JP3760305B2 - 柱脚と杭との接合構造 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の架構を構成する柱の柱脚と杭とを接合するための構造に関し、特に、杭が鋼管杭とされているものに係る。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、一つの柱の柱脚を一つの杭に対して直接接合するとともに、フーチング基礎や地中梁を省略するようにした架構構造が近年実現している。このような架構構造を採用した場合、基礎・地中梁が省略できることに伴い、工事費の削減や工期の短縮、あるいは残土処理の削減を図ることができるなどの大きな利点がある。
【0003】
図6に、柱脚と杭とを直接接合した構造の一例を示す。この例においては、杭1として、円管状の既製コンクリート杭が用いられ、杭1の杭頭1aの内部に、角型鋼管からなる柱2の柱脚2aが配置されている。また、杭頭1aの内部においては、柱脚2aの周囲にコンクリートCが打設され、これにより、柱脚2aが杭頭1aに対して固定されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図6のような構成においては、柱脚2aが杭頭1aの内部に配置されるために、杭1の径寸法を柱脚2aの寸法よりある程度大きく確保する必要があった。これにより、必要以上に杭1の径が大きくなり、安価な既製杭の最大径(1000mm程度)では、柱脚2aが入らず、高価な場所打ち杭を採用せざるを得なくなるという問題点が生じていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、柱の柱脚と杭とを直接接合する際に、杭本体の径寸法を最小化して、杭に係るコストを低減することのできる技術を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の柱脚と杭との接合構造は、建物の架構を構成する柱の柱脚と鋼管杭の杭頭とが直接接合され、前記杭頭は、前記鋼管杭の本体部に比較して径寸法の大きい拡径部として形成され、前記拡径部は、前記本体部の上端部に固定されたトッププレートと、該トッププレートの上方に固定されて、前記本体部に比較して径寸法が大とされた拡径鋼管と、該拡径鋼管の内部に充填されたコンクリートとにより形成され、 前記柱脚が、前記鋼管杭に対してその軸力を伝達するための軸力伝達部と、前記鋼管杭に対して曲げ応力を伝達するための曲げ応力伝達部とを有した構成とされ、前記軸力伝達部は、前記拡径鋼管の上方に配置され、前記曲げ応力伝達部は、前記拡径鋼管内の前記コンクリートに埋設されていることを特徴としている。
【0007】
このような構成により、鋼管杭の本体部については、耐力上必要最小限の杭径とすることができる。さらに、柱の軸力を確実に鋼管杭に対して伝達することができる。
【0010】
請求項1記載の柱脚と杭との接合構造であって、前記軸力伝達部は、曲げ応力伝達部の上方に位置するとともに、前記柱脚の上方に連続する柱本体の下端に取り付けられたベースプレートによって形成され、該ベースプレートは、前記拡径鋼管の上部の少なくとも一部を覆うように配置されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成により、ベースプレートおよび拡径鋼管を介して鋼管杭の杭本体に確実に支圧力を伝達することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[第一の実施の形態]
以下、本発明の第一の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。
図1,2は、本発明の第一の実施の形態である柱脚10と鋼管杭11との接合構造12を模式的に示す図であり、図1は、接合構造12の立断面図、図2は、図1におけるI−I線矢視断面図である。
【0013】
接合構造12は、角型鋼管によりなる柱13の柱脚10と、鋼管杭11の杭頭14とを直接接合するためのものである。ここで、鋼管杭11は、その杭頭を構成する拡径部15と、拡径部15の下方に連続して地盤Gに対して打設された本体部16とを備えた構成となっており、拡径部15は、本体部16の上端部に固定されたトッププレート17と、トッププレート17の上方に固定されて本体部16に比較して径寸法が大とされた拡径鋼管18と、拡径鋼管18の内部に充填されたコンクリートCとにより形成されている。
