JP3763791B2 - 開口部装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物室内の開口部装置にかかり、特にコンパクトな開閉機構を備えた開口部装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、室内ドアの開閉機構として、ピボットヒンジや、蝶番機構が使用されてきた。例えば、特許第2780962号公報には、図11に示されるようなピボットヒンジが開示されている。図11において、戸体74は、は上部ピボットヒンジ70と不図示の下部ピボットヒンジを介して、枠体75に取付けられている。上部ピボットヒンジ70は、垂直な軸71と、軸71の周りに回動可能に設けられた互いに平行な水平面を持つ二枚の水平部材72、73、とを備えている。この水平部材72の上面が枠体75の上枠下面に、また、水平部材73の下面が戸体74の上端面に取付けられている。そして枠体75に固定された水平部材72に対して、軸71の周りに水平部材73が回動されることにより、枠体75に対して戸体74の開閉動作が実現される。
【0003】
一方、例えば特開平11−107609の公報には、図12に示されるような蝶番機構の一例が開示されている。図12において、戸体88は枠体89に上部蝶番機構80aと、下部蝶番機構80bとを介して取付けられている。図12においては、蝶番機構80a、80bを明確に示すため、上下の部分が拡大表示され、中央部は、省略されている。なお、図12の蝶番機構に関する以下の説明において、上下の蝶番機構の区別をする場合には符号の後に「a」、「b」を付加し、その必要がない場合には符号の後に「a」、「b」を付さずに説明する。
【0004】
図12において、蝶番機構80は、垂直な軸81と、軸81の周りに回動可能に設けられ上下に配置された2枚の垂直面をそれぞれ備えた垂直部82、83とを具備している。そして、垂直部82の一面側は戸体88の側端面に、他の垂直部83の一面側は枠体89の縦枠に取付けられている。そして、枠体89に固定された垂直部83に対して、軸81の周りに垂直部82が回動されることにより、枠体89に対して戸体88の開閉動作が実現されている。また、この蝶番機構においては、垂直部83は紙面手前側と奥側に配置された二枚の平面板にて構成されており、これら二枚の平面板の位置関係を調整ねじ84〜86にて相対的に変化させることにより、枠体89と戸体88との、開口面に対して左右方向及び手前/奥方向の位置の微調整が可能なように構成されている。さらに、下部蝶番機構80bの軸81bの軸心と共通の軸心を持つ調整ねじ87の先端部を軸81bの上端部に当接させ、調節ねじ87を回動させて上下方向に移動することにより、枠体89と戸体88との上下方向に関する位置の微調整を可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ピボットヒンジは平行な水平面を持つ二つの部材が、垂直軸の周りに回動するという構造をもつため、どうしても戸体の開放側に上記二つの部材が張り出すように突出し、室内開口部デザイン上の制約となるという問題があった。特に戸体を180°回動させようとすると、張り出し長さをいきおい長くせざるを得ないという問題があった。また、ピボットヒンジは、その構造上枠体と戸体との相対位置関係の微調整を行う調整機構を内部に取り込みにくく、実際に微調整を行う場合には比較的大掛かりな取付け作業を必要とするという問題もあった。
【0006】
一方、蝶番機構は、上下方向に二枚の平面を必要とするので、軸を上下方向に長く設けざるを得ず、戸体を閉めた状態でも、筒状の軸支持部が長く目立ってしまい、ここにおいてもデザイン上の制約となってしまうという問題があった。
【0007】
また、昨今の洋風化された家屋や、高層マンション等においては、近代的なデザインの戸体と調和して目立ちにくい、コンパクトなサイズの開閉機構が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、コンパクトなサイズにまとめられて目立ちにくく、大きな張り出し部を設けることなく180°回動ができ、戸体と枠体との相対位置の微調整をする調整機構を内部に備え、デザイン上の制約になりにくい開閉機構を備えた開口部装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、枠体(1)と、この枠体に上部開閉機構(3)と下部開閉機構(4)とを介して開閉可能に取付けられる戸体(2)とを具備する開口部装置(10)において、上部開閉機構は、枠体の上枠に取付けられるとともに少なくとも一部に水平な面を備えた上部