JP3772083B2 - クランクシャフトおよびその製造方法 - Google Patents
クランクシャフトおよびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3772083B2 JP3772083B2 JP2000322946A JP2000322946A JP3772083B2 JP 3772083 B2 JP3772083 B2 JP 3772083B2 JP 2000322946 A JP2000322946 A JP 2000322946A JP 2000322946 A JP2000322946 A JP 2000322946A JP 3772083 B2 JP3772083 B2 JP 3772083B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- crankshaft
- flange
- oil seal
- mounting portion
- pearlite
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Shafts, Cranks, Connecting Bars, And Related Bearings (AREA)
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランクシャフトに係り、特に、クランクケースとの密閉部分であるオイルシール取付部の硬化処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジン等のクランクシャフトは、一般に、機械構造用炭素鋼を材料としており、素材を熱間鍛造して得られた成形体に、ピンやジャーナル、フランジあるいは油孔等を形成する機械加工を施して製造されている。クランクシャフトは、内燃機関の爆発力や自身の回転慣性力を受けることから全体的に高い疲労強度が要求され、このような特性を付与するために、従来では、熱間鍛造後の成形体を急冷して高強度パーライト組織を得ることにより、硬さを増大させている。また、特に強い負荷がかかるピンやジャーナルには、高周波焼入れ等により表面硬化処理を施す場合もある。
【0003】
上記クランクシャフトの一端には、通常、フライホイールが結合されるフランジが一体に成形されており、このフランジの外周面には、エンジンブロック内からの潤滑油の漏出を防ぐオイルシールが取り付けられる。ところで、このオイルシールによるシール部分に至った潤滑油は流動しにくい場合が多いので、潤滑油に混入する異物粒子がその部分に堆積しやすく、その堆積物によりフランジの外周面が摩耗してシール性が損なわれるおそれがある。異物粒子としては、エンジンの燃焼により発生する主にCからなるスラッジや、エンジンの各摩耗部分に発生するFe、Cu等の摩耗粉、あるいは、路上ダストに含まれるSiO2、Fe2O3、Al2O3等の粒子が挙げられる。これらの中でも、Al2O3(アルミナ)はかなり硬く(αアルミナは2000Hv程度)、このアルミナによっても摩耗を受けにくい高レベルの耐摩耗性が、フランジの外周面には要求される。そこで、上記のクランクシャフト全体の硬さを増大させる処理は、フランジの耐摩耗性の増大を兼ねていると言える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような急冷硬化処理によりクランクシャフトの疲労強度が向上し、併せてフランジの良好な耐摩耗性も得られるわけであるが、その反面、全体が高硬度化されたことによりクランクシャフト自体の機械加工性は著しく悪化してしまう。このため、ピンやジャーナルの形成、あるいはピンやジャーナルに油孔を形成する等の機械加工が困難となり、生産性の面では不利であった。
【0005】
したがって、本発明は、ピンやジャーナル、油孔等を容易に形成することができる良好な機械加工性と、上記フランジのようなオイルシール取付部の高い耐摩耗性とを両立させることができるクランクシャフトおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のクランクシャフトは、軸方向一端にオイルシール取付部を備えた鋼製のクランクシャフトであって、素材を熱間鍛造して当該クランクシャフトを成形し、この後に行う空冷工程において、オイルシール取付部のみが急冷されてその表面層が硬化された後に空冷されており、該表面層のパーライト面積率が75〜100%、オイルシール取付部以外の他の部分およびオイルシール取付部の内部のパーライト面積率が40〜60%であることを特徴としている。本発明の急冷は、マルテンサイト変態させる通常の焼入れとは異なり、パーライト組織を多く得るための制御冷却を言う。なお、この制御冷却の効果が十分に発揮される上で、本発明のクランクシャフトの材料はS40C、あるいはこの付近の炭素量を有する中炭素鋼が好適である。
【0007】
