JP2005351216A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射補正を好適に行うことのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】パージバルブ35の開弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、蒸発燃料がパージバルブ35から燃料噴射弁12近傍にまで移動する輸送遅れ時間内でのクランク回転角を第1クランク回転角としてこれを吸気通路14内の吸気圧に基づいて算出する。そして、第1クランク角に第1クランク回転角を加算した第2クランク角を算出して該第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
車載内燃機関には、燃料タンク内に発生した蒸発燃料が大気中に放出されることを抑制するために、この蒸発燃料をキャニスタにて捕集するようにした蒸発燃料処理機構が備えられている。この蒸発燃料処理機構では、上記キャニスタによる蒸発燃料の捕集量に限界があるため、機関運転中にキャニスタから蒸発燃料を脱離させて、これをパージ通路を通じて吸気通路に導入し、燃焼室で燃焼させる、いわゆるパージ処理が行われる。このようなパージ処理が行われることでキャニスタの蒸発燃料捕集性能は回復されるようになる。
ここで、パージ処理が行われるときには、燃料噴射弁から噴射される燃料とは別にキャニスタから導入される蒸発燃料も機関の燃焼室に導入される。このため、パージ処理実行時における燃料噴射制御では、上記パージ処理による燃料量を見込んで燃料噴射量を補正することにより、空燃比の乱れを抑えるようにしている。
ここで、パージ処理が実行されて蒸発燃料が気筒の燃焼室に到達するまでにはある程度の時間がかかるため、このような蒸発燃料の輸送遅れ時間を考慮して燃料噴射量を補正する必要がある。そこで、特許文献1に記載の制御装置では、そのような輸送遅れを補償する値を機関回転速度に基づいて求め、パージされた蒸発燃料量に相当する燃料噴射量、すなわちパージ処理による燃料量をその補償値を用いて算出することにより、燃料噴射量の補正精度を向上させるようにしている。
特開平11−62729号公報
ところで、近年、大気中に放出される蒸発燃料量の規制強化に伴い、キャニスタの蒸発燃料捕集能力を向上させることが要望されている。この要望に応えるための1つの方法として、パージされる蒸発燃料量を増大させてキャニスタの捕集能力を早期に回復させることが考えられる。
ここで、パージされる蒸発燃料量をより増大させる場合には、パージされた燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化がより顕著となるため、このようなずれを抑制する必要がある。
この点、上記特許文献1に記載のものでは、燃料噴射量の補正量算出に際して蒸発燃料の輸送遅れは考慮されているものの、パージされた燃料量を燃料噴射量に反映させる時期、すなわち補正タイミングについては何ら考慮されていない。そのため、場合によっては吸気通路内の蒸発燃料濃度がそれほど高くないにもかかわらず、燃料噴射量が過剰に減量補正されたり、同蒸発燃料濃度がそれほど低くないにもかかわらず、燃料噴射量が過剰に減量補正されたりするおそれがあり、蒸発燃料の濃度変化に対応した適切な燃料噴射補正を行うことができないおそれがある。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射補正を好適に行うことのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。なお、以下では、クランク角とはクランクシャフトの位置を示すものであり、クランク回転角とはクランクシャフトの回転量を示すものとする。
請求項1に記載の発明は、燃料タンクで発生する蒸発燃料を捕集するキャニスタと、該キャニスタから脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気通路にパージするパージ通路と、該パージ通路に設けられて蒸発燃料の流量を調整するパージバルブとで構成される蒸発燃料処理機構を備える内燃機関に適用され、パージされる蒸発燃料の濃度に基づいて前記吸気通路に導入されるベーパ燃料の量を算出して、このベーパ燃料量に応じて燃料噴射弁からの燃料噴射量を補正する内燃機関の制御装置において、前記パージバルブの開弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、蒸発燃料が前記パージバルブから前記燃料噴射弁近傍にまで移動する輸送遅れ時間内でのクランク回転角を第1クランク回転角としてこれを前記吸気通路内の吸気圧に基づいて算出し、前記第1クランク角に前記第1クランク回転角を加算した第2クランク角を算出して該第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始することをその要旨とする。
パージバルブが開弁されると同パージバルブ近傍の蒸発燃料の濃度は上昇し、パージバルブが閉弁されると同パージバルブ近傍の蒸発燃料の濃度は低下する。このようなパージバルブ近傍における蒸発燃料の濃度変化が燃料噴射弁近傍の蒸発燃料の濃度に反映されるまでの時間、即ち蒸発燃料の輸送遅れ時間は機関回転速度に依存しない吸気圧を変数とする関係式で求められることを本発明者は確認した。
そこで上記構成では、パージされた蒸発燃料がパージバルブから燃料噴射弁近傍にまで移動する時間、すなわち上記輸送遅れ時間に相当する第1クランク回転角を吸気圧に基づいて算出し、この第1クランク回転角にパージバルブの開弁時におけるクランク角である第1クランク角を加算することにより、パージバルブを通過した蒸発燃料が燃料噴射弁近傍に到達する時期に相当する上記第2クランク角を算出するようにしている。そのため、燃料噴射弁近傍において蒸発燃料の濃度が上昇し始める時期を適切に把握することができる。そして、上記第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始するようにしている。そのため、パージされた燃料量(ベーパ燃料量)を燃料噴射量に反映させる時期、すなわち燃料噴射量の補正開始タイミングを適切に設定することができるようになる。
このように上記構成によれば、パージ開始に伴う燃料噴射量の減量補正に際して、燃料噴射弁近傍における蒸発燃料の濃度変化開始時期を好適に把握することができ、もって蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射補正を好適に行うことができるようになる。その結果、パージされた燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化を抑制することもでき、パージされる蒸発燃料量をより増大させることも可能となる。
また、クランク角及びクランク回転角に基づいて燃料噴射量に対する増量補正の開始タイミングを求めるようにしているため、クランク角を参照して実行される燃料噴射制御に対して容易に同構成を適用することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記パージバルブの開弁に際して、前記ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量が燃料噴射弁の最小噴射量以上となるようにベーパ燃料の導入量を制限することをその要旨とする。
パージが実行されると、ベーパ燃料量に応じて燃料噴射量は減量補正されるが、燃料噴射弁には最小噴射量が存在するため、算出された減量補正後の燃料噴射量がこの最小噴射量よりも少ない場合には、実際に噴射される燃料噴射量が減量不足となり、燃料噴射量に対する補正量とベーパ燃料量との対応関係にずれが生じる。
そこで上記構成では、ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量が燃料噴射弁の最小噴射量以上となるようにベーパ燃料の導入量を制限するようにしている。そのため、燃料噴射量に対する補正量とベーパ燃料量との対応関係を維持した状態で燃料噴射の補正を行うことができるようになり、例えば同対応関係のずれに起因する空燃比の悪化等を抑制することもできる。
このようなベーパ燃料の導入量に対する制限については、請求項3に記載の発明によるように、前記ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量について、補正前の燃料噴射量と補正後の燃料噴射量との割合が所定の割合となるようにベーパ燃料の導入量を制限する、といった構成を採用することもできる。
なお、請求項4に記載の発明によるように、前記パージバルブの最大開度を制限することにより前記ベーパ燃料の導入量を制限する、といった構成を採用することにより、ベーパ燃料の導入量は実際に制限することができる。
