JP3716954B2 - 内燃機関の蒸発燃料放出防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の蒸発燃料放出防止装置、特に給油時に燃料タンクのフィラーキャップを開けたときに燃料タンクから蒸発燃料が外気に放出するのを防止する内燃機関の蒸発燃料放出防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両に搭載された燃料タンク内の蒸発燃料が外気に放出されるのを防止するために、燃料タンクをキャニスタを介して内燃機関の吸気管に接続し、燃料タンク内の蒸発燃料を、内燃機関の作動時に内燃機関で燃焼させる技術が知られている。
【0003】
また、燃料タンクを蒸発燃料通路を介して内燃機関の吸気管に接続し、燃料タンク内の蒸発燃料を内燃機関の作動時に内燃機関で燃料させる技術が提案されている。この技術によれば、内燃機関の作動時に燃料タンク内を過度に負圧化して、燃料タンク内を内燃機関の作動時はもとより内燃機関の停止後も負圧に保持することにより、給油のためにフィラーキャップを開けても燃料タンク内の蒸発燃料が外気に放出されるのを防止している。
【0004】
この装置では、燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度センサと、燃料タンクの内圧を検出するタンク内圧センサとを設け、燃料タンク内の燃料の温度に応じて予測される燃料タンク内のタンク内圧上昇分を見込んで、燃料タンク内を過度に負圧化する圧力値(目標圧力値)を決定する。そして、内燃機関の作動中の吸気管の負圧を利用して、燃料タンクの内圧が上記目標圧力値となるように、上記タンク圧力センサの検出値によりフィードバックしつつ上記制御弁の開度を制御する。これにより、通常は燃料タンクの内圧を負圧に維持することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、燃料タンクを常時負圧化するため、時間の経過とともに燃料タンク内の燃料は燃料内の揮発しやすい成分が抜け、燃料が燃料としての特性を保持することができない状態(いわゆる枯れた状態)になりやすくなるという問題があった。
【0006】
また、燃料は、枯れた状態になるほどあまり蒸発しなくなるので、燃料タンクの内圧を大幅に負圧化する必要がなくなるが、上記従来技術では燃料タンク内の燃料の枯れ状態にかからわず目標圧力値を設定しているので、場合によっては必要以上に負圧化しすぎてしまうという問題があった。このような必要以上の負圧化は、かえって燃料の枯れを促進することになる。
【0007】
本発明の目的は、燃料の枯れを考慮した燃料タンクの負圧化制御を行うことができ、燃料タンク内を負圧に保持する際に燃料タンク内の燃料の枯れを最小限に抑制することができる内燃エンジンの蒸発燃料放出防止装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、燃料タンクと内燃機関の吸気系とを接続する蒸発燃料通路と、該蒸発燃料通路の途中に設けられ、該蒸発燃料通路を開閉する制御弁とを備える内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、前記制御弁の開状態から閉状態への移行後の前記燃料タンクの内圧の上昇量を算出する上昇量算出手段と、前記上昇量算出手段により算出された前記上昇量に応じて前記燃料タンクの内圧の目標圧力値を決定し、前記燃料タンクの内圧が前記決定した目標圧力値となるように前記制御弁の開度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、制御弁の開状態から閉状態への移行後の燃料タンクの内圧の上昇量に応じて前記燃料タンクの内圧の目標圧力値を決定し、燃料タンクの内圧が上記決定された目標圧力値となるように制御弁の開度を制御するので、上昇量算出手段により算出される燃料タンクの内圧の上昇量であって燃料タンク内の燃料の枯れ状態を表す上昇量に基づいて、燃料の枯れ状態を考慮した燃料タンクの負圧化制御を行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記上昇量算出手段により算出された前記上昇量と前記温度検出手段により検出された前記燃料の温度とに応じて、前記目標圧力値を決定することを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、燃料タンクの内圧の目標圧力値は、燃料タンクの内圧の上昇量と燃料の温度とに応じて決定するので、燃料タンクの内圧の目標圧力値の決定の際には燃料タンク内の燃料のその温度における保有熱量が考慮され、前記目標圧力値をより適切な値に設定することができる。
