JP3596941B2 - 現在位置算出装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、該移動体の進行距離、進行方位などを測定して、これにより、当該移動体の現在位置を算出する現在位置算出装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来の道路上を走行する車両の現在位置を算出する現在位置算出装置において、該車両の現在位置は、ジャイロ等の方位センサにより測定した車両の進行方向と、車速センサまたは距離センサにより測定した車両の進行距離とに基づいて算出されている。
【0003】
また、車両の進行距離は、一般的には、トランスミッションの出力軸、または、タイヤの回転数を計測して、その回転数に、タイヤ1回転あたりに車両が進む距離である距離係数を乗ずることにより求められている。
【0004】
さらに、特開昭63−148115号公報に記載のように、前回求めた現在位置と車両の走行距離および方位変化量に基づき定まる車両の仮現在位置を中心とする所定の範囲内の道路を道路地図より抽出し、仮現在位置と抽出した各道路の相関に基づいて最も相関の高い道路上に現在位置を修正することにより、車両の進行方向と進行距離から求めた現在位置の誤差を補正する技術が知られている。また、このような仮現在位置と道路との相関としては、仮現在位置と道路との距離や車両の進行方位と道路の方位差が用いられることが多い。
【0005】
このような道路に整合するように、求められた車両の現在位置を修正する、いわゆる、マップマッチングの技術によれば、現在位置算出の精度を高めることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、マップマッチングの技術によって、現在位置の候補となる位置を算出する系統を、現在位置であるかも知れないと考えられる異なる複数の候補点を基準として複数設け、各系統によって算出された候補点を、より信頼度の高い候補点位置より算出された候補点は、より信頼度が高いものと考えて算出することにより、より良く現在位置が算出できることが期待できる。なぜならば、現在位置として評価する位置が、より多様となるし、その過去の履歴も評価できるからである。
【0007】
ここで、このようにして、各系統において候補点を算出する場合には、仮現在位置と相関の高い道路が存在しない場合には、マップマッチングの技術によって求めた道路上の位置を、もしくは、当該位置のみを候補点として算出するのは適当ではなく、仮現在位置自体も候補点として推定することが適当であると考えられる。また、このようにする場合に、過去の履歴を評価しないとすれば、マップマッチングによって候補点として求められた仮現在位置との相関が所定の基準以上高い道路上の位置は、道路地図との評価で良い結果が得られたということであるから、その候補点の現在位置としての信頼度は、かかる評価が行われていない前記仮現在位置であるところの候補点の信頼度より高いものと考えることができる。
【0008】
また、前述したマップマッチングの技術において、処理量を低減したり、より良く現在位置を求められるようにするために、道路の方位を、車両の進行方位を基準として定めることが考えられる。すなわち、道路の方位を、道路が取りえる逆方向の2方位のうちの車両がUタ−ンせずに進行した場合に車両が走行し得る方向の方位としたり、道路が取りえる逆方向の2方位のうち、車両に近い方の方位を道路の方位として前述した仮現在位置と道路の相関を求めることが考えられる。
【0009】
しかし、このようにすると、車両がUタ−ンした場合に、車両の進行方位と道路の方位差が大きく異なることになり相関が低くなってしまうため、車両の現在位置がUタ−ンする前に走行していた道路上の位置として求まらない場合が多い。 また、Uタ−ンの過程において、道路と車両の方位差が大きくなり、車両の現在位置がUタ−ンする前に走行していた道路上の位置として求まらなくなってしまう場合もある。
【0010】
また、このような場合には、前述した信頼度の関係において、しばらくの間、仮現在位置が現在位置として算出し続けられ、走行している道路上に現在位置が戻らなくなってしまうことがある。
【0011】
このような場合には、それまで走行してきた道路を戻っただけであるのに、現在位置を見失った現在位置の表示が成されることになるので、運転者にとって極めて奇異な現在位置の表示が成されることになる。
【0012】
