JP3766596B2 - パラミクソウイルスに由来するrnp - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、パラミクソウイルスに由来するリボ核酸タンパク質複合体およびその利用に関する。
背景技術
パラミクソウイルスは、マイナス鎖RNAをゲノムとして有するウイルスである。マイナス鎖RNAウイルスベクターは、レトロウイルス、DNAウイルス、またはプラス鎖RNAウイルスベクターとは大きく異なる幾つかの特徴を持っている。そのゲノムまたはアンチゲノムは直接にmRNAとしては機能せず、ウイルスのタンパク質合成やゲノム複製を開始させることはできない。ウイルスのRNAゲノムもアンチゲノムも常にリボ核酸タンパク質複合体(ribonucleoprotein complex; RNP)の形で存在し、プラス鎖RNAウイルスのように、mRNAsが相補的な裸のゲノムRNAにハイブリダイズしてゲノムのRNPへのアセンブリを妨害するといったアンチセンスの問題が殆ど起きない。これらのウイルスは自身のRNAポリメラーゼを持って、RNP複合体を鋳型にしてウイルスmRNAの転写またはウイルスゲノムの複製を行う。特筆すべきことにマイナス鎖RNA(nsRNA)ウイルスは宿主細胞の細胞質でのみ増殖し、DNAフェーズを持たないため染色体への組み込み(integration)は起こらない。更にはRNA同士の相同組み換えも認められていない。これらの性質はマイナス鎖RNAウイルスの遺伝子発現ベクターとしての安定性と安全性に大きく寄与するものと思われる。
本発明者らはnsRNAウイルスの中でもセンダイウイルス(SeV)に注目してきた。センダイウイルスは非分節型マイナス鎖RNAウイルスで、パラミクソウイルス(paramyxovirus)に属し、murine parainfluenza virusの一種である。このウイルスはヒトに対して病原性がないと言われている。また、ラボ弱毒株(Z strain)も分離されており、自然宿主であるげっ歯類に対し軽度の肺炎を誘発する程度である(J.of General Virology(1997)78,3207-3215)。この株はパラミクソウイルスの転写複製機構等の分子レベルにおける研究モデルとして広く用いられてきた。センダイウイルスは二つのエンベロープ糖タンパク質であるhemagglutinin-neuraninidase(HN)とfusion protein(F)を介して宿主細胞膜に接着、膜融合を起こし、効率的に自分のRNAポリメラーゼとリボヌクレオプロテイン(RNP)複合体の形で存在するRNAゲノムを細胞質に放出し、そこでウイルスのmRNAの転写及びゲノムの複製を行う(Bitzer, M. et al., J. Virol. 71(7):5481-5486, 1997)。
本発明者らはこれまでに、センダイウイルスゲノムに対応するcDNAから感染性センダイウイルス粒子を回収する方法を開発している。この方法においては、例えば、LLC-MK2細胞にT7 RNAポリメラーゼをコードするワクシニアウイルスを感染させた後、T7プロモーターでコントロールするセンダイウイルスのアンチゲノムをコードするプラスミドと、センダイウイルスの核タンパク質(NP)、RNAポリメラーゼタンパク質(PおよびL)をコードしている3つのプラスミドと同時に細胞にトランスフェクションし、細胞内でウイルスのゲノム複製の中間体であるアンチゲノムのリボ核酸タンパク質複合体(RNPs)を形成させ、次いでウイルスタンパク質の転写、またウイルス粒子のアセンブリーを開始する生物学的に活性のある(機能的な)ゲノムRNPsに複製させる。野生型センダイウイルスの回収の場合には、この機能的なゲノムRNPsを再構成細胞もろとも鶏卵のChorioallantoic sacに注入してビリオンの増幅を行う(Kato, A. et al. Genes cells 1, 569-579(1996))。
しかしながら、センダイウイルスは、ウイルス粒子形成の際に宿主のタンパク質を取り込むことが知られており(J.B.C.(1997)272, 16578-16584)、このようなタンパク質は、標的細胞に導入した際に抗原性や細胞傷害性の原因となることが考えられた。
ここに、センダイウイルス粒子を利用しない、RNPのベクターとしての利用の必要性が存在していたが、いまだにそのような利用の報告例はない。
発明の開示
本発明は、パラミクソ科ウイルスに由来するRNPを単離し、そのベクターとしての利用を提供することを課題とする。好ましい態様において、RNPとカチオン性化合物との複合体からなるベクターが提供される。
本発明者等は、パラミクソ科ウイルスであるセンダイウイルスからRNPを調製し、それがベクターとして使用しうるかの検討を行なった。
具体的には、まず、標的細胞内で野生型センダイウイルスを生産しないようにするために、該ウイルスのエンベロープタンパク質であるFタンパク質の遺伝子を欠損したセンダイウイルスゲノムcDNAを調製し、さらに細胞内で該cDNAを発現させるためのベクターを構築した(該ベクターにはF遺伝子欠損部位にレポーターとしてGFP遺伝子が挿入されている)。これにより調製したベクターをRNPの構成に必要なタンパク質を発現する細胞に導入し、該細胞内でF遺伝子欠損ゲノムを有するRNPを生成させた。次いで、該細胞に対し凍結融解処理を繰り返すことにより該細胞からRNPを取り出し、これをカチオン性のリポフェクション試薬と混合して、F遺伝子発現細胞に導入した。その結果、RNPが導入された細胞では、レポーターであるGFPの発現が検出された。
即ち、本発明者等は、センダイウイルスから機能的なRNPを調製することに成功すると共に、これをセンダイウイルス粒子の構成要素として細胞に感染させるのではなく、例えばカチオン性リポソームという遺伝子導入試薬を利用して細胞に導入した場合でも、RNPに含まれる外来遺伝子を発現させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、パラミクソウイルス由来のRNPおよびそのベクターとしての利用に関し、より詳しくは、
(1)(a)パラミクソ科ウイルスの少なくとも一つのエンベロープタンパク質を発現しないように改変された、パラミクソウイルスに由来する(−)鎖一本鎖RNA、および(b)該(−)鎖一本鎖RNAによりコードされる、該RNAに結合するタンパク質、からなる複合体、
(2)(−)鎖一本鎖RNAがNPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質を発現し、Fタンパク質、HNタンパク質、若しくはMタンパク質またはこれらの組み合わせを発現しないように改変されている、(1)に記載の複合体、
(3)(−)鎖一本鎖RNAがセンダイウイルスに由来する、(1)または(2)に記載の複合体、
(4)(−)鎖一本鎖RNAが、さらに外来遺伝子をコードしている、(1)から(3)のいずれかに記載の複合体、
(5)(4)に記載の複合体およびカチオン性脂質を含む遺伝子導入用組成物、
(6)(4)に記載の複合体およびカチオン性ポリマーを含む遺伝子導入用組成物、
(7)(5)または(6)に記載の遺伝子導入用組成物を細胞に導入する工程を含む、該細胞内で外来遺伝子を発現させる方法、に関する。
パラミクソウイルス科ウイルスの「NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子」とは、それぞれヌクレオキャプシド、ホスホ、マトリックス、フュージョン、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ、およびラージ蛋白質をコードする遺伝子のことを指す。パラミクソウイルス亜科に属する各ウイルスにおける各遺伝子は、一般に次のように表記される。また、一般に、NP遺伝子は「N遺伝子」と表記されることもある。
レスピロウイルス属 N P/C/V M F HN - L
ルブラウイルス属 N P/V M F HN (SH) L
モービリウイルス属 N P/C/V M F H - L
例えばパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のレスピロウイルス(Respirovirus)に分類されるセンダイウイルスの各遺伝子の塩基配列のデータベースのアクセッション番号は、NP遺伝子についてはM29343、M30202, M30203, M30204, M51331, M55565, M69046, X17218、P遺伝子についてはM30202, M30203, M30204, M55565, M69046, X00583, X17007, X17008、M遺伝子についてはD11446, K02742, M30202, M30203, M30204, M69046, U31956, X00584, X53056、F遺伝子についてはD00152, D11446, D17334, D17335, M30202, M30203, M30204, M69046, X00152, X02131、HN遺伝子についてはD26475, M12397, M30202, M30203, M30204, M69046, X00586, X02808, X56131、L遺伝子についてはD00053, M30202, M30203, M30204, M69040, X00587, X58886を参照のこと。
本発明は、エンベロープ遺伝子欠損型のパラミクソ科ウイルに由来するリボヌクレオプロテイン(RNP)複合体に関する。該複合体は、エンベロープタンパク質がなければ、標的細胞内でエンベロープタンパク質を有するウイルスを生産しないように改変されている。即ち、本発明のRNPは、(a)パラミクソ科ウイルスの少なくとも一つのエンベロープタンパク質を発現しないように改変されたパラミクソウイルスに由来する(−)鎖一本鎖RNA、および(b)該(−)鎖一本鎖RNAによりコードされる、該RNAに結合するタンパク質、からなる。
(−)鎖一本鎖RNAと結合するタンパク質とは、該(−)鎖一本鎖RNAと直接および/または間接に結合し、該(−)鎖一本鎖RNAと複合体を形成するタンパク質のことを言う。一般に、パラミクソウイルスの(−)鎖一本鎖RNA(ゲノムRNA)には、NPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質が結合している。このRNPに含まれるRNAが、RNAの転写および複製のための鋳型となる(Lamb, R.A., and D. Kolakofsky, 1996, Paramyxoviridae:The viruses and their replication. pp.1177-1204. In Fields Virology, 3rd edn. Fields, B. N., D. M. Knipe, and P. M. Howley et al.(ed.), Raven Press, New York, N. Y.)。本発明の複合体には、パラミクソウイルスに由来する(−)鎖一本鎖RNAおよびそれに結合するパラミクソウイルスに由来するタンパク質からなる複合体が含まれる。本発明の複合体は、例えば(−)鎖一本鎖RNAにこれらのタンパク質(NP、P、およびLタンパク質)が結合したRNP複合体である。一般に、パラミクソウイルスのRNP複合体は、細胞内で自立的にRNP複合体を複製する能力を有する。このように、細胞に導入されたRNPは細胞内で増幅して遺伝子(RNP複合体に含まれるRNA)のコピー数を増やす。これにより、外来遺伝子を持つRNPからの外来遺伝子の高い発現がもたらされる。本発明のベクターは、好ましくは、細胞内で複合体(RNP)に含まれるRNAを複製する能力を有するものである。
本発明の複合体(RNP)の由来としては、パラミクソ科ウイルスであれば特に制限はないが、パラミクソウイルス属に属するウイルス、特にセンダイウイルスが好適である。本発明の複合体(RNP)の由来としては、センダイウイルス以外に、例えば、麻疹ウイルス、サルパラインフルエンザウイルス(SV5)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型などが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明のRNPに含まれる(−)鎖一本鎖RNAは、パラミクソ科ウイルスの少なくとも一つのエンベロープタンパク質の発現が抑制されるように構築されている。発現を抑制するエンベロープタンパク質としては、Fタンパク質、HNタンパク質、若しくはMタンパク質が挙げられる。また、これらの組み合わせであってもよい。(−)鎖一本鎖RNAは、RNPの形成に必要なNPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質を発現するように構築されている。本発明のRNPに含まれる(−)鎖一本鎖RNAは、例えば、NPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質を発現し、Fタンパク質および/またはHNタンパク質を発現しないように改変されているものであってよい。
センダイウイルス(Sendai virus; SeV)の場合、天然のウイルスのゲノムサイズは約15,000塩基で、ネガティブ鎖は3'の短いリーダー領域に続き、NP(ヌクレオキャプシド)、P(ホスホ)、M(マトリックス)、F(フュージョン)、HN(ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ)、およびL(ラージ)蛋白質をコードする6つの遺伝子が並んでおり、短い5'トレイラー領域を他端に有する。本発明においては、このうちF、HN、およびM遺伝子のうちいずれか、あるいはそれらの組み合わせを欠損するゲノムを設計することにより、エンベロープタンパク質を発現しないように改変することができる。好ましくはF遺伝子またはHN遺伝子、あるいはF遺伝子とHN遺伝子の両方を欠損している。RNPの形成にはこれらの蛋白質は必要ないため、NP、P、およびLタンパク質の存在下でこのゲノムRNA(ポジティブ鎖またはネガティブ鎖)を転写させることにより、本発明のRNPを製造することができる。RNPの形成は、例えばLCC-MK2細胞などで行わせることができる。NP、P、およびLタンパク質の供給は、各遺伝子をコードする発現ベクターを細胞に導入することにより行われ得る(実施例参照)。また、各遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれていてもよい。RNPを形成させるために発現させるNP、P、およびL遺伝子は、RNP中に含まれるゲノムにコードされるNP、P、およびL遺伝子と完全に同一である必要はない。すなわち、これらの遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列は、RNPゲノムがコードするタンパク質のアミノ酸配列そのままでなくとも、ゲノムRNAと結合し、細胞内でRNPの複製を行う活性を持つ限り、変異を導入したり、あるいは他のウイルスの相同遺伝子で代用してもよい。一端RNPが形成されれば、このRNPからNP、P、およびL遺伝子が発現され、細胞内で自立的にRNPが複製する。
細胞内でRNPを再構成させ増幅させるためには、RNPに含まれる(−)鎖一本鎖RNAにおいて発現しないように改変されたエンベロープタンパク質を発現する細胞(ヘルパー細胞)にRNPを導入するか、またはこの細胞でRNPを再構成させることができる。例えば、F遺伝子を発現しないように改変された(−)鎖一本鎖RNAからRNPを増幅するには、細胞において、NP、P、およびLタンパク質と共にFタンパク質を発現させる。これにより、エンベロープタンパク質を保持するウイルスベクターが構築され、ヘルパー細胞への感染を介して増幅される。
また、(−)鎖一本鎖RNAにおいて発現しないように改変されたエンベロープタンパク質とは異なるエンベロープタンパク質を用いることも可能である。このようなエンベロープタンパク質に特に制限はない。例えば、他のウイルスのエンベロープタンパク質、例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV)のGタンパク質(VSV-G)を挙げることができる。例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV)のGタンパク質(VSV-G)を発現する細胞を用いて、本発明のRNP複合体を増幅させることができる。
本発明の複合体は、通常、(a)パラミクソ科ウイルスの少なくとも一つのエンベロープタンパク質を発現しないように改変されたパラミクソウイルスに由来する(−)鎖一本鎖RNAまたはその相補鎖をコードするベクターDNAを、エンベロープタンパク質を発現する細胞(ヘルパー細胞)に導入して発現させ、(b)該細胞を培養し、その培養上清または細胞抽出物からRNP複合体を回収することにより調製することができる。ベクターDNAを発現させる時に、NP、L、およびPタンパク質を共発現させておくことでRNPが形成され、エンベロープタンパク質を持つウイルスが構築される。
ヘルパー細胞で発現させるベクターDNAは、本発明の複合体に含まれる(−)鎖一本鎖RNA(ネガティブ鎖)またはその相補鎖(ポジティブ鎖)をコードしている。細胞内で転写させる鎖は、ウイルスのポジティブ鎖でもネガティブ鎖でもよいが、ポジティブ鎖が転写されるようにすることが複合体の再構成の効率を上げるためには好ましい。例えば、(−)鎖一本鎖RNAまたはその相補鎖をコードするDNAをT7プロモーターの下流に連結させ、T7 RNAポリメラーゼによりRNAに転写させる。
例えば、エンベロープ遺伝子が欠損した組換えセンダイウイルスゲノムを発現するプラスミドを、欠損したエンベロープ蛋白質を発現するベクターならびに、NP、P/CおよびL蛋白質の発現ベクターと共に宿主細胞にトランスフェクションすることにより、RNP複合体を含むウイルスの再構成を行うことができる。また、例えば、F遺伝子が染色体に組込まれた宿主細胞を用いて製造することもできる。ウイルスゲノム以外から供給されるこれらの蛋白質群は、そのアミノ酸配列はウイルス由来の配列のままでなくとも、核酸の導入における活性が天然型のそれと同等かそれ以上ならば、変異を導入したり、あるいは他のウイルスの相同遺伝子で代用してもよい。一般に、エンベロープタンパク質は、細胞傷害性や細胞の形態を変える作用により、長期的培養が困難な場合が知られているため、誘導性プロモーターの制御下にベクターの再構成時にのみ発現させることもできる(実施例参照)。
RNPまたはこれを含むウイルスが形成されれば、このRNPまたはウイルスを上記のヘルパー細胞に再度導入して培養することにより、本発明の複合体を増幅することができる。この過程は、(a)本発明の複合体または該複合体を含むウイルスベクターを、エンベロープタンパク質を発現する細胞に導入する工程、および(b)該細胞を培養し、その培養上清または細胞抽出物からウイルス粒子を回収する工程、を含む。
RNPを細胞に導入するには、例えばリポフェクトアミンやポリカチオニックリポソームなどと共に複合体を形成させて導入することが可能である。具体的には、種々のトランスフェクション試薬が利用できる。例えば、DOTMA(Boehringer)、Superfect(QIAGEN #301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Boehringer #1811169)などが挙げられる。エンドソーム中での分解を防ぐため、クロロキンを加えることもできる(Calos, M.P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。
上記のようにして細胞においてウイルスベクターが構築されれば、この細胞を、エンベロープタンパク質を発現する細胞と共培養することにより、本発明の複合体または該複合体を含むウイルスベクターをさらに増幅することができる。このような方法としては、例えば実施例12に記載したように、ウイルスを産生する細胞にエンベロープタンパク質を発現する細胞を重層する方法が好適である。
本発明の複合体は、例えば、免疫原性を低下させるために、また、RNAの転写効率や複製効率を高めるために、複合体中のRNAにコードされるウイルス遺伝子が改変されたものであってもよい。
本発明の複合体は、(−)鎖一本鎖RNA中に外来遺伝子をコードするRNAを含みうる。外来遺伝子としては、標的細胞中で発現させたい所望の遺伝子を用いることが可能である。例えば、遺伝子治療などを目的とする場合には、複合体に含まれるRNAをコードするベクターDNAに対象となる疾患の治療用遺伝子を挿入する。ベクターDNAに外来遺伝子を導入する場合は、例えば、センダイウイルスベクターDNAにおいては、転写終結(E)配列と転写開始(S)配列との間などに、6の倍数の塩基数を有する配列を挿入することが望ましい(Journal of Virology, Vol. 67, No. 8, 1993, p.4822-4830)。外来遺伝子は、ウイルスの各遺伝子(NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子)の前または後ろに挿入することができる(実施例参照)。前後の遺伝子の発現を妨げないようにするため、外来遺伝子の前または後ろに適宜E-I-S配列(転写開始配列−介在配列−転写終結配列)またはその部分を挿入する。挿入した外来性遺伝子の発現量は、外来遺伝子の上流に付加する転写開始配列の種類により調節することができる。また、遺伝子挿入の位置、また遺伝子の前後の塩基配列により調節しうる。例えば、センダイウイルスにおいては、挿入位置が(−)鎖RNAの3'端に近いほど(野生型ウイルスのゲノム上の遺伝子配置においては、NP遺伝子に近いほど)、挿入された遺伝子の発現量が高い。外来遺伝子の高い発現を得るためには、外来遺伝子をNP遺伝子の上流(マイナス鎖においては3'側)またはNP遺伝子とP遺伝子の間に挿入することが好ましい。逆に、挿入位置がネガティブ鎖RNAの5'端に近いほど(野生型ウイルスのゲノム上の遺伝子配置においては、L遺伝子に近いほど)、挿入された遺伝子の発現量が低くなる。外来遺伝子の発現を低く抑えるためには、例えばネガティブ鎖の最も5'側、すなわち野生型ウイルスゲノムにおいてはL遺伝子の下流(ネガティブ鎖においてはL遺伝子の5'隣接部位)、またはL遺伝子の上流(ネガティブ鎖においてはL遺伝子の3'隣接部位)に外来遺伝子を挿入する。外来遺伝子を容易に挿入できるようにするために、挿入部位にクローニングサイトを設計することができる。クローニングサイトは、例えば制限酵素の認識配列とすることができる。ゲノムをコードするベクターDNA中の当該制限酵素部位に外来遺伝子断片を挿入することができる。クローニングサイトは、複数の制限酵素認識配列を有する、いわゆるマルチクローニングサイトとしてもよい。本発明の複合体中のRNAゲノムは、このように挿入した以外に位置に他の外来遺伝子を保持していてもよい。
外来遺伝子を有する組換えセンダイウイルス由来のRNP複合体を含むウイルスベクターは、例えば、Kato, A. et al., 1997, EMBO J. 16: 578-587及びYu, D. et al., 1997, Genes Cells 2: 457-466の記載に準じて、次のようにして構築することができる。