請求項5に記載の発明は、燃料タンクで発生する蒸発燃料を捕集するキャニスタと、該キャニスタから脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気通路にパージするパージ通路と、該パージ通路に設けられて蒸発燃料の流量を調整するパージバルブとで構成される蒸発燃料処理機構を備える内燃機関に適用され、パージされる蒸発燃料の濃度に基づいて前記吸気通路に導入されるベーパ燃料の量を算出して、このベーパ燃料量に応じて燃料噴射弁からの燃料噴射量を補正する内燃機関の制御装置において、前記パージバルブ閉弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、蒸発燃料が前記パージバルブから前記燃料噴射弁近傍に移動する輸送遅れ時間内でのクランク回転角を第1クランク回転角としてこれを前記吸気通路内の吸気圧に基づいて算出し、前記第1クランク角に前記第1クランク回転角を加算した第2クランク角を算出して該第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の増量補正を開始することをその要旨とする。
上述したように、本発明者は、パージバルブ近傍における蒸発燃料の濃度変化が燃料噴射弁近傍の蒸発燃料の濃度に反映されるまでの時間、即ち蒸発燃料の輸送遅れ時間が機関回転速度に依存しない吸気圧を変数とする関係式で求められることを確認した。
そこで上記構成では、パージされた蒸発燃料がパージバルブから燃料噴射弁近傍にまで移動する時間、すなわち上記輸送遅れ時間に相当する第1クランク回転角を吸気圧に基づいて算出し、この第1クランク回転角にパージバルブの閉弁時におけるクランク角である第1クランク角を加算することにより、パージバルブをその閉弁直前に通過した蒸発燃料が燃料噴射弁近傍に到達する時期に相当する上記第2クランク角を算出するようにしている。そのため、燃料噴射弁近傍において蒸発燃料の濃度が低下し始める時期を適切に把握することができる。そして、上記第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の増量補正を開始するようにしている。そのため、パージされた燃料量(ベーパ燃料量)を燃料噴射量に反映させる時期、すなわち燃料噴射量の補正開始タイミングを適切に設定することができるようになる。
このように上記構成によれば、パージ停止に伴う燃料噴射量の増量補正に際して、燃料噴射弁近傍における蒸発燃料の濃度変化開始時期を好適に把握することができ、もって蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射補正を好適に行うことができるようになる。その結果、パージされた燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化を抑制することもでき、パージされる蒸発燃料量をより増大させることも可能となる。
また、クランク角及びクランク回転角に基づいて燃料噴射量に対する減量補正の開始タイミングを求めるようにしているため、クランク角を参照して実行される燃料噴射制御に対して容易に同構成を適用することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気通路内の吸気圧が安定している機関定常時にあって、前記吸気通路内における蒸発燃料の濃度についてその最大変化量を前記パージ通路内の蒸発燃料の濃度、前記パージ通路内の蒸発燃料の流量、及び機関の吸入空気量に基づいて算出するとともに、吸気通路内の蒸発燃料の濃度が前記最大変化量に達するまでの時間に相当するクランク回転角を第2クランク回転角としてこれを前記パージバルブ開弁時の吸気圧に基づいて算出し、該第2クランク回転角と前記最大変化量とで求められる濃度変化度合に対応させて燃料噴射量の補正量を設定することをその要旨とする。
パージバルブ開弁後や閉弁後には、吸気通路内における蒸発燃料の濃度が変化するものの、同パージバルブの動作に同調して直ちにその濃度の変化量が最大値に到達するわけではなく、同濃度が最大変化量に到達するにはある程度の時間を要する。この点、機関定常時にあって、このような蒸発燃料の濃度変化時間も機関回転速度に依存しない吸気圧を変数とする関係式で求められることを本発明者は確認している。
そこで上記構成では、まず、吸気通路内における蒸発燃料の濃度についてその最大変化量を上記各パラメータに基づいて算出し、吸気通路内の蒸発燃料の濃度が上記最大変化量に達するまでの時間に相当する第2クランク回転角を吸気圧に基づいて算出するようにしている。そのため、吸気通路内における蒸発燃料の濃度変化をクランク回転角に対応させて把握することができる。そして、同第2クランク回転角と上記最大変化量とで求められる濃度変化度合に対応させて燃料噴射量の補正量を設定するようにしている。そのため、吸気通路内での蒸発燃料の濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合を設定することができ、もって同燃料噴射量の補正を好適に行うことができるようになる。
また、蒸発燃料の濃度変化をクランク回転角に対応させて把握するようにしているため、クランク角を参照して実行される燃料噴射制御に対して容易に同構成を適用することができる。
なお、上記最大変化量は吸気通路内の吸気圧変化に伴って変化するが、同構成では吸気通路内の吸気圧が安定している機関定常時において上述したような最大変化量の算出を行うようにしている。そのため、同最大変化量を安定した値として算出することができる。
他方、吸気通路内の吸気圧が変化する機関の過渡時において、吸気通路内での蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射量の補正度合の設定を行うには、請求項7に記載の発明によるように、前記吸気通路内の吸気圧が変化する機関の過渡時にあって、前記パージ通路の出口での蒸発燃料の濃度変化を前記パージ通路内の蒸発燃料の濃度、前記パージ通路内の蒸発燃料の流量、機関の吸入空気量、及び前記パージバルブから前記パージ通路の出口までの蒸発燃料の輸送遅れ時間に基づいて算出し、該算出されたパージ通路の出口での蒸発燃料の濃度変化が燃料噴射弁近傍の吸気に反映されるまでの間におけるクランク回転角を第3クランク回転角としてこれを吸気圧に基づいて算出し、前記第1クランク角に前記第3クランク回転角を加算した第3クランク角における燃料噴射に対して、前記蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射量の補正量を設定する、といった構成を採用することができる。
同構成ではまず、パージ通路出口での蒸発燃料の濃度変化を上記各パラメータに基づいて算出するようにしている。これにより、パージ通路出口での蒸発燃料の濃度について吸気圧の変化に追従した値が得られるようになる。
一方、蒸発燃料がパージ通路出口から燃料噴射弁近傍にまで移動する時間、すなわち蒸発燃料の輸送遅れ時間に相当する上記第3クランク回転角は、上述したような吸気圧を変数とする関係式を利用して求めることができる。そこで上記構成では、同第3クランク回転角を吸気圧に基づいて算出し、パージバルブ動作時(開弁時、または閉弁時)のクランク角である上記第1クランク角にこの第3クランク回転角を加算することにより、パージ通路出口の蒸発燃料が燃料噴射弁近傍に到達する時期に相当する上記第3クランク角を算出するようにしている。そのため、吸気圧が変化する機関過渡時にあって燃料噴射弁近傍における蒸発燃料の濃度変化時期を適切に把握することができる。そして第3クランク角における燃料噴射に対して、蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射量の補正量を設定するようにしている。そのため、吸気通路内での蒸発燃料の濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合を設定することができ、もって同燃料噴射量の補正を好適に行うことができるようになる。
また、蒸発燃料の濃度変化をクランク回転角に対応させて把握するようにしているため、クランク角を参照して実行される燃料噴射制御に対して容易に同構成を適用することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、パージ停止直前の蒸発燃料の濃度を保持し、該保持された濃度に基づいて次回のパージ実行時における前記ベーパ燃料量を算出することをその要旨とする。
同構成によれば、パージ開始時において蒸発燃料の濃度を把握することなく、速やかにベーパ燃料量の算出を行うことができ、もって迅速に燃料噴射量の補正を開始することができるようになる。
なお、パージ中断時間がある程度以上長くなると、パージ停止直前の蒸発燃料の濃度とパージ開始時の蒸発燃料の濃度とが大きく異なっている可能性がある。そこで、請求項9に記載の発明によるように、請求項8に記載の内燃機関の制御装置において、パージ中断時間が所定の時間を超えている場合には蒸発燃料の濃度を更新する、といった構成を採用することにより、パージ開始時における蒸発燃料の濃度についてその信頼性を向上させることができるようになる。
また、蒸発燃料の濃度は請求項10に記載の発明によるように、上記パージ通路の途中に設けられたセンサにより直接検出することができる。
この他、蒸発燃料の濃度が変化すると機関の空燃比が変化するため、請求項11に記載の発明によるように、上記パージバルブを開弁させたときの空燃比変化に基づいて蒸発燃料の濃度を推定することもできる。
