JP3757645B2 - 柱脚と杭の一体化構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は柱脚と杭の一体化構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、基礎杭と地上の柱との接合は、基礎杭上にフーチングというコンクリートからなる基礎部材を構築し、該基礎部材上に柱を立設するというのが一般的である。すなわち、基礎杭と柱とはフーチングを介して接合されているのである。
【0003】
しかしながら、フーチングを介しての接合の場合には、手間とコストがかかるという問題があり、簡易な基礎杭と柱との接合構造が模索されていた。そして、これを実現するものとして例えば、特開平3−51428号公報に開示された1柱1杭基礎構造部の発明がある。
【0004】
図6は同公報に示された1柱1杭基礎構造部の説明図であり、図6(a)が平面図、図6(b)が側面断面図である。
同号公報に示されたものは、中高層線路上空建築物を対象に、構造性能および施工性に優れる柱杭接合部を提供するというものであり、その具体的構成は、内部にコンクリート50が充填されたコンクリート充填鋼管杭の杭鋼管として内面突起52を有する内面突起付杭鋼管51を使用し、ベースプレート53を有する柱鉄骨54を前記内面突起付杭鋼管51内に埋め込み、内面突起付杭鋼管51の天端から一定の区間内に、バンド型補強材55及びリング型補強部材56を設けるというものである。
【0005】
そして、内面突起付杭鋼管51の外径は2000〜2400mm程度のかなり大径のものを使用し、また杭鋼管径/柱鉄骨径比は2.5 〜3.0 程度であるとしている。
なお、内面に突起52を有する内面突起付杭鋼管51を使用しているのは、内面突起付杭鋼管51とコンクリートを定着させてコンクリート合成構造として機能させるためである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術は、外径が2000〜2400mm程度という大径の鋼管杭を用いる重量構造物を対象としたものであり、本願が対象としている中小規模の鉄骨構造についてそのまま適用した場合には以下のような問題がある。
【0007】
軽量構造の場合には柱が小径になり、柱が小径な場合には杭も比較的小径となり、荷重も比較的小さいうえに施工手間もかかることから、杭として鋼管を使用する場合にも一般的にはコンクリートを充填しない施工が行われ、当然内面に突起の無いものが使用される。また、現実に400mm以下の小径の鋼管杭では内面に突起の付いたものはあまり製造されていない。
このような内面に突起のない鋼管杭の場合には、(1)単にコンクリートを打設するのみでは鋼管と一体化できなく、このように突起がなくても一体化できるような構造ならびに施工法は存在しない。したがって、(2)コンクリートを充填したとしても突起がないために応力伝達が不完全であり、とりわけ柱に引張り力が作用する場合には簡単に抜けてしまうという問題がある。
【0008】
なお、図6に示したリング型補強部材56が内面突起付杭鋼管51に充填したコンクリートを押さえつける役割をすることもあるが、あくまでも補助的なものである。また、鋼管杭の内径と柱の外径の差があまり大きくない場合には、ベースプレートの外径(ベースプレート外側)は鋼管杭内径に対して余り余裕がないため、鋼管杭の上端部に内方に大きく出っ張るリング型補強部材56を取り付けることは柱の挿入を困難にするという問題がある。
【0009】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、比較的小径で内面に突起のない一般的な中空杭にも適用できる柱脚と杭の一体化構造を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る柱脚と杭の一体化構造は、ベースプレートを有する柱脚部を、少なくとも杭頭部が鋼管で形成された中空杭の杭頭部に挿入して充填コンクリートによって両者を一体化する柱脚と杭の一体化構造において、
前記中空杭の上端側所定位置の内部に溶接した仕切板と、前記中空杭の上端部に内方に張り出して設けた板材と、を備え、
前記板材によって形成される前記中空杭の上端開口部の形状が、前記ベースプレートの外形と略相似形になるようにしたものである。
また、ベースプレートを有する柱脚部を、鋼管製の中空杭の杭頭部に挿入して充填コンクリートによって両者を一体化する柱脚と杭の一体化構造において、
