JP3765324B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えば複写機、LDプリンタ、LEDプリンタ等に使用される電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子工業の発達に伴う半導体レーザーや発光ダイオード(LED)に代表される800nm付近の長波長の光源を利用した複写機、LDプリンタ、LEDプリンタ等の電子写真感光体に使用される材料として、これら光源に感応するフタロシアニン系化合物が注目されている。
【0003】
1992年電子写真学会“Japan Hardcopy ’92”予稿集第153〜156頁には、“ジオール化合物を含有するチタニルフタロシアニン結晶の生成と特性”と題した講演要旨、及び、1993年電子写真学会国際会議“Japan Hardcopy ’93”予稿集第659〜662頁には、“SYNTHESES AND PROPERTIES OF TITANYL PHTHALOCYANINE NEW POLYMORPHS”と題した講演要旨が記載されており、また特開平5−273775号公報等には、例えば2,3−ブタンジオール等の2つの隣接する各炭素原子に1つずつ水酸基を有するジオール化合物とオキシチタニウムフタロシアニンとは反応して、付加化合物を生成することが記載されており、当該付加物が電子写真感光体に使用しうる可能性を示唆している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オキシチタニウムフタアロシニンと2,3−ブタンジオール等の隣接ジオール化合物との反応生成物を得る場合に、上記の3つの公知文献記載の様に、当該隣接ジオール化合物をオキシチタニウムフタロシアニンに対し、溶媒量の如き過剰量を用いて得た反応生成物では、当該反応生成物が特定構造のフタロシアニン化合物の単独結晶である為に、電子写真感光体への使用に際し、充分な感度が得られないという問題点があった。
【0005】
本発明者は、上記実状に鑑みて鋭意検討したところ、特定構造を有するフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物の混晶を含有することを特徴とする電子写真感光体が優れた感度を発現することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物と、オキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶を含有する電子写真感光体を提供するものである。
【0007】
即ち本発明は、下記式(1)
【0008】
【化9】
【0009】
(式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Pcは置換もしくは無置換のフタロシアニン残基を表す。)
で表されるフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶を含有することを特徴とする電子写真感光体を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。本発明の感光体には、炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶を含有する。
【0011】
炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環としては、酸素原子−置換もしくは無置換のアルキル基を2つ有する、炭素原子数2以上のアルキレン基−酸素原子がこの順に結合し、これら2つの各酸素原子がTi原子に結合した構造の環が挙げられる。
【0012】
炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物としては、下記式(1)で表されるフタロシアニン化合物が挙げられる。
【0013】
本発明では下記式(1)
【0014】
【化10】
【0015】
(式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Pcは置換もしくは無置換のフタロシアニン残基を表す。)
で表されるフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶を含有することが最大の特徴である。
【0016】
前記式(1)で示されるフタロシアニン化合物の構造式の具体例としては、例えば以下のものを例示することができる。尚、例示式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、n−Prは直鎖プロピル基を、iso−Prはイソプロピル基を、Phはフェニル基を、Bzはベンジル基を、Pcはフタロシアニン残基を、それぞれ表す。
【0017】
【化11】
【0018】
【化12】
【0019】
前記式(1)で示される特定構造を有するフタロシアニン化合物には、下記式(2)
【0020】
【化13】
【0021】
で示されるトレオ型の立体構造を有する立体異性体(A)と、下記式(3)
【0022】
【化14】
【0023】
(式(2)及び式(3)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Pcは置換もしくは無置換のフタロシアニン残基を表す。)
で示されるエリトロ型の立体構造を有する立体異性体(B)が含まれるが、本発明の特徴たる混晶を構成する為の、当該特定構造を有するフタロシアニン化合物は、A/Bの組成比が40/60以上であることが好ましく、80/20以上であることがより好ましい。
【0024】
尚、当該特定構造を有するフタロシアニン化合物はAのみ或いはBのみから成らないことが好ましい。
【0025】
更に、前記式(2)で示されるAには、下記式(7)
【0026】
【化15】
【0027】
で示される絶対構造を有する立体異性体と、下記式(8)
【0028】
【化16】
【0029】
で示される絶対構造を有する立体異性体が含まれ、また前記式(3)で示されるBには、下記式(9)
