JP3763948B2 - ポリエステル繊維およびそれを含む布帛 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は特殊な断面形状を有する繊維および該繊維を含む布帛であって、発色性、濃色性、風合いの優れた布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステル繊維はその屈折率の高さから絹や羊毛等の天然繊維、レ−ヨンやベンベルグ等の再生繊維、アクリルやナイロン等の合成繊維に比較して発色性が劣る欠点があった。かかる欠点を改良するために、ポリエステル繊維表面に光の波長オ−ダ−の凹凸を形成させる方法(特開昭54−129728号公報等)、低屈折率の樹脂の被膜をプラズマ重合などによりポリエステル繊維表面に形成させる方法(特開平1−92478号公報等)が提案され、また後加工剤の開発も成されている。
しかるに、発色性の効果の発現が不十分であったり、被膜の経時的な剥離脱落を来してしまうことがあった。
また、偏平断面繊維に捩れる性質を与え、布帛表面に対し偏平断面繊維が立った状態、いわゆるベルベット効果により濃色と光沢を与える方法も提案されているが、布帛の組織、構造に制限があるので汎用性に欠けるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとうする課題】
本発明者等はこれらの欠点を改善し、発色性、濃色性、風合いにより優れた、しかも汎用性の高い布帛を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、繊維断面の長径(R1)と短径(R2)との比(R1/R2)が1.2以上、2.5以下、該断面形状が、厚み2ミクロン以上、4ミクロン以下、長さ13ミクロン以上、30ミクロン以下の平板状部分が前記長径に対応する中央部分で線対称的に連結した構造であり、隣り合う平板状部分の間隔が3ミクロン以下である繊維であって、平均粒子径が10nm以上、800nm以下の無機微粒子を1重量%以上、30重量%以下含むポリエステルからなる繊維を含む布帛によって達成される。
【0005】
【発明の実施形態】
本発明の布帛を構成する繊維についてまず説明する。
該繊維は以下に示す特徴を有する異形断面繊維である。
(i)繊維断面の長径(R1)と短径(R2)との比(R1/R2)が1.2以上、2.5以下であること。
(ii)厚み2ミクロン以上、4ミクロン以下、長さが13ミクロン以上、30ミクロン以下の平板状部分が長径に対応する中央部分で線対称的に連結した断面構造を有すること。
(iii)隣合う平板状部分の間隔が3ミクロン以下であること。
【0006】
上記(i)〜(iii)の特徴を有する断面形状の繊維において、平板状部分間の3ミクロン以下という空隙が光の吸収効果を発揮し、該繊維を用いて布帛を作成した場合、いわゆるベルベット効果により濃色効果を発現するのである。
さらに該平板状部分が繊維断面の長軸に対応する中央部分で線対称に連結されているので平板状部分間の間隔が確保され、染色加工などの後加工により平板状部分が近接接近して平板状部分間の空間がなくなることに起因するベルベット効果の喪失を抑制することができるのである。
さらに該平板状部分の厚みは2ミクロン以上、4ミクロン以下であることが重要である。該厚みが2ミクロン未満の場合には後加工工程で該平板状部分が変形を来しやすく、中央部分の連結部の効果は喪失する。一方、該厚みが4ミクロンを越えると単繊維の外周を形成する面積が多くなり、連続的になるので、風合いの改良効果が減少し、またベルベット効果も減殺されてしまうのである。
【0007】
また、該繊維の断面において長径(R1)と短径(R2)の比が1.2以上、2.5以下である必要がある。これは該繊維からなる布帛表面に、該繊維の平板状部分がより垂直の状態で存在している確率を高め、ベルベット効果を損なわないための必要条件であり、好ましくは該比(R1/R2)が1.5以上、2.2以下の範囲である。
通常、衣料用のポリエステル繊維の単繊維繊度は特殊な場合を除き約10デニ−ル以下であるので、長径と短径との比がこの範囲を外れると、平板状部分間で形成される空隙部分の深さ、すなわち平板状部分の長さが短くなり、ベルベット効果が不十分となり、本発明の効果は奏されない結果となる。また、製糸時にゴデットロ−ラ上で繊維束がバラケ易くなるなどの工程上のトラブルを誘発する場合がある。
したがって、かかる点を考慮すると、上述の平板状部分の長さは13ミクロン以上、30ミクロン以下であることが必要である。
かかる長径と短径の比は、単繊維間で均一であっても、不均一であってもよく、上述の範囲内であれば問題はない。しかしながら製糸工程性を考慮すると、均一ではなく、ある程度の不均一性を有していることになる。