【0012】
請求項3に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置は、請求項1又は2に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、前記制御手段は、前記上昇量算出手段により算出された前記上昇量が少ないほど前記目標圧力値を高く設定することを特徴とする。
【0013】
このように構成することにより、燃料タンクの内圧の目標圧力値は、算出された上昇量が少ないほど、即ち燃料が枯れた状態にあるほど高く(大気圧側に)設定される。従って、燃料タンク内の燃料が枯れた状態にある場合に燃料タンク内の必要以上の負圧化を防止し、更なる燃料の枯れを抑制することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る内燃機関の蒸発燃料放出防止装置の構成を示す全体構成図である。同図において、1は例えば4気筒を有する内燃機関(以下、単に「エンジン」という)であり、エンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。また、スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下、「ECU」という)5に供給する。
【0016】
燃料噴射弁6は、吸気管2の途中であってエンジン1とスロットル弁3との間の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられている。また、各燃料噴射弁6は燃料供給管7を介して燃料タンク9に接続されており、燃料供給管7の途中には燃料ポンプ8が設けられている。燃料タンク9は給油のための給油口10を有しており、給油口10にはフィラーキャップ11が取り付けられている。
【0017】
燃料噴射弁6はECU5に電気的に接続され、該ECU5からの信号により燃料噴射の開弁時期が制御される。
【0018】
吸気管2の前記スロットル弁3の下流側には吸気管内絶対圧PBAを検出する吸気管内絶対圧(PBA)センサ13、及び外気温としての吸気温TAを検出する吸気温(TA)センサ14が装着されている。また、燃料タンク9には、燃料タンク9のタンク内圧(絶対圧)Ptを検出するタンク内圧(Pt)センサ15と、燃料タンク9内の燃料の温度Tgを検出する温度検出手段としての燃料温度(Tg)センサ16とがそれぞれ設けられている。またこれらのセンサ13〜16の検出信号はECU5に供給される。
【0019】
次に燃料タンク9、蒸発燃料通路20等から構成される蒸発燃料放出抑止系31について説明する。
【0020】
燃料タンク9は蒸発燃料通路20を介して吸気管2のスロットル弁3の下流側に接続されており、蒸発燃料通路20の途中には蒸発燃料通路20を開閉するタンク圧制御弁30が設けられている。制御弁30は、その制御信号のオン−オフデューティ比を変更することにより燃料タンク9内で発生する蒸発燃料の流量を制御するように構成された電磁弁であり、制御弁30の作動はECU5により制御される。なお、制御弁30はその開度をリニアに変更可能な電磁弁を使用してもよい。
【0021】
蒸発燃料通路20と燃料タンク9の接続部には、カットオフ弁21が設けられている。カットオフ弁21は、燃料タンク9の満タン状態のときや燃料タンク9の傾きが増加したとき閉弁するフロート弁である。
【0022】
ECU5は各種センサ等からの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理回路(以下「CPU」という)、CPUで実行される演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶手段、燃料噴射弁6や制御弁30に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0023】
