JP3761666B2 - 内燃機関の蒸発燃料放出防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の蒸発燃料放出防止装置、特に給油時に燃料タンクのフィラーキャップを開けたときに燃料タンクから蒸発燃料が外気に放出するのを防止する内燃機関の蒸発放出防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載された燃料タンク内の蒸発燃料が外気中に放出するのを防止するために燃料タンクをキャニスタを介して内燃機関の吸気管に接続し、燃料タンク内の蒸発燃料を、内燃機関の停止時はキャニスタにより処理すると共に、内燃機関の作動時は内燃機関で燃焼させる技術が知られている。
【0003】
また、内燃機関の作動時に燃料タンク内を過度に負圧化して、内燃機関の作動時はもとより内燃機関の停止後も燃料タンクの内圧を負圧に保持することにより、給油のためにフィラーキャップを開けても、燃料タンク内の蒸発燃料が外気に放出されることを防止するようにした内燃機関の蒸発燃料放出防止装置も既に提案されている。
【0004】
この装置では、燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度センサと、前記燃料タンクの内圧を検出するタンク圧力センサとを設け、燃料タンク内の燃料の温度に応じて予測される燃料タンク内の内圧の上昇分を見込んだ過度に負圧化された目標圧力値を決定する。そして、内燃機関の作動中の吸気管内の負圧を利用して、燃料タンクの内圧が上記目標圧力値となるように、上記タンク圧力センサの検出値によりフィードバックしつつ上記制御弁の開度を制御する。これにより、通常は燃料タンクの内圧を上記目標圧力値に維持することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置では、燃料タンクの内圧の制御は、タンク内圧センサの検出値によりフィードバックして行うようにしていたため、タンク内圧センサが故障した場合は適切なフィードバック制御ができない。また、燃料タンクの目標圧力値は燃料の温度に応じて決定するようにしていたため、燃料の温度センサが故障した場合は目標圧力値を適切に算出できない。そのため、このような場合は燃料タンクの内圧を適切に負圧化制御できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、タンク内圧センサや燃料の温度センサが故障しても、燃料タンクの内圧の不適切な負圧化制御を回避しつつ、可能な限りその負圧化を促進することができる内燃機関の蒸発燃料放出防止装置を提供することにある。
【0007】
【問題を解決するための手段】
前述の目的を達成するために、請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、燃料タンクと内燃機関の吸気系とを接続する蒸発燃料通路と、該蒸発燃料通路の途中に設けられ、該蒸発燃料通路を開閉する制御弁と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度センサと、前記吸気系の内圧を検出する吸気系内圧力センサと、前記燃料タンクの内圧を検出するタンク内圧センサとを有し、前記タンク内圧センサが故障した場合に、前記温度センサにより検出された前記燃料の温度に応じて決定される前記燃料タンクの目標圧力値よりも前記吸気系内圧力センサにより検出された前記吸気系の内圧値が小さいときは、前記制御弁を開成する制御手段を有することを特徴とする。
【0008】
この構成により、前記タンク内圧センサが故障した場合であっても、前記燃料タンクの目標圧力値よりも前記吸気系の内圧値が小さいときは前記制御弁が開成される。これにより、吸気系内の負圧が燃料タンクに作用し、燃料タンクの内圧を吸気系内の圧力に制御することができる。また、吸気系の内圧値が目標圧力値以上であるときに前記制御弁を閉成するようにすれば、燃料タンク内の負圧が吸気系内の不十分な負圧によって却って損なわれるという不都合を解消することができ、少なくとも燃料タンクの内圧が目標圧力値を越えている場合における燃料タンクの内圧のさらなる上昇を回避することができる。従って、タンク内圧センサが故障しても、燃料タンクの内圧の不適切な負圧化制御を回避しつつ、可能な限りその負圧化を促進することができる。
【0009】
請求項2に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、前記制御手段は、前記タンク内圧センサが故障していない場合は、前記燃料タンクの内圧が前記目標圧力値になるように前記制御弁を制御することを特徴とする。
【0010】
この構成により、前記タンク内圧センサが故障していない場合は、前記制御弁により前記燃料タンクの内圧が前記目標圧力値になるように制御されるので、燃料タンクの内圧を目標圧力値に保持することができる。
【0011】