ここで、キャニスタからパージ通路に導入される蒸発燃料の濃度は常に一定ではなく、パージ処理を続けると徐々に低下していくようになる。従って、パージバルブを開弁させたときの空燃比変化に基づいて蒸発燃料の濃度を推定する場合にあってパージ処理が継続されると、実際の濃度は推定された濃度よりも低下するようになる。そのため、燃焼室に導入される燃料量が不足するようになり、空燃比はリーン側に移行するようになる。そこで、請求項12に記載の発明によるように、燃料噴射弁の噴射量を補正したときの空燃比が所定の範囲から外れる場合には燃料噴射量を再補正するとともに、その再補正における補正量に基づいて蒸発燃料の濃度を更新するといった構成を採用することにより、空燃比のずれを捕らえて燃料噴射量を再補正することができる。また、その再補正における補正量は、実際の蒸発燃料の濃度と、推定された蒸発燃料の濃度とのずれを反映しているため、この再補正量に基づいて蒸発燃料の濃度を更新することにより、その推定値を適切に修正することができる。
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した一実施形態について、図1〜図11を併せ参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる内燃機関の制御装置が適用される内燃機関10の概略構成を示している。
同図1に示されるように、内燃機関10には、燃料タンク21に接続された燃料供給経路を介してその燃焼室11に燃料を噴射供給する燃料噴射弁12と、この噴射された燃料と吸入空気と混合体である混合気に点火を行う点火プラグ13とがそれぞれ設けられている。また、燃焼室11には、吸気通路14及び排気通路15がそれぞれ接続されている。この吸気通路14の途中には、サージタンク16が設けられており、更にその上流側には、吸入空気量を調量するスロットルバルブ17が設けられている。
一方、この内燃機関10には蒸発燃料処理機構30が設けられている。この蒸発燃料処理機構30は、ベーパ通路32を介して上記燃料タンク21に接続されたキャニスタ31、このキャニスタ31と上記吸気通路14にあってスロットルバルブ17の下流側とを接続するパージ通路33、キャニスタ31内に大気を導入する大気導入通路34、並びにパージ通路33を開閉するパージバルブ35を備えて構成されている。
ここで、燃料タンク21に発生する蒸発燃料(以下、ベーパという)は、同燃料タンク21からベーパ通路32を通じてキャニスタ31内に導入され、その内部に設けられた吸着材に一旦吸着される。そして、パージバルブ35が開かれ、キャニスタ31内に大気導入通路34を通じて大気が導入されることによって、このキャニスタ31内に吸着されているベーパがパージ通路33を通じてサージタンク16内に導入される。このベーパに含まれる燃料は、燃料噴射弁12から噴射される燃料と共に、燃焼室11において燃焼される。また、このようにして吸気通路14にパージ処理されるベーパの燃料量は、パージバルブ35の開度に基づいて調節される。このパージバルブ35は電気信号に基づいて開度調節される電磁弁であり、デューティ信号を受けてその開度が制御される。
そして内燃機関10に対するこうしたパージ制御、並びに燃料噴射弁12の燃料噴射量を補正する空燃比制御等は電子制御装置40によって行われる。電子制御装置40は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路、及び外部出力回路等から構成されている。そして、上述したような各種制御を実行するために、内燃機関10の運転状態等を検出する各種センサが接続されており、これらセンサからの検出信号が適宜電子制御装置40に取り込まれる。
例えば電子制御装置40には、排気通路15に設けられて排気中の酸素濃度(混合気の空燃比)を検出するための空燃比センサ51や、吸気通路14内の圧力即ち吸気圧PMを検出する吸気圧センサ52の検出信号がそれぞれ入力されている。なお、本実施形態ではこの吸気圧PM等に基づいて内燃機関10の吸入空気量Qaを算出するようにしているが、エアフロメータ等を用いて直接吸入空気量Qaを検出するようにしてもよい。また、クランクシャフトの回転角を検出し、この検出信号に基づいて機関回転速度NEや同クランクシャフトの位置を検出するクランク角センサ53、スロットルバルブ17の開度を検出するスロットルセンサ54、内燃機関10の冷却水温THWを検出する水温センサ55等の検出信号も電子制御装置40にはそれぞれ入力されている。
これら各センサ51〜55等によって検出される内燃機関10の運転状態や車両の走行状態に基づいて、パージ制御や空燃比制御等の各制御が電子制御装置40によって実行される。なお、吸入空気中にパージされるベーパは、内燃機関10における混合気の空燃比に影響を及ぼす。そのため、電子制御装置40はパージされるベーパの濃度に基づいて吸気通路14に導入されるベーパ燃料の量を算出し、このベーパ燃料量に応じて燃料噴射弁12から噴射される燃料の量を増減補正することにより、空燃比が所望の値に維持されるようにしている。
ちなみに、吸気通路14にベーパ燃料が導入されると空燃比はリッチ側にシフトする。そこで、本実施形態では、パージバルブ35を開弁させたときの空燃比の変化に基づいてベーパの濃度を推定するようにしているが、パージ通路33にベーパの濃度を検出するセンサを設け、同センサによってベーパの濃度を直接検出するようにしてもよい。
さて、近年、大気中に放出されるベーパ燃料量の規制強化に伴い、キャニスタ31のベーパ捕集能力を向上させることが要望されている。この要望に応えるための1つの方法として、パージされるベーパ燃料量を増大させてキャニスタ31の捕集能力を早期に回復させることが考えられる。しかし、パージされるベーパ燃料量をさらに増大させる場合には、パージされたベーパ燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化がより顕著となるため、このようなずれを抑制する必要がある。
そこで本実施形態では、吸気通路内におけるベーパの濃度変化を精密に把握して同ベーパの濃度変化に対応した燃料噴射補正を行うことによって、パージされたベーパ燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化を抑制し、もってパージされるベーパ燃料量をより増大させることも可能となるようにしている。
以下、本実施形態における燃料噴射制御について、パージ処理が行われるときの態様を、図2〜図11を併せ参照して説明する。
まずはじめに、吸気通路内におけるベーパの濃度変化を把握するための原理について、図2〜図7を併せ参照して説明する。
図2は、パージ処理実行時におけるベーパの流動態様を模式的に示している。この図2に示されるように、パージバルブ35を通過したベーパは、輸送遅れ時間R1経過後、燃料噴射弁12近傍(図示B部)に到達する。この輸送遅れ時間R1は、ベーパがパージバルブ35からパージ通路33の出口(図示A部)にまで移動する時間である輸送遅れ時間R2と、同ベーパがパージ通路33の出口(図示A部)から燃料噴射弁12近傍(図示B部)にまで移動する時間である輸送遅れ時間R3との総和に一致する。
他方、図3は、吸気圧PMが安定している機関定常時にあって、パージバルブ35の動作状態が変化してからの図2におけるB部、すなわち燃料噴射弁12近傍におけるベーパの濃度(HC(炭化水素)濃度)変化態様を示している。なお、同図3における実線は、時刻t0においてパージバルブ35が開弁されたときのB部におけるHC濃度の変化態様を示しており、同図3における二点鎖線は、時刻t0においてパージバルブ35が閉弁されたときのB部におけるHC濃度の変化態様を示している。
この図3に実線にて示されるように、パージバルブ35が開弁されると(時刻t0)、ベーパは上記輸送遅れ時間R1経過後に燃料噴射弁12近傍に到達し、同燃料噴射弁12近傍のHC濃度は上昇し始める(時刻t1)。このようにパージバルブ35が開弁されると同パージバルブ35近傍のベーパの濃度は上昇するが、このベーパの濃度変化が燃料噴射弁12近傍のベーパの濃度に反映されるまでの時間、即ちベーパの輸送遅れ時間R1は、図4に示すように、機関回転速度NEに依存しない吸気圧PMを変数とする関係式で求められることを本発明者は確認した。
また、図3に二点鎖線にて示されるように、パージバルブ35が閉弁されると(時刻t0)、パージバルブ35をその閉弁直前に通過したベーパは上記輸送遅れ時間R1経過後に燃料噴射弁12近傍に到達し、同燃料噴射弁12近傍のHC濃度は低下し始める(時刻t1)。このようにパージバルブ35が閉弁されると同パージバルブ35近傍のベーパの濃度は低下するが、このベーパの濃度変化が燃料噴射弁12近傍のベーパの濃度に反映されるまでの時間、即ちこのときの輸送遅れ時間R1も、図4に示すように、機関回転速度NEに依存しない吸気圧PMを変数とする関係式で求められることを本発明者は確認した。
図4は、輸送遅れ時間R1内で回転するクランクシャフトの回転角を第1クランク回転角RCA1として、これと吸気圧PMとの対応関係を示す上記関係式のグラフである。この図4に示されるように、吸気圧PMが高くなる(吸気通路14内の圧力が大気圧に近づく)ほど、輸送遅れ時間R1は長くなり、上記第1クランク回転角RCA1は大きい値となる。なお、実験対象とした内燃機関では、吸気圧PMを変数とする一次モデル式によって第1クランク回転角RCA1を表すことができた。