そこで、本発明は、車両がUタ−ンした場合であっても、速やかに車両が走行している道路上に現在位置を算出することができる現在位置算出装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決する手段】
前記目的達成のために、本発明は、車両に搭載され、該車両の現在位置を算出する現在位置算出装置であって、
車両の進行方位を検出する方位検出手段と、
車両の走行距離を算出する距離算出手段と、
道路地図を記憶した記憶手段と、
車両の進行方位に基づいて車両が所定角以上旋回したか否かを判定する手段と、
前回車両が存在する可能性のある位置として求めた車両の候補点に、前記進行方位および前記走行距離とから求まる車両の相対変位を加算した仮現在位置と、当該仮現在位置と前記道路地図から読みだした道路地図と、前記進行方位とを照合して求めた、前記仮現在位置および車両の進行方位と所定の基準値以上の相関度を有する道路上の位置とを新たな候補点として算出する候補点算出手段と、
任意の候補点と当該候補点に基づき算出された候補点とを同じ系統の候補点とした場合に、前記仮現在位置を前記道路地図から読みだした道路地図とを照合して求めた新たな候補点の信頼度を、当該新たな候補点が存在する道路と対応する仮想現在位置との相関度と、過去に求められた当該新たな候補点と同じ系統の候補点の相関度の実績に基づき算出し、前記仮現在位置である新たな候補点の信頼度を、当該新たな候補点に与えた予め定めた値の相関度と、過去に求められた当該新たな候補点と同じ系統の候補点の相関度の実績に基づき算出する信頼度算出手段と、
算出された新たな候補点のうち、最も信頼度の高い候補点を現在位置として算出する手段とを有し、
前記信頼度算出手段は、車両が所定角以上旋回した場合に、旋回終了後に車両が所定距離走行する間、前回現在位置として算出された候補点に基づき算出された仮想現在位置である新たな候補点の相関度もしくは当該新たな候補点の系統の前記相関度の実績を比較的低い値に設定することを特徴とする現在位置算出装置を提供する。
【0014】
【作用】
本発明に係る現在位置算出装置によれば、車両の進行方位に基づいて車両が所定角以上旋回したか否かを判定することにより車両がUタ−ンしたか否かを判定し、Uタ−ンしたと判定できた場合には、前回現在位置として算出された候補点に基づき算出された仮想現在位置である新たな候補点の相関度もしくは当該新たな候補点の系統の前記相関度の実績を比較的低い値に設定することにより、前回現在位置として算出された候補点から算出されていく仮想現在位置である候補点の系列の候補点より、同時に算出されている道路上の位置の候補点が現在位置として算出され易くする。これにより、Uタ−ン後に、すみやかに現在位置が道路上に表示されるようにすることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る現在位置算出装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。図1に示すように、この現在位置算出装置10は、車両のヨーレイトを検出することで進行方位変化を検出する角速度センサ11と、地磁気を検出することで車両の進行方位を検出する地磁気センサ12と、車両のトランスミッションの出力軸の回転に比例した時間間隔でパルスを出力する車速センサ13を備えている。
【0017】
また、現在位置周辺の地図や現在位置を示すマーク等を表示するディスプレイ17と、ディスプレイ17に表示する地図の縮尺切り替えの指令をユーザ(運転者)から受け付けるスイッチ14と、デジタル地図データを記憶しておくCD−ROM15と、そのCD−ROM15から地図データを読みだすためのドライバ16とを備えている。また、以上に示した各周辺装置の動作の制御を行うコントローラ18を備えている。本実施例において、上述したディジタル地図データには、複数のリンクの端部を示す座標から構成される道路データ、或いは、該道路の道幅を示す道路幅データ、道路が高速道路或いは一般道路であるかを示す高速道路フラグなどが含まれる。
【0018】
コントローラ18は、角速度センサ11の信号(アナログ)をデジタル信号に変換するA/D変換器19と、地磁気センサ12の信号(アナログ)をデジタル信号に変換するA/D変換器20と、車速センサ13から出力されるパルス数を0.1秒毎にカウントするカウンタ26と、スイッチ14の押圧の有無を入力するパラレルI/O21と、CD−ROM15から読みだされた地図データを転送するDMA(Direct Memory Access)コントローラ22と、ディスプレイ17に地図画像を表示する表示プロセッサ23とを有する。