請求項3に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、燃料タンクと内燃機関の吸気系とを接続する蒸発燃料通路と、該蒸発燃料通路の途中に設けられ、該蒸発燃料通路を開閉する制御弁と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度センサと、前記吸気系の内圧を検出する吸気系内圧力センサと、前記燃料タンクの内圧を検出するタンク内圧センサとを有し、前記温度センサが故障した場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記燃料タンクから燃料ポンプにて燃料を吸入可能な下限圧となるように前記制御弁を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
この構成により、前記温度センサが故障した場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記燃料タンクから燃料ポンプにて燃料を吸入可能な下限圧となるように前記制御弁が制御される。これにより、燃料の温度センサが故障しても燃料タンクの内圧を上記下限圧近傍に保持することができ、可能な限りその負圧化を促進することができる。
【0013】
ここで上記下限圧は外気温によって変化するので、外気温を45°Cと想定して上記「下限圧」を固定値「約460mmHg」に設定してもよい。
【0014】
請求項4に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、請求項3に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、前記制御手段は、前記吸気系内圧力センサにより検出された前記吸気系の内圧値が前記下限圧より大きいときは前記制御弁を閉成することを特徴とする。
【0015】
この構成により、前記吸気系内圧力センサにより検出された前記吸気系の内圧値が前記下限圧より大きいときは前記制御弁が閉成される。これにより、燃料タンク内の負圧が吸気系内の不十分な負圧によって却って損なわれるという不都合を解消することができ、少なくとも燃料タンクの内圧が目標圧力値を越えている場合における燃料タンクの内圧のさらなる上昇を回避することができる。従って、燃料の温度センサが故障しても、燃料タンクの内圧の不適切な負圧化制御を回避することができる。
【0016】
請求項5に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、請求項3または4記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、前記制御手段は、前記温度センサが故障していない場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記温度センサにより検出された前記燃料の温度に応じて決定される前記燃料タンクの目標圧力値になるように前記制御弁を制御することを特徴とする。
【0017】
この構成により、前記温度センサが故障していない場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記温度センサにより検出された前記燃料の温度に応じて決定される前記燃料タンクの目標圧力値になるように前記制御弁が制御される。これにより、温度センサが故障していない場合は、燃料タンクの内圧を目標圧力値に保持することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る内燃機関の蒸発燃料放出防止装置の構成を示す全体構成図である。同図において、1は例えば4気筒を有する内燃機関(以下単に「エンジン」という)であり、エンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。また、スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下(ECU)という)5に供給する。
【0020】
燃料噴射弁6は、吸気管2の途中であってエンジン1とスロットル弁3との間の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられている。また、各燃料噴射弁6は燃料供給管7を介して密閉構造の燃料タンク9に接続しており、燃料供給管7の途中には燃料ポンプ8が設けられている。燃料タンク9は給油のための給油口10を有しており、給油口10にはフィラーキャップ11が取付けられている。
【0021】
燃料噴射弁6はECU5に電気的に接続され、該ECU5からの信号により燃料噴射の開弁時期が制御される。
【0022】
吸気管2の前記スロットル弁3の下流側には吸気管絶対圧PBAを検出する吸気系内圧力センサとしての吸気管内絶対圧(PBA)センサ13、及び外気温としての吸気温TAを検出する吸気温(TA)センサ14が装着されている。また、燃料タンク9には、燃料タンク9のタンク内圧(絶対圧)Ptを検出するタンク内圧(Pt)センサ15と、燃料タンク9内の燃料の温度Tgを検出する燃料温度(Tg)センサ16とがそれぞれ設けられている。またこれらのセンサ13〜16の検出信号はECU5に供給される。
【0023】
次に燃料タンク9、蒸発燃料通路20等から構成される蒸発燃料放出抑止系31について説明する。
【0024】