ECU5のCPUは、θTHセンサ3、PBAセンサ13等の各種センサの出力信号に応じてエンジン1に供給する燃料量制御等を行う。燃料量制御は本発明の主題ではないので説明を省略する。
【0024】
ECU5のCPUは、上述のTgセンサ16、Ptセンサ15等の出力信号に応じて、制御弁30の開度を決定する。即ち、本実施の形態において、ECU5のCPUは、制御手段を構成する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る蒸発燃料放出防止装置における蒸発燃料放出防止の制御処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートを実行するためのプログラムは、ECU5内の、RAM等からなる記憶手段(不図示)に格納されており、ECU5のCPUによって実行される。
【0026】
まず、ステップS1で、エンジン1のクランキングを検知する等によりエンジン1が作動中であるか否かを判別し、エンジン1が作動中であれば、ステップS2に進み、Tgセンサ16により燃料タンク9内の燃料の温度Tgを検出し、更にステップS3に進んで、Ptセンサ15により燃料タンク9のタンク内圧Ptを検出する。
【0027】
そして、後述する燃料タンク9内の目標圧力値(絶対圧)Po(mmHg)の設定方法により、燃料タンク9のタンク内圧の目標圧力値Poを算出する(ステップS4)。この際、前記目標圧力値Poは、エンジン1の停止後も燃料タンク9内の負圧が保持できるように、予測される燃料タンク9内のタンク内圧上昇分を見込んで、燃料タンク9内を過度に負圧化する値に設定される。
【0028】
かかるタンク内圧上昇の要因としては、燃料タンク9内の燃料のその温度における保有熱量により燃料に含まれる成分のうち燃料温度よりも低い温度で蒸発する成分が蒸発することと、外気温の上昇による燃料タンク9内の燃料の温度上昇により上記と同様に燃料の一部が蒸発することが挙げられる。
【0029】
次に、燃料タンク9のタンク内圧Ptと上記目標圧力値Poとの差ΔPを算出し(ステップS5)、算出した差ΔPが0になるように制御弁30の開度を制御して(ステップS6)、本処理を終了する。
【0030】
ステップS1でエンジン1が停止中の場合は、ECU5のCPUは前記目標圧力値Poに制御された燃料タンク9内の負圧を保持するために制御弁30を閉成して(ステップS7)、本処理を終了する。
【0031】
以上の構成により、エンジン1の作動中において、制御弁30の開度を制御することにより吸気管2内の負圧を燃料タンク9内に作用させて、燃料タンク9のタンク内圧Ptを前記所定の目標圧力値Poに保持する。その結果、エンジン1の作動中はもとより停止後も燃料タンク9内は負圧に保持される。
【0032】
ここで、図2のステップS4における燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定方法を図3〜図8を参照して説明する。
【0033】
図3は、通常の(枯れた状態になっていない)燃料及び枯れた状態にある燃料の、負圧化後の燃料タンク9内のタンク内圧Ptの変化を示す説明図である。同図において、通常の燃料についての負圧化後のタンク内圧Ptの変化は実線アで示し、枯れた状態にある燃料についての負圧化後のタンク内圧Ptの変化は破線イで示している。
【0034】
上述したように、燃料タンク9内を負圧化した場合であっても、タンク内圧Ptは、燃料タンク9内の燃料のその温度における保有熱量により燃料に含まれる成分のうち燃料温度よりも低い温度で蒸発する成分が蒸発すること、外気温の上昇による燃料タンク9内の燃料の温度上昇により上記と同様に燃料の一部が蒸発すること等の要因により上昇する。
【0035】
しかしながら、燃料タンク9内の燃料は、燃料タンク9内が常時負圧化されることにより揮発しやすい成分が抜け、いわゆる枯れた状態になりやすい。また、燃料タンク9内の燃料に含まれる蒸発成分は燃料が枯れるほど減少する。従って、図3から明らかなように、枯れた状態にある燃料を有している燃料タンク9内のタンク内圧Pt(破線イ)は、通常の燃料を有している燃料タンク9内のタンク内圧Pt(実線ア)ほどには上昇しない。つまり、枯れた状態にある燃料に対しては、通常の状態にある燃料と同程度の負圧化は必要ない。