まず、所望の外来遺伝子のcDNA塩基配列を含むDNA試料を用意する。DNA試料は、25ng/μl以上の濃度で電気泳動的に単一のプラスミドと確認できることが好ましい。以下、外来遺伝子をNotI部位を利用してウイルスゲノムをコードするDNAに挿入する場合を例にとって説明する。目的とするcDNA塩基配列の中にNotI認識部位が含まれる場合は、部位特異的変異挿入法などを用いて、コードするアミノ酸配列を変化させないように塩基配列を改変し、NotI部位を予め除去しておくことが好ましい。この試料から所望の遺伝子断片をPCRにより増幅回収する。増幅された断片の両端がNotI部位とし、さらに一端にセンダイウイルスの転写終結配列(E)、介在配列(I)及び転写開始配列(S)(EIS配列)のコピーを付加するために、NotI制限酵素切断部位配列及び転写終結配列(E)、介在配列(I)及び転写開始配列(S)と目的遺伝子の一部の配列を含むプライマー対として、フォワード側合成DNA配列及びリバース側合成DNA配列(アンチセンス鎖)を作成する。
例えば、フォワード側合成DNA配列は、NotIによる切断を保証するために5'側に任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCG、GCCのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3'側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3'側にスペーサー配列として任意の9塩基または9に6の倍数を加えた数の塩基を付加し、さらにその3'側に所望のcDNA開始コドンATGからこれを含めてORFの約25塩基相当の配列を付加した形態とする。最後の塩基GまたはCとなるように該所望のcDNAから約25塩基を選択してフォワード側合成オリゴDNAの3'の末端とすることが好ましい。
リバース側合成DNA配列は5'側から任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCG、GCCのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3'側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3'側に長さを調節するための挿入断片のオリゴDNAを付加する。このオリゴDNAの長さは、NotI認識部位gcggccgcを含め、cDNAの相補鎖塩基配列と後述するセンダイウイルスに由来するセンダイウイルスゲノムのEIS塩基配列の合計が6の倍数になるように塩基数を設計する(いわゆる「6のルール(rule of six)」; Kolakofski, D. et al., J. Virol. 72:891-899, 1998)。さらに挿入断片の3'側にセンダイウイルスのS配列の相補鎖配列、好ましくは5'-CTTTCACCCT-3'、I配列、好ましくは5'-AAG-3'、E配列の相補鎖配列、好ましくは5'-TTTTTCTTACTACGG-3'、さらにその3'側に所望のcDNA配列の終始コドンから逆に数えて約25塩基相当の相補鎖の最後の塩基がGまたはCになるように長さを選択して配列を付加し、リバース側合成オリゴDNAの3'の末端とする。
PCRは、例えば、ExTaqポリメラーゼ(宝酒造)を用いる通常の方法を用いることができる。好ましくはVentポリメラーゼ(NEB)を用いて行い、増幅した目的断片はNotIで消化した後、プラスミドベクターpBluescriptのNotI部位に挿入する。得られたPCR産物の塩基配列をシークエンサーで確認し、正しい配列のプラスミドを選択する。このプラスミドから挿入断片をNotIで切り出し、エンベロープ遺伝子を欠損するゲノムcDNAを含むプラスミドのNotI部位にクローニングする。またプラスミドベクターpBluescriptを介さずにNotI部位に直接挿入し、組換えセンダイウイルスcDNAを得ることも可能である。
ウイルスゲノムをコードするベクターDNAは、これを試験管内または細胞内で転写させ、ウイルスのL、P、NPタンパク質により、RNPを再構成させ、このRNPを含むウイルスベクターを生成させることができる。ベクターDNAからのウイルスの再構成は、エンベロープタンパク質を発現する細胞を用いて、公知の方法に従って行うことができる(国際公開97/16539号; 国際公開97/16538号; Durbin, A.P. et al., 1997, Virology 235: 323-332; Whelan, S.P. et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 8388-8392; Schnell. M.J. et al., 1994, EMBO J. 13: 4195-4203; Radecke, F. et al., 1995, EMBO J. 14: 5773-5784; Lawson, N.D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 4477-4481; Garcin, D. et al., 1995, EMBO J. 14: 6087-6094; Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579; Baron, M.D. and Barrett, T., 1997, J. Virol. 71: 1265-1271; Bridgen, A. and Elliott, R.M., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 15400-15404)。ウイルスベクターDNAにおいて、F遺伝子、HN遺伝子、および/またはM遺伝子を欠失させた場合には、そのままでは感染性のウイルス粒子を形成しないが、宿主細胞に、これら欠失させた遺伝子や他のウイルスのエンベロープ蛋白質をコードする遺伝子などを別途、導入し発現させることにより、感染性のウイルス粒子を形成させ、複合体を含むウイルスを増幅することが可能である。
ベクターDNAを細胞内に導入する方法には、次のような方法、▲1▼目的の細胞が取り込めるようなDNA沈殿物を作る方法、▲2▼目的の細胞による取りこみに適し、かつ細胞毒性の少ない陽電荷特性を持つDNAを含む複合体を作る方法、▲3▼目的の細胞膜に、DNA分子が通り抜けられるだけに十分な穴を電気パルスによって瞬間的に開ける方法などがある。
▲2▼としては、種々のトランスフェクション試薬が利用できる。例えば、DOTMA(Boehringer)、Superfect(QIAGEN #301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Boehringer #1811169)などが挙げられる。▲1▼としては例えばリン酸カルシウムを用いたトランスフェクション法が挙げられ、この方法によって細胞内に入ったDNAは貧食小胞に取り込まれるが、核内にも十分な量のDNAが入ることが知られている(Graham, F.L. and Van Der Eb, J., 1973, Virology 52: 456; Wigler, M. and Silverstein, S., 1977, Cell 11: 223)。ChenおよびOkayamaはトランスファー技術の最適化を検討し、1)細胞を共沈殿物のインキューベーション条件を2〜4% CO2、35℃、15〜24時間、2)DNAは直鎖状より環状のものが活性が高く、3)沈殿混液中のDNA濃度が20〜30μg/mlのとき最適な沈殿が得られると報告している(Chen, C. and Okayama, H., 1987, Mol. Cell. Biol. 7: 2745)。▲2▼の方法は、一過的なトランスフェクションに適している。古くはDEAE-デキストラン(Sigma #D-9885 M.W. 5×105)混液を所望のDNA濃度比で調製し、トランスフェクションを行う方法が知られている。複合体の多くはエンドソームの中で分解されてしまうため、効果を高めるためにクロロキンを加えることもできる(Calos, M.P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。▲3▼の方法は電気穿孔法と呼ばれる方法で、細胞選択性がないという点で▲1▼や▲2▼の方法に比べて汎用性が高い。効率はパルス電流の持続時間、パルスの形、電界(電極間のギャップ、電圧)の強さ、バッファーの導電率、DNA濃度、細胞密度の最適条件下で良いとされている。
以上、3つのカテゴリーの中で▲2▼の方法は操作が簡便で多量の細胞を用いて多数の検体を検討することができるので、本発明においては、トランスフェクション試薬が適している。好適にはSuperfect Transfection Ragent(QIAGEN, Cat No. 301305)、またはDOSPER Liposomal Transfection Reagent(Boehringer Mannheim, Cat No. 1811169)が用いられる。
cDNAからの再構成は具体的には次のようにして行うことができる。
24穴から6穴程度のプラスチックプレートまたは100mmペトリ皿上で、10%ウシ胎児血清(FCS)および抗生物質(100units/mlペニシリンGおよび100μg/mlストレプトマイシン)を含む最少必須培地(MEM)を用いてサル腎臓由来細胞株LLC-MK2を70〜80%コンフルエントになるまで培養し、例えば1μg/ml psoralen(ソラレン)存在下UV照射処理を20分処理で不活化した、T7ポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルスvTF7-3(Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8122-8126, 1986、Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569-579, 1996)を2PFU/細胞で感染させる。ソラレンの添加量およびUV照射時間が適宜調整することができる。感染1時間後、2〜60μg、より好ましくは3〜5μgの上記の組換えセンダイウイルスcDNAを、全長センダイウイルスゲノムの生成に必須なトランスに作用するウイルスタンパク質を発現するプラスミド(24-0.5μgのpGEM-N、12-0.25μgのpGEM-P、および24-0.5μgのpGEM-L、より好ましくは1μgのpGEM-N、0.5μgのpGEM-P、および1μgのpGEM-L)(Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569-579,1996)と共にSuperfect(QIAGEN社)を用いたリポフェクション法等によりトランスフェクションする。トランスフェクションを行った細胞は、所望により100μg/mlのリファンビシン(Sigma)及びシトシンアラビノシド(AraC)、より好ましくは40μg/mlのシトシンアラビノシド(AraC)(Sigma)のみを含む血清不含のMEMで培養し、ワクシニアウイルスによる細胞毒性を最少にとどめ、ウイルスの回収率を最大にするように薬剤の最適濃度を設定する(Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579)。トランスフェクションから48〜72時間程度培養後、細胞を回収し、凍結融解を3回繰り返して細胞を破砕した後、エンベロープタンパク質を発現するLLC-MK2細胞にトランスフェクションして培養する。培養3〜7日後に培養液を回収する。あるいは、NP、L、P発現プラスミドを初めからエンベロープタンパク質を発現するLLC-MK2細胞にトランスフェクションするか、またはエンベロープ発現プラスミドを共にトランスフェクションすれば、感染性ウイルスベクターをより効率良く得ることができる。この細胞は、エンベロープタンパク質を発現するLLC-MK2細胞に重層して培養することによってウイルスベクターを増幅することができる(実施例参照)。培養上清に含まれるウイルス力価は赤血球凝集活性(HA)を測定することにより決定することができる。HAは「endo-point希釈法」(Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579)により決定することができる。得られたウイルスストックは-80℃で保存することができる。
RNP複合体またはウイルスベクターが再構成する限り、再構成に用いる宿主細胞は特に制限されない。例えば、センダイウイルスベクターまたはRNP複合体の再構成においては、サル腎由来のCV-I細胞やLLC-MK2細胞、ハムスター腎由来のBHK細胞などの培養細胞を使うことができる。これらの細胞に適当なエンベロープタンパク質を発現させることで、そのエンベロープを有する感染性ウイルス粒子を得ることもできる。また、大量にセンダイウイルスベクターを得るために、例えばエンベロープ遺伝子を発現するベクターと共に上記の宿主から得られたRNPまたはウイルスベクターを発育鶏卵に接種し、ウイルスを増幅させることができる。または、エンベロープタンパク質遺伝子が組み込まれたトランスジェニック鶏卵を用いてウイルスベクターを生産することも可能である。鶏卵を使ったウイルスベクターの製造方法は既に開発されている(中西ら編, (1993), 「神経科学研究の先端技術プロトコールIII, 分子神経細胞生理学」, 厚生社, 大阪, pp.153-172)。具体的には、例えば、受精卵を培養器に入れ9〜12日間37〜38℃で培養し、胚を成長させる。エンベロープタンパク質を発現するベクターと共にセンダイウイルスベクターまたはRNP複合体を漿尿膜腔へ接種し、数日間卵を培養してウイルスベクターを増殖させる。培養期間等の条件は、使用する組換えセンダイウイルスにより変わり得る。その後、ウイルスを含んだ漿尿液を回収する。漿尿液からのセンダイウイルスベクターの分離・精製は常法に従って行うことができる(田代眞人, 「ウイルス実験プロトコール」, 永井、石浜監修, メジカルビュー社, pp.68-73,(1995))。
エンベロープタンパク質を発現するベクターとして、本発明の複合体、または本発明の複合体を含むウイルスベクター自体を用いることが考えられる。例えば、ゲノム上で欠損しているエンベロープ遺伝子が異なる2種のRNP複合体を同じ細胞に導入すれば、それぞれで欠損するエンベロープタンパク質が、もう一方の複合体からの発現により供給されるため、互いに相補しあって感染力のあるウイルス粒子が形成され、複製サイクルがまわりウイルスが増幅される。すなわち、2種類またはそれ以上の本発明のRNP複合体またはそれを含むウイルスベクターを、エンベロープタンパク質を相補する組み合わせで接種すれば、それぞれのエンベロープ遺伝子欠損型ウイルスベクターの混合物を大量かつ低コストで生産することができる。このようにして生産された混合ウイルスは、ワクチン等にも有用である。また、これらのウイルスは、エンベロープ遺伝子が欠損している分、エンベロープ遺伝子を欠損していないウイルスに比べゲノムサイズが小さくなり、長い外来遺伝子を保持することができる。また、元々感染性のないこれらのウイルスは細胞外で希釈され共感染の維持が困難であることから、不稔化するため、環境放出管理上の利点がある。
ウイルスからの本発明のRNPの調製は、例えば、以下のように超遠心法を利用して行なうことができる。ウイルス粒子を含むろ液にtritonX-100を終濃度0.5%となるように加え、これを室温で10〜15分放置し、その上澄みを10〜40%ショ糖勾配の上に重層し、20,000〜30,000rpmで30分遠心し、RNPを含む画分を回収する。
あるいは、ウイルスを0.6% NP40、1%のデオキシコール酸ナトリウム、1M KCl、10mM β-メルカプトエタノール、10mM Tris HCl(pH7.4)、5mM EDTA(終濃度)に溶かす。20℃で20分放置し、11,000×gで20分間遠心する。RNPを含む上澄みを50%グリセロール、0.2% NP40、30mM NaCl、10mM Tris HCl、1mM EDTAに重層し、39,000rpm、2時間、4℃で遠心して沈殿を回収する。沈殿に含まれるRNP複合体は、0.5% Triton X-100を含む溶液に再度分散させ、10〜40%ショ糖勾配に重層し、20,000〜30,000rpmで30分遠心し、RNPを含む単一のバンドを回収することにより高度に精製することが可能である。
本発明の複合体は、例えば生理食塩水やリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などで適宜希釈して組成物とすることができる。本発明の複合体を鶏卵で増殖させた場合等においては漿尿液を含むこともできる。本発明の複合体を含有する組成物には、脱イオン水、5%デキストロース水溶液等の生理学的に許容しうる媒体を含んでいてもよい。さらに、その他にも、安定剤、殺生物剤等が含有されていてもよい。
外来遺伝子を挿入したRNAを含むRNPを調製すれば、遺伝子導入試薬を用いて、標的細胞に導入することができる。遺伝子導入試薬としてはカチオン性脂質またはカチオン性ポリマーが好適である。
カチオン性脂質には、例えば公表特許公報 平5-508626号において一般式(I)で示される化合物が含まれる。カチオン性脂質は、好ましくは合成脂質化合物である。また、カチオン性脂質は、ジエーテル化合物またはジエステル化合物であってもよい。好ましくは、エーテル脂肪族である。具体的には、以下のような化合物が挙げられる:
DOGS(TransfectamTM)またはDOTMA(LipofectinTM)(ジエーテル化合物)
DOTAP(ジエステル化合物)
DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)
DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)
DPRIローゼンタール抑制因子(RI)(DL-2,3-ジステアロイルオキシプロピル(ジメチル)β-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(Sigma)のジパルミトイル化誘導体
DORI 同上のジオレイル誘導体
カチオン性ポリマーは陽イオン高分子であり、好ましくは合成分子である。具体的には、ポリリジン、脂肪族ポリアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
本発明複合体を上記のカチオン性脂質またはカチオン性ポリマーと混合して、遺伝子導入用組成物とすることができる。この遺伝子導入用組成物には、適宜生理食塩水などの溶媒、および塩、安定剤などの溶質を組み合わせることができる。本発明の遺伝子導入用組成物を細胞に添加することにより、細胞に本発明の複合体を導入して複合体に含まれるRNAから遺伝子を発現させることができる。
外来遺伝子として疾患の治療用遺伝子を用いれば、遺伝子治療を行なうことが可能となる。本発明の複合体の遺伝子治療への応用としては、直接投与による遺伝子発現、間接(ex vivo)投与による遺伝子発現のいずれの方法によっても、治療効果を期待できる外来遺伝子もしくは患者の体内で供給が不足している内在遺伝子等を発現させることが可能である。外来遺伝子としては特に制限はなく、蛋白質をコードする核酸に加え、例えば、アンチセンスまたはリボザイムなどのタンパク質をコードしない核酸であってもよい。また、外来遺伝子として、感染症に関する細菌またはウイルスの抗原をコードする遺伝子を用いれば、これを動物に投与することにより、該動物において免疫を誘導することができる。即ちワクチンとして利用することができる。
ワクチンとして用いる場合、例えば腫瘍、感染症、およびその他の一般的な疾患に対し適用することが考えられる。例えば腫瘍治療としては、腫瘍細胞、またはDC細胞などの抗原提示細胞(APC)に治療効果を有する遺伝子を発現させることができる。このような遺伝子としては、癌抗原Muc-1またはMuc-1様ムチンタンデムリピートペプチド(米国特許第5,744,144号)、メラノーマgp100抗原などが挙げられる。このような遺伝子による治療は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌等、幅広い応用が示されている。また、アジュバント効果を高めるサイトカイン類を組み合わせることも有効である。このような遺伝子としては、例えばi)IL-2と一本鎖IL-12との組み合わせ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(15): 8591-8596, 1999)、ii)Il-2とインターフェロン-γ(米国特許第5,798,100号)、iii)単独で用いられる顆粒球コロニー刺激因子(GM-CSF)、iv)脳腫瘍を治療対象としたGM-CSFとIL-4の組み合わせ(J. Neurosurgery 90(6), 1115-1124(1999))などが挙げられる。
感染症の治療としては、インフルエンザにおいては、例えば強毒株H5N1型エンベロープ、日本脳炎においては、例えばエンベロープキメラ(Vaccine, vol. 17, No. 15-16, 1869-1882(1999))、エイズにおいては、例えばHIVgagまたはSIVgagタンパク質(J. Immunology(2000)vol. 164, 4968-4978)、HIVエンベロープタンパク質の経口投与による鎖クチン治療、ポリ乳酸-グリコール共重合体に包んでの投与(Kaneko, H. et al., Virology 267: 8-16(2000))、コレラにおいては、例えばコレラ毒素のBサブユニット(CTB)(Arakawa T, et al., Nature Biotechnology(1998)16(10): 934-8、Arakawa T, et al., Nature Biotechnology(1998)16(3): 292-7)、狂犬病においては、例えば狂犬病ウイルスの糖タンパク(Lodmell DL et al., 1998, Nature Medicine 4(8):949-52)、子宮頚癌においては、ヒトパピローマウイルス6型のカプシドタンパクL1(J. Med. Virol. 60, 200-204(2000))などが挙げられる。
また、一般病への適用も考えられる。糖尿病におては、例えばI型糖尿病モデル動物におて、インシュリン断片のペプチドの発現が行われている(Coon, B. et al., J. Clin. Invest., 1999, 104(2):189-94)。
【図面の簡単な説明】
図1は、Cre-LoxP誘導発現系によるF蛋白質の発現を解析したウエスタンブロット解析の結果を示す写真である。化学発光法により抗SeV-F抗体と交叉のみられる該転写膜上の蛋白質の検出を行った結果を示す。
図2は、Cre-loxP系により発現を誘導したF蛋白質の細胞表面へのディスプレイを解析した結果を示す図である。抗SeV-F抗体を用いてLLC-MK2/F7のフローサイトメトリー解析を行った結果を示す。