また、本発明のクランクシャフトの製造方法は、上記本発明のクランクシャフトを好適に得る方法であって、軸方向一端にオイルシール取付部を備えたクランクシャフトの製造方法であって、鋼製の素材を熱間鍛造して所定形状に成形し、次いで、その成形体を0.1〜1.5℃/secの冷却速度で空冷処理する際に、オイルシール取付部のみを5〜80℃/secの冷却速度で急冷してその表面層を硬化させた後に空冷を続けることにより該表面層のパーライト面積率を75〜100%、オイルシール取付部以外の他の部分およびオイルシール取付部の内部のパーライト面積率を40〜60%とし、、この後、成形体に機械加工を施すことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、熱間鍛造して得られたクランクシャフトの空冷工程においてオイルシール取付部のみが急冷され、その表面層が硬化されており、オイルシール取付部を除いた主体部(ジャーナル、ピン、アーム、バランスウエイト等からなる主たる部分)の硬さは比較的低く抑えられる。熱間鍛造時の素材は、オーステナイト組織に加熱され、そのオーステナイト中に炭素が分散している。そして、熱間鍛造後に空冷すなわち焼なましされる主体部は、冷却速度が遅いことからオーステナイト中の炭素が十分拡散し、比較的軟質で機械加工性に富むフェライトとパーライトの混合組織に変態している。この主体部においては、材料組織中にフェライトが多く現出し、パーライトの占める面積が小さいので比較的軟質となる。一方、急冷されたオイルシール取付部の表面層は冷却速度が速いことから炭素の拡散が抑えられ、フェライトがほとんど成長しないまま変態が終了し、これによってパーライトの占める面積が大きく比較的硬質となる。
【0009】
ここで、通常の焼入れにより得られるマルテンサイトと上記パーライトの硬さを比較すると、例えばS40C相当の中炭素鋼の場合、マルテンサイトが600Hv程度であり、パーライトは250Hv程度である。硬さを見た限りにおいてはマルテンサイトがパーライトよりも硬いので、焼入れ材の方が高い耐摩耗性を発揮することが推量される。しかしながら、パーライトを構成するフェライトとセメンタイトのうち、セメンタイトは1500Hv程度と著しく硬いので、パーライトの面積率が大きいと、実質的にはマルテンサイトよりもパーライトの方が高い耐摩耗性を発揮する。したがって、本発明のように急冷されたオイルシール取付部は、アルミナ等の高硬度の異物粒子による摩耗をセメンタイトが効果的に防御するので、焼入れ処理した場合よりも耐摩耗性が高い。
【0010】
本発明によれば、オイルシール取付部を除いた主体部は軟質であることから機械加工性が良好に保たれ、これにより油孔等の形成が容易である。主体部は、軟質のままでは疲労強度に劣るので、機械加工を施した後には窒化、軟窒化等の表面硬化処理を行って主体部の疲労強度を向上させればよい。一方、オイルシール取付部の表面層は硬化されて高い耐摩耗性が付与されており、エンジンブロックに嵌装された状態で、潤滑油に混入する異物粒子による摩耗が抑制され、シール性が長期にわたって確保される。
【0011】
本発明のクランクシャフトは、熱間鍛造後にオーステナイトから冷却されたことによりパーライトとフェライトとを主体とした金属組織を有しているが、高い硬さが要求されるオイルシール取付部の表面層は、硬化に寄与するパーライトの面積が大きいことが望まれる。したがって、本発明では、クランクシャフト全体がフェライトとパーライトとを主体とした金属組織を有しており、なおかつ、急冷されたオイルシール取付部の表面層のパーライトの面積率が、他の部分のパーライトの面積率よりも大きいことを好ましい形態としている。具体的には、オイルシール取付部の表面層のパーライト面積率が75〜100%に制御されると、高い耐摩耗性が得られることから好ましい。また、他の部分のパーライト面積率は、40〜60%に制御されると、良好な機械加工性を示すことから好ましい。
【0012】
上記パーライト面積率は、主に熱間鍛造後に行う冷却時の冷却速度に依存される。そこで、上記のようにオイルシール取付部のパーライト面積率を75〜100%に制御するには、急冷時の冷却速度が5〜80℃/secであると達成しやすい。また、オイルシール取付部を除く他の部分のパーライト面積率を40〜60%に制御するには、空冷時の冷却速度が0.1〜1.5℃/secであると達成しやすい。
【0013】
上記オイルシール取付部は、その表面層が急冷される一方、表面層よりも内部は、空冷される主体部の熱が伝播することにより、急冷されることなく主体部と同様に焼なましされた状態となる。このため、オイルシール取付部の内部はパーライト面積率の少ない軟質な組織となり、良好な機械加工性を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る4気筒エンジン用のクランクシャフトを示している。このクランクシャフト10は、エンジンブロックに回転自在に支持されるジャーナル1a,1b,1c,1d,1eと、コネクティングロッドが連結されるピン2a,2b,2c,2dと、ジャーナル1a〜1eとピン2a〜2dとを連結する各一対のアーム3a,3b,3c,3dと、アーム3a〜3dに連続して設けられた各一対のバランスウエイト4a,4b,4c,4dとを備えている。このクランクシャフト10の一端(図1で右端)側のジャーナル1eにはフランジ(オイルシール取付部)5が一体に成形されており、他端側のジャーナル1aには取付軸6が一体に成形されている。フランジ5には、その端面にフライホールがボルトにより固定される。また、取付軸6には、補機駆動用のクランクシャフトプーリが取り付けられる。フランジ5の外周面には、当該クランクシャフト10がエンジンブロックに嵌装された際に、エンジンブロック内の潤滑油の漏出を防ぐオイルシールが取り付けられる。また、図1の符号7は潤滑油が流入してピン2a〜2dおよびジャーナル1a〜1eの摺動面を潤滑するための油孔である。
【0015】