前記中空杭の杭頭部の所定位置の内部に溶接した鋼板製の仕切板と、前記中空杭の杭頭部の所定位置に内方に張り出して設けた板材と、を備え、
前記板材によって形成される前記中空杭の上端開口部の形状が、前記ベースプレートの外形と略相似形になるようにしたものである。
【0011】
また、前記中空杭と前記柱脚の軸心を一致させて配置した場合に、前記ベースプレートと前記板材との隙間が、前記板材設置前における前記ベースプレートと前記中空杭内面との最小隙間と同程度以上になるように設定したものである。
【0012】
また、前記板材は複数の分割したものから構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記板材は、単一の板に開口部を設けたものである。
【0014】
また、前記中空杭を丸形とし、前記ベースプレートを矩形とし、前記板材を4枚の弓形状としたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の一実施の形態の側面断面図、図2は図1における矢視A−A断面図、図3は同じく図1における矢視B−B断面図である。
図において、1は内面に突起などのない比較的小径の丸型の鋼管杭、3は鋼管杭の頂部から後述する柱の外径のおよそ2〜3倍程度の深さ位置に溶接した鋼板製の仕切り板である。5は鋼管杭1の上端部4箇所に鋼管杭1の内方に張り出して設置されたスチフナであり、図2に示すように弓型状の板材から形成されている。7は下端部が鋼管杭1の上端部に挿入されて鋼管杭1にコンクリート8を介して接合された矩形の鋼管柱、9は鋼管柱1の下端部に溶接により取り付けられた柱外形より数cm程度外形が大きい矩形のベースプレートである。
【0016】
ここで、スチフナ5の形状を弓型にしていることの意義について説明する。スチフナ5は、鋼管柱1が引張を受ける際にコンクリートごと抜け出るのを防ぐと共に、力学的には、図4に示すように、柱脚下部のベースプレート9からコンクリートの圧縮抵抗力を介して鋼管杭1に応力伝達できる構造を構成している。このようにスチフナ5はコンクリートを押圧する機能を有しているので、その面積は大きいほどよいことになる。
【0017】
しかしながら、スチフナ5が大きくなると、鋼管杭1の上端開口面積が小さくなり、鋼管柱7を挿入する際にベースプレート9とスチフナ5が接触してしまい挿入しにくくなるという問題がある。
そのため、鋼管杭1の上端開口部の面積をできるだけ小さくしないでコンクリートを押圧できるようにすることが必要となる。
そこで、本実施の形態では、スチフナ5を弓型にして鋼管杭1の上端面の4箇所に設置し、鋼管杭1の開口部の形状がベースプレート9とほぼ相似形になるようにしたのである。
【0018】
このように鋼管杭1の開口部の形状をベースプレート9とほぼ相似形になるようにすることによって、例えば、鋼管杭1の開口部形状を円形にした場合よりもベースプレート9と開口部の隙間を大きくすることができ、鋼管柱7の挿入が容易になる。
【0019】
次に、上記のように構成される鋼管杭1と鋼管柱7の一体化構造の構築方法を説明する。鋼管杭1には、上述した仕切板3及びスチフナ5を予め設置しておく。この状態の鋼管杭1を所定位置に設置し、設置された鋼管杭1に鋼管柱7の下部を挿入し、仕切板3から適当な高さの位置に位置決めする。スチフナ5とベースプレート9との間に隙間が確保されているので、鋼管柱7の挿入は比較的スムーズに行うことができる。
この状態で鋼管柱7の柱脚部と鋼管杭1の間の空間にコンクリートを充填する。このとき、コンクリートは仕切板3によってせき止められ、仕切板3よりも上部のみにコンクリートが充填される。このため、何十mにわたってコンクリートを充填するという不経済を防止できる。
【0020】
上記のように構成された鋼管柱7の柱脚部と鋼管杭1の一体化構造においては、圧縮荷重はコンクリート8及び仕切板3を介して鋼管杭1に伝達され、また引張荷重はコンクリート8及びスチフナ5を介して鋼管杭1に伝達される。
【0021】
以上のように本実施の形態によれば、極めて簡単な構造により、比較的外径の小さい内部に突起を有していない鋼管杭1と柱脚との一体化構造が実現できる。しかも、柱脚部の鋼管杭1への挿入をスムーズに行うことができる。
【0022】
なお、上記の実施の形態においては、4枚の弓型のスチフナを用いる例を示したが、中央にベースプレートの外形と略相似形の開口部を有するリング状一体形のプレート(簡単に言えば円盤に穴をあけたもの)でもよい。