燃料タンク9は蒸発燃料通路20を介して吸気管2のスロットル弁3の下流側に接続されており、蒸発燃料通路20の途中には蒸発燃料通路20を開閉するタンク圧制御弁30が設けられている。制御弁30は、その制御信号のオン−オフデューティ比を変更することにより燃料タンク9内で発生する蒸発燃料の流量を制御するように構成された電磁弁であり、制御弁30の作動はECU5により制御される。なお、制御弁30はその開度をリニアに変更可能な電磁弁を使用してもよい。
【0025】
蒸発燃料通路20と燃料タンク9の接続部には、カットオフ弁21が設けられている。カットオフ弁21は、燃料タンク9の満タン状態のときや燃料タンク9の傾きが増加したとき閉弁するフロート弁である。
【0026】
ECU5は各種センサ等からの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理回路(以下「CPU」という)、CPUで実行される演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶手段、燃料噴射弁6や制御弁30に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0027】
ECU5のCPUは、θTHセンサ4、PBAセンサ13等の各種センサの出力信号に応じてエンジン1に供給する燃料量制御等を行う。燃料量制御は本発明の主題ではないので説明を省略する。
【0028】
ECU5のCPUは、上述の燃料温度センサ16、タンク内圧センサ15等の出力信号に応じて図2の処理に基づいて制御弁30の開度を決定する。図2は、本発明の実施の形態に係る蒸発燃料放出防止装置における蒸発燃料放出防止の制御処理を行うプログラムを示す。
【0029】
まず、エンジン1のクランキングを検知する等によりエンジン1が作動中であるか否かを判別し(ステップS201)、エンジン1が作動中である場合は、タンク内圧センサ15により燃料タンク9のタンク内圧Ptを検出し(ステップS202)、燃料温度センサ16が故障しているか否かを判別する(ステップS203)。
【0030】
ここで燃料温度センサ16の故障は、該センサの出力に基づいて判別され、通常あり得ないような燃料温度に対応する出力が示されたときに燃料温度センサ16が故障していると判別される。例えば、燃料温度センサ16の出力が「燃料温度100°C以上」に対応するときは「ショート」、「燃料温度−50°C以下」に対応するときは「断線」とみなして、いずれの場合も燃料温度センサ16が故障していると判別される。
【0031】
前記ステップS203の判別の結果、燃料温度センサ16が故障していない場合は、燃料温度センサ16により燃料タンク9内の燃料の温度Tgを検出し(ステップS204)、後述する燃料タンク9内の目標圧力値(絶対圧)Po(mmHg)の設定方法に基づいて燃料タンク9内の目標圧力値Poを算出する(ステップS205)。この際、前記目標圧力値Poは、エンジン1の停止後も燃料タンク9内の負圧が保持できるように、予測される燃料タンク9内のタンク圧力上昇分を見込んだ過度に負圧化された値に設定される。
【0032】
上記予測され得る燃料タンク9内のタンク内圧上昇の要因としては、燃料タンク9内の燃料のその温度における保有熱量により燃料に含まれる成分のうち燃料温度よりも低い温度で蒸発する成分が蒸発することと、外気温の上昇による燃料タンク9内の燃料の温度上昇により上記と同様に燃料の一部が蒸発することが挙げられる。
【0033】
次いで、タンク内圧センサ15が故障しているか否かを判別する(ステップS206)。タンク内圧センサ15の故障は、該センサの出力に基づいて判別され、通常あり得ないようなタンク内圧に対応する出力が示されたときにタンク内圧センサ15が故障していると判別される。例えば、タンク内圧センサ15の出力が「燃料タンク9の内圧が1060mmHg以上」に対応するときは「ショート」、「燃料タンク9の内圧が160mmHg以下」に対応するときは「断線」とみなして、いずれの場合もタンク内圧センサ15が故障していると判別される。このほか、燃料温度センサ16の出力が変化しているにもかかわらずタンク内圧センサ15の出力が変化しない場合にタンク内圧センサ15が故障していると判別するようにしてもよい。
【0034】
前記ステップS206の判別の結果、タンク内圧センサ15が故障していない場合は、燃料タンク9のタンク内圧Ptと上記目標圧力値Poとの差ΔPを算出し(ステップS207)、前記差ΔPが0になるように制御弁30の開度を制御して(ステップS208)、本処理を終了する。これにより、タンク内圧Ptが目標圧力値Poに制御される。
【0035】
一方、前記ステップS201の判別の結果、エンジン1が作動中でない場合は、ECU5のCPUは前記目標圧力値Poに制御された燃料タンク9内の負圧を保持するために制御弁30を閉成して(ステップS209)、本処理を終了する。
【0036】
ここで、図2のステップS205における燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定方法を図3を参照して説明する。図3は、燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定基準を説明するための燃料温度−タンク内圧曲線を示すグラフである。
【0037】
