JP3767384B2 - スラスト受け機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回方向と直交するスラスト方向の力を受けながら、旋回する旋回部材を回転可能支持するスラスト受け機構(スラストベアリング)に関するもので、吐出圧が冷媒の臨界圧力を越える超臨界冷凍サイクル用の圧縮機に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
超臨界冷凍サイクル用の圧縮機に適したスラスト受け機構(スラストベアリング)として、特開2000−186680号公報に記載の発明では、互い直交する方向に回転可能に保持された第1、2コロと、第1、2コロを回転可能に保持するリング板状の保持器と、第1、2コロが転がり接触する板状のレースとからスラスト受け機構を構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報に記載のスラスト受け機構では、樹脂又は金属製の保持器とレースとをピン等の締結手段により締結することにより、コロが保持器から脱落することを防止しているが、この手段では、レース、コロ及び保持器を1組として取り扱う必要があるので、スラスト受け機構の組み付け作業性及びメンテナンス性が低いという問題がある。
【0004】
また、旋回スクロール等の旋回部材が旋回すると、保持器に形成された穴部に対してピンが摺動するので、穴部とピンとの摩擦により保持器が摩耗し、保持器の耐久性(寿命)が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、スラスト受け機構の組み付け作業性及びメンテナンス性の向上、又は保持器の耐久性(寿命)の向上を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、旋回方向と直交するスラスト方向の力を受けながら、固定部材(107)に対して旋回する旋回部材(114)を旋回可能に支持するスラスト受け機構であって、一の方向に回転可能に保持された略円柱状の第1コロ(121)、及び一の方向と異なる他の方向に回転可能に保持された略円柱状の第2コロ(122)からなる転動体(121、122)と、転動体(121、122)を回転可能に保持するとともに、板材から形成された2つの保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)からなる第1、2保持器(123、124)と、転動体(121、122)と転がり接触する軌道面(125a、126a、127a)が形成された板状のレース(125、126、127)とを備え、転動体(121、122)は、2つの保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)に形成された保持用長穴(123c、124c)に填め込まれた状態で2つの保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)により挟まれるように回転可能に保持されており、第1保持器(123)には、旋回部材(114)に固定された第1ピン(128)が挿入される穴部(123g)が形成され、第2保持器(124)には、固定部材(107)に固定された第2ピン(129)が挿入される穴部(124g)が形成されており、さらに、保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)のうち両穴部(123g、124g)には、穴部(123g、124g)の軸方向と平行な壁面(123h、124h)が形成されていることを特徴とする。これにより、第1、2ピン(128、129)と保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)との接触面積を、壁面(123h、124h)が設けられていないものに比べて大きくすることができる。したがって、穴部(123g、124g)に作用する摺動摩擦により、保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)、つまり穴部(123g、124g)の開口外縁部が大きく摩耗してしまうことを防止できるので、第1、2保持器(123、124)の耐久性(信頼性)を向上させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、保持用長穴(123c、124c)及び転動体(121、122)の寸法は、転動体(121、122)が保持器(123、124)から脱落することなく、かつ、保持器(123、124)と軌道面(125a、126a、127a)との間に所定の隙間が形成されるように選定されていることを特徴とする。これにより、軌道面(125a、126a、127a)と保持器(123、124)とが接触するといった不具合が発生することなく、レース(125〜127)、第1、2コロ(121、122)及び保持器(123、124)を1組として取り扱う必要がないので、スラスト受け機構の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明では、保持器(123、124)及び転動体(121、122)の寸法は、上記の数式1〜3を満たすように選定されていることを特徴とする。
【0009】