【0030】
【化17】
【0031】
で示される絶対構造を有する立体異性体と、下記式(10)
【0032】
【化18】
【0033】
(式(7)、式(8)、式(9)及び式(10)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Pcは置換もしくは無置換のフタロシアニン残基を表す。)
で示される絶対構造を有する立体異性体が含まれるが、前記式(1)で示される特定構造を有するフタロシアニン化合物は、上記の好ましい範囲でこれら絶対構造異性体群から選択される任意の組み合わせから成って構わない。
【0034】
本発明中、オキシチタニウムフタロシアニン化合物とは、フタロシアニン残基中心にオキシチタニウム(O=Ti)基を持つものである。
【0035】
尚、本発明中、フタロシアニン残基とは式(11)
【0036】
【化19】
【0037】
で表されるものであり、フタロシアニン残基のベンゼン環の水素原子が無置換、或いは置換されていても良く、その置換基としては塩素、臭素等のハロゲン原子、或いはメチル基、エチル基等のアルキル基、或いはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を挙げることができ、また、当該フタロシアニン残基としてはナフタロシアニンの如き環拡張フタロシアニン構造であっても構わない。特に無置換であるフタロシアニン残基が好ましく用いることができる。
【0038】
本発明の特徴たる混晶においては、前記式(1)のフタロシアニン化合物及びオキシチタニウムフタロシアニン化合物のそれぞれのフタロシアニン残基の構造は同一であることが好ましい。
【0039】
本発明の特徴たる混晶として、下記式(4)
【0040】
【化20】
【0041】
(式(4)中、Pcは置換もしくは無置換のフタロシアニン残基を表す。)
で示されるフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶は特に好ましい。
【0042】
更に、当該式(4)で示されるフタロシアニン化合物は、トレオ型異性体/エリトロ型異性体の組成比が40/60以上であることが好ましく、80/20以上であることがより好ましい。尚、当該式(4)で示されるフタロシアニン化合物はトレオ型異性体のみ或いはエリトロ型異性体のみから成らないことが好ましい。
【0043】
更に、前記トレオ型異性体には、下記式(12)
【0044】
【化21】
【0045】
で示される絶対構造を有する立体異性体と、下記式(13)
【0046】
【化22】
【0047】
で示される絶対構造を有する立体異性体が含まれるが、前記式(4)で示される特定構造を有するフタロシアニン化合物は、上記の好ましい範囲でこれら絶対構造異性体とエリトロ型異性体群から選択される任意の組み合わせから成って構わない。
【0048】
尚、本発明中、混晶とは複数種類の化合物分子が不規則または規則的に周期的配列して成る結晶のことであって、2種以上の、単一分子が集合して成る結晶の混合物とは明確に異なるものである。混晶であることは、例えばCuKαに対するX線回折スペクトルにおいて、それを構成する、複数種の化合物の各々の単独結晶とは異なるパターンを示すことから確認できる。
【0049】
例えば、本発明の特徴たる混晶は、CuKαに対するX線回折スペクトルにおいて、前記式(1)で示されるフタロシアニン化合物から成る単独結晶とも、オキシチタニウムフタロシアニン化合物から成る単独結晶とも異なるパターンを示すものである。
【0050】
本発明の特徴たる混晶としては、CuKαに対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも8.3、24.7、25.1度にピークを示すものが特に好ましい。
【0051】
本発明の特徴たる混晶は、前記式(1)の特定構造のフタロシアニン化合物(C)とオキシチタニウムフタロシアニン化合物(D)の組成比C/Dが30/70〜70/30、好ましくは40/60〜60/40、更に好ましくは50/50で構成される。
【0052】
本発明の特徴たる混晶は、オキシチタニウムフタロシアニン化合物と下記式(14)
【0053】
【化23】
【0054】
(式(14)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で表される隣接ジオール化合物との反応から簡便に得ることができる。
【0055】
前記式(14)で示される隣接ジオール化合物の構造式の具体例としては、例えば以下のものを例示することができる。尚、例示式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、n−Prは直鎖プロピル基を、iso−Prはイソプロピル基を、Phはフェニル基を、Bzはベンジル基を、それぞれ表す。
【0056】
【化24】
【0057】
【化25】
【0058】
また、前記式(14)で示される隣接ジオール化合物には、下記式(15)
【0059】
【化26】
【0060】
で示されるトレオ型の立体構造を有する立体異性体(E)と、下記式(16)
【0061】
【化27】
【0062】
(式(15)及び式(16)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で示されるエリトロ型の立体構造を有する立体異性体(F)が含まれるが、本発明の特徴たる混晶を得る為の、当該隣接ジオール化合物は、E/Fの組成比が40/60以上であることが好ましく、80/20以上であることがより好ましい。
尚、前記式(14)で示される当該隣接ジオール化合物はEのみ或いはFのみから成らないことが好ましい。
【0063】
更に、前記式(15)で示されるEには、下記式(17)
【0064】
【化28】
【0065】
で示される絶対構造を有する立体異性体と、下記式(18)
【0066】
【化29】
【0067】
で示される絶対構造を有する立体異性体が含まれ、また前記式(16)で示されるFには、下記式(19)
【0068】
【化30】
【0069】