また、鋼管杭を例に挙げたが、これに限られるものではなくその他の材質からなる中空杭であってもよい。
【0023】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2を説明する説明図であり、実施の形態1と同一部分には同一符号を付している。図5において、鋼管杭1と柱脚7の軸心を一致させた状態を示しており、Lはベースプレート9の角部と鋼管杭1の内面との同一水平面における隙間距離を示している。本実施の形態においては、ベースプレート9の外縁とスチフナ5との隙間距離が上記のL以下(本例においてはLに設定)になるように、スチフナ5の寸法形状を設定したものである。
【0024】
本実施の形態によれば、スチフナ5を設置した場合にも、スチフナ5を設置しない場合の最低隙間を確保することができ、柱脚部の鋼管杭1への挿入をよりスムーズに行うことができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されているので以下のような効果を奏する。
【0026】
中空杭の上端側所定位置の内部に設置した仕切板と、前記中空杭の上端部に内方に張り出して設けた板材とを備え、前記板材によって形成される前記中空杭の上端開口部の形状が、前記ベースプレートの外形と略相似形になるようにしたので、極めて簡単な構造により、比較的外径の小さい内部に突起のない中空杭と柱脚との一体化構造が実現でき、しかも、柱脚部の中空杭への挿入をスムーズに行うことができる。また、何十mにわたってコンクリートを充填するという不経済を防止することもできる。
【0027】
また、中空杭と前記柱脚の軸心を一致させて配置した場合に、前記ベースプレートと前記板材との隙間が、前記板材設置前における前記ベースプレートと前記中空杭内面との最小隙間と同程度以上になるように設定したので、柱脚部の中空杭への挿入をよりスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態の側面断面図である。
【図2】 図1における矢視A−A断面図である。
【図3】 図1における矢視B−B断面図である。
【図4】 本発明の一実施の形態の説明図である。
【図5】 本発明の他の実施の形態の説明図である。
【図6】 従来技術の説明図である。
【符号の説明】
1 鋼管杭
3 仕切板
5 スチフナ
7 柱脚
8 コンクリート
9 ベースプレート

Claims (6)

  1. ベースプレートを有する柱脚部を、少なくとも杭頭部が鋼管で形成された中空杭の杭頭部に挿入して充填コンクリートによって両者を一体化する柱脚と杭の一体化構造において、
    前記中空杭の上端側所定位置の内部に溶接した仕切板と、前記中空杭の上端部に内方に張り出して設けた板材と、を備え、
    前記板材によって形成される前記中空杭の上端開口部の形状が、前記ベースプレートの外形と略相似形になるようにしたことを特徴とする柱脚と杭の一体化構造。
  2. ベースプレートを有する柱脚部を、鋼管製の中空杭の杭頭部に挿入して充填コンクリートによって両者を一体化する柱脚と杭の一体化構造において、
    前記中空杭の杭頭部の所定位置の内部に溶接した鋼板製の仕切板と、前記中空杭の杭頭部の所定位置に内方に張り出して設けた板材と、を備え、
    前記板材によって形成される前記中空杭の上端開口部の形状が、前記ベースプレートの外形と略相似形になるようにしたことを特徴とする柱脚と杭の一体化構造。
  3. 前記中空杭と前記柱脚の軸心を一致させて配置した場合に、前記ベースプレートと前記板材との隙間が、前記板材設置前における前記ベースプレートと前記中空杭内面との最小隙間と同程度以上になるように設定したことを特徴とする請求項1または2記載の柱脚と杭の一体化構造。
  4. 前記板材は複数の分割したものから構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の柱脚と杭の一体化構造。
  5. 前記板材は、単一の板に開口部を設けたものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の柱脚と杭の一体化構造。
  6. 前記中空杭を丸形とし、前記ベースプレートを矩形とし、前記板材を4枚の弓形状としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の柱脚と杭の一体化構造。
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