JP3758710B2 - 現在位置算出システムおよび現在位置算出方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、該移動体の進行距離、進行方位などを測定して、これにより、当該移動体の現在位置を算出する現在位置算出システムに関するものであり、より詳細には、該移動体が左折或いは右折したときの移動体の現在位置をより正確に算出する現在位置算出システムに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、道路上を走行する車両の現在位置を算出する現在位置算出システムにおいて、該車両の現在位置は、ジャイロ等の方位センサにより測定した車両の進行方向と、車速センサまたは距離センサにより測定した車両の進行距離とに基づいて算出されている。
【0003】
また、車両の進行距離は、一般的には、トランスミッションの出力軸、または、タイヤの回転数を計測して、その回転数に、タイヤ1回転あたりに車両が進む距離である距離係数を乗ずることにより求められている。
【0004】
さらに、特開昭61−56910号公報に記載されたように、車両の進行方向と進行距離から求めた現在位置に基づき、CD−ROMなどに記憶された地図データに含まれる道路データに対応する線分を取り出し、求められた現在位置から、該線分に垂線をおろし、垂線と線分との交点を表示装置に表示すべき位置と決定する、いわゆるマップマッチングの技術が知られており、このマップマッチングにより、表示装置上に、所定の道路と整合する車両の現在位置を示すシンボルを表わすことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、地図データに含まれる道路データは、道路を折れ線として表わしているものが多い、すなわち、道路データは、複数の線分の端部を示す座標から構成され、これら線分は現実の道路の中心線に対応する。
【0006】
したがって、従来の現在位置算出装置は、車両が湾曲した道路を走行しているときに、所定の角度をもって交わる二本の線分の一方の線分上ある点から、車両の進行距離および進行方向に基づき得られた現在位置から、他方の線分に垂線をおろし、線分と垂線との交点を表示装置に表示すべき位置と決定している。
【0007】
しかしながら、算出された車両の現在位置と、実際の車両の位置との間には、車両の進行方向前後に誤差が存在する場合が考えられる。このような場合に、車両が左折或いは右折した後に、装置により算出される車両の現在位置にも、車両の進行方向の誤差が残るという問題点があった。
【0008】
さらに、実際の道路は、種々の道幅を有しており、たとえば、車両が左折する場合には、車両は、道路中の進行方向に向かって比較的左側に沿って通行する。すなわち、車両が左折する場合或いは右折する場合には、少なくとも道路の中心線に沿って進行することは考えられない。したがって、従来の装置が、現実の道路の中心線に対応する線分に沿って、マッチングを実行すると、車両が左折或いは右折をするごとに、現実の車両の位置と装置により算出された車両の位置との間に、誤差が生じるという問題点があった。
本発明は、車両が左折或いは右折した場合の当該車両の現在位置を、より正確に算出する現在位置算出システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明の目的は、車両に搭載され、該車両の現在位置を算出する現在位置算出システムであって、車両の進行方位を検出する方位検出手段と、車両の走行距離を算出する距離算出手段と、前記進行方位および前記走行距離に基づき得られた相対変位と、車両が何れかの道路上に位置する状態、或いは、車両が道路上に位置しない状態を示す候補点とに基づき、車両の現在位置であると予想される仮想現在位置を生成する仮想現在位置生成手段と、前記仮想現在位置と、地図データに含まれる道路データとを比較し、車両が道路上に存在することを示す候補点を生成する候補点生成手段と、前記進行方位に基づき、車両が左折或いは右折したことを検出する右左折検出手段と、前記右左折検出手段により、車両が左折或いは右折したことが検出された場合に、車両が左折或いは右折する前に車両が位置していた第1の道路の方位と、車両が左折或いは右折した後に車両が位置する第2の道路の方位との方位差にしたがって、前記候補点の位置を補正する候補点補正手段とを備えた現在位置算出システムにより達成される。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、前記候補点補正手段が、前記仮想現在位置を通り、前記第1の道路と平行な直線と、前記第2の道路との交点に対応する位置に候補点が位置するように、前記候補点の位置を補正するように構成されている。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記候補点補正手段が、さらに、車両が左折或いは右折する前に車両が位置していた道路の道路幅にしたがって、前記候補点の位置を補正するように構成されている。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記候補点生成手段が、前記道路データに含まれるあるデータに対応する線分の方位と前記車両方位との間の方位差が、所定の角度値よりも小さい場合に、車両が前記線分に対応する道路上に存在すること示す候補点を生成するように構成されている。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記候補点補正手段が、前記道路データに含まれる道幅を示す道路幅データに基づき得られた補正量にしたがって、前記候補点の位置を補正するように構成されている。
【0014】
【作用】
本発明によれば、候補点補正手段により、車両が右左折する前に位置していた道路の方位と、新たに車両が位置する道路の方位との方位差にしたがって、候補点の位置を補正するため、車両が左折或いは右折するごとに、候補点の位置がより適切に算出され、その結果、車両の実際の現在位置を、より正確に算出することが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様によれば、仮想現在位置を通り、第1の道路と平行な直線と、第2の道路との交点に対応する位置に候補点が位置するように、候補点の位置が補正されるため、比較的簡単な処理で、車両の左折或いは右折後の正確な位置を算出することが可能となる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、さらに、車両が左折或いは右折する前に車両が位置していた道路の道路幅にしたがって、候補点の位置を補正するため、車両が現実に走行する位置を考慮したより正確な位置の算出が可能となる。
【0017】