【0036】
また、図4は、燃料の枯れ状態の程度を示す「枯れ量」に応じた燃料温度−タンク内圧上昇量曲線を示すグラフであって、縦軸は負圧化を停止した後のタンク内圧上昇量ΔPup(mmHg)を示し、横軸は燃料タンク内の燃料の温度Tg(℃)を示している。ここで、燃料の枯れ量とは、燃料の単位重量当たりの蒸発した燃料の重量の比率で表される。同図から明らかなように、燃料の枯れ量が大きくなる程、燃料の温度Tgに対する負圧化後のタンク内圧Ptの上昇量ΔPupは小さくなる。また、燃料温度Tgが大きくなるほど、燃料タンク9のタンク内圧Ptの上昇量ΔPupは大きくなる。
【0037】
このように、燃料の枯れ量が大きくなるほど負圧化後のタンク内圧Ptの上昇量ΔPupは小さくなることが判っているので、本実施の形態では、タンク内圧Ptの上昇量ΔPupを算出することにより燃料の枯れ量を推定し、推定された燃料の枯れ量に応じて目標圧力値Poを大気圧側にシフトする処理を行う。
【0038】
図5は目標圧力値Poの設定手順を説明するためのフローチャートであり、図6は燃料タンク9内の燃料の枯れ量を推定する手法を説明するための説明図である。
【0039】
なお、図5に示すフローチャートを実行するためのプログラムはECU5内の、RAM等からなる記憶手段(不図示)に格納されており、ECU5のCPUによって実行される。すなわち、ECU5のCPUは、燃料タンク内圧Ptの上昇量ΔPupを算出する上昇量算出手段を構成する。
【0040】
まず、後述する図7の燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定方法により、燃料タンク9内の目標圧力値Poを算出する(ステップS10)。次いで、制御弁30を開成することにより燃料タンク9内のタンク内圧Ptの負圧化を開始し(ステップS11)、タンク内圧Ptが、図6に示すように目標圧力値Poよりやや低い圧力値P1以下になったか否かを判別する(ステップS12)。この判別で、タンク内圧Ptが圧力値P1以下になっていない場合はステップS12の手順を繰り返す。
【0041】
ステップS12において、タンク内圧Ptが圧力値P1以下になった場合は、制御弁30を閉弁して負圧化を停止し(ステップS13)、制御弁30を閉弁してから所定時間tが経過した後にタンク内圧値P2を検出し(ステップS14)、タンク内圧値P1及びP2の差に基づいて燃料タンク9内のタンク内圧の上昇量ΔPupを算出する(ステップS15)。
【0042】
ステップS15で算出された上昇量ΔPupと燃料の枯れ量との間には、図4に示したような関係があるので、算出された上昇量ΔPup及びTgセンサから得られる燃料の温度Tgとに基づいて燃料の枯れ量を推定し(ステップS16)、後述する図8の燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定方法に基づいて、枯れ量に応じた目標圧力値Poを設定し(ステップS17)、本処理を終了する。
【0043】
なお、上記説明した燃料の枯れ量を推定する手法においては、燃料タンク9内のタンク内圧の上昇量ΔPupの算出を1回だけ行い、この算出値から直接枯れ量を推定したが、図6に示すように燃料タンク9内の負圧化及び所定時間tにおける上昇量の算出を複数回行い、算出される複数の数値の平均値を上昇量ΔPupとして用いて枯れ量を推定するようにしてもよい。
【0044】
図7は、図5のステップS10における目標圧力値Poの設定基準を説明するための、通常の燃料についての燃料温度−タンク内圧曲線を示すグラフであり、横軸は燃料タンク9内の燃料の温度Tg(℃)を示し、縦軸は燃料タンク9のタンク内圧Pt(mmHg)を示す。また、縦軸のタンク内圧Ptは上述したように絶対圧で示されており、グラフの下方ほど圧力は低いことを示す。
【0045】
なお、図7に示す燃料タンク9内の目標圧力値Poの設定範囲値は、ECU5の不図示の記憶手段にマップの形式で格納される。
【0046】
