JP3769378B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置、液晶表示装置の製造装置などにおいて、シリコン等の半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス板を固定、搬送するために用いられる静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体製造装置においてシリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、ウエハと略す)の固定、搬送にはクランプリングの代わりに静電チャックが用いられてきており、電子ビーム描画装置、ドライエッチング装置、CVD装置、PVD装置等でシリコンウエハの固定、搬送に静電チャックが有効とされている。
【0003】
このような静電チャックは、絶縁体中に静電電極を埋設した構造となっており、その吸着力Fは、F=S/2×ε0 ×εr ×(V/d)2 で表される。尚、Fは吸着力、Sは静電電極面積、ε0 は真空の誘電率、εr は絶縁体の比誘電率、Vは印加電圧、dは絶縁層の厚みである。
【0004】
例えば、図9(a)(b)に単極型の静電チャックを示すように、円板状等の平板状の絶縁体11中に静電電極12を埋設し、この静電電極12とウエハ等の被吸着物14間に電源13より電圧を印加すれば、絶縁体11の吸着面11aに被吸着物14を吸着させられるようになっている。また、この絶縁体11には貫通孔11bが設けられ、この貫通孔11bから冷却ガス又は加熱ガスを送り込んで、被吸着物14を冷却又は加熱したり、あるいは貫通孔11bから被吸着物14を離脱させるためのプッシャーピンを突き上げるようになっている。
【0005】
さらに、静電電極12は、放電を防止するために外部には露出しない構造となっている。そのため、絶縁体11の外周部および貫通孔11bの周囲は、内部に静電電極12が存在しない無電極部11cとなっている。
【0006】
なお、図9(a)(b)には単極型の静電チャックを示したが、双極型の場合は絶縁体11に複数の静電電極12を備え、互いの静電電極12間に電圧を印加するようになっている。また、同図(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【0007】
ところで、上記静電チャックに発生した吸着力は、単に電圧を切っただけではコンデンサーのように蓄電されたままとなり、残留吸着力となって残ってしまう。この残留吸着力があると、ウエハを取り除こうとしてプッシャーピンでウエハを持ち上げる際にウエハを破損してしまうことがあった。
【0008】
そこで、残留吸着力を解消する方法として、一般的には両電極間をアースする方法がとられている。しかし、それだけでは完全に解消できない場合があり、電気制御を行ってこの残留吸着力を解消させることが行われていた。
【0009】
例えば、ウエハの離脱時に静電チャックへの印加電圧の極性を交番させつつ電圧を減衰させていく方法が提案されていた(特開平1−112745号公報参照)。また、この他に本出願人は、離脱時に瞬時逆電圧を印加する方法、あるいは離脱時に瞬時交流電圧を印加する方法を提案している(特開平4−230051号公報、特開平4−246843号公報参照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このようなを静電チャックを、エッチング装置、PVD装置、CVD装置内で使用する場合、図5に示すように、ウエハと吸着面との間の熱伝導性、熱放散性を向上させるために、静電チャック本体である絶縁体1の吸着面に、溝等の凹部3を形成し、絶縁体1下面から前記凹部3に通じるパイプ等(図示せず)によって、ヘリウムやアルゴン等の不活性ガスを流すことがしばしば行われている。
【0011】
また、露光装置や検査装置内で用いる場合にも、同様に絶縁体1の吸着面に凹部3を形成するが、この場合微小なゴミの大部分が凹部3内に存在することで、ウエハが微妙に傾斜し難くなる。これにより、露光時にウエハ上に微細パターンを形成する際に、ウエハの傾斜による露光の焦点ぼけが発生するのを抑制、防止している。
【0012】
そして、静電電極2が存在する部分に上記凹部3を形成すると、図6のように、電源7によって高電圧を印加して高吸着力を発生させようとした場合、凹部3の表面に電荷(図6では+電荷)が生じてしまうことが明らかになった。凹部3の表面はウエハ6には接していないため、その電荷はウエハ6側へ逃げることができず、一方の絶縁体1へも電荷が逃げることができず、その結果前記凹部3内に電荷が滞留してしまい残留吸着力が発生することが判明した。特に、絶縁体1の誘電分極によるクーロン力で吸着を行う静電チャックは、絶縁体1の電気抵抗が高いため凹部3中に電荷が滞留し易いという問題点があった。
