JP3758954B2 - アルミニウム合金箔地 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬品、食品等の包装に使用されるアルミニウム合金箔の材料となるアルミニウム合金箔地に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にアルミニウム合金箔は、用途により5乃至100μm程度の厚さで使い分けられている。これらのアルミニウ合金箔には包装用としても使用されており、従来JIS 1N30(JIS H4160)が主として使用されてきた。また、近年、箔厚の一層の低下要求から、JIS 1N30より高強度で圧延性が優れるFe量が高いJIS 8079及び8021等が使用されるようになった。
【0003】
食品及び薬品等の包装用に使用されるアルミニウム合金箔は一般にポリエチレンやビニール又は紙等と張り合わされて使用されることが多い。このような用途に使用される箔は、大気中の湿気や紫外線からその内容物を守る働きをしており、品質的にも優れたものが要求されている。
【0004】
アルミニウム合金箔地は一般に、半連続鋳造などの方法でアルミニウム合金のスラブを作製し、均熱工程、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延の工程により製造され、厚さ0.15mm乃至0.3mmとしたものである。このアルミニウム合金箔地を更に圧延し、厚さが5乃至100μmとする。この圧延を箔圧延という。箔圧延後に250℃以上の温度で焼鈍し、箔圧延中にコイルに残留した圧延油を蒸発させアルミニウム合金箔が形成される。この焼鈍によりアルミニウム合金箔は軟質材となる。
【0005】
近年、アルミニウム合金箔においては益々コストダウンが要求されている。その方法の一つとして冷間圧延後の中間焼鈍工程の省略が挙げられる。中間焼鈍工程の省略により、焼鈍に要するエネルギー、及び焼鈍炉等の設備が不必要となるばかりでなく、生産日数を短縮することができ、その効果は大きい。しかしながら従来の工程のまま、単に中間焼鈍をなくしたのでは、アルミニウム合金箔の強度及びピンホール特性等の箔品質が低下するばかりでなく、加工硬化等により箔破断を起こし生産不可能になる。従って、以下に説明するピンホール特性、耐箔破断性、及び製品軟質箔強度が優れていることが必要である。
【0006】
ピンホールは薄箔に存在する微少な孔であり、最終パスでの重合わせ圧延で生じる。ピンホールは製品箔厚の低下に伴って、指数関数的に増加する傾向にある。ピンホールが多発したアルミニウム箔は製品となった場合の耐湿性が著しく劣化するため、ピンホールは厳しく規制される。従って、アルミニウム合金箔地を箔圧延してもピンホールが生じにくい、即ちピンホール特性が優れていることが必要である。
【0007】
また、箔圧延時に発生する箔切れ(箔破断)は製品歩留まりを悪化させるだけでなく、箔切れ後の始末に人手及び時間がかかり生産性を劣化させる原因になっている。箔破断は圧延加重若しくは張力が高すぎるか、又は圧延前後に過大な加工硬化若しくは加工軟化が発生し、圧延前後の材料強度が変化した場合に発生する。従って、生産性向上のために、耐箔破断性が優れていることが必要である。
【0008】
更に、箔製品は長さを基準に販売されており、公称厚に対する許容公差の中で箔厚が薄いほどコスト的に有利である。しかしながら、ただ現行製品を薄くしただけでは強度が不足し箔の破断及びしわの発生等の問題がある。箔厚低減に伴う強度不足を補うために、製品軟質箔の強度向上が必要である。
【0009】
アルミニウム箔は、用途によってその箔厚及び構成には様々な種類があり、従来以下のもの等が公知である。
【0010】
先ず、特開昭57−123966号公報には、Feを0.1乃至0.5質量%を含有し、加工硬化が少ないアルミニウム合金について開示されている(従来例1)。この公報に記載の技術は、半連続鋳造により、鋳塊を製造し、その後熱間圧延をし、中間焼鈍を行わずに、冷間圧延により板厚0.12mmとした後、調質焼鈍を施している。
【0011】