図3の燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定範囲値はECU5の記憶手段にマップとして格納される。
【0038】
図3のグラフにおいて、横軸は、燃料タンク9内の燃料の温度Tg(℃)、縦軸は、燃料タンク9のタンク内圧Pt(mmHg)を示す。ここに、縦軸のタンク内圧Ptは上述したように絶対圧で示され、グラフの下方ほど圧力は低い。
【0039】
以下、図3中の各曲線A,B,A+B,C,A+C,D,Eについて説明する。
【0040】
曲線Aは、エンジン1が停止して燃料タンク9の負圧化が停止しても燃料タンク9の内圧が負圧に保持されるように、車両の走行中に燃料タンク9内を過度に負圧化するためのタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値であって、エンジン1が停止した直後から燃料タンク9内の燃料のその温度Tgにおける保有熱量により、燃料に含まれる成分のうち燃料温度よりも低い温度で蒸発する成分が蒸発することによる燃料タンク9のタンク内圧Ptの上昇分を考慮したタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値を示す。制御弁30は、燃料温度Tgに拘わらず燃料タンク9のタンク内圧Ptが曲線A以下になるように開度が制御される。曲線Aでは、燃料温度Tgが増大するほどタンク内圧Ptは減少する。
【0041】
曲線Bは、エンジン1が停止して燃料タンク9の負圧化が停止しても燃料タンク9の内圧が負圧に保持されるように、車両の走行中に燃料タンク9内を過度に負圧化するためのタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値であって、停車中又は駐車中、外気温が所定の想定最大外気温40.6℃まで上昇し、燃料温度Tgもまた40.6℃まで上昇した場合の燃料タンク9のタンク内圧Ptの上昇分を考慮したタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値を示す。所定の想定最大外気温40.6℃は、車両設計時に想定する外気温の最大値である。また、曲線Bにおいては、燃料温度Tgが増大するほどタンク内圧Ptは増大する。
【0042】
曲線A+Bは、上記曲線Aと上記曲線Bの条件を同時に満足する曲線である。曲線A+Bにおいては燃料温度Tgが25℃付近でタンク内圧Ptは最小値を執る。想定最大外気温として40.6℃を選択する場合は、制御弁30は、燃料温度Tgに拘わらず燃料タンク9のタンク内圧Ptが曲線A+B以下になるように開度が制御される。
【0043】
曲線Cは、上記曲線Bと同じ条件で所定の想定最大外気温を40.6℃よりも厳しい45℃としたときのタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値を示す。
【0044】
曲線A+Cは、上記曲線Aと上記曲線Cの条件を同時に満足する曲線である。想定最大外気温として45℃を選択する場合は、制御弁30は、燃料温度Tgに拘わらず燃料タンク9のタンク内圧Ptは曲線A+C以下になるように開度が制御される。
【0045】
曲線Dは、燃料タンク9からエンジン1に燃料を移送する燃料ポンプ8の吸引下限であって燃料タンク9の目標圧力値Poの下限値を示す。燃料タンク9内のタンク内圧Ptがこの曲線D以下であると燃料ポンプ8は燃料タンク9から燃料を吸引することができないので、燃料タンク9内のタンク内圧Ptを曲線D以上にする必要がある。曲線Dにおいては、燃料温度Tgが増大するほどタンク内圧Ptは増大する。また、曲線Dによるタンク内圧Ptの目標圧力値Poの下限値は曲線A+Cよるタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値より小さい。
【0046】
最後に、曲線Eは、いわゆる、燃料が燃料としての特性を保持する限界ライン(いわゆる、ガソリンが枯れる限界のライン)である。燃料タンク9のタンク内圧Ptをこの曲線E以下まで低下させると、燃料タンク9内の燃料は燃料内の揮発し易い成分が抜けて燃料としての特性を保持することができなくなる。曲線Eにおいては、燃料温度Tgが増大するほどタンク内圧Ptは増大する。曲線Eによるタンク内圧Ptは曲線Dよるタンク内圧Ptの目標圧力値Poの下限値より小さい。
【0047】
本実施の形態においては、図3のグラフで、所定の想定最大外気温としてより厳しい条件である45℃を選択する。すなわち、上記曲線Bではなく上記曲線Cを考慮する。よって、エンジン1が停止して燃料タンク9の負圧化が停止しても燃料タンク9のタンク内圧Ptを負圧に保持するためには、前記制御弁30は、その開度が曲線A,C,A+C,D,Eによる条件をすべて満足するように制御される必要がある。具体的には、制御弁30の制御領域は図3の斜線部で示され、前記制御弁30は、燃料温度Tgに応じて燃料タンク9内のタンク内圧Ptの値がこの領域内になるように制御される。
【0048】
図2に戻り、前記ステップS203の判別の結果、燃料温度センサ16が故障している場合は、目標圧力値Poを所定値Pdに設定する(ステップS210)。所定値Pdは、固定値、例えば外気温45°Cにおける目標圧力値Poの下限値(460mmHg、図2の曲線D)に設定される。