図3は、発現されたF蛋白質のトリプシンによる解裂をウエスタンブロット法により確認した結果を示す写真である。
図4は、細胞表面におけるHNの発現を赤血球の細胞表面への吸着実験で確認した結果を示す写真である。
図5は、欠失タンパク質発現細胞を用いて欠失型ウイルスの回収を試みた結果を示す写真である。F欠損SeVの再構築時に用いたワクシニアウイルスによりヘルパー細胞株からのF蛋白発現が素早くシャットオフしたことが判明した。
1.LLC-MK2およびCV-1はそれぞれの細胞株のみの細胞ライセートを指す。
2.LLC-MK2/F+adおよびCV-1/F+adはアデノウイルスAxCANCreを加えたそれぞれの誘導発現細胞ライセートを指す。
3.LLC-MK2/F-adおよびCV-1/F-adはアデノウイルスAxCANCreを加えていないそれぞれのF遺伝子導入株の細胞ライセートを指す。
4.LLC-MK2/F+ad 3rdはアデノウイルスAxCANCreで誘導発現した細胞をさらに3回継代した細胞のライセートを指す。
5.1dおよび3dはそれぞれ誘導発現後1日および3日を指す。
6.Vac1dおよびVac3dはそれぞれワクシニアウイルス感染後1日および3日の細胞を指す。
7.AraC1dおよびAraC3dはそれぞれAraCを添加して1日および3日の細胞を指す。
8.CHX 1dおよびCHX 3dはそれぞれ蛋白合成阻害剤サイクロヘキシミドを添加して1日および3日の細胞を指す。
図6は、GFP導入F欠失SeV cDNA(pSeV18+/ΔF-GFP)をF非発現LLC-MK2細胞にトランスフェクションしてGFPの発現(RNPの検出)を観察した結果を示す写真である。対照群としてF遺伝子をNP遺伝子の3'末端にシャフルし、F欠失部位にGFPを導入したSeV cDNA(Fシャフル型SeV)を用いた。「all」はSeV cDNAの他に、NP,P,L遺伝子を発現するプラスミド(pGEM/NP, pGEM/P, 及びpGEM/L)も同時にトランスフェクションしたものを表わす。「cDNA」はcDNA(pSeV18+/ΔF-GFP)のみのトランスフェクションを表わす。RNPトランスフェクションはGFPを発現しているP0細胞を回収し、OptiMEM(GIBCO BRL)に懸濁し(107細胞/ml)、凍結融解3回くり返したライセート100μlをカチオン性リボソームDOSPER(ベーリンガーマインハイム)25μlと混合し、室温に15分間放置してから、F発現誘導細胞(+ad)に添加し、RNPトランスフェクションを行った。細胞の対照群としてCre DNAリコンビナーゼを発現する組換えアデノウイルス非添加(-ad)細胞を用いた。その結果、P0のLLC-MK2細胞ではGFPはSeVウイルスRNPの形成に依存的に発現することが判明し、P1では、F欠失ウイルスはF誘導発現に依存的に増幅されることが判明した。
図7は、F欠失ゲノムcDNAで再構築された機能的なRNPが、F発現ヘルパー細胞でレスキューされ、感染性を有する欠失型ウイルスビリオンを形成し得るかを調べた結果を示す写真である。RNP/oはRNPを重層(overlay)した細胞を指し、RNP/tはRNPをtransfectionした細胞を指す。
図8は、F欠失ウイルスが、F発現細胞に特異的に増幅されることを確かめた結果を示す写真である。遺伝子欠失型ゲノムから構築した機能的RNPを含むライセートを実施例2に記載のF発現細胞にリポフェクションし、培養上清を回収した。この培養上清をF発現細胞の培地に加え感染させ、3日目に回収された培養上清を、F発現細胞とF非発現細胞に同時に添加し、トリプシン存在と非存在下で3日間培養した。その結果を示す。F発現細胞では、トリプシン存在下でのみウイルスが増幅された。
図9は、F発現細胞に導入した場合に特異的にF欠失ウイルスが培養上清に放出されることを確かめた結果を示す写真である。遺伝子欠失型ゲノムから構築した機能的RNPを含むライセートを実施例2に記載のF発現細胞にリポフェクションし、培養上清を回収した。この培養上清をF発現細胞の培地に加え感染させ、3日目に回収された培養上清を、F発現細胞とF非発現細胞に同時に添加し、トリプシン存在と非存在下で3日間培養した。下段はF非発現細胞の上清の場合の結果を示す。
図10は、F欠失cDNAから回収されたビリオンのゲノム構造を確認するため、F発現細胞の培養上清中のウイルスを回収し、total RNAを抽出して、FとHNをプローブにしてノーザンブロット解析を行った結果を示す写真である。F発現細胞から回収されたウイルスはHN遺伝子は検出されたがF遺伝子は検出されず、F遺伝子がウイルスゲノム上に存在しないことが明らかとなった。
図11は、GFPの遺伝子はcDNAの構築の際と同様のFの欠失部位に存在することを示すRT-PCRの結果を示す写真である。1:+18-NP、+18 Not Iサイトの存在の確認。2:M-GFP、GFP遺伝子がF遺伝子欠損部位に存在することの確認。3:F遺伝子、F遺伝子の存在の確認。野生型SeVとF欠損GFP発現SeVのゲノム構造を上に示した。GFP遺伝子がF欠損部位に存在し、NPの3'末端に+18由来のNotIサイトがあり、F遺伝子がRNAゲノムのどこにも存在しないことが確認された。
図12は、ウイルスのFとHNに特異的に反応する金コロイド結合IgG(antiF, antiHN)を用いた免疫電顕により調べた結果を示す写真である。ウイルスのエンベロープのスパイク様構造はFとHNの蛋白質からなることが明らかとなった。
図13は、GFPの遺伝子以外の他の遺伝子の構造は野生型と同様であることを確認したRT-PCRの結果を示す図である。
図14は、F欠失ウイルス粒子を電顕により、その形態を調べた結果を示す写真である。F欠失ウイルス粒子は野生型ウイルスと同様に内部にヘリカルなRNP構造とスパイク様構造を有していた。
図15は、F欠失型SeVベクターによるin vitroでの多様な細胞への高効率遺伝子導入の結果を示す写真である。
図16は、マウス初代骨髄細胞(BM c-kit+/-)へのF欠失型SeVベクターの導入を解析した結果を示す図である。白抜きバーはPE陽性/GFP陰性を指し、黒いバーはPE陽性/GFP陽性を指す。
図17は、ラット脳室へのベクターのin vivo投与の結果を示す写真である。
図18は、F発現細胞から回収したF欠損SeVウイルスを含む培養上清をF非発現LLC-MK2細胞に感染し、トリプシン存在下または非存在下で3日間培養し上清中のウイルスの存在をHA assayで確認した結果を示す写真である。
図19は、図18Bにおいて発育鶏卵でHA陽性であった漿尿液(lane 11およびlane 12)を発育鶏卵に再接種して培養2日後の漿尿液のHA assayを行った結果を示す写真である。
図20は、HA陽性で感染性がないウイルス液を免疫電顕で調べた結果を示す写真である。ウイルス粒子が確認され、ビリオンのエンベロープは金コロイド標識したHN蛋白を認識する抗体では反応したが、金コロイド標識したF蛋白を認識する抗体では反応しなかった。
図21は、F欠損ウイルス粒子の細胞へのトランスフェクションの結果を示す写真である。
図22は、F、HN共発現細胞の造成をウエスタンブロットにより調べた結果を示す写真である。LLC/VacT7/pGEM/FHNはLLC-MK2細胞にワクシニア感染後、pGEM/FHNプラスミドをトランスフェクションした細胞。LLC/VacT7はワクシニア感染したLLC-MK2細胞。LLCMK2/FHNmixはF、HN遺伝子導入されたLLC-MK2細胞でクローニングしていない細胞。LLC/FHNはLLC-MK2細胞にF、HN遺伝子を導入してアデノウイルスで発現誘導後(3日後)の細胞、1-13、2-6, 2-16, 3-3, 3-18, 3-22, 4-3, 5-9はクロニングしたときの細胞株の番号(名前)を指す。
図23は、pGEM/FHNの添加の有無の違いによるウイルスの形成を確認した結果を示す写真である。FHN欠損GFP発現SeV cDNA, pGEM/NP, pGEM/P, pGEM/L, pGEM/FHNをそれぞれ混合しLLC-MK2細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入3時間後培地をAraC, トリプシン入りのMEMに交換し、さらに3日間培養した。遺伝子導入後2日目で蛍光実体顕微鏡で観察し、pGEM/FHNの添加の有無の違いを検証し、GFP発現細胞の広がりでウイルスの形成を確認した。その結果を示す。再構築時にpGEM/FHNを添加した場合はGFP発現細胞の広がりが確認され、pGEM/FHNの添加がない場合はGFP発現はシングル細胞でしか観察されなかった
図24は、RNPトランスフェクションによるF、HN欠損ウイルスの再構築と増幅を示す写真である。発現誘導後3日目のF HN共発現細胞(12well)にP0 RNPを重層またはDOSPERを用いてリポフェクションし、4日後にGFPを観察した。RNPトランスフェクションの場合はF欠損と同様にP1のFHN発現細胞でウイルスの回収に成功した(上)。Ade/Creを感染して6時間以後にFHN蛋白が誘導発現された細胞にFHN欠損ウイルス液を感染し増幅ができたことを確認した(下)。
図25は、FHN欠損GFPを発現するcDNAから再構築されたウイルス液はLLC-MK2, LLC-MK2/F, LLC-MK2/HN, LLC-MK2/FHNに感染してトリプシンの添加の有無で培養した結果を示す写真である。培養3日後にGFP蛋白発現細胞の広がりを確認した。その結果を示す。LLC-MK2/FHNでのみGFPの広がりが観察され、このウイルス液はFHN共発現に特異的かつトリプシン依存的に増幅されることが確認された。
図26は、FHN発現細胞の培養上清由来のRNAのゲノム構造を確認した結果を示す写真である。
図27は、FHN欠損ウイルスで感染したF発現細胞の培養上清由来RNAのゲノム構造の確認の結果を示す写真である。
図28は、ソラレン・UV照射におけるソラレンの濃度を変化させたときの、ワクシニアウイルスの不活性化とT7活性を示す図である。
図29は、ソラレン・UV照射におけるUV照射時間を変化させたときの、ワクシニアウイルスの不活性化とT7 RNAポリメラーゼ活性を示す図である。
図30は、ソラレン・UV照射したワクシニアウイルスの細胞傷害性(CPE)を示す写真である。3×105のLLC-MK2細胞を6ウェルプレートに播いた。細胞を一晩培養後、ワクシニアウイルスをmoi=2で感染させた。24時間後、CPEを測定した。偽処理のワクシニアウイルスによるCPEはA、15、20、および30分間処理したワクシニアウイルスによるCPEは、それぞれB、C、およびDに示した。
図31は、ワクシニアウイルスのUV処理時間のセンダイウイルス再構成効率に対する影響を示した図である。
図32は、センダイウイルス再構成実験に用いた細胞に残存する複製可能なワクシニアウイルスの力価を示す図である。
図33は、抗VSV-G抗体によるウェスタンブロット解析の結果を示す写真である。
図34は、抗VSV-G抗体を用いたフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。AxCANCre感染4日目のLLC-MK2 VSV-G誘導発現株(L1)(moi=0, 2.5, 5)の解析結果を示す。一次抗体は抗VSV-G抗体(MoAb I-1)、二次抗体はFITC化抗マウスIgを用いた。
図35は、AxCANCreの感染量(MOI=0、1.25、2.5、5、10)を変え、一定量のF遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスを感染後上清を回収し、さらにVSV-G誘導前(-)、誘導後(+)の細胞に感染させ、5日目のGFPの発現している細胞を観察した結果を示す写真である。
図36は、経時的にウイルス産生量を調べた結果を示す写真である。
図37は、VSV-G発現株を用いて得られたF遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスおよびFHN欠損センダイウイルスを抗VSV抗体で処理し、感染性が影響されるを調べた結果を示す写真である。
図38は、GFP遺伝子を含むF、HN欠失型センダイウイルスをVSV-G遺伝子発現細胞LLCG-L1に感染させ、VSV-Gを外被に有するシュードタイプウイルスの産生が見られるかをGFP遺伝子の発現を指標に調べた結果を示す写真である。
図39は、VSV-G遺伝子発現細胞で増殖したウイルスがFおよびHN欠失型であることを、感染細胞抽出液のタンパク質のウエスタン解析により調べた結果を示す写真である。
図40は、蛍光顕微鏡下でGFP発現細胞を観察した結果を示す写真である。
図41は、エンベロープ発現プラスミドと細胞重層の組み合わせによるSeV/ΔF-GFPの再構成効率の向上を示す図である。P0(継代前)のd3〜d4(3日目〜4日目)において、著しい改善が認められた。
図42は、エンベロープ発現プラスミドと細胞重層の組み合わせによるSeV/ΔF-GFPの再構成の処理条件の検討結果を示す図である。GFP陽性細胞は再構成されたウイルス量を表す。
図43は、cDNAからのF欠損センダイウイルスのレスキューの検討結果を示す図である。エンベロープ発現プラスミドと細胞重層の組み合わせによるSeV/ΔF-GFPの再構成効率の向上を示す。7日目は全チャレンジとも陽性となるが、成功確率の中程度領域である3日目に着目し、効率の検討を行った。
図44は、GFPを含まないLacZ搭載F欠失型センダイウイルスベクターのlacZの発現を示す写真である。
図45は、センダイウイルスゲノムcDNA断片のサブクローニング(A)と新たにNotIサイトを導入し構築した5種類のセンダイウイルスゲノムcDNAの構造(B)を示す図である。
図46は、SEAPにNotIサイト、転写開始シグナル、介在配列、転写終結シグナルを付加するためのクローニング用プラスミドの構造を示す図である。
図47は、各センダイウイルスベクターのプラークアッセイの結果を示す写真である。LAS1000で取り込んだプラークアッセイの蛍光画像の一部を示す。
図48は、各センダイウイルスベクター間におけるレポーター遺伝子(SEAP)の発現量の違いを比較した結果を示す図である。SeV18+/SEAPのデータを100としてそれぞれ相対値を表した。SEAP遺伝子が下流に位置するに従ってその活性すなわち発現量が低下していくことがわかった。
図49は、P1 FHN共発現細胞におけるGFP発現を示す顕微鏡写真である。
図50は、VSV-GシュードタイプSeV/ΔF:GFP感染細胞の抽出液を、抗F抗体(anti-F)、抗HN抗体(anti-HN)、抗センダイウイルス抗体(anti-SeV)を用いてウエスタンブロット解析を行った結果を示す写真である。
図51は、中和抗体(VGV抗体)の存在下または非存在下でFおよびHNを欠損したVSV-GシュードタイプSeVを感染させた細胞のGFPの蛍光を示す写真である。
図52は、密度勾配超遠心法を用いて分画したF遺伝子あるいはF, HN遺伝子を欠失したゲノムを有するVSV-Gシュードタイプセンダイウイルスのウェスタン解析の結果を示す写真である。
図53は、F遺伝子を欠損したゲノムを有するセンダイウイルス、あるいはF遺伝子またはF,HN遺伝子を欠失したゲノムを有するVSV-Gシュードタイプセンダイウイルスによる赤血球凝集反応を示す写真である。
図54は、F遺伝子を欠失したゲノムを有するセンダイウイルスまたはVSV-Gシュードタイプセンダイウイルスによる培養細胞への感染特異性を示す図である。
図55は、NGF発現を搭載したF欠失型センダイウイルス(NGF/SeV/△F)の構造の確認を示す写真である。
図56は、NGF搭載F欠失型SeV感染細胞により発現されるNGFの活性を示す図である。ニワトリの後根神経節の初代神経細胞分散培養系に、培養開始と同時にSeV感染細胞の培養上清希釈液或いはコントロールとしてのNGF蛋白を添加し、3日後にミトコンドリアによる還元活性を指標として生細胞を定量した(n=3)。培養上清は1/1000希釈相当量添加した。
図57は、NGF搭載F欠失型SeV感染細胞より発現されるNGFの活性を示す写真である。ニワトリの後根神経節の初代神経細胞分散培養系に、培養開始と同時にSeV感染細胞の培養上清希釈液或いはコントロールとしてのNGF蛋白を添加し、3日後に検鏡した。
A)コントロール(NGF添加無し)、
B)NGF蛋白10ng/mL添加、
C)NGF/SeV感染細胞培養上清1/100希釈添加、
D)NGF/SeV感染細胞培養上清1/100希釈添加、
E)NGF/SeV/ΔF感染細胞培養上清1/100希釈添加、
F)NGF/SeV/ΔF-GFP感染細胞培養上清1/100希釈添加
図58は、Ad-CreのmoiとF蛋白の発現量を示す写真である。
図59は、Adeno-CreによるLLC-MK2/Fの発現を示す写真である。
図60は、継代による発現の持続性を示す写真である。
図61は、継代によるF蛋白の局在化を示す写真である。
図62は、GFP-CIUと抗SeV-CIUとの相関関係を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]F欠失型センダイウイルスの構築
<1>F欠失型SeVゲノムcDNAおよびF発現プラスミドの構築
センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV18+b(+)(Hasan, M.k. et al., 1997, J. General Virology 78: 2813-2820)(「pSeV18+b(+)」は「pSeV18+」ともいう)のcDNAをSphI/KpnIで消化してフラグメント(14673bp)を回収し、pUC18にクローニングしてともいうプラスミドpUC18/KSとした。F欠損部位の構築はこのpUC18/KS上で行った。F遺伝子の欠損は、PCR-ライゲーション方法の組み合わせで行い、結果としてF遺伝子のORF(ATG-TGA=1698bp)を除いてatgcatgccggcagatga(配列番号:1)で連結し、F欠失型SeVゲノムcDNA(pSeV18+/ΔF)を構築した。PCRは、Fの上流には(forward: 5'-gttgagtactgcaagagc/配列番号:2, reverse: 5'tttgccggcatgcatgtttcccaaggggagagttttgcaacc/配列番号:3)、F遺伝子の下流には(forward: 5'-atgcatgccggcagatga/配列番号:4, reverse: 5'-tgggtgaatgagagaatcagc/配列番号:5)のPCR産物をEcoT22Iで連結した。このように得られたプラスミドをSacIとSalIで消化して、F欠損部位を含む領域の断片(4931bp)を回収してpUC18にクローニングし、pUC18/dFSSとした。このpUC18/dFSSをDraIIIで消化して、断片を回収してpSeV18+のF遺伝子を含む領域のDraIII断片と置き換え、ライゲーションとしてプラスミドpSeV18+/ΔFを得た。
さらに、F欠失部位にEGFP遺伝子を搭載したcDNA(pSeV18+/ΔF-GFP)を構築するため、PCRにより、EGFP遺伝子の増幅を行った。EGFP遺伝子を6の倍数(Hausmann, S. et al., RNA 2, 1033-1045(1996))に合わせるため5'はNsiI-taildプライマー(5'-atgcatatggtgatgcggttttggcagtac:配列番号:6)、3'はNgoMIV-tailedプライマー(5'-Tgccggctattattacttgtacagctcgtc:配列番号:7)を用いてPCRを行った。PCR産物を制限酵素NsiIとNgoMIVで消化してゲルから断片を回収し、pUC18/dFSSのF欠失部位にあるNsiIとNgoMIVという制限酵素部位に連結し、シークエンスを確認した。ここから、EGFP遺伝子を含むDraIII断片を回収し、pSeV18+のF遺伝子を含む領域のDraIII断片と書き換え、ライゲーションとしてプラスミドpSeV18+/ΔF-GFPを得た。
一方、F遺伝子を発現するCre/loxP誘導型発現プラスミドの構築はSeV F遺伝子をPCRで増幅し、シーケンスを確認した後、Cre DNAリコンビナーゼにより遺伝子産物を誘導発現されるように設計されたプラスミドpCALNdlw(AraiらJ. Virology72,1998,p1115-1121)のユニークサイトSwaI部位に挿入し、プラスミドpCALNdLw/Fとした。
<2>SeV-F蛋白を誘導発現するヘルパー細胞の作製
F欠損ゲノムから感染ウイルス粒子を回収するため、SeV-F蛋白を発現するヘルパー細胞株を樹立した。細胞はSeVの増殖によく用いられているモンキー腎臓由来細胞株、LLC-MK2細胞を用いた。LLC-MK2細胞は、10%の熱処理した不動化ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリンGナトリウム50単位/ml、およびストレプトマイシン50μg/mlを添加したMEMで37℃、5% CO2で培養した。SeV-F遺伝子産物は細胞傷害性を有するため、Cre DNAコンビナーゼによりF遺伝子産物を誘導発現されるように設計された上記プラスミドpCALNdLw/Fを、リン酸カルシウム法(mammalian transfection kit(Stratagene))により、そのプロトコールに従ってLLC-MK2細胞に遺伝子導入を行った。
10cmプレートを用い、40%コンフルエントまで生育したLLC-MK2細胞に10μgのプラスミドpCALNdLw/Fを導入後、10mlの10% FBSを含むMEM培地にて、37℃の5%CO2インキュベーター中で24時間培養した。24時間後に細胞をはがし、10ml培地に懸濁後、10cmシャーレ5枚を用い、5ml 1枚、2ml 2枚、0.2ml 2枚に蒔き、G418(GIBCO-BRL)を1200μg/mlを含む10mlの10%FBSを含むMEM培地にて培養を行い、2日毎に培地交換しながら、14日間培養し、遺伝子の安定導入株の選択を行った。該培地により生育してきたG418に耐性を示す細胞はクローニングリングを用いて30株を回収した。各クローンは10cmプレートでコンフルエントになるまで拡大培養を続けた。
各クローンについてCre DNAリコンビナーゼを発現する組み換えアデノウイルスAxCANCreで感染後、抗SeV-F蛋白質モノクローナルIgG(f236, J. Biochem. 123: 1064-1072)を用いてSeV-F蛋白の発現をウエスタンブロット法により以下のように調べた。
各クローンは6cmシャーレにてコンフルエントまで生育させた後、アデノウイルスAxCANCreを斉藤らの方法(Saito et al., Nucl. Acids Res. 23: 3816-3821(1995); Arai, T.et al., J Virol 72,1115-1121(1998))によりmoi=3で感染後、3日間培養した。該細胞は培養上清を取り除いた後、PBS緩衝液で2回洗浄し、スクレーパーで細胞をはがし、1500×gで5分間遠心し、細胞を集めた。