固定ヒンジ(3b)と、戸体に取付けられ上部固定ヒンジの水平な面内の一点を貫通する垂直軸心の周りに回動する垂直な面を備えた上部回動部(3a)と、垂直軸心を共有し、上部固定ヒンジ又は上部回動部のいずれか一方に取付けられ、他方に略水平方向からはめ込まれることが可能とされた軸(23)と、を備え、下部開閉機構は、枠体の縦枠に取付けられるとともに少なくとも一部に水平な面を備えた下部固定ヒンジ(4b)と、戸体に取付けられ下部固定ヒンジの水平な面内の一点を貫通する垂直軸心の周りに回動する垂直な面を備えた下部回動部(4a)と、垂直軸心を共有し、下部固定ヒンジ又は下部回動部のいずれか一方に取付けられ、他方に垂直方向に嵌入可能とされた軸(55)と、を備え、枠体に戸体が上部及び下部開閉機構を介して組み付けられた状態で、上部固定ヒンジ下面と上部回動部上端面との間の垂直方向距離は、下部開閉機構における軸の嵌入長さより短く設けられていることを特徴とする開口部装置を提供して前記課題を解決する。
【0011】
本発明の開口部装置の開閉機構はいわば、枠体側に取付けられたピボットヒンジ(水平な部材)と、戸体側に取付けられた蝶番(垂直な部材)とを、垂直な軸の周りに回動可能に取付けたものである。したがって、水平な部材と垂直な部材とが垂直軸を介して直交方向に組み合わされているので、開閉機構全体の大きさをコンパクトなものとしつつ、開口部からの張り出し部分を最小限におさえることができる。
【0015】
また、本発明の開口部装置によれば、まず下部開閉機構にて戸体を枠体に係止し、しかる後に戸体を引き起こして上部開閉機構の軸を水平方向に固定ヒンジ又は回動部はめ込むようにして、容易に戸体を枠体に吊り込むことができる。また、例えば下部に物体があり、戸体がそれに乗り上げた場合、下部開閉機構において軸が抜け落ちる前に、上部開閉機構の回動部上端面と固定ヒンジの下面とが干渉してその動きを規制するので、戸体が枠体より抜け落ちることを未然に防止することができる。
【0017】
さらに本発明の開口部装置によれば、上部固定ヒンジは上枠に取付けられるので、一平面の部材にて構成することができる。したがって簡素な構造となるので、製造の際に手間が少なく、コストをおさえることができる。また取付けの際に一平面のみを考慮すればよいので、位置決めを容易なものとすることができる。一方、下部固定ヒンジは、縦枠に当接される垂直面と、その垂直面と直交する水平面とを有するので、垂直面の縦枠への当接位置を調節することにより、垂直方向に自由に取付け位置を定めることができる。特にこのような構造は、バリアフリーの開口部を形成する際に有用なものとなる。
【0018】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
図1は、開口部装置10を示す斜視図であり、(a)は、戸体が半ば開いた状態、(b)は戸体が閉められた状態をそれぞれ示している。四辺の枠にて構成される枠体1には、上部開閉機構3、及び下部開閉機構4を介して戸体2が取付けられている。上部開閉機構3は、垂直面を備えた回動部3aと、少なくとも一部に水平部を備えた固定ヒンジ3bとを備えている。また下部開閉機構4は、垂直面を備えた回動部4aと、少なくとも一部に水平部を備えた固定ヒンジ4bとを備えている。上下一対の固定ヒンジ3b、4bは、枠体1の上枠及び縦枠にそれぞれ取付けられている。一方、上下一対の回動部3a、4aは、戸体2の側端部(図の右側端)の上端近傍と、下端近傍とにそれぞれ取付けられている。そして、回動部3a、4aは、それぞれ固定ヒンジ3b、4bの水平部の一点を貫通する垂直軸心(不図示)の周りに回動可能に構成されており、これによって、枠体1に対して戸体2の開閉動作が確保されている。
【0021】
以下に、図2〜図5を参照しつつ、第一実施形態の開口部装置、及び図6〜図9を参照しつつ第二実施形態の開口部装置の詳細につき説明する。なお、上下の開閉機構、回動部、及び固定ヒンジに関して図1において使用した符号3、4、3a、4a、3b、4bを以下の第一実施形態及び第二実施形態に関する説明及び図面においてそのまま使用するが、これらの具体的な形状等は、本発明の要旨あるいは技術思想の範囲内で、第一実施形態と第二実施形態との間で異なるものとなることを否定するものではない。
【0022】
(第一実施形態)
以下に図2〜図5を参照しつつ、第一実施形態にかかる開口部装置の回動部3a及び4a、並びに固定ヒンジ3b及び4bの詳細について説明する。
【0023】