で示される絶対構造を有する立体異性体と、下記式(20)
【0070】
【化31】
【0071】
(式(17)、式(18)、式(19)及び式(20)中、R1、R2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で示される絶対構造を有する立体異性体が含まれるが、前記式(14)で示される隣接ジオール化合物は、上記の好ましい範囲でこれら絶対構造異性体群から選択される任意の組み合わせから成って構わない。
【0072】
本発明の特徴たる混晶を得る為に、オキシチタニウムフタロシアニン化合物との反応で使用する隣接ジオール化合物としては、特に2,3−ブタンジオールが好ましい。また2,3−ブタンジオールはトレオ型/エリトロ型の組成比が40/60以上であることが好ましく、80/20以上であることがより好ましい。
【0073】
尚、当該2,3−ブタンジオールはトレオ型のみ或いはエリトロ型のみから成らないことが好ましい。更に、前記トレオ型2,3−ブタンジオールには、(2R,3R)−(−)−2,3−ブタンジオールと、(2S,3S)−(+)−2,3−ブタンジオールが含まれ、また前記エリトロ型2,3−ブタンジオールには、meso−2,3−ブタンジオールがあるが、前記2,3−ブタンジオールは、上記の好ましい範囲でこれら絶対構造異性体群から選択される任意の組み合わせから成って構わない。
【0074】
本発明の特徴たる混晶を得るに当たっては、オキシチタニウムフタロシアニン化合物と前記式(14)で示される隣接ジオール化合物との反応において、当該隣接ジオール化合物をオキシチタニウムフタロシアニン化合物に対し、実質的に1モル当量未満の量を反応させることで簡便に得ることができる。
【0075】
即ち、オキシチタニウムフタロシアニン化合物と、それに対して実質的に1モル当量未満の当該ジオール化合物を反応させたとき、前記式(1)で示される特定構造のフタロシアニン化合物と残りの未反応のオキシチタニウムフタロシアニン化合物とから成る混晶が得られる。
【0076】
また、当該特定構造を有するフタロシアニン化合物の構造中、前記式(14)で示される隣接ジオール由来の部位の構造には、当該ジオール化合物の立体構造が基本的に保持される。
【0077】
尚、当該混晶を得るには、上記の如く、オキシチタニウムフタロシアニン化合物と、それに対して実質的に1モル当量未満の当該ジオール化合物を反応させれば良いのであって、当該反応の仕込み時に当該ジオール量を調整する方法で簡便にこれを達成でき、好ましくは当該反応仕込み時に前記式(14)で示される隣接ジオール化合物をオキシチタニウムフタロシアニン化合物に対して0.5〜1.5モル当量、好ましくは0.6〜1.0モル当量を加え、反応を実施することが好ましい。
【0078】
また、当該反応仕込み時に、当該ジオール量がオキシチタニウムフタロシアニン化合物に対して過剰量であっても、反応時間を短縮し、必要以上の反応を進行させないような操作を行っても、同様にして混晶を得ることができる。
【0079】
また、予め、前記式(1)の特定構造を有するフタロシアニン化合物から成る単独結晶を得、その後これとオキシチタニウムフタロシアニン化合物を反応させ、結晶を再構成させることによっても、同様にして、本発明の特徴たる混晶を得ることもできる。
【0080】
本発明の特徴たる混晶を得る為の上記反応で好ましく使用することのできるオキシチタニウムフタロシアニン化合物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、置換及び/または無置換のフタロシアニン残基中心にオキシチタニウムを持つものであれば良く、また本発明の効果を損なわない限りにおいて、これらが如何なる結晶型であっても構わない。
【0081】
その例として、α型、β型、αβ混合型、γ型、Y型、アモルファス、等の結晶型の置換及び/または無置換のオキシチタニウムフタロシアニン化合物を挙げることができる。
【0082】
また、これらオキシチタニウムフタロシアニン化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば四塩化チタニウムとオルトフタロジニトリルとの反応、或いは、テトラ(ノルマルブトキシ)チタニウム等のテトラ(アルコキシ)チタニウムとオルトフタロジニトリルとの尿素存在下での反応、或いは、テトラ(ノルマルブトキシ)チタニウム等のテトラ(アルコキシ)チタニウムと1,3−ジイミノイソインドリンとの反応等から製造することができる。
【0083】
本発明の特徴たる混晶を得る為の、オキシチタニウムフタロシアニン化合物と前記式(14)で示される隣接ジオール化合物との反応は、加熱条件下で好ましく行うことでき、反応温度は30〜300℃の範囲が好ましく、50〜250℃の範囲であることがより好ましい。
【0084】
本発明の特徴たる混晶を得る為の反応等に際しては、必要に応じて公知慣用の各種の有機溶剤を併用することができる。その例としては、例えばベンゼン、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、α−クロロナフタレン等の芳香族系有機溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、テトラヒドロフラン、ジメチルセロソルブ等のエーテル系有機溶剤、ブタン酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系有機溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系極性有機溶剤、トリクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤、アミルアルコール、ドデカノール等の一価アルコール系有機溶剤等を挙げることができる。これらは、単独でも二種以上の併用でもかまわない。
【0085】
その他、本発明の特徴たる混晶を得る為の反応等の処理において、反応時間、溶媒、洗浄等の精製方法、結晶化方法等の各製造条件は、適宜選択して採用すればよい。
【0086】