【0019】
また、コントローラ18は、さらに、マイクロプロセッサ24と、メモリ25とを有する。マイクロプロセッサ24は、A/D変換器19を介して得た角速度センサ11の信号、A/D変換器20を介して得た地磁気センサ12の信号、カウンタ26がカウントした車速センサ13の出力パルス数、パラレルI/O21を介して入力するスイッチ14の押圧の有無、DMAコントロ−ラ22を介して得たCD−ROM15からの地図データを受け入れて、それら信号に基づいて処理を行い、車両の現在位置を算出して、それを表示プロセッサ23を介してディスプレイ17に表示させる。この車両位置の表示は、図2に示すように、すでにディスプレイ17に表示している地図上に矢印マ−ク等を重畳して表示することにより行う。これにより、ユーザは、地図上で車両の現在位置を知ることができる。メモリ25は、このような動作を実現するための処理(後述)の内容を規定するプログラムなどを格納したROMと、マイクロプロセッサ24が処理を行う場合にワ−クエリアとして使用するRAMとを含んでいる。
【0020】
以下、このように構成された現在位置算出装置10の動作について説明する。
【0021】
まず、現在位置を求める処理について説明する。
【0022】
図3の車両の旋回量を蓄積する処理の処理手順を示す。
【0023】
図3に示した処理は、車両が2m走行する度に起動され実行される処理であり、車両が旋回している間の車両の旋回量を、後に車両がUタ−ンしたか否かを判定するために求める処理である。
【0024】
この処理では、車両が旋回していない場合(ステップ302)フラグflagを0に維持する処理のみを行う(ステップ306)。
【0025】
また、この処理では、車両が旋回中である期間中は、その期間中に行われる第1回目の処理でflagを1にセットし(ステップ304)、次回の以降の処理では現在の車両方位θnowと前回の処理時の車両方位θoldとの差をθに蓄積していく処理を行う(ステップ305)。
【0026】
また、車両が旋回を終了した時点で(ステップ307)flagを2にセットする(ステップ308)。flagが2にセットされると、後述する図11の処理ではθと車速の判定が行われる。
【0027】
ただし、図3の処理では、flagが2にセットされている間は、何も処理を行わない(ステップ301)。これは、前記した図11の処理でθと車速の判定が実行される前に、flagの値が変化したり、蓄積したθの値が変化してしまうことを防止するためである。なお、ここで、2にセットしたflagは、この図11の処理でθと車速の判定が実行されると0に初期化されることになる。
【0028】
すなわち、この処理では、旋回終了後から図11で旋回終了後に行われる処理が実行されるまでの期間を除く期間中は、旋回中の旋回量θに、その旋回中に行われた旋回量を蓄積し、その旋回の終了時にflagを2に設定する。
【0029】
なお、車両が旋回か否かの判定は、現在の車両方位の、過去所定距離走行中の車両方位の平均に対する差が一定値以上か否かによって行うことができる。
【0030】
次に、図4に、マイクロプロセッサ24が現在位置を算出するために行う現在位置算出処理の処理手順を示す。
【0031】
図4に示した処理は、車両が20m走行する度に起動され実行される処理であり、道路上にマップマッチングによってマッチングされた1または複数の位置、もしくは、道路上にマッチングされていない1または複数の位置を、車両が存在する可能性のある1または複数の候補点として求め、その中から、最も現在位置らしいものを、表示候補点として選択する処理である。表示候補点は、現在位置として表示される位置である。
【0032】
ただし、この処理は車両が旋回中は実行されない。
【0033】
さて、この処理では、まず、前回の処理実行時から現在までの進行距離Rと、現在の車両の進行方位θcarとを読み込む(ステップ401)。次に、それらの値に基づいて、車両の移動量を緯度経度方向、別々に、それぞれ求める。
【0034】
さらに、これらの各方向における移動量を、前回の処理で求まった各候補点の位置に、それぞれ加算して、前回の処理で求まった各候補点対応に、現在車両が存在すると推定される位置である仮想現在位置(A)を求める(ステップ402)。候補点は、本処理において、現在位置の候補と成り得る位置として後述するステップ403、404で求まる1または複数の位置であるが、その求め方の詳細については後述する。