図2(a)は、上部開閉機構3の回動部3aの正面図を示しており、図2(b)は図2(a)のB−B視断面図である。図2において、上部開閉機構3の回動部3aは、一体に設けられた軸部20と、旗状部21と、これら軸部20及び旗状部21とは別体に設けられた戸体取付け部22とを備えている。軸部20は、軸23と、その下部外周面を包み込むように円筒形に形成された内部筒状部25とを備えている。内部筒状部25の内周面と軸23の外周面とは密着し固定されている。なお、軸23は、コアとなる鉄心23aの外周囲を潤滑性のある摺動材24で覆うように構成されている。旗状部21は、内部筒状部25の外周面をさらに包み込むように円筒形に形成された外部筒状部26と、外部筒状部26の外側面に垂直方向に取付けられた平板状の連結部27とを備えている。外部筒状部26の内周面と内部筒状部25の外周面とは密着の上、固定されている。したがって、軸23と、内部筒状部25と、外部筒状部26との三者は固定されており、前記のごとく軸部20と旗状部21とは一体となっている。
【0024】
連結部27には水平方向横長に2つの長孔28a、28bが形成されている。この長孔28a、28bに、戸体取付け部22に取付けられた不図示の2本の固定金具を差し入れて締め付けることにより、連結部27と、戸体取付け部22とが固定されるように構成されている。戸体取付け部22には調整ねじ29が取付けられている。調整ねじ29は、二つの長孔28a、28bを結ぶ線から戸体取付け部22の外周側にずらされた位置に取付けられている。調整ねじ29はその頭部が連結部27の一面側に当接されている。また調整ねじ29のねじ部は戸体取付け部22に螺合されている。戸体取付け部22の四隅近傍には4つの取付け孔30a〜30dが設けられている。これら4つの取付け孔30a〜30dに固定金具を差し入れて、戸体取付け部22を戸体2に固定することにより、回動部3aは戸体2に固定される。
【0025】
旗状部21の連結部27と、戸体取付け部22とは以下に説明する戸体取付け位置の微調整を行うため、開口部の奥/手前、及び左右方向に相対的に位置を変えることが可能とされている。開口部に対して戸体の奥/手前方向(図2(a)において左右方向)への微調整は、長孔28a、28bに差し入れた固定金具を緩め、戸体取付け部22を図の左右方向にスライドさせることにより実現される。一方、開口部に対して戸体の左右方向(図2(a)において紙面手前/奥方向)への微調整は、調整ねじ29を回動して、連結部27と戸体取付け部22とのなす角度を変化させる(図2(b)参照)ことにより実現される。以上に説明した調整機構は後に図4に基づいて説明する下部開閉機構4の回動部4aにも備えられている。
【0026】
図3(a)は、上部開閉機構3の固定ヒンジ3bを示す図である。固定ヒンジ3bは、固定板32と、固定板32の表面上をスライドしつつ回動するように構成されたシャッタ35とを備えている(図3(a)では、シャッタ35が固定板32から取り外された状態が示されている。)。固定板32は、概略長方形の平板部32aと、平板部32aの一辺から略「J」字形に伸ばされて形成された湾曲部32bとを備えている。平板部32aには、4つの孔33a、33b、33c、33dが設けられている。固定板32は、その上面側が枠体1の上枠下面に当接される。そしてこれら4つの孔33a、33b、33c、33dに固定金具を差し入れて、固定板32が枠体1の上枠下面に固定される。これにより、固定ヒンジ3bが枠体1に固定される。湾曲部32bには、回動部3aの軸23を横方向から差し入れることができるように形成された、切り欠き部34が設けられている。軸23が切り欠き部34に嵌入されると、シャッタ35を固定板32上にスライドしつつ回動し、切り欠き部34の開口を閉鎖して、軸23の横方向への変位により回動部3aが固定ヒンジ3bから脱落するのを防止することができる(図3(b)参照)。
【0027】
以上説明したように上部開閉機構3において、固定ヒンジ3bの固定板32は枠体1の上枠に取付けられ、回動部3aは、戸体2の側部端面に取付けられているので、固定ヒンジ3bと回動部3aとは、直交する二平面上にそれぞれ配置されている位置関係にある。したがって開閉機構全体の大きさをコンパクトなものとしつつ、水平方向への張り出し長さを小さくおさえることができる。また、戸体2に取付けられる回動部3aの構造は基本的に従来の蝶番機構と同様であるので、従来の蝶番機構に適用し得る戸体の位置微調整機構をそのまま適用することができる。
【0028】
固定板32は、上枠に取付ける構造のため平面板を所定形状に形成するだけでよく、加工が容易で手間がかからないという利点がある。これを、縦枠に取付けることができるように構成することも可能である。この場合には、固定板は、直角に折り返された2平面を備える形状を持つ。したがって、上枠に取付ける場合に比べ、加工に手間がかかる。しかし、取付け位置を縦枠上に自由に決定することができるという利点がある。
