JP3763325B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電流の注入により発光する発光材料および有機ホール輸送材料等をその構成要素として含む有機電界発光素子に関し、さらに詳しくは、陽極からホール輸送層へのホール注入手段に特徴を有する有機電界発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コンピュータやテレビジョン等の情報通信端末機器の画像表示用ディスプレイとしてはブラウン管が最も普及しており、これは輝度が高く色再現性が良い特長を有する反面、嵩高で重く、消費電力が大きい問題点を有する。このため、軽量薄型で高効率のフラットパネルディスプレイへの要望が大きい。
現在最も多用されているフラットパネルディスプレイはアクティブマトリクス駆動方式の液晶ディスプレイであるが、視野角が狭い点、自発光でないためバックライトを使用する場合にはこのバックライトの消費電力が大きい点、今後実用化が期待される高精細度かつ高速のビデオ信号に対して十分な応答性を有さない点、そして大画面サイズのディスプレイを製造する場合の均一性やコスト高等の問題点がある。
液晶ディスプレイに替わるフラットパネルディスプレイの候補として発光ダイオードの可能性もあるが、大面積の単一基板上への発光ダイオードマトリクスの製造は困難であり、ブラウン管に置き替わる低コストのディスプレイとなるには至っていない。
【0003】
これらの諸問題を解決する可能性を有するフラットパネルディスプレイとして、最近有機電界発光素子が注目されている。これは、自発光で応答速度が大きく、視野角依存性がない長所を有する。
【0004】
有機発光材料を用いた有機電界発光素子は、透光性の陽極と金属陰極との間に、有機発光材料を含む有機電界発光層を挟み込んだものである。C.W.Tang and S.A.VanSlyke らは、有機電界発光層をホール輸送層と電子輸送層との2層構成とし、陽極および陰極から有機電界発光層に注入されるホールと電子が再結合する際に発光する素子構造を最初に報告した(Appl. Phys. Lett.,51(12), 913-915 (Sept.1987))。この素子構造はホール輸送層または電子輸送層のいずれかが発光層を兼ねているものである。発光は、発光材料の基底状態と励起状態とのエネルギギャップに対応した波長帯で起きる。このように有機電界発光層を2層構造としたことで、駆動電圧の大幅な削減、発光効率の向上が図られ、これ以来、全固体型のフラットパネルディスプレイ等への応用を目指した研究が進められている。高発光効率を得るための発光材料としては、亜鉛錯体やアルミニウム錯体等、種々の金属錯体が現在までに提案されている。
【0005】
素子構造についても、その後C.Adachi, T.Tsutsui and S.Saito らによりホール輸送層、発光層および電子輸送層の3層構造とした例が Jap. J. of Appl. Phys. 27-2, L269-L271 (1988)に報告された。さらに、電子輸送層に発光材料を含ませ、発光層を兼ねる電子輸送層とホール輸送層との2層構造が、C.W.Tang, S.A.VanSlyke and C.H.Chen らにより、J. of Appl. Phys. 65-9, 3610-3616 (1989)に報告された。これらの報告により、低電圧で高輝度発光の可能性が検証され、有機電界発光素子の研究開発は近年極めて活発におこなわれている。
【0006】
しかしながら、有機EL素子の実用化に向けては、発光輝度あるいは耐久性等、解決すべき問題がいくつか残されている。高い発光輝度と、経時安定性に優れた有機電界発光素子の実現のためには、ホール輸送能力に優れた、耐久性のある素子構造を開発する必要がある。
【0007】
有機電界発光素子の初期の研究段階においては、ホール輸送材料として下式(2)に示すTPD(N,N'- diphenyl-N,N'- bis(3-methylphenyl)-1,1'-biphenyl-4,4'-diamineが使用されてきた。しかしながら、TPDは融点が約170℃、ガラス転移点が約60℃と比較的低いので、有機電界発光素子のホール輸送材料として使用した場合、発光駆動時に発光以外に消費される無効電流が熱に変換されるためによる素子温度の上昇に伴い、非発光欠陥の発生や、甚だしい場合にはホール輸送層の融解が起こり発光が停止する場合があった。
【0008】
【化2】
【0009】
これらの不都合を解決するため、式(2)で示されるTPDのN置換基を、N,N'-naphthyl phenylとした化合物(米国特許第 5061569号明細書)、また式(2)で示されるTPDの中心に位置する bipheny基を naphthalene基とした化合物(例えば、特開平8-87122 号公報)、anthracene基とした化合物(例えば、特開平8-53397 号公報)、あるいは phenanthlene 基とした化合物(例えば、特開平8-20770 号公報、特開平8-20771 号公報)等が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれの化合物も総合的に満足のゆくホール輸送性能を備えた材料には至っていない。すなわち、ホール輸送材料の性能向上の他に、陽極からホール輸送層へのホール注入段階におけるホール注入の高効率化をも併せて考慮し、総合的なホール輸送能力を高める必要がある。