上記クランクシャフト10は、機械構造用炭素鋼(例えばS40C系)を材料とするもので、素材を熱間鍛造して成形された後、フランジ5のみが急冷されたことによりフランジ5の表面層が硬化されている。一方、フランジ5を除いた他の部分である主体部(ジャーナル1a〜1e、ピン2a〜2d、アーム3a〜3d、バランスウエイト4a〜4d等からなる主たる部分)は空冷により焼なましされた状態であり、したがって、その硬さは比較的低く抑えられている。具体的な硬さとしては、フランジ5の表面層が250Hv前後、主体部の表面層が180Hv前後である。
【0016】
上記主体部は、冷却速度が遅いことから熱間鍛造時のオーステナイト中の炭素が十分拡散し、比較的軟質で機械加工性に富むフェライトとパーライトの混合組織となっている。この主体部においては、オーステナイト結晶粒界を起点にフェライトが多く現出し、パーライトの占める面積が小さく、したがって、比較的軟質である。一方、急冷されたフランジ5の表面層は冷却速度が速いことから炭素の拡散が抑えられ、フェライトがほとんど成長しないまま変態が終了し、これによってパーライトの占める面積が大きく比較的硬質である。フランジ5の表面層のパーライト面積率は、75〜100%が好ましく、主体部のパーライト面積率は40〜60%が好ましい。
【0017】
上記クランクシャフト10の製造方法としては、図2に示すように、まず、素材10Aを熱間鍛造して当該クランクシャフト10の形状に成形する。熱間鍛造後の温度は、例えば1100℃程度とされる。次いで、熱間鍛造後の温度を保持した状態から、フランジ5を油冷槽20内の油に浸漬させて油冷により急冷させる一方、フランジ5を除く主体部8を空冷(徐冷)して焼なましする。このとき、急冷開始温度はA3変態点以上とする必要がある。フランジ5の表面層のパーライト面積率が75〜100%になる時点でフランジ5を油冷槽20から引き上げ、この後はクランクシャフト10全体を空冷する。これにより主体部8は焼なましされるが、この時、フランジ5の表面層よりも内部に主体部8の熱が伝播するので、フランジ5の内部は主体部8と同様に焼なましされる。
【0018】
上記の冷却処理が行われた後は、上記油孔7を形成するとともに、フランジ5の端面にフライホイール取付用のボルト孔を形成する。上記のように油孔7が形成される主体部8は軟質となっているので、油孔7を形成する際の切削性は良好である。また、フランジ5は表面層が硬化しているものの、内部が主体部8と同様に軟質となっているので、ボルト孔は比較的形成しやすい。このようにして機械加工を施した後は、クランクシャフト10全体を窒化あるいは軟窒化して表面の硬化処理を行い、主体部の疲労強度を向上させる。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
〈実施例のクランクシャフトの製造〉
S40C相当の機械構造用中炭素鋼からなる素材を1250℃に加熱し、これを熱間鍛造して図1に示したものと同様のクランクシャフトを成形した熱間鍛造後の温度は1100℃であった。次に、熱間鍛造後の温度を保持した成形体のフランジを油冷槽内の油に浸漬し、フランジを除く主体部を空冷した。油冷の条件は、油の温度が室温〜50℃の範囲、冷却速度が4〜20℃/secとした。4番ジャーナルの温度を熱伝対式温度計で管理し、その温度が800〜1000℃の範囲に達した時点で、フランジを油冷槽から引き上げ、実施例のクランクシャフトを得た。
【0020】
このクランクシャフトのフランジと、フランジを除く主体部のそれぞれの表面の硬さを測定するとともに、金属組織を顕微鏡で観察した。図3にフランジの金属組織の顕微鏡写真を、また、図4に主体部の金属組織の顕微鏡写真(いずれも倍率100倍)を示す。主体部の表面の硬さは180Hvであり、これと比較してフランジの表面の硬さは240Hvと急冷により硬化され、耐摩耗性の向上が図られている。フランジの金属組織は、パーライト(灰黒色)の面積率が約95%であった。これは、冷却速度が速いために炭素がほとんど拡散せず、フェライト(白い部分)成長できなかったためと考えられる。一方、主体部の金属組織はパーライトの面積率が約50%であった。これは、冷却速度が遅いため炭素が十分拡散し、材料組織中にフェライトが多く現出したためと考えられる。
【0021】
〈表面および内部の硬さ〉
上記実施例のクランクシャフトのフランジの表面および表面から2mm(A部)までの部分と、表面から2〜5mmの深さの部分(B部)と、表面から5mm以上の深さの部分(C部)の各硬さを調べた。各部分の測定部分を複数とし、その結果を図5に示す。また、各部分の金属組織のパーライト面積率を調べたところ、A部は90%以上、B部は50〜90%、C部は約50%であった。図5によれば、表面および表面から2mmまでのA部(表面層)の硬さは240Hv前後であり、2mm以上の深さになるしたがい硬さは低くなり、5mm以上の深さで180Hv前後の硬さを示している。C部は、フランジが油冷されても冷却速度はそれほど速くならず、油冷が終了して全体が空冷された際に、フランジ以外の主体部の熱が伝播し、主体部と同等に焼なましされたことが伺える。
【0022】
〈摩耗試験〉
上記実施例のクランクシャフトのフランジと主体部の摩耗試験を行った。また、比較例1および比較例2のクランクシャフトのフランジの摩耗試験を行った。実施例と比較例1,2の特性は以下の通りである。
[実施例]
・鋼の種類:S40C相当
・熱間鍛造後の処理:フランジ−急冷、主体部−空冷
・表面層の組織:フランジ−パーライト(95%)、主体部−フェライト・パーライト
・硬さ:フランジ:240Hv、主体部−180Hv
【0023】
[比較例1]
・鋼の種類:S50C相当
・熱間鍛造後のフランジの処理:急冷
・フランジの表面層の組織:パーライト