【0029】
図4は、下部開閉機構4の回動部4aを、図5は、下部開閉機構4の固定ヒンジ4bをそれぞれ示す図である。まず、図4及び図5を参照しつつ、下部開閉機構4の特徴的部分について説明する。下部開閉機構4においては、回動の中心となる垂直な軸は、固定ヒンジ4b側に設けられている。一方回動部4aには、下方に開口を設けた嵌入孔が設けられ、この嵌入孔に上記軸が下方から嵌入されて、回動部4aが垂直軸の周りに回動される構成となっている。以下にこれらの詳細について説明する。
【0030】
図4において、回動部4aは、軸受入部40と、旗状部41と戸体取付け部42とを備えている。旗状部41は、筒状部43と筒状部43の外側面に垂直に取付けられた平板状の連結部44とを備えている。筒状部43は中空円筒形に形成されており、その中空部が軸受入部40を形成している。筒状部43には、その上面及び外周部全体を覆うように円筒状のカバー部材45が取付けられている。カバー部材45の円筒外周部には垂直方向にスリットが設けられ、このスリットに旗状部41の連結部44を差し入れることができる。このような構成をとることによりカバー部材45は、筒状部43に着脱可能とされている。筒状部43には、その内周面に接触するよう円筒状の内部筒状部46が固定されて取付けられている。内部筒状部46の円筒内周面には雌ねじが形成されている。この雌ねじに螺合するように垂直方向に調整ねじ47が取付けられている。筒状部43内部において、調整ねじ47は、上部にねじ頭部47aが、下部にねじ先端部47bが位置するように配置されている。筒状部43からカバー部材45を取り除くと、筒状部43の天面開口43aに調整ねじ頭部47aが露出する。したがって、この天面開口43aからドライバ等を差し入れて調整ねじ47を回動することができる。筒状部43の下部内周側には、上記調整ねじ47のねじ先端部47bに接するように摺動部材48が設けられている。摺動部材48は、円筒状に形成され、摺動部材48の上部には円形の天板48aが設けられている。摺動部材48の外周面は、筒状部43の内周面に面接触しており、両者は上下方向に相対移動が可能とされている。摺動部材48の天板上面48aは、上記したように調整ねじ先端部47bに当接されている。摺動部材48の下部には開口が設けられ、その開口から上方に向けて、後述する下部固定ヒンジ4bに設けられた軸55(図4下部に鎖線で示されている。)が差し入れられるべき嵌入孔49が形成されている。
【0031】
連結部44には、調整機構を介して戸体取付け部42が取付けられ、戸体取付け部42は戸体2に取付けられている。連結部44と戸体取付け部42との左右、手前/奥方向に関する相対位置の微調整は調整機構により行われている。これらの構成は、上部開閉機構3と同様であり、すでに説明したのでここでは説明を省略する。
【0032】
図5において、(a)は、固定ヒンジ4bの平面図、(b)は正面図をそれぞれ示している。固定ヒンジ4bは、ヒンジ本体50と、ヒンジ本体50に取付けられた軸55とを備えている。ヒンジ本体50は、垂直な面により構成される垂直部51と、垂直部51の下端から水平方向に延伸するように形成された水平部52とを備えている。水平部52の一端側には垂直な軸55が水平部52を上下に貫通するように取付けられている。軸55の直径は、回動部4aの嵌入孔49の内径よりわずかに小さく設けられている。軸55は水平部52に固定されており、ヒンジ本体50と軸55とは、一体に構成されている。水平部52上面の軸55の周囲には固体潤滑性を有する材料で形成された円板状の受け部材56が設けられている。
【0033】
ヒンジ本体50の垂直部51には四つの孔57a〜57dが設けられている。垂直部51の一面側が枠体1の縦枠に当接され、これら四つの孔57a〜57dに固定金具が差し入れられて、固定ヒンジ4bが枠体1に固定される。そして、回動部4aの嵌入孔49に軸55を下方から差し入れることにより、固定ヒンジ4bと、回動部4aとが連結されて下部開閉機構4が機能する状態とされる。
【0034】
図4に戻り、回動部4aの調整ねじ47を回動させると、調整ねじ先端部47bが上下し、ねじ先端部47bに当接されている摺動部材48もそれに伴って筒状部43の内周面に沿って上下動する。摺動部材48は軸55により常に上向きの力を受けているからである。したがって、調整ねじ47を下方に押し込むように回動させると、回動部4aが上方に押し上げられ、これによって、戸体2が枠体1に対して相対的に上方に移動される。一方調整ねじ47を上方に変位するように回動させると、回動部4aが下降し、これによって、戸体2が枠体1に対して相対的に下方に移動される。このようにして、調整ねじ47を回動させることにより、戸体2の上下方向の位置を微調整することができる。