また、昭和62−250143号公報には、アルミニウム合金鋳塊に、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、箔圧延及び最終焼鈍を順次実施して形成するアルミニウム合金箔のFe及びMn含有量と、最終焼鈍後の結晶粒径とを制御したアルミニウム箔が開示されている。また昭和62−250144号公報には、同様の工程を経て形成されるアルミニウム合金箔のFe、Mn及びSi含有量と、最終焼鈍後の結晶粒径とを制御した箔が開示されている(従来例2)。従来例2によれば、アルミニウム合金組成及び結晶粒径を規制することにより、アルミニウム合金箔成形後のスプリングバックの低減を図っている。
【0012】
更に、特開平4−214833号公報には、Fe含有量と箔のサブグレインの面積率及び粒径とを規制したアルミニウム箔が開示されている(従来例3)。従来例3の技術によれば、アルミニウム合金の箔圧延において、適切な圧延条件により、セル壁を移動させ、急速加熱に対して比較的安定なサブグレインを形成することができ、グレングロスの発生を防止している。また、圧延条件が適切でなく、サブグレインが形成されない場合は、焼付塗装前に熱処理を行うことにより、サブグレインの粒径及び面積率を調整している。
【0013】
更にまた、特開平11−217656号公報ではFe及びSiの含有量を規制し、熱間圧延上がりの板を3mm以下にし、冷間圧延の最終温度を100乃至180℃に規制する箔地の製造技術が開示されている(従来例4)。従来例4に記載の技術においては、冷間圧延の最終温度を100乃至180℃と高くすることにより、冷間圧延工程での中間焼鈍を省略することができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例1の技術は、主にフィン材、キャン材のしごき加工を対象としたものであり、薄箔用の箔地を対象としたものではない。また、従来例2のアルミニウム合金箔は、飲料缶のキャップシール等に使用される箔を対象としたもので、スプリングバック低減を目的としており、やはり薄箔用の箔地を対象としたものではない。
【0015】
また、従来例3は、焼き付け塗装時のグレングロスの防止を目的としたものであって、上述したように、十分なピンホール特性、耐箔破断性及び製品軟質強度を得ることができない。
【0016】
更に、従来例4の技術においては、冷間圧延の最終温度を100乃至180℃と高くするための冷延設備の負荷の増大をまねき、また潤滑条件などを均等に制御することが困難で、製品間の品質ばらつきが大きくなるという問題点がある。
【0017】
上述したいずれの従来例も、箔強度、ピンホール特性、及び箔破断性を満足するものではない。更に、近年箔地品質に対する品質要求は高くなる一方であり、特に薄箔に関しては、箔厚の低減が強く求められている反面、コストダウンの要求が厳しい。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、コストダウンのために中間焼鈍を省略しても、ピンホール特性及び耐箔破断性が優れ、製品軟質強度が高く品質が維持されたアルミニウム合金箔を得ることができるアルミニウム合金箔地を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウム合金箔地は箔圧延用のアルミニウム合金箔地であって、Fe:0.70乃至1.70質量%及びSi:0.03乃至0.30質量%を含有し残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、中間焼鈍を途中工程で行わず、セル組織におけるサブグレイン組織の面積占有率が50乃至90%であることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、前記アルミニウム合金は、更にCu:0.005乃至0.03質量%を含有してもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。本願発明者等は、上述の問題を解決すべく鋭意実験研究した結果、アルミニウム合金のFe含有量を0.07乃至1.70質量%及びSi含有量を0.03乃至0.30質量%とすると共にアルミニウム合金箔にするための箔圧延用のアルミニウム合金箔地の段階で、このアルミニウム合金箔地のセル組織全体の50乃至90%をサブグレイン組織とすることにより、箔圧延の各工程において安定してサブグレイン組織を保ち、ピンホール特性、耐箔破断性、及び製品軟質箔強度が優れたアルミニウム合金箔を得ることができるということを知見した。
【0022】