【0013】
尚、図7は図6の静電チャックを立体的に示したものであり、同図中8は静電電極2に電圧を印加する端子、9は絶縁体1内に内蔵され抵抗加熱方式等のヒーター(図示せず)に電圧を印加する端子である。
【0014】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は静電チャック本体である絶縁体の吸着面に形成された凹部の表面に発生する電荷を抑制し、その結果、高電圧を印加して高吸着力を生じさせても良好なウエハの離脱性が実現し、ウエハの離脱時の損傷を防止するとともにスループットも高まり、生産性を高めることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電チャックは、静電電極を備えた絶縁体に、静電気力によって被吸着体を吸着せしめる吸着面を設けて成る静電チャックにおいて、前記吸着面の前記静電電極の上方に凹部を形成しその凹部内の表面に導電層を設層したことを特徴とする。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記導電層の端部が、吸着面と同一面以上の外部へ突出するように、前記導電層を延在させる。
【0017】
本発明は、上記構成により、半導体ウエハ等の被吸着体を吸着させる際に溝等の凹部の表面に発生する電荷を導電層により逃がし、又は凹部内の電位と被吸着体の電位を同電位にすることにより被吸着体と凹部間の電位差がなくなり、凹部内での電荷の発生を抑制、防止できる。その結果、高電圧を印加して高吸着力を生じさせても良好な被吸着体の離脱性が実現し、被吸着体の離脱時の損傷を防止するとともにスループットも高まり、生産性が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の静電チャックについて以下に詳細に説明する。図1〜図4は本発明を示し、図1は吸着面に凹部3を形成しその凹部3内の表面(底面)に導電層4を設層したものの断面図、図2は被吸着体が直接接触する吸着面に導電層4の端部が面一となるように延在させたものの断面図、図3は図2の導電層4を吸着面よりも外部に突出させたものの断面図、図4は図1のタイプであって、導電層4をアースさせたものの断面図である。
【0019】
図1〜図4において、1は静電チャック本体であり円板状等の平板型の絶縁体、2は絶縁体1に内蔵され静電気力(クーロン力)によって半導体ウエハ等の被吸着体を吸着する静電電極、3は吸着面に形成された凹部、4は凹部3内の表面に形成された導電層、5は導電層4をアースするためのアース線である。
【0020】
本発明において、絶縁体1の材質としては、樹脂等でも良いが、セラミックを用いることが好ましい。例えば、半導体に対して汚染の少ないアルミナ(Al2 O3 )、シリカ(SiO2 )、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)、窒化ホウ素(BN)、窒化珪素(Si3 N4 )等を主成分とするもの、又はアルミナの単結晶体であるサファイアを用いるのが良い。
【0021】
本発明では、その中でも高純度でボイドが少なく耐電圧の高いサファイア製の静電チャックについて説明する。
【0022】
まず、サファイア製の静電チャックの製法を下記工程(1)〜(6)で説明する。
【0023】
(1)EFG法(Edge-defined Film-fed Growth Method)で、板状体の単結晶サファイアを引き上げ、それを切断して所定のウエハ形状に加工する。
【0024】
(2)前記ウエハの吸着面の反対面(静電電極側の面)に、スパッタリング法等により静電電極用の導電膜を形成し、前記導電膜にパターンエッチングを施して所望の静電電極パターンにする。
【0025】
(3)その静電電極パターン側の面に、その面と同形状の面を有するアルミナのウエハを接着する。
【0026】
(4)サファイアの厚みが0.2mmになるまで研削加工を行い、また吸着面を研磨する。
【0027】
(5)これに、サンドブラスト法、平面研削盤による研削法又は超音波加工法等の加工方法で、絶縁体1の吸着面に凹部3を形成する。
【0028】
(6)そして、本発明では、凹部3の内表面に導電層4を形成する。
【0029】
本発明において、凹部3の内表面に導電層4を形成する方法としては、PVD法,CVD法,イオンプレーティング法等の蒸着法、メッキ法、導電ペーストを印刷法で塗布する塗布法等がある。簡便且つ薄膜形成に適した方法としては、まず絶縁体1表面の全面にスパッタリング法等で導電層4を形成し、絶縁体1表面を研磨することで吸着面の導電層4を除去することができる。また、予め絶縁体1表面にステンレスの薄板等でマスキングしておき、スパッタリング法等で凹部3の内表面だけに導電層4を形成することも可能である。