【0035】
なお、枠体1に戸体2が上部開閉機構3、及び下部開閉機構4を介して組み付けられた状態において、上部開閉機構3における固定ヒンジ3b下面と回動部3a上端面との間の垂直方向距離は、下部開閉機構4における軸55の摺動部材48嵌入孔49への嵌入長さより短く設けられている。したがって、例えば、下部物体に戸体が乗り上げたような場合に、戸体2が枠体1に対して上方に浮き上がるように変位しても、下部開閉機構4において、軸55が摺動部材48から抜けて外れてしまう前に、上部開閉機構3において、回動部3aの上端面が固定ヒンジ3bの下面に突き当たり、それ以上の戸体2の上方への変位は規制される。したがって、戸体2が枠体1からはずれ落ちることが防止される。
【0036】
(第二実施形態)
以下に図6〜図9を参照しつつ、第二実施形態にかかる開口部装置の回動部3a及び4a、並びに固定ヒンジ3bおよび4bの詳細について説明する。
【0037】
図6(a)は、上部開閉機構3の回動部3aの正面図を示しており、図6(b)は図6(a)のB−B視垂直断面図、図6(c)は、図6(a)のC−C視水平断面図である。図6において、上部開閉機構3の回動部3aは、一体に設けられた軸部120と、旗状部121と、これら軸部120及び旗状部121とは別体に設けられた戸体取付け部122とを備えている。軸部120は、軸123と軸123の上部に固定して取付けられたストッパ124とを備えている。また軸部120にはその下部外周面を包み込むように円筒形に形成された内部筒状部125が取付けられている。内部筒状部125の内周面と軸123の外周面とは密着し固定されている。旗状部121は、内部筒状部125の外周面を包み込むように円筒形に形成された外部筒状部126と、外部筒状部126の外側面に垂直方向に取付けられた平板状の連結部127とを備えている。外部筒状部126の内周面と内部筒状部125の外周面とは密着の上、固定されている。したがって、軸123と、内部筒状部125と、外部筒状部126との三者は固定されており、前記のごとく軸部120と旗状部121とは一体となっている。
【0038】
連結部127には水平方向横長に2本の長孔128a、128bが形成されている。この長孔128a、128bに、戸体取付け部122に取付けられた不図示の2本の固定金具を差し入れて締め付けることにより、連結部127と、戸体取付け部122とが固定されるように構成されている。戸体取付け部122の中央部付近には、水平方向に二つの調整ねじ129a、129bが取付けられている。外部筒状部126側の調整ねじ129aは連結部127を貫通するように取付けられ、外部筒状部126から離れた位置にある調整ねじ129bは、そのねじ頭部が連結部127の一面側に当接するように取付けられている。戸体取付け部122の四隅近傍には4つの取付け孔130a〜130dが設けられている。これら4つの取付け孔130a〜130dに固定金具を差し入れて、戸体取付け部122を戸体2に固定することにより、回動部3aは戸体2に固定される。
【0039】
図6(a)において、旗状部121の連結部127と、戸体取付け部122とは以下に説明する戸体取付け位置の微調整を行うため、図の奥/手前方向、及び左右方向に相対的に位置を変えることが可能となっている。開口部に対して戸体の奥/手前方向(図6(a)において左右方向)への微調整は、長孔128a、128bに差し入れた固定金具を緩め、戸体取付け部122を図の左右方向にスライドさせることにより実現される。一方、開口部に対して戸体の左右方向(図6(a)において紙面手前/奥方向)への微調整は、調整ねじ129a、129bにより、連結部127と戸体取付け部122とのなす角度を変化させる(図6(c)参照)ことにより実現される。以上に説明した調整機構は後に図8に基づいて説明する下部開閉機構4の回動部4aにも備えられている。
【0040】
図7は、上部開閉機構3の固定ヒンジ3bを示す図である。固定ヒンジ3bは、平板状の固定板132と、固定板132に取付けられるとともに、固定板132の表面上をその姿勢を保持しつつスライドするように取付けられたシャッタ135と、固定板132上の軸136aの周りに固定板132と平行な平面上をスライドして回動するように設けられたカバー部材136とを備えている。固定板132は、概略「て」の字形に形成されており、「て」の字の上部にあたる直線状に形成された固定部132aと、屈曲形状の張り出し部132bとを備えている。固定部132aには、3つの孔133a、133b、133cが設けられている。固定部132aは、その上面側が枠体1の上枠下面に当接される。そしてこれら3つの孔133a、133b、133cに固定金具を差し入れて、固定板132が枠体1の上枠下面に固定される。これにより、固定ヒンジ3bが枠体1に固定される。一方張り出し部132bには、回動部3aの軸123を横方向から差し入れることができるように形成された、切り欠き部134が設けられている。