【0035】
もし、装置の始動直後など、前回の車両の候補点を求める処理で得られた候補点が存在しない場合には、別途設定された位置を、前回得られた候補点の位置として用いて仮想現在位置(A)を求める。
【0036】
ついで、前回の処理で得られた後述するフリー状態の候補点のみに関して、道路とのマッチングを行うための道路検索処理が実行され、1または複数の候補点と、その信頼度trstが求められる(ステップ403)。フリー状態の候補点とは、前述したように道路上にマッチングできなかった候補点を指し、信頼度とは各候補点の現在位置としての確からしさを指すが、その詳細については後述する。また、このステップ403で実行される検索候補点選択処理の詳細についても後述する。
【0037】
次に、検索候補点選択処理が実行された後に、前回の処理で得られた後述するマッチング状態の候補点のみに関して、道路とのマッチングを行うための道路検索処理が実行され、1または複数の候補点と、その累積エラ−コストと、信頼度trstが求められる(ステップ404)。マッチング状態の候補点とは道路上にマップマッチングによってマッチングされた候補点を指すが、その求め方の詳細については後述する。
【0038】
次に、車両がUタ−ンした否かを判定し、車両がUタ−ンしている場合に、累積エラ−コストesと、信頼度trstを修正する処理を行う(ステップ405)。この処理の詳細については後述する。
【0039】
そして、以上の処理で得られた候補点の各々に対応する信頼度trstの値にしたがって、これら新たな候補点をソートし(ステップ406)、最も信頼度の値の大きな候補点Cを、表示候補点CD、すなわち、ディスプレイ17上に表示するための候補点として、その位置、後述する累算エラーコストes、信頼度、マッチング状態であるかフリー状態であるかを示す状態フラグなどを、メモリ25のRAMの所定の領域に記憶するとともに、表示候補点以外の他の候補点の位置、累算エラーコストes、信頼度trst、状態フラグなども、RAMの所定の領域に記憶する(ステップ407)。なお、本実施例においては、7個の候補点に関連するデータを記憶可能に構成されている。したがって、マップマッチング処理を実行した結果、候補点が8個以上算出された場合には、これらのうち、信頼度trstの値が大きい順に7個の候補点に関連する種々のデータが、メモリ25のRAMの所定の領域に記憶されることになる。
【0040】
そして、最後に、表示候補点の座標データを出力し(ステップ408)、処理を終了する。
【0041】
次に、以上の現在位置算出処理(図4)のステップ403のフリー状態の前回の候補点のみに関して行う道路とのマッチングを行うための道路検索処理と、ステップ404のマッチング状態の前回の候補点のみに関して行う道路とのマッチングを行うための道路検索処理の詳細について説明する。
【0042】
まず、ステップ404の道路検索処理について説明する。
【0043】
図5に、ステップ404の道路検索処理の詳細を示す。
【0044】
この処理は、前回の現在位置算出処理で得られたマッチング状態の各候補点について、それぞれ行われる。
【0045】
この道路検索処理においては、まず、処理対象のマッチング状態の前回の候補点に対応して得られた仮想現在位置(A)の周辺の地図を、CD−ROM15から、ドライバ16およびDMAコントローラ23を介して読み出す(ステップ501)。
【0046】
そして、処理対象のマッチング状態の前回の候補点が位置するリンク、或いはこのリンクに車両の進行上前方に接続されたリンクを選択して、これらを取り出す(ステップ502)。
【0047】
なお、前述したように、本実施例においては、道路データとして、図6に示すように、2点間を結ぶ複数のリンク51ないし55で近似し、それらリンクを、その始点と終点の座標によって表したものなどを用いている。たとえば、リンク53は、その始点(x3、y3)と終点(x4、y4)によって表現される。
【0048】