これにより、軌道面(125a、126a、127a)と保持器(123、124)とが接触するといった不具合が発生することなく、レース(125〜127)、第1、2コロ(121、122)及び保持器(123、124)を1組として取り扱う必要がないので、スラスト受け機構の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0013】
なお、壁面(123h、124h)は、請求項4に記載の発明のごとく、保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)にバーリング加工を施すことにより、保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)に一体形成してもよい。
【0014】
請求項5に記載の発明では、流体を吸入圧縮する圧縮機であって、ハウジング(107)と、ハウジング(107)に対して固定された固定部(111)と、固定部(111)と共に流体を吸入圧縮する作動室(V)を構成し、固定部(111)に対して旋回することにより、作動室(V)の体積を拡大縮小させる旋回部(114)と、旋回部(114)に作用する圧縮反力のうち旋回部(114)の旋回方向と直交するスラスト力を受けるとともに、旋回部(114)を旋回可能に支持する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスラスト受け機構(120)とを具備することをを特徴とする。
【0015】
これにより、請求項2、3に記載の発明のごとく、スラスト受け機構の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができるので、圧縮機の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項1、4に記載の発明のごとく、第1、2保持器(123、124)の耐久性(信頼性)を向上させることができるので、圧縮機の耐久性(信頼性)を向上させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、流体を吸入圧縮する圧縮機であって、ハウジング(107)と、ハウジング(107)に対して固定され、渦巻状の歯部(112)を有する固定スクロール(111)と、固定スクロール(111)の歯部(112)に接触して流体を吸入圧縮する作動室(V)を構成する渦巻状の歯部(113)を有し、固定スクロール(111)に対して旋回することにより、作動室(V)の体積を拡大縮小させる旋回スクロール(114)と、旋回スクロール(114)に作用する圧縮反力のうち旋回スクロール(114)の旋回方向と直交するスラスト力を受けるとともに、旋回スクロール(114)を旋回可能に支持する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスラスト受け機構(120)とを備えることを特徴とする。
【0018】
これにより、請求項2、3に記載の発明のごとく、スラスト受け機構の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができるので、スクロール型の圧縮機の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0019】
また、請求項1、4に記載の発明のごとく、第1、2保持器(123、124)の耐久性(信頼性)を向上させることができるので、スクロール型の圧縮機の耐久性(信頼性)を向上させることができる。
【0020】
なお、請求項7に記載の発明のごとく、請求項5又は6に記載の圧縮機(100)を、圧縮機(100)の吐出圧が冷媒の臨界圧力を越える冷凍サイクルに適用してもよい。
【0021】
さらに、請求項8に記載の発明ごとく、冷媒として二酸化炭素を用いてもよい。
【0022】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る圧縮機を超臨界冷凍サイクルに適用したものであって、図1は超臨界冷凍サイクルの模式図である。
【0024】
図1中、100は冷媒(二酸化炭素)を吸入し、その吸入した冷媒を冷媒の臨界圧力以上にまで圧縮する圧縮機であり、200は室外空気と冷媒との間で熱交換を行う放熱器である。300は放熱器200から流出する冷媒を減圧する減圧器であり、400は減圧器300にて気液二相状態となった冷媒のうち液相冷媒を蒸発させて、室内に吹き出す空気を冷却する蒸発器である。
【0025】
また、500は、冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するとともに、気相冷媒を圧縮機100の吸入側に向けて流出させるアキュムレータ(気液分離手段)であり、600は、アキュムレータ500から流出する冷媒と放熱器200から流出する冷媒とを熱交換する内部熱交換器である。
【0026】
次に、本実施形態に係る圧縮機100について述べる。
【0027】
図2は本実施形態に係る圧縮機100の軸方向断面を示しており、この圧縮機100は、冷媒を吸入圧縮するスクロール型圧縮機構Cpと、このスクロール型圧縮機構を駆動する電動モータ(本実施形態では、DCブラシレスモータ)Moとが一体となった密閉型圧縮機である。
【0028】
ここで、電動モータMoの概略について述べる。
【0029】
101はフロントハウジング(モータハウジング)101であり、102はフロントハウジング101に対して固定された、けい素鋼板等の磁性材料製の固定子鉄心(ヨーク)102である。103は固定子鉄心102に巻き付けられた巻線(コイル)103であり、この巻線103及び固定子鉄心102等からステータコイル104が構成されている。