本発明はかかる技術背景に鑑み提案するものであり、陽極とホール輸送層間におけるホール輸送性能と耐久性に優れた有機電界発光素子を提供し、有機電界発光素子のさらなる一層の性能向上を図ることをその課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を達成するために提案するものである。
すなわち、本発明の有機電界発光素子は、
陽極と陰極との間に、ホール輸送層を含む有機電界発光層を挟持した構造を有し、前記陽極と前記ホール輸送層との間に、さらにホール注入層を有する有機電界発光素子において、前記ホール注入層は、下記一般式(1)で示される少なくとも一種のテトラフェニル金属化合物を有することを特徴とするものである。
【化1】
(式中、Mは金属原子を表す。)
【0012】
本発明の有機電界発光素子の好ましい素子構成としては、
陽極上に、
ホール注入層と、
ホール輸送層と、発光層と、電子輸送層とからなる有機電界発光層と、
陰極とが、
この順に順次積層された構造を有することを特徴とする。
電子輸送層は発光層を兼用してもよい。また有機電界発光層中に、螢光色素を含有させてもよい。かかる層構造を採用することにより、高輝度かつ耐久性に優れたエレクトロルミネセンス素子を得ることができる。
【0013】
本発明におけるホール注入層は、下記一般式(1)で示される少なくとも一種のテトラフェニル金属化合物を有することを特徴とする。
【0014】
【化3】
一般式(1)中、Mは金属原子を表す。好ましい金属原子としては、Ge、Sn、Pb、AsおよびAt等が例示される。またこれらテトラフェニル金属化合物は塩素、臭素等ハロゲンの塩であってもよい。
【0015】
本発明におけるホール注入層の厚さは、10nm以下であることが望ましい。ホール注入層の厚さの下限は、均一な連続膜として形成されれば特に限定されないが、成膜装置における膜厚制御の観点からは1分子層厚以上、実用的には0.5nm以上が望ましい。
【0016】
本発明の有機電界発光素子は、陽極とホール輸送層との間に新たに極く薄いホール注入層を設けたので、ITO等透明導電材料からなる陽極と、ホール輸送層との界面における密着性が向上し、ホール注入効率が向上する。またこのホール注入層は、素子発熱時においてITO等の透明導電材料からの酸素や吸着水等のホール輸送層への拡散を防止するバリア層としても機能し、ホール輸送材料の劣化を防止する。さらに、これは推定の段階ではあるが、ITO等の金属酸化物のエネルギ準位と、有機物であるホール輸送材料のエネルギ準位との中間のエネルギ準位を有するテトラフェニル金属化合物層を挿入することにより、この面からもホール注入効率の向上に寄与するものと考えられる。このように、ホール注入層は陽極とホール輸送層間の界面状態を制御するものであるから、その膜厚は10nm以下の薄膜で十分である。
これらの総合的な作用により、ホール輸送効率が向上するので、高輝度かつ耐久性に優れた有機電界発光素子を作製することができる。
またこのテトラフェニル金属化合物は昇華性であり、分子線蒸着法等の手段により、膜厚の制御された緻密な膜を容易に成膜することが可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しつつさらに詳しく説明する。
はじめに、本発明の有機電界発光素子をEL素子に適用した素子構成につき、図1(a)〜(d)に示す概略断面図を参照して説明する。これらのうち、図1(a)は透過型の有機電界発光素子、図1(b)は反射型の有機電界発光素子の素子構成を示す。また図1(c)および図1(d)は、有機電界発光層3部分の拡大断面図である。
いずれの素子構造においても、符号1はガラス、プラスチックス等の透明材料やその他適宜の材料からなる基板である。有機電界発光素子を他の表示素子や駆動回路等と組み合わせて使用する場合には、基板1を共用することができる。符号2は陽極であり、ITO(Indium Tin Oxide)やSnO2 の他に、Sb含有SnO2 、Al含有ZnOあるいはAu薄膜等の透明導電材料からなる。またポリチオフェン、ポリピロール等の導電性高分子薄膜を用いてもよい。陽極の電気抵抗値は、素子の消費電力や発熱を低減するために、低抵抗であることが望ましい。陽極の成膜方法は特に限定されず、電子ビーム等による真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等その他を適宜採用できる。
【0018】