【0049】
次いで、吸気管内絶対圧PBAが、目標圧力値Po以下であるか否かを判別し(ステップS211)、その判別の結果、PBA≦Poであるときは、前記ステップS207以降の処理を実行する。これにより、所定値Pdを目標圧力値Poとしてタンク内圧Ptのフィードバック制御が行われるので、燃料温度センサ16が故障していてもタンク内圧Ptが所定値Pdに保持される。
【0050】
一方、前記ステップS211の判別の結果、PBA>Poであるときは、前記ステップS209に進む。これにより、吸気管2内の負圧によってはタンク内圧Ptを目標圧力値Poに制御できない場合における圧制御弁30の開成を回避することができるので、少なくとも実際のタンク内圧Ptが目標圧力値Poを越えていた場合におけるタンク内圧Ptのさらなる上昇は回避される。
【0051】
前記ステップS206の判別の結果、タンク内圧センサ15が故障している場合は、吸気管内絶対圧PBAが目標圧力値Poより小さいか否かを判別し(ステップS212)、その判別の結果、PBA<Poであるときは、制御弁30を開成し(ステップS214)、本処理を終了する。これにより、タンク内圧Ptが吸気管内絶対圧PBA相当に保持される。一方、PBA≧Poであるときは、制御弁30を閉成して(ステップS213)、本処理を終了する。これにより、タンク内圧センサ15が故障していても、少なくとも実際のタンク内圧Ptが目標圧力値Poを越えていた場合におけるタンク内圧Ptのさらなる上昇は回避される。
【0052】
本処理によれば、通常は燃料温度Tg等に応じて算出される目標圧力値Poにタンク内圧Ptがフィードバック制御される。そして、燃料温度センサ16が故障した場合は目標圧力値Poが所定値Pdに設定され、該設定された所定値Pdにタンク内圧Ptがフィードバック制御される。また、タンク内圧センサ15が故障した場合は、タンク内圧センサ15の出力に基づくフィードバック制御はなされず、吸気管内絶対圧PBAが、燃料温度Tg等に応じて算出される目標圧力値Poより小さいときにのみ、タンク内圧Ptが吸気管内絶対圧PBA相当に制御される。
【0053】
本実施の形態によれば、通常は、エンジン1の作動中において、制御弁30の開度を制御することにより吸気管2内の負圧を燃料タンク9内に作用させて、燃料タンク9のタンク内圧Ptを燃料温度Tg等に応じて算出される目標圧力値Poに保持することができる。
【0054】
また、燃料温度センサ16が故障した場合であっても、少なくとも実際のタンク内圧Ptが目標圧力値Poを越えていたときにおいては、タンク内圧Ptのさらなる上昇を回避することができると共に、吸気管内絶対圧PBAが目標圧力値Po以下であれば、タンク内圧Ptを所定値Pdに保持することができる。
【0055】
さらに、タンク内圧センサ15が故障した場合であっても、少なくとも実際のタンク内圧Ptが目標圧力値Poを越えていたときにおいては、タンク内圧Ptのさらなる上昇を回避することができると共に、吸気管内絶対圧PBAが目標圧力値Poより小さいときは、タンク内圧Ptを吸気管内絶対圧PBA相当に保持することができる。
【0056】
これらの結果、エンジン1の作動中及び停止後だけでなく、タンク内圧センサ15や燃料温度センサ16が故障しても、燃料タンク9の内圧の不適切な制御を回避しつつ、可能な限りその負圧化を促進することができる。従って、燃料タンク9内の負圧化がより促進され、その負圧状態の保持が容易になるので、給油のためフィラーキャップ11を開けても燃料タンク9内の蒸発燃料が外気に放出するのをより適切に防止することができる。しかも、燃料タンク9内を負圧にするので、キャニスタが不要となり、より簡単な構成かつ低コストで蒸発燃料の放出防止を図ることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、想定最大外気温として予め設定された値45℃を使用して燃料タンク9のタンク内圧Ptを制御しているが、この想定最大外気温として、設定手段を設けて設定した値を使用して燃料タンク9のタンク内圧Ptを制御してもよい。これにより、例えば、夏場は45℃、冬場は25℃のように車両の周囲温度環境に応じて想定最大外気温を設定することができるので、燃料タンク9内の圧力値を車両の周囲温度に対して適切な値とし得、過剰に負圧化された値となるのを防止できる。
【0058】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、前記タンク内圧センサが故障した場合であっても、前記燃料タンクの目標圧力値よりも前記吸気系の内圧値が小さいときは前記制御弁が開成されるので、燃料タンクの内圧を吸気系内の負圧に制御することができる。また、吸気系の内圧値が目標圧力値以上であるときに前記制御弁を閉成するようにすれば、少なくとも燃料タンクの内圧が目標圧力値を越えている場合における燃料タンクの内圧のさらなる上昇を回避することができる。従って、タンク内圧センサが故障しても、燃料タンクの内圧の不適切な負圧化制御を回避しつつ、可能な限りその負圧化を促進することができる。
【0059】