【実施例】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施例につき詳細に説明を加える。
【0018】
図1は、本発明の実施例にかかる現在位置算出装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。図1に示すように、この現在位置算出装置10は、車両のヨーレイトを検出することで進行方位変化を検出する角速度センサ11と、地磁気を検出することで車両の進行方位を検出する方位センサ12と、車両のトランスミッションの出力軸の回転に比例した時間間隔でパルスを出力する車速センサ13を備えている。
【0019】
また、現在位置周辺の地図や現在位置を示すマーク等を表示するディスプレイ17と、ディスプレイ17に表示する地図の縮尺切り替えの指令をユーザ(運転者)から受け付けるスイッチ14と、デジタル地図データを記憶しておくCD−ROM15と、そのCD−ROM15から地図データを読みだすためのドライバ16とを備えている。また、以上に示した各周辺装置の動作の制御を行うコントローラ18を備えている。本実施例において、上述したディジタル地図データには、複数の線分の端部を示す座標から構成される道路データ、或いは、該道路の道幅を示す道路幅データ、道路が高速道路或いは一般道路であるかを示す高速道路フラグなどが含まれる。
【0020】
コントローラ18は、角速度センサ11の信号(アナログ)をデジタル信号に変換するA/D変換器19と、方位センサ12の信号(アナログ)をデジタル信号に変換するA/D変換器20と、車速センサ13から出力されるパルス数を0.1秒毎にカウントするカウンタ26と、スイッチ14の押圧の有無を入力するパラレルI/O21と、CD−ROM15から読みだされた地図データを転送するDMA(Direct Memory Access)コントローラ22と、ディスプレイ17に地図画像を表示する表示プロセッサ23とを有する。
【0021】
また、コントローラ18は、さらに、マイクロプロセッサ24と、メモリ25とを有する。マイクロプロセッサ24は、A/D変換器19を介して得た角速度センサ11の信号、A/D変換器20を介して得た方位センサ12の信号、カウンタ26がカウントした車速センサ13の出力パルス数、パラレルI/O21を介して入力するスイッチ14の押圧の有無、DMAコントロ−ラ22を介して得たCD−ROM15からの地図データを受け入れて、それら信号に基づいて処理を行い、車両の現在位置を算出して、それを表示プロセッサ23を介してディスプレイ17に表示させる。この車両位置の表示は、図2に示すように、すでにディスプレイ17に表示している地図上に矢印マ−ク等を重畳して表示することにより行う。これにより、ユーザは、地図上で車両の現在位置を知ることができる。メモリ25は、このような動作を実現するための処理(後述)の内容を規定するプログラムなどを格納したROMと、マイクロプロセッサ24が処理を行う場合にワ−クエリアとして使用するRAMとを含んでいる。
【0022】
以下、このように構成された現在位置算出装置10の動作について説明する。
【0023】
装置10の動作は、全般的に、車両の進行方位及び進行距離を算出する処理と、算出された進行方位及び距離から車両の現在位置を決定する処理と、得られた車両位置および方位を表示する処理との三つの処理に分けることができるため、これらについて順次説明する。
【0024】
図3に、車両の進行方位及び進行距離を算出する処理の流れを説明する。
【0025】
この処理は、一定周期、たとえば100mS毎に起動され実行されるマイクロプロセッサ24のルーチンである。
【0026】
このルーチンでは、最初、A/D変換器19から角速度センサ11の出力値を読み込む(ステップ301)。この角速度センサ11の出力値には、方位変化が出力されるので、車両の進行方向の相対的な値しか検出できない。このため、次に、A/D変換器20から方位センサ12の出力値を読み込み(ステップ302)、この方位センサ12の出力値により算出された絶対方位と角速度センサ11から出力される方位変化(角速度出力)とを用いて、車両の推定方位を決定する(ステップ303)。
【0027】
この方位の決定は、たとえば、長い時間、車速が低い時には、角速度センサの誤差が大きいので、一定時間以上車速が低い場合には、方位センサの方位のみを利用するという方法により行う。
【0028】
次に、車速センサ13の出力するパルス数を、0.1秒毎に、カウンタ26で計数して、その計数値を読み込む(ステップ304)。この読み込んだ値に、距離係数を乗算することで、0.1秒間に進んだ距離を求める(ステップ305)。
【0029】
次に、このようにして求められた0.1秒間あたりの進行距離値を、前回得られた値に積算して、車両の進行距離が20mとなったかどうかを調べ(ステップ306)、20mに満たない場合(ステップ306でノー(No))、今回の処理を終了して、新たな処理を開始する。
【0030】
進行距離算出処理の結果、積算された進行距離が一定距離、例えば20mとなった場合(ステップ306でイエス(Yes))、その時点での進行方向と進行距離R(本実施例においては20m)とを出力する(ステップ307)。ステップ307では、さらに、積算距離を初期化して、新たに進行距離の積算を開始する。
【0031】
次に、算出された進行方位および進行距離に基づいて、車両の仮想現在位置を算出し、算出された仮想現在位置に基づき、車両の候補点を求める処理について説明する。
【0032】
図4に、この処理の流れを示す。
【0033】
本処理は、図3からの進行方位および進行距離が出力されるのを受けて起動され、実行されるマイクロプロセッサ24のルーチンである。すなわち、本実施例において、本処理は、車両が20m進む毎に起動される。
【0034】
さて、この処理では、まず、ステップ307で出力された進行方位と進行距離とを読み込む(ステップ401)。次に、それらの値に基づいて、車両の移動量を緯度経度方向、別々に、それぞれ求める。さらに、これらの各方向における移動量を、前回の車両の候補点を求める処理で得られた車両の候補点の位置に加算して、現在車両が存在すると推定される位置である仮想現在位置(A)を求める(ステップ402)。
【0035】
もし、装置の始動直後など、前回の車両の候補点を求める処理で得られた候補点が存在しない場合には、別途設定された位置を、前回得られた候補点の位置として用いて仮想現在位置(A)を求める。
【0036】
ここに、候補点につき説明を加える。装置の始動直後など、初期的な状態においては、仮想現在位置(A)は、ユーザ(運転者)がスイッチ14を用いて所定の情報を入力することなどにより、一意的に定まり、かつ、これは道路に対応する線分上に位置する。しかしながら、車両が走行した後には、方位センサなどの誤差などにより、仮想現在位置(A)が、道路に対応する線分上に存在しなくなる場合がある。その結果、たとえば、図5に示すように、道路が分岐している場合、すなわち、道路に対応する線分61の節点すなわち端部68から、二つの線分64および65があらわれる場合に、いずれの線分に対応する道路上に車両が存在するかが、明確にすることができない場合が多い。