【0030】
また、105はステータ104内で回転するロータ105であり、このロータは複数個の永久磁石106、並びにフロントハウジング101及びミドルハウジング(固定部材)107に軸受108を介して回転可能に支持されたシャフト109等から構成されている。なお、110はステータ104(巻線103)に電力を供給する端子であり、これらの端子110は、図示しないモータ駆動回路に接続されている。
【0031】
次に、スクロール型圧縮機構Cpについて述べる。
【0032】
111は、ミドルハウジング107に固定されてミドルハウジング107と共に空間を構成するシェル(固定部)であり、このシェル111のうちミドルハウジング107側には、ミドルハウジング107側に向けて突出する渦巻状の歯部112が形成されている。
【0033】
また、ミドルハウジング107とシェル111との間には、シェル111の歯部112に接触して作動室Vを構成する渦巻状の歯部113が形成された旋回スクロール(回転部材、旋回部材)114が配設されており、この旋回スクロール114が、シェル(固定スクロール)111に対して旋回することにより、作動室Vの体積を拡大縮小させて冷媒(流体)を吸入圧縮する。
【0034】
また、旋回スクロール114は、その略中央に形成されたボス部114aにてシャフト109の一端側(紙面右側)に形成されたクランク部109aに、シェル型(内輪を持たないタイプ)の針状コロ軸受(ニードルベアリング)115を介して連結されている。
【0035】
そして、クランク部109aは、シャフト109の回転中心から径外方側に偏心した位置に形成されているため、シャフト109が回転すると、旋回スクロール114は、シャフト109周りに旋回(回転)運動する。
【0036】
因みに、116は、旋回スクロール114をクランク部109aに対して摺動可能に連結し、両歯部112、113間の接触面圧を増大させる従動クランク機構を構成するブッシングであり、このブッシング116は、旋回スクロール114に作用する圧縮反力のうち旋回方向の力によって旋回スクロール114をクランク部109aに対して微小変位させて両歯部112、113間の接触面圧を増大させている。
【0037】
ところで、120は、旋回スクロール114に作用する圧縮反力のうち旋回スクロール114の旋回方向と直交する方向(シャフト109の長手方向と平行な方向)の力(以下、この力をスラスト力と呼ぶ。)を受けるとともに、旋回スクロール114を旋回可能に支持するスラスト受け機構(スラストベアリング)である。
【0038】
このスラスト受け機構120は、図3に示すように、一の方向(紙面上下方向)に回転可能に保持された略円柱状の第1コロ(転動体)121と、その一の方向と直交する方向(紙面左右方向)に回転可能に保持された第2コロ(転動体)122とを有して構成されている。ここで、略円柱状とは、完全な円柱状は勿論、第1、2コロ121、122の軸方向両端側に丸みが形成された(クラウニング処理がされた)ものも含む意味である。
【0039】
また、123は第1コロ121を回転可能に保持する第1保持器であり、124は第2コロ122を保持する第2保持器である。ここで、両保持器123、124は、図4に示すように、金属(本実施形態では、冷間圧延鋼板(SPCC))製の板材にプレス加工を施すことにより断面が略コの字状に成形されたリング(環)状の第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bをプロジェクション溶接により接合したものである。
【0040】
そして、各コロ121、122は、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bに形成された複数個の保持用長穴123c、124cに填め込まれた状態で第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bに挟まれるように回転可能に保持されており、保持器123、124の外径側円筒面123d、124d及び内径側円筒面123e、124eには、保持器123、124内外を連通させる複数個の連通穴123f、134fが形成されている。
【0041】
また、図3中、125は、第1保持器123と旋回スクロール114との間に配設されて第1コロ121と接触する環状の軌道面125aが形成された第1レース板であり、126は、第2保持器124とミドルハウジング107の間に配設されて第2コロ122と接触する環状の軌道面126aが形成された第2レース板であり、127は、両保持器123、124との間に配設されて第1、2コロ122、122に接触する環状の軌道面127aが両面に形成された第3レース板である。なお、第1、2保持器123、124及び第1〜3レース板125〜127は、互いに略平行に配置されている。
【0042】
因みに、第1、2コロ121、122は、表面硬さがHRC59〜64となるように熱処理が施された高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ)製であり、第1〜3レース板125〜127の軌道面125a、126a、127aは、表面硬さがHRC59〜64となるように熱処理が施された高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ)製である。
【0043】
