JP3771037B2 - 暖房可能な床の施工方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、暖房可能な床の施工方法に関する。さらに詳しくは、一般住宅、集合住宅、商業ビルまたはホテルなどの建築物の床の下地面の上に、暖房可能な床を施工する方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、寒冷地の住宅の居住性、温暖地の住宅の寒冷期における居住性を向上させる目的で、住宅の床面から暖房する床暖房技術が提案され、実用化されている。例えば、一戸建て住宅にあっては、大引と床板との間、大引の上に敷いた下張合板の上面（または上側）などに床暖房用放熱板（パネルともいう）を組込む手法が採用され、マンションなどのような集合住宅にあっては、スラブ床の上面に直接またはスラブ床の上面に敷いた下張合板の上などに、床暖房用放熱板を敷設する方法が採用されている。
【０００３】
床暖房用放熱板（パネル）は、例えば、特開昭６０−２２３９２２号公報、特開平３−１７５２１６号公報、特開平４−８０５９６号公報、特開平８−２６１４８５号公報などに記載されている様に、軟質発泡体または硬質発泡体よりなる板状体の一方の面に溝や空間を形成し、この溝にや空間部分に熱媒用可撓性チューブ（以下、単に「熱媒用チューブ」または「チューブ」ということがある）を埋設し、その表面をアルミニウム箔などの均熱材で被覆した構造のものが提案されている。
【０００４】
これら従来から知られている放熱板（パネル）は、狭幅で長尺の板状体に、板状体の長さ方向に沿って形成した溝や空間に、熱媒用チューブを埋設するのが一般的であった。このような構造の放熱板を敷設する場合には、多くの場合、あらかじめ工場で広幅のものに組立て、敷設現場に搬入して敷設する手法が採用されている。しかしながら、この従来法によると、広幅に組立てた放熱板は折畳んだり巻回すると、熱媒用チューブが挫屈したり、板状体に刻設した溝が破壊したりするという欠点があった。また、暖房床を施工する区画（部屋）の形状に応じて、臨機応変に対応することが困難であった。
【０００５】
熱媒用チューブが挫屈したり、板状体に刻設した溝が破壊したりするのは、熱媒用チューブを、狭幅で長尺の一方の板状体から隣接する他の板状体に連通させる板状体の端部で多発することに注目し、これら欠点を解消する方法を検討した結果、板状体の端部を取付け、取外し自在とした構造の放熱板を提案した（特願平８−２４０２５５号）。しかし、その後さらに検討の結果、先に提案した構造の放熱板は、上記欠点は解消できたが、なお構成部材の製造作業、施工作業が繁雑である、放熱板が重いなどの欠点があることが分った。
【０００６】
【発明が解決しようとした課題】
本発明者らは、梱包、貯蔵、運搬、敷設する際に熱媒用チューブが挫屈したり、板状体に刻設した溝が破壊したりせず、部材が軽量で簡単に敷設することができる暖房可能な床の施工方法を提供すべく鋭意検討の結果、建築物の床の下地面の上に、表面に熱媒用チューブを埋設する溝を刻設した板状体を配置し、この板状体表面の溝に熱媒用チューブを埋設し、板状体の上を表装材によって被覆することにより、一挙に解決できることを見出だし、本発明を完成した。
【０００７】
本発明の目的は、梱包、貯蔵、運搬、施工する際に熱媒用チューブが挫屈したり、板状体に刻設した溝が破壊したりせず、部材が軽量で、しかも暖房床を施工する区画（部屋）の形状に応じて、臨機応変に対応することができる暖房可能な床の施工方法を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、暖房可能な床を施工する方法において、まず、建築物の床の下地面の表面に、あらかじめ小根太または桟木を一定間隔で配置・固定し、これら小根太または桟木の間に、熱媒用チューブを埋設するための溝を表面側に所望の密度であらかじめ刻設した硬質発泡樹脂製平板を配置し、ついで、この硬質発泡樹脂製平板表面の溝に熱媒用チューブを埋設し、この後、硬質発泡樹脂製平板の上を表装材によって被覆することを特徴とする、暖房可能な床の施工方法を提供する。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明方法を詳細に説明する。
本発明方法によるときは、下地面の上に暖房可能な床が施工される。本発明において下地面とは、マンション（集合住宅）、商業ビル、ホテルなどのコンクリート製の建築物にあってはスラブ面、これらの上に形成された下地床合板などをいい、一戸建ての一般住宅にあっては下地床合板をいう。下地面や下地床合板の上には、不織布、ゴムシートなど敷くのが好ましく、暖房可能な床とするのは、部屋の床面の全体でも、部屋の床面の一部分の特定の位置でもよい。
【００１０】