【0037】
したがって、このような場合に、本実施例においては、後述する処理により得られた線分(図5に示す例では二つの線分)上に存在する点を、所定の条件の下で候補点として設定し、これらの現在位置、エラーコスト、後述する累算エラーコストなどを、それぞれ、メモリ25のRAMの所定の領域に記憶するように構成されている。なお、説明を容易にするため、以下の説明においては、特に複数の候補点であることを明示しない限り、単一の候補点から、新たな一以上の候補点を生成することとする。
【0038】
次いで、前回の車両の候補点を求める処理で得られたマッチング状態の候補点のみに関して、道路とのマッチングを行うための第1の道路検索処理が実行される(ステップ403)。なお、本実施例において、マッチング状態とは、ある仮想現在位置に関連して、該仮想現在位置との距離、或いは、その方位と車両の進行方位との間の方位差が、所定の範囲内であるような道路が存在し、その結果、仮想現在位置に基づき、道路上の所定の位置に候補点が得られた状態を称する。これに対して、ある仮想現在位置に関連して、上述した距離および方位差が、所定の範囲内であるような道路が存在しない場合が考えられる。本実施例においては、このような場合に、仮想現在位置Aに対応する点自体が候補点となり、このようにして得られた候補点を、フリー状態の候補点と称している。
【0039】
ここに、図6は、本実施例にかかる第1の道路検索処理を示すフローチャートである。
【0040】
図6に示すように、この道路検索処理においては、まず、CD−ROM15から、ドライバ16およびDMAコントローラ23を介して、所定の道路データを読み出す(ステップ601)。本実施例においては、道路データとして、図7に示すように、2点間を結ぶ複数の線分51ないし55で近似し、それら線分を、その始点と終点の座標によって表したものなどを用いている。たとえば、線分53は、その始点(x3、y3)と終点(x4、y4)によって表現される。したがって、このステップ601においては、前回の処理により得られたマッチング状態の候補点が位置する線分が選択されて、これに関するデータが読み出される。
【0041】
次に、ステップ601において選択された線分の座標に基づき、候補点の位置から車両の進行方向に沿って、20mに対応する長さだけ進められた位置を含む線分を検索し、この線分に関する座標データなどを一次候補線分を示すデータとして一時的に記憶する(ステップ602)。より詳細には、候補点が位置する線分の車両の進行方向の端部までの長さが、20mに対応する以上であれば、当該線分を一次候補線分として、その座標データなどを記憶する。また、候補点が位置する線分の車両の進行方向の端部までの長さが、20mに対応する長さ未満であれば、当該線分に接続する線分を検索する。
【0042】
次いで、ステップ602において少なくとも一つの一次候補線分が見つけられたか否かを判断し(ステップ603)、ノー(No)と判断された場合には、ステップ604に進む。
【0043】
これに対して、ステップ603においてイエス(Yes)と判断された場合には、車両の進行方位と、一次候補線分の方位との間の角度を比較する角度比較処理が実行される(ステップ605)。図8は、本実施例にかかる角度比較処理を示すフローチャートである。図8に示すように、この処理においては、車両の進行方位と線分の方位との方位差θdを算出し(ステップ901)、この方位差θdの絶対値が、所定のしきい値θthよりも大きいか否かを判断する(ステップ902)。本実施例において、このしきい値θthは、30°に設定されている。ステップ902においてノー(No)と判断された場合には、処理を終了し、その一方、イエス(Yes)と判断された場合には、この道路を一次候補線分としない旨の判断がなされ、一時的に記憶されたこの一次候補線分に対応するデータが削除される(ステップ903)。
【0044】
図6のステップ605に示す角度比較処理が終了すると、ステップ602において複数の一次候補線分が記憶された場合には、他の一次候補線分についても角度比較処理が実行され(ステップ605、606)、全ての一次候補線分につき、角度比較処理が実行されると、ステップ607に進む。このようにして、前回の処理において得られた候補点が位置する線分、或いは、これに接続する線分のうち、その方位と車両の方位との間の方位差が、しきい値θth以下であるような線分に関連するデータが、一次候補線分を示すデータとして記憶される。
【0045】
ステップ607は、一時的に記憶された一次候補線分が、少なくとも一つ以上存在するかどうかを判断する。このステップ607においてノー(No)と判断された場合には、ステップ604に進む。これに対して、ステップ607においてイエス(Yes)と判断された場合には、垂線距離比較処理が実行される(ステップ608)。ここに、図9は、本実施例にかかる垂線距離比較処理を示すフローチャートである。図9に示すように、この処理においては、仮想現在位置から一次候補線分に向けて垂線をひき、この垂線の長さLを求める(ステップ1001)。次いで、この垂線の長さLが、予め定められたしきい値Lth以下であるか否かを判断する(ステップ1002)。すなわち、一次候補線分が仮想現在位置から、しきい値Lthの範囲に存在しているかどうかを判断する。このステップ1002においてイエスと判断された場合には、この一次候補線分に関連する種々のデータが、二次候補線分を示すデータとして記憶されるとともに、前回の処理で得られた候補点から、所定の線分に沿って、距離Rだけ離間した位置の座標データが、当該二次候補線分に対応する位置データとして記憶される(ステップ1003)。
【0046】
その一方、ステップ1002においてノー(No)と判断された場合には、この一次候補線分に関連するデータは消去され、その結果、二次候補線分は生成されない(ステップ1004)。
【0047】
このように、垂線距離比較処理608が終了すると、全ての一次候補線分につき、処理が終了しているか否かが判断される(ステップ609)。
【0048】
ステップ608およびステップ609を繰り返すことにより、前回の処理により得られた候補点が位置する線分から、車両の進行方向に、該線分或いはこれに接続された線分に沿って、所定の距離Rだけ離間した点が存在し、その方位と車両の進行方位との間の方位差が、所定のしきい値θth以下であり、かつ、仮想現在位置との間の距離が、所定のしきい値Lth以下であるような二次候補線分を得ることができる。さらに、得られた二次線分に対応する位置データとして、前回の処理で得られた候補点から、所定の線分に沿って、距離Rだけ離間した位置の座標データを得ることができる。この座標データが、後述する候補点を示すデータに対応する。