【0030】
図2のように、吸着面と同一面に面一となるように、導電層4の端部を延在させる場合にも、前記のような導電層4の研磨除去、マスキングしての成膜により形成できる。またこの場合、凹部3の全縁において導電層4を延在させる必要はなく、少なくとも凹部3の縁部に部分的に導電層4を延在させれば、被吸着体と凹部3内が同電位となる。
【0031】
更に、図3のように、導電層4の端部が吸着面上に突出するようにしてもよく、その場合吸着面上の導電層4が厚さ5μm程度以下であれば吸着力の低下が少なく、使用上支障ない。より好ましくは、1μm程度以下である。また、この場合、被吸着体と絶縁体1の吸着面との間に間隔が生じることになり、たとえ吸着面上に微小なゴミ等があっても、ゴミが被吸着体に接触したりこすれることにより被吸着体に付着することが防止できる。
【0032】
また、導電層4は凹部3の内側面にも形成される場合があるが、機能上全く問題はない。
【0033】
本発明の導電層4の材質は、絶縁体1との熱膨張差が小さいこと、絶縁体1との密着性が良いこと等を考慮して選択するのが良く、またウエハの特性劣化につながる物質(アルカリ金属やアルカリ土類金属等)は避けた方がよい。また、磁性を有する金属、例えば鉄、ニッケル等は、高周波を使ったり、電子ビームを使う装置の場合は処理に影響を与えるので使用できない。電気抵抗は低いほど電荷の移動は早くなるが、半導体レベルの電気抵抗でも全く問題がなく、106 Ωcm以下であれば十分である。
【0034】
具体的には、導電層4の材質は、Ti,Al,W,Mo,Si,Ag,Cu等及びこれらの元素の化合物、合金等がよく、半導体ウエハへの汚染による半導電性等の特性劣化を防止するうえで、Ti,Al,Si等及びその化合物、合金等がより好ましい。
【0035】
また、導電層4の厚みは0.01〜5μmの範囲とすることが好ましく、0.01μm未満では、導電層4全体として電気的なつながりが失われて導電層として機能しなくなり、5μmを超えると熱膨張差による応力で導電層4が剥離し易くなり、その場合吸着面に延在させる際に部分的な吸着力低下につながる。
【0036】
上記凹部3の形状は特に限定するものではないが、上方よりみた平面形状が放射同心円状、メッシュ形状がよく、その場合ガスを吸着面の全面に行き渡らせることができる。
【0037】
本発明において、凹部3の深さは、導電層4がない場合20μm以上であれば電荷による残留吸着力の影響を抑制し得るが、導電層4を設ける場合は20μm以下と浅くすることができ、1〜20μmが好ましい。1μm未満では、ガスの流れに対する抵抗が大きくなり、ガスが吸着面の全面に行き渡らなくなる。20μmを超えると、導電層4を設けても設けなくても残留吸着力の影響を抑制し得る。
【0038】
また、導電層4を設けない場合、20〜50μmとするのが好ましく、20μm未満では、電荷間の距離の2乗に反比例するクーロン力による残留吸着力が低下しない。また、50μmを超えると、絶縁体1の強度が低下して凹部3形成時に絶縁体1が割れる、凹部3の耐電圧が低く絶縁破壊が生じる。
【0039】
更には、前記凹部3及び導電層4は、被吸着体が吸着される吸着面の相当範囲内に設けるのが好適であり、吸着面から外れた部分では静電電極2による電場が小さいか、ほとんどないため、本発明の効果を奏し得ない。少なくとも導電層4は、吸着面の相当範囲内にあるのがよい。また、前記吸着面とは、絶縁体1の上方からみた平面形状において、静電電極2が存在する範囲内である。
【0040】
図4におけるアース線5については、絶縁体1内にビアホールを設けそのビアホールにCu,Au,Ag,W,Mo等の導線を接続し、その導線をアースするようことで構成することができる。また、凹部3から外部に通じる絶縁体1内の貫通孔にW等の金属ピンを挿入、埋設し、その金属ピンにCu,Au,Ag,W,Mo等の導線を導電性接着剤やロウ付けで接着してもよい。その他、凹部3から外部に通じるように絶縁体1内に形成されたネジ孔等に、金属製のネジを螺合させアースしてもよい。
【0041】
本発明で使用する被吸着体は、Si,Ge,GaAs,InAs,InGaAs等の半導体ウエハ、液晶表示装置用のガラス板等であり、その他静電気力により吸着可能なものであればよい。
【0042】
上記実施形態では、被吸着体を一方の静電電極とする単極型の静電チャックについて説明したが、静電電極2を複数形成しこれらの静電電極2間に電圧を印加する双極型の静電チャックについても適用できる。
【0043】