一方、柱脚10は、柱13を構成する鉄骨材からスタッドボルト19を突出させた構成となっており、その一部が、拡径鋼管18の内部に充填されたコンクリートC1に対して埋設された構成となっている。
【0014】
このような接合構造12を形成するには、地盤G中に、鋼管杭11の本体部16にトッププレート17を固定してトッププレート17の上方に拡径鋼管18を固定しておいたものを打設し、さらに、柱13を、その柱脚10の一部が拡径鋼管18内に位置するように配置しておき、拡径鋼管18内部にコンクリートC1を打設するとともに、拡径鋼管18の上部に連続する基礎スラブ20の設置対象位置に対してコンクリートC2を打設するようにする。
【0015】
この接合構造12においては、鋼管杭11の杭頭14が、本体部16に比較して径寸法の大きい拡径部15として形成され、拡径部15が、拡径鋼管18内にコンクリートC1が打設されるとともに、このコンクリートC1に柱脚10の一部が埋設された構成となっているために、従来と異なり、拡径部15のみの内径寸法を、柱13の径寸法以上とすればよく、本体部16については、耐力上必要最小限の杭径とすることができる。これにより、柱13の径寸法が大である場合においても、高価な場所打ち杭を採用する必要が無く、建設コストを抑制できる。さらに、この場合、拡径部15が、拡径鋼管18内にコンクリートCが打設された構成となっているために、拡径部15を容易に形成することができ、さらに、杭の本体部16についても鋼管により形成されているために、拡径鋼管18に対して容易に接合することが可能であり、施工性がよい。
【0016】
[第二の実施の形態]
以下、本発明の第二の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。
図3,4,5は、本発明の第二の実施の形態である柱脚24と鋼管杭25との接合構造26を模式的に示す図であり、図3は、接合構造26の立断面図、図4は、図3におけるII−II線矢視断面図、図5は、図3におけるIII−III線矢視断面図である。なお、図4においては柱脚24の周囲のコンクリートを省略して記載している。
【0017】
これら図中に示すように、接合構造26は、角型鋼管によりなる柱27の柱脚24と、鋼管杭25の杭頭28とを直接接合するためのものである。ここで、鋼管杭25は、その杭頭28を構成する拡径部29と、拡径部29の下方に連続して地盤Gに対して打設された本体部30とを備えた構成となっており、拡径部29は、本体部30の上端部に設けられたトッププレート31と、トッププレート31の上方に固定されて本体部30に比較して径寸法が大とされた拡径鋼管32と、拡径鋼管32の内部に充填されたコンクリートC3とにより形成されている。
一方、柱脚24は、柱脚24の上方に連続する柱本体33の下端に取り付けられたベースプレート34と、ベースプレート34の下方に突出状態に設けられた曲げ応力伝達部35とにより構成されている。ベースプレート34は、図3,4に示すように、拡径鋼管32の上方に配置されて、拡径鋼管32の内部の平面視中央を覆うように設置されている。また、曲げ応力伝達部35は、図5に示すように、断面H型の鋼材36,36を互いに直交状態に組み合わせた断面視略十字形状をなす構成とされており、その一部が、拡径鋼管32の内部に充填されたコンクリートCに対して埋設された構成となっている。
【0018】
このような接合構造26を形成するには、地盤G中に、鋼管杭32の本体部30にトッププレート31を固定してトッププレート31の上方に拡径鋼管32を固定しておいたものを打設する。一方、柱27を、その柱脚24にベースプレート34および曲げ応力伝達部35が取り付けられたものとして形成しておき、この柱27を、曲げ応力伝達部35の一部が拡径鋼管32内に位置するように配置する。さらに、拡径鋼管32内部にコンクリートC3を打設するとともに、拡径鋼管の上部32に連続する基礎スラブ38の設置対象位置に対してコンクリートC4を打設して、柱脚24をコンクリートC3,C4の内部に埋設するようにする。
【0019】
この接合構造26においては、上記第一の実施の形態と同様に、拡径部29のみの径寸法を、柱27の径寸法以上とすればよく、本体部30については、耐力上必要最小限の杭径とすることができ、これにより、上記第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0020】