そして、保持用長穴123c、124c及び第1、2コロ121、122の寸法は、第1コロ121にあっては、第1コロ121が第1保持器123から脱落することなく、かつ、第1保持器123と軌道面125a、127aとの間に所定の隙間が形成されるように選定され、第2コロ122にあっては、第2コロ122が第2保持器124から脱落することなく、かつ、第2保持器124と軌道面126a、127aとの間に所定の隙間が形成されるように選定されている。
【0044】
具体的には、下記の数式4〜6を満たすように第1、2保持器123、124及び第1、2コロ121、122の寸法が選定されている。
【0045】
【数4】
D>b
【0046】
【数5】
b>(D2−h2)1/2
【0047】
【数6】
2・h<D−2・t+(D2−b 2)1/2
但し
D:第1、2コロの直径(図5参照)
b:保持用長穴の短径寸法(図5参照)
t:第1、2保持ケーシングの板厚寸法(図5参照)
h:第1、2保持ケーシング間の距離(図5参照)
ここで、数式4は図6に示すように、第1、2コロ121、122が第1、2保持器123、124から脱落しないための条件であり、数式5は保持用長穴123c、124cにおいて第1、2コロ121、122が回転することができるための条件であり、数式6は保持器123、124と軌道面125a、126a、127aとの間に隙間が確保されるための条件を示している。
【0048】
ところで、図3中、128は旋回スクロール114に圧入固定されて第1レース板125を旋回スクロール114に対して位置決め固定する第1ピンであり、129はミドルハウジング107に圧入固定されて第2レース板126をミドルハウジング107に対して位置決め固定する第2ピンであり、両ピン128、129は、段付き部を有していない円柱状のストレートピン形状である。
【0049】
そして、第1保持器123及び第3レース板127には、第1コロ121の軸方向と直交する方向に長径寸法を有する長穴123g、127bが形成され、第2保持器124及び第3レース板127には、第2コロ122の軸方向と直交する方向とに長径寸法を有する長穴124g、127cが形成されている。
【0050】
なお、第1ピン128は長穴123g、127bに対しては、長穴123g、127bを貫通するように挿入された状態でその長径方向に相対移動することができる。同様に、第2ピン129は長穴124g、127cに対しては、長穴124g、127cを貫通するように挿入された状態でその長径方向に相対移動することができる。
【0051】
このため、旋回スクロール114が旋回すると、旋回スクロール114と第1レース板125とは一体的に第1保持器123及び第3レース板127に対して第1コロ121の回転方向(長穴127cの長径方向)に変位し、一方、第3レース板127及び第2保持器124は、ミドルハウジング107に対して第2コロ122の回転方向(長穴127bの長径方向)に変位するので、旋回スクロール114は、クランク部109aに対して自転することなく、ミドルハウジング107(シェル111)に対して自在に平行移動する。
【0052】
因みに、125bは第1ピン128が挿入されて位置決め固定される第1位置決め穴であり、126bは第2ピン129が挿入されて位置決め固定される第2位置決め穴である。
【0053】
ところで、図2中、132は、旋回スクロール114が旋回する際に、旋回スクロール114がクランク部109a周りに回転(自転)することを防止する自転防止用ピンであり、この自転防止用ピン132は、旋回スクロール114の径外方に形成された4個のリング部114b(図3参照)の内壁に対して摺動可能に接触している。このため、シャフト109が回転すると、旋回スクロール114は、クランク部109a周りに回転(自転)することなく、シャフト109の回転中心に対して旋回(公転)する。
【0054】
また、133は、シェル111と共に作動室Vから吐出する冷媒を平滑化する吐出室134を構成するリアハウジングであり、このリアハウジング133は、シェル111と共にボルト140にてミドルハウジング107に固定されている。また、135はシュル(固定スクロール)の略中心部に位置する作動室Vと吐出室134とを連通させる吐出ポートであり、この吐出ポート135のうち吐出室134側には、吐出室134に吐出した冷媒が作動室Vに逆流することを防止するリード弁状の吐出弁(図示せず)及び吐出弁の最大開度を規制するストッパ136が設けられている。
【0055】
なお、本実施形態に係る圧縮機100(スラスト軸受機構120)の作動は、上記公報と同じであるので、本実施形態に係る圧縮機100(スラスト軸受機構120)の作動説明は省略する。
【0056】
次に、本実施形態に係る圧縮機100(スラスト軸受機構120)の特徴(作用効果)を述べる。
【0057】
本実施形態によれば、第1、2コロ121、122は、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bにより挟まれて第1、2保持器123、124に保持されているので、第1〜3レース125〜127、第1、2コロ121、122及び第1、2保持器123、124を1組として取り扱う必要がないので、スラスト受け機構120の組み付け作業性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
本実施形態は、図9に示すように、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bのうち長穴123g、124g部分にバーリング加工を施すことにより、長穴123g、124gの軸方向と平行な壁面(バーリング部)123h、124hを第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bに一体形成したものである。