本発明方法によるときは、下地面の上に、表面に熱媒用チューブを埋設するための溝を所望の密度で刻設した板状体を配置する。板状体は、木板、合板、パーチクルボード、繊維板、合成樹脂板などの中から選ぶのが好ましい。合成樹脂板の場合は、独立気泡を有しかつ優れた剛性を有する硬質発泡樹脂製平板の中から選ぶのが好適である。具体的には、発泡ポリスチレン、発泡ポリスチレンと発泡ポリエチレンとの混合物、発泡ポリプロピレン、硬質ポリウレタン、発泡硬質ゴムなどが挙げられるが、これら例示したものに限定されるものではない。なお、板状体が合成樹脂板の場合には、板状体の間に一定間隔で木製の小根太を配置することもできる。この場合は、合成樹脂板の間に配置した木製の小根太が外れない様に、合成樹脂板の裏に裏打材を接着剤によって張合わせてによって結合し一体化にするのが好ましい。
【００１１】
板状体が合成樹脂板の場合は、発泡倍率は３〜４０倍の範囲で選ぶことができ、平板の幅は一枚で特定の面積を占める広さでもよく、狭幅のものを幅方向に複数枚組合せて広幅とする。狭幅の板状体は一枚の幅が１０〜１００cmの範囲、組合せた後の板状体の幅は６０〜４００cmの範囲で選ぶことができる。板状体の厚さは熱媒用チューブの直径と同じ厚さを最小とし、最大は熱媒用チューブの直径プラス２５mmまでの範囲で選ぶことができる。板状体の厚さが熱媒用チューブの直径プラス２５mm以上でると、板状体が厚くなりすぎ場合によっては重くなり過ぎ、好ましくない。
【００１２】
板状体の長さは、６０〜４００cmの範囲で選ぶことができる。板状体が長すぎると取り扱いが繁雑だったり、重くなるので、短いものを長さ方向に繋ぎあわせて長くする構造とするのが好ましい。この場合、長さ方向の中央部１種類と、長さ方向の両端部に配置する２種類の計３種類の板状体を準備すればよいことになる（後記、図１参照）。前者には直線状の溝を複数本平行に刻設し、後者には前者の直線状の溝に連通させ、かつ、隣接する板状体に刻設された端部側面に湾曲させた溝にも連通するような溝を刻設すればよい。
【００１３】
板状体の表面には、熱媒用チューブ埋設用の溝を刻設する。溝は床を敷設する部屋（区画）の大きさにもよるが、一般住宅の場合は、一本の熱媒用チューブを蛇行させて設けるのが好ましい。大きい部屋（区画）の場合は、複数本の熱媒用チューブを配置することもできる。溝の密度は、床を施工する場所（極寒冷地、寒冷地、温暖地など）、建築物の種類、建築物内の敷設する場所（居間、客間、座敷など）、部屋の中の場所（中央部、壁面近傍など）などに応じて選ぶことができる。
【００１４】
板状体の表面には、アルミニウム箔などの金属箔製の均熱材を貼り付けのが好ましい。均熱材は、刻設した溝の内側壁面まで押込んで貼り付けると、熱媒用チューブの熱が上側に反射されるので好ましい。均熱材は板状体の表面全体に貼り付ける必要はなく、熱媒用チューブ埋設用の溝とその近傍に限ってもよい。均熱材の厚さは、余り薄過ぎると強度が不足して破損し易くなり、逆に厚過ぎるとコスト高になり、いずれも好ましくない。均熱材の好ましい厚さは、１０μｍ〜２００μｍの範囲である。
【００１５】
板状体の上を被覆する表装材は、板状体の表面に堅さを付与し、板状体が押しつぶされたり、変形しないように保護すると同時に、表面外観を向上させる機能を果たす。表装材の具体例としては、合板、木板、繊維板、樹脂板、パーチクルボードなどが挙げられるが、これら例示したものに限定されるものではない。板状体の種類によって、組合せる表装材を選ぶものとする。表装材は、一枚で構成してもよいし、小片を複数枚組合せて広い面積に構成したものであってもよい。小片を複数枚組合せて広い面積とする場合には、厚さ方向の側面にさねはぎ構造とするのが好ましい。表装材の表面には、あらかじめ塗料を塗布したり、木目模様、その他の模様などを印刷してもよい。表装材の厚さは、余り薄すぎると上記機能を発揮させることができず、余り厚すぎると熱媒用チューブからの伝熱効率が低下するので、いずれも好ましくない。表装材の厚さは、３〜２０mmの範囲で選ぶことができる。
【００１６】
板状体の溝に埋設される熱媒用チューブは、その内側空間に熱媒を通す機能を果すものであり、可撓性に優れ、機械強度、耐熱性、耐薬品性などにも優れている必要がある。このような特性を発揮するチューブとしては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、管の壁面に金属線を埋設した樹脂管などが挙げられ、中でも好ましいのは、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管である。熱媒用チューブの直径は、建築物の構築される地域、建築物の種類、建築物内の敷設する場所、部屋の中の場所などにより異なるが、５mm〜１７mmの範囲で選ぶことができる。
【００１７】