2,3−ブタンジオール(BDO)とオキシチタニウムフタロシアニン(TiOPc)との反応を例に、本発明の特徴たる混晶の製造方法等を説明する。
【0087】
当該反応では下記反応式(I)
【0088】
【化32】
【0089】
に従い特定構造のフタロシアニン化合物(G)が生成する。
【0090】
当該反応で、TiOPcに対して実質的に1.0モル当量未満のBDOが反応したとき、一部のTiOPcは未反応物として残る。結果的に反応終了時にはGのフタロシアニン化合物とTiOPcが系中に存在し、この両者によって、混晶という特徴的な結晶が構成される。当該混晶はG/TiOPcの組成比が30/70〜70/30、好ましくは40/60〜60/40、更に好ましくは50/50で構成される。
【0091】
当該反応の系中のG或いはTiOPcの量如何によっては、混晶の構成に参加しないG及び/またはTiOPcが存在することになるが、これらは各々の単独の結晶を構成する。この際、結果的に、当該混晶と、G或いはTiOPcの単独結晶との混合物が得られるが、本発明においては、その効果を損なわない限りにおいて、両者の混在があっても構わない。
【0092】
当該反応で実質的にTiOPcに対して反応するBDOの量は1.0モル当量未満が好ましく、0.2〜0.8モル当量がより好ましく、0.3〜0.7モル当量が更に好ましく、0.4〜0.6モル当量が更に好ましく、0.5モル当量が特に好ましい。
【0093】
また、BDOにはトレオ型、エリトロ型の立体異性体が存在するが、混晶を得る為の当該反応では、トレオ型/エリトロ型の組成比が40/60以上であることが好ましく、80/20以上であることが更に好ましい。
【0094】
本発明の電子写真感光体を得るに当たって、本発明の特徴たる混晶は、電荷発生材料あるいは電荷発生機能と電荷輸送機能を併せ持つ光導電性材料として、単独、または混合系で使用される。本発明の特徴を損なわない限りに於いて、その他の電荷発生材料あるいは光導電性材料を併用することも可能である。
【0095】
その様な他の電荷発生材料等の例としては、本発明の特徴たる混晶以外のフタロシアニン化合物、等がいずれも使用でき、特に限定されるものではない。具体的には、例えば無金属フタロシアニン化合物、金属フタロシアニン化合物、或いは例えばα型、β型、α、β混合型、γ型、Y型、等の結晶型あるいは非晶質型オキシチタニウムフタロシアニン化合物、アゾ系顔料、アントラキノ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、スクエアリウム系顔料等を挙げることができる。
【0096】
また、本発明の電子写真感光体では必要に応じて正孔輸送材料、電子輸送材料、等の電荷輸送材料を併用することも可能である。
【0097】
本発明の電子写真感光体に使用される電荷輸送材料としては、特に限定されるものではなく、種々のものが使用可能であり、例えば、アリールアミン系、ヒドラゾン系、ピラゾリン系、オキオキサゾール系、オキサジアゾール系、スチルベン系、ブタジエン系、チアゾール系、カルバゾール系、ジフェノキノン系、アリールメタン系、テトラシアノキノン系化合物、或いは、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の重合性化合物を挙げることができる。
【0098】
電荷輸送材料の具体例として代表的な化合物の構造を次に示す。なお、以下の各構造式の下に記載した( )内の数字は例示化合物のNo.を表わす。
【0099】
【化33】
【0100】
【化34】
【0101】
【化35】
【0102】
【化36】
【0103】
【化37】
【0104】
【化38】
【0105】
【化39】
【0106】
【化40】
【0107】
【化41】
【0108】
電子写真感光体の形態としては種々のものが知られているが、本発明の電子写真感光体の形態は、そのいずれであってもよい。例として図1〜図4の電子写真感光体を示した。
【0109】
図1及び図2の電子写真感光体は導電性支持体1の上に電荷発生層2と、電荷輸送層3とから成る感光層4a又は4bをそれぞれ設けたものである。図3の電子写真感光体は導電性支持体1の上に電荷発生材料5を電荷移動媒体6の中に分散せしめた感光層4cを設けたものである。図4の電子写真感光体は導電性支持体1上に光導電性材料8を結着樹脂等の結合剤9の中に分散せしめた感光層4dを設けたものである。
【0110】
本発明の特徴たる混晶は、上記図1〜4のいずれの電子写真感光体の製造に使用できる。
【0111】
図1及び図2の電子写真感光体の場合には、電荷発生層2に含まれる電荷発生材料が電荷を発生し、一方、電荷輸送層3は電荷の注入を受け、その輸送を行う。即ち、光減衰に必要な電荷の生成が電荷発生材料で行われ、また、電荷の輸送が電荷輸送媒体で行われる。
【0112】
図3の電子写真感光体では、電荷発生材料が光に対して電荷を発生し、主として電荷移動媒体により電荷の移動が行なわれる。図4の電子写真感光体では、光に対する電荷の発生及び電荷の移動が光導電性材料によって行われる。
【0113】
図1の電子写真感光体は、電荷発生材料の微粒子を蒸着、あるいは必要に応じて結着樹脂を溶解した溶媒中に分散して得た分散液を塗布、乾燥し、その上に電荷輸送材料を単独、あるいは必要に応じて結着樹脂を併用し溶解した溶液を塗布、乾燥することによって製造することができる。
【0114】
図2の電子写真感光体は、電荷輸送材料を単独あるいは必要に応じて結着樹脂を併用して溶解した溶液を導電性支持体上に塗布、乾燥し、その上に電荷発生材料の微粒子を蒸着、あるいは溶剤又は結着樹脂溶液中に分散して得た分散液を塗布、乾燥することにより製造することができる。
【0115】
図3の電子写真感光体は電荷輸送材料を単独、あるいは必要に応じて結着樹脂を併用し溶解した溶液に電荷発生材料の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体上に塗布、乾燥することによって製造することができる。
【0116】