次に、ステップ502で取り出されたリンクの中から、そのリンクの相互に逆向きの2つの方位のうちの、Uタ−ンせずにそのまま進行した場合に車両が当該リンクを走行する方位が、求められている車両方向と、所定値以内にあるリンクだけを選択する(ステップ503)。ここで、前述したように、リンクの方位は、Uタ−ンせずにそのまま進行した場合に車両が当該リンクを走行する方位としているので、Uタ−ンの後の車両方位と、Uタ−ンの直前に車両が位置していたリンクの方位は、ほぼ逆向きとなる。したがい、このステップでは、このUタ−ンの直前に車両が位置していたリンクは選択されないことになる。また、同様に、Uタ−ンの直前に車両が位置していたリンクにUタ−ンの前の車両の進行上前方に接続していたリンクとUタ−ン後の車両方位も大きく異なることになるので、これらのリンクも選択されない。このように、選択するリンクが存在しない場合は、仮想現在位置(A)がフリ−状態の候補点となる。
【0049】
さて、リンクが選択できた場合には、選択した取り出されたn個すべてのリンクに対して、仮想現在位置(A)から垂線をおろし、その垂線L(n)の長さを求める(ステップ504)。また、各リンクに対応する候補点を設定する。これらの候補点は全て道路にマッチングされたマッチング状態の候補点となる。ただし、この時点では、まだマッチング状態の候補点の位置は定まらない。
【0050】
ところで、Uタ−ン後でなくても、ステップ503で選択される、処理対象の前回のマッチング状態の候補点が位置するリンク或いは、これに接続されたリンクであって、その方位と車両の進行方位との差が所定値以下であるようなリンクが存在しない場合が考えられる。この場合には、やはり仮想現在位置(A)を、ある候補点から算出された次の候補点とする。このような候補点も、やはり、フリー状態の候補点である。
【0051】
次に、各候補点に対して、エラ−コストec、累積エラ−コストes、信頼度trstの算出処理を行う(ステップ505)。
【0052】
すなわち、まず、以下の式によりに定義されるエラーコスト値ec(n)をすべての候補点に対して算出する。
【0053】
ec(n)=α×|θcar−θ(n)|+β|L(n)|
ここでは、θcarは、仮想現在位置(A)における車両方位を表す。またθ(n)は、候補点を設定したリンクの方位、L(n)は、仮想現在位置(A)から候補点を設定したリンクまでの距離、すなわち垂線の長さ、αおよびβは、重み係数である。これら重み係数の値は、進行方向と道路の方位のずれと現在位置と道路のずれのどちらを、現在位置が、その上にある道路を選択する上で重視するかによって変化させてよい。たとえば、進行方向と方位が近い道路を重視する場合は、αを大きくするようにする。
【0054】
また、このエラ−コスト算出では、フリー状態の候補点には、エラーコストec(n)として、マッチング状態の候補点に与えられる可能性のあるエラーコストの平均値に比べ比較的大きな値を直接与える。
【0055】
次に、算出されたエラーコストec(n)と、処理対象の前回の候補点の累算エラーコストesとにしたがって、下記の式により定義される、各候補点の累算エラーコストes(n)を算出する。
【0056】
es(n)=(1−k)×es+k×ec(n)
ここに、kは、0より大きく1より小さな重み係数である。この累算エラーコストes(n)は、前回以前の処理において算出されたエラーコストを、今回の処理において算出されるエラーコストにどのくらい反映させるかを表わしている。 そして、さらに、算出された累算エラーコストes(n)に基づき、下記の式に定義される信頼度trst(n)を算出する(ステップ507)。
【0057】
trst(n)=100/(1+es(n))
上記式から明らかなように、累算エラーコストec(n)が大きくなるのにしたがって、信頼度trst(n)は減少し、0(ゼロ)に近づく。その一方、これが小さくなるのにしたがって、信頼度trst(n)は増大し、その値は、100に近づく。
【0058】
このような処理をすることにより、処理対象の前回の候補点の存在するリンクに接続し、かつ、リンクの方位が車両方位と近いn個のリンク上の候補点及び前記フリ−状態の候補点の信頼度trst(n)が求められる。
【0059】
ついで、処理対象の前回の候補点から、ステップ503で選択したn個の各リンクに沿って、車両の進行した距離Rに対応する長さだけ、それぞれ進めた点を当該リンクに設定した候補点の位置とする(ステップ508)。したがって、ステップ503で選択されたリンクが複数(nが複数)ある場合には、複数の候補点が生成されることになる。すなわちn個のリンクに対応して、n個の新たな候補点C(n)が生成されることになる。いいかえるならば、前回のマッチング状態の候補点の各々に対して複数の新たな候補点が生成される可能性がある。
