JP3772357B2 - スパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体集積回路用フォトマスクの遮光膜を製造する際等に使用される実質的にクロム、炭素及び窒素からなるスパッタリングターゲットとその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSIもしくはVLSIなどの半導体集積回路の製造プロセスでは、フォトマスクと呼ばれるガラス基板上に所定のパターンが金属遮光膜により描かれた原板を用いてリソグラフィー法によりウエハー上にAl配線等の回路パターンが形成される。
【0003】
フォトマスク用の金属遮光膜としては、金属クロムのターゲットを用いた真空蒸着法あるいはスパッタリング法により作製される金属クロム薄膜が最も一般的である。スパッタリング法によりガラス基板上に形成された金属クロム薄膜は、真空蒸着法により作製された金属クロム薄膜に比べてガラス基板に対する密着性が強固であり、フォトマスクの耐久性が向上するのでフォトマスク用金属クロム薄膜の作製方法としてはスパッタリング法が主流となっている。
【0004】
金属クロム薄膜は光沢を持つため、クロム単層膜を形成しただけのフォトマスクではパターン転写時に多重反射が生じパターニング時の図形精度が低下すると言う問題点がある。このためフォトマスクを作製する際には、窒化クロム薄膜からなる低反射膜を反射防止膜として金属クロム薄膜上に積層し遮光膜を二層構造とすることが一般的である。これらの反射防止膜を作製する方法としては、スパッタリングターゲットとして金属クロムを用い反応性スパッタリングにより所定の組成の窒化クロム薄膜を作製する方法と、スパッタリングターゲットとして所定の組成の窒化クロムターゲットを用いアルゴンガスによりスパッタリングを行う方法がある。しかし反応性スパッタリングにより窒化クロム薄膜を作製する場合、一定組成の窒化クロム薄膜をターゲット寿命の初期から末期にかけて安定して生産するためにはスパッタリングガス中の窒素量を厳密に制御する必要がある。このため窒化クロム薄膜を作製する方法としては、スパッタリングターゲットとして窒化クロムターゲットを用いアルゴンガスによりスパッタリングを行う方法がある。
【0005】
フォトマスク上に形成される回路パターンは以下のようにして作製される。始めにフォトマスクブランクスと呼ばれる、全面に金属クロム薄膜と窒化クロム薄膜からなる遮光膜が形成されたガラス基板にレジストを塗布し、次いで所定のパターンを光あるいは電子線等を用いて描画する。次に描画の終了したレジストを現像し、その後不要な遮光膜をエッチングにより除去し、最後にレジストを剥離してフォトマスクとする。しかしフォトマスクブランクス上に形成された不要な遮光膜をエッチングにより除去する場合、遮光膜を形成する金属クロム薄膜と窒化クロム薄膜により構成される反射防止膜のエッチング速度が異なるため、エッチング後のパターンのエッジ部分の形状が金属クロム薄膜と窒化クロム薄膜の間で一致せずパターンの精度が低下するという問題点があった。
【0006】
このような問題点を解決する手段として、反射防止膜である窒化クロム薄膜を形成する際、スパッタリングガス中にメタンガスを混合させることにより反射防止膜中に炭素原子を導入し、薄膜の一部を炭化させた炭化窒化クロム薄膜としてエッチング速度を制御し回路パターンの精度低下を防止する方法が知られている。しかしこの場合、従来のような窒化クロムターゲットを用いるとスパッタリングがメタンガスによる反応性スパッタリングとなるため炭素含有量の一定した炭化窒化クロム薄膜を得難いと言う問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術の上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は膜中の炭素含有量の一定したフォトマスク用炭化窒化クロム反射防止膜を作製することができるスパッタリングターゲットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、所定量の炭素及び窒素を含有し、実質的にクロム、炭素及び窒素からなるスパッタリングターゲットを用いアルゴンガス中でスパッタリングすることにより、炭素含有量の一定した、特に膜厚方向において炭素含有量が一定なフォトマスク用炭化窒化クロム反射防止膜をターゲット使用初期から末期にかけて容易に安定して生産できることを見出し本発明を完成した。