【0041】
軸123が切り欠き部134に嵌入されると、シャッタ135を図の斜め右下方向にスライドさせて、切り欠き部134の開口を閉鎖して、軸123の横方向への変位により回動部3aが固定ヒンジ3bから脱落するのを防止することができる。
【0042】
以上説明したように上部開閉機構3において、固定ヒンジ3bの固定板132は枠体1の上枠に取付けられ、回動部3aは、戸体2の側部端面に取付けられているので、固定ヒンジ3bと回動部3aとは、直交する二平面上にそれぞれ配置されている位置関係にある。したがって開閉機構全体の大きさをコンパクトなものとしつつ、水平方向への張り出し長さを小さくおさえることができる。また、戸体2に取付けられる回動部3aの構造は基本的に従来の蝶番機構と同様であるので、従来の蝶番機構に適用し得る戸体の位置微調整機構をそのまま適用することができる。
【0043】
固定板132は、上枠に取付ける構造のため平面板を所定形状に形成するだけでよく、加工が容易で手間がかからないという利点がある。これを、縦枠に取付けることができるように構成することも可能である。この場合には、固定板は、直角に折り返された2平面を備える形状を持つ。したがって、上枠に取付ける場合に比べ、加工に手間がかかる。しかし、取付け位置を縦枠上に自由に決定することができるという利点もある。
【0044】
図8は、下部開閉機構4の回動部4aを、図9は、下部開閉機構4の固定ヒンジ4bをそれぞれ示す図である。以下に図8及び図9を参照しつつ、第二実施形態の下部開閉機構4の特徴的部分について説明する。
【0045】
下部開閉機構4においては、回動の中心となる垂直な軸は、固定ヒンジ4b側に設けられている。一方回動部4aには、下方に開口を設けた嵌入孔が設けられ、この嵌入孔に上記軸が下方から嵌入されて、回動部4aが垂直軸の周りに回動される構成となっている。
【0046】
図8の回動部4aにおいて、図8(b)は図8(a)のB−B視水平断面、図8(c)は図8(a)のC−C視垂直断面を示している。図8において、回動部4aは、旗状部140と戸体取付け部141とを備えている。旗状部140は、筒状部142と筒状部142の外側面に垂直に取付けられた平板状の連結部143とを備えている。筒状部142は中空円筒形に形成されており、その内周面に接触するよう円筒状の内部筒状部146が固定されて取付けられている。内部筒状部146の上部には円形の天板が形成されており、天板中央部には調整ねじ144が垂直方向に螺合して取付けられている。筒状部142の内部において、上記調整ねじ144の下方には摺動部材145が設けられている。摺動部材145は、円筒状に形成され、摺動部材145の上部にも円形の天板が設けられている。摺動部材145の外周面は、内部筒状部146の内周面に面接触しており、両者は上下方向に相対移動が可能とされている。摺動部材145の天板上面は、調整ねじ144の下端に当接されている。また摺動部材145の下面には開口が設けられ、その開口から上方に向けて後述する下部固定ヒンジ4bに設けられた軸155(図9参照)が差し入れられるべき嵌入孔147が形成されている。
【0047】
連結部143には、調整機構を介して戸体取付け部141が取付けられ、戸体取付け部141は戸体2に取付けられている。連結部143と戸体取付け部141との左右、手前/奥方向に関する相対位置の微調整は調整機構により行われている。これらの構成は、上部開閉機構3と同様であり、すでに説明したのでここでは説明を省略する。
【0048】
図9において、(a)は、固定ヒンジ4bが枠体1に取付けられた状態での姿勢における平面図、(b)は正面図、(c)は側面図をそれぞれ示している。固定ヒンジ4bは、ヒンジ本体150と、ヒンジ本体150に取付けられた軸155とを備えている。ヒンジ本体150は、垂直な3つの面により構成される垂直部151〜153と、垂直部に連続して形成される水平な面を持つ水平部154とを備えている。垂直部は、水平断面形状が略「S」字型に形成されており、第一垂直部151と、第二垂直部152と、第三垂直部153とを備えている。水平部154は第三垂直部153の下端に取付けられている。水平部154のほぼ中央には垂直な軸155が水平部154を上下に貫通するように取付けられている。軸155の直径は、回動部4aの嵌入孔147の内径よりわずかに小さく設けられている。軸155は水平部154に固定されており、ヒンジ本体150と軸155とは、一体に構成されている。水平部154上面の軸155の周囲には、固体潤滑性を有する材料により形成された円板状の受け部材156が設けられている。