以下、本発明で規定するサブグレイン組織の面積占有率の数値限定理由並びにアルミニウム合金の添加物の添加理由及び数値限定理由について説明する。
【0023】
サブグレイン組織の面積占有率が50乃至90%
一般に、アルミニウム及びアルミニウム合金は、軟質状態から加工をすると、材料中に転位が導入され、タングル状の転位組織・セル状の転位組織等へと変化し、加工の程度が増加するほど引張強度が増加する。更に、高純度アルミニウム又はFe、Ni等を特定量含有するアルミニウム合金においては、加工率が高くなると、転位の再配列する所謂ポリゴン化が起こり、絡み合った転位が壁を作り、サブグレイン組織が形成され易い。
【0024】
薄箔を圧延する箔圧延工程において、最終パスにおける材料状態としては、ある程度軟化していることが望ましく、例えば170℃で2時間程度の焼鈍を行った後に最終パスを行い、圧延して厚さ7μmのアルミニウム合金箔を得ることが従来なされていた。即ち、材料組織としては、箔圧延の1パスめではタングル状又はセル状の転位組織であるが、上述の焼鈍により、最終パス直前にサブグレイン組織を得ていた。近年、コスト低減等の観点から、上述の焼鈍なしで最終パスの圧延するために、アルミニウム合金の成分、アルミニウム合金箔地製造時の冷間加工率、及び箔圧延条件を組み合わせることによって、最終パス前にサブグレイン組織となる材料状態を得ることが指向されていた。
【0025】
これら従来技術に対し、本発明者等は、全く観点を変え、箔地の段階で既にサブグレイン組織とし、アルミニウム合金成分及び製造条件を厳密に制御することにより、箔圧延の各パスにおいて安定してサブグレイン組織を保つことができる箔地を見い出した。
【0026】
アルミニウム合金箔地におけるサブグレイン組織の面積占有率が50%未満では、箔圧延当初の1又は2パス目において硬化率が著しいと共に強度の絶対値が高いため、かえって圧延し難くなり、箔破断等が生じ易い。一方、アルミニウム合金箔地でのサブグレイン組織の面積占有率が90%を超えると箔圧延の途中パスで著しい軟化を生じ、続くパスでかえって著しい硬化率を示し、箔破断・ピンホール過多となってしまう。従って、アルミニウム箔地におけるサブグレイン組織の面積占有率は50乃至90%とする。
【0027】
本発明におけるサブグレイン組織の面積占有率は次のようにして測定することができる。先ず、透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope(TEM))観察用薄膜を作製し、厚さが2000乃至2500Åの部位につき、例えば10000倍の倍率でTEM観察を行い、観察されるセル組織において、
(1)粒内に転位が観察されず且つ粒界に干渉縞が観察される粒
(2)粒界に干渉縞が観察されない場合及び粒界の転位の整理が完全とはいえない場合において、粒内に転位が全く観察されない粒
をサブグレイン組織とする。これらのサブグレイン組織部分の面積率は、画像解析装置により測定することができる。TEM観察は、サブグレインの粒径によるが、倍率が5000倍以上、20000倍以下で行うことが望ましい。倍率が5000倍より低いと、サブグレイン粒内の転位及び干渉縞の観察が不十分となり、正確な面積率を求められない。倍率は高い方が正確に面積率を求めやすくなるが、20000倍を超える高倍率にしても無駄である。
【0028】
Fe含有量:0.7乃至1.7質量%
Feは、アルミニウム合金に添加することにより、アルミニウム合金の強度を向上させ、また、加工硬化させ、更に、アルミニウム合をサブグレイン組織化する。しかし、Fe含有量が0.7%未満であると、絶対強度が得られず、且つ強加工時にサブグレイン組織が得られない。一方、Feを1.7%を超えて添加すると、強加工時に著しい軟化と続くパスでの著しい硬化率とにつながり、箔破断等が生じている。また、FeはAlと結びつき金属間化合物を作るが、1.7%を超えて添加すると、この化合物に起因するノッチ効果によっても箔破断を招きやすい。従って、Fe含有量は0.7乃至1.7質量%とする。
【0029】
Si含有量:0.03乃至0.3質量%
Siは、Feと共に、化合物を形成しやすい。Siが0.03質量%未満では、鋳造時の湯漏れによりアルミニウム合金の造塊が困難となる。一方、Si含有量が0.3質量%を超えると、Feの固溶状態及び析出状態が不安定になりやすく、箔の強度及び加工硬化挙動が不安定となり、製品箔の強度低下を招く。このため、Si含有量は0.03乃至0.3質量%とする。