【0049】
一次候補線分に関して、ステップ608および609の処理が終了すると、これらステップを経た結果、二次候補線分が得られているか否かを判断する(ステップ610)。このステップ610において、ノー(No)と判断された場合には、ステップ604に進み、その一方、イエス(Yes)と判断された場合には、処理を終了する。
【0050】
たとえば、図5において、線分61上に存在したある候補点62に対して、仮想現在位置Aが、点63に示す位置に表わされるとする。このような場合に、まず、候補点62が位置する線分61を選択し(ステップ601)、この線分上の候補点62から、車両の進行方向の端部68までの距離を判断する。図5の例の場合には、この線分に接続されている道路があるため、線分64、65に関連するデータが、それぞれ、一次候補線分を示すデータとして一時的に記憶され、それぞれに関連して、角度比較処理(ステップ605)が実行される。ここに、図5の例において、|θ(1)−θcar|<θth、かつ、|θ(2)−θcar|<θthであると仮定すると、ステップ605および606からなる処理ループが二回繰り返され、線分64、65のそれぞれに関連して、垂線距離比較処理(ステップ608)が実行される。
【0051】
さらに、図5の例において、L(1)<Lth、かつ、L(2)<Lthであったとすると、線分64、65に関連するデータが二次候補線分として記憶され、さらに、候補点62から、線分61および64、或いは、線分61および65に沿って、進行距離R(本実施例では20m)に対応する長さだけ進められた点が候補点66、67として設定され、この点の座標データ、仮想現在位置から線分までの距離L(1)、L(2)に対応するデータ、および、線分の角度θ(1)、θ(2)に対応するデータが記憶される。
【0052】
再度、図6の第1の道路検索処理の説明に戻る。ここで、ステップ603においてノー(No)と判断された場合、ステップ605の角度比較処理において、全ての一次候補線分が削除された場合(ステップ607でノー(No))、或いは、ステップ608の垂線距離比較処理において、二次候補線分が得られなかった場合(ステップ610でノー(No))には、仮想現在位置を示す座標データが、候補点を示すデータとなる。
【0053】
このようにステップ403の第1の道路検索処理が終了すると、前回の車両の候補点を求める処理で得られたフリー状態の候補点に関して、道路とのマッチングを行うための第2の道路検索処理が実行される(ステップ404)。図13は、本実施例にかかる第2の道路検索処理を示すフローチャートである。
【0054】
図10に示すように、この処理(ステップ1301ないし1304)は、図6に示すマッチング状態の候補点に対する第1の道路検索処理(図4のステップ403)に類似している。これら二つの処理の間の相違は以下の点にある。すなわち、第1の道路検索処理においては、前回の車両の候補点を求める処理で得られた候補点が位置する線分、あるいは、これに接続する線分を、一次候補線分として一時的に記憶し、これら一次候補線分から、さらに、その方位と車両方位との方位差が所定のしきい値θth以下であって、かつ、仮想現在位置からの距離に対応する長さが所定のしきい値Lth以内の線分を、二次候補線分として選択している。
【0055】
これに対して、第2の道路検索処理においては、仮想現在位置(A)を中心とする予め設定された距離D内にある線分をすべて抽出し(ステップ1301)、これら線分から、その方位と車両方位との方位差が所定のしきい値θth以下の線分を選択し(ステップ1302)、さらに、選択された線分と仮想現在位置との間の距離を求め、この距離に対応する長さが所定のしきい値Lth以内の線分を二次候補線分として選択している(ステップ1303)。換言すれば、第1の道路選択処理のステップ602においては、候補点が位置する線分、或いは、当該線分の分岐点から延びる幾つかの線分などが選択されるが、図10のステップ1302においては、読み出された地図データに含まれる道路データに基づき、抽出すべき線分が決定される。したがって、ステップ1301ないし1303を実行するための処理時間は、道路データに対応する道路の密度に依存し、特に、読み出された地図データに対応する地図が、市街地であった場合など、道路の密度が大きい場合に、この処理時間は、第1の道路検索処理における対応する処理を実行するのに必要な時間と比較すると大きい。
【0056】
この第2の道路検索処理において、ステップ1303が終了すると、ステップ1302およびステップ1303により取り出された線分、すなわち、その方位と車両方位との間の方位差が、しきい値θth以下であり、かつ、仮想現在位置からの距離に対応する長さがしきい値Lth以下であるような線分が、二次候補線分として選択され、該線分に関連する種々のデータが、二次候補線分を示すデータとして記憶される。また、現在地現在位置の存在する点、および、仮想現在位置から当該線分におろした垂線の足、すなわち、この垂線と線分との交点が、候補点と決定され、これら候補点の座標データが記憶される(ステップ1304)。なお、第2の道路検索処理においては、仮想現在位置からおろした垂線と線分との交点が候補点となるが、これは、前回の処理により得られた候補点が、フリー状態であり、したがって、たどるべき線分が存在しないためである。
【0057】
なお、この第2の道路検索処理において、仮想現在位置から所定の範囲D内に線分が存在しない場合、その方位と車両の進行方位との方位差がしきい値θth以下の線分が存在しない場合、或いは、仮想現在位置からの距離に対応する長さがしきい値Lth以下であるような線分が存在しない場合には、仮想現在位置に対応する点が、唯一の候補点となる。
【0058】
上述したように、ステップ404の第2の道路探索処理が終了すると、第1の道路検索処理および第2の道路検索処理により得られたn個の候補点に関連する垂線の長さL(i)(1≦i≦n)と、候補点が位置する二次候補線分の方位と車両の方位との間の方位差θd(i)とに基づき、以下の式により定義されるエラーコストec(i)が算出される(ステップ405)。
【0059】
ec(i)=α×|θd(i)|+β×L(i)
ここに、αおよびβは、重み係数である。これら重み係数の値は、車両の進行方位と線分の方位との間のずれと、仮想現在位置と線分との間のずれとの何れを、道路が選択される上で重視するかにしたがって決定される。たとえば、進行方位とその方位と方位が近い道路を選択することを重視する場合は、αを大きくするようにする。
【0060】
次いで、算出されたエラーコストec(i)と、前回の処理で得られた候補点に関連する累算エラーコストesとにしたがって、下記の式により定義される、今回の処理における累算エラーコストesを算出する(ステップ406)。