【0009】
又、このターゲットは限定された窒素を含む窒化クロム粉末と、炭化クロム粉末および金属クロム粉末の混合物を熱間静水圧プレス法を用いて焼結する方法で簡便に得られることを見出した。
【0010】
即ち本発明は、クロム、炭素及び窒素からなり、その炭素含有量が0.1〜5wt% 、窒素含有量が1〜10wt% であることを特徴とするスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に関るクロム、炭素及び窒素からなるスパッタリングターゲットは、次のような手段で製造することができる。
【0013】
本発明の方法は原料として、炭化クロム、金属クロム及び所定量の窒素を含む窒化クロムを用いることが特徴であるが、ここで用いる所定量の窒素を含む窒化クロムは例えば次の方法で得られる。即ち、通常粒度100メッシュ以下に調整された金属クロム粉末を、まずロータリーキルン炉等の密閉可能な焼成炉で、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で加熱する。この加熱はこれら不活性ガスを1〜10 SLM程度の速度で流しながら炉内圧力をゲージ圧で0.01〜0.02 kg/cm2 に保持した状態で行うことが好ましく、この際の昇温速度は450℃/hr 以下であることが窒化反応前の原料粉末を均一に加熱する上で好ましい。焼成炉の温度が後の窒化反応を行う温度(800〜1000℃)に達した後、炉内の金属クロム粉末の温度むらを解消するために、炉内の不活性ガス圧力を0.01〜0.02 kg/cm2 に保ちながら30〜60分程度上記温度を維持することが好ましい。
【0014】
次に不活性ガスの供給を止め、炉内に窒素ガスあるいは窒素ガスと不活性ガスの混合ガス、好ましくは窒素ガスが10%以上の混合ガスを供給し炉内圧力を0.01〜0.04 kg/cm2 に保持しながら800〜1000℃の温度範囲で10〜180分間窒化処理を行う。この時の反応ガスの供給量は5 SLM以上であることが好ましい。
【0015】
所定の反応時間が経過した後、反応ガスの供給を止め再び不活性ガスを1〜10 SLM程度流しながら室温まで炉内を冷却する。以上述べた様な窒化処理を行うことにより粒度100メッシュ以下で窒素含有量が1〜12wt% の窒化クロム粉末が得られる。
【0016】
本発明の方法で、窒化クロム粉末と混合する炭化クロム粉末及びクロム粉末は、通常、100メッシュ以下に調整した粉末を用いるが、混合粉末中の炭素含有量が0.1〜5wt% になるよう夫々の量を混合し混合粉末とする。混合粉末中の炭素含有量が0.1wt% 未満であると十分なエッチング速度制御効果を得るのが困難でであり、又、逆に炭素含有量が5wt% を越えると得られる焼結体が脆くなりその後の機械加工で焼結体が破損する恐れがある。ここで用いる炭化クロムとしてはCr3 C2 、Cr7 C3 、Cr23C6 があるが、中でも安価でかつ安定なCr3 C2 を用いることが好ましい。又、混合粉末中の窒素含有量は10wt% 以下に調整することが好ましい。混合粉末中の窒素含有量が1wt% 未満であると得られる薄膜の反射率低減効果が不十分となり、逆に混合粉末中の窒素含有量が10wt% を越えると焼結後の機械加工において加工不良を生じる恐れがある。
【0017】
次に上記の方法により製造した混合粉末は金型プレス成形又は冷間等方圧加工(CIP)により所望の大きさの成形体とする。金型プレス成形を行う場合は、所定の大きさの金型に混合粉末を充填した後、プレス機を用いて100〜400 kg/cm2 の圧力でプレスし成形体とする。このようにして得られた成形体の密度を更に上昇させるため、3ton/cm2 以上好ましくは4ton/cm2 以上の圧力でCIP処理を一回以上施すことが好ましい。一方、CIP処理のみにより成形体を製造する場合は、混合粉末を所定の大きさの伸縮可能なゴム製等の型に充填した後、型を真空密閉し4ton/cm2 以上の圧力で処理し成形体とする。
【0018】