図4の電子写真感光体は光導電性材料を、結着樹脂等の結合剤を溶解した溶液中に分散した分散液を導電性支持体上に塗布、乾燥し、製造することができる。
【0117】
電荷発生材料または光導電性材料として作用する、本発明の特徴たるフタロシアニン化合物を粉砕し、結合剤溶液に分散する方法として具体的には、一般的な攪絆装置の他に、ホモミキサー、ディスパーター、アジター、ボールミル、サンドミル、アトライター、ペイントコンディショナー等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0118】
塗布の方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法等のコーティング法を用いることができる。
【0119】
もちろん結着樹脂を併用せずに、混晶の形態を損なわないように、電荷発生材料の蒸着等によって、電荷発生層を設けても構わない。
【0120】
感光層の厚さは、図1及び図2の電子写真感光体の場合には、電荷発生層の厚さは5μm以下、好ましくは0.01〜2μmであり、電荷輸送層の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜30μmである。図3及び図4の電子写真感光体の場合には、感光層の厚さは、3〜50μm、好ましくは5〜30μmである。
【0121】
図1及び図2の電子写真感光体における電荷輸送層中の電荷輸送材料の割合は、5〜100重量%の範囲が好ましく、図1及び図2の電子写真感光体の電荷発生層中の電荷発生材料の割合は、5〜100重量%の範囲が好ましく、40〜80重量%の範囲が特に好ましい。
【0122】
図3の電子写真感光体において、感光層中の電荷輸送材料の割合は、5〜99重量%の範囲が好ましく、また電荷発生材料の割合は、1〜50重量%の範囲が好ましく、3〜20重量%の範囲が特に好ましい。
【0123】
図4の電子写真感光体において、光導電性材料の割合は、3〜80重量%の範囲が好ましく、5〜50重量%の範囲が特に好ましい。
【0124】
なお、図1〜4のいずれの電子写真感光体の作製においても、結合剤と共に可塑剤、増感剤を用いることができる。
【0125】
本発明の電子写真感光体に用いられる導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、チタン、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、或は、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、或はラミネートした紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0126】
必要に応じて使用することのできる結着樹脂としては、疎水性で、電気絶縁性のフィルム形成可能な高分子重合体を用いるのが好ましい。このような高分子重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着剤は、単独で、或は、2種類以上の混合物として用いることもできる。
【0127】
また、これらの結着樹脂と共に表面改質剤を使用することもできる。表面改質剤としては、例えば、シリコンオイル、フッソ樹脂等が挙げられる。
【0128】
更に電子写真感光体の成膜性、可撓性、機械的強度を向上するために周知の可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、例えばビフェニル、塩化ビフェニル、o−ターフェニル、p−ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチルグリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種のフルオロ炭化水素等フタル酸エステル、リン酸エステル、ハロゲン化パラフィン、メチルナフタレン等の芳香族化合物が挙げられる。
【0129】
前記感光層に用いられる、増感剤としてはいずれも周知のものが使用できる。
増感剤としては、例えば、メチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチルブルー等のチアジン染料、シアニン染料、ピリリウム染料、クロラニル、テトラシアノエチレン、ローダミンB、メロシアニン染料、チアピリリウム染料等が挙げられる。
【0130】
また、本発明の電子写真感光体においては、保存性、耐久性、耐環境依存性を向上させるために感光層中に酸化防止剤や光安定剤等の劣化防止剤を含有させることもできる。その例としては、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、アミン化合物などを挙げることができ、具体的には、ブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。
【0131】
その他、必要に応じてその他各種の添加剤を用いても構わない。
【0132】
更に、本発明においては、導電性支持体と感光層との接着性を向上させたり、導電性支持体から感光層への自由電荷の注入を阻止する為、導電性支持体と感光層との間に、必要に応じて接着層或はバリアー層を設けることもできる。
【0133】
これらの層に用いられる材料としては、前記結着樹脂に用いられる高分子化合物のほか、例えばカゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、スチレン−ブタジエン系ポリマーラテックス、ポリウレタン、ゼラチン、酸化アルミニウム(アルマイト)、酸化スズ、酸化チタン等が挙げられ、その膜厚は1μm以下が望ましい。
【0134】
更にこれらの層として、例えばペリレン顔料等の材料を前記結着樹脂に分散させた層を使用することができ、その膜厚は1〜10μmが好ましく、3〜8μmが更に好ましい。
【0135】
また、磨耗に対する強度を向上させるために、必要に応じて感光体上に、オーバーコート層等の保護層を設けても構わない。
【0136】
本発明の電子写真感光体は以上のような構成であって、以下述べる実施例からも明らかなように、優れた感度を有するものである。