そこで、図3に示すように、上記輸送遅れ時間R1に相当する第1クランク回転角RCA1を吸気圧PMに基づいて算出する。そして、パージバルブ35の開弁時におけるクランク角である第1クランク角CA1に同第1クランク回転角RCA1を加算することにより、パージバルブ35を通過したベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する時期に相当するクランク角である第2クランク角CA2を算出することができる。従って、燃料噴射弁12近傍においてベーパのHC濃度が上昇し始める時期を適切に把握することができ、第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始することにより、パージされた燃料量(ベーパ燃料量)を燃料噴射量に反映させる時期、すなわち燃料噴射量の補正開始タイミングを適切に設定することができる。
なお、図3に二点鎖線にて示すように、パージバルブ35が閉弁されたときも、上記輸送遅れ時間R1に相当する第1クランク回転角RCA1を吸気圧PMに基づいて算出する。そして、パージバルブ35の閉弁時におけるクランク角である第1クランク角CA1に同第1クランク回転角RCA1を加算することにより、パージバルブ35をその閉弁直前に通過したベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する時期に相当するクランク角である第2クランク角CA2を算出することができる。従って、燃料噴射弁12近傍においてベーパのHC濃度が低下し始める時期を適切に把握することができ、第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始することにより、パージされた燃料量(ベーパ燃料量)を燃料噴射量に反映させる時期、すなわち燃料噴射量の補正開始タイミングを適切に設定することができる。
また、図3に実線にて示されるように、燃料噴射弁12近傍にベーパが到達すると(時刻t1)、その後徐々に燃料噴射弁12近傍のHC濃度は増大していき、そのHC濃度が最大HC濃度DMAXに達すると(時刻t2)、同燃料噴射弁12近傍のHC濃度は安定するようになる。このようにパージバルブ35の開弁後には、燃料噴射弁12近傍といった吸気通路14内のHC濃度が変化するものの、同パージバルブ35の動作に同調して直ちにその濃度の変化量が最大値に到達するわけではなく、同濃度が最大変化量に到達するにはある程度の時間を要する。すなわち、図3に示すように、燃料噴射弁12近傍にベーパが到達してから(時刻t1)同燃料噴射弁12近傍のHC濃度が最大となるまで(時刻t2)には濃度変化時間Hが存在する。
また、図3に二点鎖線にて示されるように、パージバルブ35が閉弁されて(時刻t0)、上記輸送遅れ時間R1が経過すると(時刻t1)、徐々に燃料噴射弁12近傍のHC濃度は減少していき、最終的にはHC濃度が最大HC濃度DMAXからほぼ「0」にまで低下する(時刻t2)。このようにパージバルブ35の開弁後でも、燃料噴射弁12近傍といった吸気通路14内のHC濃度が変化するものの、同パージバルブ35の動作に同調して直ちにその濃度の変化量が最大値に到達するわけではなく、同濃度が最大変化量に到達するにはある程度の時間を要する。すなわち、図3に示すように、燃料噴射弁12近傍のHC濃度が最大HC濃度DMAXから(時刻t1)ほぼ「0」になるまで(時刻t2)の間でも上述したような濃度変化時間Hが存在する。
このようなパージバルブ開弁時、あるいは閉弁時におけるベーパの濃度変化時間Hも、吸気圧が変化しない機関定常時であれば、図5に示すように、機関回転速度NEに依存しない吸気圧を変数とする関係式で求められることを本発明者は確認した。
図5は、濃度変化時間H内で回転するクランクシャフトの回転角を第2クランク回転角RCA2として、これと吸気圧PMとの対応関係を示す上記関係式のグラフである。この図5に示されるように、吸気圧PMが高くなる(吸気通路14内の圧力が大気圧に近づく)ほど、濃度変化時間Hは短くなり、上記第2クランク回転角RCA2は小さい値となる。なお、実験対象とした内燃機関では、吸気圧PMを変数とする一次モデル式によって第2クランク回転角RCA2を表すことができた。
そこで、まず、燃料噴射弁12近傍といった吸気通路14内におけるベーパ濃度についてその最大変化量を算出する。この最大変化量、すなわち上記最大HC濃度DMAXは、パージ通路33内のベーパの濃度、パージ通路33内のベーパの流量、及び吸入空気量に基づいて算出することができる。そして、吸気通路14内のベーパ濃度が最大変化量に達するまでの時間、即ち上記濃度変化時間Hに相当する第2クランク回転角RCA2を吸気圧PMに基づいて算出することにより、吸気通路14内におけるベーパの濃度変化をクランク回転角に対応させて把握することができる。そして、同第2クランク回転角RCA2と上記最大変化量とで求められる濃度変化度合、換言すれば濃度変化の傾きに対応させて燃料噴射量の補正量を設定することにより、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合を設定することができ、もって同燃料噴射量の補正を適切に行うことができる。
一方、吸気圧PMが変化する機関過渡時にあっては、吸気通路14へのベーパ流入量が刻々と変化するため、上記最大HC濃度DMAXも常に変化する。そのため、最大HC濃度DMAXと上記第2クランク回転角RCA2とに基づく燃料噴射量の補正度合の設定は困難となる。そこで、このような場合には、以下のような態様で燃料噴射量の補正度合を設定する。
図6及び図7は、吸気圧PMが変化する機関過渡時にあって、パージ通路33の出口近傍(図2のA部)でのHC濃度の変化態様(一点鎖線)と、燃料噴射弁12近傍(図2のB部)でのHC濃度の変化態様(実線)とを模式的に示している。なお、図6では時刻Tにおいて吸気圧PMが高くなった場合(吸気圧PMが大気圧に近づいた場合、即ち負圧が小さくなった場合)の上記変化態様を示しており、図7では時刻Tにおいて吸気圧PMが低くなった場合(吸気圧PMが大気圧から離れた場合、即ち負圧が大きくなった場合)の上記変化態様を示している。
これら図6や図7に示されるように、吸気圧PMが高くなると(時刻T)、A部のHC濃度は徐々に低下していき、最終的には所定の濃度で安定するようになる。一方、ある時刻taにおけるA部のHC濃度は、先の図2に示した輸送遅れ時間R3を経て、B部のHC濃度に反映される。
ここで、パージ通路33の出口でのHC濃度の変化は、パージ通路33内のベーパ濃度(HC濃度)、パージ通路33内のベーパ流量、吸入空気量Qa、及びパージバルブ35からパージ通路33の出口までのベーパ輸送遅れ時間R2に基づいて算出することができる。そしてこれによりパージ通路33出口でのHC濃度について吸気圧PMの変化に追従した値が得られる。なお、上記ベーパ流量は吸気圧PMが高くなるほど、またパージバルブ35の開度が小さくなるほど低下する傾向にあるため、吸気圧PMおよびパージバルブ35の開度に基づいて同ベーパ流量は算出することができ、例えば同吸気圧PMおよびパージバルブ35の開度を変数とする関係式、あるいはマップ等を用いて適宜求めることができる。また、輸送遅れ時間R2は、パージ通路33内にあってパージバルブ35からパージ通路33の出口までの体積と上記求められるベーパ流量とに基づいて算出することができる。
また、上記輸送遅れ時間R3は、先の図2に示した輸送遅れ時間R1から上記算出される輸送遅れ時間R2を減算することにより求めることができる。ここで、輸送遅れ時間R1、R2は、上述したように吸気圧PMに基づいて算出することができるため、同輸送遅れ時間R3も吸気圧PMを変数とする関係式を用いて求めることができる。
そこでまず、パージ通路33の出口でのHC濃度変化を上記各パラメータに基づいて算出する。また、ベーパがパージ通路33の出口から燃料噴射弁12近傍にまで移動する時間、すなわち上記輸送遅れ時間R3に相当する第3クランク回転角RCA3を吸気圧PMを変数とする関係式を用いて算出する。そして、パージバルブ35の動作時(開弁時、または閉弁時)のクランク角である上記第1クランク角CA1に第3クランク回転角RCA3を加算して、パージ通路33出口のベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する時期に相当する第3クランク角CA3を算出する。このような態様により、吸気圧PMが変化する機関過渡時であっても、燃料噴射弁12近傍におけるベーパの濃度変化時期を適切に把握することができる。そして第3クランク角CA3における燃料噴射に対して、ベーパの濃度変化に対応した燃料噴射量の補正量を設定することにより、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合を設定することができ、もって同燃料噴射量の補正を適切に行うことができる。
次に、上述したような原理が適用された本実施形態におけるパージ制御について、図8〜図11を併せ参照して説明する。なお、この制御にかかる処理は電子制御装置40によって実行される。また、図8及び図9は、パージ処理が開始されるときのパージ制御についてその処理手順を示しており、図10及び図11は、パージ処理が停止されるときのパージ制御についてその処理手順を示している。