・フランジの硬さ:260Hv
[比較例2]
・鋼の種類:S40C相当
・熱間鍛造後のフランジの処理:焼入れ
・フランジの表面層の組織:マルテンサイト
・フランジの硬さ:570Hv
【0024】
摩耗試験は、フランジの面粗度を3.2Sとしたクランクシャフトを実機に嵌装するとともに潤滑油として擬似劣化油をエンジンオイルとして用い、クランクシャフトの回転速度:25m/S、油温:100℃、オイルシールの材質:シリコン系の条件で、150時間運転した後のフランジの摩耗量を測定した。擬似劣化油は、市販のエンジンオイル15Lに、界面活性剤(花王社製:エマルゲン)30g、カーボン粉末(東海カーボン社製:シーシストS−N700、粒径61〜100nm)300g、アルミナ(フジミインコーポレイテッド社製:A−D−20、粒径0.5μm)400gの割合で混合したものとした。
【0025】
図6は上記の条件で行った実施例のフランジと主体部および比較例1,2のフランジの摩耗量を示している。同図で明らかなように、実施例のクランクシャフトは、主体部の摩耗量に比べてフランジの摩耗量が30%程度低減しており、フランジが高い耐摩耗性を示している。また、実施例のフランジの摩耗量は、比較例2のフランジよりも25%程度少なく、焼入れ材よりも耐摩耗性が高いことが実証された。比較例1はCの含有量が0.1%程度多いS50C相当の鋼であるためもっとも摩耗量が少なかったが、実施例のフランジは比較例1と遜色ない耐摩耗性を有していると言える。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱間鍛造後の空冷工程においてオイルシール取付部が急冷されてその表面層が硬化されているので、オイルシール取付部に高い耐摩耗性を付与することができる一方、オイルシール取付部を除いた主体部の機械加工性を良好なものとすることができ、その結果、オイルシール取付部のシール性および生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの正面図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの冷却工程を示す図である。
【図3】 本発明の実施例のクランクシャフトにおけるフランジの表面層の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図4】 本発明の実施例のクランクシャフトにおける主体部の表面層の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図5】 本発明の実施例のクランクシャフトにおけるフランジの表面からの距離と硬度の関係を示す図である。
【図6】 本発明の実施例および比較例の摩耗試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d,1e…ジャーナル
2a,2b,2c,2d…ピン
3a,3b,3c,3d…アーム
4a,4b,4c,4d…バランスウエイト
5…フランジ(オイルシール取付部)
6…取付軸
7…油孔
8…主体部
10…クランクシャフト
10A…素材
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランクシャフトに係り、特に、クランクケースとの密閉部分であるオイルシール取付部の硬化処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジン等のクランクシャフトは、一般に、機械構造用炭素鋼を材料としており、素材を熱間鍛造して得られた成形体に、ピンやジャーナル、フランジあるいは油孔等を形成する機械加工を施して製造されている。クランクシャフトは、内燃機関の爆発力や自身の回転慣性力を受けることから全体的に高い疲労強度が要求され、このような特性を付与するために、従来では、熱間鍛造後の成形体を急冷して高強度パーライト組織を得ることにより、硬さを増大させている。また、特に強い負荷がかかるピンやジャーナルには、高周波焼入れ等により表面硬化処理を施す場合もある。
【0003】
上記クランクシャフトの一端には、通常、フライホイールが結合されるフランジが一体に成形されており、このフランジの外周面には、エンジンブロック内からの潤滑油の漏出を防ぐオイルシールが取り付けられる。ところで、このオイルシールによるシール部分に至った潤滑油は流動しにくい場合が多いので、潤滑油に混入する異物粒子がその部分に堆積しやすく、その堆積物によりフランジの外周面が摩耗してシール性が損なわれるおそれがある。異物粒子としては、エンジンの燃焼により発生する主にCからなるスラッジや、エンジンの各摩耗部分に発生するFe、Cu等の摩耗粉、あるいは、路上ダストに含まれるSiO2、Fe2O3、Al2O3等の粒子が挙げられる。これらの中でも、Al2O3(アルミナ)はかなり硬く(αアルミナは2000Hv程度)、このアルミナによっても摩耗を受けにくい高レベルの耐摩耗性が、フランジの外周面には要求される。そこで、上記のクランクシャフト全体の硬さを増大させる処理は、フランジの耐摩耗性の増大を兼ねていると言える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような急冷硬化処理によりクランクシャフトの疲労強度が向上し、併せてフランジの良好な耐摩耗性も得られるわけであるが、その反面、全体が高硬度化されたことによりクランクシャフト自体の機械加工性は著しく悪化してしまう。このため、ピンやジャーナルの形成、あるいはピンやジャーナルに油孔を形成する等の機械加工が困難となり、生産性の面では不利であった。