該細胞は-80℃で保存し、必要に応じて解凍して使用することができる。集めた細胞は150μl PBSバッファーに懸濁後、同量の2×Tris-SDS-BME sample loading buffer(0.625M Tris, pH6.8, 5%SDS, 25% 2-ME, glycerol, 0.025%BPB, Owl社製)を加え、98℃3分間加熱処理後電気泳動用試料に供した。該試料(1レーン当たり1x105細胞)をSDS-ポリアクリルアミドゲル(マルチゲル10/20、第一化学社製)を用い、電気泳動により分画し、分画された蛋白はセミドライブロット法によりPVDF転写膜(Immobilon-P transfer membranes, Millipore社製)に転写した。転写は100%メタノールに30秒、水に30分間浸した転写膜を使用し、1mA/cm2定電流の条件で1時間行った。
該転写膜を0.05%Tween20, 1%BSAを添加したブロッキング溶液(ブロックエース、雪印社製)中で1時間振蕩後、0.05%Tween20, 1%BSAを添加したブロッキング溶液で1/1000希釈した抗SeV-F抗体(f236)で室温で2時間反応させた。該転写膜を3回20mlのPBS-0.1%Tween20に5分間振蕩して洗浄した後、PBS緩衝液で5分間振蕩し洗浄した。該転写膜を0.05%Tween20, 1%BSAを添加したブロッキング溶液で1/2000希釈したパーオキシダーゼで標識した抗マウスIgG抗体(Goat anti-mouse IgG, Zymed社製)10mlを室温で1時間反応させた。該転写膜を3度20mlのPBS-0.1%Tween20に5分間振蕩して洗浄した後、PBS緩衝液で5分間振蕩し洗浄した。
化学発光法(ECL western blotting detection reagents, Amersham社製)により抗SeV-F抗体と交叉のみられる該転写膜上の蛋白質の検出を行った。結果は図1に示す。AxCANCre感染特異的なSeV-Fの発現が検出され、SeV-F遺伝子産物を誘導発現するLLC-MK2細胞の作出が確認された。
得られた数細胞株の内の一つのLLC-MK2/F7細胞を抗SeV-F抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った(図2)。すなわち、1×105細胞を15,000rppm4℃で5分間スピンダウンし、PBS 200μlで洗浄し、100倍希釈した抗Fモノクローナル抗体(f236)、0.05%アジ化ナトリウム、2%FCSを含むFACS用PBS(日研化学)で4℃、1時間遮光して反応させた。再び15,000rpm4℃で5分間スピンダウンし、PBS 200μlで洗浄し、FITC標識した抗マウスIgG(CAPPEL社)1μg/mlと30分間氷上で反応させ、再びPBS 200μlで洗浄し、15,000rmp4℃で5分間遠心して細胞をスピンダウンし、1mlのFACS用PBSに懸濁した。EPICS ELITE(コールター社製)アルゴンレーザーを用いて、励起波長488nm、蛍光波長525nmで解析した。その結果、LLC-MK2/F7ではSeV-F遺伝子誘導発現時特異的に抗体との高い反応性が検出され、SeV-F蛋白質が細胞表面に発現されることが確認された。
[実施例2]ヘルパー細胞で発現されたSeV-Fタンパク質の機能確認
ヘルパー細胞で誘導発現されたSeV-F蛋白質は従来の蛋白機能が保たれているかを調べた。
LLC-MK2/F7細胞を6cmシャーレに蒔き、コンフルエントまで生育させた後、アデノウイルスAxCANCreを斉藤らの方法(上記)によりmoi=3で感染後、トリプシン(7.5μg/ml, GIBCOBRL)を含むMEM(serum free)で37℃ 5%CO2インキュベーターで3日間培養した。
該細胞は培養上清を取り除いた後、PBS緩衝液で2回洗浄し、スクレーパーで細胞をはがし、1500×gで5分間遠心し、細胞を集めた。前述したウエスタンブロット法により発現されたF蛋白質のトリプシンによる解裂を確認した(図3)。SeV-F蛋白質は非活性型の前駆蛋白のF0として合成され、トリプシンの蛋白分解作用により、F1とF2の2つのサブユニットに解裂し活性化される。このようにF蛋白が誘導発現後のLLC-MK2/F7細胞は普通の細胞同様に継代してもF蛋白が持続的に発現し、発現されたF蛋白による細胞傷害性が観察されず、F蛋白発現細胞同士での細胞融合も観察されなかった。しかし、このF発現細胞にSeV-HN発現プラスミド(pCAG/SeV-HN)をトランスフェクションしてトリプシンを含むMEMで3日間培養すると、細胞間の融合が多く観察された。細胞表面におけるHNの発現は赤血球の細胞表面への吸着実験(Hematoadosorption assay; Had assey)で確認した(図4)。すなわち、培養細胞に1%ニワトリ赤血球を1ml/dishを加え、4℃で10分間静置した後、細胞をPBS緩衝液で3回洗浄したところ、細胞表面の赤血球のコロニーが観察された。赤血球凝集した細胞で細胞融合が観察され、F蛋白はHNと相互作用して細胞融合を引き起こしたことが判明し、LLC-MK2/F7で持続発現しているF蛋白は従来の機能を保っていることが示された。
[実施例3]F欠失型ゲノムを持つ機能的RNPおよびビリオンの形成
欠失型ウイルスの回収ではビリオンの回収は欠失タンパク質発現細胞を使う必要がある。ところが、欠失タンパク質発現細胞を用いて欠失型ウイルスの回収を試みたところ、F欠損SeVの再構築時に用いたワクシニアウイルスによりヘルパー細胞株からのF蛋白発現が素早くシャットオフしたことが判明し(図5)、ヘルパー細胞株から直接のF蛋白の供給によるウイルスの再構成に成功しなかった。ワクシニアウイルスに対するソラレン(psoralen)添加で長波長紫外線(long-waveUV)での処理(PLWUV処理)は、ワクシニアウイルスの複製能力を失活させ、T7発現活性が損なわないことが報告されている(Tsungら、J Virol 70,165-171、1996)。そこで、このPLWUV処理したワクシニアウイルス(PLWUV-VacT7)を用いてウイルスの再構築を試みた。紫外線照射装置は、15ワットバルブを5本が装備されたUV Stratakinker 2400(カタログ番号400676(100V), ストラタジーン社, La Jolla, CA, USA)を用いた。その結果、再構築に用いたF発現細胞からF蛋白の発現は阻害されたものの、このPLWUV-VacT7で再構築した細胞のlysateをヘルパー細胞へ感染してもaraCの存在下ではワクシニアが殆ど増殖せず、ヘルパー細胞株からのF蛋白発現にも殆ど影響しないことが判明した。さらに、このPLWUV-VacT7を用いた組み換え野生型SeVの再構築では従来が105以上の細胞がないとウイルスが回収されなかったのに対し、103の細胞からもウイルス回収が可能となり、ウイルスの再構築の効率が大きく改善された。この方法を用いて、F欠失SeVウイルスの再構築を試みた。
<F欠失SeVウイルスの再構築及び増幅>
F欠損部位にenhanced green fluorescent protein(EGFP)遺伝子をレポーターとして6nルールに従って導入した上記pSeV18+/ΔF-GFPを下記のようにしてLLC-MK2細胞にトランスフェクションしてGFPの発現を観察した。この時RNP形成に必要な構成要素である、3つのウイルス由来遺伝子NP、P、Lの有無による影響も検討した。
LLC-MK2細胞を5x106cells/dishで100mmペトリ皿に蒔き、24時間培養後、ソラレンと長波長紫外線(365nm)で20分間処理し、T7 RNAポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 8122-8126(1986))に室温で1時間感染させた(moi=2)(moi=2〜3、好適にはmoi=2が用いられる)。細胞を3回洗浄してからプラスミドpSeV18+/ΔF-GFP, pGEM/NP, pGEM//P, 及びpGEM/L(Kato, A. et al., Genes cells 1, 569-579(1996))をそれぞれ12μg, 4μg, 2μg, 及び4μg/dishの量比でOptiMEM(GIBCO)に懸濁し、SuperFect transfection reagent(1μg DNA/5μlのSuperFect, QIAGEN)を入れて混合し、室温で10分間放置後、最終的に3%FBSを含むOptiMEM 3mlに入れ、細胞に添加して培養した。pSeV18+/ΔF-GFPの代わりに対照として野生型SeVゲノムcDNA(pSeV(+))(Kato, A. et al., Genes cells 1, 569-579(1996))を用いて同様の実験を行った。3時間培養後、細胞を、血清を含まないMEMで2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド40μg/ml(AraC,Sigma), トリプシン7.5μg/ml(GIBCO)を含むMEMで70時間培養した。これらの細胞を回収し、ペレットをOptiMEMに懸濁した(107cells/ml)。凍結融解を3回繰り返してlipofection reagent DOSPER(Boehringer mannheim)と混合し(106cells/25μl DOSPER)室温で15分放置した後、F発現LLC-MK2/F7細胞株にトランスフェクション(106cells/well 12-well-plate)し、血清を含まないMEM(40μg/ml AraC, 7.5μg/mlトリプシンを含む)で培養した。
その結果、ウイルス由来の3つの構成要素、NP、P、Lがすべて揃ったときにのみGFPの発現が認められ、外来遺伝子を発現する欠失ウイルスRNPが形成し得ることが判明した(図6)。
<F欠失型ビリオンの確認>
上記のようにしてF欠失ゲノムcDNAで再構築された機能的なRNPが、F発現ヘルパー細胞でレスキューされ、感染性を有する欠失型ウイルスビリオンを形成し得るかを調べた。前述したように機能的RNPを形成される条件(pSeV18+/ΔF-GFP, pGEM/NP, pGEM/P, 及びpGEM/Lを同時にトランスフェクトする条件)と形成されない条件(pSeV18+/ΔF-GFP, pGEM/NPの2種のプラスミドのみをトランスフェクトする条件)で再構築を行った細胞を凍結/融解して得たライセートをカチオニックリポソームと混合しF発現細胞と非発現細胞にそれぞれリポフェクションし、これらの細胞におけるGFP発現細胞の広がりでウイルス粒子の形成を観察した。その結果、機能的RNPが再構築された条件のライセートを用い、F発現細胞に導入した際にのみGFP発現細胞の広がりが観察された(図7)。さらに、プラークアッセイにおいても、同様の条件でのみプラークの形成が観察された。これらの結果から、F欠損ウイルスゲノムから形成された機能的RNPがF発現細胞由来のFタンパク質の存在下で、さらに感染性ウイルス粒子として形成され、細胞外に放出されたことが明らかになった。
培養上清中の感染性F欠失型ビリオンの存在は以下の実験により証明された。F遺伝子欠失型ゲノムから構築した機能的RNPを含むライセートを実施例2に記載のF発現細胞にリポフェクションし、培養上清を回収した。この培養上清をF発現細胞の培地に加え感染させ、3日目に回収された培養上清を、F発現細胞とF非発現細胞に同時に添加し、トリプシン存在と非存在下で3日間培養した。F発現細胞では、トリプシン存在下でのみウイルスが増幅された(図8)。F非発現細胞の上清(図9下段)、またはトリプシン非存在下で培養したF発現細胞からは感染性を持たないウイルス粒子が放出されていることが明らかとなった。以上のことをまとめると、F欠損GFP発現ウイルスはF発現細胞に特異的かつトリプシン解裂に依存的に増幅されることが明らかとなった。このように増幅された感染性F欠失型センダイウイルスのタイターは0.5×107〜1×107CIU/mlの範囲にあった。
[実施例4]F欠失型GFP発現ウイルスの解析
F欠失cDNAから回収されたビリオンのゲノム構造を確認するため、F発現細胞の培養上清中のウイルスを回収し、total RNAを抽出して、FとHNをプローブにしてノーザンブロット解析を行った。その結果F発現細胞から回収されたウイルスはHN遺伝子は検出されたがF遺伝子は検出されず、F遺伝子がウイルスゲノム上に存在しないことが明らかとなった(図10)。さらにRT-PCRによりGFPの遺伝子はcDNAの構築の際と同様のFの欠失部位に存在すること(図11)、また、他の遺伝子の構造は野生型と同様であることを確認した。以上のことからウイルス再構成中にゲノムの再編成は起きていないことが示された。また、回収されたF欠失ウイルス粒子を電顕により、その形態を調べた。F欠失ウイルス粒子は野生型ウイルスと同様に内部にヘリカルなRNP構造とスパイク様構造を有していた(図14)。さらに、ウイルスのFとHNに特異的に反応する金コロイド結合IgG(antiF,antiHN)を用いた免疫電顕により調べたところ、ウイルスのエンベロープのスパイク様構造はFとHNの蛋白質からなることが明らかとなり(図12)、ヘルパー細胞の生産するF蛋白質がこのビリオンに効率的に取り込まれていることがわかった。以下に詳述する。
<Total RNAの抽出、ノーザンブロット解析、およびRT-PCR>
F発現細胞LLC-MK2/F7にウイルス感染して3日目の培養上清からQIAamp Viral RNA mini kit(QIAGEN)を用い、そのプロトコールに従いtotal RNAの抽出を行った。精製したtotal RNA(5μg)をホルムアルデヒドを含む1%変性アガロースゲルにて泳動分離してから、バキュームブロッティング装置(Amersham Pharmacia社)を用いHybond-N+メンブランにトランスファした。作成したメンブランは0.05MのNaOHで固定し、2倍希釈したSSC緩衝液(Nacalai tesque)ですすいだ後、ハイブリダイゼーション溶液(Boehringrer Mannheim)で30分間プレハイブリダイゼーションを行った。ジゴキシゲニン(DIG)-dUTP(アルカリ感受性)を用いたランダムプライムDNA標識法(DIG DNA Labeling Kit, Boehringer mannheim)により作成したFあるいはHN遺伝子のプローブを添加して16時間ハイブリダイズさせた。その後、メンブランを洗浄して、アルカリフォスフォターゼ標識抗DIG抗体(anti-digoxigenin-AP)と反応させ、DIG ditection kitを用いて解析した。その結果F発現細胞から回収されたウイルスはHN遺伝子は検出されたがF遺伝子は検出されず、F遺伝子がウイルスゲノム上に存在しないことが明らかとなった(図10)。
さらにRT-PCRにより詳細な解析を行った。RT-PCRは精製したウイルスRNAをSUPERSCRIPTII Preamplification System(Gibco BRL)を用い、そのプロトコールに従いfirst strand cDNAを合成し、LA PCR kit(TAKARA ver2.1)を用いて次のような条件でPCRを行った。94℃/3分反応後、94℃/45秒,55℃/45秒,72℃/90秒を1サイクルとして30サイクルを増幅して72℃で10分間置き、2%アガロースゲルで100v/30分電気泳動してエチジウムブロマイド染色し、撮影した。M遺伝子とF欠失部位に挿入したEGFPの確認に用いたプライマーはforward 1:5'-atcagagacctgcgacaatgc(配列番号:8), reverse 1:5'-aagtcgtgctgcttcatgtgg(配列番号:9)、F欠失部位に挿入したEGFPとHN遺伝子の確認に用いたプライマーはforward 2:5'-acaaccactacctgagcacccagtc(配列番号:10), reverse 2:5'-gcctaacacatccagagatcg(配列番号:11)、さらに、M遺伝子とHN遺伝子との間はforward3: 5'-acattcatgagtcagctcgc(配列番号:12)とreverse2プライマー(配列番号:11)で行った。その結果、GFPの遺伝子はcDNAの構築の際と同様のFの欠失部位に存在すること(図11)、また、他の遺伝子の構造は野生型と同様であることを確認した(図13)。以上のことからウイルス再構成中にゲノムの再編成は起きていないことが示された。
<金コロイド免疫標識電顕解析>
回収されたF欠失ウイルス粒子を電顕により、その形態を調べた。まず、欠損型ウイルス感染細胞の培養上清を28,000rpm、30分間遠心してウイルスをペレットにした後で、1X109HAU/mlになるように10倍希釈したPBSに再懸濁し、その一滴を支持膜付きのマイクログリット上に滴下して室温で乾燥させた。3.7%ホルマリンを含むPBSにより15分間固定処理後、0.1%BSAを含むPBS溶液で30分前処理をし、さらに同溶液で200倍希釈した抗Fモノクローナル抗体(f236)、または抗HNモノクローナル抗体(Miura, N. et al., Exp. Cell Res.(1982)141: 409-420)を滴下して保湿状態で60分間反応させた。その後グリットをPBSで洗浄して、200倍希釈した金コロイド標識抗マウスIgG抗体を滴下して同じく保湿状態で60分間反応させた。続いてグリットをPBS、滅菌蒸留水の順で洗浄し室温で風乾後、グリットの上に4%の酢酸ウラニウム溶液で2分間染色し乾燥させた上、JEM-1200EXII電子顕微鏡(日本電子)を用いて観察、撮影した。その結果、ウイルスのエンベロープのスパイク様構造はFとHNのタンパク質からなることが明らかとなり(図12)、ヘルパー細胞の生産するFタンパク質がこのビリオンに効率的に取り込まれていることがわかった。また、F欠失ウイルス粒子は野生型ウイルスと同様に内部にヘリカルなRNP構造とスパイク様構造を有していた(図14)。
[実施例5]F欠失型SeVベクターによるin vitroでの多様な細胞への高効率遺伝子導入
<ラット大脳皮質神経細胞の初代培養細胞への導入>
ラット大脳皮質神経細胞の初代培養細胞を、以下のようにして調製し培養した。妊娠18日SDラット(SPF/VAF Crj: CD, 雌, 332g,〜9週Charles River)をジエチルエーテルにより深麻酔し、腋下動脈放血により安楽死させた。開腹し子宮から胎児を摘出し皮膚頭蓋を切り開き脳を取り出した。実体顕微鏡下で大脳半球を作業液(5%ウマ血清と5%子牛血清、10%DMSOを含む)DMEMに移し、スライスして氷温冷却したパパイン溶液(1.5U,システィン0.2mg、ウシ血清アルブミン0.2mg、グルコース5mg、DMase 0.1mg/ml)を加え、32℃で5分毎に転倒攪拌して15分間インキュベーションした。懸濁液が十分濁り、組織片が半透明になったことを確認して組織片がばらばらになるまでピペティングを繰り返した。32℃にて1200rpm5分間遠心した後、細胞をB27 supplement添加したneural basal medium(GibcoBRL, Burlington, Ontario. Canada)に再懸濁し、ポリ-d-リジン(Becton Dickinson Labware, Bedford, MA, U.S.A.)でコーティングされたプレート上に1x105cells/dish蒔き、37℃、5%CO2で培養を行った。
その大脳皮質初代培養神経細胞5x105/wellを5日間培養後、F欠失型SeVベクターを感染させ(moi=5)、さらに3日間培養した。1%パラホルムアルデヒド、5%ヤギ血清, 0.5% Triton-Xを含む固定液で5分間室温で固定し、BlockAce(雪印乳業)にて室温2時間ブロッキングして500倍に希釈されたヤギ抗ラットmicrotubule-associated protein 2(MAP-2)(Boerhinger)IgGと室温で1時間インキューベーションした。PBS(-)で15分毎に3回洗浄後、5%ヤギ血清/PBSで100倍希釈されたcyc3-結合抗マウスIgGと室温で1時間インキューベーションした。さらにPBS(-)で15分毎に3回洗浄後、細胞にVectashield mounting medium(Vector Laboratories, Burlingame, U.S.A.)を加え、共焦点顕微鏡(Nippon Bio-Rad MRC 1024, Japan)で470-500-nmまたは510-550-nmのexcitation band-pass filterを付けたNikon Diaphot 300倒立顕微鏡でMAP-2の免疫染色とGFPの蛍光による2重染色の蛍光観察を行った。その結果、MAP2陽性神経細胞にはGFPがほぼ100%導入されたことが明らかとなった(図15)。
<正常ヒト細胞への導入>
正常ヒト平滑筋細胞、正常ヒト肝細胞、正常ヒト肺毛細血管内皮細胞(セルシステムズ)は大日本製薬から購入し、SFM CS-C培地キット(セルシステムズ)で37℃、5% CO2で培養した。
正常ヒト平滑筋細胞(図15, Muscle)、正常ヒト肝細胞(図15, Liver)、正常ヒト肺毛細血管内皮細胞(図15, Lung)等のヒト正常細胞にF欠失型SeVベクターを感染して(m.o.i=5)、GFP発現を観察した。いずれの細胞においてもほぼ100%の導入効率で強力なGFP遺伝子発現をしていることが確認された(図15)。
<マウス初代骨髄細胞への導入>
さらに、マウス初代骨髄細胞をリンネジマーカーで分離して、F欠失型SeVベクターを感染させる実験を行った。まず、C57BLマウス(6週令雄)に150mg/kgになるように5-fluorouracil(5-FU,Wako Pure Chemical Industries)を腹腔内注射(IP injection)し、投与2日後、大腿骨より骨髄細胞を回収した。Lympholyte-M(Cedarlane)を用いた密度勾配遠心によって単核細胞を分離した。3x106の単核細胞に対し、ビオチン標識された抗CD45R(B220), 抗Ly6G(Gr-1), 抗Ly-76(TER-119), 抗1(Thy1.2), 抗Mac-1を結合させたストレプトアビジン磁気ビーズ(ファーミジェン社, フナコシ社)の混合したものを3×107を加え4℃にて1時間反応させ、磁石により、Lin+の細胞を除いた分画を回収した(Lin-細胞)(Erlich, S. et al., Blood 1999. 93(1), 80-86)。Lin-細胞4x105細胞に対し、2x107HAU/mlのSeVを加え、さらに、組換えラットSCF(100ng/ml, BRL), 組換えヒトIL-6(100U/ml)を加えた。また18x105のトータル骨髄細胞に対してF欠損SeV 4x107HAU/ml、1x106の細胞に対し5x107HAU/mlのGFP-SeVを加えた。なお、GFP-SeVは、SeV転写ユニットpUC18/T7HVJRz.DNA(+18)(Genes Cells,1996,1:569-579)の制限酵素NotI開裂部位に、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子(構造遺伝子長717bp)に転写開始(R1)と終結(R2)シグナルと介在(IG)配列を付加したNotI断片をPCRにより増幅させ、導入して作製した。既知の方法(Genes Cells,1996,1:569-579)に従い、LLC-MK2細胞および発育鶏卵を用いてGFP遺伝子を含むウイルスの再構築を行い、目的の遺伝子を含むウイルスを回収した。GFP-SeVを感染して48時間培養した後、細胞をそれぞれ2群に分け、一つにはフィコエリスリン(phycoerythrin)(PE)標識抗-CD117(c-kit、Pharmingen)を1時間反応させ、もう一群は対照群とした。3回PBSにて洗浄した後、フローサイトメータ(EPICS Elite ESP; Coulter, Miami, FL)による解析を行った。