【0030】
Cu含有量:0.005乃至0.03質量%
箔圧延条件によっては、固溶Si及び固溶Feだけではサブグレイン化が著しくなり過ぎ、上記の如くの著しい軟化・著しい硬化を発生し易い。この防止のため、0.005質量%以上のCuを添加することが好ましい。しかし0.03質量%を超えて添加すると、サブグレイン化が進まず所期の効果が得られず、箔破断等につながる。従って、Cu含有量は0.005乃至0.03質量%とすることが好ましい。
【0031】
また、Tiは、本発明の加工硬化挙動の制御等の効果とは直接に関係しないが、鋳塊組織の微細化に有効であり、この目的のためには0.005%乃至0.03質量%を添加することが好ましい。
【0032】
その他、Mn、Mg、Zn、Cr等の不可避的不純物は0.05質量%未満であれば、本発明の効果に影響しないため、許容される。
【0033】
次に、本発明のアルミニウム合金箔地の製造方法について説明する。アルミニウム合金箔地は、上述のように、半連続鋳造により規定のFe及びSi含有量のアルミニウム合金のスラブを製造し、均熱化処理、熱間圧延、冷間圧延して製造することができる。このとき、通常、冷間圧延後に行われている中間焼鈍は行わない。また、均熱化処理条件は、例えば480乃至540℃で3乃至6時間、冷間圧延率は、例えば90乃至96%である。このように、適切な条件で均熱処理及び冷間圧延すると、得られたアルミニウム合金箔地のセル組織におけるサブグレイン組織の面積占有率を50乃至90%にすることができる。
【0034】
このようにアルミニウム合金組成を適切に規制し、適切な条件で均熱処理、熱間圧延、及び冷間圧延を行うことにより、中間焼鈍工程を省略することができる。これにより、得られたアルミニウム箔地は、サブグレイン組織の面積占有率が50乃至90%であるため、その後、箔圧延を行っても、アルミニウム箔地は優れたピンホール特性及び耐箔破断性を有し、更に箔圧延されたアルミニウム箔は十分な製品軟質強度が得られる。従って、アルミニウム箔地の製造工程において、中間焼鈍を省略して極めて低コストで生産性が高いアルミニウム箔地を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明のアルミニウム合金箔地を実際に製造し、本発明範囲から外れる比較例と比較し、その効果について説明する。
【0036】
先ず、供試箔地は下記表1に示す組成を含むアルミニウム合金からなる厚さ500mmのスラブを半連続鋳造より製造し、更に、下記表1の条件で均熱処理、熱間圧延、冷間圧延を行った。なお、全ての実施例及び比較例において、中間焼鈍は行っていない。得られた全てのアルミニウム合金箔地の厚さは0.2mmに統一し、供試箔地とした。
【0037】
供試箔地のサブグレイン組織のセル組織における面積占有率はアルミニウム合金成分、均熱条件、及び冷間圧延率により調整した。
【0038】
次に、得られた供試箔地のサブグレイン組織の面積占有率を測定した。上述したように、TEM観察用薄膜を作成し、厚さが2000乃至2500Åの部位につき、10000倍の倍率でTEM観察を行い、セル組織におけるサブグレイン組織を観察した。図1及び図2は、いくつかの供試箔地におけるサブグレイン組織を示すTEM写真である。図1に示すように、(1)粒内に転位が観察されず且つ粒界に干渉縞が観察される粒、(2)粒界に干渉縞が観察されない場合並びに粒界の転位の整理が完全とはいえない場合において、粒内に転位が全く観察されない粒、をサブグレイン組織と判定した。
【0039】
図3及び図4は、夫々図1及び図2に示す例において、サブグレイン組織1と判定した部位につき、黒く塗りつぶして示すトレース図である。こうして、TEM写真から判定したサブグレイン組織のトレース図から、画像解析装置により、サブグレイン組織の面積占有率(サブグレイン率)を測定した。なお、面積占有率は任意に選んだ複数箇所について測定し、これを平均して求めたものである。
【0040】
このようにして測定した各供試箔地のサブグレイン組織の面積占有率を下記表1に示す。なお、冷間圧延率は(冷間圧延前板厚−冷間圧延後板厚)/冷間圧延前板厚により算出した。冷間圧延率は、熱間圧延後の板厚を変更することにより調整した。
【0041】