【0005】
したがって、本発明は、ピンやジャーナル、油孔等を容易に形成することができる良好な機械加工性と、上記フランジのようなオイルシール取付部の高い耐摩耗性とを両立させることができるクランクシャフトおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のクランクシャフトは、軸方向一端にオイルシール取付部を備えた鋼製のクランクシャフトであって、素材を熱間鍛造して当該クランクシャフトを成形し、この後に行う空冷工程において、オイルシール取付部のみが急冷されてその表面層が硬化された後に空冷されており、該表面層のパーライト面積率が75〜100%、オイルシール取付部以外の他の部分およびオイルシール取付部の内部のパーライト面積率が40〜60%であることを特徴としている。本発明の急冷は、マルテンサイト変態させる通常の焼入れとは異なり、パーライト組織を多く得るための制御冷却を言う。なお、この制御冷却の効果が十分に発揮される上で、本発明のクランクシャフトの材料はS40C、あるいはこの付近の炭素量を有する中炭素鋼が好適である。
【0007】
また、本発明のクランクシャフトの製造方法は、上記本発明のクランクシャフトを好適に得る方法であって、軸方向一端にオイルシール取付部を備えたクランクシャフトの製造方法であって、鋼製の素材を熱間鍛造して所定形状に成形し、次いで、その成形体を0.1〜1.5℃/secの冷却速度で空冷処理する際に、オイルシール取付部のみを5〜80℃/secの冷却速度で急冷してその表面層を硬化させた後に空冷を続けることにより該表面層のパーライト面積率を75〜100%、オイルシール取付部以外の他の部分およびオイルシール取付部の内部のパーライト面積率を40〜60%とし、、この後、成形体に機械加工を施すことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、熱間鍛造して得られたクランクシャフトの空冷工程においてオイルシール取付部のみが急冷され、その表面層が硬化されており、オイルシール取付部を除いた主体部(ジャーナル、ピン、アーム、バランスウエイト等からなる主たる部分)の硬さは比較的低く抑えられる。熱間鍛造時の素材は、オーステナイト組織に加熱され、そのオーステナイト中に炭素が分散している。そして、熱間鍛造後に空冷すなわち焼なましされる主体部は、冷却速度が遅いことからオーステナイト中の炭素が十分拡散し、比較的軟質で機械加工性に富むフェライトとパーライトの混合組織に変態している。この主体部においては、材料組織中にフェライトが多く現出し、パーライトの占める面積が小さいので比較的軟質となる。一方、急冷されたオイルシール取付部の表面層は冷却速度が速いことから炭素の拡散が抑えられ、フェライトがほとんど成長しないまま変態が終了し、これによってパーライトの占める面積が大きく比較的硬質となる。
【0009】
ここで、通常の焼入れにより得られるマルテンサイトと上記パーライトの硬さを比較すると、例えばS40C相当の中炭素鋼の場合、マルテンサイトが600Hv程度であり、パーライトは250Hv程度である。硬さを見た限りにおいてはマルテンサイトがパーライトよりも硬いので、焼入れ材の方が高い耐摩耗性を発揮することが推量される。しかしながら、パーライトを構成するフェライトとセメンタイトのうち、セメンタイトは1500Hv程度と著しく硬いので、パーライトの面積率が大きいと、実質的にはマルテンサイトよりもパーライトの方が高い耐摩耗性を発揮する。したがって、本発明のように急冷されたオイルシール取付部は、アルミナ等の高硬度の異物粒子による摩耗をセメンタイトが効果的に防御するので、焼入れ処理した場合よりも耐摩耗性が高い。
【0010】
本発明によれば、オイルシール取付部を除いた主体部は軟質であることから機械加工性が良好に保たれ、これにより油孔等の形成が容易である。主体部は、軟質のままでは疲労強度に劣るので、機械加工を施した後には窒化、軟窒化等の表面硬化処理を行って主体部の疲労強度を向上させればよい。一方、オイルシール取付部の表面層は硬化されて高い耐摩耗性が付与されており、エンジンブロックに嵌装された状態で、潤滑油に混入する異物粒子による摩耗が抑制され、シール性が長期にわたって確保される。
【0011】
本発明のクランクシャフトは、熱間鍛造後にオーステナイトから冷却されたことによりパーライトとフェライトとを主体とした金属組織を有しているが、高い硬さが要求されるオイルシール取付部の表面層は、硬化に寄与するパーライトの面積が大きいことが望まれる。したがって、本発明では、クランクシャフト全体がフェライトとパーライトとを主体とした金属組織を有しており、なおかつ、急冷されたオイルシール取付部の表面層のパーライトの面積率が、他の部分のパーライトの面積率よりも大きいことを好ましい形態としている。具体的には、オイルシール取付部の表面層のパーライト面積率が75〜100%に制御されると、高い耐摩耗性が得られることから好ましい。また、他の部分のパーライト面積率は、40〜60%に制御されると、良好な機械加工性を示すことから好ましい。
【0012】
上記パーライト面積率は、主に熱間鍛造後に行う冷却時の冷却速度に依存される。そこで、上記のようにオイルシール取付部のパーライト面積率を75〜100%に制御するには、急冷時の冷却速度が5〜80℃/secであると達成しやすい。また、オイルシール取付部を除く他の部分のパーライト面積率を40〜60%に制御するには、空冷時の冷却速度が0.1〜1.5℃/secであると達成しやすい。