その結果、血液のprimitive幹細胞のマーカーである抗c-kit抗体でエンリッチした骨髄細胞にもF欠失型SeVベクターは感染し、GFP遺伝子発現が観察された(図16)。培養上清中の感染性粒子の確認は、細胞培養上清をトリプシンで処理後、LLC-MK2細胞に添加し、3日後にGFP発現細胞の存在の有無により行った。これらの細胞のいずれにおいても感染性のあるウイルス粒子が放出されていないことが確認された。
[実施例6]ラット脳室へのベクターの投与
ラット(F334/Du Crj, 6週令、雌、Charles River)に生理食塩水(大塚製薬)で10倍希釈した(5mg/ml)ネンブタールナトリウム溶液(ダイナポット)を腹腔内注射により麻酔し、小動物用脳定位固定装置(DAVID KOPF社)を用いてウイルスの投与を行った。投与部位はinteraural lineよりブレグマ(bregma)へ5.2mm、ラムダより右耳へ2.0mm、脳表面より2.4mmの位置に30Gの交換針(Hamilton社)で20μl(108CIU)注入した。すると脳室の上衣細胞にGFPの高い発現が観察された(図17)。さらに、F欠失型SeVベクターでは注射部位の周辺のウイルスが接触しうる上衣細胞または神経細胞にしかGFPタンパク質の発現が観察されず、これらの部位に病変所見が観察されなかった。投与されたラットでは解剖されるまでに外見的な行動異常や体重変化などが観察されず、解剖後各臓器、脳のほか、肝臓、肺、腎臓、心臓、脾臓、胃、腸等の組織器官のいずれにおいても病変所見が観察されなかった。
[実施例7]F欠損SeVゲノムからのF-lessウイルス粒子の形成
<1>
F非発現LLC-MK2細胞およびF発現LLC-MK2細胞(LC-MK2/F7)にF欠損SeVウイルスを感染し、トリプシン存在下(+)と非存在下(−)で培養して3日後の細胞培養上清のHA assayの結果を示した(図18A)。これらの培養上清をそれぞれ発育鶏卵に接種し、2日培養後の鶏卵の漿尿液のHA assayの結果を示した(図18B)。パネル上部の「C」は対照群として用いたPBSを表わす。Dilution(希釈)の数字はウイルス液の希釈倍率を表わす。さらに、発育鶏卵でHA陽性であった漿尿液(lane 11およびlane 12)を発育鶏卵に再接種して培養2日後の漿尿液のHA assayを行った(図19C)。この結果、F欠損SeVウイルスを感染したF非発現細胞または発育鶏卵ではHAが陽性にもかかわらず、発育鶏卵に再接種してもウイルスが全く増幅されず、このHA陽性のウイルス液が二次感染性がないものと判明した。
<2>
F非発現細胞で増幅された非感染性ウイルス液にウイルス粒子が存在するかについて検討した。F発現細胞の培養上清、HA陽性で非感染性漿尿液、および野生型SeVからQIAamp viral RNA mini kit(QIAGEN)により調製したtotal RNAをF遺伝子とHN遺伝子をプローブとして用いてノーザンブロッティングを行った。その結果、漿尿液、またはF発現細胞の培養上清のウイルス由来のRNAのいずれもHN遺伝子のプローブでバンドが検出されたが、F遺伝子のプローブでバンドが検出されなかった(図10)。このHA陽性で感染性がない液にはF欠損ゲノムを持っている非感染性のウイルス様粒子が存在することが判明した。さらに、このHA陽性で感染性がないウイルス液を免疫電顕で調べたところ、ウイルス粒子が確認され、ビリオンのエンベロープは金コロイド標識したHN蛋白を認識する抗体では反応したが、金コロイド標識したF蛋白を認識する抗体では反応しなかった(図20)。このことはF-lessのビリオンの存在を示し、F蛋白がなくてもHN蛋白単独でウイルスがビリオンとして形成されることが判明した。F単独でSeVビリオンが形成できることはすでに報告されおり(Leyer, S.et al., J Gen.Virol 79, 683-687(1998))、今回の結果はHN蛋白単独にSeVビリオンを形成できることが初めて明らかとなった。このようなF-lessビリオンを発育鶏卵で一過的に大量調製できることは、SeV F欠損RNPを包むビリオンを大量に生産ができることを示している。
<3>
前述したように発育鶏卵で一過的に増幅されたF-lessウイルスビリオンはセンダイウイルスが感染可能な細胞にはまったく感染性を示さない。そこで機能的なRNP構造はエンベロープに包まれていることを確認するために、カチオニックリポソーム(DOSPER,Boehringer mannheim)と混合して、室温で15分間インキュベーションしてF発現細胞と非発現細胞にトランスフェクションした。その結果、カチオニックリポソームと混合しない場合は全くGFP発現細胞が観察されなかったのに対し、カチオニックリポソームと混合した場合はGFPの発現がいずれの細胞においても観察された。F非発現細胞ではGFPは単細胞で発現し、隣細胞に広がらないのに対し、F発現細胞ではGFP発現細胞は広がって、コロニーが形成されることが観察された(図21)。このことから、発育鶏卵で一過的に増幅された感染性のないビリオンはトランスフェクションなどの方法を用いて細胞に導入すれば、遺伝子を発現しうることが明らかとなった。
[実施例8]FHN欠損SeVゲノムからウイルスの再構築および増幅
<FHN欠損ゲノムcDNAの構築>
FHN欠失型SeVゲノムcDNA(pSeV18+/ΔFHN)の構築はまずpUC18/KSをEcoRIで消化してpUC18/Ecoを構築し、F遺伝子の開始コドンからHN遺伝子の終止コドンまでの間の全配列を(4866-8419)を欠失させ、BsiwI部位(cgtacg)で連結し構築した。FHN欠損部位の配列をシーケンスで確認した後、EcoRIフラグメント(4057bp)をゲルから回収してpUC18/KSのEcoRIフラグメントと置き換えて構築した。このFHN欠損領域を含むKpnI/SphIフラグメント(14673bp)をゲル回収してpSeV18+のKpnI/SphIフラグメントと置き換え、プラスミドpSeV18+/ΔFHNが得られた。
一方、GFPを導入したFHN欠損SeV cDNAの構築は次のように行った。pSeV18+/ΔFHNからSalI/XhoIフラグメント(7842bp)を回収してpGEM11Z(Promega)にクロニーングし、プラスミドpGEM11Z/SXdFHNとした。FHN欠失部位にd2EGFP(Clontech)のATG-TAA(846bp)の両端にBsiwI部位を付加したPCR産物をBsiwI酵素で消化して、pGEM11Z/SXdFHNのFHN欠損部位のBsiwI部位に連結した。得られたプラスミドはpSeV18+/ΔFHN-d2GFPとした。
<FHN欠損蛋白共発現細胞の作成>
F遺伝子を発現するプラスミドは前述したF欠損蛋白発現細胞株の作製に用いたものと同一のもので、HN遺伝子を発現するプラスミドはそれと同様な方法で構築し、HNのORFを含むフラグメントをpCALNdlw(Araiら,前記)のユニークなSwaI部位に挿入し, プラスミドpCALNdLw/HNとした。
LLC-MK2細胞にpCALNdLw/FとpCALNdLw/HNを同量または異なる量比で混合し、mammalian transfection kit(Stratagene)を用いてそのプロトコールに従って遺伝子導入を行った。G418で3週間選択した後クロニーングした。得られた薬剤耐性クローンはそれぞれCre DNAレコンビナーゼを発現する組換えアデノウイルス(Ade/Cre)(斉藤ら,前記)で感染し(moi=10)、FとHN蛋白質の誘導発現3日後細胞をPBS(-)で3回洗浄して回収し、ウェスタンブロッティング法を用いて抗SeV Fと抗SeV HN蛋白質のモノクローナルIgGにより検出した(図22)。
<pGEM/FHNの構築>
pCALNdLw/FとpCALNdLw/HNを構築に用いたFとHNフラグメントをそれぞれpGEM4Z、pGEM3Z(Promega社)にクローニングし、pGEM4Z/FとpGEM3Z/HNを得た。pGEM3Z/HNのT7プロモーターとHNを含む領域をPvuII酵素で消化して得られたフラグメントを回収し、pGEM4Z/FのF遺伝子下流のSacIユニークサイトで切断し平端化した部位にライゲーションした。F遺伝子とHN遺伝子を同一方向に並べたものは、抗Fまたは抗HNモノクローナル抗体でウェスタンブロッティングを行い、FとHN両方の蛋白質は同時に発現できることを確認した。
<FHN欠損ウイルスの再構築>
FHN欠損ウイルスの再構築(P0)は二通りに行った。一つはF欠損ウイルスの再構築と同様にRNPトランスフェクション法を用いた。もう一つはT7でFHN蛋白を共発現プラスミドを供給して再構築を行った。すなわち、T7プロモーターの制御下でF, HNタンパク質を発現するプラスミドを別途作製して、これによりFおよびHNタンパク質を供給して再構築を行った。いずれの方法においても再構築したものはFHN共発現細胞で増幅を行った。FHN欠損GFP発現SeV cDNA(pSeV18+/ΔFHN-d2GFP), pGEM/NP, pGEM/P, pGEM/L, pGEM/FHNをそれぞれ、12μg/10cm dish, 4μg/10cm dish, 2μg/10cm dish, 4μg/10cm dish, 4μg/10cm dishの量比で混合し(最終容量, 3ml/10cm dish)、前述したF欠損SeVの再構築と同様な方法でLLC-MK2細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入3時間後培地をAraC(40μg/ml, SIGMA),トリプシン(7.5μg/ml,GIBCO)入りのMEMに交換し、さらに3日間培養した。遺伝子導入後2日目で蛍光実体顕微鏡で観察し、pGEM/FHNの添加の有無の違いを検証し、GFP発現細胞の広がりでウイルスの形成を確認した。その結果、再構築時にpGEM/FHNを添加した場合はGFP発現細胞の広がりが確認され、pGEM/FHNの添加がない場合はGFP発現はシングル細胞でしか観察されなかった(図23)。FHN蛋白再構築時に添加することでウイルスのビリオンが形成されたことを示した。一方、RNPトランスフェクションの場合はF欠損と同様にP1のFHN発現細胞でウイルスの回収に成功した(図24上)。
Ade/Creを感染して6時間以後にFHN蛋白が誘導発現された細胞にFHN欠損ウイルス液を感染し増幅ができたことを確認した(図24下)。
FHN欠損GFPを発現するcDNAから再構築されたウイルス液はLLC-MK2, LLC-MK2/F, LLC-MK2/HN, LLC-MK2/FHNに感染してトリプシンの添加の有無で培養した。培養3日後にGFP蛋白発現細胞の広がりを確認したところ、LLC-MK2/FHNでのみGFPの広がりが観察され、このウイルス液はFHN共発現に特異的かつトリプシン依存的に増幅されることが確認された(図25)。
FHN欠損ウイルスゲノムを確認するため、LLC-MK2/FHN細胞から回収された培養上清を遠心した後、QIAamp Viral RNA mini kit(QIAGEN)でそのプロトコールに従ってRNA抽出を行った。このRNAをSuperscript Preamplification System for first Strand Synthesis(GIBCO BRL)によりRT-PCRのテンプレート合成を行い、TAKARA Z-Taq(宝酒造)を用いてPCRを行った。対照群はF欠損ウイルスを用いた。PCRプライマーはM遺伝子とGFP遺伝子の組み合わせ、またはM遺伝子とL遺伝子の組み合わせを用いて行った(M遺伝子とGFP遺伝子の組み合わせ(M-GFP)についてはforward: 5'-atcagagacctgcgacaatgc/配列番号:13, reverse: 5'-aagtcgtgctgcttcatgtgg/配列番号:14;M遺伝子とL遺伝子の組み合わせ(M-L)についてはforward: 5'-gaaaaacttagggataaagtccc/配列番号:15, reverse: 5'-gttatctccgggatggtgc/配列番号:16)。その結果、MとGFP遺伝子をプライマーに用いた場合はRT条件下でF欠損とFHNとも欠損ウイルス共に特異的なバンドが検出された。MとL遺伝子をプライマーに用いた場合は、FHN欠損はGFPを含んだ所定のサイズのバンドが検出され、F欠損の場合はHN遺伝子を含んだサイズで長くなったバンドが観察された。ゲノム構造はFHN欠損していることは明らかとなった(図26)。
一方、FHN欠損ウイルスをF発現細胞にF欠損と同様に感染して、培養して4日目培養上清を回収し、LLC-MK2, LLC-MK2/F, LLC-MK2/FHNへの感染実験を行った。その結果、いずれの感染細胞においてもGFP発現細胞が観察されず、これらの細胞への感染性がないことを示した。しかし、F蛋白単独でウイルス粒子を形成できることがすでに報告され(Kato, A. et al., Genes cells 1, 569-579(1996))、肝臓にあるアシアロ糖蛋白リセプター(ASG-R)を介して肝細胞に特異的に感染できることが報告された(SpiegelらJ. Virol 72, 5296-5302,1998)。従って、FHN欠損RNAゲノムを持ち、ウイルスエンベロープはF蛋白のみで形成されたビリオンがF発現細胞の培養上清に放出されうることが考えられる。そこで、FHN欠損ウイルスを感染したF発現細胞の培養上清を回収し、遠心した後上記の方法と同様にRNA抽出を行い、前述した方法と同様にRT-PCRで解析した。その結果、図27で示したようにFHN欠損ゲノムを含むRNAが存在することが判明した。
この他、VSV-Gとシュードタイプ化したウイルスのビリオンのウェスタンブロッティングによる解析では、F、HN蛋白が発現していないことは明らかである。FHN欠損ウイルスビリオンの生産系が確立したと言える。
さらに、F蛋白発現細胞から放出されたビリオンをカチオニックリポソーム(50μlのDOSPER/500μl/well)との混合の有無でFHN発現細胞または非発現LLC-MK2細胞に重層した。その結果、前述したF-less粒子の場合と同様、DOSPERと混合して細胞に重層した場合にはGFP発現細胞の広がりが観察されが、HN-lessのビリオンのみでは全く細胞に感染性なく、GFP発現細胞が観察されなかった。FHN非発現細胞ではGFP発現細胞が観察されたが、ウイルスが再形成され広がったことが認められなかった。
このようなF発現細胞から回収されるウイルス様粒子がASG-R遺伝子を持続発現する細胞株や非発現細胞株、または肝細胞に重層して感染し、Spiegelらの方法で肝臓特異的、またはASG-Rに特異的に感染するかを調べることができる。
[実施例9]欠損ゲノムRNAウイルスベクターの応用性
1.上に述べた系で増幅されたF欠損RNPはF-lessのウイルスエンベロープに包まれており、このエンベロープを化学的に修飾法などにより所望の細胞導入能を付加し、または遺伝子導入試薬や遺伝子銃のようなもので細胞に導入して(RNPトランスフェクション、またはRNPインジェクション)、その組み換えRNAゲノムが導入細胞で自律的にRNA複製または蛋白を生産し続けることが可能である。
2.HNの細胞内ドメインを残し、細胞外ドメインを他のレセプターを特異的に標的できるリガンドを融合させ、キメラ蛋白を生産できる組み換え遺伝子をウイルスゲノムに組み込めば、特異性のある標的できるベクターの生産が可能となり、また、この組み換え蛋白の生産細胞でベクターを調製可能である。これらのベクターは遺伝子治療、ワクチンなどに応用可能である。
3.FHNとも欠損するSeVウイルスの再構築に成功したことから、GFP遺伝子の代わりにターゲッティング可能なエンベロープキメラ蛋白の遺伝子をFHN欠損部位に導入し、FHN欠損ベクターと同様な方法で再構築し、FHN発現細胞で一度増幅して、非発現細胞に感染して、ウイルスゲノムから転写されたターゲッティング可能なキメラエンベロープ蛋白のみによって形成されたビリオンを回収すれば、ターゲッティングベクターの生産が可能となる。
4.これまでに、センダイウイルスのミニゲノム、NP,P,LとF遺伝子で細胞に同時に遺伝子導入してミニゲノムを包むF蛋白単独で形成されたビリオンが報告され(Leyerら,J. Gen.Virol 79,683-687、1998)また、マウスの白血病ウイルスをセンダF蛋白でシュード化したベクターも報告されている(SpiegelらJ. Virol 72, 5296-5302,1998)。また、F蛋白質がトリプシンで解裂された後ASG-Rを介して肝臓細胞に特異的にターゲッティングできると報告されている(BitzerらJ.Virol.71, 5481-5486, 1997)。前の報告の系は一過的な粒子形成系であり、持続的にベクターの粒子回収が困難である。またSpiegelらはセンダイF蛋白でシュードタイプ化したレトロウイルスベクターを報告しているが、レトロウイルスは分裂細胞にしか遺伝子導入できないなどの固有の問題を抱えている。本発明で回収された、FHN共欠損SeVウイルスゲノムを持ち、F蛋白のみエンベロープ蛋白を持つウイルス粒子等は、細胞分裂に関係なく効率的な細胞質で自律複製可能なRNAベクターであり、新規のウイルス粒子であり、またその大量生産が可能な実用的な系である。
[実施例10]FHN欠損SeVゲノムからウイルスの再構築および増幅
センダイウイルス、麻疹ウイルス等の多くの一本鎖マイナス鎖RNAウイルスで、ウイルスゲノムをクローニングしたcDNAから感染可能なウイルス粒子を再構成する技術が確立された。
ほとんどの系で、T7プロモーター下流にcDNA、NP,P,L遺伝子を導入したプラスミドを細胞内に導入し、T7ポリメラーゼを用いてcDNA、各遺伝子を発現させることにより再構成を行っているが、T7ポリメラーゼの供給には、T7ポリメラーゼ発現組み換えワクシニアウイルスが主に使われている。
T7発現ワクシニアウイルスは、ほぼすべての細胞に効率よくT7ポリメラーゼを発現させることができるが、ワクシニアウイルス由来の細胞障害性のために、感染細胞を2、3日しか生存させることができない。多くの場合、抗ワクシニア薬剤としてリファンピシンを用いているが、加藤らの系(Kato, A. et al., Genes cells 1, 569-579(1996))では、リファンピシンのほかに、AraCを並行して用いることにより、ワクシニアウイルスの増殖を最小限に抑え、センダイウイルスの再構成を効率よく行うことに成功した。
しかしながら、センダイウイルスを始めとするマイナス鎖RNAウイルスの再構成は1x105細胞中に再構成されたウイルスが数粒子かそれ以下という効率で、レトロウイルス等のほかのウイルスに比べるといまだにかなり低いのが実情である。この理由として、ウイルス自体が持つ、再構成までの複雑な過程(裸のRNAに別途転写、翻訳されたタンパク質がついてRNP様構造となり、その後、ポリメラーゼにより転写、複製が行われる)とともに、ワクシニアウイルスを用いることによる細胞障害性も挙げられる。
T7ポリメラーゼを供給する手段として、ワクシニア以外にアデノウイルスの系も試みたが、よい結果は得られなかった。ワクシニアウイルスはT7ポリメラーゼのほかに細胞質で働くRNAキャッピング酵素も自身の蛋白としてコードしており、この酵素が、細胞質でT7プロモーターにより転写されたRNAをキャッピングして安定化することにより翻訳効率を高めていると考えられる。本発明では、ワクシニアウイルスをPsoralen-Long-Wave-UV法で処理することにより、ワクシニアウイルスに由来する細胞障害を回避し、センダイウイルスの再構成効率を高めることを試みた。
ソラレンと長波長紫外線によるDNAクロスリンキングにより、DNAをゲノムに持つウイルスの複製を阻害し、しかし特に初期遺伝子の発現には影響を与えない状態を作り出すことが可能である。ワクシニアウイルスはゲノム長が長いので、この系によるウイルスの不活化の影響が顕著にあらわれると考えられる(Tsung, K. et al., J Virol 70,165-171(1996))。
自立増殖可能な野生型ウイルスの場合、再構成により一粒子でもウイルスができていればトランスフェクションした細胞を発育鶏卵に接種してセンダイウイルスを増殖させることが可能なため、再構成の効率、そしてワクシニアウイルスの残留にそれほど気を使わなくてもよい。
しかし、ウイルスの複製、粒子形成の機構などを調べるために作る様々な変異ウイルスの再構成では、増殖に発育鶏卵を使用できずにウイルス由来のタンパク質を発現している細胞株などを用いざるを得ない場合もありうる。また、変異ウイルスまたは欠損ウイルスが野生型ウイルスに比べて顕著に増殖が遅いケースも、十分考えられる。
こうした変異を持つセンダイウイルスを増殖させるためには、トランスフェクション後の細胞を次代の細胞に重層して長時間培養しなければならない。そのために、再構成の効率とワクシニアウイルスの残存タイターが問題になってくる。本方法では、再構成効率を上昇させるとともに、残存ワクシニアウイルスのタイターを減少させることもできた。
本方法を用いて、現在までの、未処理のワクシニアウイルスを用いた系では得られなかった変異ウイルスを再構成によりうることができた(F、FHN欠損ウイルス)。この系は、今後増えるであろう変異ウイルスの再構成に大きなツールとなると考える。そこで本発明者らは、ソラーレンと紫外線(UV)の量を検討し、ワクシニアウイルスの不活化の条件を検討した。
<実験>
まず、照射時間を二分間に定め、ソラレン濃度の検定を行った。不活化の検定は、プラーク形成によるワクシニアウイルスのタイターの測定と、T7プロモーター支配下pGEM-luciプラスミド、センダイウイルスミニゲノムによるT7ポリメラーゼ活性の測定によって行った。センダイウイルスミニゲノムによるT7ポリメラーゼ活性の測定はセンダイウイルスミニゲノムのプラスミドと、T7でセンダイウイルスNP、P、L蛋白を発現するpGEM/NP, pGEM/P, pGEM/Lプラスミドと同時に細胞にトランスフェクションし、リボヌクレオ蛋白複合体を形成させ、センダイウイルスのRNAポリメラーゼによりルシフェラーゼ酵素蛋白の転写を調べる系である。
UV照射二分間では、ソラレンの濃度に応じてワクシニアウイルスのタイターの減少が見られた。しかし、T7ポリメラーゼ活性は、ソラレン濃度が0、0.3, 1μg/ml迄は変化を見せず、10μg/mlでは10分の1程度に減少していた。(図28)。
さらに、ソラレン濃度を0.3μg/mlに固定し、紫外線照射時間を検討した。照射時間が増大するに連れ、ワクシニアウイルスのタイターは減少したが、30分までの照射ではT7ポリメラーゼ活性への影響は見られなかった。このとき、0.3μg/ml、30分照射の条件では、T7ポリメラーゼ活性に影響を与えず、タイターを1000分の1にまで減少させることができた。(図29)
しかしながら、タイターが1000分の1にまで減少したワクシニアウイルスでも処理前のタイターに換算してmoi=2(処理後の残存タイターでmoi=0.002)で感染したときの24時間後のCPEは、未処理のウイルスをmoi=2で感染させたときのそれと変わらなかった(図30)。
この条件で処理したワクシニアウイルスを用い、センダイウイルス再構成の効率を検討した。再構成は、前記加藤らの方法をモディファイし、以下の手順で行った。6wellのマイクロプレートにLLC-MK2細胞を3x105細胞/wellで撒き、終夜培養した後、PLWUV処理前のタイター換算で6x105pfu/100μlとなるようにワクシニアウイルスを希釈し、PBS洗浄後の細胞に感染させた。1時間の感染後、100μlのOPTI-MEMにプラスミド、pGEM-NP, P, L、そしてcDNAをそれぞれ1, 0.5, 1, 4μgを加えたものに、Superfect(QIAGEN)を10μl加え、室温で15分放置した後1mlのOPTI-MEM(GIBCO)(Rif. AraCを含む)をくわえ、細胞に重層した。
トランスフェクション後2、3、4日目に細胞を回収し、遠心後、300μl/wellのPBSに縣濁した。この縣濁液を原液、あるいは10倍、100倍希釈した細胞溶液100μlを受精後10日目の発育鶏卵に各希釈4個ずつ接種した(1x105,1x104,1x103細胞をそれぞれ接種)。3日後鶏卵から尿液を回収しHA試験によりウイルス再構成の有無を調べた(表1)。1x105細胞を接種した鶏卵のうち、HA活性があった鶏卵を一点、104では十点、103では百点と数えて、再構成の効率(Reconstitute Score)を求めた(図31)。計算式は表1の通り。
Figure 0003766596
また、トランスフェクション後2、3、4日での、細胞に残存するワクシニアウイルスのタイターを測ったところ、トランスフェクション前に与えたタイターに比例して、処理をしたものが少なくなっていた(図32)。
ワクシニアウイルスをPLWUVで不活性化することにより、T7ポリメラーゼ活性には影響を与えず、タイターを1000分の1にまで下げることができた。しかし、ワクシニアウイルス由来のCPEは、顕微鏡観察で未処理の、1000倍のタイターを持つウイルスのそれと変わらなかった。
この条件で処理をしたワクシニアウイルスを、センダイウイルス再構成に用いることにより、センダイウイルスの再構成効率が、数十倍から百倍ほど増大した(図31)。同時に、トランスフェクション後に残ったワクシニアウイルスのタイターは、5pfu/105cells以上ではなかった。従って、複製可能なワクシニアウイルスの残留は0.005%以下に抑えられた。
[実施例11]シュードタイプセンダイウイルスの作製
<1>VSV-G遺伝子産物を誘導発現するヘルパー細胞の作製
VSV-G遺伝子産物は細胞障害性を有しているため、CreリコンビナーゼによりVSV-G遺伝子産物が誘導発現されるよう設計されたプラスミドpCALNdLG(Arai T.らJ.Virology 72(1998)p1115-1121)を用い、LLC-MK2細胞での安定導入株の作出を行った。LLC-MK2細胞へのプラスミドの導入は、リン酸カルシウム法(CalPhosTMMammalian Transfection Kit、クローンテック社製)により、添付マニュアルに従って行った。
10cmプレートを用い、60%コンフルエントまで生育したLLC-MK2細胞に10μgのプラスミドpCALNdLGを導入後、10mlのMEM-FCS10%培地にて、37℃の5%CO2インキュベーター中で24時間培養した。24時間後に細胞を剥がし、10mlの培地に懸濁後、10cmシャーレ5枚を用い5ml 1枚、2ml 2枚、0.5ml 2枚に捲き、G418(GIBCO-BRL社製)1200μg/mlを含む10mlのMEM-FCS10%培地で培養を行い、2日毎に培地交換しながら、14日間培養し、遺伝子の安定導入株の選択を行った。該培養により生育してきたG418に耐性を示す細胞は、クローニングリングを用いて28株を回収した。各クローンは10cmプレートでコンフルエントになるまで拡大培養を続けた。
各クローンについて、Creリコンビナーゼを含む組み換えアデノウイルスAxCANCreを感染後、抗VSV-Gモノクローナル抗体を用いて、VSV-Gの発現を以下に記載のウエスタンブロット法により調べた。
各クローンは6cmシャーレにて、コンフルエントまで生育させた後、アデノウイルスAxCANCreを齋藤らの方法(上記)によりMOI=10で感染後、3日間培養した。該細胞は培養上清を取り除いた後、PBS緩衝液で洗浄し、0.05%トリプシン、0.02% EDTA(エチレンジアミン4酢酸)を含むPBS緩衝液0.5mlを加え、37℃、5分間インキュベートすることによりシャーレより剥がした。該細胞は3ml PBS緩衝液に懸濁後、1,500x gで5分間遠心し、細胞を集めた。得られた細胞はさらに2ml PBS緩衝液に再度懸濁後、1,500x gで5分間遠心分離することにより、細胞を集めた。
該細胞は-20℃で保存することが可能で、必要に応じて解凍して使用することができる。集めた細胞は100μLの細胞溶解液(RIPAバッファー、ベーリンガーマンハイム社製)により溶解し、該細胞の全蛋白質(1レーン当たり1x105細胞)を用いてウェスタンブロットを行った。細胞溶解液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー〔6mMトリス−塩酸(pH6.8)、2% SDS、10%グリセロール、5%2−メルカプトエタノールからなる緩衝液〕に溶解し、95℃5分加熱後電気泳動用試料に供した。該試料をSDS−ポリアクリルアミドゲル(マルチゲル10/20、第一化学社製)を用い、電気泳動により分画し、分画された蛋白質をセミドライブロット法により転写膜(Immobilon-PTransferMembranes、Millipore社製)に転写した。転写は、100%メタノールに20秒、水に一時間浸した転写膜を使用し、1mA/cm2定電流の条件で1時間行った。
該転写膜を、40mlのブロッキング溶液(ブロックエース、雪印社製)中で1時間振盪させた後、PBS緩衝液で一度洗浄した。
該転写膜および10%ブロッキング溶液を含むPBS緩衝液で1/1000に希釈した抗VSV-G抗体(クローンP4D4、シグマ社製)5mlをビニールバッグに入れてシールし、4℃で静置させた。
該転写膜を2度40mlのPBS−0.1%Tween20に5分間浸漬し、洗浄した後、PBS緩衝液で5分間浸漬し、洗浄した。
該転写膜および10%ブロッキング溶液を含むPBS緩衝液で1/2500に希釈したパーオキシダーゼで標識された抗マウスIgG抗体(anti-mouseimmunoglobulin, Amersham社製)5mlをビニールバッグに入れ、シールをした後、室温で1時間振盪させた。
振盪後、該転写膜を2度PBS−0.1%Tween20に5分間浸漬し、洗浄した後、PBS緩衝液に5分間浸漬し、洗浄した。
発光法(ECL Western blotting detection reagents, Amersham社製)により、抗VSV-G抗体と交叉の見られる該転写膜上の蛋白質の検出を行った。結果を図33に示す。3クローンで、AxCANCre感染特異的なVSV-Gの発現が検出され、VSV-G遺伝子産物を誘導発現するLLC-MK2細胞の作出が確認された。
得られた細胞株の一株をLLCG-L1と呼び、抗VSV抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った(図34)。その結果、LLCG-1では、VSV-G遺伝子誘導発現時特異的に抗体との反応性が検出され、VSV-Gタンパク質が細胞表面に発現されることが確認された。
<2>ヘルパー細胞を用いたF遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスの作製
F遺伝子を欠失したゲノムを有するセンダイウイルスをVSV-G遺伝子発現細胞に感染させ、VSV-Gを外被に有するシュードタイプウイルスの産生が見られるかを、上記実施例に記載のGFP遺伝子を含むF欠失型センダイウイルスを用い、GFP遺伝子の発現を指標に調べた。その結果、Creリコンビナーゼを含む組み換えアデノウイルスAxCANCreを感染しないLLCG-L1では、F欠失型センダイウイルスの感染によりウイルス遺伝子が導入され、GFP発現細胞は検出されるものの、その細胞数は増えず、VSV-Gを誘導発現させた細胞では、経時的にGFP発現細胞の増加が認められた。その上清の1/5量をさらに、新たなVSV-Gを誘導発現させた細胞に添加したところ、前者由来の上清では、遺伝子導入が全くみとめらず、後者由来の上清では遺伝子導入およびGFP発現細胞の増加が認められた。また、後者由来の上清をVSV-Gを誘導しないLLCG-L1細胞に添加した際には、遺伝子導入はされるものの、GFP発現細胞の増加は認められなかった。以上の結果から、VSV-G発現細胞特異的にウイルスが増殖することが認められ、VSV-GとのシュードタイプのF欠失型センダイウイルスの生成が認められた。
<3>F位電子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスの産生条件の検討
VSV-G遺伝子の発現量の影響を調べるため、AxCANCreの感染量(MOI=0、1.25、2.5、5、10)を変え、一定量のF遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスを感染後、7日目から8日目の上清を回収し、さらにVSV-G誘導前、誘導後の細胞に感染させ、5日目のGFPの発現している細胞の数を比較したところ、MOI=0ではウイルスの産生が全く認められず、MOI=10の条件で最も多いことがわかった(図35)。また、経時的にウイルス産生量を調べたところ、シュードタイプセンダイウイルス感染後5日目以降から産生量が上昇し、8日目まで産生が確認できた(図36)。ウイルス力価の測定は、VSV-G誘導前の細胞に、10倍ずつ段階的に希釈したウイルス液を添加し、感染後5日目のGFPの発現細胞を数えることにより、ウイルス液中の細胞への感染粒子数(CIU)を求めた。その結果、最高ウイルス産生量は5x105CIU/mlであった。
<4>F遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスの抗VSV抗体による感染性の影響
VSV-G発現株を用いて得られたF遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスが、外被にVSV-Gタンパク質を有するかに関して、抗VSV抗体を用いて感染性の影響されるかどうかの中和活性を調べた。ウイルス液と抗体を混合し、室温で30分静置後、VSV-Gを誘導発現していないLLCG-L1細胞に感染し、5日目の遺伝子導入能をGFP発現細胞の有無で調べた。その結果、抗VSV抗体での感染性の完全な抑制が認められ、本来の外被を有するF遺伝子を欠失したゲノムを有するセンダイウイルスでは抑制が認められなかった(図37)。このことから、今回得られたウイルスが、外被にVSV-Gタンパク質を有するシュードタイプのセンダイウイルスであり、抗体によりその感染性が特異的に抑えられることが明らかとなった。
<5>シュードタイプセンダイウイルスがF欠失型ゲノムを有することの確認
今回VSV-G遺伝子発現細胞で増殖したウイルスがF欠失型であることを、感染細胞抽出液のタンパク質のウエスタン解析により調べた。ウエスタン解析は、上記に記載の方法により行った。一次抗体として、ウサギより調製された、抗センダイウイルスポリクローナル抗体、マウスより調製された抗Fタンパク質モノクローナル抗体、マウスより調製された抗HNタンパク質モノクローナル抗体を用い、2次抗体に、抗センダイウイルスポリクローナル抗体の場合はパーオキシダーゼで標識された抗ウサギIgG抗体、抗Fタンパク質モノクローナル抗体、抗HNタンパク質モノクローナル抗体の場合はパーオキシダーゼで標識された抗マウスIgG抗体を用いた。その結果、センダイウイルス由来のタンパク質およびHNタンパク質は検出されるものの、Fタンパク質は検出されなかったことから、F欠失型であることが確認された。
<6>ヘルパー細胞を用いたFおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウイルスの作製
FおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するセンダイウイルスをVSV-G遺伝子発現細胞LLCG-L1に感染させ、VSV-Gを外被に有するシュードタイプウイルスの産生が見られるかを、上記実施例に記載のGFP遺伝子を含むF、HN欠失型センダイウイルスを用い、上記実施例と同様の方法でGFP遺伝子の発現を指標に調べた。その結果、VSV-G発現細胞特異的にウイルスが増殖することが認められ、VSV-GとのシュードタイプのF、HN欠失型センダイウイルスの生成が認められた(図38)。ウイルス力価の測定は、VSV-G誘導前の細胞に、10倍ずつ段階的に希釈したウイルス液を添加し、感染後5日目のGFPの発現細胞を数えることにより、ウイルス液中の細胞への感染粒子数(CIU)を求めた。その結果、最高ウイルス産生量は1x106CIU/mlであった

<7>シュードタイプセンダイウイルスがFおよびHN欠失型ゲノムを有することの確認
今回VSV-G遺伝子発現細胞で増殖したウイルスがFおよびHN欠失型であることを、感染細胞抽出液のタンパク質のウエスタン解析により調べた。その結果、センダイウイルス由来のタンパク質は検出されるものの、FおよびHNタンパク質は検出されなかったことから、FおよびHN欠失型であることが確認された(図39)。
[実施例12]ウイルス再構成法の検討
<従来法>
LLC-MK2細胞を5×106cells/dishで100mmペトリ皿に蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEM培地で1回洗浄した後、3μg/mlのソラレンと長波長紫外線(365nm)で5分間処理したT7 RNAポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(Fuerst, T.R. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83, 8122-8126 1986)(vTF7-3)に室温で1時間感染させた。(moi=2)(moi=2〜3、好適にはmoi=2が用いられる)。細胞を、血清を含まないMEM培地で2回洗浄した後、プラスミドpSeV18+/ΔF-GFP, pGEM/NP, pGEM/P, 及びpGEM/L(Kato, A. et al., Genes cells 1, 569-579(1996))をそれぞれ12μg, 4μg, 2μg, 及び4μg/dishの量比でOpti-MEM培地(GIBCO)に懸濁し、SuperFect transfection reagent(1μg DNA/5μlのSuperFect, QIAGEN)を入れ、室温で15分間放置後、最終的に3% FBSを含むOpti-MEM培地3mlに入れたDNA-SuperFect混合物を細胞に添加して培養した。3時間培養後、細胞を、血清を含まないMEM培地で2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド40μg/ml(AraC, Sigma)を含むMEM培地で70時間培養した。これらの細胞と上清を回収し、それぞれP0-d3サンプルとした。P0-d3のペレットをOpti-MEM培地に懸濁した(107cells/ml)。凍結融解を3回繰り返してlipofection reagent DOSPER(Boehringer mannheim)と混合し(106cells/25μl DOSPER)室温で15分間放置した後、F発現LLC-MK2/F7細胞株にトランスフェクション(106cells/well 24-well-plate)し、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)で培養した。培養後3日目および7日目に上清を回収し、それぞれP1-d3およびP1-d7サンプルとした。
<エンベローププラスミド+F発現細胞重層法>
プラスミドにエンベローププラスミドpGEM/FHNを4μg/dish加えた以外は、上記と同様の操作を行い、トランスフェクションを行った。3時間培養後、細胞を、血清を含まないMEM培地で2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド40μg/ml(AraC, Sigma)とトリプシン7.5μg/mlを含むMEM培地で48時間培養した。培養上清を取り除き、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)に懸濁された100mmペトリ皿1枚分のF発現LLC-MK2/F7細胞懸濁液5mlを重層した。培養48時間後、これらの細胞と上清を回収し、それぞれP0-d4サンプルとした。P0-d4のペレットをOpti-MEM培地に懸濁し(2×107cells/ml)、凍結融解を3回繰り返してF発現LLC-MK2/F7細胞株に重層(2×106cells/well 24-well-plate)し、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)で培養した。培養後3日目および7日目に上清を回収し、それぞれP1-d3およびP1-d7サンプルとした。比較のため、重層を行わず、エンベローププラスミドのみを添加し、上記の従来法と全く同じ方法でも実験を行った。
<GFP発現細胞のカウントによるCIUの測定(GFP-CIU)>
LLC-MK2細胞を2×105cells/wellで12well-plateに蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEM培地で1回洗浄した後、上記のサンプル(P0-d3またはP0-d4、P1-d3およびP1-d7)を、陽性細胞が10cm2中に10〜100個の間の数になるように適宜希釈し、100μl/wellで感染させた。15分後血清を含まないMEM培地を1ml/well加えた。さらに24時間培養後、細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、GFP発現細胞のカウントを行った。
<CIU(Cell-Infected Unit)測定>
LLC-MK2細胞を2×106cells/dishで12well-plateに蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEM培地で1回洗浄した後、上記サンプル(含まれるウイルスベクターをSeV/ΔF-GFPと称す)を100μl/wellで感染した。15分後、血清を含まないMEM培地を1ml/well加え、さらに24時間培養した。培養後、PBS(-)で3回洗浄した後、細胞を乾燥させ(約10分〜15分室温放置)、細胞を固定するため、アセトンを1ml/well加え直ちに取り除き、再び乾燥させた(約10分〜15分室温放置)。PBS(-)で100倍希釈したウサギより調製された抗SeVポリクローナル抗体(DN-1)を300μl/well加え、37℃で45分間インキュベートした後、PBS(-)で3回洗浄し、PBS(-)で200倍希釈した抗ウサギIgG(H+L)蛍光標識二次抗体(AlexaTM568:Molecular Probes社製)を300μl/well加え、37℃で45分間インキュベートした。PBS(-)で3回洗浄した後、蛍光顕微鏡下(Emission:560nm, Absorption:645nmフィルター:ライカ社製)で蛍光を発する細胞を観察した(図40)。
対照として上記サンプル(SeV/ΔF-GFP)を100μl/wellで感染し15分後、血清を含まないMEMを1ml/well加え、さらに24時間培養後、以後の操作を行わずに細胞を蛍光顕微鏡下(Emission:360, Absorption:470nmフィルター:ライカ社製)でGFP発現細胞を観察した。
[実施例13]欠失型センダイウイルスベクターの再構成効率向上のための最適なワクシニアウイルス(vTF7-3)のPLWUV(Psoralen and Long-Wave UV Light)処理条件検討
LLC-MK2細胞を5×106cells/dishで100mmペトリ皿に蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEM培地で1回洗浄した後、0.3〜3μg/mlのソラレンと長波長紫外線(365nm)で2〜20分間処理したT7 RNAポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(vTF7-3)(Fuerst, T.R. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83, 8122-8126(1986)に室温で1時間感染させた(moi=2)(moi=2〜3、好適にはmoi=2が用いられる)。細胞を血清を含まないMEM培地で2回洗浄した後、プラスミドpSeV18+/ΔF-GFP, pGEN-NP, pGEM/P, 及びpGEM/L(Kato, A et al, Genes cells 1, 569-579(1996)), をそれぞれ12μg, 4μg, 2μg, 及び4μg/dishの量比でOpti-MEM培地(GIBCO)に懸濁し、SuperFect transfection reagent(1μg DNA/5μlのSuperFect, QIAGEN)を入れ、室温で15分間放置後、最終的に3%FBSを含むOpti-MEM培地3mlに入れたDNA-SuperFect混合物を細胞に添加して培養した。3時間培養後、細胞を、血清を含まないMEM培地で2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド40μg/ml(AraC, Sigma)を含むMEM培地で48時間培養した。100mmペトリ皿の約1/20視野の細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、GFP発現細胞のカウントした。ワクシニアウイルス(vTF7-3)の不活化の検定にはプラーク形成によるタイターの測定(永井美之ら, ウイルス実験プロトコール, p291-296, 1995)を行った。
さらに、トランスフェクション後の回収時期を3日目に着目し、ソラレンとUV照射時間の検討を行った。各PLWUV処理を行ったワクシニアウイルス(vTF7-3)を用い、センダイウイルス再構成の効率を検討した。再構成は加藤らの方法(上記)を改変し、以下の手順で行った。6wellのマイクロプレートにLLC-MK2細胞を5×105細胞/wellで撒き、終夜培養した後(1×106細胞/wellに増殖していると仮定)、PLWUV処理前のタイター換算で2×106pfu/100μlとなるようにワクシニアウイルス(vTF7-3)を希釈し、PBS洗浄後の細胞に感染させた。1時間の感染後、50μlのOpti-MEM培地(GIBCO)にプラスミド、pGEM/Np, pGEM/P, 及びpGEM/L、そして付加型SeV cDNA(pSeV18+b(+))(Hasan, M. K. et al., J. General Virology 78: 2813-2820, 1997)をそれぞれ1, 0.5, 1, 4μgを加えたものに、SuperFect(QIAGEN)を10μl加え、室温で15分放置した後、1mlのOpti-MEM(40μg/mlのAraCを含む)を加え、細胞に重層した。トランスフェクション後、3日目に細胞を回収し、遠心後、100μl/wellのPBSに懸濁した。この懸濁液を10倍、100倍、1000倍希釈した細胞溶液100μlを受精後10日目の発育鶏卵に各希釈3個ずつ摂取した。(1×105, 1×104, 1×103細胞をそれぞれ摂取)。3日後鶏卵から尿液を回収しHA試験によりウイルス再構成の有無を調べた。1×105細胞を摂取した鶏卵のうち、HA活性があった鶏卵を一点、104では十点、103では百点と数えて、再構成の効率を求めた。
<結果>
実施例12および13の結果を図40〜43、および表2に示す。エンベロープ発現プラスミドと細胞重層の組み合わせによるSeV/ΔF-GFPの再構成効率の向上が確認された。P0(継代前)のd3〜d4(3日目〜4日目)において、著しい改善が認められた(図41)。表2では、トランスフェクション後3日目の細胞を卵に接種した。0.3μg/mlのソラレン濃度で20分間の処理が、最も再構成効率が高かった(3日目)ことから、この条件を最適条件とした(表2)。
Figure 0003766596
[実施例14]GFPを含まないLacZ搭載F欠失型センダイウイルスベクターの作製
<LacZ遺伝子を含むF欠失型SeVベクターcDNAの構築>
実施例1記載のpSeV18+/ΔFのNP遺伝子上流域に存在するNotI切断部位にLacZ遺伝子を搭載したcDNA(pSeV(+18:LacZ)/ΔF)を構築するためPCRによりLacZ遺伝子の増幅を行った。LacZ遺伝子を6の倍数(Hausmann, S et al., RNA 2, 1033-1045(1996))にあわせ、5''末側にはNotI切断部位を付与したプライマー(5''-GCGCGGCCGCCGTACGGTGGCAACCATGTCGTTTACTTTGACCAA-3''/配列番号:17)を3''末にSeVの転写終結シグナル(E)、介在配列(I)および転写開始シグナル(S)を付与し、NotI切断部位を付与したプライマー(5'-GCGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTACTACGGCGTACGCTATTACTTCTGACACCAGACCAACTGGTA-3''/配列番号:18)を用い、プラスミドpCMV-β(クローンテック社製)を鋳型としてPCR反応を行った。反応条件は、pCMV-β 50ng、200μM dNTP(ファルマシアバイオテク社製)、100pMプライマー、Ventポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラボ社製)4Uを添付の反応バッファーとともに混合後、94℃ 30秒、50℃ 1分、72℃ 2分の反応温度サイクル25回で行った。反応産物をアガロースゲル電気泳動で泳動後、3.2キロベースの断片を切り出し、精製後、NotIで切断し、pSeV18+/ΔF NotI切断片とライゲーションしてpSeV(+18:LacZ)/ΔFを得た。
<従来法>
LLC-MK2細胞を5×106cells/dishで100mmペトリ皿に蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEMで1回洗浄した後、3μg/mlのソラレンと長波長紫外線(365nm)で5分間処理したT7 RNAポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(vTF7-3)(Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 8122-8126(1986)に室温で1時間感染させた(moi=2)(moi=2〜3、好適にはmoi=2が用いられる)。細胞を血清を含まないMEMで2回洗浄した後、LacZ搭載F欠失センダイウイルスベクターcDNA(pSeV(+18:LacZ)ΔF), pGEM/NP, pGEM/P, 及びpGEM/L(Kato, A. et al., Genes Cells 1, 569-579(1996)), をそれぞれ12μg, 4μg, 2μg, 4μg/dishおよびエンベローププラスミドpGEM/FHNを4μg/dish加え、Opti-MEM(GIBCO)に懸濁し、SuperFect transfection reagent(1μg DNA 5/μlのSuperFect, QIAGEN)を入れ、室温で15分間放置後、最終的に3% FBSを含むOpti-MEM3mlに入れたDNA-SuperFect混合物を細胞に添加して培養した。3時間培養後、細胞を、血清を含まないMEMで2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド40μg/ml(AraC, Sigma)とトリプシン7.5μg/mlを含むMEMで24時間培養した。培養上清を取り除き、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)に懸濁された100mmペトリ皿1枚分のF発現LLC-MK2/F7細胞懸濁液5mlを重層した。さらに培養48時間後、これらの細胞と上清を回収し、それぞれP0-d3サンプルとした。P0-d3のペレットをOpti-MEM培地に懸濁し(2×107cells-ml)、凍結融解を3回繰り返してlipofection reagent DOSPER(Boehringer mannheim)と混合し(106cells/25μl DOSPER)室温で15分間放置した後、F発現LLC-MK2/F7細胞株にトランスフェクション(106cells/well 24-well-plate)し、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)で培養した。培養後7日目に上清を回収し、P1-d7サンプルとした。さらに上清全量を12-well-plateに捲いたF発現LLC-MK2/F7細胞株に37℃1時間感染後、MEM培地で一回洗浄した後、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)で培養した。培養後7日目に上清を回収し、P2-d7サンプルとした。さらに上清全量を6-well-plateに捲いたF発現LLC-MK2/F7細胞株に37℃1時間感染後、MEM培地培地で一回洗浄した後、血清を含まないMEM培地(7.5μg/mトリプシンを含む)で培養した。培養後7日目に上清を回収し、P3-d7サンプルとした。さらに上清全量を10cm plateに捲いたF発現LLC-MK2/F7細胞株に37℃1時間感染後、MEM培地培地で一回洗浄した後、血清を含まないMEM培地(40μg/ml AraC, 7.5μg/mトリプシンを含む)で培養した。培養後7日目に上清を回収し、P4-d7サンプルとした。
<LacZ発現細胞のカウントによるCIUの測定(LacZ-CIU)>
LLC-MK2細胞を2.5×106cells/wellで6well-plateに蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEM培地で1回洗浄した後、P3-d7の1/10希釈系列をMEM培地で作製し、37℃1時間感染後、MEM培地で一回洗浄し、10%血清を含むMEM培地1.5mlを添加した。37℃で3日培養後、細胞をβ-Gal染色キット(インビトロジェン社)により染色した。3回の実験の結果を図44に示す。LacZ染色陽性細胞数を数えた結果、いずれの場合でもP3-d7サンプルにおいて1×106CIU/mlのウイルスが得られていることがわかった。
[実施例15]センダイウイルスにおける極性効果を利用した遺伝子発現量の制御
<SeVゲノムcDNAの構築>
センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV(+)(Kato, A. et al., Genes to Cells 1:: 569-579,1996)のcDNAに新たなNotIサイトを各遺伝子のスタートシグナルとATG翻訳開始シグナルの間に導入した。導入方法としてはまず、図45(A)のようにpSeV(+)をSph I/Sal Iで消化した断片(2645bp)、Cla Iで消化した断片(3246bp)、及びCla I/Eco RIで消化した断片(5146bp)をそれぞれアガロース電気泳動で分離、該当するバンドを切り出し、QIAEXII Gel Extraction System(QIAGEN社製)で回収・精製した。Sph I/Sal Iで消化した断片はLITMUS38(NEW ENGLAND BIOLABS社製)、Cla Iで消化した断片とCla I/Eco RIで消化した断片はpBluescriptII KS+(STRATAGENE社製)にライゲーションし、サブクローニングした。続いてNot Iサイトの導入にはQuickchange Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE社製)を使った。それぞれの導入に用いたプライマーはNP-P間ではセンス鎖:5'-ccaccgaccacaccccagcggccgcgacagccacggcttcgg-3'(配列番号:19)、アンチセンス鎖:5'-ccgaagccgtggctgtcgcggccgctgggtgtggtcggtgg-3'(配列番号:20)、P-M間ではセンス鎖:5'-gaaatttcacctaagcggccgcaatggcagatatctatag-3'(配列番号:21)、アンチセンス鎖:5'-ctatagatatctgccattgcggccgcttaggtgaaatttc-3'(配列番号:22)、M-F間ではセンス鎖:5'-gggataaagtcccttgcggccgcttggttgcaaaactctcccc-3'(配列番号:23)、アンチセンス鎖:5'-ggggagagttttgcaaccaagcggccgcaagggactttactccc-3'(配列番号:24)、F-HN間ではセンス鎖:5'-ggtcgcgcggtactttagcggccgcctcaaacaagcacagatcatgg-3'(配列番号:25)、アンチセンス鎖:5'-ccatgatctgtgcttgtttgaggcggccgctaaagtaccgcgcgacc-3'(配列番号:26)、HN-L間ではセンス鎖:5'-cctgcccatccatgacctagcggccgcttcccattcaccctggg-3'(配列番号:27)、アンチセンス鎖:5'-cccagggtgaatgggaagcggccgctaggtcatggatgggcagg-3'(配列番号:28)をそれぞれ合成し、用いた。
鋳型としてNPP間はSalI/SphI断片、PM間、MF間はClaI断片、FHN間、HNL間はClaI/Eco RI断片をそれぞれ上記でサブクローニングしたものを用いてQuickchange Site-Directed Mutagenesis kitのプロトコルに従い、導入を行った。導入したものを再びサブクローニングした酵素で消化して同様に回収・精製し、元のセンダイゲノムcDNAへアセンブリした。その結果、図45(B)のように各遺伝子間に新たにNotIを導入した5種類(pSeV(+)NPP、pSeV(+)PM、pSeV(+)MF、pSeV(+)FHNおよびpSeV(+)HNL)のセンダイウイルスゲノムcDNAを構築した。
遺伝子発現量を見るためのレポータ遺伝子としてヒト分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)をPCRでサブクローニングした。プライマーにはAsc I制限酵素サイトを付加した5'プライマー:5'-gcggcgcgccatgctgctgctgctgctgctgctgggcctg-3'(配列番号:29)、3'プライマー:5'-gcggcgcgcccttatcatctctgctcgaagcggccggccg-3'(配列番号:30)を合成し、PCRを行った。鋳型にはpSEAP-Basic(CLONTECH社製)、酵素にはPfu tourbo DNAポリメラーゼ(STRATAGENE社製)を用いた。PCR後、産物をAsc Iで消化し、電気泳動により精製・回収した。サブクローニングするプラスミドとしてpBluescriptII KS+のNot Iサイトにマルチクローニングサイト(Pme I-Asc I-Swa I)と終結シグナル-介在配列-開始シグナル含む合成二本鎖DNA[センス鎖:5'-gcggccgcgtttaaacggcgcgccatttaaatccgtagtaagaaaaacttagggtgaaagttcatcgcggccgc-3'(配列番号:31)、アンチセンス鎖:5'-gcggccgcgatgaactttcaccctaagtttttcttactacggatttaaatggcgcgccgtttaaacgcggccgc-3'(配列番号:32)]を組み込んだものを作製した(図46)。このプラスミドのAsc Iサイトに精製・回収したPCR産物をライゲーションし、クローニングした。これをNot Iで消化してSEAP遺伝子断片を電気泳動で回収・精製し、上記の5種類のセンダイウイルスゲノムcDNAとpSeV18+のNot Iサイトにそれぞれライゲーションし組み込んだ。それぞれのウイルスベクターをpSeV(+)NPP/SEAP、pSeV(+)PM/SEAP、pSeV(+)MF/SEAP、pSeV(+)FHN/SEAP、pSeV(+)HNL/SEAPおよびpSeV18(+)/SEAPとした。
<ウイルスの再構築>
LLC-MK2細胞を2×106cells/dishで100mmシャーレに蒔き、24時間後培養後、ソラレンとUV処理したT7ポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(PLWUV-VacT7)(Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8122-8126,1986、Kato, A. et al., Genes Cells 1:569-579, 1996)に室温でmoi=2で1時間感染させた。細胞を洗浄してからSEAPを組み込んだ各センダイウイルスcDNA、pGEM/NP、pGEM/P、およびpGEM/Lをそれぞれ12μg、4μg、2μg、及び4μg/dishの量比でOptiMEM(GIBOCO BRL社製)に懸濁し、110μlのSuperFect transfection reagent(QIAGEN社製)を入れて混合し、室温で15分放置後、最終的に3%FBSを含むOptiMEM 3mlを加え、細胞に添加して3〜5時間培養した。培養後、細胞を血清を含まないMEMで2回洗浄し、シトシンβ-D-アラビノフラシド(AraC)を含むMEMで72時間培養した。これらの細胞を回収し、ペレットを1mlのPBSで懸濁し、凍結融解を3回繰り返した。これらを10日間孵卵にさせた鶏卵100μl接種し、35℃で3日間孵卵させたのち、尿液を回収した。ワクシニアウイルスフリーにするため、これら回収した尿液をさらに10-5〜10-7に希釈して鶏卵に再接種し、同様に回収し、分注して-80℃にストックした。それぞれのウイルスベクター名をSeVNPP/SEAP、SeVPM/SEAP、SeVMF/SEAP、SeVFHN/SEAP、SeVHNL/SEAPおよびSeV18/SEAPとする)。
<プラークアッセイによるタイターの測定>
CV-1細胞を6wellプレートに1wellあたり5×105cellsずつ蒔き、24時間培養した。PBS洗浄後、BSA/PBS(1% BSA in PBS)で10-3、10-4、10-5、10-6、10-7に希釈した組換えSeVを1時間インキュベーションした後、PBSで洗浄、BSA/MEM/アガロース(0.2% BSA+2×MEMと等量の2%アガロースを混合したもの)をwellあたり3mlずつ重層し、6日間37℃、0.5%で培養した。培養後、3mlのエタノール/酢酸(エタノール:酢酸=1:5)を加え、3時間放置し、アガロースとともに除去した。PBSで三回洗浄後、100倍希釈したウサギ抗センダイウイルス抗体で室温で1時間インキュベーションした。PBSで三回洗浄後、200倍希釈したAlexa FlourTM標識ヤギ抗ウサギIgG(G+H)(Moleculaar Probe社)を加えて室温で1時間インキュベーションした。PBSで三回洗浄後、ルミノイメージアナライザーLAS1000(富士フィルム)で蛍光画像を取り込み、プラークを測定した。結果を図47に示す。またこれから得られたタイターの結果を表3に示す。
Figure 0003766596
<レポーター遺伝子発現の比較>
LLC-MK2細胞を6wellプレートに1wellあたり1〜5×105cellsずつ蒔き、24時間培養した後、各ウイルスベクターをmoi=2感染させ、24時間後培養上清を100μl回収し、SEAPアッセイを行った。アッセイはReporter Assay Kit-SEAP-(東洋紡)で行い、ルミノイメージアナライザーLAS1000(富士フィルム)で測定した。測定値はSeV18+/SEAPの値を100としてそれぞれ相対値として表した。その結果、図48に示したいずれの位置にSEAP遺伝子を挿入した場合でもSEAP活性が検出された。SEAP活性はゲノムの下流に位置するに従って下がり、すなわち発現量が下がっていることがわかった。また、NP遺伝子とP遺伝子の間にSEAP遺伝子を挿入した場合には、NP遺伝子の上流にSEAP遺伝子を挿入したベクターと、P遺伝子とM遺伝子の間にSEAP遺伝子を挿入したベクターの中間の発現量が検出された。
[実施例16]ダブル欠失ΔF-HN細胞重層法による欠失SeV増幅効率の向上
現在用いているSeVウイルスの再構築法では、T7 RNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニア(vTF7-3)を用いるため、ワクシニアの細胞傷害性により、感染細胞が一部分死滅しており、再構築を行った一部の細胞でウイルスが増幅することができても、さらに多くの細胞で効率よく、持続的に増幅できるようにすることが好ましい。しかし、パラミクソウイルスでは同型ウイルスのFとHN蛋白が細胞表面に共に存在すると細胞融合を引き起こし、シンシチュムが形成されることが知られている(Lamb and Kolakofsky, 1996, Fields virology, p1189)。それ故FHN共発現細胞の継代が困難であった。そこで、これらの再構築された細胞に新たに欠失蛋白(FおよびHN)を発現するヘルパー細胞を重層することにより欠失ウイルスの回収効率を向上することができると考えた。FHN発現誘導時間が異なる細胞を重層することを検討することによりFHN共欠失ウイルス回収効率を大きく向上した。
10cm細胞培養皿に100%コンフレントになったLLC-MK2細胞(1x107/dish)をPLWUV-処理ワクシニアをmoi=2で室温において感染1時間後、d2EGFPを搭載するFHN欠失cDNA(pSeV18+/ΔFHN-d2FDP(実施例8), pGEM/NP, pGEM/P, pGEM/L, pGEM/FHNをそれぞれ、12μg/10cm dish, 4μg/10cm dish, 2μg/10cm dish, 4μg/10cm dish, 4μg/10cm dishの量比で混合し(final vol, 3ml/10cm dish)、遺伝子導入試薬SuperFect(QIAGEN)を用いて、前述したF欠失ウイルスの再構築と同様な方法でLLC-MK2細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入3時間後細胞を無血清培地で3回洗浄し、低速遠心(1000rpm/2min)で剥がれた細胞を回収し、シトシンβ-D-アラビノフラノシド(AraC)40μg/ml, SIGMA),トリプシン(7.5μg/ml, GIBCO)を含むの無血清MEM培地に懸濁し、細胞に加え、一晩培養した。別途に用意した10cmシャーレで100%コンフレントになったFHN共発現細胞をアデノウイルスAxCANCreをMOI=10で発現誘導後、4時間、6時間、8時間、2日目、3日目の細胞をそれぞれ5mlPBS(-)で一回洗浄し、cell dissociation solution(SIGMA)により細胞を剥がし、低速遠心(1000rpm/2min)で細胞を集め、AraC(40μg/ml, SIGMA)、トリプシン(7.5μg/ml, GIBCO)を含むの無血清MEM培地に懸濁し、FHN共欠失ウイルスの再構築した細胞(P0)に加え一晩培養した。細胞重層後2日目で蛍光顕微鏡で細胞を観察し、細胞におけるGFPの発現でウイルスの広がりを確認した。その結果、図49に示した。細胞重層しない従来の場合(左)に比べ、細胞を重層した場合(右)は重層された細胞の方がGFP発現細胞が顕著に多く認められた。これらの細胞を回収し、107細胞/mlのOpti-MEM培地(Gibcol)に懸濁し、3回凍結融解したライセートを調製し、発現誘導して2日後のFHN共発現細胞に106cells/100μl/well感染し、AraC(40μg/ml, SIGMA),トリプシン(7.5μg/ml, GIBCO)を含むの無血清MEM培地で、37℃ 5%CO2インキュベーターで2日間培養したP1細胞培養上清のウイルス力価をCIU-GFPで測定した(表4)。その結果、FHN発現誘導後4時間ではウイルスの増幅効果が認められず、誘導6時間以後の細胞重層による増幅効果が顕著に認められた。特に、P1細胞上清中に放出されたウイルスは6時間後の細胞重層する方が細胞重層しない方に比べ約10倍に上った。
Figure 0003766596
[実施例17]シュードタイプセンダイウィルスがF欠失型ゲノムを有することの確認
VSV-G遺伝子発現で増殖した上記ウイルスがF欠失型であることを、感染細胞抽出液のタンパク質のウェスタン解析により調べた。その結果、センダイウィルス由来のタンパク質は検出されるものの、Fタンパク質は検出されなかったことから、F欠失型であることが確認された(図50)。
[実施例18]FおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルスの抗VSV抗体による感染性の影響
VSV-G発現株を用いて得られたFおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルスが、外被にVSV-Gタンパク質を有するかに関して、抗VSV抗体を用いて感染性が影響されるかどうかの中和活性を調べた。ウィルス液と抗体を混合し、室温で30分静置後、VSV-Gを誘導発現していないLLCG-L1細胞に感染し、4日目の遺伝子導入能をGFP発現細胞の有無で調べた。その結果、FおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルス(図中VSV-G)は、抗VSV抗体で感染性の完全な抑制が認められたが、本来の外被を有するセンダイウィルス(図中F,HN)では抑制が認められなかった(図51)。このことから、本実施例で得られたウィルスが、外被にVSV-Gタンパク質を有するシュードタイプのセンダイウィルスであり、抗体によりその感染性が特異的に抑えられることが明らかとなった。
[実施例19]F遺伝子とFおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルスの密度勾配超遠心法を用いた精製
ウィルス感染細胞の培養上清を用いて、ショ糖密度勾配遠心を行い、F遺伝子とFおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルスの分画精製を行った。20〜60%のグラジェントを形成させたショ糖溶液にウィルス液を上層させ、SW41ローター(Beckman)で29000rpm、15〜16時間超遠心を行った。超遠心後チューブの底に穴を開け、フラクションコレクターで300μlずつ分画した。各画分について、F遺伝子あるいはFおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有し、外被にVSV-Gタンパク質を有するシュードタイプのセンダイウィルスであることをウェスタン解析により調べた。ウェスタン解析は、上記に記載の方法により行った。その結果、F欠失型のシュードタイプのセンダイウィルスでは、センダイウィルス由来のタンパク質およびHNタンパク質、VSV-Gタンパク質は同フラクションに検出されるものの、Fタンパク質は検出されなかったことから、F欠失型シュードタイプのセンダイウィルスであることが確認された。一方、FおよびHN欠失型のシュードタイプセンダイウィルスでは、センダイウィルス由来のタンパク質、VSV-Gタンパク質は同フラクションに検出されるものの、FおよびHNタンパク質は検出されなかったことから、FおよびHN欠失型のシュードタイプのセンダイウィルスであることが確認された(図52)。
[実施例20]F遺伝子とFおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルスによる赤血球凝集反応の回避
F遺伝子、またはF,HN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルス、あるいは本来の外被を有するセンダイウィルスをLLC-MK2細胞に感染させ、3日目に1%トリ赤血球浮遊液を加え4℃で30分静置後、GFPを発現した感染細胞表面を観察した。その結果、F遺伝子を欠失したゲノムを有するウイルス(SeV/ΔF、およびVSV-Gでシュード化したSeV/ΔF(VSV-G)シュードタイプセンダイウィルスは本来の外被を有するセンダイウィルスと共に、感染細胞の表面に凝集反応が起きているのが確認された。一方、FおよびHN遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルス(SeV/ΔF-HN(VSV-G))では、感染細胞上に凝集は全く起きていないことが明らかとなった(図53)。
[実施例21]F遺伝子を欠失したゲノムを有するVSV-Gシュードタイプセンダイウィルスによる培養細胞への感染特異性
培養細胞へのF遺伝子を欠失したゲノムを有するVSV-Gシュードタイプセンダイウィルスの感染効率は、細胞に感染後3日目の生細胞に発現したGFP量をFlow cytometoryを用いて測定した。F遺伝子を欠失したゲノムを有するシュードタイプセンダイウィルスと本来の外被を有するセンダイウィルスで、ほぼ同じ感染効率を示すLLC-MK2細胞をコントロールとして比較を行った。その結果、ヒト卵巣ガン細胞HRAでの感染効率は、LLC-MK2細胞とほとんど差異はなかったが、T細胞系のJurkat細胞では、コントロールと比較して2倍程度のF遺伝子を欠失したゲノムを有するVSV-Gシュードタイプセンダイウィルスの感染効率の上昇が観察された(図54)。
[実施例22]NGF発現を搭載したF欠失型センダイウイルスベクターの作製
<NGF/SeV/ΔFの再構成>
NGF/SeV/ΔFの再構成は上記「エンベローププラスミド+F発現細胞重層法」に従って行った。また、タイターの測定は、抗SeVポリクローナル抗体を用いた方法に従って行った。
<NGF/SeV/ΔFのウイルスゲノム確認(RT-PCR)
NGF/SeV/ΔFウイルスゲノム(図55上)を確認するため、LLC-MK2/F7細胞から回収された培養上清を遠心した後、QIAmp Viral RNA mini kit(QIAGEN)でそのプロトコールに従ってRNA抽出を行った。このRNAをSUPERSCRIPTTMONE-STEPTPRT-PCR SYSTEM(GIBCO BRL)によりRE-PCRのテンプレート合成およびPCRを行った。対照群は、付加型SeV cDNA(pSeV18+b(+))(Hasan, M. K. et al., J. General Virology 78: 2813-2820, 1997)を用いた。PCRプライマーはNGF-NとNGF-Cを用いて行った。NGF-Nについては、フォワード:ACTTGCGGCCGCCAAAGTTCAGTAATGTCCATGTTGTTCTACACTCTG(配列番号:33)、NGF-Cについては、リバース:ATCCGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTACTACGGTCAGCCTCTTCTTGTAGCCTTCCTGC(配列番号:34)を使用した。その結果、NGH-NとNGF-Cとをプライマーに用いた場合は、RT条件下でNGF/SeV/ΔFはNGFに特異的なバンドが検出された。対照群にはバンドは検出されなかった(図55下)。
[実施例23]NGF遺伝子を搭載したF欠失型SeV細胞感染後に発現するNGF蛋白の定量とin vitro活性測定
感染及びNGF蛋白の発現は、直径10cm或いは直径6cmプレートにほぼconfluentに増殖させたLLC-MK2/F或いはLLC-MK2細胞を用いて行った。NGF/SeV/ΔF, NGF/SeV/ΔF-GFPはLLCMK2/F細胞に、NGF/SeV及びGFP/SeVはLLC-MK2細胞にm.o.i .0.01で感染させ、7.5μg/mLのTrypsin(GIBCO)を含み血清を含まないMEM培地で3日間培養した。3日後ほぼ100%の細胞が感染した後に、Trypsin及び血清を共に含まないMEM培地に交換し更に3日間培養した。それぞれの培養上清を回収し、48,000×gにて60分遠心後、上清についてNGF蛋白の定量及びin vitro活性測定を行った。本実施例では、F欠失型SeV(NGF/SeV/ΔF, NGF/SeV/ΔF-GFP)(図55参照)をLLC-MK2/F細胞に感染させているが、高m.o.i.(例えば1或いは3)を感染すれば、即ちはじめから100%近い細胞に感染すれば、当然のことながらF非発現細胞でも同様の結果を示す実験を行うことができる。
NGF蛋白の定量はELISA KitであるNGF Emax Immuno Assay System(Promega)を利用した。プロトコールは添付文書の指示に従った。NGF/SeV/ΔF, NGF/SeV/ΔF-GFP及びNGF/SeVの感染細胞培養上清中にはそれぞれ32.4μg/mL, 37.4μg/mL及び10.5μg/mLのNGF蛋白の存在が確認された。NGF/SeV/ΔF, NGF/SeV/ΔF-GFPの感染細胞培養上清中には、高濃度のNGF蛋白が存在しNGF/SeVの感染細胞培養上清中のNGF蛋白量と同程度であり、F欠失型SeVによっても十分量のNGFの発現があることが確認された。
NGF蛋白のin vitro活性測定は、ニワトリの感覚神経である後根神経節の初代神経細胞分散培養系での生存維持活性を指標に行った(Nerve Growth Factors(Wiley, New York), pp.95-109(1989))。胎生10日齢のニワトリ胚より後根神経節を取り出し、0.25% Trypsin(Gibco)で37℃20分処理後分散した。100units/mLのpenicillin(GIBCO), 100units/mLのstreptomycin(Gibco), 250ng/mLのamphotericin B(Gibco), 20μMの2-deoxyuridine(Nakarai), 20μMの5-fluorodeoxyuridine(Nakarai), 2mM L-glutamine(Sigma)及び5%の血清を含む高グルコースのD-MEM培地を使用し、96-wellプレートに1wellあたり約5000個の細胞密度で培養を開始した。プレートはpolylysinコートした96-wellプレート(Iwaki)を更にlaminin(Sigma)でコートして準備した。培養開始時にコントロールであるNGF蛋白或いは先に調製したSeV感染後の培養上清を添加した。3日後、顕微鏡下で細胞を観察すると共に、Alamer blue(CosmoBio)を添加しミトコンドリアによる還元活性を指標として(530nmで励起した590nmの蛍光強度を測定)生細胞の定量を行った。コントロール(NGF添加無し)及びSeV/付加型-GFP(GFP/SeV)の感染細胞培養上清の添加(1/1000希釈)では同程度の生細胞を示す蛍光強度であったが、NGF/SeV/ΔF, NGF/SeV/ΔF-GFP及びNGF/SeVの感染細胞培養上清を添加(1/1000希釈)することにより、顕著な蛍光強度の上昇が見られ生細胞数が多く生存維持活性を有していると判断された(図56)。そして、その値はELISAにより求めたNGF蛋白量の添加に匹敵する効果であった。同様のことが顕微鏡下で視覚的にも観察され、NGF/SeV/ΔF, NGF/SeV/ΔF-GFP及びNGF/SeVの感染細胞培養上清を添加することにより、生細胞数の増加と顕著な突起伸展が観察された(図57)。即ち、NGF搭載F欠失型SeVの感染によって発現されるNGFは活性型として発現していると確認された。
[実施例24]F発現細胞の詳細な解析
1)Adeno-Creのmoiと誘導時間
異なるAdeno-Creのmoiを使ってLLC-MK2/Fに感染させF蛋白の発現を誘導した後、蛋白の発現量と細胞の形態変化を調べた。
moi=1の場合に比べmoi=10の場合発現量が若干高かったが(図58)、誘導後6h、12h、24h、48h後の発現量を調べたところ、いずれも誘導後48時間目にF蛋白の発現量が高いことが分かった。
また、moi=1、3、10、30、100で細胞に感染して細胞の形態変化を経時的に観察したが、moi=10までに細胞間に顕著の差が認められなかったが、moi=30以上になると細胞傷害性が観察された(図59)。
2)継代数
LLC-MK2/Fに対してAdeno-Cre使ってF蛋白の発現を誘導してから7代まで継代して、細胞のFの発現量と細胞の形態を顕微鏡観察で調べた。一方、F蛋白の発現を誘導してから20代まで継代した細胞内F蛋白の存在状態をレーダー顕微鏡を用いて調べた。
レーザー顕微鏡観察においては、チャーンバーガラスにF蛋白の発現を誘導したLLC-MK2/F細胞を入れ、一晩培養した後、培地を取り除きPBSで一回洗浄してから、3.7%のFormalin-PBSで5分間固定した。その後、PBSで細胞を一回洗浄した後、0.1% Triton X100-PBSで5分間処理して、抗F蛋白モノクローナル抗体(γ-236)(100倍希釈)とFITC標識山羊抗ウサギIgG抗体(200倍)の順で細胞を処理して、最後にPBSで洗浄してレーザー顕微鏡をもって観察した。
その結果、7代目まで継代した細胞のF蛋白の発現量に差はなかった(図60)。形態的にも、そしてSeVの感染性と生産性にも顕著な差が観察されなかった。一方、20代目まで継代した細胞を免疫抗体法で細胞内のF蛋白の存在状況を調べたところ、15代まで大きな差がなかったが、それ以上継代した細胞内にF蛋白の局在化傾向が観察された(図61)。
以上の結果から、F欠失型SeVの生産には継代後15代目までの細胞が望ましいと判断される。
[実施例25]GFP-CIUと抗SeV-CIUとの相関関係
2種類の方法によるCIU(Cell-Infected Unit)の測定結果を相関関係を調べた。LLC-MK2細胞を2×105cells/dishで12well-plateに蒔き、24時間培養後、血清を含まないMEM培地で1回洗浄した後、SeV/ΔF-GFPを100μl/wellで感染した。15分後、血清を含まないMEM培地を1ml/well加え、さらに24時間培養した。培養後、PBS(-)で3回洗浄した後、細胞を乾燥させ(約10分〜15分室温放置)、細胞を固定するため、アセトンを1ml/well加え直ちに取り除き、再び乾燥させた(約10分〜15分室温放置)。PBS(-)で100倍希釈したウサギより調製された抗SeVポリクローナル抗体(DN-1)を300μl/well加え、37℃で45分間インキュベートした後、PBS(-)で3回洗浄し、PBS(-)で200倍希釈した抗ウサギIg(H+D)蛍光標識二次抗体(AlexTM568: Molecular Probes社製)を300μl/well加え、37℃で45分間インキュベートした。PBS(-)で3回洗浄した後、蛍光顕微鏡下(Emission: 560nm, Absorption: 645nmフィルター:ライカ社製)で蛍光を発する細胞を観察した。
対照としてSeV/ΔF-GFPを100μl/wellで感染し15分後、血清を含まないMEMを1ml/well加え、さらに24時間培養後、以後の操作を行わずに細胞を蛍光顕微鏡下(Emission: 360nm, Absorption: 470nmフィルター:ライカ社製)でGFP発現細胞を観察した。
両者の蛍光強度を定量化して関係を評価したところ、良好な相関を示した(図62)。
[実施例26]マルチクローニングサイトの作製
マルチクローニングサイトをSeVベクターに付加させた。方法は以下の二種類。
1)センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV18+のcDNAのゲノム中のいくつかの制限酵素サイトを壊し、つぶした制限酵素サイトを含む新たな制限酵素サイトを各遺伝子のスタートシグナルとATG翻訳開始シグナルの間に導入した。
2)すでに構築したSeVベクターcDNAにマルチクローニングサイト配列と転写開始シグナル-介在配列-終結シグナルを付加させてNotIサイトへ組み込む。
1)の場合、導入方法としてはまず、pSeV18+をEag Iで消化した断片(2644bp)、Cla Iで消化した断片(3246bp)、ClaI/Eco RIで消化した断片(5146bp)、及びEco RIで消化した断片(5010bp)をそれぞれアガロース電気泳動で分離、該当するバンドを切り出し、QIAEXII Gel Extraction System(QIAGEN社製)で回収・精製した。Eag Iで消化した断片はLITMUS38(NEW ENGLAND BIOLABS社製)、Cla Iで消化した断片、ClaI/Eco RIで消化した断片、及びEco RIで消化した断片はpBluescriptII KS+(STRATAGENE社製)にライゲーションし、サブクローニングした。続いて制限酵素サイトの破壊、導入にはQuickchange Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE社製)を使った。
制限酵素サイトの破壊にはSal I:(センス鎖)5'-ggagaagtctcaacaccgtccacccaagataatcgatcag-3'(配列番号:35)、(アンチセンス鎖)5'-ctgatcgattatcttgggtggacggtgttgagacttctcc-3'(配列番号:36)、Nhe I:(センス鎖)5'-gtatatgtgttcagttgagcttgctgtcggtctaaggc-3'(配列番号:37)、(アンチセンス鎖)5'-gccttagaccgacagcaagctcaactgaacacatatac-3'(配列番号:38)、Xho I:(センス鎖)5'-caatgaactctctagagaggctggagtcactaaagagttacctgg-3'(配列番号:39)、(アンチセンス鎖)5'-ccaggtaactctttagtgactccagcctctctagagagttcattg-3'(配列番号:40)、また制限酵素導入にはNP-P間:(センス鎖)5'-gtgaaagttcatccaccgatcggctcactcgaggccacacccaaccccaccg-3'(配列番号:41)、(アンチセンス鎖)5'-cggtggggttgggtgtggcctcgagtgagccgatcggtggataactttcac-3'(配列番号:42)、P-M間:(センス鎖)5'-cttagggtgaaagaaatttcagctagcacggcgcaatggcagatatc-3'(配列番号:43)、(アンチセンス鎖)5'-gatatctgccattgcgccgtgctagctgaaatttctttcaccctaag-3'(配列番号:44)、M-F間:(センス鎖)5'-cttagggataaagtcccttgtgcgcgcttggttgcaaaactctcccc-3'(配列番号:45)、(アンチセンス鎖)5'-ggggagagttttgcaaccaagcgcgcacaagggactttatccctaag-3'(配列番号:46)、F-HN間:(センス鎖)5'-ggtcgcgcggtactttagtcgacacctcaaacaagcacagatcatgg-3'(配列番号:47)、(アンチセンス鎖)5'-ccatgatctgtgcttgtttgacgtgtcgagtaaagtaccgcgcgacc-3'(配列番号:48)、HN-L間:(センス鎖)5'-cccagggtgaatgggaagggccggccaggtcatggatgggcaggagtcc-3'(配列番号:49)、(アンチセンス鎖)5'-ggactcctgcccatccatgacctggccggcccttcccattcaccctggg-3'(配列番号:50)をそれぞれ合成し反応に用いた。導入後、それぞれの断片を上記同様に回収・精製し、cDNAをアセンブリした。
2)の場合、(センス鎖)5'-ggccgcttaattaacggtttaaacgcgcgccaacagtgttgataagaaaaacttagggtgaaagttcatcac-3'(配列番号:51)、(アンチセンス鎖)5'-ggccgtgatgaactttcaccctaagtttttcttatcaacactgttggcgcgcgtttaaaccgttaattaagc-3'(配列番号:52)を合成し、それぞれの合成DNAをリン酸化し、85℃ 2分、65℃ 15分、37℃ 15分、室温15分でアニーリングさせ、SeV cDNAへ組み込む。あるいはpUC18またはpBluescriptII等のマルチクローニングサイトを終結シグナル-介在配列-開始シグナル含むプライマーでPCRしてサブクローニングし、これをSeV cDNAへ組み込む。できたcDNAでのウイルス再構成は上記の通り行う。
産業上の利用の可能性
少なくとも一つのエンベロープ遺伝子が欠損したパラミクソ科ウイルスに由来するRNPおよびそのベクターとしての利用が提供された。好ましい態様として、RNPとカチオン性化合物との複合体からなるベクターが提供された。これにより標的細胞に導入する際の抗原性や細胞傷害性の問題を回避することが可能である。
【配列表】
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Claims (19)

  1. (a)パラミクソウイルス科ウイルスに由来する(−)鎖一本鎖RNAであって、NPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質をコードする遺伝子を有しており、かつ該ウイルスの少なくとも一つのエンベロープタンパク質を発現しないように改変されているRNA、および(b)該(−)鎖一本鎖RNAによりコードされる、該RNAに結合するタンパク質、からなる複合体。
  2. RNA において、該エンベロープタンパク質をコードする遺伝子が欠失している、請求項1に記載の複合体。
  3. (−)鎖一本鎖RNAが、Fタンパク質、HNタンパク質、若しくはMタンパク質またはこれらの組み合わせを発現しないように改変されている、請求項1または2に記載の複合体。
  4. (−)鎖一本鎖RNAが、少なくともFタンパク質もしくはHNタンパク質を発現しないように改変されている、請求項に記載の複合体。
  5. (−)鎖一本鎖RNAが、少なくともFタンパク質およびHNタンパク質を発現しないように改変されている、請求項に記載の複合体。
  6. (−)鎖一本鎖RNAがセンダイウイルスに由来する、請求項1からのいずれかに記載の複合体。
  7. (−)鎖一本鎖RNAが、さらに外来遺伝子をコードしている、請求項1からのいずれかに記載の複合体。
  8. 請求項に記載の複合体およびカチオン性脂質を含む遺伝子導入用組成物。
  9. 請求項に記載の複合体およびカチオン性ポリマーを含む遺伝子導入用組成物。
  10. 請求項またはに記載の遺伝子導入用組成物を細胞に導入する工程を含む、該細胞内で外来遺伝子を発現させる方法。
  11. (a)パラミクソウイルス科ウイルスに由来する(−)鎖一本鎖RNAであって、NPタンパク質、Pタンパク質、およびLタンパク質をコードする遺伝子を有しており、かつ該ウイルスの少なくとも一つのエンベロープタンパク質を発現しないように改変されているRNA、および(b)該(−)鎖一本鎖RNAによりコードされる、該RNAに結合するタンパク質、からなる複合体の製造方法であって、
    (i)(i-1) NPタンパク質、(i-2) Pタンパク質、および (i-3) Lタンパク質、ならびに (i-4) 前記発現しないように改変されているエンベロープタンパク質または該RNAが由来するウイルス以外のエンベロープ蛋白質の存在下、該RNAまたはその相補鎖を転写させる工程、
    (ii)該複合体を回収する工程、を含む方法。
  12. RNA において、該エンベロープタンパク質をコードする遺伝子が欠失している、請求項11に記載の方法。
  13. 前記(i-4)に記載の蛋白質が、前記発現しないように改変されているエンベロープタンパク質である、請求項11に記載の方法。
  14. 前記(i-4)に記載の蛋白質が、水疱性口内炎ウイルスのG蛋白質である、請求項11に記載の方法。
  15. 該RNAにおいて、少なくともFタンパク質、HNタンパク質、若しくはMタンパク質またはこれらの組み合わせが発現しないように改変されている、請求項11に記載の方法。
  16. 該RNAにおいて、少なくともFタンパク質またはHNタンパク質が発現しないように改変されている、請求項15に記載の方法。
  17. 該RNAにおいて、少なくともFタンパク質およびHNタンパク質が発現しないように改変されている、請求項15に記載の方法。
  18. 該RNAがセンダイウイルスに由来する、請求項11から17のいずれかに記載の方法。
  19. 該RNAが、さらに外来遺伝子をコードしている、請求項11から18のいずれかに記載の方法。
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