【0008】
また、繊維断面の空隙率は20%以上であることが好ましい。かかる空隙率が小さいと上述のベルベット効果が十分に発揮されなくなってしまう。
さらに、本発明においては平板状部分の先端部が接合していないことも重要である。接合してしまうと、中空繊維状となってしまい、ベルベット効果が発揮されないばかりか、光の反射により白ぼけた色調となってしまう。また接合しないまでも、平板上部分の間隔が中央部分と先端部とで異なる、すなわち平板状部分の先端部での該間隔が狭くなると、加工剤、たとえば吸汗加工剤や、一次帯電防止剤等が空隙部にに入り込み、洗濯等の耐久性が低下する。
該空隙率の測定方法は、適当な倍率(たとえば200〜500倍)で繊維断面の写真を撮り、隣り合う平板状部分の先端を結んだ線を引き、平板状部分と空隙部の面積より空隙部を算出することができる。
【0009】
次に、上述の異形断面繊維を形成するポリエステルについて説明する。
本発明に使用されるポリエステルとは、その構成残基の80モル%以上がエチレンテレフタレ−ト残基、またはブチレンテレフタレ−ト残基であるものを示す。そして、第3成分として、たとえばイソフタル酸、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、プロピレングリコ−ル、1,3−プロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル等の直鎖脂肪族ジオ−ル、シクロヘキサンジオ−ル等の脂環式ジオ−ルなどを挙げることができる。
また、かかるポリエステルの重合度は、ベ−スポリマ−の種類や第3成分の含有量等によって大きく異なってくるが、固有粘度で表示すると、固有粘度が0.4〜2.0の範囲にあることが好ましい。要は繊維形成性を有していることが必要である。該固有粘度はフェノ−ル/テトラクロロエタンの等重量混合溶媒、ウベロ−デ型粘度管を用い、30℃で測定された値である。
【0010】
さらに、かかるポリエステルには通常繊維に含有される添加剤、たとえば艶消剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を必要に応じて含有させることができる。また必要に応じて顔料等を含有させた原着糸とすることも可能である。とくに、濃色の黒を得る場合には、カ−ボンブラックをポリエステルに含有させることも一つの有力な手段である。
【0011】
本発明においては、ポリエステルに無機微粒子を含有させることが風合いの改良の点で必須条件である。
該微粒子は平均粒径が10nm以上、800nm以下、好ましくは30nm以上、400nm以下である。微粒子の平均粒径とは、走査型電子顕微鏡により微粒子を観察し、粒径に応じて1000倍から50000倍の倍率で撮影した画面中で無作為に抽出した1000個の単粒子の最大径の平均値を示す。
【0012】
該微粒子のポリエステルへの含有量は1重量%以上、30重量%以下、好ましくは4重量%以上である。風合的にはより多くの微粒子を含有させることが好ましいが、製糸工程を考慮すると、現在の強化された混練技術をもってしても、最大で30重量%が上限であり、22重量%程度が安定に製糸できる範囲である。
微粒子をポリエステルに多量に含有分散させる方法として、ポリエステルと微粒子とを媒体ミル等を用いて混合して微粒子をポリエステル中に高度に分散させる方法;微粒子含有ポリエステルを二軸押出機等を用いて高度のシア−を与え、凝集している微粒子を微分散させる方法などを挙げることができる。
【0013】
また、ポリエステルに微粒子を含有させることによりポリエステル繊維の表面形態が変化し、合成繊維に特有なワキシ−感が減少して好ましい風合いとすることができるのである。とくに後述するが、アルカリ処理により本発明の繊維を得ようとした場合、微粒子の種類にもよるが、本発明のポリエステル繊維表面に複雑なクレ−タが形成され、非常に好ましい風合いとなるのである。無論、アルカリ処理によらず、本発明のポリエステル繊維を得る場合にも、さらにアルカリ処理を5〜30重量%程度行うことにより同様な効果を得ることができる。
【0014】
上述のごとき効果を奏するためにポリエステルに含有される微粒子の種類としては、シリカ、硫酸バリウム、タルク、ゼオライト、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム等の無機微粒子を挙げることができ、なかでもコロイダルシリカ、硫酸バリウムが好ましい。
【0015】
本発明のポリエステル繊維は、特殊なノズルを用いてダイレクトに製糸することも可能ではあるが、ポリエステルとそれよりアルカリ溶解速度が大きいポリマ−からなる複合繊維から、アルカリ溶解速度が大きいポリマ−をアルカリにより溶解除去する方法、ポリエステルと非相溶性、すなわち接着性の弱いポリマ−からなる複合繊維を紡糸後の工程で分割する方法などを用いることが好ましい。