【0060】
以上の処理によって順次候補点が求まっていくようすの一例を図7〜9に示しておく。
【0061】
図7に示すように、ある回の処理において、リンク61上に存在したある候補点62に対して、仮想現在位置(A)が、点63に示す位置に表わされるとする。このような場合に、仮想現在位置(A)から、候補点62が位置するリンク61に車両方位上前方に接続されたリンクであって、その方位と車両方位との差が所定値以下であるようなリンク64、65を取り出し、現在位置Aから、リンク64、65までの距離L(1)、L(2)を算出するともに、算出された距離、リンク64、65の角度θ(1)、θ(2)および車両方位θcarなどに基づき、関連するエラーコスト、累算エラーコスト、信頼度を算出する。さらに、先に求めた車両の進行距離Rに基づき、ある候補点62から、リンク61および64、或いは、リンク61および65に沿って、進行距離Rに対応する長さだけ進められた位置を算出し、この位置に対応する点を、それぞれ候補点66、67とする。
【0062】
次回の処理では、図8に示すように、リンク64上の候補点66に対して、新たな仮想現在位置(A)が、点71に示す位置に表わされ、その一方、リンク65上の候補点67に対して、新たな仮想現在位置(A’)が、点72に示す位置に表わされるとする。この場合には、仮想現在位置(A)から、リンク64に接続されたリンクであって、その方位と車両方位との差が所定値以下であるようなリンク73、74を取り出すとともに、新たな仮想現在位置(A’)から、リンク65に接続されたリンクであって、その方位と車両方位との差が所定値以下であるようなリンク75を取り出す。ついで、仮想現在位置(A)から、リンク73、74までのそれぞれの距離L1(1)およびL1(2)を算出するともに、仮想現在位置(A’)から、リンク75までの距離L2(1)を算出する。さらに、現在位置Aに関連して算出された距離、リンク73、74の角度θ1(1)およびθ1(2)ならびに車両方位θcarなどに基づき、関連するエラーコスト、累算エラーコストおよび信頼度を算出するとともに、現在位置A’に関連して算出された距離、リンク75の角度θ2(1)および車両方位θcarなどに基づき、関連するエラーコスト、累算エラーコストおよび信頼度を算出する。
【0063】
さらに、車両の走行距離Rに基づき、候補点66から、リンク64および73、或いは、リンク64および74に沿って、若しくは、候補点67から、リンク65および75に沿って、車両の走行距離Rに対応する長さだけ進められた位置を算出し、この位置に対応する点を、それぞれ新たな候補点とする。図9は、このように新たに求められた候補点81ないし83を示している。
【0064】
次に、図4のステップ403の前回の現在位置算出処理で得られた後述するフリー状態の候補点のみに関して、道路とのマッチングを行うための道路検索処理の詳細について説明する。
【0065】
図10に、このフリ−状態の前回の候補点に対する道路検索処理の処理手順を示す。
【0066】
この処理は、前回のマップマッチング処理で求まったフリー状態の各候補点の、それぞれについて行われる。
【0067】
図示するように、この処理は、図5に示したマッチング状態の候補点に対する道路検索処理に類似している。
【0068】
これら二つの処理の間の相違は、道路検索処理においては、前回の車両の候補点を求める処理で得られた候補点が位置するリンク、あるいは、これに接続するリンクを取り出し、これらリンクから、センサ方位との方位差が所定値内のリンクを選択している(図5のステップ502、503)のに対して、フリー状態の候補点道路検索処理においては、仮想現在位置(A)を中心とする予め設定された距離D内にあるリンクをすべて抽出し、これらリンクから、センサ方位との方位差が所定値内のリンクを選択している(ステップ1202)点にある。
【0069】
すなわち、図5のステップ502、503の処理においては、単一のリンク、或いは、分岐点から延びる幾つかのリンクを取り出せばよいが、図12のステップ1202の処理においては、読み出された地図データに対応する地図中の道路データから、抽出すべきリンクが決定される。
【0070】
また、このフリー状態の候補点に対する道路検索処理において、処理対象の前回のフリー状態の候補点に対する仮想現在位置(A)から所定の範囲D内に、その方位と車両の進行方位との差が所定値以下のリンクが存在する場合には、仮想現在位置から当該リンクにおろされた垂線とこのリンクとの交点が、新たなマッチング状態の候補点となる。また、処理対象の前回のフリー状態の候補点に対する仮想現在位置(A)もフリ−状態の候補点となる。