このようにして得られた混合粉末からなる成形体は次いで焼結を行うが、本発明の方法ではこの焼結はHIP法により行う。即ち、成形体をステンレス製等の缶体又は箔で真空密閉しカプセル化した後、HIP炉にてアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で焼結する。この際の焼結温度は1100〜1350℃であることが好ましい。焼結温度が1100℃未満であると充分な焼結密度が得られず、本発明の効果を得るに充分な焼結体が得にくくなる。逆に焼結温度が1350℃を越えると成形体を密閉しているカプセルからの不純物質の製品への混入の恐れが多くなる。焼結の際の昇温速度は300℃/hr 以下が好ましく、焼結時間は充分な焼結密度を得るために1時間以上とすることが好ましい。又、焼結時の炉内圧力は焼結体に対する充分な密度上昇効果を得るため1000 kg/cm2 以上、特に好ましくは1200 kg/cm2 程度で行うことである。
【0019】
このようにして得られた焼結体は、クロム、炭素及び窒素からなり、炭素を0.1〜5wt% 、窒素を1〜10wt% 含有する焼結体であるが、炭素及び窒素をこの範囲の量含む焼結体は加工性に優れ、平面研削盤等を用いて所定の大きさに切削加工したものは表面状態の優れたターゲットとして得られる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
実施例1
粒度100メッシュ以下に調整された原料金属クロム粉末10kgをロータリーキルン炉に入れ、炉内の空気を真空ポンプで5Torrまで排気し、続いてアルゴンガスを700Torrまで導入した後、再び5Torrまで炉内を排気し、炉内にアルゴンガスを6SLM 流し炉内圧力をゲージ圧で0.02 kg/cm2 に保持しながら、回転数2rpm 、昇温速度450℃/hr で加熱した。炉内温度が900℃に達した後、30分間炉内のアルゴンガス圧を0.02 kg/cm2 に保ちながら上記温度を維持した。次にアルゴンガスの導入を止め、窒素ガスを10SLM流し炉内圧を0.03 kg/cm2 に保ちながら温度900℃で60分間窒化反応を行なった。反応終了後窒素ガスの導入を止め、アルゴンガスを6SLM 流し炉内のアルゴンガス圧を0.03 kg/cm2 に保持し室温まで自然冷却した。
【0022】
上記の条件により製造した窒化クロム粉末中の窒素含有量は8.4wt% であった。次に、得られる炭化窒化クロム粉末中の炭素含有量が1wt% 、窒素含有量が6wt% になるように、100メッシュ以下に調整された二炭化三クロム粉末420g と、上記条件により製造した窒化クロム粉末4000g 及び100メッシュ以下に調整された原料クロム粉末1180g を混合し、その5.6kgをゴム製の型に充填しプレス圧力4.8ton/cm2 で5分間CIP処理して155mm×500mm×16mmの大きさの成形体とした。得られた成形体の密度は4.5g/cm3 であった。次にこの成形体をステンレス箔で形成したカプセル内に密閉し次の条件で焼結を行った。
【0023】
焼結温度:1230℃、昇温速度:300℃/hr 、焼結時間:1時間、焼結圧力:1000 kg/cm2 、焼結雰囲気:アルゴン
得られた炭化窒化クロム焼結体の密度は6.45g/cm3 であった。この焼結体から3”φ×5mmt の炭化窒化クロムスパッタリングターゲットを製造した。このターゲットを以下の条件でスパッタリングした結果、作製された炭化窒化クロム薄膜中の炭素含有量は0.9wt% 、窒素含有量は5.2wt% でターゲット使用初期から末期にかけてほぼ一定とであった。
【0024】
スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタ、DC電力:250w (5.5w/cm2 )、アルゴンガス流量:15SCCM、スパッタリングガス圧:0.6Pa
又金属クロムスパッタリングターゲットと上記炭化窒化クロムスパッタリングターゲットを用い次の条件でスパッタリングを実施して金属クロム薄膜と炭化窒化クロム薄膜からなる2層膜を作製した。
【0025】
▲1▼クロム薄膜;スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタ、DC電力:250w (5.5w/cm2 )、アルゴンガス流量:10SCCM、スパッタリングガス圧:0.5Pa、膜厚:60nm