前者の方法において、上述のポリエステルよりアルカリ溶解速度の速いポリマ−として、スルホイソフタル酸アルカリ金属塩を1〜5モル%共重合し、さらに分子量数千〜数万のポリアルキレングリコ−ルを2〜10重量%含有したポリエステル;分子量数千〜数万のポリアルキレングリコ−ルを共重合したポリエステル等を挙げることができる。このようなポリエステルと上述のポリエステルとを複合紡糸して、アルカリにより一方のポリエステルを溶解除去することにより、本発明で規定する断面構造の繊維を得ることができるのである。
【0016】
また、後者の方法において、上述のポリエステルと接着性の弱いポリマ−としてナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体、ポリスチレンなどを挙げることができる。これらのポリマ−とポリエステルとを組み合わせて複合紡糸し、紡糸以降の工程、たとえば染色工程などにおいて熱水により分割処理を行って、本発明のごとき断面構造の繊維を得ることができるのである。ポリマ−としてポリアミドを用いる場合には分割処理としてベンジルアルコ−ル、安息香酸を用いることができる。後者の方法ではポリエステル繊維単独の繊維束とはならないが、必要に応じてはポリマ−のみを溶解する溶剤、たとえばポリマ−がポリエチレンの場合にはトルエンを用いて除去することも可能である。
もちろん、後者の方法により得られた繊維束、すなわち本発明で規定する断面構造のポリエステル繊維と他のポリマ−からなる繊維との繊維束を意匠糸して利用することも可能である。
【0017】
本発明のポリエステル繊維は布帛に用いたときに、その異形断面効果を非常に発揮するのである。本発明で規定する断面構造を図1に示すが、かかる断面構造でわかるように、本発明のポリエステル繊維は合成繊維に見られるワキシ−感の低下による風合いの改良と発色性に優れているが、該繊維を用いて布帛にすることにより、該繊維の長径が布帛表面に対して特定の角度に傾斜するのである。この傾斜によりベルベット効果が発現してより濃色効果を発揮することができるのである。
【0018】
本発明の布帛に含有される上述の異形断面構造のポリエステル繊維は20重量%以上であり、30重量%以上が好ましく、布帛表面に占有する該ポリエステル繊維は布帛表面の30%以上、とくに50%以上であることがベルベット効果の発現の点で必要である。そして、布帛表面を占有する該ポリエステル繊維の55%以上が、その断面構造の長径が45度以下の傾斜角度を有していることが重要である。該繊維の断面構造の長径が特定の傾斜角度を満足することが、濃色性、発色性の両方を満足するのである。より高度な濃色性、発色性を得るには布帛表面を占有する該ポリエステル繊維の50%以上が、上述の傾斜角度を満足していることが好ましい。
本発明のポリエステル繊維の長径の、布帛表面に対する傾斜角度θは45度以下であり、とくに40度以下であることが好ましい。傾斜角度が大きいとベルベット効果が発現せず、濃色効果を発揮することができない。すなわち、図2に示されるように、該繊維の長径の傾斜角度が大きいと、該繊維断面形状の平板状部分が布帛表面に対してほぼ水平になり、光の反射のランダム性が損なわれ、濃色性が劣ることになる。
【0019】
本発明において、布帛とは不織布、織物、編物等の繊維構造物すべてを包含するものであり、布帛表面とは布帛表面を示す断面が可能な限り一直線になるように伸展して写真撮影を行い、設定したものである。
【0020】
上述の異形断面構造のポリエステル繊維の布帛表面の占有量は、布帛の切断面を電子顕微鏡または光学顕微鏡を用いて、繊維繊度および布帛構成に適応した倍率(50〜200倍が適当)で異なる5画面を撮影し、その最表面に存在する繊維を計数して求めるものである。
【0021】
また、布帛表面に存在する本発明のポリエステル繊維の布帛表面に対する傾きは、布帛表面の該ポリエステル繊維の占有率の計数と同様にして、図2に示すように、断面写真から設定される布帛の表面に対する該繊維の長径の傾斜角度で示し、その傾斜角度が45度以下の繊維の平均値で示した。
さらに、布帛表面に存在する本発明の異形断面構造のポリエステル繊維全体に対する、傾斜角度が45度以下の繊維の割合は、上述の断面写真から算出し、その平均値で示した。
なお、布帛が経編、緯編、丸編等の編物の場合には形成されている編組織のル−プの先端付近の該繊維の長径の傾きを測定するものとする。
【0022】