【0013】
上記オイルシール取付部は、その表面層が急冷される一方、表面層よりも内部は、空冷される主体部の熱が伝播することにより、急冷されることなく主体部と同様に焼なましされた状態となる。このため、オイルシール取付部の内部はパーライト面積率の少ない軟質な組織となり、良好な機械加工性を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る4気筒エンジン用のクランクシャフトを示している。このクランクシャフト10は、エンジンブロックに回転自在に支持されるジャーナル1a,1b,1c,1d,1eと、コネクティングロッドが連結されるピン2a,2b,2c,2dと、ジャーナル1a〜1eとピン2a〜2dとを連結する各一対のアーム3a,3b,3c,3dと、アーム3a〜3dに連続して設けられた各一対のバランスウエイト4a,4b,4c,4dとを備えている。このクランクシャフト10の一端(図1で右端)側のジャーナル1eにはフランジ(オイルシール取付部)5が一体に成形されており、他端側のジャーナル1aには取付軸6が一体に成形されている。フランジ5には、その端面にフライホールがボルトにより固定される。また、取付軸6には、補機駆動用のクランクシャフトプーリが取り付けられる。フランジ5の外周面には、当該クランクシャフト10がエンジンブロックに嵌装された際に、エンジンブロック内の潤滑油の漏出を防ぐオイルシールが取り付けられる。また、図1の符号7は潤滑油が流入してピン2a〜2dおよびジャーナル1a〜1eの摺動面を潤滑するための油孔である。
【0015】
上記クランクシャフト10は、機械構造用炭素鋼(例えばS40C系)を材料とするもので、素材を熱間鍛造して成形された後、フランジ5のみが急冷されたことによりフランジ5の表面層が硬化されている。一方、フランジ5を除いた他の部分である主体部(ジャーナル1a〜1e、ピン2a〜2d、アーム3a〜3d、バランスウエイト4a〜4d等からなる主たる部分)は空冷により焼なましされた状態であり、したがって、その硬さは比較的低く抑えられている。具体的な硬さとしては、フランジ5の表面層が250Hv前後、主体部の表面層が180Hv前後である。
【0016】
上記主体部は、冷却速度が遅いことから熱間鍛造時のオーステナイト中の炭素が十分拡散し、比較的軟質で機械加工性に富むフェライトとパーライトの混合組織となっている。この主体部においては、オーステナイト結晶粒界を起点にフェライトが多く現出し、パーライトの占める面積が小さく、したがって、比較的軟質である。一方、急冷されたフランジ5の表面層は冷却速度が速いことから炭素の拡散が抑えられ、フェライトがほとんど成長しないまま変態が終了し、これによってパーライトの占める面積が大きく比較的硬質である。フランジ5の表面層のパーライト面積率は、75〜100%が好ましく、主体部のパーライト面積率は40〜60%が好ましい。
【0017】
上記クランクシャフト10の製造方法としては、図2に示すように、まず、素材10Aを熱間鍛造して当該クランクシャフト10の形状に成形する。熱間鍛造後の温度は、例えば1100℃程度とされる。次いで、熱間鍛造後の温度を保持した状態から、フランジ5を油冷槽20内の油に浸漬させて油冷により急冷させる一方、フランジ5を除く主体部8を空冷(徐冷)して焼なましする。このとき、急冷開始温度はA3変態点以上とする必要がある。フランジ5の表面層のパーライト面積率が75〜100%になる時点でフランジ5を油冷槽20から引き上げ、この後はクランクシャフト10全体を空冷する。これにより主体部8は焼なましされるが、この時、フランジ5の表面層よりも内部に主体部8の熱が伝播するので、フランジ5の内部は主体部8と同様に焼なましされる。
【0018】
上記の冷却処理が行われた後は、上記油孔7を形成するとともに、フランジ5の端面にフライホイール取付用のボルト孔を形成する。上記のように油孔7が形成される主体部8は軟質となっているので、油孔7を形成する際の切削性は良好である。また、フランジ5は表面層が硬化しているものの、内部が主体部8と同様に軟質となっているので、ボルト孔は比較的形成しやすい。このようにして機械加工を施した後は、クランクシャフト10全体を窒化あるいは軟窒化して表面の硬化処理を行い、主体部の疲労強度を向上させる。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
〈実施例のクランクシャフトの製造〉
S40C相当の機械構造用中炭素鋼からなる素材を1250℃に加熱し、これを熱間鍛造して図1に示したものと同様のクランクシャフトを成形した熱間鍛造後の温度は1100℃であった。次に、熱間鍛造後の温度を保持した成形体のフランジを油冷槽内の油に浸漬し、フランジを除く主体部を空冷した。油冷の条件は、油の温度が室温〜50℃の範囲、冷却速度が4〜20℃/secとした。4番ジャーナルの温度を熱伝対式温度計で管理し、その温度が800〜1000℃の範囲に達した時点で、フランジを油冷槽から引き上げ、実施例のクランクシャフトを得た。
【0020】
このクランクシャフトのフランジと、フランジを除く主体部のそれぞれの表面の硬さを測定するとともに、金属組織を顕微鏡で観察した。図3にフランジの金属組織の顕微鏡写真を、また、図4に主体部の金属組織の顕微鏡写真(いずれも倍率100倍)を示す。主体部の表面の硬さは180Hvであり、これと比較してフランジの表面の硬さは240Hvと急冷により硬化され、耐摩耗性の向上が図られている。フランジの金属組織は、パーライト(灰黒色)の面積率が約95%であった。これは、冷却速度が速いために炭素がほとんど拡散せず、フェライト(白い部分)成長できなかったためと考えられる。一方、主体部の金属組織はパーライトの面積率が約50%であった。これは、冷却速度が遅いため炭素が十分拡散し、材料組織中にフェライトが多く現出したためと考えられる。