符号11は本発明の有機電界発光素子の特徴部分であり、陽極2とホール輸送層6の間に挿入されるホール注入層である。ホール注入層11は先述した一般式(1)で示されるテトラフェニル金属化合物の一種あるいは混合物から構成され、その成膜方法は抵抗加熱等による真空蒸着法、イオンプレーティング法、分子線蒸着法、分子線エピタキシ法等の真空技術を用いた成膜法の他に、化学修飾法、スピンコート法あるいはLB(Langmuir-Brodjet)法等の湿式成膜法を用いることができる。ホール注入層11は10nm以下の極薄膜であるので、膜厚制御性のよい成膜方法を採用することが望ましい。
【0019】
符号3は有機電界発光層であり、この層構成については後述する。
【0020】
符号4は陰極であり、電極材料としては例えばLi、Mg、Ca等の低仕事関数の活性な金属と、Ag、Al、In等との合金あるいは積層構造を採用することができる。成膜法は特に限定されず、抵抗加熱等の真空蒸着法、イオンプレーティング法あるいはスパッタリング法等を採用できる。図1(a)に示す透過型の有機電界発光素子の場合には、この陰極4の厚さを調節することにより、用途に合った光透過率を得ることができる。また陰極4の導電性を補完するために、さらITOやSnO2 等の透明導電膜4aを積層して用いてもよい。符号5は保護層であり、気密性を満たす材料であればプラスチックス等の有機材料やSiO2 等の無機材料を問わずいずれも採用できる。
【0021】
有機電界発光層3の基本構成は、有機電界発光を得ることができる層構成であれば、従来から提案されているいずれの構造をも採用できる。すなわち、図1(c)に示すように、陽極2/ホール輸送層6/発光層7/電子輸送層8/陰極4の順に積層した3層構造の他に、ホール輸送層6および電子輸送層8のいずれかが発光性を有する場合には、発光層7をこれらの層で兼用し、図1(d)に示すように、陽極2/ホール輸送層6/電子輸送層8/陰極4の2層構造とすることも可能である。
【0022】
ホール輸送層6はホール輸送材料単独で、あるいはホール輸送材料を有機高分子等のマトリクス中に均質に分散して形成される。ホール輸送材料としては、先に式(2)に示したTPDや、そのビフェニル骨格を縮合環に置換した化合物、N−イソプロピルカルバゾール等の3級アミン類、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体やフタロシアニン誘導体で代表される複素環化合物、ポリマ系ではこれら単量体を側鎖に有するポリカーボネート誘導体やポリスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールあるいはポリシラン等が好ましく使用できるが、特に限定はされない。
【0023】
発光層に用いる発光材料としては、下記式(3)で示される Tris-(8-hydroxyquinoline)-aluminium(以下、Alqと略記する)、アントラセン、ピレンの他に、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、そしてポリマ系ではポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体等を使用できるが、これらに限定されるものではない。
また発光層に添加するドーパントとして、ルブレン、キナクリドン誘導体、DCM、ペリノン、ペリレン、クマリン等を使用してもよい。
【0024】
【化4】
【0025】
電子輸送層に用いる電子輸送材料としては、電子注入効率および電子輸送効率が高い物質であればよく、そのためには電子親和力および電子移動度が大きく、安定性が高く、さらに製造時および発光時に不純物を発生しない材料であることが望ましい。かかる材料としては、先述した式(3)で示されるAlqが例示されるが、他の材料でもよい。
【0026】
かかる各種有機発光材料は、各材料そのものを順次積層することにより形成されるが、高分子ポリマ中に分散して積層し、陽極および陰極間に挟持してもよい。高分子ポリマとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン等が例示されるがこれらに限定されることはない。
発光に寄与するこれら各層の形成方法は、抵抗加熱や電子ビーム等による蒸着法、イオンプレーティング法、分子線蒸着法、分子線エピタキシ法、スパッタリング法等の乾式成膜法が好ましいが、この他にも化学修飾法、スピンコート法、LB法等の湿式成膜法を用いることも可能である。
【0027】
ホールあるいは電子の電荷輸送性能を向上するためには、ホール輸送層6と電子輸送層8のいずれか一方あるいは両方が、複数種の材料を積層した構造、あるいは複数種の材料を混合した構造であってもよい。また発光性能を向上するために、ホール輸送層6、発光層7および電子輸送層8のいずれか一つの層あるいは複数の層に、螢光材料を含有させてもよい。かかる螢光材料としては特に限定されないが、例えばキナクリドンや下記構造式(4)で示されるDCM(4−ジシアノメチレン−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−2−メチル4H−ピラン)等が例示される。これらの場合には、発光効率をさらに改善するために、ホールまたは電子の輸送を制御するための薄膜をその層構成に含ませることも可能である。