請求項2に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、前記タンク内圧センサが故障していない場合は、前記制御弁により前記燃料タンクの内圧が前記目標圧力値になるように制御されるので、燃料タンクの内圧を目標圧力値に保持することができる。
【0060】
請求項3に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、前記温度センサが故障した場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記燃料タンクから燃料ポンプにて燃料を吸入可能な下限圧となるように前記制御弁が制御されるので、燃料の温度センサが故障しても燃料タンクの内圧を上記下限圧近傍に保持することができ、可能な限りその負圧化を促進することができる。
【0061】
請求項4に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、前記吸気系内圧力センサにより検出された前記吸気系の内圧値が前記下限圧より大きいときは前記制御弁が閉成されるので、少なくとも燃料タンクの内圧が目標圧力値を越えている場合における燃料タンクの内圧のさらなる上昇を回避することができる。従って、燃料の温度センサが故障しても、燃料タンクの内圧の不適切な負圧化制御を回避することができる。
【0062】
請求項5に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、前記温度センサが故障していない場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記温度センサにより検出された前記燃料の温度に応じて決定される前記燃料タンクの目標圧力値になるように前記制御弁が制御されるので、温度センサが故障していない場合は、燃料タンクの内圧を目標圧力値に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の蒸発燃料放出防止装置の構成を示す全体構成図である
【図2】本発明の実施の形態に係る蒸発燃料放出防止装置における蒸発燃料放出防止の制御処理を行うプログラムのフローチャートである。
【図3】燃料タンク9内の目標圧力値Poを説明するための燃料温度−タンク内圧グラフである。
【符号の説明】
1 内燃エンジン
2 吸気管
5 電子コントロールユニット(ECU)
9 燃料タンク
15 タンク内圧センサ
16 燃料温度センサ
20 蒸発燃料通路
30 タンク圧制御弁
31 蒸発燃料放出抑止系
Claims (5)
- 燃料タンクと内燃機関の吸気系とを接続する蒸発燃料通路と、該蒸発燃料通路の途中に設けられ、該蒸発燃料通路を開閉する制御弁と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度センサと、前記吸気系の内圧を検出する吸気系内圧力センサと、前記燃料タンクの内圧を検出するタンク内圧センサとを有し、
前記タンク内圧センサが故障した場合に、前記温度センサにより検出された前記燃料の温度に応じて決定される前記燃料タンクの目標圧力値よりも前記吸気系内圧力センサにより検出された前記吸気系の内圧値が小さいときは、前記制御弁を開成する制御手段を有することを特徴とする内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。 - 前記制御手段は、前記タンク内圧センサが故障していない場合は、前記燃料タンクの内圧が前記目標圧力値になるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。
- 燃料タンクと内燃機関の吸気系とを接続する蒸発燃料通路と、該蒸発燃料通路の途中に設けられ、該蒸発燃料通路を開閉する制御弁と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度センサと、前記吸気系の内圧を検出する吸気系内圧力センサと、前記燃料タンクの内圧を検出するタンク内圧センサとを有し、
前記温度センサが故障した場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記燃料タンクから燃料ポンプにて燃料を吸入可能な下限圧となるように前記制御弁を制御する制御手段を有することを特徴とする内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。 - 前記制御手段は、前記吸気系内圧力センサにより検出された前記吸気系の内圧値が前記下限圧より大きいときは前記制御弁を閉成することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。
- 前記制御手段は、前記温度センサが故障していない場合は、前記燃料タンクの内圧が、前記温度センサにより検出された前記燃料の温度に応じて決定される前記燃料タンクの目標圧力値になるように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項3または4記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。
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