【0137】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これによって本発明が実施例に限定されるものではない。尚、下記実施例において「部」とはすべて『重量部』を表す。
【0138】
実施例1
1,3−ジイミノイソインドリン29.2gをオルトジクロルベンゼン200mlに分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド20.4gを加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗、メタノール洗浄して、乾燥の後、26.4g(91.0%)の粗オキシチタニウムフタロシアニンを得た。このもののCuKαに対するX線回折スペクトルを図5に示す。このものがβ型オキシチタニウムフタロシアニンであることが判る。
【0139】
ついでこの粗オキシチタニウムフタロシアニン20.0gを5℃以下で濃硫酸200ml中で1時間攪拌して溶かし、これを20℃の水4Lに注ぎ込む。析出した結晶を濾過し、水で充分に洗ってウェットペースト品を得た。このものを乾燥し、粉末としたものはCuKαに対するX線回折スペクトルを図6に示すごとく、アモルファス状態である。
【0140】
フラスコにオルトジクロルベンゼン131部と、トレオ型/エリトロ型組成比が82/18である2,3−ブタンジオール6.25部(0.7モル当量)をとり、これに上記のオキシチタニウムフタロシアニン−アモルファス乾燥粉末8部を加えた。ついでこの混合物を7時間加熱還流させた。放冷後、これをメタノール800部に注いで結晶を析出させた。濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥してMassスペクトルにおいて、m/Z=576および648にピークを示し、CuKαに対するX線回折スペクトルにおいて、図7の結晶型を示す、本発明に関わる混晶を得た。
【0141】
得られたフタロシアニン化合物混晶3部、シリコーン樹脂(『KR−5240、15%キシレンブタノール溶液』信越化学社製)10部、メチルエチルケトン100部をガラスビーズと共にペイントコンディショナーで粉砕分散して分散液を得た。一方ポリアミド樹脂(『CM−8000』東レ社製)をメタノールに溶解させアルミ蒸着ポリエステルベースに塗布して膜厚0.2μmの下引き層を形成した。この上に前述のフタロシアニン化合物分散液を塗布して膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0142】
一方、下記の電荷輸送物質
【0143】
【化42】
【0144】
の1部とポリカーボネート樹脂(『ユーピロンZ200』三菱瓦斯化学社製)2部およびシリコーンオイル(『KF−54』信越化学社製)0.01部を1,2−ジクロルエタン15部に溶かし、これを前記の電荷発生層上に塗布して、乾燥膜厚24μmの電荷発生層を形成し、感光体を作った。
【0145】
尚、当該感光体の作成方法等は、フタロシアニン結晶を本発明の特徴たる混晶に代える他は、公知文献である特開平5−273775号公報に従ったものである。
【0146】
実施例2
トレオ型/エリトロ型組成比が82/18である2,3−ブタンジオールに代えて、同組成比が44/56である2,3−ブタンジオールの同量を使用する他は実施例1と同様にして、本発明に関わる混晶を含有するフタロシアニン結晶を得た。このものはMassスペクトルにおいてm/Z=576および648にピークを示し、また、このもののCuKαに対するX線回折スペクトルを図8に示す。
【0147】
実施例1のフタロシアニン化合物混晶に代えて、得られたフタロシアニン化合物結晶の同量を用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。
【0148】
比較例1
トレオ型/エリトロ型組成比が82/18である2,3−ブタンジオール6.25部(0.7モル当量)を50部に代える他は、実施例1と同様にして、フタロシアニン結晶を得た。この結晶はMassスペクトルにおいてm/Z=576にピークを示した。この結晶のCuKαに対するX線回折スペクトルを図9に示す。
【0149】
尚、当該フタロシアニン結晶は特開平5−273775号公報に開示されている合成例に従って製造されたものである。
【0150】
得られたフタロシアニン結晶の同量を、実施例1のフタロシアニン化合物混晶に代えて用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。
【0151】
比較例2
反応時、7時間加熱還流に代えて、室温で10時間攪拌する他は、比較例1と同様にして、フタロシアニン結晶を得た。この結晶はMassスペクトルにおいてm/Z=648にピークを示した。この結晶のCuKαに対するX線回折スペクトルを図10に示す。
【0152】
尚、当該フタロシアニン結晶は特開平5−273775号公報に開示されている合成例に従って製造されたものである。
【0153】
得られたフタロシアニン結晶の同量を、実施例1のフタロシアニン化合物混晶に代えて用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。
【0154】
比較例3
トレオ型/エリトロ型組成比が44/56である2,3−ブタンジオール6.25部(0.7モル当量)を50部に代える他は、実施例2と同様にして、フタロシアニン結晶を得た。この結晶はMassスペクトルにおいてm/Z=648にピークを示した。この結晶のCuKαに対するX線回折スペクトルを図11に示す。
【0155】
尚、当該フタロシアニン結晶は特開平5−273775号公報に開示されている合成例に従って製造されたものである。
【0156】
得られたフタロシアニン結晶の同量を、実施例1のフタロシアニン化合物混晶に代えて用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。
【0157】
比較例4