【0021】
〈表面および内部の硬さ〉
上記実施例のクランクシャフトのフランジの表面および表面から2mm(A部)までの部分と、表面から2〜5mmの深さの部分(B部)と、表面から5mm以上の深さの部分(C部)の各硬さを調べた。各部分の測定部分を複数とし、その結果を図5に示す。また、各部分の金属組織のパーライト面積率を調べたところ、A部は90%以上、B部は50〜90%、C部は約50%であった。図5によれば、表面および表面から2mmまでのA部(表面層)の硬さは240Hv前後であり、2mm以上の深さになるしたがい硬さは低くなり、5mm以上の深さで180Hv前後の硬さを示している。C部は、フランジが油冷されても冷却速度はそれほど速くならず、油冷が終了して全体が空冷された際に、フランジ以外の主体部の熱が伝播し、主体部と同等に焼なましされたことが伺える。
【0022】
〈摩耗試験〉
上記実施例のクランクシャフトのフランジと主体部の摩耗試験を行った。また、比較例1および比較例2のクランクシャフトのフランジの摩耗試験を行った。実施例と比較例1,2の特性は以下の通りである。
[実施例]
・鋼の種類:S40C相当
・熱間鍛造後の処理:フランジ−急冷、主体部−空冷
・表面層の組織:フランジ−パーライト(95%)、主体部−フェライト・パーライト
・硬さ:フランジ:240Hv、主体部−180Hv
【0023】
[比較例1]
・鋼の種類:S50C相当
・熱間鍛造後のフランジの処理:急冷
・フランジの表面層の組織:パーライト
・フランジの硬さ:260Hv
[比較例2]
・鋼の種類:S40C相当
・熱間鍛造後のフランジの処理:焼入れ
・フランジの表面層の組織:マルテンサイト
・フランジの硬さ:570Hv
【0024】
摩耗試験は、フランジの面粗度を3.2Sとしたクランクシャフトを実機に嵌装するとともに潤滑油として擬似劣化油をエンジンオイルとして用い、クランクシャフトの回転速度:25m/S、油温:100℃、オイルシールの材質:シリコン系の条件で、150時間運転した後のフランジの摩耗量を測定した。擬似劣化油は、市販のエンジンオイル15Lに、界面活性剤(花王社製:エマルゲン)30g、カーボン粉末(東海カーボン社製:シーシストS−N700、粒径61〜100nm)300g、アルミナ(フジミインコーポレイテッド社製:A−D−20、粒径0.5μm)400gの割合で混合したものとした。
【0025】
図6は上記の条件で行った実施例のフランジと主体部および比較例1,2のフランジの摩耗量を示している。同図で明らかなように、実施例のクランクシャフトは、主体部の摩耗量に比べてフランジの摩耗量が30%程度低減しており、フランジが高い耐摩耗性を示している。また、実施例のフランジの摩耗量は、比較例2のフランジよりも25%程度少なく、焼入れ材よりも耐摩耗性が高いことが実証された。比較例1はCの含有量が0.1%程度多いS50C相当の鋼であるためもっとも摩耗量が少なかったが、実施例のフランジは比較例1と遜色ない耐摩耗性を有していると言える。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱間鍛造後の空冷工程においてオイルシール取付部が急冷されてその表面層が硬化されているので、オイルシール取付部に高い耐摩耗性を付与することができる一方、オイルシール取付部を除いた主体部の機械加工性を良好なものとすることができ、その結果、オイルシール取付部のシール性および生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの正面図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの冷却工程を示す図である。
【図3】 本発明の実施例のクランクシャフトにおけるフランジの表面層の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図4】 本発明の実施例のクランクシャフトにおける主体部の表面層の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図5】 本発明の実施例のクランクシャフトにおけるフランジの表面からの距離と硬度の関係を示す図である。
【図6】 本発明の実施例および比較例の摩耗試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d,1e…ジャーナル
2a,2b,2c,2d…ピン
3a,3b,3c,3d…アーム
4a,4b,4c,4d…バランスウエイト
5…フランジ(オイルシール取付部)
6…取付軸
7…油孔
8…主体部
10…クランクシャフト
10A…素材
Claims (2)
- 軸方向一端にオイルシール取付部を備え、金属組織がフェライトとパーライトとを有する鋼製のクランクシャフトであって、
素材を熱間鍛造して当該クランクシャフトを成形し、この後に行う空冷工程において、前記オイルシール取付部のみが急冷されてその表面層が硬化された後に空冷されており、該表面層のパーライト面積率が75〜100%、オイルシール取付部以外の他の部分およびオイルシール取付部の内部のパーライト面積率が40〜60%であることを特徴とするクランクシャフト。 - 軸方向一端にオイルシール取付部を備えたクランクシャフトの製造方法であって、