【0061】
es(i)=(1−k)×es+k×ec(i)
ここに、kは、0より大きく1より小さな重み係数である。この累算エラーコストes(i)は、前回以前の処理において算出されたエラーコストを、今回の処理において算出されるエラーコストにどのくらい反映させるかを表わしている。
【0062】
さらに、算出された累算エラーコストes(i)に基づき、下記の式に定義される信頼度trst(i)を算出する(ステップ407)。
【0063】
trst(i)=100/(1+es(i))
上記式から明らかなように、累算エラーコストec(i)が大きくなるのにしたがって、信頼度trst(i)は減少し、0(ゼロ)に近づく。その一方、これが小さくなるのにしたがって、信頼度trst(i)は増大し、その値は、100に近づく。
【0064】
このような処理をすることにより、ある候補点に対応して得られたn個の二次候補線分に関連する信頼度trst(i)が求められる。候補点が複数存在する場合には、それぞれの候補点に対応して得られた複数の二次候補線分に関連する信頼度trstを算出すればよい。
【0065】
なお、フリー状態の候補点に関連して、ステップ405で算出すべきエラーコストec(n)には、マッチング状態である場合に得られるエラーコストの値よりも大きな一定の値が与えられる。
【0066】
次いで、このように得られた候補点の各々に対応する信頼度trstの値にしたがって、これら新たな候補点をソートし(ステップ408)、最も信頼度の値の大きな候補点Cを、表示候補点CD、すなわち、ディスプレイ17上に表示するための候補点として、その位置、累算エラーコスト、信頼度、マッチング状態であるかフリー状態であるかを示す状態フラグなどを、メモリ25のRAMの所定の領域に記憶するとともに、表示候補点以外の他の候補点の位置、累算エラーコスト、信頼度、状態フラグなども、RAMの所定の領域に記憶する(ステップ409)。なお、本実施例においては、7個の候補点に関連するデータを記憶可能に構成されている。したがって、図4のステップ401ないし408の処理を実行した結果、8個以上の候補点が算出された場合には、これらのうち、信頼度trstの値が大きい順に7個の候補点に関連する種々のデータが、メモリ25のRAMの所定の領域に記憶されることになる。
【0067】
次に、車両がいわゆる道路のコーナーを走行後に現れる候補点の位置を補正する候補点位置補正処理が実行される(ステップ410)。図11は、本発明にかかる候補点位置補正処理を示すフローチャートである。この処理は、前回の処理において得られたマッチング状態の候補点に基づき算出されたマッチング状態の候補点、すなわち、ステップ403で得られた候補点中、マッチング状態の候補点に関連して実行される。
【0068】
図11に示すように、まず、前回の処理において得られた候補点が位置する線分の方位と、当該候補点に基づき、本処理に先行して実行されたステップ403において得られた候補点が位置する線分の方位との間の方位差θrdを算出する(ステップ1101)。次いで、この方位差θrdの絶対値が、所定の範囲内、本実施例においては、25°以上70°未満であるか否かが判断される(ステップ1102)。このステップ1102においてノー(No)と判断された場合には、処理を終了する。その一方、ステップ1102においてイエス(Yes)と判断された場合には、後に詳述する角度しきい値θlthを算出する(ステップ1103)。より具体的には、この角度しきい値θlthは、図12に示す角度しきい値テーブルを参照することにより、ある方位差θrdに対応する角度しきい値θlthを得ることができる。図12に示すように、角度しきい値テーブルには、二つの線分の方位差θrdの範囲と、これらの各々に対応するθlthが記憶されている。
【0069】
ステップ1103が終了すると、先のステップ403で得られた候補点が位置する線分の方位と車両の方位との間の方位差θlcが算出される(ステップ1104)。次いで、このθlcの絶対値が所定の角度しきい値θlth以下であるか否かが判断される(ステップ1105)。ステップ1105においてノー(No)と判断された場合には、そのまま処理を終了し、その一方、イエス(Yes)と判断された場合には、最適位置算出処理が実行される(ステップ1106)。
【0070】
最適位置算出処理においては、車両が左折してるか或いは右折しているか、さらには、車両の方位が変化したときに、候補点から仮想現在位置までの軌跡が、線分に対してオーバーシュートしているか、或いは、アンダーシュートしているかにしたがって、車両の位置が算出されている。すなわち、(1)左折かつアンダーシュートの場合、(2)左折かつオーバーシュートの場合、(3)右折かつアンダーシュートの場合、および、(4)右折かつオーバーシュートの場合のそれぞれにつき、候補点の最適位置が算出される。
【0071】
ここに、オーバーシュートおよびアンダーシュートにつき簡単に説明を加える。本実施例においては、図13(a)に示すように、算出された候補点131が、現実の車両の位置よりも、車両の進行方向(矢印A)前方に位置しているため、車両が左折或いは右折した場合に、候補点131から仮想現在位置132までの軌跡が、道路に対応する線分133と線分134との間の節点135を超えた位置から湾曲していると考えられる場合をオーバーシュートと称している。その一方、図13(b)に示すように、算出された候補点131が、現実の車両の位置よりも、車両の進行方向(矢印A)後方に位置しているため、車両が左折或いは右折した場合に、候補点141から仮想現在位置142までの軌跡が、道路に対応する線分143と線分144との間の節点145の手前の位置から湾曲している場合を、アンダーシュートと称している。
【0072】
アンダーシュート、或いは、オーバーシュートの判定は、接続された二つの線分の方位差、左折或いは右折の判定、および、仮想現在位置を示す座標のうちのX座標の値(図13(a)の例では、Xc)と仮想現在位置から線分におろした垂線と線分との交点の座標のうちのX座標の値(図13の例では、Xh)との比較に基づいてなされる。
【0073】
まず、図14を参照して説明を加える。たとえば、図14に示すように、道路に対応する線分151上に位置する候補点152から、軌跡153を経て、仮想現在位置154が得られた場合を考える。この場合に、線分151の車両の進行方向の端部に、他の線分155が接続されていると、線分151および155に沿って、候補点152から車両の走行距離Rだけ進められた位置が、新たな候補点(図示せず)となる。しかしながら、仮想現在位置における車両の方位と、新たな候補点が位置すべき線分の方位とがほぼ等しいとの前提に基づき、予想される軌跡を考慮すると、現実の車両は、仮想現在位置が位置する点154を通り、線分155に平行な直線160と、線分151との交点161に対応する位置で、方向を変化させていると考えるのが、より正確な現在位置を算出する上でより好ましい。