【0028】
【化5】
【0029】
図1(c)に示したEL素子においては、陽極2と陰極4の間に直流電圧を印加することにより、陽極2から注入されたホールがホール輸送層6を経て、また陰極4から注入された電子が電子輸送層8を経て、それぞれ発光層7に到達する。この結果、発光層7においては電子/ホールの再結合が生じて一重項励起子が生成し、この一重項励起子から所定波長の発光を発生する。図1(d)に示す発光層を省略した層構成の場合には、ホール輸送層6と電子輸送層8の界面から所定波長の発光を発生する。これらの発光は基板1側から観測される。また図1(a)に示した透過型のEL素子の場合には、発光は保護層5側からも観測される。
【0030】
有機電界発光素子に印加する電流は通常直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は素子破壊しない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、可及的に小さい電気エネルギで効率良く発光させることが望ましい。
【0031】
本発明の発光素子を実際の有機EL素子に適用した具体例を、図2の概略斜視図に示す。
図2のEL素子は、ホール輸送層6と、発光層7および電子輸送層8のいずれか少なくとも一方からなる積層体を、陰極4と陽極2の間に配設したものである。陰極4と陽極2は、ともにストライプ状にパターニングするとともに互いにマトリクス状に直交させ、シフトレジスタ内蔵の制御回路9および10により時系列的に信号電圧を印加し、その交叉位置で発光するように構成されたものである。かかる構成のEL素子は、文字・記号等のディスプレイとしては勿論、画像再生装置としても使用できる。また陰極4と陽極2のストライプ状パターンを赤(R)、緑(G)、青(B)の各色毎に配し、マルチカラーあるいはフルカラーの全固体型フラットパネルディスプレイを構成することが可能となる。
【0032】
以下、本発明の有機電界発光素子につき、適宜比較例を加えながら詳細に説明を加える。
【0033】
実施例1
本実施例は、一般式(1)のテトラフェニル金属化合物のうち、テトラフェニルゲルマニウム(TPGe)をホール注入層材料として採用し、有機電界発光素子を作製した例である。
【0034】
分子線蒸着装置中に、100nmの厚さのITOからなる陽極が一表面に形成された30mm×30mmのガラスの基板をセッティングした。蒸着マスクとして、複数の2.0mm×2.0mmの単位開口を有する金属マスクを基板に近接して配置し、分子線蒸着法により10-7Pa以下の超高真空下で、TPGeを例えば1nmの厚さに蒸着し、ホール注入層を形成した。成膜レートは、水晶振動子による膜厚モニタにより0.1nm/sec以下に制御した。ホール注入層の形成に分子線蒸着法を採用したのは、通常の抵抗加熱蒸着法等に比較して極薄膜形成における膜厚制御が容易であるためである。
つぎにホール注入層が形成された基板を抵抗加熱方式の真空蒸着装置に搬送し、蒸着源の上方25cmの位置にセッティングした。蒸着マスクとして、同じく複数の2.0mm×2.0mmの単位開口を有する金属マスクを基板に近接して配置し、真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下でホール輸送層として先述した式(2)で示されるTPDを例えば50nmの厚さに成膜した。蒸着レートは2nm/secとした。
さらに発光層と電子輸送層を兼ねる材料として、先述した式(3)に示されるAlqをホール輸送層に接して蒸着した。Alqの層厚も例えば50nmとし、蒸着レートも2nm/secとした。
陰極材料としてはMgとAgの積層膜を採用し、これも蒸着により、蒸着レートを4nm/secとして例えば50nm(Mg)および150nm(Ag)の厚さに形成し、実施例1による有機電界発光素子の基本形を作製した。
【0035】
発光特性の評価
このように作製した実施例1の有機電界発光素子に、窒素雰囲気下で順バイアス直流電圧を加えて発光特性を評価した。発光色は緑色であり、分光測定をおこなった結果、図3に示す540nmに発光ピークを有するスペクトルを得た。分光測定は、大塚電子製のフォトダイオードアレイを検出器とした分光器を用いた。図3のスペクトルはAlqの発光スペクトルと一致し、EL素子の発光はAlqによるものであることが確認された。
印加電圧を漸増し、輝度計により輝度の測定をおこなったところ、印加電圧9Vで1000cd/m2 の輝度が得られた。この有機電界発光素子を作製後、室内に1月間放置したが、素子劣化は観測されなかった。また印加電圧10Vを連続的に通電して連続発光して強制劣化させた際、発光が完全に消失する迄の素子寿命は10日間であった。
【0036】
実施例2
本実施例は、前実施例1でホール注入層材料として採用したTPGeに替えて、テトラフェニルスズ(TPSn)を採用した他は、各有機電界発光層の層構成、成膜法とも前実施例1に準拠して有機電界発光素子を作製した。
【0037】