得られた供試箔地について、実機の箔圧延機を使用し、4パスの箔の圧延試験を行った。最終パスにおいては、箔厚が15μmのものを使用し、ダブリング圧延を行って、一方が光沢面、片方がつやけし面となり、箔厚が6.5μmのアルミニウム合金箔を作製した。
【0042】
更に、箔圧延後、得られたアルミニウム合金箔に対して300℃で20時間の軟質化焼鈍を行い、軟質箔とした。その後、各供試箔地について、箔圧延時のピンホール特性及び箔の生産性(箔圧延時の破断率)、並びに得られた軟質箔の強度を評価した。
【0043】
ピンホール特性の評価は、光照射式のピンホール検出器を使用し、製造後の箔のピンホール数をカウントした。ピンホール数が、100個/m2未満を○、100個/m2以上を×とした。
【0044】
生産性の評価は、箔圧延時に生じた箔破断の回数を製品トン数で割ることにより評価した。箔破断数が1.0回/トン未満を○、1.0回/トン以上を×とした。
【0045】
箔強度の評価は、引張試験機を使用して、軟質箔の引張強度により評価した。引張強度が70N/mm2以上を○、引張強度が70N/mm2未満を×とした。ピンホール特性、生産性、及び箔強度の評価結果を下記表2に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003758954
【0047】
【表2】
Figure 0003758954
【0048】
実施例1乃至8は、アルミニウム合金の組成及びサブグレイン組織の面積占有率が本発明範囲にあるため、箔圧延後のピンホール特性、箔破断、軟質強度は良好であった。
【0049】
比較例1はアルミニウム箔地のサブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満であったため、ピンホールが多数発生し、ピンホール特性が劣化した。比較例2はSi含有量が本発明範囲の上限を超えるため、加工硬化挙動が不安定となり、箔強度が低下した。比較例3はFe含有量が本発明範囲の上限を超えるため、箔圧延中の発熱によりにサブグレイン組織化が著しく進み過剰な加工軟化を起こし、次パスで逆に著しく硬化したため箔破断が頻発した。比較例4はFe含有量が本発明範囲の下限未満であったため、軟質箔強度が低い。比較例5はCu含有量が本発明の好ましい範囲の上限をこえ、サブグレイン組織の面積占有率が本発明範囲の下限未満であったため、過剰に加工硬化を起こし、箔破断が頻発した。比較例6はサブグレイン組織の面積占有率が本発明範囲の上限を超えるため、箔圧延中の途中パスで著しい加工軟化をおこし、箔破断が頻発した。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、現行と同等以上の生産性及び品質の箔を、安価な箔地を使用して生産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)乃至(c)は夫々実施例1、実施例3及び実施例6のアルミニウム合金箔地の表面を示す図面代用写真である(TEM写真:倍率10000倍)。
【図2】(a)及び(b)は夫々比較例1及び比較例2のアルミニウム合金箔地の表面を示す図面代用写真である(TEM写真:倍率10000倍)。
【図3】(a)乃至(c)は、夫々実施例1、実施例3及び実施例6のアルミニウム合金箔地表面のTEM観察写真におけるサブグレイン組織をトレースした図である。
【図4】比較例1のアルミニウム合金箔地表面のTEM観察写真におけるサブグレイン組織をトレースした図である。

Claims (3)

  1. 箔圧延用のアルミニウム合金箔地であって、Fe:0.70乃至1.70質量%及びSi:0.03乃至0.30質量%を含有し残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、中間焼鈍を途中工程で行わず、セル組織におけるサブグレイン組織の面積占有率が50乃至90%であることを特徴とするアルミニウム合金箔地。
  2. 前記アルミニウム合金は、Cu:0.005乃至0.03質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金箔地。
  3. 前記アルミニウム合金は、Ti:0.005乃至0.03質量%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金箔地。
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