はじめに、図8及び図9を併せ参照して、パージ処理が開始されるときのパージ制御について説明する。
この処理は、所定のパージ開始条件が成立すると実行される。そして、本処理が開始されると、まず、前回のパージ停止時から今回のパージ開始時までの時間であるパージ中断時間PSTが所定の閾値Aよりも短いか否かが判定される(S100)。この閾値Aは、パージ通路33内において、キャニスタ31からパージバルブ35の間におけるHC濃度がパージ停止中に変化し、前回算出されたHC濃度のままパージ処理を開始すると空燃比に乱れが生じると考えられる程度の濃度変化が起きる時間であり、実験等を通じて適宜設定されている。ちなみに本実施形態では、前回のパージ停止直前におけるベーパのHC濃度VDを電子制御装置40のメモリに保持するようにしており、基本的には該保持されたHC濃度VDに基づいて次回のパージ実行時におけるベーパ燃料量の算出を行うようにしている。そのため、パージ開始時においてベーパのHC濃度VDを把握することなく、速やかにベーパ燃料量を算出することができ、もって迅速に燃料噴射量の補正を開始することができる。
さて、パージ中断時間PSTが閾値A以上に長い旨判定される場合には(S100:NO)、パージ中断時間がある程度以上長くため、前回のパージ停止直前におけるベーパのHC濃度VDとパージ開始時のベーパのHC濃度VDとが大きく異なっている可能性がある。そこで、空燃比制御に悪影響を与えない程度の開度でパージバルブ35を開弁させ(S101)、ベーパを吸気通路14内に導入する。そして、このときの空燃比変化に基づいてベーパのHC濃度VDが判定され(S102)、同HC濃度VDは再学習される。そして、パージバルブ35が一旦閉弁されて(S103)、ステップS104以降の処理が実行される。このステップS100〜S103の一連の処理により、パージ開始時におけるベーパのHC濃度VDについてその信頼性が向上される。
一方、パージ中断時間PSTが閾値Aよりも短い旨判定される場合には(S100:YES)、現在のベーパのHC濃度VDが読み込まれる(S104)。ここでは、ステップS100の処理で肯定判定された場合には前回のパージ停止直前に記憶されたベーパのHC濃度VDが読み込まれ、ステップS100の処理で否定判定された場合にはステップS102で再学習されたHC濃度VDが読み込まれる。
次に現在のスロットル開度TAが読み込まれる(S105)。ここで、スロットル開度TAが急変しても吸入空気量は遅れて変化するため、スロットル開度TAの変化が終了したときの吸入空気量Qaが同スロットル開度TAに基づいて算出される(S106)。
次に、現在の吸気圧PMに変化があるかないかが判断され(S107)、吸気圧PMに変化がない旨判断される場合には(S107:YES)、機関運転状態が定常状態にあるとして、ステップS108以降の処理が行われる。
このステップS108の処理では、パージバルブ35の上限開度VMAXが設定される(S108)。これは次の理由による。すなわち、パージが実行されると、吸気通路14に導入されるベーパ燃料量が上記HC濃度VDと吸入空気量Qaとに基づいて算出され、このベーパ燃料量に応じて燃料噴射量は減量補正される。ここで、燃料噴射弁12には最小噴射量が存在するため、算出された減量補正後の燃料噴射量がこの最小噴射量よりも少ない場合には、実際に噴射される燃料噴射量が減量不足となり、燃料噴射量に対する補正量とベーパ燃料量との対応関係にずれが生じる。
そこで、ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量が燃料噴射弁の最小噴射量以上となるようにベーパ燃料の導入量を制限するべく、パージバルブ35の最大開度を制限ための上記上限開度VMAXを設定するようにしている。これにより、燃料噴射量に対する補正量とベーパ燃料量との対応関係を維持した状態で燃料噴射の補正を行うことができ、もって同対応関係のずれに起因する空燃比の悪化等が抑制される。
次に、上記設定された上限開度VMAX以下の開度、より好適には同上限開度VMAX近傍の開度でパージバルブ35が開弁される(S109)。
次に、パージバルブ35の開弁時における吸気圧PMが読み込まれる(S110)。そして、この吸気圧PMとパージバルブ35の開度とで求められるパージ通路33内のベーパ流量、パージ通路33内のベーパの濃度である上記HC濃度VD、及び吸入空気量Qaに基づいて燃料噴射弁12近傍といった吸気通路14内におけるベーパ濃度の最大変化量、すなわち上記最大HC濃度DMAXが算出される(S111)。
次に、算出された最大HC濃度DMAXに相当する燃料量が燃料噴射量に対する補正量である噴射補正量QHとして算出される(S113)。
次に、パージバルブ35の開弁時におけるクランク角である上記第1クランク角CA1がメモリに記憶されるとともに(S113)、上記ステップS110で読み込まれた吸気圧PMに基づいて上述したようなベーパの輸送遅れ時間R1に相当する第1クランク回転角RCA1が算出される(S114)。そして、先の図3に示したようなベーパの到達時刻t1におけるクランク角である上記第2クランク角CA2が算出される(S115)。この第2クランク角CA2は、上述したように第1クランク角CA1に第1クランク回転角RCA1を加算した値である。
そして、燃料噴射量の補正を開始する気筒が判定される(S116)。ここでは、第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒が燃料噴射量の減量補正を開始する気筒として判定される。
次に、ステップS112の処理で求められた噴射補正量QHを燃料噴射量に反映させていくための時間として、上述したような濃度変化時間Hに相当する第2クランク回転角RCA2がステップS110で読み込まれた吸気圧PMに基づいて算出される(S117)。そして、燃料噴射量の減量補正が実行される(S118)。このステップS118の処理では、第2クランク回転角RCA2と上記最大HC濃度DMAXとで求められるベーパの濃度変化度合、換言すれば徐々に高くなっていくHC濃度の変化の傾きに対応させて燃料噴射量の補正量が設定され、同補正は実行される。そのため、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合は設定される。
次に、現在の空燃比が予め設定された所定範囲内の値、例えば空燃比の最適範囲内の値になっているか否かが判定される(S131)。そして、同空燃比が所定範囲内の値になっている旨判定される場合には(S131:YES)、本処理は一旦終了される。
一方、空燃比が所定範囲内の値になっていない旨判定される場合には(S131:NO)、空燃比のフィードバック信号に基づいて燃料噴射量が再補正されるとともに、そのときの燃料噴射量に対する再補正量に基づいてHC濃度VDが更新されて(S132)、本処理は一旦終了される。これらステップS131及びステップS132の処理は、以下の理由により実行される。
すなわち、キャニスタ31からパージ通路33に導入されるベーパのHC濃度は常に一定ではなく、パージ処理を続けると徐々に低下していくようになる。従って、パージバルブ35を開弁させたときの空燃比変化に基づいてベーパのHC濃度を推定する場合にあってパージ処理が継続されると、実際のHC濃度は推定されたHC濃度よりも低下するようになる。そのため、燃焼室11に導入される燃料量が不足するようになり、空燃比はリーン側に移行するようになる。そこで、燃料噴射弁12の噴射量をベーパ燃料量に応じて補正したときの空燃比が所定の範囲から外れる場合には燃料噴射量を再補正するとともに、その再補正における補正量に基づいてHC濃度VDを更新することにより、空燃比のずれを捕らえて燃料噴射量を再補正することができる。また、その再補正における補正量は、実際のHC濃度VDと、推定されたHC濃度VDとのずれを反映するため、この再補正量に基づいてHC濃度VDを更新することにより、その推定値を適切に修正することができる。
他方、上記ステップS107の処理において、吸気圧PMに変化がある旨判断される場合には(S107:NO)、機関運転状態が過渡状態にあるとして、ステップS119以降の処理が行われる。
このステップS119の処理では、減速時か否かが判断される(S119)。ここでの判断は、吸気圧PMやスロットル開度TA等の変化傾向などといった、減速状態を把握できる各種値に基づいて行うことができる。そして、減速時である旨判断される場合には(S119:YES)、ステップS108と同様にして、パージバルブ35の上限開度VMAXが設定される(S120)。
一方、ステップS119の処理において減速時でない旨判断される場合、すなわち加速時である旨判断される場合や(S119:NO)、上記ステップS120の処理が完了した場合には、パージバルブ35が開弁される(S121)。この開弁時にあって、上限開度VMAXが設定されている場合には、同上限開度VMAX以下の開度、より好適には同上限開度VMAX近傍の開度でパージバルブ35が開弁される。