【0074】
以上のことを考慮すると、仮想現在位置154に基づき得るべき候補点の位置は、道路の方向が変化している点から、点161と点154との間の距離だけ進められた点、すなわち、点163であるのが好ましい。
【0075】
オーバーシュートの場合も同様に、道路に対応する線分151上に位置する候補点152から、軌跡163を経て、仮想現在位置164が得られた場合を考えると、現実の車両は、仮想現在位置164を通り、線分155に平行な直線170と、線分151の延長線との交点171に対応する位置で、方向を変化させていると考えるのが、より正確な現在位置を算出する上でより好ましい。したがって、仮想現在位置164に基づき得るべき候補点の位置は、点163であるのが好ましい。
【0076】
ただし、仮想現在位置における車両方位と、新たな候補点が位置すべき線分との方位の方位差が、大きくなると、以下のような問題が生じるおそれがある。いま、図15に示すように、線分181上の候補点182に関連して仮想現在位置183が得られ、この仮想現在位置183における車両の進行方位が、直線184の方向である場合を考える。この場合には、仮想現在位置183における車両方位と、新たな候補点が位置すべき線分190の方位との間の方位差(θ'−θ)が存在するため、車両が何れの位置で方向を変化させると考えるべきかが明らかとはならない。すなわち、車両が線分181と直線184との交点185で方向を変化させたと仮定した場合には、点183と点185との間の距離DAと、線分181の端部186と、点183を通る線分181に平行な直線187と線分190との交点188との間の距離DBとの間の誤差が、著しく大きくなる。
【0077】
以上のことを考慮して、本実施例の候補点位置補正処理に含まれる図11のステップ1103において、最適位置処理1106を実行し得る、車両方位と線分の方位との間のしきい値θlthを決定し、ステップ1105において、算出した方位差θlcの絶対値が、θlth以下であるか否かを判断している。
【0078】
さて、上述した理由に基づき、候補点の最適位置を算出するステップ1106における処理について、以下に説明を加える。
【0079】
まず、(1)の場合について説明する。図16は、左折かつアンダーシュートの場合の処理を説明するための図である。この処理においては、上述した論理に基づく位置の補正に加えて、道路の道幅に依存して生じる誤差の補正を加味して、候補点の位置を最適化している。
【0080】
たとえば、線分201上に位置する候補点202に基づき、仮想現在位置203が得られたとすると、上述した論理にしたがえば、線分201の端部に接続された線分204と、仮想現在位置に対応する点203を通る線分201と平行な直線205との交点206を、新たな仮想現在位置とすればよい。
【0081】
しかしながら、実際に、車両が左方向に曲がるときには、車両は道路の左端により近い位置から、道路の左端に沿って進行する場合が多い。ところで、前述したように、道路データは、複数の線分の端部の座標から構成されており、この線分は、実際の道路の中央線にほぼ対応する。したがって、車両の現在位置を候補点202に対応する位置であるとしても、車両は、実際には、道路210中の点211に対応する位置、すなわち、候補点202に対応する位置から、距離Winだけ道路の進行方向左側に離間した位置に存在すると考えられる。
【0082】
いま、候補点202に対応する位置から、距離Winだけ道路の進行方向左側に点211をより現実的な候補点と仮定すると、これに基づき、より現実的な仮想現在位置212を得ることができる。この点212と203との間の距離は、Winである。
【0083】
本処理では、より現実的な仮想現在位置212を通る線分201と平行な直線213と、線分204との交点214を、最適化された候補点と決定し、この点214と、仮想現在位置203から線分204に向かっておろした垂線と該線分204との交点215との間の距離Lamdtを算出している。
【0084】
図16に示すように、より現実的な仮想現在位置212と、線分204との間の距離Woutは、仮想現在位置203と線分204との間の距離をLrefとすると、以下の(1)式で表わすことができる。
【0085】
Wout=Lref+Win×cosθ ・・・・・(1)
また、より現実的な仮想現在位置212から線分204におろした垂線と線分204との交点216と、点215との間の距離は、Win×sinθで表わされる。さらに、点216と、求めるべき候補点214との間の距離は、(1)で求めたWoutを用いて、Wout/tanθで表わすことができる。
【0086】
したがって、求めるべき点215と点214との間の距離、Lamdtは、以下の(2)式に基づき得ることができる。
【0087】
Lamdt=(Wout/tanθ)+Win×sinθ ・・・・・(2)
すなわち、(1)の場合には、仮想現在位置から、新たな候補点が位置すべき線分に垂線を引き、この垂線と当該線分との交点から、車両の進行方向に、当該線分に沿ってLamdtだけ進められた位置が、最適化された候補点の位置となる。
【0088】
次に、(2)の場合について、図17を参照して説明する。(1)の場合とほぼ同様に、線分301上に位置する候補点302と、道幅を考慮したより現実的な候補点305との間の距離をWinとすると、より現実的な候補点305に基づくより現実的な仮想現在位置306と、新たな候補点が位置すべき線分304との間の距離Woutは、下記の(3)式で表わすことができる。
【0089】
Wout=Lref−Win×cosθ ・・・・・(3)
ここに、(1)の場合と同様に、Lrefは、候補点302に基づく仮想現在位置303と線分304との間の距離である。
【0090】
したがって、最適化された候補点307と、仮想現在位置303から線分304におろした垂線と該線分304との交点308との間の距離Lamdtは、以下の(4)式に基づき得ることができる。
【0091】
Lamdt=Win×sinθ−(Wout/tanθ) ・・・・・(4)
さらに、(3)の場合、すなわち、右折かつアンダーシュートの場合には、以下の(5)式および(6)式、また、(4)の場合、すなわち、右折かつオーバーシュートの場合には、以下の(7)式および(8)式に基づき、距離Lamdtを求めることができる。
【0092】
Wout=Lref−Win×cosθ ・・・・・(5)
Lamdt=(Wout/tanθ)−Win×sinθ ・・・・・(6)
Wout=Lref+Win×cosθ ・・・・・(7)
Lamdt=−Win×sinθ−(Wout/tanθ)・・・・・(8)