同図において、曲線Aは、エンジン1が停止して燃料タンク9の負圧化が停止しても燃料タンク9の内圧が負圧に保持されるように、車両の走行中に燃料タンク9内を過度に負圧化するためのタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値であって、エンジン1が停止した直後から燃料タンク9内の燃料のその温度Tgにおける保有熱量により、燃料に含まれる成分のうち燃料温度よりも低い温度で蒸発する成分が蒸発することによる燃料タンク9のタンク内圧Ptの上昇分を考慮したタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値を示す。曲線Aに示すように、燃料温度Tgが増大するほど、タンク内圧Ptの目標圧力値Poは減少される。
【0047】
曲線Bは、エンジン1が停止して燃料タンク9の負圧化が停止しても燃料タンク9の内圧が負圧に保持されるように、車両の走行中に燃料タンク9内を過度に負圧化するためのタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値であって、停車中又は駐車中、外気温が所定の想定最大外気温45℃まで上昇し、燃料温度Tgもまた45℃まで上昇した場合の燃料タンク9のタンク内圧Ptの上昇分を考慮したタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値を示す。所定の想定最大外気温45℃は、車両設計時に想定する外気温の最大値である。また、曲線Bに示すように、燃料温度Tgが増大するほどタンク内圧Ptの目標圧力値Poは増大される。
【0048】
曲線A+Bは、上記曲線Aと上記曲線Bの条件を同時に満足する曲線である。想定最大外気温として45℃を選択する場合は、制御弁30は、燃料温度Tgに拘わらず燃料タンク9のタンク内圧Ptは曲線A+B以下になるように開度が制御される。
【0049】
曲線Cは、燃料タンク9からエンジン1に燃料を移送する燃料ポンプ8の吸引下限であって燃料タンク9の目標圧力値Poの下限値を示す。燃料タンク9内のタンク内圧Ptがこの曲線C以下であると燃料ポンプ8は燃料タンク9から燃料を吸引することができないので、燃料タンク9内のタンク内圧Ptを曲線C以上にする必要がある。曲線Cに示すように、燃料温度Tgが増大するほどタンク内圧Ptは増大される。また、曲線Cによるタンク内圧Ptの目標圧力値Poの下限値は曲線A+Bよるタンク内圧Ptの目標圧力値Poの上限値より小さい。
【0050】
従って、燃料タンク9内の燃料が枯れた状態にない通常の燃料である場合は、エンジン1が停止して燃料タンク9の負圧化が停止しても燃料タンク9のタンク内圧Ptを負圧に保持するために、目標圧力値Poは、曲線A、B、A+B、Cによる条件をすべて満足する値、即ち燃料タンク9内のタンク内圧Ptの値が図7の斜線領域内になる値に、燃料温度Tgに応じて設定される必要がある。
【0051】
図8は、図5のステップS17における枯れ量に応じた目標圧力値Poの設定基準を説明するための、枯れた燃料についての燃料温度−タンク内圧曲線を示すグラフであり、横軸は燃料タンク9内の燃料の温度Tg(℃)を示し、縦軸は燃料タンク9のタンク内圧Pt(mmHg)を示す。また、縦軸のタンク内圧Ptは絶対圧で示されており、グラフの下方ほど圧力が低いことを示す。
【0052】
上述したように、燃料が枯れた状態にある場合は、通常の状態にある燃料に対して設定される目標圧力値より目標圧力値を大気圧側に設定する必要がある。そのため、燃料が枯れた状態にある場合は、目標圧力値Poは、図7に示した曲線A及びBをシフトすることにより得られる曲線A’及びB’と、上述した曲線Cと、曲線A’及びB’から得られる曲線A’+B’とによる条件をすべて満足する値に、即ち燃料タンク9内のタンク内圧が図8に示した斜線領域内の値に設定される必要がある。
【0053】
そこで、上述したステップS17では、燃料タンク9内の燃料の枯れ量に応じて図8の条件を満足する目標圧力値マップを用いて、目標圧力値Poを設定する。
【0054】
なお、曲線A’、B’、A’+B’の、曲線A、B、A+Bからのシフト量は、上昇量ΔPupの実験値に基づいて設定される。
【0055】