【0071】
また、フリー状態の候補点に対する仮想現在位置(A)から所定の範囲D内に、その方位と車両の進行方位との差が所定値以下のリンクが存在しない場合には、仮想現在位置に対応する点のみがフリ−状態の候補点となる。
【0072】
以上の処理により、Uタ−ン直後に生じたフリ−状態の候補からは、一般的には、その候補を基準点として求めた仮想現在位置(A)であるフリ−状態の候補点と、この仮想現在位置(A)をUタ−ン前のリンクや、そのリンクにUタ−ン後の車両の進行上前方に接続しているリンク上のマッチング状態の候補点が生成することになる。
【0073】
各候補点のエラ−コストec、累積エラ−コストes、信頼度trstの求め方は、先にマッチング状態の候補点に対する道路検索処理において説明したものと全く同じである。
【0074】
以上、現在位置算出処理について説明した。
【0075】
次に、図4ステップ405の累積エラ−コスト、信頼度を修正する処理について説明する。
【0076】
この処理の処理手順を図11に示す。この処理では、車両がUタ−ンした後の所定距離lth間、前回表示候補から生まれたフリ−状態の候補点の累積エラ−コストesを、より大きい値に修正し、信頼度trstを算出しなおす処理を行う。
【0077】
この処理では、まず、次に、flagが2かを判定することにより旋回終了時点であるかを判定し(ステップ1101)、旋回終了時点であれば、表示候補点から生まれたフリ−状態の候補点が存在するかを判定し(ステップ1102)、存在すれば、さらに、図3の処理で蓄積した旋回量θを調べ(ステップ1103)、これが車両がUタ−ンしたとみなせる量(160度以上、200度以下)であって、現在の車速が30km以上であれば、車両がUタ−ンしたとみなし、flag、θを0に初期化し、パラメ−タeslをlに設定し(ステップ1104)、この前回表示候補点として選択された候補点に基づき発生したフリ−状態の候補点の累積エラ−コストesを大きな値に修正し、この値に基づき信頼度trstを再計算する(ステップ1105)。さて、lに設定された後eslは、逐次走行距離を減じた値に更新される。すなわち、eslがlにセットされた後の走行距離を表すように更新される。
【0078】
ここで、車速が時速30km以上である場合にのみ、Uタ−ンしたとみなすのは、旋回終了時点で、車速が時速30km未満であれば、その旋回はUタ−ンによる旋回ではなくて、駐車場における旋回と考えられるため、後述する(ステップ)1105による処理によって信頼度が低くなることにより駐車場内に発生するフリ−状態の候補点が、表示候補点として算出されにくくなるのを防ぐためである。
【0079】
さて、flagが2であって旋回終了時点であっても、前回表示候補点として選択された候補点に基づき発生したフリ−状態の候補点が存在しない場合(ステップ1102)や、車両がUタ−ンしたとみなせない場合には、flag、θ、eslを0に初期化し処理を終了する。
【0080】
一方、flagが2でない場合であっても、eslが0より大きい場合であって、前回表示候補点として選択された候補点に基づき発生したフリ−状態の候補点が存在する場合には、旋回終了時点から一定距離走行していないので、やはり(ステップ1105)を実行し、累積エラ−コストes、信頼度trstを修正する。前回表示候補点として選択された候補点に基づき発生したフリ−状態の候補点が存在しない場合には、eslを0に初期化して処理を終了する。
【0081】
以上の処理により、旋回終了後距離l走行する間、旋回終了後に前回表示候補点からフリ−状態の候補点が生まれつづけている場合には、このフリ−状態の候補点の信頼度trstが低い値に押えられ、表示候補点として選ばれにくくなっていく。なお、累積エラ−コストesの修正を、たとえば、その時点のeslの値に応じた値を加算することにより、順次、修正量を少なくするようにしてもよい。
【0082】
以上の処理によれば、図12に示すように、車両がUタ−ンした直後に前回の表示候補点0より発生したフリ−状態の候補点100の累積エラ−コストesを通常よりも大きな値に修正する。したがい、このフリ−状態の候補点よりも、同時に発生したマッチング状態の候補点200の方が、表示候補点として選択され易くなる。
【0083】