かくして、本発明は、被吸着体を吸着させる際に凹部の内表面に発生する電荷を導電層により逃がし、又は凹部内の電位と被吸着体の電位を同電位にすることにより被吸着体と凹部間の電位差がなくなり、凹部内での電荷の発生を抑制、防止できるという作用効果を有する。
【0044】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更を行っても何等差し支えない。
【0045】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
【0046】
(実施例)
図1の静電チャックを以下のように構成した。凹部3が吸着面内に相当するように、即ち凹部3が静電電極2上に存在するように形成され、サファイアから成りφ(直径)8インチで厚さ0.2mmの吸着面側の絶縁体と、その下面(吸着面と反対面)側に接合されるアルミナ製の絶縁体とから構成された絶縁体1を用意した。そして、凹部3の深さを5μm,10μm,15μm,20μm,25μmとした5種類(比較例)と、前記5種類のものの凹部3内にTiから成る厚さ1μmの導電層4を形成した5種類の、合計10種類を用意した。
【0047】
尚、前記10種類のものにおいて、凹部3の形状は、3mm×3mmの正方形状の凹部を3mm間隔で平面内にメッシュ(格子)状に形成したものとした。
【0048】
前記の10種類の絶縁体1について、Siウエハを吸着させるように電圧を所定時間印加し、電圧を切った後両静電電極を接地したときの残留吸着力を測定した。
【0049】
残留吸着力の測定は、φ8インチ、厚さ0.725mmのSiウエハをφ1インチの棒状の治具の先端に取り付け、その治具をロードセルに接続させて、モーターによりロードセルを引き上げるよう構成された測定器を用いて行った。まず、絶縁体1の吸着面上に上記Siウエハを載置して高電圧を印加し、このとき電圧はアーキング防止、安全性等を考慮して2000Vに設定し、電圧印加時間は実際の処理時間と同程度の60秒とした。そして、スループットを考慮して、Siウエハの離脱開始時間は電圧を切ってから10秒後としてSiウエハを引き上げ、その時の残留吸着力を測定した。
【0050】
結果を図8のグラフに示す。同図に示すように、導電層4がないもの(黒丸印)の場合、凹部3の深さが浅いほど残留吸着力が大きく、凹部3の深さを深くすることによって残留吸着力が小さくなり、20μm以上ではほとんど残留吸着力が発生しなかった。
【0051】
また、凹部3の内表面に導電層4を形成したもの(三角印)の場合、凹部3の深さに係わらずほとんど残留吸着力が発生しなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明は、吸着面の前記静電電極の上方に凹部を形成しその凹部内の表面に導電層を設層することにより、絶縁体の吸着面に形成された凹部の内表面に発生する電荷を抑制し、その結果、高電圧を印加して高吸着力を生じさせても良好な被吸着体の離脱性が実現し、被吸着体の離脱時の損傷を防止するとともにスループットも高まり、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電チャックを示し、静電チャック本体である絶縁体の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示し、絶縁体の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示し、絶縁体の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示し、絶縁体の断面図である。
【図5】従来の静電チャックを示し、絶縁体の断面図である。
【図6】従来の静電チャックにおける残留吸着力発生のメカニズムを説明するためのもので、絶縁体及び被吸着体の断面図である。
【図7】図6のものを立体的に示した斜視図である。
【図8】本発明を示し、凹部深さと残留吸着力との関係を示すグラフである。
【図9】従来の静電チャック全体を示し、(a)は絶縁体の平面図、(b)は静電チャック全体の基本構成の断面図である。
【符号の説明】
1:絶縁体
2:静電電極
3:凹部
4:導電層
5:アース線
Claims (2)
- 静電電極を備えた絶縁体に、静電気力によって被吸着体を吸着せしめる吸着面を設けて成る静電チャックにおいて、前記吸着面の前記静電電極の上方に凹部を形成しその凹部内の表面に導電層を設層したことを特徴とする静電チャック。
- 前記導電層の端部が、吸着面と同一面以上の外部へ突出するように、前記導電層を延在させた請求項1記載の静電チャック。
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