本発明のポリエステル繊維を布帛表面でかなりの確率で傾斜させるには、該ポリエステル繊維を含む布帛に後加工段階で捩れ発現処理を施すことが好ましい。この捩れ発現処理とは、リラックサ−、ワッシャ−、ル−プ乾燥機、ピンテンタ−、染色機等を任意に用いることによって行うことができる。
【0023】
本発明のポリエステル繊維は平板状部分間に空間が存在するので、後加工剤の保持性がとくに優れており、たとえば親水化剤、帯電防止剤、撥水剤、各種蛋白質(コラ−ゲン、セリシン等)、スクアラン等の薬剤の保持性が高まり、そのまま、または種類、加工方法の工夫によりドライクリ−ニングや家庭洗濯等を数十回繰り返しても十分な性能保持が認められる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値は上述の方法により測定算出された値である。また繊維断面構造の各部分の測定値は、繊維断面を電子顕微鏡で写真撮影して計測した値であり、染色物の濃色性は以下の方法により測定算出された値である。
染色物の濃色性
分光光度計C−2000S型カラ−アナライザ−を用いて染色物の三刺激値(X,Y,Z)および色度座標(x,y)を測定し、L* 値を以下の関係式により算出した。該値が小さい程濃色性が良好である。
L* =116(Y/100)1/3 −16
【0025】
実施例1
平均粒径130nmのコロイダルシリカ(日産化学社社製)を3.0重量%含有するポリエチレンテレフタレ−ト(固有粘度η=0.70)と、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩5モル%、分子量2000のポリエチレングリコ−ル4重量%含有したポリエチレンテレフタレ−ト(固有粘度η=0.68)を複合紡糸機を用いて、複合比前者:後者=2:1(重量比)、楕円形ノズルから速度1000m/分で紡糸し、図3に示す断面形状の複合繊維を得た。この紡糸原糸を3.5倍に延伸し、75デニ−ル/24フィラメントの延伸糸を得た。断面を光学顕微鏡で観測したところ、長径と短径の比は2であった。
ついで該延伸糸を用いて筒編み地を作成し、減量率38重量%のアルカリ処理を行い、本発明で規定する断面形状の繊維(異形断面繊維と称する)を得た。この断面形状を光学顕微鏡100倍で観測し、それぞれの部位の大きさを測定した。測定結果を表1に示す。
また、該延伸糸を経糸として使用して横サテン組織の織物を作成した。該織物をリラックス処理し、アルカリ減量を行い(減量率35重量%)、下記の条件で黒色に染色してファイナルセットを行ったところ、極めて濃色に染色され、L*値も13.5であり、風合いも良好であった。
【0026】
染色条件
Kayalon Polyester Black G-FS(日本化薬社製) 12%owf
分散助剤: Disper TL (明成化学工業社製) 1g/リットル
pH調整剤: 酢酸(48%) 1cc/リットル
浴比 1:50
温度 130℃
時間 30分
還元洗浄
ハイドロサルファイト 1g/リットル
アミラジン 1g/リットル
水酸化ナトリウム 1g/リットル
浴比 1:30
温度 80℃
時間 20分
【0027】
この染色された織物を経糸に平行に切断し、電子顕微鏡にて100倍の倍率で写真撮影し、本発明の異形断面繊維の長径の織物表面に対する傾斜角度θを測定したところ、織物表面に占有する異形断面の繊維のうち、91%が該傾斜角度が45度以下であり、その平均値は21度であった。
【0028】
実施例2
平均粒径80nmのコロイダルシリカ(日産化学社製)を3重量%含有するポリエチレンテレフタレ−ト(固有粘度η=0.70)と、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩5モル%、分子量2000のポリエチレングリコ−ル4重量%含有したポリエチレンテレフタレ−ト(固有粘度η=0.68)を複合紡糸機を用いて、複合比前者:後者=2:1(重量比)、楕円形ノズルから速度1000m/分で紡糸し、図3に示す断面形状の複合繊維を得た。この紡糸原糸を3.5倍に延伸し、75デニ−ル/24フィラメントの延伸糸を得た。断面を光学顕微鏡で観測したところ、長径と短径の比は2であった。
ついで該延伸糸を用いて筒編み地を作成し、減量率35重量%のアルカリ処理を行い、本発明で規定する断面形状の繊維を得た。この断面形状を光学顕微鏡100倍で観測し、それぞれの部位の大きさを測定した。測定結果を表1に示す。
また、該延伸糸を用いて実施例1と同様にして横サテン織物を作成し、リラックス処理、アルカリ減量、染色処理、ファイナルセットを行った。得られた染色物のL* 値は13.5であり、濃色性に優れていた。
さらに、実施例1と同様にして織物表面に位置する本発明の異形断面繊維の長径の角度θを観測したところ、織物表面に占有する異形断面の繊維のうち、90%が該傾斜角度が45度以下であり、その平均値は21度であった。