▲2▼炭化窒化クロム薄膜;スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタ、DC電力:250w (5.5w/cm2 )、アルゴンガス流量:15SCCM、スパッタリングガス圧:0.6Pa、膜厚:50nm
以上の方法により作製した2層膜にレジストを塗布してパターンニングし、その後ウエットエッチングして回路パターンを形成した。得られたパターンのエッジ部の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、クロム薄膜と炭化窒化クロム薄膜のエッジ部には食い違いは見られず全体として垂直になっており良好な形状であった。
【0026】
実施例2
粒度100メッシュ以下に調整された原料金属クロム10kgをロータリーキルン炉に入れ、実施例1と同様の方法で窒化反応を行い窒素含有量が8.4wt% の窒化クロム粉末を製造した。次に、得られる炭化窒化クロム粉末中の炭素含有量及び窒素含有量がそれぞれ2wt% 及び4wt% になるように、100メッシュ以下に調整された二炭化三クロム粉末840g に上記条件により製造した窒化クロム粉末2670g 及び100メッシュ以下に調整された原料クロム粉末2090g を混合し、実施例1と同様な方法で成形、焼結した。
【0027】
得られた炭化窒化クロム焼結体の密度は6.61g/cm3 であった。この焼結体から3”φ×5mmt の炭化窒化クロムスパッタリングターゲットを製造し、実施例1と同様の条件でスパッタリングを実施したところ、作製された炭化窒化クロム薄膜中の炭素含有量は1.9wt% 、窒素含有量は3.7wt% でターゲット使用初期から末期にかけてほぼ一定であった。又実施例1と同様の方法で金属クロム薄膜と炭化窒化クロム薄膜からなる2層膜を作製しそのエッチング特性をSEM観察により評価したところ、クロム薄膜と炭化窒化クロム薄膜のエッジ部には食い違いは見られず全体として垂直になっており良好な形状であった。
【0028】
比較例1
実施例1と同様の方法で作製した粒度100メッシュ以下で窒素含有量8.4wt% の窒化クロム粉末と100メッシュ以下に調整された原料クロム粉末を用い、混合粉末中の窒素含有量が6wt% となるような割合に混合して実施例1と同様の方法で成形、焼結を行い焼結密度6.61g/cm3 窒化クロム焼結体を作製した。この焼結体から3”φ×5mmt の窒化クロムスパッタリングターゲットを製造し、以下の条件でスパッタリングを実施した。
【0029】
スパッタリング方式:DCマグネトロンスパッタ、DC電力:250w (5.5w/cm2 )、アルゴンガス流量:14SCCM、メタンガス流量:1SCCM、スパッタリングガス圧:0.6Pa
作製された炭化窒化クロム薄膜中の炭素含有量及び窒素含有量はターゲット使用初期にはそれぞれ0.9wt% 及び5.2wt% であった、ターゲット使用末期には窒素含有量には変化がなかったものの、炭素含有量は1.1wt% に増加した。又実施例1と同様の方法で金属クロム薄膜と炭化窒化クロム薄膜からなる2層膜を作製しそのエッチング特性をSEM観察により評価したところ、ターゲット使用末期ではクロム薄膜と炭化窒化クロム薄膜のエッジ部に食い違いが見られ、炭化窒化クロム薄膜がひさし状に突き出た形状であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明のターゲットを用いると窒素濃度及び炭素濃度が一定で膜中の欠陥のない炭化窒化クロム膜を容易に生産性良く得ることが可能となる。
Claims (2)
- クロム、炭素及び窒素からなり、炭素含有量が0.1〜5wt%、窒素含有量が1〜10wt%であるスパッタリングターゲット。
- 窒素含有量が1〜12wt%の窒化クロム粉末と炭化クロム粉末及び金属クロム粉末の混合物を熱間静水圧プレス法により焼結することを特徴とするクロム、炭素及び窒素からなり、炭素含有量が0.1〜5wt%で窒素含有量が1〜10wt%であるスパッタリングターゲットの製造方法。
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