鋼製の素材を熱間鍛造して所定形状に成形し、次いで、その成形体を0.1〜1.5℃/secの冷却速度で空冷処理する際に、前記オイルシール取付部のみを5〜80℃/secの冷却速度で急冷してその表面層を硬化させた後に空冷を続けることにより該表面層のパーライト面積率を75〜100%、オイルシール取付部以外の他の部分およびオイルシール取付部の内部のパーライト面積率を40〜60%とし、この後、成形体に機械加工を施すことを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000322946A JP3772083B2 (ja) | 2000-10-23 | 2000-10-23 | クランクシャフトおよびその製造方法 |
DE10152092A DE10152092B4 (de) | 2000-10-23 | 2001-10-23 | Kurbelwelle und Herstellungsverfahren für diese |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000322946A JP3772083B2 (ja) | 2000-10-23 | 2000-10-23 | クランクシャフトおよびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002130245A JP2002130245A (ja) | 2002-05-09 |
JP3772083B2 true JP3772083B2 (ja) | 2006-05-10 |
Family
ID=18800731
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000322946A Expired - Fee Related JP3772083B2 (ja) | 2000-10-23 | 2000-10-23 | クランクシャフトおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3772083B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5169030B2 (ja) * | 2007-06-08 | 2013-03-27 | 日産自動車株式会社 | 焼入れ方法および焼入れ装置 |
-
2000
- 2000-10-23 JP JP2000322946A patent/JP3772083B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002130245A (ja) | 2002-05-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2012521523A (ja) | ピストンリングとシリンダーライナの製造用窒化可能な鋼組成物 | |
JPH11101247A (ja) | 転がり軸受部品 | |
JP3772083B2 (ja) | クランクシャフトおよびその製造方法 | |
KR890002609B1 (ko) | 내점식성이 뛰어난 주철부품의 제조방법 | |
JP4507422B2 (ja) | 被削性及び耐摩耗性に優れたクランクシャフト用鋼 | |
WO2022065425A1 (ja) | クランクシャフト | |
JP3491612B2 (ja) | 被削性及び耐摩耗性に優れたクランクシャフト用鋼 | |
JP2003314212A (ja) | タペットローラ支持軸受 | |
JPS6160861A (ja) | 鋼製ピストンリング用材料 | |
JP4066307B2 (ja) | 自己潤滑性を有する内燃機関用ピストンリング材およびピストンリング | |
JPH0428845A (ja) | 転がり軸受用鋼 | |
JPH01268843A (ja) | エンジンのクランクシャフト軸受 | |
JPS59129730A (ja) | 高強度クランクシャフトの製造方法 | |
JP4114901B2 (ja) | 内燃機関用一体型コンロッド、及び内燃機関用一体型コンロッドの製造方法 | |
JPH0127145B2 (ja) | ||
JP7262376B2 (ja) | 鉄鋼材料 | |
JP2886265B2 (ja) | 内燃機関用動弁機構のカムシャフト、及びその製造方法 | |
JPH03267347A (ja) | 高速回転部材 | |
KR20010034008A (ko) | 고온용 회전 베어링 부품 | |
JPS63100130A (ja) | 高強度鋳鉄クランク軸の製造方法 | |
JPH04191327A (ja) | 鋳造クランクシャフトの製造方法 | |
JPH0115576B2 (ja) | ||
JP2002226949A (ja) | アルミニウム合金製ピストン用耐摩環 | |
JPS6367542B2 (ja) | ||
JP2021038430A (ja) | 浸炭窒化用鋼及び浸炭窒化部品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20051226 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060213 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |