JP2004344001A - 胚性幹細胞に遺伝子を導入する方法 - Google Patents

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京子 佐々木
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泰次 上田
Makoto Inoue
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Abstract

【課題】本発明は哺乳動物ES細胞に遺伝子を導入する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、パラミクソウイルスベクターとES細胞とを接触させる工程を含む、ES細胞に遺伝子を導入する方法を提供する。また本発明は、外来遺伝子が導入されたES細胞の製造方法であって、パラミクソウイルスベクターとES細胞とを接触させる工程を含む方法を提供する。また本発明は、この方法により製造された、外来遺伝子が導入されたES細胞およびその分化および/または増殖細胞および組織を提供する。本発明により、ES細胞への安定かつ効率的な遺伝子送達が可能となる。ES細胞への遺伝子導入は、発生学的研究、疾患研究、臨床応用、実験モデルなどに有用である。また、ES細胞から所望の分化細胞または分化組織を得るのに有用な、組織または細胞の特異的分化を行なうための遺伝子または試薬のアッセイおよびスクリーニングに有用である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、胚性幹細胞に遺伝子を導入する方法に関する。また本発明は、外来遺伝子が導入された胚性幹細胞の製造方法に関する。また本発明は、胚性幹細胞への遺伝子導入に用いるウイルスベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
胚性幹細胞(以下、ES細胞ともいう)とは、多分化能と自己複製能を有する未分化細胞である。また、ES細胞は損傷後の組織修復力を有することが示唆されている。このため、ES細胞は、各種疾患の治療用物質のスクリーニング、再生医療分野において有用であるとして、さかんに研究されている。特にサル由来のES細胞は、マウスのES細胞に比べてよりヒトに近縁であるため、ヒトの疾患のモデルに利用するにあたって好適であり、期待されている。
【0003】
将来、ES細胞をさまざまな疾患治療および損傷治療に応用していくには、ES細胞の遺伝子操作がきわめて重要になる。ES細胞の増殖能または分化能などの細胞特性または薬剤感受性などを変更するためには、ES細胞への遺伝子導入が必要になることが多い。細胞への遺伝子導入のためには、レトロウイルスベクターがよく用いられている。しかし、遺伝子導入に従来広く用いられているモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)に由来するレトロウイルスベクターは、マウスES細胞への遺伝子導入効率は低い上(数%程度)、その遺伝子発現は時間経過とともに減弱する。最近、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)由来のレトロウイルスベクターを用いてマウスES細胞への遺伝子導入効率の改善が図られたが(50%以上)、遺伝子発現が時間経過とともに減弱する問題は解決されていない(Cherry, S. R. et al. Mol. Cell Biol. 20:7419, 2000)。最近、ゲノムに組み込まれるもう一つのベクターであるレンチウイルスベクターを用いると、マウスES細胞にさらに効率よく(80%以上)遺伝子導入できることが示された(Hamaguchi, I. et al. J. Virol. 74:10778, 2000)。しかし、この報告では導入遺伝子発現の観察期間は数日から2週間程度と短く、導入遺伝子の長期発現についての記載はない。また、マウス以外のES細胞への効率的な遺伝子導入方法の開発も、未だ確立されていない。例えば、霊長類ES細胞への遺伝子導入はマウスES細胞への遺伝子導入に比べてさらに困難であると指摘されており、霊長類ES細胞への遺伝子導入効率は、たとえばMoMLVベクターでは1%前後、MSCVベクターでは、5〜10%前後と言われている(IMSUT Symposium for Stem Cell Biology, Tokyo, Japan 2000; Key Stone Sympoia, Pluripotent Stem Cells: Biology and Applications, Durango, Colorado, USA, 2001)。最近、VSV−Gでシュードタイプ化したサル免疫不全ウイルスが、サルES細胞に対して効率的に遺伝子を導入できることが報告されている(WO02/101057; Asano, T. et al., Mol, Ther, 6(2):162−8, 2002)。しかし、ゲノムに組み込まれるタイプのウイルスベクターは、挿入の際にゲノム上の遺伝子の破壊または活性化、および相同組み換えによる複製能を持ったウイルスの生成の危険が伴う。また、一度組み込まれたウイルスゲノムを染色体から除去するのは困難である。
【0004】
【特許文献1】
国際公開番号第WO02/101057号
【非特許文献1】
Cherry, S. R. et al. Mol. Cell Biol. 20:7419, 2000
【非特許文献2】
Hamaguchi, I. et al. J. Virol. 74:10778, 2000
【非特許文献3】
IMSUT Symposium for Stem Cell Biology, Tokyo, Japan 2000; Key Stone Sympoia, Pluripotent Stem Cells: Biology and Applications, Durango, Colorado, USA, 2001
【非特許文献4】
Asano, T. et al., Mol, Ther, 6(2):162, 2002
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、哺乳動物ES細胞に遺伝子を導入する方法を提供することを課題とする。また本発明は、外来遺伝子が導入された哺乳動物ES細胞の製造方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、哺乳動物ES細胞への遺伝子導入のためのウイルスベクターを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
ES細胞へ長期間安定して外来遺伝子を発現させる方法を開発するため、本発明者らはサルES細胞に対して種々の条件でベクターの導入を行い、導入遺伝子の発現を測定した。その結果、パラミクソウイルスベクターが、ES細胞に対して非常に高い遺伝子導入効率を示すことを見いだした。驚くべきことに、導入された遺伝子の発現は370日以上継代した後でも持続していた。また、ベクターを導入することによって、ES細胞の未分化状態が有意に影響されることはなく、未分化のまま培養することが可能であった。さらに、ベクターを導入したES細胞は多分化能を保持しており、分化誘導により軟骨、上皮細胞、腺細胞、神経細胞、および造血細胞などへ分化することができた。パラミクソウイルスベクターは、ES細胞への遺伝子導入のためのベクターとして好適に用いられる。
【0007】
ES細胞を指向した遺伝子治療は、様々な遺伝子疾患に対する治療の可能性を持っているが、これまでES細胞への安全で効率的な遺伝子導入方法が確立されていないことが大きな制約となっていた。パラミクソウイルスベクターは宿主ゲノムに組み込まれない点で安全性が高く、パラミクソウイルスベクターで遺伝子を導入した場合に、ウイルス除去薬剤で細胞からウイルスベクターを除去することも可能である。実施例に示すように、パラミクソウイルスベクターは、非常に単純な手順で、ES細胞に外来遺伝子を発現させることができ、さらに導入した遺伝子は長期間安定に発現が持続し、分化した組織においても発現が検出された。本発明により、ES細胞への効率的な遺伝子送達が可能となり、様々な遺伝子疾患に対する治療法および治療薬開発への適用が期待される。
【0008】
本発明は、ES細胞に遺伝子を導入する方法に関し、より具体的には、
(1)胚性幹細胞に遺伝子を導入する方法であって、該遺伝子を保持するパラミクソウイルスベクターと胚性幹細胞とを接触させる工程を含む方法、
(2)パラミクソウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、(1)に記載の方法、
(3)胚性幹細胞が霊長類胚性幹細胞である、(1)に記載の方法、
(4)外来遺伝子が導入された胚性幹細胞の製造方法であって、該遺伝子を保持するパラミクソウイルスベクターと胚性幹細胞とを接触させる工程を含む方法、
(5)パラミクソウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、(4)に記載の方法、
(6)胚性幹細胞が霊長類胚性幹細胞である、(4)に記載の方法、
(7)(4)に記載の方法により製造された、外来遺伝子が導入された胚性幹細胞、
(8)(7)に記載の胚性幹細胞を増殖および/または分化させた細胞、
(9)胚性幹細胞への遺伝子送達のために用いる、パラミクソウイルスベクター、
(10)パラミクソウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、(9)に記載のベクター、
(11)胚性幹細胞が霊長類胚性幹細胞である、(9)に記載のベクター、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、パラミクソウイルスベクターを用いるES細胞への遺伝子導入方法を提供する。この方法は、導入したい遺伝子を保持するパラミクソウイルスベクターを、哺乳動物ES細胞に接触させる工程を含む方法である。本発明者等は、パラミクソウイルスベクターが高い効率でES細胞へ遺伝子を導入できることを見出した。ES細胞は再生医学において様々な細胞および組織を作り出すために重要であり、本発明の方法はES細胞への所望の遺伝子の導入に好適に用いられ得る。遺伝子導入は培養液、生理食塩水、血液、体液など所望の生理的水溶液中で行うことができる。
【0010】
単純な手順により高い効率で遺伝子導入が達成できることは、ES細胞への遺伝子送達の重要な優位性の1つである。例えばレトロウイルスおよびレンチウイルスを介した遺伝子送達は、最適な遺伝子送達のためには遠心で濃縮する必要があるが、遠心操作はしばしばウイルスの力価を低下させる。また、高い効率で感染させるには毒性のある薬剤であるポリブレンを必要とする場合がある(Bunnell, B.A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 1995, 92: 7739−7743; Chuck, A.S., Hum. Gene Ther., 1996, 7: 743−750; Chinnasamy, D. et al., Blood 2000, 96: 1309−1316; Fehse, B. et al., Br. J. Haematol., 1998, 102: 566−574)。一方でパラミクソウイルスベクター溶液は特別な薬剤に助けられることなく、単に添加するだけでより優れた遺伝子送達を達成することができた。さらに、ES細胞へのセンダイウイルスベクター(SeV)を介する最適な遺伝子送達は、非常に短い暴露で行うことができた。臨床場面を考えると、パラミクソウイルスベクターを介した遺伝子送達のこれらの特徴は、ES細胞のex vivoおよびin vivoでの遺伝的改変を単純化し、操作に依存した細胞生存性の喪失および分化状態への影響を最小化し得るものである。
【0011】
MOI(ES細胞1つあたりの感染ウイルス数)は1〜500のES細胞とベクターとを接触させることが好ましく、より好ましくは2〜300、さらに好ましくは3〜200、さらに好ましくは10〜100(例えば10〜50、または10〜20)である。ベクターとES細胞との接触は例えば1分〜24時間、より特定すれば3分〜2時間、より特定すれば5分〜1時間である。さらに短い時間でも十分な感染効率を得ることが可能であり、例えば1〜45分程度、より特定すれば5分〜30分程度であってよい。もちろん、それ以上の時間接触させてもよく、例えば数日間またはそれ以上接触させてもよい。例えば、MOI 10(1つのES細胞あたり10 transduction units (TU) のベクター)で未分化ES細胞にパラミクソウイルスベクターを感染させた場合、ES細胞への遺伝子導入率は、例えば約20%またはそれ以上、約25%またはそれ以上、あるいは約30%またはそれ以上である。また例えば、MOI 50で未分化ES細胞にパラミクソウイルスベクターを感染させた場合、ES細胞への遺伝子導入率は、例えば約40%またはそれ以上、約45%またはそれ以上、あるいは約50%またはそれ以上である。本発明の方法の特徴の1つは、ES細胞へ遺伝子を導入した後、長期間にわたって導入遺伝子の発現が持続することである。本発明の方法により、ベクターをES細胞に感染させてから10日間以上、例えば20日間以上、30日以上、90日以上、180日以上、200日以上、250日以上、300日以上、350日以上、さらに1年以上にわたって、遺伝子導入したES細胞の例えば30%またはそれ以上、好ましくは40%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、より好ましくは60%またはそれ以上、より好ましくは70%またはそれ以上、より好ましくは80%またはそれ以上、より好ましくは90%またはそれ以上で導入遺伝子の発現を検出することができる。
【0012】
ES細胞とは、多分化能(pluripotency)を持つ樹立細胞株のことである。ES細胞の多分化能は、例えば免疫不全動物にその細胞を移植後、テラトーマが形成されることにより同定することができる。ES細胞をより具体的に特定すれば、胚盤胞腔中に注入した時に、その胚が発生した個体中の生殖細胞を含む細胞に分化できる細胞である。ES細胞は例えば線維芽細胞をフィーダー細胞として用い、LIFなどの添加により分化を抑制して無限に培養することができる。本発明において遺伝子導入の標的とするES細胞としてはその由来に制限はないが、げっ歯類および霊長類ES細胞が好適な対象である。
【0013】
高等霊長類は、以下の2グループに大別される:
(1)新世界霊長類(New World Primates)
マーモセット(Callithrix jacchus)が広く知られ、実験用霊長類の一つとして用いられている。新世界霊長類の発生は、胚および胎盤の構造が旧世界霊長類のものと異なる面もあるが、基本的には類似する。
(2)旧世界霊長頼(0ld World Primates)
旧世界霊長類はヒトに極めて近縁な霊長類である。アカゲザル(Macaca mulatta)およびカニクイザル(Macaca fascicularis)が知られている。ニホンザル(Macaca fuscata)はカニクイザルと同じ属(マカカ属)である。旧世界霊長類の発生は、ヒトの発生に酷似する。
【0014】
本発明に用いられる「サル」とは、霊長類、具体的には、新世界霊長類及び旧世界霊長類をいう。本発明のベクターによる遺伝子導入の対象となるサル由来のES細胞としては、例えばマーモセットES細胞(Thomson, J. A. et al., Biol. Reprod. 55, 254−259, (1996))、アカゲザルES細胞(Thomson, J. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92, 7844−7848,(1995))、カニクイザルES細胞などが挙げられる。旧世界霊長類は、ヒトに極めて近縁な霊長類であり、かつヒトの発生に類似しているので、ヒトに近い疾患モデルおよび種々の疾患治療剤のスクリーニング系として利用されることが期待される。したがって、本発明のベクターの導入対象としては、旧世界霊長類が特に望ましく、特にニホンザル、アカゲザル、カニクイザルなどのマカカ属のサル由来のES細胞が好ましい。
【0015】
霊長類からのES細胞の調製は、公知の方法に記載の方法に従ってまたは準じて行うことができる。例えば、胚盤胞期胚を発生させ、ここからES細胞を得ることができる〔例えば、WO96/22362参照〕。具体的には、例えば胚盤胞期胚より得られる内部細胞塊をフィーダー細胞上または白血球増殖抑制因子[LIF、分化阻害因子(DIF)とも表記される]中で培養することによりES細胞を樹立することができる。また、WO02/101057の記載に従ってサルES細胞を調製することもできる。
【0016】
フィーダー細胞としては、妊娠12日〜16日目のマウス胎児の線維芽細胞の初代培養細胞、マウスの胎児線維芽細胞株であるSTO細胞などをマイトマイシンCまたはX線処理して得られた細胞などが挙げられる。このようなマウス由来のフィーダー細胞は、大量に調製できる点で実験などに有利である。フィーダー細胞の作製は、例えば、後述の実施例に記載の方法などにより行なうことができる。フィーダー細胞は、例えばMEM培地(Minimum Essential Medium Eagle)を用いて、ゼラチンコートした培養容器に播種する。フィーダー細胞は、培養容器を隙間無く覆う程度まで播種すればよい。内部細胞塊は、フィーダー細胞が播種された培養容器中のMEM培地をES細胞培養用の培地(WO02/101057)に交換したフィーダー細胞上に播種する。
【0017】
本発明においてパラミクソウイルスベクターとは、パラミクソウイルスをベースとする感染力を持つウイルス粒子であって、遺伝子を細胞に導入するための担体である。ここで「感染力」とは、パラミクソウイルスベクターが細胞への接着能を保持しており、接着した細胞の内部にベクターに含まれる遺伝子を導入することのできる能力のことを言う。好ましい態様では、本発明のパラミクソウイルスベクターは、ベクターのゲノムRNA中に外来遺伝子が発現できるように組み込まれている。本発明のパラミクソウイルスベクターは、複製能を有していてもよく、複製能を有さない欠損型ベクターであってもよい。「複製能を有する」とは、ウイルスベクターが宿主細胞に感染した場合、該細胞においてウイルスが複製され、感染性ウイルス粒子が産生されることを指す。
【0018】
組み換えウイルスとは、組み換えポリヌクレオチドを介して生成したウイルス、またはそのウイルスの増幅産物を言う。組み換えポリヌクレオチドとは、その両端が自然の状態と同じようには配置されていないポリヌクレオチドを言う。具体的には、組み換えポリヌクレオチドは、人の手によってポリヌクレオチド鎖の結合が改変(切断および/または結合)されたポリヌクレオチドである。組み換えポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド合成、ヌクレアーゼ処理、リガーゼ処理等を組み合わせて、公知の遺伝子組み換え方法により生成させることができる。組み換えウイルスは、遺伝子操作により構築されたウイルスゲノムをコードするポリヌクレオチドを発現させ、ウイルスを再構築することによって生成することができる。例えば、組換えパラミクソウイルスは、cDNAから再構成して生成することができる(Y. Nagai, A. Kato, Microbiol. Immunol., 43, 613−624 (1999))。
【0019】
本発明において遺伝子とは遺伝物質を指し、転写単位をコードする核酸を言う。遺伝子はRNAであってもDNAであってもよい。本発明において蛋白質をコードする核酸は、該蛋白質の遺伝子と呼ぶ。また遺伝子は蛋白質をコードしていなくてもよく、例えば遺伝子はリボザイムまたはアンチセンスRNAなどの機能的RNAをコードするものであってもよい。遺伝子は天然由来または人為的に設計された配列であり得る。また、本発明において「DNA」とは、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAを含む。また蛋白質をコードするとは、ポリヌクレオチドが該蛋白質を適当な条件下で発現できるように、該蛋白質のアミノ酸配列をコードするORFをセンスまたはアンチセンスに含むことを言う。
【0020】
本発明においてパラミクソウイルスとはパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)に属するウイルスまたはその誘導体を指す。パラミクソウイルスは、非分節型ネガティブ鎖RNAをゲノムに持つウイルスのグループの1つで、パラミクソウイルス亜科(Paramyxovirinae)(レスピロウイルス属(パラミクソウイルス属とも言う)、ルブラウイルス属、およびモービリウイルス属を含む)およびニューモウイルス亜科(Pneumovirinae)(ニューモウイルス属およびメタニューモウイルス属を含む)ウイルスを含む。本発明を適用可能なパラミクソウイルスとしては、具体的にはセンダイウイルス(Sendai virus)、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)、おたふくかぜウイルス(Mumps virus)、麻疹ウイルス(Measles virus)、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)、牛疫ウイルス(rinderpest virus)、ジステンパーウイルス(distemper virus)、サルパラインフルエンザウイルス(SV5)、ヒトパラインフルエンザウイルス1, 2, 3型等が挙げられる。本発明のウイルスは、好ましくはパラミクソウイルス亜科に属するウイルスまたはその誘導体であり、より好ましくはレスピロウイルス属(genus Respirovirus)に属するウイルスまたはその誘導体である。本発明を適用可能なレスピロウイルス属ウイルスとしては、例えばヒトパラインフルエンザウイルス1型(HPIV−1)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型(HPIV−3)、ウシパラインフルエンザウイルス3型(BPIV−3)、センダイウイルス(Sendai virus; マウスパラインフルエンザウイルス1型とも呼ばれる)、およびサルパラインフルエンザウイルス10型(SPIV−10)などが含まれる。本発明においてパラミクソウイルスは、最も好ましくはセンダイウイルスである。これらのウイルスは、天然株、野生株、変異株、ラボ継代株、および人為的に構築された株などに由来してもよい。
【0021】
パラミクソウイルスベクターはゲノムRNAに搭載遺伝子をアンチセンスにコードしている。ゲノムRNAとは、パラミクソウイルスのウイルス蛋白質と共にRNPを形成し、該蛋白質によりゲノム中の遺伝子が発現し、このRNAが複製されて娘RNPが形成される機能を持つRNAである。一般にパラミクソウイルスのゲノムは、3’リーダー領域と5’トレイラー領域の間に、ウイルス遺伝子がアンチセンスとして並んだ構成をしている。各遺伝子のORFの間には、転写終結配列(E配列) − 介在配列(I配列) − 転写開始配列(S配列) が存在し、これにより各遺伝子のORFをコードするRNAが別々のシストロンとして転写される。
【0022】
パラミクソウイルスのウイルスタンパク質をコードする遺伝子としては、NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子が含まれる。「NP、P、M、F、HN、およびL遺伝子」とは、それぞれヌクレオキャプシド、ホスホ、マトリックス、フュージョン、ヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ、およびラージ蛋白質をコードする遺伝子のことを指す。パラミクソウイルス亜科に属する各ウイルスにおける各遺伝子は、一般に次のように表記される。一般に、NP遺伝子は「N遺伝子」と表記されることもある。
レスピロウイルス属 NP P/C/V M F HN − L
ルブラウイルス属 NP P/V M F HN (SH) L
モービリウイルス属 NP P/C/V M F H − L
【0023】
例えばセンダイウイルスの各遺伝子の塩基配列のデータベースのアクセッション番号は、NP遺伝子については M29343、M30202, M30203, M30204, M51331, M55565, M69046, X17218、P遺伝子については M30202, M30203, M30204, M55565, M69046, X00583, X17007, X17008、M遺伝子については D11446, K02742, M30202, M30203, M30204, M69046, U31956, X00584, X53056、F遺伝子については D00152, D11446, D17334, D17335, M30202, M30203, M30204, M69046, X00152, X02131、HN遺伝子については D26475, M12397, M30202, M30203, M30204, M69046, X00586, X02808, X56131、L遺伝子については D00053, M30202, M30203, M30204, M69040, X00587, X58886を参照のこと。
【0024】
これらのウイルス蛋白質をコードするORFおよび外来遺伝子のORFは、ゲノムRNAにおいて上記のE−I−S配列を介してアンチセンスに配置される。ゲノムRNAにおいて最も3’に近いORFは、3’リーダー領域と該ORFとの間にS配列のみが必要であり、EおよびI配列は必要ない。またゲノムRNAにおいて最も5’に近いORFは、5’トレイラー領域と該ORFとの間にE配列のみが必要であり、IおよびS配列は必要ない。また2つのORFは、例えばIRES等の配列を用いて同一シストロンとして転写させることも可能である。このような場合は、これら2つのORFの間にはE−I−S配列は必要ない。野生型のパラミクソウイルスの場合、典型的なRNAゲノムは、3’リーダー領域に続き、N、P、M、F、HN、およびL蛋白質をアンチセンスにコードする6つのORFが順に並んでおり、それに続いて5’トレイラー領域を他端に有する。本発明のゲノムRNAにおいては、ウイルス遺伝子の配置はこれに限定されるものではないが、好ましくは、野生型ウイルスと同様に、3’リーダー領域に続き、N、P、M、F、HN、およびL蛋白質をコードするORFが順に並び、それに続いて5’トレイラー領域が配置されることが好ましい。ある種のパラミクソウイルスにおいては、ウイルス遺伝子が異なっているが、そのような場合でも上記と同様に各ウイルス遺伝子を野生型と同様の配置とすることが好ましい。一般に N、P、およびL遺伝子を保持しているベクターは、細胞内で自律的にRNAゲノム上の遺伝子が発現し、ゲノムRNAが複製される。さらにFおよびHN遺伝子等のエンベロープ蛋白質をコードする遺伝子、およびM遺伝子の働きにより、感染性のウイルス粒子が形成され、細胞外に放出される。従って、このようなベクターは複製能を有するウイルスベクターとなる。ES細胞に導入したい外来遺伝子は、後述するように、このゲノム中の蛋白質非コード領域に挿入すればよい。
【0025】
また、本発明のパラミクソウイルスベクターは、野生型パラミクソウイルスが持つ遺伝子のいずれかを欠損したものであってよい。例えば、M、F、またはHN遺伝子、あるいはそれらの組み合わせが含まれていないパラミクソウイルスベクターも、本発明のパラミクソウイルスベクターとして好適に用いることができる。このようなウイルスベクターの再構成は、例えば、欠損している遺伝子産物を外来的に供給することにより行うことができる。このようにして製造されたウイルスベクターは、野生型ウイルスと同様に宿主細胞に接着して細胞融合を起こすが、細胞に導入されたベクターゲノムはウイルス遺伝子に欠損を有するため、最初と同じような感染力を持つ娘ウイルス粒子は形成されない。このため、一回限りの遺伝子導入力を持つ安全なウイルスベクターとして有用である。ゲノムから欠損させる遺伝子としては、例えばF遺伝子および/またはHN遺伝子が挙げられる。例えば、F遺伝子が欠損した組み換えパラミクソウイルスベクターゲノムを発現するプラスミドを、F蛋白質の発現ベクターならびにNP、P、およびL蛋白質の発現ベクターと共に宿主細胞にトランスフェクションすることにより、ウイルスベクターの再構成を行うことができる(WO00/70055 および WO00/70070; Li, H.−O. et al., J. Virol. 74(14) 6564−6569 (2000))。また、例えば、F遺伝子が染色体に組み込まれた宿主細胞を用いてウイルスを製造することもできる。これらの蛋白質群は、そのアミノ酸配列はウイルス由来の配列そのままでなくとも、核酸の導入における活性が天然型のそれと同等かそれ以上ならば、変異を導入したり、あるいは他のウイルスの相同遺伝子で代用してもよい。ゲノムには、ウイルスRNAの複製に必要な遺伝子群(N, P, およびL)が含まれているため、細胞内においてゲノムRNAは増幅され、細胞が分裂しても娘細胞にウイルスRNAが伝達される。これによりES細胞での持続的な発現が可能となる。
【0026】
また、本発明のウイルスベクターとして、ベクターゲノムが由来するウイルスのエンベロープ蛋白質とは異なる蛋白質をエンベロープに含むベクターを作製することもできる。例えば、ウイルス再構成の際に、ベクターのベースとなるウイルスのゲノムがコードするエンベロープ蛋白質以外のエンベロープ蛋白質を細胞で発現させることにより、所望のエンベロープ蛋白質を有するウイルスベクターを製造することができる。このような蛋白質に特に制限はない。例えば、他のウイルスのエンベロープ蛋白質、例えば水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus; VSV)のG蛋白質(VSV−G)を挙げることができる。VSV−G蛋白質は、任意のVSV株に由来するものであってよい。例えば Indiana血清型株(J. Virology 39: 519−528 (1981))由来のVSV−G蛋白を用いることができるが、これに限定されない。また本発明のベクターは、他のウイルス由来のエンベロープ蛋白質を任意に組み合わせて含むことができる。例えば、このような蛋白質として、ヒト細胞に感染するウイルスに由来するエンベロープ蛋白質が好適である。このような蛋白質としては、特に制限はないが、レトロウイルスのアンフォトロピックエンベロープ蛋白質などが挙げられる。レトロウイルスのアンフォトロピックエンベロープ蛋白質としては、例えばマウス白血病ウイルス(MuLV)4070A株由来のエンベロープ蛋白質を用い得る。また、MuMLV 10A1由来のエンベロープ蛋白質を用いることもできる(例えばpCL−10A1(Imgenex)(Naviaux, R. K. et al., J. Virol. 70: 5701−5705 (1996))。また、ヘルペスウイルス科の蛋白質としては、例えば単純ヘルペスウイルスのgB、gD、gH、gp85蛋白質、EBウイルスのgp350、gp220蛋白質などが挙げられる。ヘパドナウイルス科の蛋白質としては、B型肝炎ウイルスのS蛋白質などが挙げられる。このように本発明のウイルスベクターには、VSV−G蛋白質などのように、ゲノムが由来するウイルス以外のウイルスに由来するエンベロープ蛋白質を含むシュードタイプウイルスベクターが含まれる。ウイルスのゲノムRNAにはこれらのエンベロープ蛋白質をゲノムにコードされないように設計すれば、ウイルス粒子が細胞に感染した後は、ウイルスベクターからこの蛋白質が発現されることはない。
【0027】
また、本発明のウイルスベクターは、例えば、エンベロープ表面に特定の細胞に接着しうるような接着因子、リガンド、受容体等の蛋白質、抗体またはその断片、あるいはこれらの蛋白質を細胞外領域に有し、ウイルスエンベロープ由来のポリペプチドを細胞内領域に有するキメラ蛋白質などを含むものであってもよい。これにより、ベクターのES細胞への特異性を制御し得る。これらはウイルスゲノムにコードされていてもよいし、ウイルスベクターの再構成時に、ウイルスゲノム以外の遺伝子(例えば別の発現ベクターまたは宿主染色体上などにある遺伝子)の発現により供給されてもよい。
【0028】
また本発明のベクターは、例えばウイルス蛋白質による免疫原性を低下させるために、またはRNAの転写効率または複製効率を高めるために、ベクターに含まれる任意のウイルス遺伝子が野生型遺伝子から改変されていてよい。具体的には、例えばパラミクソウイルスベクターにおいては、複製因子であるN、P、およびL遺伝子の中の少なくとも一つを改変し、転写または複製の機能を高めることが考えられる。また、エンベロープ蛋白質の1つであるHN蛋白質は、赤血球凝集素であるヘマグルチニン(hemagglutinin)活性とノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性との両者の活性を有するが、例えば前者の活性を弱めることができれば、血液中でのウイルスの安定性を向上させることが可能であろうし、例えば後者の活性を改変することにより、感染能を調節することも可能である。また、F蛋白質を改変することにより膜融合能を調節することもできる。また、例えば、細胞表面の抗原分子となりうるF蛋白質および/またはHN蛋白質の抗原提示エピトープ等を解析し、これを利用してこれらの蛋白質に関する抗原提示能を弱めたウイルスベクターを作製することもできる。
【0029】
また本発明のベクターにおいては、アクセサリー遺伝子が欠損したものであってよい。例えばSeVのアクセサリー遺伝子の1つであるV遺伝子をノックアウトすることにより、培養細胞における遺伝子発現および複製は障害されることなく、マウス等の宿主に対するSeVの病原性が顕著に減少する(Kato, A. et al., 1997, J. Virol. 71:7266−7272; Kato, A. et al., 1997, EMBO J. 16:578−587; Curran, J. et al., WO01/04272, EP1067179)。このような弱毒化ベクターは、毒性のない遺伝子導入用ウイルスベクターとして特に有用である。
【0030】
パラミクソウイルスは遺伝子導入ベクターとして優れており、宿主細胞の細胞質でのみ転写・複製を行い、DNAフェーズを持たないため染色体への組み込み(integration)は起こらない(Lamb, R.A. and Kolakofsky, D., Paramyxoviridae: The viruses and their replication. In: Fields BN, Knipe DM, Howley PM, (eds). Fields of virology. Vol. 2. Lippincott − Raven Publishers: Philadelphia, 1996, pp. 1177−1204)。このため染色体異常による癌化および不死化などの安全面における問題が生じない。パラミクソウイルスのこの特徴は、ベクター化した時の安全性に大きく寄与している。異種遺伝子発現の結果では、例えばセンダイウイルス(SeV)を連続多代継代しても殆ど塩基の変異が認められず、ゲノムの安定性が高く、挿入異種遺伝子を長期間に渡って安定に発現する事が示されている(Yu, D. et al., Genes Cells 2, 457−466 (1997))。また、カプシド構造蛋白質を持たないことによる導入遺伝子のサイズまたはパッケージングの柔軟性(flexibility)など性質上のメリットがある。このように、パラミクソウイルスベクターは、ヒトの遺伝子治療のための高効率ベクターの新しいクラスとなることが示唆される。複製能を有するSeVベクターは、外来遺伝子を少なくとも4kbまで導入可能であり、転写ユニットを付加することによって2種類以上の遺伝子を同時に発現する事も可能である。
【0031】
またセンダイウイルスは、齧歯類にとっては病原性で肺炎を生じることが知られているが、人に対しては病原性がない。これはまた、野生型センダイウイルスの経鼻的投与によって非ヒト霊長類において重篤な有害作用を示さないというこれまでの報告によっても支持されている(Hurwitz, J.L. et al., Vaccine 15: 533−540, 1997)。センダイウイルスのこれらの特徴は、センダイウイルスベクターが、ヒトの治療へ応用できることを示唆し、センダイウイルスベクターが、ヒトを含む霊長類ES細胞を標的とした遺伝子治療の有望な選択肢の一つとなることを結論づけるものである。
【0032】
本発明のウイルスベクターは、ゲノムRNA中に外来遺伝子をコードし得る。外来遺伝子を含む組換えパラミクソウイルスベクターは、上記のパラミクソウイルスベクターゲノムに外来遺伝子を挿入することによって得られる。外来遺伝子としては、標的とするES細胞において発現させたい所望の遺伝子を用いることができる。外来遺伝子は天然型蛋白質をコードする遺伝子であってもよく、あるいは欠失、置換または挿入により天然型蛋白質を改変した蛋白質をコードする遺伝子であってもよい。外来遺伝子の挿入位置は、例えばウイルスゲノムの蛋白質非コード領域の所望の部位を選択することができ、例えばゲノムRNAの3’リーダー領域と3’端に最も近いウイルス蛋白質ORFとの間、各ウイルス蛋白質ORFの間、および/または5’端に最も近いウイルス蛋白質ORFと5’トレイラー領域の間に挿入することができる。また、FまたはHN遺伝子などを欠失するゲノムでは、その欠失領域に外来遺伝子をコードする核酸を挿入することができる。パラミクソウイルスに外来遺伝子を導入する場合は、ゲノムへの挿入断片のポリヌクレオチドの鎖長が6の倍数となるように挿入することが望ましい(Journal of Virology, Vol. 67, No. 8, 4822−4830, 1993)。挿入した外来遺伝子とウイルスORFとの間には、E−I−S配列が構成されるようにする。E−I−S配列を介して2またはそれ以上の遺伝子をタンデムに並べて挿入することができる。
【0033】
ベクターに搭載する外来遺伝子の発現レベルは、その遺伝子の上流(ネガティブ鎖の3’側)に付加する転写開始配列の種類により調節することができる(WO01/18223)。また、ゲノム上の外来遺伝子の挿入位置によって制御することができ、ネガティブ鎖の3’の近くに挿入するほど発現レベルが高く、5’の近くに挿入するほど発現レベルが低くなる。このように、外来遺伝子の挿入位置は、該遺伝子の所望の発現量を得るために、また前後のウイルス蛋白質をコードする遺伝子との組み合わせが最適となる様に適宜調節することができる。一般に、外来遺伝子の高い発現が得られることが有利と考えられるため、外来遺伝子は、効率の高い転写開始配列に連結し、ネガティブ鎖ゲノムの3’端近くに挿入することが好ましい。具体的には、3’リーダー領域と3’に最も近いウイルス蛋白質ORFとの間に挿入される。あるいは、3’に一番近いウイルス遺伝子と2番目の遺伝子のORFの間に挿入してもよい。野生型パラミクソウイルスにおいては、ゲノムの3’に最も近いウイルス蛋白質遺伝子はN遺伝子であり、2番目の遺伝子はP遺伝子である。逆に、導入遺伝子の高発現が望ましくない場合は、例えばベクターにおける外来遺伝子の挿入位置をネガティブ鎖のなるべく5’側に設定したり、転写開始配列を効率の低いものにするなどして、ウイルスベクターからの発現レベルを低く抑えることで適切な効果が得られるようにすることも可能である。
【0034】
本発明のベクターを製造するには、哺乳動物細胞においてパラミクソウイルスの成分であるRNPの再構成に必要なウイルス蛋白質、すなわちN、P、およびL蛋白質の存在下、パラミクソウイルスのゲノムRNAをコードするcDNAを転写させる。転写によりネガティブ鎖ゲノム(すなわちウイルスゲノムと同じアンチセンス鎖)を生成させてもよく、あるいはポジティブ鎖(ウイルス蛋白質をコードするセンス鎖)を生成させても、ウイルスRNPを再構成することができる。ベクターの再構成効率を高めるには、好ましくはポジティブ鎖を生成させる。RNA末端は、天然のウイルスゲノムと同様に3’リーダー配列と5’トレイラー配列の末端をなるべく正確に反映させることが好ましい。転写産物の5’端を正確に制御するためには、例えば転写開始部位としてT7 RNAポリメラーゼ認識配列を利用し、該RNAポリメラーゼを細胞内で発現させればよい。転写産物の3’端を制御するには、例えば転写産物の3’端に自己切断型リボザイムをコードさせておき、このリボザイムにより正確に3’端が切り出されるようにすることができる(Hasan, M. K. et al., J. Gen. Virol. 78: 2813−2820, 1997、Kato, A. et al., 1997, EMBO J. 16: 578−587 及び Yu, D. et al., 1997, Genes Cells 2: 457−466)。
【0035】
例えば外来遺伝子を有する組み換えセンダイウイルスベクターは、Hasan, M. K. et al., J. Gen. Virol. 78: 2813−2820, 1997、Kato, A. et al., 1997, EMBO J. 16: 578−587 及び Yu, D. et al., 1997, Genes Cells 2: 457−466の記載等に準じて、次のようにして構築することができる。
まず、目的の外来遺伝子のcDNA塩基配列を含むDNA試料を用意する。DNA試料は、25ng/μl以上の濃度で電気泳動的に単一のプラスミドと確認できることが好ましい。以下、NotI部位を利用してウイルスゲノムRNAをコードするDNAに外来遺伝子を挿入する場合を例にとって説明する。目的とするcDNA塩基配列の中にNotI認識部位が含まれる場合は、部位特異的変異導入法などを用いて、コードするアミノ酸配列を変化させないように塩基配列を改変し、NotI部位を予め除去しておくことが好ましい。この試料から目的の遺伝子断片をPCRにより増幅し回収する。2つのプライマーの5’部分にNotI部位を付加しておくことにより、増幅された断片の両端をNotI部位とする。ウイルスゲノム上に挿入された後の外来遺伝子のORFとその両側のウイルス遺伝子のORFとの間にE−I−S配列が配置されるように、プライマー中にE−I−S配列を含めるように設計する。
【0036】
例えば、フォワード側合成DNA配列は、NotIによる切断を保証するために 5’側に任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCGおよびGCCなどのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3’側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3’側にスペーサー配列として任意の9塩基または9に6の倍数を加えた数の塩基を付加し、さらにその3’側に所望のcDNAの開始コドンATGからこれを含めてORFの約25塩基相当の配列を付加した形態とする。最後の塩基はGまたはCとなるように該所望のcDNAから約25塩基を選択してフォワード側合成オリゴDNAの3’の末端とすることが好ましい。
【0037】
リバース側合成DNA配列は5’側から任意の2以上のヌクレオチド(好ましくはGCGおよびGCCなどのNotI認識部位由来の配列が含まれない4塩基、更に好ましくはACTT)を選択し、その3’側にNotI認識部位gcggccgcを付加し、さらにその3’側に長さを調節するための挿入断片のオリゴDNAを付加する。このオリゴDNAの長さは、最終的なPCR増幅産物のNotI断片の鎖長が6の倍数になるように塩基数を設計する(いわゆる「6のルール(rule of six)」; Kolakofski, D. et al., J. Virol. 72:891−899, 1998; Calain, P. and Roux, L., J. Virol. 67:4822−4830, 1993; Calain, P. and Roux, L., J. Virol. 67: 4822−4830, 1993)。このプライマーにE−I−S配列を付加する場合には、挿入断片のオリゴDNAの3’側にセンダイウイルスのS配列、I配列、およびE配列の相補鎖配列、好ましくはそれぞれ 5’−CTTTCACCCT−3’(配列番号:1)、5’−AAG−3’、および 5’−TTTTTCTTACTACGG−3’(配列番号:2)を付加し、さらにその3’側に所望のcDNA配列の終始コドンから逆に数えて約25塩基相当の相補鎖の最後の塩基がGまたはCになるように長さを選択して配列を付加し、リバース側合成DNAの3’の末端とする。
【0038】
PCRは、Taqポリメラーゼまたはその他のDNAポリメラーゼを用いる通常の方法を用いることができる。増幅した目的断片はNotIで消化した後、pBluescript等のプラスミドベクターのNotI部位に挿入する。得られたPCR産物の塩基配列をシークエンサーで確認し、正しい配列のプラスミドを選択する。このプラスミドから挿入断片をNotIで切り出し、ゲノムcDNAを含むプラスミドのNotI部位にクローニングする。またプラスミドベクターを介さずにゲノムcDNAのNotI部位に直接挿入し、組み換えセンダイウイルスcDNAを得ることも可能である。
【0039】
例えば、組み換えセンダイウイルスゲノムcDNAであれば、文献記載の方法に準じて構築することができる(Yu, D. et al., Genes Cells 2: 457−466, 1997; Hasan, M. K. et al., J. Gen. Virol. 78: 2813−2820, 1997)。例えば、NotI制限部位を有する18bpのスペーサー配列(5’−(G)−CGGCCGCAGATCTTCACG−3’)(配列番号:3)を、クローニングされたセンダイウイルスゲノムcDNA(pSeV(+))のリーダー配列とN蛋白質のORFとの間に挿入し、デルタ肝炎ウイルスのアンチゲノム鎖(antigenomic strand)由来の自己開裂リボザイム部位を含むプラスミドpSeV18b(+)を得る(Hasan, M. K. et al., 1997, J. General Virology 78: 2813−2820)。pSeV18b(+)のNotI部位に外来遺伝子断片を挿入し、所望の外来遺伝子が組み込まれた組み換えセンダイウイルスcDNAを得ることができる。
【0040】
このようにして作製した組み換えパラミクソウイルスのゲノムRNAをコードするDNAを、上記のウイルス蛋白質(L、P、およびN)存在下で細胞内で転写させることにより、本発明のベクターを再構成することができる。本発明は、本発明のベクターの製造のための、本発明のベクターのウイルスゲノムRNAをコードするDNAを提供する。また本発明は、本発明のベクターの製造に適用するための、該ベクターのゲノムRNAをコードするDNAの使用に関する。組み換えウイルスの再構成は公知の方法を利用して行うことができる(WO97/16539; WO97/16538; Durbin, A. P. et al., 1997, Virology 235: 323−332; Whelan, S. P. et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 8388−8392; Schnell. M. J. et al., 1994, EMBO J. 13: 4195−4203; Radecke, F. et al., 1995, EMBO J. 14: 5773−5784; Lawson, N. D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 4477−4481; Garcin, D. et al., 1995, EMBO J. 14: 6087−6094; Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569−579; Baron, M. D. and Barrett, T., 1997, J. Virol. 71: 1265−1271; Bridgen, A. and Elliott, R. M., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 15400−15404)。これらの方法により、パラインフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、リンダーペストウイルス、センダイウイルスなどを含むマイナス鎖RNAウイルスをDNAから再構成させることができる。これらの方法に準じて、本発明のベクターを再構成させることができる。ウイルスベクターDNAにおいて、F遺伝子、HN遺伝子、および/またはM遺伝子を欠失させた場合には、そのままでは感染性のウイルス粒子を形成しないが、宿主細胞に、これら欠失させた遺伝子および/または他のウイルスのエンベロープ蛋白質をコードする遺伝子などを別途、細胞に導入し発現させることにより、感染性のウイルス粒子を形成させることが可能である。
【0041】
具体的な手順は、(a)パラミクソウイルスゲノムRNA(ネガティブ鎖RNA)またはその相補鎖(ポジティブ鎖)をコードするcDNAを、N、P、およびL蛋白質を発現する細胞で転写させる工程、(b)生成したパラミクソウイルスを含む培養上清を回収する工程、により製造することができる。転写のために、ゲノムRNAをコードするDNAは適当なプロモーターの下流に連結される。転写されたゲノムRNAは N、L、およびP蛋白質の存在下で複製されRNP複合体を形成する。そして M、HN、およびF蛋白質の存在下でエンベロープに包まれたウイルス粒子が形成される。ゲノムRNAをコードするDNAは、例えばT7プロモーターの下流に連結させ、T7 RNA ポリメラーゼによりRNAに転写させる。プロモーターとしては、T7ポリメラーゼの認識配列を含むもの以外にも所望のプロモーターを利用することができる。あるいは、インビトロで転写させたRNAを細胞にトランスフェクトしてもよい。
【0042】
DNAからのゲノムRNAの最初の転写に必要なT7 RNAポリメラーゼ等の酵素は、これを発現するプラスミドまたはウイルスベクターの導入によって供給することができるし、または、例えば細胞の染色体にRNAポリメラーゼ遺伝子を、発現を誘導できるように組み込んでおき、ウイルス再構成時に発現を誘導することにより供給することもできる。またゲノムRNA、およびベクター再構成に必要なウイルス蛋白質は、例えばこれらを発現するプラスミドの導入によって供給する。これらのウイルス蛋白質の供給において、野生型またはある種の変異パラミクソウイルスなどのヘルパーウイルスを用いることもできるが、これらのウイルスの混入を招くため好ましくない。
【0043】
ゲノムRNAを発現するDNAを細胞内に導入する方法には、例えば次のような方法、▲1▼目的の細胞が取り込めるようなDNA沈殿物を作る方法、▲2▼目的の細胞による取りこみに適し、かつ細胞毒性の少ない陽電荷特性を持つDNAを含む複合体を作る方法、▲3▼目的の細胞膜に、DNA分子が通り抜けられるだけに十分な穴を電気パルスによって瞬間的に開ける方法などがある。
【0044】
▲2▼としては、種々のトランスフェクション試薬が利用できる。例えば、DOTMA(Roche)、Superfect(QIAGEN #301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Roche #1811169)などが挙げられる。▲1▼としては例えばリン酸カルシウムを用いたトランスフェクション法が挙げられ、この方法によって細胞内に入ったDNAは貧食小胞に取り込まれるが、核内にも十分な量のDNAが入ることが知られている(Graham, F. L. and Van Der Eb, J., 1973, Virology 52: 456; Wigler, M. and Silverstein, S., 1977, Cell 11: 223)。ChenおよびOkayamaはトランスファー技術の最適化を検討し、1) 細胞と共沈殿物のインキュベーション条件を 2〜4% CO 、35℃、15〜24時間、2) DNAは直鎖状より環状のものが活性が高く、3) 沈殿混液中のDNA濃度が 20〜30μg/mlのとき最適な沈殿が得られると報告している(Chen, C. and Okayama, H., 1987, Mol. Cell. Biol. 7: 2745)。▲2▼の方法は、一過的なトランスフェクションに適している。古くはDEAE−デキストラン(Sigma #D−9885 M.W. 5×10 )混液を所望のDNA濃度比で調製し、トランスフェクションを行う方法が知られている。複合体の多くはエンドソームの中で分解されてしまうため、効果を高めるためにクロロキンを加えることもできる(Calos, M. P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。▲3▼の方法は電気穿孔法と呼ばれる方法で、細胞選択性がないという点で▲1▼または▲2▼の方法に比べて汎用性が高い。効率はパルス電流の持続時間、パルスの形、電界(電極間のギャップ、電圧)の強さ、バッファーの導電率、DNA濃度、細胞密度の最適条件下で良いとされている。
【0045】
以上、3つのカテゴリーの中で▲2▼の方法は操作が簡便で多量の細胞を用いて多数の検体を検討することができるので、ベクター再構成のためのDNAの細胞への導入には、トランスフェクション試薬が適している。好適には Superfect Transfection Ragent(QIAGEN, Cat No. 301305)、または DOSPER Liposomal Transfection Reagent(Roche, Cat No. 1811169)が用いられるが、これらに制限されない。
【0046】
cDNAからのウイルスの再構成は具体的には例えば以下のようにして行うことができる。
24穴から6穴程度のプラスチックプレートまたは100mmペトリ皿等で、10%ウシ胎児血清(FCS)および抗生物質(100 units/ml ペニシリンGおよび100μg/ml ストレプトマイシン)を含む最少必須培地(MEM)を用いてサル腎臓由来細胞株LLC−MK2をほぼ100%コンフルエントになるまで培養し、例えば 1μg/ml psoralen(ソラレン)存在下、紫外線 (UV) 照射処理を20分処理で不活化した、T7 RNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルスvTF7−3(Fuerst, T. R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8122−8126,1986、Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569−579, 1996)を2 PFU/細胞で感染させる。ソラレンの添加量およびUV照射時間は適宜調整することができる。感染1時間後、2〜60μg、より好ましくは3〜20μgの組換えセンダイウイルスのゲノムRNAをコードするDNAを、ウイルスRNPの生成に必須なトランスに作用するウイルス蛋白質を発現するプラスミド(0.5〜24μgのpGEM−N、0.25〜12μgのpGEM−P、および0.5〜24μgのpGEM−L)(Kato, A. et al., Genes Cells 1: 569−579, 1996)と共にSuperfect(QIAGEN社)を用いたリポフェクション法等によりトランスフェクションする。N、P、およびLをコードする発現ベクターの量比は例えば 2:1:2 とすることが好ましく、プラスミド量は、例えば1〜4μgのpGEM−N、0.5〜2μgのpGEM−P、および1〜4μgのpGEM−L程度で適宜調整する。
【0047】
トランスフェクションを行った細胞は、所望により100μg/mlのリファンピシン(Sigma)及びシトシンアラビノシド(AraC)、より好ましくは40μg/mlのシトシンアラビノシド(AraC)(Sigma)のみを含む血清不含のMEMで培養し、ワクシニアウイルスによる細胞毒性を最少にとどめ、ウイルスの回収率を最大にするように薬剤の最適濃度を設定する(Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569−579)。トランスフェクションから48〜72時間程度培養後、細胞を回収し、凍結融解を3回繰り返して細胞を破砕した後、RNPを含む破砕物をLLC−MK2細胞に再度トランスフェクションして培養する。または、培養上清を回収し、LLC−MK2細胞の培養液に添加して感染させ培養する。トランスフェクションは、例えばリポフェクトアミンまたはポリカチオニックリポソームなどと共に複合体を形成させて細胞に導入することが可能である。具体的には、種々のトランスフェクション試薬が利用できる。例えば、DOTMA(Roche)、Superfect(QIAGEN #301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Roche #1811169)などが挙げられる。エンドソーム中での分解を防ぐため、クロロキンを加えることもできる(Calos, M. P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。RNPが導入された細胞では、RNPからのウイルス遺伝子の発現およびRNPの複製の過程が進行しベクターが増幅する。得られたウイルス溶液を希釈(例えば10 倍)して再増幅を繰り返すことにより、ワクシニアウイルスvTF7−3は完全に除去することができる。再増幅は、例えば3回以上繰り返す。得られたベクターは−80℃で保存することができる。エンベロープ蛋白質をコードする遺伝子を欠損した複製能を持たないウイルスベクターを再構成させるには、エンベロープ蛋白質を発現するLLC−MK2細胞をトランスフェクションに使用するか、またはエンベロープ発現プラスミドを共にトランスフェクションすればよい。また、トランスフェクションを行った細胞にエンベロープ蛋白質を発現するLLC−MK2細胞を重層して培養することによって欠損型ウイルスベクターを増幅することもできる(国際公開番号 WO00/70055 および WO00/70070参照)。
【0048】
回収されたウイルスの力価は、例えばCIU(Cell−Infected Unit)測定または赤血球凝集活性(HA)の測定することにより決定することができる(WO00/70070; Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569−579; Yonemitsu, Y. & Kaneda, Y., Hemaggulutinating virus of Japan−liposome−mediated gene delivery to vascular cells. Ed. by Baker AH. Molecular Biology of Vascular Diseases. Method in Molecular Medicine: Humana Press: pp. 295−306, 1999)。また、GFP(緑色蛍光蛋白質)などのマーカー遺伝子を搭載したベクターについては、マーカーを指標に直接的に感染細胞をカウントすることにより力価を定量することができる(例えばGFP−CIUとして)。このようにして測定した力価は、CIUと同等に扱うことができる(WO00/70070)。
【0049】
ウイルスベクターが再構成する限り、再構成に用いる宿主細胞は特に制限されない。例えば、センダイウイルスベクター等の再構成においては、サル腎由来のLLCMK2細胞およびCV−1細胞、ハムスター腎由来のBHK細胞などの培養細胞、ヒト由来細胞等を使うことができる。これらの細胞に適当なエンベロープ蛋白質を発現させることで、そのエンベロープを有する感染性ウイルス粒子を得ることもできる。また、大量にセンダイウイルスベクターを得るために、上記の宿主から得られたウイルスベクターを発育鶏卵に感染させ、該ベクターを増幅することができる。鶏卵を使ったウイルスベクターの製造方法は既に開発されている(中西ら編,(1993),「神経科学研究の先端技術プロトコールIII, 分子神経細胞生理学」,厚生社, 大阪, pp.153−172)。具体的には、例えば、受精卵を培養器に入れ9〜12日間 37〜38℃で培養し、胚を成長させる。ウイルスベクターを尿膜腔へ接種し、数日間(例えば3日間)卵を培養してウイルスベクターを増殖させる。培養期間等の条件は、使用する組み換えセンダイウイルスにより変わり得る。その後、ウイルスを含んだ尿液を回収する。尿液からのセンダイウイルスベクターの分離・精製は常法に従って行うことができる(田代眞人,「ウイルス実験プロトコール」, 永井、石浜監修, メジカルビュー社, pp.68−73,(1995))。
【0050】
例えば、F遺伝子を欠失したセンダイウイルスベクターの構築と調製は、以下のように行うことができる(WO00/70055 および WO00/70070参照)。
<1> F欠失型センダイウイルスゲノムcDNAおよびF発現プラスミドの構築
センダイウイルス(SeV)全長ゲノムcDNA、pSeV18 b(+)(Hasan, M. K. et al., 1997, J. General Virology 78: 2813−2820)(「pSeV18 b(+)」は「pSeV18」ともいう)のcDNAをSphI/KpnIで消化してフラグメント(14673bp)を回収し、pUC18にクローニングしてプラスミドpUC18/KSとする。F欠損部位の構築はこのpUC18/KS上で行う。F遺伝子の欠損は、PCR−ライゲーション方法の組み合わせで行い、結果としてF遺伝子のORF(ATG−TGA=1698bp)を除いて例えばatgcatgccggcagatga(配列番号:4)で連結し、F欠失型SeVゲノムcDNA(pSeV18/ΔF)を構築する。PCRは、Fの上流には[forward: 5’−gttgagtactgcaagagc/配列番号:5, reverse: 5’−tttgccggcatgcatgtttcccaaggggagagttttgcaacc/配列番号:6]、F遺伝子の下流には[forward: 5’−atgcatgccggcagatga/配列番号:7, reverse: 5’−tgggtgaatgagagaatcagc/配列番号:8]のプライマー対を用いたPCRの産物をEcoT22Iで連結する。このように得られたプラスミドをSacIとSalIで消化して、F欠損部位を含む領域の断片(4931bp)を回収してpUC18にクローニングし、pUC18/dFSSとする。このpUC18/dFSSをDraIIIで消化して、断片を回収してpSeV18のF遺伝子を含む領域のDraIII断片と置き換え、ライゲーションしてプラスミドpSeV18/ΔF を得る。
外来遺伝子は、例えばpUC18/dFSSのF欠失部位にある制限酵素 NsiI および NgoMIV 部位に挿入する。このためには、例えば外来遺伝子断片を、NsiI−tailedプライマーおよびNgoMIV−tailedプライマーで増幅すればよい。
【0051】
<2> SeV−F蛋白を誘導発現するヘルパー細胞の作製
センダイウイルスのF遺伝子(SeV−F)を発現するCre/loxP誘導型発現プラスミドの構築はSeV−F遺伝子をPCRで増幅し、Cre DNAリコンビナーゼにより遺伝子産物が誘導発現されるように設計されたプラスミドpCALNdlw(Arai, T. et al., J. Virology 72, 1998, p1115−1121)のユニークサイト SwaI部位に挿入し、プラスミドpCALNdLw/Fを構築する。
F欠損ゲノムから感染ウイルス粒子を回収するため、SeV−F蛋白を発現するヘルパー細胞株を樹立する。細胞は、例えばSeVの増殖によく用いられているサル腎臓由来細胞株LLC−MK2細胞を用いることができる。LLC−MK2細胞は、10%の熱処理した不動化ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリンGナトリウム 50単位/ml、およびストレプトマイシン 50μg/mlを添加したMEMで37℃、5% COで培養する。SeV−F遺伝子産物は細胞傷害性を有するため、Cre DNAリコンビナーゼによりF遺伝子産物を誘導発現されるように設計された上記プラスミドpCALNdLw/Fを、リン酸カルシウム法(mammalian transfection kit (Stratagene))により、周知のプロトコールに従ってLLC−MK2細胞に遺伝子導入を行う。
10cmプレートを用い、40%コンフルエントまで生育したLLC−MK2細胞に10μgのプラスミドpCALNdLw/Fを導入後、10mlの10% FBSを含むMEM培地にて、37℃の5%CO インキュベーター中で24時間培養する。24時間後に細胞をはがし、10ml培地に懸濁後、10cmシャーレ5枚を用い、5ml 1枚、2ml 2枚、0.2ml 2枚に蒔き、G418 (GIBCO−BRL)を1200μg/mlを含む10mlの10%FBSを含むMEM培地にて培養を行い、2日毎に培地交換しながら、14日間培養し、遺伝子の安定導入株の選択を行う。該培地により生育してきたG418に耐性を示す細胞はクローニングリングを用いて回収する。回収した各クローンは10cmプレートでコンフルエントになるまで拡大培養を続ける。
F蛋白質の発現誘導は、細胞を6cmシャーレにてコンフルエントまで生育させた後、アデノウイルスAxCANCreを斉藤らの方法(Saito et al., Nucl. Acids Res. 23: 3816−3821 (1995); Arai, T.et al., J. Virol 72,1115−1121 (1998))により例えば moi=3 で感染させて行う。
【0052】
<3> F欠失SeVウイルスの再構築及び増幅
上記 pSeV18/ΔF の外来遺伝子が挿入されたプラスミドを以下のようにしてLLC−MK2細胞にトランスフェクションする。LLC−MK2 細胞を5×10cells/dish で100mmのシャーレに播く。T7 RNAポリメラーゼによりゲノムRNAの転写を行わせる場合には、細胞培養24時間後、ソラレン(psoralen)と長波長紫外線(365nm)で 20 分間処理したT7 RNAポリメラーゼを発現するリコンビナントワクシニアウイルス(PLWUV−VacT7:Fuerst, T.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 8122−8126 (1986))をMOI 2程度で室温で1時間感染させる。ワクシニアウイルスへの紫外線照射には、例えば15ワットバルブを5本が装備された UV Stratalinker 2400(カタログ番号 400676 (100V), ストラタジーン社, La Jolla, CA, USA)を用いることができる。細胞を無血清のMEMで洗浄した後、ゲノムRNAを発現するプラスミド、およびパラミクソウイルスのそれぞれN、P、L、F、およびHN蛋白質を発現する発現プラスミドを、適当なリポフェクション試薬を用いてこの細胞にトランスフェクトする。プラスミドの量比は、これに限定されないが、好適には順に 6:2:1:2:2:2 とすることができる。例えば、ゲノムRNAを発現するプラスミド、並びにN、P、L、および FプラスHN蛋白質を発現する発現プラスミド(pGEM/NP,pGEM/P,pGEM/L及びpGEM/F−HN; WO00/70070, Kato, A. et al., Genes Cells 1, 569−579 (1996))を、それぞれ12μg, 4μg, 2μg, 4μg及び4μg/dishの量比トランスフェクトする。数時間培養後、血清を含まないMEMで細胞を2回洗浄し、40μg/mLの Cytosine β−D−arabinofuranoside (AraC:Sigma, St.Louis, MO)及び7.5μg/mLのTrypsin(Gibco−BRL, Rockville, MD)を含むMEMで培養する。これらの細胞を回収し、ペレットをOptiMEM に懸濁する(10 cells/ml)。凍結融解を3回繰り返してlipofection reagent DOSPER (Boehringer mannheim)と混合し(10cells/25μl DOSPER)室温で15分放置した後、上記でクローニングしたF発現ヘルパー細胞にトランスフェクション(10cells /well 12−well−plate)し、血清を含まないMEM(40μg/ml AraC, 7.5μg/ml トリプシンを含む)で培養し、上清を回収する。F以外の遺伝子、例えばHNまたはM遺伝子を欠損したウイルスも、これと同様の方法で調製することができる。
【0053】
ウイルス遺伝子欠損型ベクターを調製する場合、例えば、ベクターに含まれるウイルスゲノム上で欠損しているウイルス遺伝子が異なる2種またはそれ以上のベクターを同じ細胞に導入すれば、それぞれで欠損するウイルス蛋白質が、他のベクターからの発現により供給されるため、互いに相補しあって感染力のあるウイルス粒子が形成され、複製サイクルがまわりウイルスベクターが増幅される。すなわち、2種またはそれ以上の本発明のベクターを、ウイルス蛋白質を相補する組み合わせで接種すれば、それぞれのウイルス遺伝子欠損型ウイルスベクターの混合物を大量かつ低コストで生産することができる。これらのウイルスは、ウイルス遺伝子が欠損しているため、ウイルス遺伝子を欠損していないウイルスに比べゲノムサイズが小さくなりサイズの大きい外来遺伝子を保持することができる。また、ウイルス遺伝子の欠損により増殖性がないこれらのウイルスは細胞外で希釈され共感染の維持が困難であることから、不稔化するため、環境放出管理上の利点がある。
【0054】
本発明のパラミクソウイルスにより導入する外来遺伝子としては、特に制限はないが、天然の蛋白質としては、例えばホルモン、サイトカイン、増殖因子、受容体、細胞内シグナル分子、酵素、ペプチドなどが挙げられる。蛋白質は分泌蛋白質、膜蛋白質、細胞質蛋白質、核蛋白質などであり得る。人工的な蛋白質としては、例えば、キメラ毒素などの融合蛋白質、ドミナントネガティブ蛋白質(受容体の可溶性分子または膜結合型ドミナントネガティブ受容体を含む)、欠失型の細胞接着分子および細胞表面分子などが挙げられる。また、分泌シグナル、膜局在化シグナル、または核移行シグナル等を付加した蛋白質であってもよい。導入遺伝子としてアンチセンスRNA分子またはRNA切断型リボザイムなどを発現させて、特定の遺伝子の機能を抑制することもできる。また、外来遺伝子としては、遺伝子の導入効率または発現安定性等を評価するためのマーカー遺伝子であってもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、グリーン蛍光蛋白質(以下、GFPともいう)、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどをコードする遺伝子が挙げられる。
【0055】
本明細書に記載したウイルス製造方法に従えば、本発明のウイルスベクターは、例えば 1×10 CIU/mL以上、好ましくは 1×10 CIU/mL以上、より好ましくは 5×10 CIU/mL以上、より好ましくは 1×10 CIU/mL以上、より好ましくは 5×10 CIU/mL以上、より好ましくは 1×10 CIU/mL以上、より好ましくは 5×10 CIU/mL以上の力価でウイルス産生細胞の細胞外液中に放出させることが可能である。ウイルスの力価は、本明細書および他に記載の方法により測定することができる(Kiyotani, K. et al., Virology 177(1), 65−74 (1990); WO00/70070)。
【0056】
回収したパラミクソウイルスベクターは実質的に純粋になるよう精製することができる。精製方法はフィルトレーション(濾過)、遠心分離、およびカラム精製等を含む公知の精製・分離方法またはその組み合わせにより行うことができる。「実質的に純粋」とは、ウイルスベクターが、それが存在する試料中の成分として主要な割合を占めることを言う。典型的には、実質的に純粋なウイルスベクターは、試料中に含まれる全蛋白質(但しキャリアーまたは安定剤として加えた蛋白質は除く)のうち、ウイルスベクター由来の蛋白質の割合が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上を占めることにより確認することができる。パラミクソウイルスの具体的な精製方法としては、例えばセルロース硫酸エステルまたは架橋ポリサッカライド硫酸エステルを用いる方法(特公昭62−30752号公報、特公昭62−33879号公報、および特公昭62−30753号公報)、およびフコース硫酸含有多糖および/またはその分解物に吸着させる方法(WO97/32010)等を例示することができる。
【0057】
ベクターを含む組成物の製造においては、ベクターは必要に応じて薬理学的に許容される所望の担体または媒体と組み合わせることができる。「薬学的に許容される担体または媒体」とは、ベクターと共に投与することが可能であり、ベクターによる遺伝子導入を有意に阻害しない材料である。例えばベクターを生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または培養液などで適宜希釈して組成物とすることができる。ベクターを鶏卵で増殖させた場合等においては尿液を含んでよい。またベクターを含む組成物は、脱イオン水、5%デキストロース水溶液等の担体または媒体を含んでいてもよい。さらに、その他にも、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、殺生物剤等が含有されていてもよい。また保存剤およびその他の添加剤を添加することができる。本発明のベクターを含む組成物は、ES細胞に遺伝子を導入するための試薬として、さらにES細胞を標的とする遺伝子治療に用いる医薬として有用である。
【0058】
また本発明は、本発明のベクターが導入されたES細胞、および該細胞の増殖および/または分化により生成した細胞に関する。ES細胞の分化の誘導は、例えばサイトカインなどの公知の分化・増殖因子、細胞外マトリクスなどの基質の添加、他の細胞との共培養、個体への移入などにより行うことができる(丹羽仁史「ES細胞の分化運命決定機構」蛋白質核酸酵素 45: 2047−2055, 2000; Rathjen, P. D. et al., Reprod. Fertil. Dev. 10: 31−47, 1998)。また、テラトーマ(分化多能性腫瘍)を形成させれば、様々な分化細胞および組織を得ることもできる。テラトーマとは内胚葉、中胚葉、および外胚葉の三胚葉由来の細胞または組織を含む組織塊であり、例えばES細胞を免疫不全動物の皮下などに移植して形成させることができる。
【0059】
例えば、胚体外組織起源の細胞種の分化誘導は以下のような方法で行うことができる:
Figure 2004344001
Figure 2004344001
【0060】
本発明は、例えば本発明のベクターを導入したES細胞から分化させた軟骨、上皮(腸管上皮など)、皮膚、皮脂腺などの腺組織を提供する。また本発明は、本発明のベクターを導入したES細胞から分化させた神経細胞を提供する。例えば本発明のベクターを導入したES細胞から、Map2 (microtuble associated protein 2) 陽性細胞、およびTUJ1 (class III tubulin) 陽性細胞を分化させることができる。また本発明は、本発明のベクターを導入したES細胞から分化させた造血細胞を提供する。例えば本発明のベクターを導入したES細胞から、単球および顆粒球(NBT還元活性を持つ細胞)を分化させることができる。
【0061】
本発明のベクターにより遺伝子導入したES細胞、および該ES細胞から分化させた細胞、組織、臓器等は、各種薬剤のアッセイおよびスクリーニングに有用である。例えば哺乳動物ES細胞への遺伝子導入を通して、組織または細胞、特に好ましくは霊長類由来の組織または細胞の特異的分化を行なうための遺伝子または薬剤等の効果を評価したり、スクリーニングすることができる。本発明には、組織または細胞の特異的分化を行なうための遺伝子または薬剤のスクリーニング方法を提供する。本発明は、ES細胞の増殖または分化に対する遺伝子発現の効果を検出する方法であって、(a)本発明のベクターとES細胞とを接触させる工程、(b)該ES細胞の増殖または分化を検出する工程、を含む方法を提供する。ベクターのES細胞への導入は、本発明のベクターを目的のES細胞に接触させる工程により実施することができる。ES細胞の増殖は、細胞数の計数またはMTTアッセイなどのミトコンドリア活性の測定などの公知の方法により検出することができる。またES細胞の分化は、公知の分化マーカー遺伝子の発現の検出、あるいは細胞または組織等の形態学的または生化学的測定などにより検出することができる(丹羽仁史「ES細胞の分化運命決定機構」蛋白質核酸酵素 45: 2047−2055, 2000; Rathjen, P. D. et al., Reprod. Fertil. Dev. 10: 31−47, 1998)。導入ベクターには、効果を検出したい所望の外来遺伝子保持させることができる。また、例えば陰性対照などとして、ES細胞へのベクター自身の導入による効果を検出する場合においては、外来遺伝子を含まないベクターを用いることができる。上記の検出方法を用いて、ES細胞の増殖または分化に影響を与え得る遺伝子を評価したりスクリーニングすることが可能である。スクリーニングは、上記の検出方法の工程(a)および(b)に続いて、(c)該ES細胞の増殖または分化を調節する活性を有する導入遺伝子を選択する工程、を含む方法により実施することができる。このようなスクリーニング方法も、上記本発明の遺伝子導入の効果を検出する方法に含まれる。
【0062】
このような方法を用いたスクリーニングの一例として、ES細胞から機能細胞を分化させる遺伝子のスクリーニングを挙げることができる。
例えばES細胞から膵臓β細胞を分化させる際において、遺伝子A、B、C、D、Eのうちどれが必要か、どの組み合わせがもっともふさわしいか、また、どの順番で遺伝子導入するのがもっとも適切かを調べる際には、これらの遺伝子をES細胞に効率良くしかも簡単に導入する技術が有用である。本ベクターはその要求を満たす。例えば、遺伝子A、B、C、D、Eを発現する本発明のベクターを構築し、これを種々の組み合わせおよび順序でES細胞またはその分化細胞に導入する。遺伝子が導入された細胞の分化を検出することにより、遺伝子導入の効果を知ることができる。
【0063】
また、例えばある遺伝子を体内に投与する遺伝子治療における副作用の予見に本発明のベクターを利用することも有用である。
遺伝子Xの各臓器および組織への毒性および副作用は、マウスまたはサル個体への投与実験である程度は把握できる。しかし遺伝子Xが各組織幹細胞へいかなる影響を及ぼしうるかは今までの方法では検出できない。この遺伝子Xはある特定の組織幹細胞から機能細胞への分化を障害する可能性がある。例えば、肝臓幹細胞の分化を障害する場合は、肝炎に罹患した時または肝臓切除術を施行された時に、初めてその障害が明らかになる。すなわち遺伝子Xによって肝臓幹細胞の分化が障害され、必要な時に肝臓の再生が進まないという深刻な事態が起こりうる。こうした問題は通常の動物実験では必ずしも予見できない。本ベクターを用いれば、きわめて効率良く遺伝子XをES細胞へ導入でき、この遺伝子導入ES細胞をさまざまな組織幹細胞に分化させ、さらに機能細胞まで分化させることによって、遺伝子Xの安全性をさまざまな分化段階で検出できるようになる。
【0064】
本発明のベクターを利用したアッセイおよびスクリーニングは、哺乳動物、特にヒトおよびサルを含む霊長類における発生学的研究、疾患研究、臨床応用、実験モデルなどに有用であり、かつ所望の分化細胞または分化組織を得るのに有用な遺伝子および試薬をスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。
上記のスクリーニング法において、ES細胞から所望の組織または細胞への特異的分化は、例えば、所望の組織または細胞に特異的なマーカーの発現を指標として評価されうる。前記所望の組織または細胞に特異的なマーカーとしては、組織または細胞特異的抗原が挙げられ、例えば、神経系前駆細胞のマーカーとしては、中間径フィラメントであるネスチンなどが挙げられる。このような特異的マーカーは、該マーカーに対する抗体を用い、慣用のELISA、免疫染色等により検出してもよく、該マーカーをコードする核酸を用い、慣用のRT−PCR、DNAアレイハイブリダイゼーション等により検出してもよい。なお、「核酸」とは、ゲノムDNA、RNA、mRNA又はcDNAなどを意味する。本スクリーニング法により得られた遺伝子および試薬は本発明の範囲に包含される。
【0065】
また、本発明のベクターが導入されたES細胞、および該ES細胞から分化した分化細胞または分化組織も本発明の範囲に含まれる。分化細胞及び分化組織は、前記組織又は細胞に特異的なマーカーの発現、形態学的特徴の観察により同定することができる。
本発明のウイルスベクターは、様々な遺伝性疾患の遺伝子治療にも応用が可能である。対象となる疾患は特に制限されない。例えば、対象となり得る疾患とその単一原因遺伝子としては、ゴーシェ病においてはβ−セレブロシダーゼ(第20染色体)、血友病においては血液凝固第8因子(X染色体)および血液凝固第9因子(X染色体)、アデノシンデアミナーゼ欠損症においてはアデノシンデアミナーゼ、フェニルケトン尿症においてはフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(第12染色体)、Duchenne型筋ジストロフィーにおいてはジストロフィン(X染色体)、家族性高コレステロール血症においてはLDLレセプター(第19染色体)、嚢ほう性繊維症においてはCFTR遺伝子の染色体への組み込み等が挙げられる。それら以外の複数の遺伝子が関与していると思われている対象疾患としては、アルツハイマー、パーキンソン病等の神経変性疾患、虚血性脳障害、痴呆、またエイズ等の難治性の感染症等が考えられる。
【0066】
また、遺伝子導入したES細胞から分化させた細胞、組織、臓器を疾患治療のために用いることも考えられる。例えば、遺伝子の欠損または不足によって発症する疾患に対して、ES細胞の染色体に当該遺伝子を導入し、これを体内に移植することによって欠損する遺伝子を補い、所望の細胞または組織を再生させることが考えられる。また、本ベクターを用いて遺伝子を導入したES細胞がサル由来のものである場合は、当該ES細胞を疾患モデルサルに移植することにより、ヒトの疾患の治療モデルとして有用な系を提供することができる。ヒトの疾患のモデルとして様々な疾患モデルサルが知られており、例えば、ヒトのパーキンソン病のモデルサルは人工的に作出可能であり、ヒトの糖尿病の忠実なモデルとして自然発症の糖尿病サルが多く飼育され、また、サルのSIV感染症がヒトのHIV感染症の忠実なモデルとしてよく知られている。このような疾患において、ヒトES細胞を用いた臨床応用を行う前に、前臨床試験としてサルES細胞を疾患モデルサルに移植する系は、非常に有用である。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。なお、本明細書全体を通じて引用された文献は、すべて本明細書の一部として組み込まれる。
【0068】
サルES細胞へのセンダイウイルスベクターを用いた遺伝子導入
1.ES細胞の培養
カニクイザルES細胞、CMK6(Suemori H et al. Dev. Dyn. 222, 273 2001)は京大中辻教授より供与されたものを以下のES培地にて培養して用いた。
ES 培地:DMEM/F12 (Sigma), 15% FBS (ES Cell−qualified, Gibco)、1 mM L−glutamine, 1 mM sodium pyrubate, 0.1 mM 2−mercaptoethanol
また、フィーダー細胞として、通常妊娠13−14日 ICRマウスあるいはBALB/cマウスよりmouse embryonic fibroblast(MEF)を採取し、3〜5継代培養し増殖させた後、分注し凍結保存した。使用時は10% FCS添加DMEMにて解凍後、100 mg / 10 cm dish Mitomycin C(SIGMA)にて2〜3hr培養し、MEFの分列を止めた。細胞はトリプシン−EDTAで解離した後、先に0.1%ゼラチンでコートした3.5 cm dishに5×10細胞播種した。播種後1日以上経過した後ES細胞を10〜10細胞/3.5 cm dishをフィーダー上に播種した。2日に一度はES培地を交換し、3〜4日に一度、継代を行った。ES培地を除き、Hanks’ balanced salt solutions (HBSS, Gibco)にて洗った後、0.25% trypsin/HBSSを加え1〜2分室温にて放置し、MEFの混入が少なく、ES細胞のコロニーが多く剥離するように、検鏡しながらdishの底を軽く叩いてES細胞を集めた。その後細胞は800 rpmにて4分遠心後、予め用意したフィーダー上に播種した。
【0069】
2.SeVベクターの調製
F欠失型GFPSeVベクター:SeV18+/ΔF−GFP は、通常の手順に従って、生産、精製後、CIUの測定をした(1×10)。なおSeV18+/ΔF−GFPは、SeV18+/ΔF−EGFP、SeV18+/dF−GFP、SeV18+/dF−EGFP、SeV18+GFP/ΔF、SeV18+EGFP/ΔF、SeV18+GFP/dF、またはSeV18+EGFP/dFなどと表記することもある。
【0070】
3.CMK6への感染
コロニーピックアップと持続発現:CMK6を0.25% trypsin/HBSSにて剥離し、遠心管に回収し800rpmにて4分遠心後ES培地を加えタッピングし、細胞を軽くほぐした。HBSSで洗浄後、MEFが混入したまま細胞数をカウントし、6 well plateに2×10/well mlとなるようにES培地で懸濁した。そこにSeV18+/ΔF−GFPを200μl、即ち2×10 CIU加え、混合し5% CO、37℃にて一晩培養した。翌日、0.25% trypsin/HBSSにて剥離し、遠心管に回収し800rpmにて4分遠心した。HBSSで洗浄後、ES培地を加え、予め用意した6 well plateのMEFフィーダー細胞上に加え、培養した。3日もしくは4日ごとに新フィーダー細胞上に継代を行った。感染後3週後、6 well plateに10細胞/wellで継代し、その5日後、蛍光顕微鏡上で構成細胞全てがGFP陽性であるコロニーを選んで一つずつマイクロピペットで回収し、フィーダー細胞を播いておいた24well plateに移植した。その後、それぞれのwellを蛍光観察し、コロニーを形成するまで生育し構成細胞が全てGFP陽性であるコロニーを継代し、拡大培養した。そのうちの一つを370日以上継代し続けた。
【0071】
ベクター間の比較:GFP遺伝子を搭載したアデノウイルスベクターであるAd5−CMV−EGFP、アデノ随伴ウイルスベクターであるAAV2−CAG−WPRE−EGFP、F欠失SeVベクターであるSeV18+/ΔF−GFPをそれぞれ、3.4×10 genome copies/Cell、2.4×10 genome copies/Cell、50 CIU/Cellとなるように培地に添加し、48時間、5% CO、37℃にて感染した。感染4日後に蛍光観察、撮影を行った。
【0072】
感染時間の検討:SeV18+/ΔF−GFPを50 CIU/cellとなるようにMEFを含んだCMK6に感染し、5% CO、37℃で1時間、3時間、24時間培養し感染させた。その後HBSSで洗浄後、ES培地にて感染後48時間後まで培養し、蛍光観察を行った。
【0073】
4.継代感染細胞の解析(フローサイトメータによる解析)
FACS(BD Bioscience)を用いて解析する数継代前より、MEFをICR由来のものから、BALB/c由来に交換して継代しておき、細胞を0.25% trypsin−1 mM EDTAにて解離した。800 rpmにて4分遠心後、細胞を4% BSA/PBSに懸濁した後、Phycoerythrin (PE) 標識抗マウスMHC classI抗体H−2K にて染色、洗浄後FACSによる解析を行った。MEFはH−2K 陽性、CMK6はH−2K 陰性細胞として検出されるので、CMK6のSeV18+/ΔF−GFP感染細胞の割合はH−2K 陰性細胞内のGFP陽性率で表した。
【0074】
5.テラトーマ形成方法
SeV18+/ΔF−GFP感染後119日培養したものを1×10、150μlの0.2% BSA/HBSSに懸濁し、生後8週齢のNOD/SCIDマウス左大腿内側皮下に移植した。移植後17週後に屠殺し、蛍光観察および組織学的検査を行った。
【0075】
6.胚様体の形成
CMK6を0.1% collagenase type IVにて37℃ 8〜10分インキュベートし、CMK6をエンリッチして剥離しHBSSで洗浄後、バクテリア用プラスティックディッシュ上にES培地に懸濁し培養する。5日おきに培地交換を行い胚様体を形成させた。
【0076】
7.継代感染細胞におけるゲノムRNAの検出
感染後284日目のSeV18+/ΔF−GFP感染CMK6よりRNAを抽出、Taqmanreverse Transcription Reagents (PE ABI) を用い逆転写反応を行った後、SeVゲノム検出用プライマーとしてF3208(P遺伝子上、agagaacaagactaagg ctacc/配列番号:9)とR3787(M遺伝子上、accttgacaatcctgatgtgg/配列番号:10)を用い、EGFPに対するプライマーとしてGFP−F3: cgtccaggagcgcaccatcttc(配列番号:11)、GFP−R3 : ggtctttgctcag ggcggact(配列番号:12)、カニクイザルβ−actinに対するプライマー (234bp) はCB1 : cattgtcatgg actctggcgacgg(配列番号:13)、CB2 : catctcctgctcgaagtctagggc(配列番号:14)を用いた。また、細胞中にDNAとしてGFP遺伝子、あるいはSeVゲノムが保持されていないことを証明するために、SeV18+/ΔF−GFP感染CMK6よりDNAを抽出し、上記のプライマーでPCRを行った。PCRの条件は95℃7分の後、94℃1分、55℃1分、72℃1分を30サイクル行い、72℃5分の処理を行った。
【0077】
8.血液細胞への分化
マウスstromal cell line OP9細胞をα−MEM (Gibco) にて培養しmitomycin処理した後、6wellにコンフルエントになるよう播種し予め培養しておき、その上にSeV18+/ΔF−GFP感染CMK6を播種し、8% horse serum 8% FCS 5×10−6 M hydrocortisone/ IMDMに20 ng/ml BMP−4, 20 ng/ml SCF, 20 ng/ml IL−3, 10 ng/ml IL−6, 20 ng/ml VEGF, 20 ng/ml G−CSF, 10 ng/ml Flt.3 ligand, 2 u/ml EPOとなるようにサイトカインを加え培養した。
【0078】
9.血球細胞分析方法
コロニーアッセイ:移植後14〜18日目に、分化した非接着細胞をpipettingで回収した。セルストレーナーを通した後、2%FBS/IMDMにsuspendし、細胞を計数した。MeC培地(MethoCult GF+ H4435 ; StemmCell technologies)に、細胞数1×10と1×10で播種し、37℃, 5% COで培養した。約14日目にcolony count、顕微鏡観察した。
サイトスピン:Colony assayで形成された造血コロニーを吊り上げ、Cytospin標本を作成し、Wright−Giemsa染色を行い、形態学的評価を行った。
好中球機能検査(NBT還元試験):メチルセルロース半固形培地に播種後14日目の、colonyが形成されているplateにNBT (nitroblue tetrazolium) solutionをかけ、好中球機能(貪食能、細胞内殺菌能)を検査した。
【0079】
ES細胞への遺伝子導入(結果)
1.マウスMHC class I抗体を用い、FACS上でMEFとCMK6を分離することに成功し、解析が可能になった。(図2下)
2.カニクイザルES細胞、CMK6に対して、moi=2、10、50で遺伝子導入したところ、24時間後のFACSによる解析でGFP陽性率は、それぞれ6.7%、22%、46%、48時間後はそれぞれ16.5、37.8、63.2%と上昇した。そのあと一度継代し、感染後4日でそれぞれ17.1、35.2、67.0%、感染後7日でそれぞれ7.3、36.8、59.4%と遺伝子導入率が維持された。(図4)
3.AdenovirusベクターおよびAAV2ベクターをそれぞれmoi=340、moi=24000でCMK6に感染させたところ、感染4日後でそれぞれ20.0%、25.9%とSeVベクターに比べて低い値であった。7日後にはAdenovirusベクターによる感染細胞は6.1%に低下した。AAV2ベクターは19.6%と感染率を維持したが、SeVベクターに比べると低かった。(図5、6)
4.感染時間を1、3、24時間としたところ、感染効率は低いものの感染時間が短くても遺伝子導入可能であった。(図3)
5.コロニーの選択採取により、遺伝子導入細胞をエンリッチしたものでは、その後ほとんど100%近い細胞がGFP陽性であり、FACSのデータでも感染後370日で90%の細胞がGFP陽性であった。(図2:FACSデータは253日目のもの、図7)
6.NOD/SCID大腿皮下にSeV18+/ΔF−GFP感染CMK6細胞を移植し17週後テラトーマが形成された。皮膚の上からもGFP蛍光が観察され、切開すると強い蛍光が観察された。(図8)
7.17週後テラトーマが形成されたテラトーマの切片で、ほとんどの細胞がGFP陽性であり、それらが軟骨、皮膚、腸管上皮、皮脂腺といった組織へ分化していた。(図9)
8.SeV18+/ΔF−GFP感染CMK6細胞は胚様体も形成し、胚様態全体がGFPを発現していた。(図10)
9.SeV18+/ΔF−GFP感染CMK6細胞は血球に分化させることも可能であり、分化後もGFP陽性であった。このGFP陽性細胞は、形態的にも、機能的にも好中球であることを確認した。(図11)
【0080】
【発明の効果】
本発明により、哺乳動物ES細胞に長期間安定に遺伝子を発現させることが可能となった。本発明の方法は、遺伝子導入効率が高く、導入した遺伝子の発現も高レベルである。また、DNAを介さずに長期間、安定に遺伝子を発現させることができる。さらにES細胞の分可能に影響を与えない。ES細胞への遺伝子導入は、ヒトを含む霊長類および他の哺乳動物における発生学的研究、疾患研究、臨床応用、実験モデルにおいて有用である。また、本発明のベクターは、ES細胞からの組織または細胞の特異的分化を制御する遺伝子および試薬等のスクリーニングを可能にする。このスクリーニング方法によれば、所望の分化細胞または分化組織を得るのに有用な、組織または細胞の特異的分化を行なうための遺伝子および試薬等をスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。また本発明の方法を用いた遺伝子発現によりES細胞で分化・増殖を調節する遺伝子を発現させ、得られた細胞を再生医学に用いることも期待される。
【0081】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】複製型センダイウイルス(上段)、およびEGFP遺伝子を有する複製欠損型センダイウイルス(F遺伝子欠失)のゲノム構造を示す図である。
【図2】複製欠損型SeV(SeV18+/ΔF−GFP)でGFP遺伝子を導入したCMK6細胞のGFPの発現を示す図である。SeV感染の253日後のES細胞の蛍光顕微鏡像およびFACS解析結果を示す。H−2K 陰性のサルES細胞の93%がGFP陽性であった。
【図3】複製欠損型SeV(SeV18+/ΔF−GFP)の感染時間を変えた時のCMK6細胞のGFP発現を示す図である。
【図4】複製欠損型SeV(SeV18+/ΔF−GFP)の量(moi)とGFP陽性率の関係を示す図である。
【図5】アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、複製欠損型SeV(SeV18+/ΔF−GFP)のCMK6に対する遺伝子導入の比較を示す図である。
【図6】図5を数値化した結果およびその時間変化を示す図である。
【図7】遺伝子導入細胞の選別と導入遺伝子の発現を示す図である。上段は選別をせずに継代を続けた場合、下段はコロニーセレクションでGFP陽性コロニーの選別を1回行い、継代を続けた場合である。
【図8】SeVベクターのゲノムの自己複製能およびDNA非依存性を確認した結果を示す図である。RNA−PCRはベクター導入細胞からRNAを調製し、RT−PCRによりウイルスゲノムを増幅した結果を示す。580 bpのバンドはウイルスゲノム由来のバンドである。cmESはサルES細胞株、cmES−EGFPはエレクトロポレーション法でEGFP遺伝子を染色体に組み込んだサルES細胞株、cmES/SeVはSeV18+/ΔF−GFPを導入したサルES細胞である。SeV(+)は野生型SeVゲノムcDNAを鋳型として用いた結果(対照)である。SeVベクターを導入したES細胞でウイルスゲノムが複製されていることが証明された。DNA−PCRはベクター導入細胞からDNAを調製し、これを鋳型としてPCRによりウイルスゲノムを増幅した結果を示す。SeVベクターを導入したES細胞におけるGFP発現がDNAを介さないことが示された。
【図9】SeVベクターにより遺伝子を導入したCMK6細胞によるテラトーマ形成を示す図である。
【図10】図9のテラトーマの顕微鏡像を示す図である。
【図11】SeVベクターにより遺伝子を導入したCMK6による胚様体形成を示す図である。
【図12】SeVベクターにより遺伝子を導入したCMK6の血球への分化を示す図である。

Claims (11)

  1. 胚性幹細胞に遺伝子を導入する方法であって、該遺伝子を保持するパラミクソウイルスベクターと胚性幹細胞とを接触させる工程を含む方法。
  2. パラミクソウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、請求項1に記載の方法。
  3. 胚性幹細胞が霊長類胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
  4. 外来遺伝子が導入された胚性幹細胞の製造方法であって、該遺伝子を保持するパラミクソウイルスベクターと胚性幹細胞とを接触させる工程を含む方法。
  5. パラミクソウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、請求項4に記載の方法。
  6. 胚性幹細胞が霊長類胚性幹細胞である、請求項4に記載の方法。
  7. 請求項4に記載の方法により製造された、外来遺伝子が導入された胚性幹細胞。
  8. 請求項7に記載の胚性幹細胞を増殖および/または分化させた細胞。
  9. 胚性幹細胞への遺伝子送達のために用いる、パラミクソウイルスベクター。
  10. パラミクソウイルスベクターがセンダイウイルスベクターである、請求項9に記載のベクター。
  11. 胚性幹細胞が霊長類胚性幹細胞である、請求項9に記載のベクター。
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