このように、上述した(1)ないし(4)の何れかの場合にしたがって、(2)式、(4)式、(6)式および(8)式の何れかに基づき、Lamdtが算出され、これに基づき、最適化された候補点の位置が画定される。したがって、ステップ403において記憶された候補点の位置を示す座標データが、最適化された候補点の位置を示すものに書き換えられる。
【0093】
なお、本実施例においては、現実の車両の位置を考慮した距離Winは、道路データに含まれる道幅を示す道路幅データの値にしたがって変化するように構成されている。より詳細には、道路幅データは、5.5m未満の道路を示す第1のデータ、5.5m以上13m未満の道路を示す第2のデータ、および、13m以上の道路を示す第3のデータを有している。したがって、各線分の道路幅データには、これら第1のデータないし第3のデータから選択された一つが含まれる。
【0094】
本処理においては、Winを決定するために、図18に示す左折時および右折時のWinが記憶された補正量テーブルが参照され、所定の道路幅データに関連する左折時または右折時のWinが読み出される。
【0095】
なお、各道路データに関連して、左折時のWinに対応する値LLn(n=1,2,3)よりも、対応する右折時のWinに対応する値RLnの方が小さい。また、道路幅が大きくなるのにしたがって、このWinは大きくなる(LL1<LL2<LL3、RL1<RL2<RL3)。
【0096】
ステップ403で得られた候補点のうち、マッチング状態の候補点のすべてに関して、候補点位置補正処理が実行されると。最後に、表示候補点に関連するデータが出力され(図4のステップ411)、処理を終了する。
【0097】
図4のステップ401ないし411を実行することにより得られた表示候補点は、図19に示すフローチャートに基づく処理によりディスプレイ17の画面上に表示される。
【0098】
本処理は、1秒毎に起動され実行されるマイクロプロセッサ24のルーチンである。
【0099】
最初、スイッチ14が押圧により地図の縮尺の変更を指示されているかを、パラレルI/O21の内容を見て判断する(ステップ1401)。もし、押されていれば(ステップ1401でイエス(Yes))、それに対応して、所定の縮尺フラグを設定する(ステップ1402)。
【0100】
次に、図4の処理を実行することにより得られた表示候補点の位置および方位を示すデータを、メモリ25のRAMの所定の領域から読み出し(ステップ1403)、ステップ1402で切り替えられた縮尺フラグの内容に応じた縮尺の地図をディスプレイ17に、例えば、図2に示すような状態で表示する(ステップ1404)。
【0101】
そして、地図に重畳して、表示候補点の位置およびその方位を、たとえば、先に示した図2のように、矢印記号“↑”を用いて表示する(ステップ1405)。そして最後に、これらに重畳して、北を示す北マークと、縮尺に対応した距離マークとを、図2のように表示する(ステップ1406)。
【0102】
なお、本実施例においては、上記のように矢印記号を用いて車両位置および方向を示したが、車両位置および方向の表示形態は、位置および進行方向が、表示状態が明確に示されるものであれば、その形態は任意でよい。また、北マーク等も同様である。
【0103】
本実施例によれば、車両が左側或いは右側に曲がったときに、候補点が位置する線分の方位と、新たに生成される候補点が位置すべき線分の方位との間の方位差にしたがって、新たに生成される候補点の位置を前方或いは後方に移動させて、補正された候補点を得るため、車両が左側或いは右側に曲がった後の車両の現在位置を、より正確に算出することが可能となる。
【0104】
また、本実施例によれば、候補点が位置する線分に対応する道路の道路幅にしたがって、さらに、新たに生成される候補点の位置を前方或いは後方に移動させるため、最適化された候補点を得ることが可能となり、その結果、車両の現在位置をより正確に算出することが可能となる。
【0105】
本発明は、以上の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0106】
たとえば、前記実施例においては、候補点位置補正処理が、表示候補点が決定された後に実行されているが、これに限定されるものではなく、第1の道路検索処理403が終了した後に、マッチング状態の候補点に関連して、この処理を実行するように構成してもよいことは明らかである。
【0107】
また、前記実施例中の候補点位置補整処理においては、線分に対応する道路の道幅を加味して、補正された候補点の位置を求めているが、これに限定されるものではなく、単に、前回の処理で得られた候補点が位置する線分の方位と、今回の処理で算出された候補点が位置すべき線分の方位との間の方位差に基づき、補正された候補点の位置を求めるようにしてもよい。この場合には、たとえば、図16の例においては、点206が補正された候補点の位置となる。また、求めるべきLamdtは、(Lref/tanθ)となることに留意すべきである。
【0108】
さらに、前記実施例中の候補点位置補正処理においては、道路幅データに対応するWin補正量が記憶された補正量テーブルを使用しているが、これに限定されるものではない。たとえば、道路幅Wに基づき、車両が左折前に道路中に位置すると予想される点を、道路の左端から1/8Wだけ中央側に離間した点と仮定し、Win=7/8×Wと決定し、或いは、車両が右折前に道路中に位置すると予想される点を、道路の中央から1/8Wだけ左側に離間した点と仮定し、Win=1/8×Wと決定してもよい。また、Wと掛け合わせるための数を、道路の車線数に対応して変化させても良い。また、道路幅データとしては、実際の道幅の大きさ以外に道路の車線数を採用することもできる。
【0109】
また、前記実施例においては、車両が道路の左側を通行する例を示したが、これに限定されるものではないことは明らかである。すなわち、車両が道路の右側を通行する場合にも、本発明を適用可能であることは明らかである。この場合に、車両が左折する場合には、道路幅データに基づく所定の長さだけ、候補点の位置を車両の進行方向後方に移動させ、その一方、車両が右折する場合には、道路幅データに基づく所定の長さだけ、候補点の位置を車両の進行方向前方に移動させればよい。
【0110】
さらに、本実施例において用いられたパラメータは、例示のために与えられたものに過ぎず、したがって、これらパラメータは、装置の処理速度、車両が走行する道路の種別(例えば、一般道路、高速道路など)にしたがって変更可能であることを理解すべきである。
【0111】