次に、パージバルブ35の開弁時における吸気圧PMが読み込まれる(S122)。そして、パージバルブ35の開弁時におけるクランク角である上記第1クランク角CA1がメモリに記憶されるとともに(S123)、上記ステップS122で読み込まれた吸気圧PMに基づいて上述したようなベーパの輸送遅れ時間R1に相当する第1クランク回転角RCA1が算出される(S124)。そして、先の図3に示したように、ベーパの到達時刻t1でのクランク角である上記第2クランク角CA2が算出される(S125)。この第2クランク角CA2は、上記ステップS123で記憶された第1クランク角CA1に、上記ステップS124で算出された第1クランク回転角RCA1を加算した値である。
そして、燃料噴射量の補正を開始する気筒が判定される(S126)。ここでは、第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒が燃料噴射量の減量補正を開始する気筒として判定される。
次に、パージ通路33の出口におけるベーパの濃度であるHC濃度PDが算出される(S127)。このパージ通路33の出口におけるHC濃度PDは、上述したようにパージ通路33内のHC濃度VD、パージ通路33内のベーパ流量、吸入空気量Qa、及びパージバルブ35からパージ通路33の出口までのベーパ輸送遅れ時間R2に基づいて算出される。
次に、算出されたHC濃度PDに相当する燃料量が、燃料噴射量に対する補正量である噴射補正量QHとして算出される(S128)。
次に、ステップS128の処理で求められた噴射補正量QHを燃料噴射量に反映させる時期として、上述したようなベーパの輸送遅れ時間R3に相当する第3クランク回転角RCA3がステップS122で読み込まれた吸気圧PMに基づいて算出される(S129)。
そして、燃料噴射量の減量補正が実行される(S130)。このステップS130の処理では、ベーパがパージ通路33の出口から燃料噴射弁12近傍にまで移動する時間、換言すれば上記輸送遅れ時間R3に相当する第3クランク回転角RCA3を、上記第1クランク角CA1に加算し、パージ通路33出口のベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する時期に相当する第3クランク角CA3が算出される。そして、同第3クランク角CA3にて実行される燃料噴射に際しては、機関運転状態に応じて変化する燃料噴射量から上記ステップS128で求められた噴射補正量QHが減量される。このような態様により、吸気圧PMが変化する機関過渡時であっても、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合が設定される。ちなみに、機関の過渡時には吸気圧PMが変化するため、吸気圧PMが変化しつづける場合には、ステップS122、及びステップS127〜ステップS130の処理を繰り返し実行することで、燃料噴射量を適切に補正し続けることができる。
そして、ステップS130の処理がなされると、上記ステップS131以降の処理が行われ、本処理は一旦される。
次に、図10及び図11を併せ参照して、パージ処理が停止されるときのパージ制御について説明する。
この処理は、所定のパージ停止条件が成立すると実行される。そして、本処理が開始されると、まず、現在のベーパのHC濃度VDが読み込まれる(S200)。
次に現在のスロットル開度TAが読み込まれ(S201)、スロットル開度TAの変化が終了したときの吸入空気量Qaが、上記ステップS106での処理と同様にスロットル開度TAに基づいて算出される(S202)。
次に、現在の吸気圧PMに変化があるかないかが判断され(S203)、吸気圧PMに変化がない旨判断される場合には(S203:YES)、機関運転状態が定常状態にあると判断され、パージバルブ35が閉弁される(S204)。
次に、パージバルブ35の閉弁時における吸気圧PMが読み込まれる(S205)。そして、パージバルブ35の閉弁時におけるクランク角である第1クランク角CA1がメモリに記憶されるとともに(S206)、上記ステップS205で読み込まれた吸気圧PMに基づいて上述したようなベーパの輸送遅れ時間R1に相当する第1クランク回転角RCA1が算出される(S207)。
そして、先の図3に示したように、パージバルブ35をその閉弁直前に通過したベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する同ベーパの到達時刻t1でのクランク角である上記第2クランク角CA2が算出される(S208)。この第2クランク角CA2は、上記ステップS206で記憶された第1クランク角CA1に、上記ステップS207で算出された第1クランク回転角RCA1を加算した値である。
そして、燃料噴射量の補正を開始する気筒が判定される(S209)。ここでは、第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒が燃料噴射量の増量補正を開始する気筒として判定される。
次に、上記最大HC濃度DMAXに相当する燃料量だけ、換言すれば上記噴射補正量QHだけ減量補正された燃料噴射量を、パージ処理による補正前の燃料噴射量に増大させていくための時間として、上述したような濃度変化時間Hに相当する第2クランク回転角RCA2がステップS205での吸気圧PMに基づいて算出される(S210)。そして、燃料噴射量の増量補正が実行される(S211)。このステップS210の処理では、第2クランク回転角RCA2と上記最大HC濃度DMAXとで求められるベーパの濃度変化度合、換言すれば徐々に低下していくHC濃度の変化の傾きに対応させて燃料噴射量の補正量が設定され、同補正は実行される。そのため、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合は設定される。
次に、現在の空燃比が予め設定された所定範囲内の値、例えば空燃比の最適範囲内の値になっているか否かが判定される(S222)。そして、同空燃比が所定範囲内の値になっている旨判定される場合には(S222:YES)、本処理は一旦終了される。
一方、空燃比が所定範囲内の値になっていない旨判定される場合には(S222:NO)、空燃比のフィードバック信号に基づいて燃料噴射量が再補正されるとともに、そのときの燃料噴射量に対する再補正量に基づいてHC濃度VDが更新されて(S223)、本処理は一旦終了される。これらステップS131及びステップS132の処理は、以下の理由により実行される。これらステップS222及びステップS223の処理を実行する理由は、上記ステップS131及びステップS132の処理を実行する理由と同一である。
他方、上記ステップS203の処理において、吸気圧PMに変化がある旨判断される場合には(S203:NO)、機関運転状態が過渡状態にあると判断され、パージバルブ35が閉弁される(S212)。
次に、パージバルブ35の閉弁時における吸気圧PMが読み込まれる(S213)。そして、パージバルブ35の閉弁時におけるクランク角である第1クランク角CA1がメモリに記憶されるとともに(S214)、上記ステップS213で読み込まれた吸気圧PMに基づいて上述したようなベーパの輸送遅れ時間R1に相当する第1クランク回転角RCA1が算出される(S215)。
そして、先の図3に示したように、パージバルブ35をその閉弁直前に通過したベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する同ベーパの到達時刻t1でのクランク角である上記第2クランク角CA2が算出される(S216)。この第2クランク角CA2は、上記ステップS214で記憶された第1クランク角CA1に、上記ステップS215で算出された第1クランク回転角RCA1を加算した値である。
そして、燃料噴射量の補正を開始する気筒が判定される(S217)。ここでは、第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒が燃料噴射量の増量補正を開始する気筒として判定される。
次に、パージ通路33の出口におけるベーパの濃度であるHC濃度PDが算出される(S218)。このパージ通路33の出口におけるHC濃度PDは、上述したようにパージ通路33内のHC濃度VD、パージ通路33内のベーパ流量、吸入空気量Qa、及びパージバルブ35からパージ通路33の出口までのベーパ輸送遅れ時間R2に基づいて算出される。
次に、算出されたHC濃度PDに相当する燃料量が、燃料噴射量に対する補正量である噴射補正量QHとして算出される(S219)。
次に、ステップS219の処理で求められた噴射補正量QHを燃料噴射量に反映させる時期として、上述したようなベーパの輸送遅れ時間R3に相当する第3クランク回転角RCA3がステップS213で読み込まれた吸気圧PMに基づいて算出される(S220)。
そして、燃料噴射量の増量補正が実行される(S221)。このステップS221の処理でも、上記ステップS130の処理と同様な処理が行われる。すなわち、ベーパがパージ通路33の出口から燃料噴射弁12近傍にまで移動する時間、換言すれば上記輸送遅れ時間R3に相当する第3クランク回転角RCA3を上記第1クランク角CA1に加算し、パージ通路33出口のベーパが燃料噴射弁12近傍に到達する時期に相当する第3クランク角CA3が算出される。そして、同第3クランク角CA3にて実行される燃料噴射に際しては、機関運転状態に応じて変化する燃料噴射量から上記ステップS219で求められた噴射補正量QHが減量される。ここで、同ステップS221での燃料噴射量の補正に際しては、噴射補正量QHの値が時間の経過とともに徐々に小さくなるため、燃料噴射弁12から噴射される燃料噴射量は時間の経過とともに実質的に増量補正されることとなる。