反応時、7時間加熱還流に代えて、室温で10時間攪拌する他は、比較例3と同様にして、フタロシアニン結晶を得た。この結晶はMassスペクトルにおいてm/Z=648にピークを示した。この結晶のCuKαに対するX線回折スペクトルを図12に示す。
【0158】
尚、当該フタロシアニン結晶は特開平5−273775号公報に開示されている合成例に従って製造されたものである。
【0159】
得られたフタロシアニン結晶の同量を、実施例1のフタロシアニン化合物混晶に代えて用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。
【0160】
比較例5
2,3−ブタンジオールを用いない他は、実施例1と同様にして、フタロシアニン結晶を得た。この結晶はMassスペクトルにおいてm/Z=576にピークを示した。この結晶のCuKαに対するX線回折スペクトルを図13に示す。
【0161】
当該フタロシアニン結晶は、オキシチタニウムフタロシアニンのβ型結晶である。
【0162】
得られたフタロシアニン結晶の同量を、実施例1のフタロシアニン化合物混晶に代えて用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。
【0163】
比較例6
実施例1で得られた、オキシチタニウムフタロシアニン−アモルファス乾燥粉末の同量を用いる他は、実施例1と同様にして、感光体を作った。このときの電荷発生剤分散液を塗膜化したもののCuKαに対するX線回折スペクトルを図14に示す。粉砕分散時にα型オキシチタニウムフタロシアニンとなっていることが判る。
【0164】
以上で得られたそれぞれの感光体サンプルをペーパーアナライザEPA8100(川口電気社製)を用いて評価した。尚、この評価方法は特開平5−273775号公報に開示されている評価方法(評価1)に従うものである。
【0165】
−80μAの放電条件で5秒間帯電し、帯電直後の表面電位[Va]、5秒間暗中放置後の表面電位[Vi]、表面照度が2(lux)になるように露光し、表面電位が1/2Viになるまでの露光量[E1/2(lux・sec)]を求めた。
【0166】
さらに式: D=(Va−Vi)/Va×100
により暗所における電位の減衰率[D(%)]を求めた。結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
上記評価において、特定構造のフタロシアニン化合物の単独結晶を用いた比較例の感光体は帯電性、電荷保持能に一見優れるように見えるが、E1/2を見れば実用に供し得ないことは明らかである。然して、実施例1、2の本発明の電子写真感光体は、その特徴たる特定の混晶を用いているので、帯電性、電荷保持能、感度という基本的な電子写真特性のバランスは良好であり、各比較例との比較から明らかな様に、とりわけ感度において極めて優れている。
【0169】
尚、上記実施例1或いは2のフタロシアニン化合物結晶を混晶、或いはそれを含有する結晶と称する由縁に付き以下説明を加える。
【0170】
本発明者らは、オキシチタニウムフタロシアニンに対し過剰量の2,3−ブタンジオールを反応させることによって、反応生成物を得、そのものの単結晶X線構造解析から、当該反応生成物の分子構造が下記の化合物G
【0171】
【化43】
【0172】
であることを確認した。更にその解析結果から、粉末X線回折スペクトルを計算的に厳密に再現したものが、前述の比較例1〜4の図9〜12に示したものと一致することを確認した。従って、当該比較例で得られたフタロシアニン化合物結晶は、付加比率1:1で生成する前記化合物Gの単独結晶に他ならない。
【0173】
然して、本発明の特徴たる混晶、例えば前述実施例1のフタロシアニン化合物結晶は、図7に示す如く、粉末X線回折スペクトルは、前記比較例のそれとは明らかに異なるものであって、また、Massスペクトル等によって、当該フタロシアニン化合物結晶にオキシチタニウムフタロシアニン及び化合物Gの両者の混在が認められ、更に、比較例5に記載のβ型オキシチタニウムフタロシアニン、比較例6に記載のα型オキシチタニウムフタロシアニン、等の既存の如何なる結晶型オキシチタニウムフタロシアニンとも異なる結晶型を示すこと等から、当該フタロシアニン化合物結晶はオキシチタニウムフタロシアニンと化合物Gとから成る混晶である。
【0174】
尚、当該混晶はオキシチタニウムフタロシアニンと化合物Gとの、組成比30/70〜70/30の範囲内に入る混晶であると推定される。また、実施例2のフタロシアニン結晶では、Massスペクトル等によって、オキシチタニウムフタロシアニン及び化合物Gの両者の混在が認められ、更に図8に示す如く、実施例1のフタロシアニン化合物結晶(混晶)の粉末X線回折スペクトルパターンとβ型オキシチタニウムフタロシアニンのそれが観察されることから、両者結晶の混合物であることが判る。
【0175】
ところで、上記では、式(1)で表されるフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶を例に本発明を具体的に説明したが、本発明には、例えば次の実施態様が包含される。
【0176】
1.炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物と、オキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶を含有する電子写真感光体。
【0177】
2.炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物が、炭素原子数4以上のアルキレングリコールとオキシチタニウムフタロシアニン化合物との脱水閉環化合物である上記1記載の電子写真感光体。
【0178】
3.炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物が、2,3−ブチレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物である上記1記載の電子写真感光体。
【0179】