【0049】
ヒンジ本体150の第一垂直部151には四つの孔157a〜157dが設けられている。第一垂直部151の一面側が枠体1の縦枠に当接され、これら四つの孔157a〜157dに固定金具が差し入れられて、固定ヒンジ4bが枠体1に固定される。そして、回動部4aの嵌入孔147に軸155を下方から差し入れることにより、固定ヒンジ4bと、回動部4aとが連結されて下部開閉機構4が機能する状態とされる。
【0050】
図8に戻り、回動部4aの調整ねじ144を回動させると、調整ねじ144の先端部が上下し、ねじ先端部に当接されている摺動部材145もそれに伴って内部筒状部146の内周面に沿って上下動する。摺動部材145の嵌入孔147に嵌入されている軸155の先端部は摺動部材145の天板下面に当接している。したがって、調整ねじ144を下方に押し込むように回動させると、軸155は固定されているので、回動部4aが上方に押し上げられ、これによって、戸体2が枠体1に対して相対的に上方に移動される。このようにして、調整ねじ144を回動させることにより、戸体2の上下方向の位置を微調整することができる。
【0051】
なお、枠体1に戸体2が上部開閉機構3、及び下部開閉機構4を介して組み付けられた状態において、上部開閉機構3における固定ヒンジ3b下面と回動部3a上端面との間の垂直方向距離は、下部開閉機構4における軸155の嵌入孔147への嵌入長さより短く設けられている。したがって、例えば戸体2が何らかの物体に乗り上げて、戸体2が枠体1に対して上方に浮き上がるように変位しても、下部開閉機構4において、軸155が摺動部材145から抜けて外れてしまう前に、上部開閉機構3において、回動部3aの上端面が固定ヒンジ3bの下面に突き当たり、それ以上の戸体2の上方への変位は規制される。したがって、戸体2が枠体1からはずれ落ちることが防止される。
【0052】
以上で、第二実施形態に関する説明を終わる。以下の説明は第一実施形態及び第二実施形態に共通するものである。
【0053】
図10は、枠体1への戸体2の吊り込みを示す図である。まず戸体2を持ち上げて、下部開閉機構4の回動部4aの嵌入孔49(第二実施形態においては嵌入孔147。以下第二実施形態における符号が第一実施形態と異なる場合、カッコ内に第二実施形態の符号のみ示す。)に、固定ヒンジ4bの軸55(155)を下方から差し入れる(図10(a))。しかる後に戸体2を引き起こし、上部開閉機構3の回動部3aの軸23(123)を水平方向に固定ヒンジ3bの切り欠き部34(134)に挿入して、ストッパ35(第二実施形態においてはシャッタ135)にて両者を固定する。このようにして戸体2を枠体1へ容易に吊り込むことが可能である。
【0054】
以上の説明では、上部開閉機構3においては回動部3aに、下部開閉機構4においては固定ヒンジ4bに軸23、55(123、155)を設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上部開閉機構3において固定ヒンジ3bに、下部開閉機構4においては回動部4aにそれぞれ軸を設けるように構成してもよい。また、下部開閉機構4において、固定ヒンジ4bは、枠体1の縦枠に取付ける例を説明したが、これを下枠に取付けることも可能である。
【0055】
また、上部開閉機構3において、軸23(123)は内部筒状部25(125)に固定されている旨説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸23(123)を内部筒状部25(125)内で、上下方向に摺動可能に取付けるようにしてもよい。このように構成した場合には、軸23(123)を水平方向に固定ヒンジ3bの切り欠き部34(134)に挿入する場合に、軸23(123)を持ち上げるようにして行えば、挿入作業をより容易なものとすることができる。
【0056】
なお、枠体1や戸体2に取付けられる上部開閉機構3の戸体取付け部22(122)、及び固定板32(132)、並びに下部開閉機構4の戸体取付け部42(141)、及び垂直板51(第二実施形態においては第一垂直板151)はそれぞれに厚さを有するので、枠体1や戸体2におけるこれらを取付ける部分は上記厚さが埋め込まれるように切り欠いておくことが美観上好ましい。