さらに、柱脚24が、ベースプレート34と曲げ応力伝達部35とを有した構成とされ、ベースプレート34が柱27の軸力を伝達するための軸力伝達部として機能する一方、曲げ応力伝達部35が、鋼管杭25に対して曲げ応力を伝達するように機能するようになっており、このような軸力伝達部が拡径鋼管32の上方に配置され、曲げ応力伝達部35が拡径鋼管32内のコンクリートCに埋設されているために、柱27の軸力をより確実に鋼管杭25に対して伝達することができる。さらに、曲げ応力伝達部35のみが拡径鋼管32内に配置されることとなるために、曲げ応力伝達部35の径寸法を小とすることにより、拡径鋼管32の径寸法が過大なものとなることが無く、これにより、より一層の建設コストの低減化を図ることができる。
【0021】
しかも、ベースプレート34が、拡径鋼管32の上方の一部を覆うように配置されているために、ベースプレート34および拡径鋼管32を介して鋼管杭25の本体部30に確実に支圧力を伝達することができ、安定した構造を得ることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る柱脚と杭との接合構造によれば、柱の径寸法が大である場合においても、高価な場所打ち杭を採用する必要が無く、建設コストを抑制できる。さらに、この場合、拡径部が、拡径鋼管内にコンクリートが打設された構成となっているために、拡径部を容易に形成することができ、また、本体部についても鋼管により形成されているために、拡径鋼管に対して容易に接合することが可能であり、施工性がよい。
【0023】
さらに、軸力伝達部が拡径鋼管の上方に配置されているので、柱の軸力をより確実に鋼管杭に対して伝達することができる。さらに、曲げ応力伝達部のみが拡径鋼管内に配置されることとなるために、曲げ応力伝達部の径寸法を小とすることにより、拡径鋼管の径寸法が過大なものとなることが無く、これにより、より一層の建設コストの低減化を図ることができる。
【0024】
請求項2に係る柱脚と杭との接合構造によれば、ベースプレートが、拡径鋼管の平面視中央部を覆うように配置されているために、ベースプレートおよび拡径鋼管を介して鋼管杭の杭本体に確実に支圧力を伝達することができ、安定した構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施の形態を模式的に示す柱脚と杭との接合構造の立断面図である。
【図2】 図1におけるI−I線矢視断面図である。
【図3】 本発明の第二の実施の形態を模式的に示す柱脚と杭との接合構造の立断面図である。
【図4】 図3におけるII−II線矢視断面図である。
【図5】 図3におけるIII−III線矢視断面図である。
【図6】 本発明の従来の技術を示す柱脚と杭との接合構造の立断面図である。
【符号の説明】
10,24 柱脚
11,25 鋼管杭
12,26 接合構造
13,27 柱
14,28 杭頭
15,29 拡径部
16,30 本体部
33 柱本体
34 ベースプレート
35 曲げ応力伝達部
C1,C3 コンクリート
Claims (2)
- 建物の架構を構成する柱の柱脚と鋼管杭の杭頭とが直接接合され、
前記杭頭は、前記鋼管杭の本体部に比較して径寸法の大きい拡径部として形成され、
前記拡径部は、前記本体部の上端部に固定されたトッププレートと、該トッププレートの上方に固定されて、前記本体部に比較して径寸法が大とされた拡径鋼管と、該拡径鋼管の内部に充填されたコンクリートとにより形成され、
前記柱脚が、前記鋼管杭に対してその軸力を伝達するための軸力伝達部と、前記鋼管杭に対して曲げ応力を伝達するための曲げ応力伝達部とを有した構成とされ、前記軸力伝達部は、前記拡径鋼管の上方に配置され、前記曲げ応力伝達部は、前記拡径鋼管内の前記コンクリートに埋設されていることを特徴とする柱脚と杭との接合構造。 - 請求項1記載の柱脚と杭との接合構造であって、
前記軸力伝達部は、曲げ応力伝達部の上方に位置するとともに、前記柱脚の上方に連続する柱本体の下端に取り付けられたベースプレートによって形成され、
該ベースプレートは、前記拡径鋼管の上部の少なくとも一部を覆うように配置されていることを特徴とする柱脚と杭との接合構造。
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