを越えると、基準位置(スロットル全閉位置)の基準電圧OTPをΔθ補正する。これにより、スロットル開度が増加し、吸気量Ga が増加して、機関回転数Neの落ち込みを防止する。
【0050】
図16のタイムチャートは、目標アイドル回転数=650rpm、スロットルセンサ誤差=−0.4degの条件で試験した無負荷レーシング直後の機関回転数Ne、吸気量Ga 、スロットルセンサ出力(バルブ開度)の変化を示したものであり、(a)は基準位置の補正なしの場合(従来例に相当)、(b)は基準位置の補正ありの場合(本実施形態)である。
【0051】
(a)基準位置の補正なしの場合には、機関回転数Neが落ち込んでからでないと、Neフィードバック制御によるスロットル開度の増加補正が行われないため、機関回転数Neが大きく落ち込んでしまい、最悪の場合にエンストしてしまう。
【0052】
これに対し、(b)基準位置の補正ありの場合には、吸気量Ga がGaisc−αより低下した時点で、スロットル開度が例えば0.48deg増加補正され、それによって吸気量Ga が早めに増加されて、機関回転数Neの落ち込みが防止される。
【0053】
この図16(a),(b)のタイムチャートに示すように、吸気量Ga が減少してから少し遅れて機関回転数Neが低下するため、無負荷レーシング直後に吸気量Ga がGaisc−αより低下した時点でも、まだ機関回転数Neが1000rpm以上である。従って、(b)のように、Ga <Gaisc−αになった時点で、直ちにスロットル開度を増加補正すれば、機関回転数Neが目標アイドル回転数に低下する前に速やかに吸気量Ga を増加させることができ、それによって、機関回転数Neの落ち込みを防止しながら、速やかに機関回転数Neを目標アイドル回転数付近で安定させることができる。
【0054】
以上説明した一実施形態では、図14の処理によりスロットル開度が開側/閉側のいずれの方向にも補正されるが、図17に示す参考例では、スロットル開度の補正を閉側のみ行って、機関回転数Neの落ち込みを防止する。図17の開度補正ルーチンは、アクセル全閉後又は機関負荷変動後の機関過渡時に実行される。本ルーチンでは、まずステップ301で、吸気量GaをISCフィードバック制御時の目標吸気量学習値Gaiscと比較し、Ga>Gaiscの場合には、スロットル開度を補正することなく、本ルーチンを終了する。一方、Ga>Gaiscの場合には、ステップ302に進み、吸気量Gaを目標吸気量学習値Gaiscに一致させるように、目標開度TIDLを次式により算出して、スロットル開度をPIDフィードバック制御する。
【0055】
【数1】
ここで、Kp,Ki,Kdは比例、積分、微分動作のパラメータである。
【0056】
以上説明した各実施形態は、いずれも、アクセル全閉後又は機関負荷変動後の機関過渡時に吸気量Ga に基づいてスロットル開度を補正するようにしたが、機関過渡時には吸気管圧力の変化から少し遅れて機関回転数Neが変化するため、吸気量Ga に代えて吸気管圧力を用いることが可能である。従って、吸気管圧力を検出する機関制御システムに本発明を適用する場合には、機関過渡時に吸気管圧力に基づいてスロットル開度を補正するようにすれば良く、この場合でも、機関回転数Neの落ち込みを防止できる。
【0057】
また、上記各実施形態は、いずれも、本発明を電子スロットルシステムに適用したものであるが、バイパスエア式のISCシステムにも適用可能である。バイパスエア式のISCシステムの場合には、図11と同様の処理によってISCバルブの開度を補正すれば良い。
【0058】
また、機関過渡時に補正の対象とする内燃機関11の制御量は、スロットル開度やISCバルブの開度(つまり吸気量)に限定されず、点火時期や燃料噴射量等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す内燃機関制御システム全体の概略構成図
【図2】電子スロットルシステムの概略構成図で、(a)は通常制御時(クラッチON時)の状態を示す図、(b)はクラッチOFF時の状態を示す図
【図3】メインルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図4】アクセル操作量Apから非線形目標開度TACCを設定するためのマップを示す図
【図5】非線形目標開度TACC、定速走行目標開度TCRC、トラクション目標開度TTRC、フェイル目標開度TFAIL、ISC目標開度TCRCから最終目標開度TTAを設定する手順を説明する図
【図6】スロットル開度TAとスロットルセンサ出力の誤差との関係を説明する図
【図7】無負荷レーシング直後のスロットル開度と機関回転数Neに対してスロットルセンサ出力の誤差が及ぼす影響を説明する図
【図8】基準位置学習ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図9】他の基準位置学習ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図10】目標開度TTAを目標電圧TTPに変換するマップを示す図
【図11】アイドル回転数制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図12】目標吸気量学習ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図13】目標吸気量設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図14】開度補正量算出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図15】無負荷レーシング直後のスロットル開度、吸気量Ga 、基準位置(基準電圧OTP)の変化の一例を説明するタイムチャート
【図16】無負荷レーシング直後の機関回転数Ne、吸気量Ga 、スロットルセンサ出力の実測値を示すタイムチャートで、(a)は基準位置の補正なしの場合のタイムチャート、(b)は基準位置の補正ありの場合のタイムチャート
【図17】本発明の他の実施形態における開度補正ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
11…内燃機関、12…吸気管、14…エアフローメータ、15…スロットルバルブ、16…電磁クラッチ、17…DCモータ(スロットル駆動手段)、18…スロットルセンサ、25…電子制御ユニット(過渡状態検出手段,補正手段,スロットル制御手段)、26…アクセルペダル、27…アクセルセンサ、34…アクセルレバー、35,36…アクセルリターンスプリング、37…アクセル全閉レバー、38…バルブレバー、39…退避走行用スプリング、40…中間レバー、41…バルブリターンスプリング、42…中間ストッパ、43…スロットル全閉ストッパ。
Claims (5)
- アクセル全閉後の機関過渡状態を検出する過渡状態検出手段と、
内燃機関の回転数を目標アイドル回転数に少なくとも積分項を含み吸気量を制御対象として機関回転数をフィードバック制御するアイドル回転数制御時に前記過渡状態検出手段によりアクセル全閉後の機関過渡状態が検出されたとき(以下「機関過渡時」という)に、実際の吸気量又は実際の吸気管圧力に基づいてアイドル回転数制御開始当初の開度補正量を一回だけ演算し、該補正量に基づいて内燃機関の吸気量を補正する補正手段とを備えた内燃機関のアイドル回転数制御装置。 - 前記補正手段は、機関過渡時に吸気量又は吸気管圧力の検出値又はその変化量に応じて内燃機関の制御量を補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のアイドル回転数制御装置。
- 内燃機関のアイドル回転数制御中に吸気量又は吸気管圧力の目標値を学習する学習手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の内燃機関のアイドル回転数制御装置。
- 前記補正手段は、機関過渡時に前記学習手段による学習値と吸気量又は吸気管圧力の検出値との偏差に応じて内燃機関の制御量を補正することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のアイドル回転数制御装置。
- アクセル操作量を検出するアクセルセンサと、スロットルバルブを駆動するスロットル駆動手段と、前記アクセル操作量に応じたスロットル開度となるように前記スロットル駆動手段を制御すると共にアクセル全閉後のアイドル回転数制御を前記スロットル開度の調整により行うスロットル制御手段とを備えた電子スロットルシステムに適用され、前記補正手段による補正の対象となる内燃機関の制御量を、スロットル開度としたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のアイドル回転数制御装置。
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