4.炭素原子数4以上のアルキレングリコールとオキシチタニウムフタロシアニン化合物との脱水閉環化合物が、2,3−ブタンジオール化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との脱水閉環化合物である上記2記載の電子写真感光体。
【0180】
5.混晶が、オキシチタニウムフタロシアニン化合物1.0モル当たり、炭素原子数4以上のアルキレングリコール0.5〜1.5モルの反応仕込割合で反応させた、炭素原子数4以上のアルキレングリコールとオキシチタニウムフタロシアニン化合物との脱水閉環化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶である上記1記載の電子写真感光体。
【0181】
6.混晶が、オキシチタニウムフタロシアニン化合物1.0モル当たり、2,3−ブタンジオール0.5〜1.5モルの反応仕込割合で反応させた、2,3−ブタンジオールとオキシチタニウムフタロシアニン化合物との脱水閉環化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶である上記1記載の電子写真感光体。
【0182】
7.混晶が、オキシチタニウムフタロシアニン化合物1.0モル当たり、meso−2,3−ブタンジオールを必須成分とする2,3−ブタンジオール0.5〜1.5モルの反応仕込割合で反応させた、2,3−ブタンジオールとオキシチタニウムフタロシアニン化合物との脱水閉環化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物との混晶である上記1記載の電子写真感光体。
【0183】
8.meso−2,3−ブタンジオールを必須成分とする2,3−ブタンジオールが、次の▲1▼〜▲4▼の4形態のうちの一つである前記7記載の電子写真感光体。
▲1▼ meso−2,3−ブタンジオールのみ。
▲2▼ meso−2,3−ブタンジオールと(2R,3R)−(−)−2,3−ブタンジオールのみの2者混合物。
▲3▼ meso−2,3−ブタンジオールと(2S,3S)−(+)−2,3−ブタンジオールのみの2者混合物。
▲4▼ meso−2,3−ブタンジオールと(2R,3R)−(−)−2,3−ブタンジオールと(2S,3S)−(+)−2,3−ブタンジオールのみの3者混合物。
【0184】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、炭素原子数4以上のアルキレングリコラートチタニウム環を有するフタロシアニン化合物とオキシチタニウムフタロシアニン化合物の混晶を用いるので、優れた感度を有しており、実用上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係わる電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係わる電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係わる電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図5】実施例1で得た粗オキシチタニウムフタロシアニンのCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図6】実施例1で得たアモルファス状態のオキシチタニウムフタロシアニン乾燥粉末のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図7】実施例1で得た本発明に係わる混晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図8】実施例2で得た本発明に係わる混晶を含有するフタロシアニン結晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図9】比較例1で得たフタロシアニン結晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図10】比較例2で得たフタロシアニン結晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図11】比較例3で得たフタロシアニン結晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図12】比較例4で得たフタロシアニン結晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図13】比較例5で得たフタロシアニン結晶のCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【図14】比較例6の感光体に用いた電荷発生剤分散液を塗膜化したもののCuKαに対するX線回折スペクトル図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 電荷担体発生層
3 電荷輸送層
4a 感光層
4b 感光層
4c 感光層
4d 感光層
5 電荷担体発生物質
6 電荷移動媒体
7 電子写真感光体
8 光導電性材料
9 結合剤
Claims (4)
- β型オキシチタニウムフタロシアニンに対して2,3ブタンジオール0.2〜0.8モル当量を反応させて生じる反応生成物を電荷発生層に含有する電子写真感光体。
- β型オキシチタニウムフタロシアニンに対する2,3ブタンジオール0.3〜0.7モル当量を反応させて生じる反応生成物を電荷発生層に含有する電子写真感光体。
- 前記2,3ブタンジオールはトレオ型/エリトロ型の組成比が40/60以上である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記2,3ブタンジオールはトレオ型/エリトロ型の組成比が80/20以上である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
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