また、本明細書において、手段とは、必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能が、ソフトウエアによって実現される場合も包含する。また、一つの手段の機能が二以上の物理的手段により実現されても、二以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、車両が左折或いは右折した場合の当該車両の現在位置を、より正確に算出する現在位置算出システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施例にかかる現在位置算出装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】 図2は、本実施例にかかる地図および現在位置の表示例を示す図である。
【図3】 図3は、本実施例にかかる車両の進行方位および進行距離を算出する処理を示すフローチャートである。
【図4】 図4は、本実施例にかかる車両の候補点を算出する処理を示すフローチャートである。
【図5】 図5は、道路に対応する線分、仮想現在位置および候補点を説明するための図である。
【図6】 図6は、本実施例にかかる第1の道路検索処理を示すフローチャートである。
【図7】 図7は、本実施例にかかる道路データの一例を説明するための図である。
【図8】 図8は、本実施例にかかる角度比較処理を示すフローチャートである。
【図9】 図9は、本実施例にかかる垂線距離比較処理を示すフローチャートである。
【図10】 図10は、本実施例にかかる第2の道路検索処理を示すフローチャートである。
【図11】 図11は、本実施例にかかる候補点位置補正処理を示すフローチャートである。
【図12】 図12は、本実施例にかかる角度しきい値の決定を説明するための図である。
【図13】 図13は、本実施例中のオーバーシュートおよびアンダーシュートを説明するための図である。
【図14】 図14は、候補点の最適位置を算出すべき理由を説明するための図である。
【図15】 図15は、角度しきい値を設定する理由を説明するための図である。
【図16】 図16は、本実施例にかかる最適化された候補点の算出を説明するための図である。
【図17】 図17は、本実施例にかかる最適化された候補点の算出を説明するための図である。
【図18】 図18は、本実施例にかかる補正量テーブルを示す図である。
【図19】 図19は、本実施例にかかる現在位置表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 現在位置算出装置
11 角速度センサ
12 方位センサ
13 車速センサ
14 スイッチ
15 CD−ROM
16 CD−ROM読み取りドライバ
17 ディスプレイ
18 コントローラ
Claims (4)
- 車両の現在位置を算出する現在位置算出システムであって、
車両の進行方位を検出する方位検出手段と、
車両の走行距離を算出する距離算出手段と、
前記進行方位および前記走行距離に基づき得られた相対変位と、車両が何れかの道路上に位置する状態を示す候補点とに基づき、車両の現在位置であると予想される仮想現在位置を生成する仮想現在位置生成手段と、
前記仮想現在位置と、地図データに含まれる道路データとを比較し、車両が道路上に存在することを示す候補点を生成する候補点生成手段と、
前記進行方位に基づき、車両が左折或いは右折したことを検出する右左折検出手段と、
前記右左折検出手段により、車両が左折或いは右折したことが検出された場合に、車両が左折或いは右折する前に車両が位置していた第1の道路の方位と、車両が左折或いは右折した後に車両が位置する第2の道路の方位との道路方位差を求めて、当該求めた道路方位差が所定範囲内にある場合、前記仮想現在位置および前記道路データを用いて、当該仮想現在位置を通り、前記第1の道路と平行な直線と、前記第2の道路との交点を算出して、当該算出した交点に候補点が位置するように、前記生成した候補点の位置を補正する候補点補正手段と、を有すること
を特徴とする現在位置算出システム。 - 車両の現在位置を算出する現在位置算出システムであって、
車両の進行方位を検出する方位検出手段と、
車両の走行距離を算出する距離算出手段と、
前記進行方位および前記走行距離に基づき得られた相対変位と、車両が何れかの道路上に位置する状態を示す候補点とに基づき、車両の現在位置であると予想される仮想現在位置を生成する仮想現在位置生成手段と、
前記仮想現在位置と、地図データに含まれる道路データとを比較し、車両が道路上に存在することを示す候補点を生成する候補点生成手段と、
前記進行方位に基づき、車両が左折或いは右折したことを検出する右左折検出手段と、
前記右左折検出手段により、車両が左折或いは右折したことが検出された場合に、車両が左折或いは右折する前に車両が位置していた第1の道路の方位と、車両が左折或いは右折した後に車両が位置する第2の道路の方位との道路方位差を算出し、当該算出した道路方位差が所定の範囲内である場合、前記第1の道路の道幅に予め対応付けられている補正距離を求め、前記仮想現在位置、前記道路データ、および前記補正距離を用いて、前記仮想現在位置を前記第1の道路の垂直方向に前記補正距離だけ移動させた点を通り、かつ前記第1の道路に平行な直線と、前記第2の道路との交点を算出して、当該算出した交点に候補点が位置するように前記候補点の位置を補正する候補点補正手段と、を有すること
を特徴とする現在位置算出システム。 - 請求項1または2に記載の現在位置算出システムであって、
前記候補点補正手段は、
前記第2の道路の方位と前記車両の進行方位との間の方位差が所定角度より小さいか否かを判定し、前記所定の角度より小さいと判定された場合に前記候補点の位置を補正すること
を特徴とする現在位置算出システム。 - 車両の現在位置を算出する現在位置算出システムであって、
車両の進行方位を検出する方位検出手段と、
車両の走行距離を算出する距離算出手段と、
前記進行方位および前記走行距離に基づき得られた相対変位と、車両が何れかの道路上 に位置する状態を示す候補点とに基づき、車両の現在位置であると予想される仮想現在位置を生成する仮想現在位置生成手段と、
前記仮想現在位置と、地図データに含まれる道路データとを比較し、車両が道路上に存在することを示す候補点を生成する候補点生成手段と、
前記進行方位に基づき、車両が左折或いは右折したことを検出する右左折検出手段と、
前記右左折検出手段により、車両が左折或いは右折したことが検出された場合に、車両が左折或いは右折する前に車両が位置していた第1の道路の方位と、車両が左折或いは右折した後に車両が位置する第2の道路の方位との道路方位差を求めて、当該求めた道路方位差が所定角度以下ではない場合、前記仮想現在位置および前記道路データを用いて、当該仮想現在位置を通り、前記第1の道路と平行な直線と、前記第2の道路との交点を算出して、当該算出した交点に候補点が位置するように、前記生成した候補点の位置を補正する候補点補正手段と、を有すること
を特徴とする現在位置算出システム。
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