以下、本発明方法によって暖房可能な床を施工する手順を説明する。施工手順の一つは、まず、建築物の床の下地面の上に、表面に熱媒用チューブを埋設するための蛇行させた溝を所望の密度で刻設した板状体を配置する。この際、板状体にあらかじめ桟木や小根太が配置されていてもよく、この場合は板状体の溝が刻設されていない面に裏打材を接着して、板状体と桟木や小根太とを一体化させる必要がある。ついで、板状体の溝に熱媒用チューブを埋設し、最後に、板状体の表面を表装材によって被覆し、接着剤や釘などによって固定することによって、暖房可能な床の施工作業は完了する。
【００１８】
施工手順の他の一つは、まず、建築物の床の下地面の上に、桟木や小根太を一定の間隔で配置固定し、これら桟木や小根太の間に狭幅の板状体を嵌め込む。この際、桟木や小根太の間隔は、板状体の幅と一致させるものとする。板状体の長さは、施工時に切断して調節することができる。壁面近傍には溝が刻設されていない板状体（ダミイ板）を配置するのが好ましい。ついで、この板状体の表面に刻設された溝に沿って熱媒用チューブを埋設する。板状体を配置する際に、溝が連通するように組合せれば、一区画を一本の熱媒用チューブによってまかなうことができる。最後に、板状体の表面を表装材によって被覆し、接着剤や釘などによって固定することによって、暖房可能な床の施工作業は完了する。
【００１９】
【実施例】
以下、本発明を図面に基いて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【００２０】
図１は本発明方法によって施工した暖房床の一例の平面図であり、図２は図１のＡ−Ａ部分における拡大縦断端面図であり、図において、１は桟木または小根太、２は際根太、３ａ、３ｂ、３ｃは板状体、４はダミイ板（溝が刻設されていない板状体）、５は溝、６は熱媒用チューブ、７はヘッダー、８は放熱板、９は表装材、１０は建築物の床の下地面、１１釘である。
【００２１】
本発明方法に従って暖房床を施工するには、図示した例では、建築物の床の下地面１０の表面に、一定の間隔で桟木または小根太１を、壁面側には際根太２をそれぞれ配置し、必要な場合は釘１１によって固定する。ついで、これら桟木または小根太１の間に板状体３を配置する。板状体は長さ方向に３個（３ａ、３ｂ、３ｃ）を継ぎ合わせて、所定の長さにされている例が示されているが、長さはノコギリによって切断することにより容易に調節することができる。板状体の表面には、板状体を工場で製造する際に熱媒用チューブ６を埋設する溝５が刻設されている。溝５とその近傍には均熱材のアルミニウム箔が張付けられている。壁際には、ダミイ板（溝が刻設されていない板状体）４を配置している。板状体３の上を表装材９によって被覆すると完成する。
【００２２】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明した通りであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
１．本発明方法により暖房床を施工する際には、従来法のように、溝を刻設した板状体には熱媒用チューブを埋設しないで施工現場に搬入し、施工現場で板状体の溝に熱媒用チューブを埋設するので、板状体および熱媒用チューブの梱包、貯蔵、運搬、敷設作業などの施工部材管理が極めて容易である。
２．本発明方法により暖房床を施工する際には、施工部材の種類が少なく、各施工部材は重量、容量（体積）を取り扱い易いように調節できるので、梱包、貯蔵、運搬などが容易である。
３．本発明方法により暖房床を施工する際には、暖房床を施工する区画（部屋）の形状が変形していても、板状体の組合せを選ぶことにより極めて容易に対応することができる。
４．本発明方法により暖房床を施工する際には、施工作業は極めて簡単であり、熟練を要しない。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明方法によって施工した暖房床の一例の平面図である。
【図２】 図１のＡ−Ａ部分における拡大縦断端面図である。
【符号の説明】
１：桟木または小根太
２：際根太
３ａ、３ｂ、３ｃ：板状体
４：ダミイ板
５：溝
６：熱媒用チューブ
７：ヘッダー
８：均熱材
９：表装材
１０：建築物の床の下地面
１２：釘

Claims (1)

1. 暖房可能な床を施工する方法において、まず、建築物の床の下地面の表面に、あらかじめ小根太または桟木を一定間隔で配置・固定し、これら小根太または桟木の間に、熱媒用チューブを埋設するための溝を表面側に所望の密度であらかじめ刻設した硬質発泡樹脂製平板を配置し、ついで、この硬質発泡樹脂製平板表面の溝に熱媒用チューブを埋設し、この後、硬質発泡樹脂製平板の上を表装材によって被覆することを特徴とする、暖房可能な床の施工方法。

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