本実施例2の有機電界発光素子も実施例1と同様の緑色の発光を呈した。分光測定の結果、スペクトルは実施例1の有機電界発光素子のスペクトルと一致し、Alqの発光によるものであることが確認された。
印加電圧を漸増し、輝度計により輝度の測定をおこなったところ、印加電圧10Vで1500cd/m2 の輝度が得られた。この有機電界発光素子を作製後、室内に1月間放置したが、素子劣化は観測されなかった。
【0038】
実施例3
本実施例は、前実施例1でホール注入層材料として採用したTPGeに替えて、テトラフェニル鉛(TPPb)を採用した他は、各有機電界発光層の層構成、成膜法とも前実施例1に準拠して有機電界発光素子を作製した。
【0039】
本実施例3の有機電界発光素子も実施例1と同様の緑色の発光を呈した。分光測定の結果、スペクトルは実施例1の有機電界発光素子のスペクトルと一致し、Alqの発光によるものであることが確認された。
印加電圧を漸増し、輝度計により輝度の測定をおこなったところ、印加電圧10Vで1200cd/m2 の輝度が得られた。この有機電界発光素子を作製後、室内に1月間放置したが、素子劣化は観測されなかった。
【0040】
比較例
比較のため、陽極とホール輸送層との間にテトラフェニル金属化合物によるホール注入層を形成しなかった他は各有機電界発光層の層構成、成膜法とも前実施例1に準拠して有機電界発光素子を作製した。
【0041】
比較例の有機電界発光素子も実施例1と同様の緑色の発光を呈した。分光測定の結果、スペクトルは実施例1の有機電界発光素子のスペクトルと一致し、Alqの発光によるものであることが確認された。
しかしながら、実施例1の有機電界発光素子と同一の輝度を得るための消費電力は、約32%増加し、素子寿命も実施例1の有機電界発光素子の10日間から2日間に減少した。
【0042】
以上本発明の有機電界発光素子について詳細な説明を加えたが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。例えば、ホール注入層材料として採用するテトラフェニル金属化合物として実施例にあげたTPGe、TPSnおよびTPPbの他にも各種金属化合物やそのハロゲン塩を採用してよい。またホール輸送層のホール輸送材料や電子輸送層の電子輸送材料として、実施例の化合物の他に、従来公知の他のホール輸送材料や電子輸送材料を用いてもよい。また有機電界発光層の各層構成や電極構造も、従来既知の構造はいずれも採用できる。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、有機電界発光素子におけるホール輸送性能が向上し、安定な有機電界発光素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機電界発光素子を、EL素子に適用した素子構成を示す概略断面図である。
【図2】有機電界発光素子を、実際のEL素子に適用した素子構成を示す概略斜視図である。
【図3】実施例1の有機電界発光素子の発光スペクトルである。
【符号の説明】
1…基板、2…陽極、3…有機電界発光層、4…陰極、4a…透明導電膜、5…保護層、6…ホール輸送層、7…発光層、8…電子輸送層、9,10…制御回路、11…ホール注入層
Claims (9)
- 前記ホール注入層に含まれるテトラフェニル金属化合物は、金属酸化物からなる陽極のエネルギ準位と、有機物を含むホール輸送層のエネルギ準位との中間のエネルギ準位を有する、請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 陽極上に、ホール注入層と、ホール輸送層と、発光層と、電子輸送層とからなる有機電界発光層と、陰極とが、この順に順次積層された構造を有する、請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 陽極上に、ホール注入層と、ホール輸送層と、電子輸送層とからなる有機電界発光層と、陰極とが、この順に順次積層された構造を有する、請求項1に記載の有機電界発光素子
- 前記陰極は、Li、Mg、Ca等の低仕事関数の活性な金属と、Ag、Al、In等の金属との合金、あるいはこれらの金属の積層構造からなる、請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記陰極に、さらにITO(Indium Tin Oxide)やSnO2等の透明導電膜を積層する、請求項5に記載の有機電界発光素子。
- 前記ホール注入層の厚さは、10nm以下である、請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機電界発光層は、さらに螢光色素を含む、請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機電界発光素子は、エレクトロルミネセンス素子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
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