【0059】
次に、本実施形態の特徴(作用効果)を述べる。
【0060】
スラスト受け機構120では、第1ピン128は長穴123gにより移動方向を規制された状態で長穴123gに対して相対移動し、第2ピン129は長穴124gにより移動方向を規制された状態で長穴124gに対して相対移動するので、長穴123g、124gに摺動摩擦が作用する。
【0061】
しかし、本実施形態では、長穴123g、124g部分に壁面(バーリング部)123h、124hが形成されているので、第1、2ピン128、129と第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bとの接触面積を、壁面123h、124hが設けられていないもの(第1実施形態)に比べて大きくすることができる。
【0062】
したがって、長穴123g、124gに作用する摺動摩擦により、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124b(長穴123g、124gの開口外縁部)が大きく摩耗してしまうことを防止できるので、第1、2保持器123、124(スラスト受け機構120)の耐久性(信頼性)を向上させることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bをプレス加工にて製造したが、本発明はこれに限定されるものではなく、切削加工や鍛造等のその他の機械加工により製造してもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bの板厚tを同一寸法としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bの寸法をそれぞれ相違させてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、スクロール型圧縮機を例に本発明に係る圧縮機を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ローリングピストン(ロタスコ)型圧縮機等のその他の圧縮機にも適用することができる。
【0066】
また、上述の実施形態では、電動モータMoとスクロール型圧縮機構Cpとが一体となった密閉型圧縮機であったが、駆動源である電動モータMo等と圧縮機構Cpとが別体となった開放型圧縮機であってもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに本発明に係る圧縮機を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素等の超臨界域で使用する冷媒を用いるヒートポンプサイクル及び冷凍サイクル等は勿論、HFC134a(フロン)を冷媒とするサイクルにも適用することができる。
【0068】
また、上述の実施形態では、自転防止用ピン132とリング部114bとからなるピン−ホール式の自転防止機構であったが、その他の自転防止機構であってもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、自転防止機構はスラスト受け機構120の外側に形成されていたが、スラスト受け機構120の内部に自転防止機構を設けてもよい。なお、この場合は、自転防止用ピン132を廃止することができる。
【0070】
また、上述の実施形態では、第1転動体121の回転方向と第2転動体122の回転方向とが略直交していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、両転動体121、122の回転方向が交差していれば(平行でなければ)よい。
【0071】
また、上述の実施形態では、金属の第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bをプロジェクション溶接により接合したが、カシメ等の機械的な締結手段により第1、2保持ケーシング123a、124a、123b、124bを接合してもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、第1、2コロ121、122及び第1〜3レース板125〜127を高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ)製としたが、炭素工具鋼材(SK)としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超臨界冷凍サイクルの模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る実施形態に係る圧縮機の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るスラスト受け機構の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るスラスト受け機構の断面斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るスラスト受け機構の拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るスラスト受け機構における数式4の説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るスラスト受け機構における数式5の説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係るスラスト受け機構における数式6の説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るスラスト受け機構の拡大断面図である。