【0029】
比較例1
実施例1において、アルカリ減量処理後の異形断面繊維の断面形状を平板状部分間隔を大きくすべくノズルを変更した以外は同様にして複合紡糸、延伸を行った。得られた延伸糸の断面の長径/短径比は1.9であった。また、アルカリ処理後の断面形状は表1に示すように、平板状部分間隔は3.8ミクロンであった。
さらに、該延伸糸を経糸に用いて横サテン織物を作成し、リラックス処理、アルカリ減量、染色処理、ファイナルセットを行った。得られた染色物のL* 値は16.9であった。風合いもレギュラ−ポリエステルに比較すると好ましいものであったが、実施例で得られた織物に比較すると不満足であった。
また、実施例1と同様にして織物表面に位置する上述の異形断面繊維の長径の角度θを観測したところ、織物表面に占有する異形断面の繊維のうち、75%が該傾斜角度が45度以下であり、その平均値は20度であった。
【0030】
比較例2
実施例1において、楕円形ノズルに変えて円形ノズルを使用した以外は同様にして複合紡糸、延伸を行った。得られた延伸糸の断面を光学顕微鏡で観測したところ、長径/短径の比はほぼ1であった。該延伸糸のアルカリ減量後の断面構造をの各々部位の長さを測定したところ表1に示す値であった。また、該延伸糸を経糸として使用して横サテン織物を作成し、リラックス処理、アルカリ減量、染色処理、ファイナルセットを行った。得られた染色物のL* 値は16.8であり、濃色性の劣ったものであった。
また、実施例1と同様にして織物表面に位置する上述の異形断面繊維の長径の角度θを観測したところ、織物表面に占有する異形断面の繊維のうち、50%が該傾斜角度が45度以下であり、その平均値は45度であった。
【0031】
実施例3
平均粒径80nmのコロイダルシリカ(日産化学社製)を1重量%含有するポリエチレンテレフタレ−ト(固有粘度η=0.64)と、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体(エチレン含有量40モル%、MI=15)を用い、実施例1で使用した楕円形のノズルを使用して、複合比前者/後者=2/1の割合とし、4500m/分の速度で紡糸延伸を行い、75デニ−ル/24フィラメントの延伸糸を得た。紡出した糸条を冷却筒で冷却したのち、200℃に加熱された加熱細管(10cmΦ×1.8m)で加熱延伸する紡糸装置を用いた。
この延伸糸を光学顕微鏡で観察したところ、長径/短径は2.1であった。
また、該延伸糸を経糸として使用し、横サテン織物を作成し、実施例1と同様にしてリラックス処理、染色処理を行った。得られた染色物のL* 値は15.0であり、良好な濃色性を示した。上述の延伸糸はリラックス処理により、ポリエスエル異形断面繊維とエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維に分割され、ポリエステル繊維の断面構造を光学顕微鏡で観察したところ、表1に示す形状であった。
また、実施例1と同様にして織物表面に位置する上述の異形断面繊維の長径の角度θを観測したところ、織物表面に占有する異形断面の繊維のうち、98%が該傾斜角度が45度以下であり、その平均値は10度であった。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
特殊な断面構造を有しているポリエステル繊維を含む布帛は、該繊維の断面で規定する長径が布帛表面と特定の角度で傾斜しているので、濃色性、発色性に優れるばかりでなく、ポリエステル繊維特有のワキシ−感もなく風合いの良好なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル繊維断面構造を示す一例図である。
【図2】布帛表面における本発明の繊維の布帛表面に対する傾斜角度を示す一例図である。
【図3】本発明のポリエステル繊維を得るための複合繊維の断面形状の一例である。
【符号の説明】
a:平板状部分
b:中央部分
D:平板状部分の厚み
L:隣り合う平板状部分の間隔
R1:繊維断面の長径
R2:繊維断面の短径
Claims (1)
- 繊維断面の長径(R1)と短径(R2)との比(R1/R2)が1.2以上、2.5以下であって、該断面形状が、厚み2ミクロン以上、4ミクロン以下、長さ13ミクロン以上、30ミクロン以下の平板状部分が前記長径に対応する中央部分で線対称的に連結した構造であり、隣り合う該平板状部分の間隔が3ミクロン以下である繊維であって、平均粒子径が10nm以上、800nm以下の無機微粒子を1重量%以上、30重量%以下含むポリエステルからなることを特徴とするポリエステル繊維。
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