このような態様により、吸気圧PMが変化する機関過渡時であっても、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合が設定される。ちなみに、機関の過渡時には吸気圧PMが変化するため、吸気圧PMが変化しつづける場合には、ステップS213、及びステップS218〜ステップS221の処理を繰り返し実行することで、燃料噴射量を適切に補正し続けることができる。
そして、ステップS221の処理がなされると、上記ステップS222以降の処理が行われ、本処理は一旦される。
なお、本実施形態では、上述したようにクランク角及びクランク回転角に基づいて燃料噴射量に対する増量補正の開始タイミングや減量補正の開始タイミングを求めるようにしている。また、ベーパの濃度変化もクランク回転角に対応させて把握するようにしている。そのため、クランク角を参照して実行される燃料噴射制御に対して容易に上記補正態様を適用することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)パージバルブ35の開弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、パージバルブ35から燃料噴射弁12近傍にまで移動する輸送遅れ時間R1内でのクランク回転角を第1クランク回転角RCA1としてこれを吸気圧PMに基づいて算出するようにしている。そして第1クランク角CA1に第1クランク回転角RCA1を加算した第2クランク角CA2を算出して該第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始するようにしている。そのため、パージ開始に伴う燃料噴射量の減量補正に際して、燃料噴射弁12近傍におけるベーパの濃度変化開始時期を好適に把握することができ、もってベーパの濃度変化に対応した燃料噴射補正を好適に行うことができるようになる。その結果、パージされた燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化を抑制することもでき、パージされるベーパ燃料量をより増大させることも可能となる。
(2)パージバルブ35の閉弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、パージバルブ35から燃料噴射弁12近傍にまで移動する輸送遅れ時間R1内でのクランク回転角を第1クランク回転角RCA1としてこれを吸気圧PMに基づいて算出するようにしている。そして第1クランク角CA1に第1クランク回転角RCA1を加算した第2クランク角CA2を算出して該第2クランク角CA2にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の増量補正を開始するようにしている。そのため、パージ停止に伴う燃料噴射量の増量補正に際して、燃料噴射弁12近傍におけるベーパの濃度変化開始時期を好適に把握することができ、もってベーパの濃度変化に対応した燃料噴射補正を好適に行うことができるようになる。その結果、パージされた燃料量と燃料噴射量に対する補正量とのずれに起因して生じる補正精度の悪化を抑制することもでき、パージされるベーパ燃料量をより増大させることも可能となる。
(3)吸気通路14内の吸気圧PMが安定している機関定常時にあって、吸気通路14内におけるベーパの濃度についてその最大変化量である最大HC濃度DMAXを算出するようにしている。また、吸気通路14内のベーパの濃度が最大HC濃度DMAXに達するまでの時間に相当するクランク回転角を第2クランク回転角RCA2としてこれをパージバルブ35開弁時の吸気圧PMに基づいて算出するようにしている。そして、該第2クランク回転角RCA2と最大HC濃度DMAXとで求められる濃度変化度合に対応させて燃料噴射量の補正量を設定するようにしている。そのため、吸気通路14内の吸気圧PMが安定している機関定常時において、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合を設定することができ、もって同燃料噴射量の補正を好適に行うことができるようになる。
なお、最大HC濃度DMAXは吸気通路14内の吸気圧変化に伴って変化するが、上記実施形態では吸気通路14内の吸気圧が安定している機関定常時において同最大HC濃度DMAXの算出を行うようにしている。そのため、該最大HC濃度DMAXを安定した値として算出することができる。
(4)吸気通路14内の吸気圧PMが変化する機関の過渡時において、パージ通路33の出口でのベーパの濃度変化を算出し、該算出されたパージ通路出口でのベーパの濃度変化が燃料噴射弁12近傍の吸気に反映されるまでの間におけるクランク回転角を第3クランク回転角RCA3としてこれを吸気圧PMに基づいて算出するようにしている。そして、上記第1クランク角CA1に第3クランク回転角RCA3を加算した第3クランク角CA3における燃料噴射に対して、ベーパの濃度変化に対応した燃料噴射量の補正量を設定するようにしている。そのため、吸気通路14内の吸気圧PMが変化する機関の過渡時において、吸気通路14内でのベーパの濃度変化に対応させて燃料噴射量の補正度合を設定することができ、もって同燃料噴射量の補正を好適に行うことができるようになる。
(5)パージバルブ35の開弁に際して、ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量が燃料噴射弁12の最小噴射量以上となるようにベーパ燃料の導入量を制限するようにしている。より具体的にはパージバルブ35の最大開度を制限するべく、上記上限開度VMAXを設定するようにしている。そのため、燃料噴射量に対する補正量とベーパ燃料量との対応関係を維持した状態で燃料噴射の補正を行うことができるようになり、同対応関係のずれに起因する空燃比の悪化等を抑制することもできる。
(6)パージ停止直前のベーパの濃度である上記HC濃度VDを保持し、該保持された濃度に基づいて次回のパージ実行時におけるベーパ燃料量を算出するようにしている。そのため、パージ開始時においてベーパの濃度を把握することなく、速やかにベーパ燃料量の算出を行うことができ、もって迅速に燃料噴射量の補正を開始することができるようになる。
(7)パージの中断時間がある程度以上長くなると、パージ停止直前のベーパの濃度とパージ開始時のベーパの濃度とが大きく異なっている可能性がある。そこで、上記実施形態では、パージ中断時間PSTが閾値Aを超えている場合にはベーパの濃度を更新するようにしている。そのため、パージ開始時におけるベーパの濃度についてその信頼性を向上させることができるようになる。
(8)燃料噴射弁12の噴射量をベーパ燃料量に応じて補正したときの空燃比が所定の範囲から外れる場合には燃料噴射量を再補正するとともに、そのときの再補正量に基づいてHC濃度VDを更新するようにしている。そのため、パージバルブ35を開弁させたときの空燃比変化に基づいてHC濃度VDを推定するようにした上記実施形態にあって、空燃比のずれを捕らえた燃料噴射量の再補正を実施することができる。また、その再補正量に基づいてHC濃度VDを更新するようにしているため、その推定されるHC濃度VDを適切に修正することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態において、図8及び図9に示したパージ開始時の処理のみを実行するようにしてもよい。この場合でも、上記(2)を除く効果を得ることができる。また、図10及び図11に示したパージ停止時の処理のみを実行するようにしてもよい。この場合でも、上記(1)を除く効果を得ることができる。
また、燃料噴射量に対する増量補正の開始タイミングや減量補正の開始タイミングのみを求めるようにしてもよい。この場合にも上記(1)または(2)に記載の効果を得ることができる。
・上記実施形態では、ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量が燃料噴射弁12の最小噴射量以上となるようにベーパ燃料の導入量を制限するべく、パージバルブ35の上限開度VMAXを設定するようにしたが、補正前の燃料噴射量と補正後の燃料噴射量との割合が所定の割合となるようにベーパ燃料の導入量を制限するようにしてもよい。
この場合にも、ベーパ燃料の導入量が制限されるため、燃料噴射量に対する補正量とベーパ燃料量との対応関係を維持した状態で燃料噴射の補正を行うことができるようになり、同対応関係のずれに起因する空燃比の悪化等を抑制することができる。
また、上限開度VMAXの設定処理を省略するようにしてもよい。この場合でも、上記(5)を除く効果を得ることができる。
・パージ停止直前のHC濃度VDを記憶するのではなく、パージ開始直前にHC濃度VDを推定する処理を常に実行するようにしてもよい。この場合でも、上記(6)を除く効果を得ることができる。
・パージ中断時間PSTと閾値Aとの比較判定処理を省略するようにしてもよい。この場合でも、上記(7)を除く効果を得ることができる。