また、目標圧力値Poの設定値は、ECU5の記憶手段にマップとして格納されるが、図4に示したように燃料タンク9内の燃料の枯れ量によりタンク内圧Ptの上昇量ΔPupは異なるので、燃料の枯れ量に応じて複数の目標圧力値マップを記憶手段に格納しておくことが望ましい。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態によれば、タンク内圧Ptの上昇量ΔPupを算出し、該算出された上昇量ΔPupと燃料温度Tgから得られる燃料の枯れ量に応じて燃料タンクの目標圧力値Poを設定するようにしたので、内燃機関の作動時及び停止時において燃料の枯れを考慮した燃料タンクの負圧化制御を行うことができる。また、燃料の枯れ状態に応じて目標圧力値Poを決定するようにしたので、燃料タンク9内を負圧に保持する際の必要以上の負圧化を防止し、これにより燃料の枯れを最小限に抑制することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、燃料の枯れ状態を考慮した燃料タンクの負圧化制御を行うことができ、燃料タンク内の蒸発燃料の外気への放出を防止すべく燃料タンク内を負圧に保持する際に燃料タンク内の燃料の枯れを最小限に抑制することができる。
【0058】
請求項2の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、燃料タンクの内圧の目標圧力値の決定の際には燃料タンク内の燃料のその温度における保有熱量が考慮されるので、燃料タンク内を確実に負圧に保持することができる。
【0059】
請求項3の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置によれば、燃料タンク内の燃料が枯れた状態にある場合に必要以上の燃料タンク内の負圧化を防止し、更なる燃料の枯れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る内燃機関の蒸発燃料放出防止装置の構成を示す全体構成図である。
【図2】同実施の形態に係る蒸発燃料放出防止装置における蒸発燃料放出防止の制御処理手順を示すフローチャートである。
【図3】通常の(枯れた状態になっていない)燃料及び枯れた状態にある燃料の、負圧化後の燃料タンク9内のタンク内圧Ptの変化を示す説明図である。
【図4】燃料の枯れ状態の程度を示す「枯れ量」に応じた燃料温度−タンク内圧上昇量曲線を示す説明図である。
【図5】燃料タンク内の目標圧力値の設定手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】燃料タンク内の燃料の枯れ量を測定する手法を説明するための説明図である。
【図7】燃料タンク内の目標圧力値の設定基準を説明するための燃料温度−タンク内圧曲線を示すグラフである。
【図8】燃料タンク内の目標圧力値の設定基準を説明するための燃料温度−タンク内圧曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内燃エンジン
2 吸気管
5 電子コントロールユニット
9 燃料タンク
15 タンク内圧センサ
16 燃料温度センサ
20 蒸発燃料通路
30 タンク圧制御弁
31 蒸発燃料放出抑止系
Claims (3)
- 燃料タンクと内燃機関の吸気系とを接続する蒸発燃料通路と、該蒸発燃料通路の途中に設けられ、該蒸発燃料通路を開閉する制御弁とを備える内燃機関の蒸発燃料放出防止装置において、
前記制御弁の開状態から閉状態への移行後の前記燃料タンクの内圧の上昇量を算出する上昇量算出手段と、
前記上昇量算出手段により算出された前記上昇量に応じて前記燃料タンクの内圧の目標圧力値を決定し、前記燃料タンクの内圧が前記決定した目標圧力値となるように前記制御弁の開度を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。 - 前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記上昇量算出手段により算出された前記上昇量と前記温度検出手段により検出された前記燃料の温度とに応じて、前記目標圧力値を決定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料放出防止装置。
- 前記制御手段は、前記上昇量算出手段により算出された前記上昇量が少ないほど前記目標圧力値を高く設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃エンジンの蒸発燃料放出防止装置。
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