【0057】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0058】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1の開口部装置によれば、水平な部材と垂直な部材とが垂直軸を介して直交方向に組み合わされているので、開閉機構全体の大きさをコンパクトなものとしつつ、開口部からの張り出し部分を最小限におさえることができる。
【0059】
また、請求項2の開口部装置によれば、開閉機構の戸体側に取付けられる回動部は従来の蝶番機構と同様な構造とすることができるので、この部分に従来の蝶番機構に組み込まれている調整機構と同様の調整機構を組み込むことが可能である。したがって、開閉機構のコンパクトなサイズを実現しつつ、建付け時の枠体と戸体との微妙な位置関係のずれを建付け直後に容易に調整することが可能である。
【0060】
請求項3の開口部装置によれば、まず下部開閉機構にて戸体を枠体に係止し、しかる後に戸体を引き起こして上部開閉機構の軸を水平方向に固定ヒンジ又は回動部はめ込むようにして、容易に戸体を枠体に吊り込むことができる。また、例えば、下部に物体があり、戸体がそれに乗り上げた場合、下部開閉機構において軸が抜け落ちる前に、上部開閉機構の回動部上端面と固定ヒンジの下面とが干渉してその動きを規制するので、戸体が枠体より抜け落ちることを未然に防止することができる。
【0061】
さらに、請求項4の開口部装置によれば、上部固定ヒンジは上枠に取付けられるので、一平面の部材にて構成することができる。したがって簡素な構造となるので、製造の際に手間が少なく、コストをおさえることができる。また取付けの際に一平面のみを考慮すればよいので、位置決めを容易なものとすることができる。一方、下部固定ヒンジは、縦枠に当接される垂直面と、その垂直面と直交する水平面を有するので、垂直面の縦枠への当接位置を調節することにより、垂直方向に自由に取付け位置を定めることができる。特にこのような構造は、バリアフリーの開口部を形成する際に有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】開口部装置を示す斜視図である。
【図2】第一実施形態の上部開閉機構の回動部を示す図である。
【図3】第一実施形態の上部開閉機構の固定ヒンジを示す図である。
【図4】第一実施形態の下部開閉機構の回動部を示す図である。
【図5】第一実施形態の下部開閉機構の固定ヒンジを示す図である。
【図6】第二実施形態の上部開閉機構の回動部を示す図である。
【図7】第二実施形態の上部開閉機構の固定ヒンジを示す図である。
【図8】第二実施形態の下部開閉機構の回動部を示す図である。
【図9】第二実施形態の下部開閉機構の固定ヒンジを示す図である。
【図10】枠体への戸体の吊り込みを示す図である。
【図11】従来のピボットヒンジの一例を示す図である。
【図12】従来の蝶番機構の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 枠体
2 戸体
3 上部開閉機構
3a (上部)回動部
3b (上部)固定ヒンジ
4 下部開閉機構
4a (下部)回動部
4b (下部)固定ヒンジ
10 開口部装置
23 軸
28a 長孔
28b 長孔
29 調整ねじ
47 調整ねじ
55 軸
Claims (1)
- 枠体と、この枠体に上部開閉機構と下部開閉機構とを介して開閉可能に取付けられる戸体とを具備する開口部装置において、
前記上部開閉機構は、前記枠体の上枠に取付けられるとともに少なくとも一部に水平な面を備えた上部固定ヒンジと、
前記戸体に取付けられ前記上部固定ヒンジの水平な面内の一点を貫通する垂直軸心の周りに回動する垂直な面を備えた上部回動部と、
前記垂直軸心を共有し、前記上部固定ヒンジ又は前記上部回動部のいずれか一方に取付けられ、他方に略水平方向からはめ込まれることが可能とされた軸と、を備え、
前記下部開閉機構は、前記枠体の縦枠に取付けられるとともに少なくとも一部に水平な面を備えた下部固定ヒンジと、
前記戸体に取付けられ前記下部固定ヒンジの水平な面内の一点を貫通する垂直軸心の周りに回動する垂直な面を備えた下部回動部と、
前記垂直軸心を共有し、前記下部固定ヒンジ又は前記下部回動部のいずれか一方に取付けられ、他方に垂直方向に嵌入可能とされた軸と、を備え、
前記枠体に前記戸体が前記上部及び下部開閉機構を介して組み付けられた状態で、前記上部固定ヒンジ下面と前記上部回動部上端面との間の垂直方向距離は、前記下部開閉機構における前記軸の嵌入長さより短く設けられていることを特徴とする開口部装置。
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