・燃料噴射弁12の噴射量をベーパ燃料量に応じて補正したときの空燃比が所定の範囲から外れる場合には燃料噴射量を再補正するとともに、その再補正量に基づいてHC濃度VDを更新するようにしたが、これらの処理を省略して実施することもできる。この場合でも上記(8)を除く効果を得ることができる。
・上記HC濃度VDをパージ通路33の途中に設けられたセンサにより直接検出するようにしてもよい。この場合には、HC濃度VDを随時更新することができるため、上記ステップS100〜S103の処理や、パージ停止直前のHC濃度VDを記憶するといった処理を省略することができる。
・上記実施形態では関係式を用いて第1クランク回転角RCA1や第2クランク回転角RCA2を求めるようにしたが、吸気圧に対応する第1クランク回転角RCA1や第2クランク回転角RCA2を電子制御装置40のメモリに記憶させておいてもよい。
・上記HC濃度VDは、上述したような態様とは異なる態様で推定するようにしてもよい。
・上記実施形態及びその変形例にかかる内燃機関の制御装置は、点火プラグを備えるガソリン機関のみならず、ディーゼル機関にも適用して実施することができる。
本発明にかかる内燃機関の制御装置の一実施形態について、これが適用される内燃機関の構成を示す概略図。 パージ処理実行時におけるベーパの流動態様を示す模式図。 吸気圧が安定している機関定常時にあって、パージバルブの動作状態が変化してからの燃料噴射弁近傍におけるベーパの濃度変化態様を示す模式図。 第1クランク回転角と吸気圧との対応関係を示すグラフ。 第2クランク回転角と吸気圧との対応関係を示すグラフ。 時刻Tにおいて吸気圧が高くなった場合において、パージ通路出口近傍(図2のA部)でのHC濃度の変化態様と、燃料噴射弁近傍(図2のB部)でのHC濃度の変化態様とを示す模式図。 時刻Tにおいて吸気圧が低くなった場合において、パージ通路出口近傍(図2のA部)でのHC濃度の変化態様と、燃料噴射弁近傍(図2のB部)でのHC濃度の変化態様とを示す模式図。 同実施形態において、パージ処理が開始されるときのパージ制御についてその処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において、パージ処理が開始されるときのパージ制御についてその処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において、パージ処理が停止されるときのパージ制御についてその処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において、パージ処理が停止されるときのパージ制御についてその処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
10…内燃機関10…燃焼室、12…燃料噴射弁 、13…点火プラグ、14…吸気通路、15…排気通路、16…サージタンク、17…スロットルバルブ、21…燃料タンク、30…蒸発燃料処理機構、31…キャニスタ、32…ペーパ通路、33…パージ通路、34…大気導入通路、35…パージバルブ、40…電子制御装置、51…空燃比センサ、52…吸気圧センサ、53…クランク角センサ、54…スロットルセンサ、55…水温センサ。

Claims (12)

  1. 燃料タンクで発生する蒸発燃料を捕集するキャニスタと、該キャニスタから脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気通路にパージするパージ通路と、該パージ通路に設けられて蒸発燃料の流量を調整するパージバルブとで構成される蒸発燃料処理機構を備える内燃機関に適用され、パージされる蒸発燃料の濃度に基づいて前記吸気通路に導入されるベーパ燃料の量を算出して、このベーパ燃料量に応じて燃料噴射弁からの燃料噴射量を補正する内燃機関の制御装置において、
    前記パージバルブの開弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、蒸発燃料が前記パージバルブから前記燃料噴射弁近傍にまで移動する輸送遅れ時間内でのクランク回転角を第1クランク回転角としてこれを前記吸気通路内の吸気圧に基づいて算出し、前記第1クランク角に前記第1クランク回転角を加算した第2クランク角を算出して該第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の減量補正を開始する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記パージバルブの開弁に際して、前記ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量が燃料噴射弁の最小噴射量以上となるようにベーパ燃料の導入量を制限する
    請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記パージバルブの開弁に際して、前記ベーパ燃料量に応じて補正される燃料噴射量について、補正前の燃料噴射量と補正後の燃料噴射量との割合が所定の割合となるようにベーパ燃料の導入量を制限する
    請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記パージバルブの最大開度を制限することにより前記ベーパ燃料の導入量を制限する
    請求項2または3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 燃料タンクで発生する蒸発燃料を捕集するキャニスタと、該キャニスタから脱離した蒸発燃料を内燃機関の吸気通路にパージするパージ通路と、該パージ通路に設けられて蒸発燃料の流量を調整するパージバルブとで構成される蒸発燃料処理機構を備える内燃機関に適用され、パージされる蒸発燃料の濃度に基づいて前記吸気通路に導入されるベーパ燃料の量を算出して、このベーパ燃料量に応じて燃料噴射弁からの燃料噴射量を補正する内燃機関の制御装置において、
    前記パージバルブ閉弁時におけるクランク角を第1クランク角として記憶し、蒸発燃料が前記パージバルブから前記燃料噴射弁近傍に移動する輸送遅れ時間内でのクランク回転角を第1クランク回転角としてこれを前記吸気通路内の吸気圧に基づいて算出し、前記第1クランク角に前記第1クランク回転角を加算した第2クランク角を算出して該第2クランク角にて吸気行程となる気筒から燃料噴射量の増量補正を開始する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  6. 前記吸気通路内の吸気圧が安定している機関定常時にあって、前記吸気通路内における蒸発燃料の濃度についてその最大変化量を前記パージ通路内の蒸発燃料の濃度、前記パージ通路内の蒸発燃料の流量、及び機関の吸入空気量に基づいて算出するとともに、吸気通路内の蒸発燃料の濃度が前記最大変化量に達するまでの時間に相当するクランク回転角を第2クランク回転角としてこれを前記パージバルブ開弁時の吸気圧に基づいて算出し、該第2クランク回転角と前記最大変化量とで求められる濃度変化度合に対応させて燃料噴射量の補正量を設定する
    請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記吸気通路内の吸気圧が変化する機関の過渡時にあって、前記パージ通路の出口での蒸発燃料の濃度変化を前記パージ通路内の蒸発燃料の濃度、前記パージ通路内の蒸発燃料の流量、機関の吸入空気量、及び前記パージバルブから前記パージ通路の出口までの蒸発燃料の輸送遅れ時間に基づいて算出し、該算出されたパージ通路の出口での蒸発燃料の濃度変化が燃料噴射弁近傍の吸気に反映されるまでの間におけるクランク回転角を第3クランク回転角としてこれを吸気圧に基づいて算出し、前記第1クランク角に前記第3クランク回転角を加算した第3クランク角における燃料噴射に対して、前記蒸発燃料の濃度変化に対応した燃料噴射量の補正量を設定する
    請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  8. パージ停止直前の蒸発燃料の濃度を保持し、該保持された濃度に基づいて次回のパージ実行時における前記ベーパ燃料量を算出する
    請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  9. パージ中断時間が所定の時間を超えている場合には蒸発燃料の濃度を更新する
    請求項8に記載の内燃機関の制御装置。
  10. 前記蒸発燃料の濃度は、前記パージ通路の途中に設けられたセンサにより検出される
    請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  11. 前記蒸発燃料の濃度は、前記パージバルブを開弁させたときの空燃比変化に基づいて推定される
    請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  12. 燃料噴射弁の噴射量を補正したときの空燃比が所定の範囲から外れる場合には燃料噴射量を再補正するとともに、その再補正における補正量に基づいて蒸発燃料の濃度を更新する
    請求項11に記載の内燃機関の制御装置。
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