【符号の説明】
120…スラスト受け機構、121…第1コロ、122…第2コロ、
123…第1保持器、123a…第1保持ケーシング、
123b…第2保持ケーシング、123c…保持用長穴、
124…第2保持器、124a…第1保持ケーシング、
124b…第2保持ケーシング、124c…保持用長穴。
Claims (8)
- 旋回方向と直交するスラスト方向の力を受けながら、固定部材(107)に対して旋回する旋回部材(114)を旋回可能に支持するスラスト受け機構であって、
一の方向に回転可能に保持された略円柱状の第1コロ(121)、及び前記一の方向と異なる他の方向に回転可能に保持された略円柱状の第2コロ(122)からなる転動体(121、122)と、
前記転動体(121、122)を回転可能に保持するとともに、板材から形成された2つの保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)からなる第1、2保持器(123、124)と、
前記転動体(121、122)と転がり接触する軌道面(125a、126a、127a)が形成された板状のレース(125、126、127)とを備え、
前記転動体(121、122)は、前記2つの保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)に形成された保持用長穴(123c、124c)に填め込まれた状態で前記2つの保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)により挟まれるように回転可能に保持されており、
前記第1保持器(123)には、前記旋回部材(114)に固定された第1ピン(128)が挿入される穴部(123g)が形成され、
前記第2保持器(124)には、前記固定部材(107)に固定された第2ピン(129)が挿入される穴部(124g)が形成されており、
さらに、前記保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)のうち前記両穴部(123g、124g)には、前記穴部(123g、124g)の軸方向と平行な壁面(123h、124h)が形成されていることを特徴とするスラスト受け機構。 - 前記保持用長穴(123c、124c)及び前記転動体(121、122)の寸法は、前記転動体(121、122)が前記保持器(123、124)から脱落することなく、かつ、前記保持器(123、124)と前記軌道面(125a、126a、127a)との間に所定の隙間が形成されるように選定されていることを特徴とする請求項1に記載のスラスト受け機構。
- 前記壁面(123h、124h)は、前記保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)にバーリング加工を施すことにより、前記保持ケーシング(123a、124a、123b、124b)に一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスラスト受け機構。
- 流体を吸入圧縮する圧縮機であって、
ハウジング(107)と、
前記ハウジング(107)に対して固定された固定部(111)と、
前記固定部(111)と共に流体を吸入圧縮する作動室(V)を構成し、前記固定部(111)に対して旋回することにより、前記作動室(V)の体積を拡大縮小させる旋回部(114)と、
前記旋回部(114)に作用する圧縮反力のうち前記旋回部(114)の旋回方向と直交するスラスト力を受けるとともに、前記旋回部(114)を旋回可能に支持する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスラスト受け機構(120)とを具備することをを特徴とする圧縮機。 - 流体を吸入圧縮する圧縮機であって、
ハウジング(107)と、
前記ハウジング(107)に対して固定され、渦巻状の歯部(112)を有する固定スクロール(111)と、
前記固定スクロール(111)の歯部(112)に接触して流体を吸入圧縮する作動室(V)を構成する渦巻状の歯部(113)を有し、前記固定スクロール(111)に対して旋回することにより、前記作動室(V)の体積を拡大縮小させる旋回スクロール(114)と、
前記旋回スクロール(114)に作用する圧縮反力のうち前記旋回スクロール(114)の旋回方向と直交するスラスト力を受けるとともに、前記旋回スクロール(114)を旋回可能に支持する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスラスト受け機構(120)とを備えることを特徴とする圧縮機。 - 請求項5又は6に記載の圧縮機(100)を有するとともに、前記圧縮機(100)の吐出圧が冷媒の臨界圧力を越えることを特徴とする超臨界冷凍サイクル。
- 前記冷媒として二酸化炭素を用いたことを特徴とする請求項7に記載の超臨界冷凍サイクル。
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