また、このフリ−状態の候補点100からフリ−状態の候補点110とマッチング状態の候補点120が生まれ、フリ−状態の候補点110からフリ−状態の候補点111が生まれ、マッチング状態の候補点120からマッチング状態の候補点121が生まれた場合は、フリ−状態の候補点が表示候補点として選ばれ続けている間は、フリ−状態の候補点の信頼度が累積的に低くなるように修正される。
【0084】
したがい、より速やかに表示候補点として道路上にマッチングしたマッチング状態の候補点200、201が選ばれるようになる。たとえば、候補点111と、候補点211の間では、候補点111の信頼度は、候補点100と候補点110と候補点111で行われた累積エラ−コストの修正の影響をうけるが、候補点211は、候補点100で行われた累積エラ−コストの修正の影響のみをうけるので、より高い値の信頼度をもつことが期待できる。
【0085】
以下、図4の現在位置算出処理によって求めた表示候補点に基づき、現在位置をディスプレイに表示する処理について説明する残る表示処理について説明する。
【0086】
図13に、表示処理の処理手順を示す。
【0087】
本処理は、1秒毎に起動され実行されるマイクロプロセッサ24のルーチンである。
【0088】
この処理では、最初、スイッチ14が押圧により地図の縮尺の変更を指示されているかを、パラレルI/O21の内容を見て判断する(ステップ1801)。もし、押されていれば(ステップ1801でYes)、それに対応して、所定の縮尺フラグを設定する(ステップ1802)。
【0089】
次に、最も最近求められた表示候補点の座標に、センサから求めた方位と走行距離から求まる、当該表示候補点の座標が出力されてからの車両の移動量を加算した座標を現在位置(B)とし、現在位置(B)およびを含む地図を読みだし(ステップ1803)、ステップ1802で切り替えられた縮尺フラグの内容に応じた縮尺の地図をディスプレイ17に、例えば、図2に示すような状態で表示する(ステップ1804)。
【0090】
そして、地図に重畳して、現在位置(B)の位置および現在の車両方位θcarを、たとえば、先に示した図2のように、矢印記号“↑”を用いて表示する(ステップ1805)。そして最後に、これらに重畳して、北を示す北マークと、縮尺に対応した距離マークとを、図2のように表示する(ステップ1806)。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、車両がUタ−ンした場合であっても、速やかに車両が走行している道路上に現在位置を算出することができる現在位置算出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例にかかる現在位置算出装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】図2は、本実施例にかかる地図および現在位置の表示例を示す図である。
【図3】図3は、現在位置を算出する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、マッチング状態の候補点の道路検索処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、道路地図上の道路の表現形式を説明するための図である。
【図6】図6は、道路に対応する線分、仮想現在位置および候補点を説明するための図である。
【図7】図7は、道路に対応する線分、仮想現在位置および候補点を説明するための図である。
【図8】図8は、道路に対応する線分、仮想現在位置および候補点を説明するための図である。
【図9】図9は、道路に対応する線分、仮想現在位置および候補点を説明するための図である。
【図10】図10は、フリ−状態の候補点の道路検索処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、エラ−コストを算出する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、Uタ−ン後に表示候補としてどのような候補点が選ばれるかを説明するための図である。
【図13】図13は、現在位置表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 現在位置算出装置
11 角速度センサ
12 方位センサ
13 車速センサ
14 スイッチ
15 CD−ROM
16 CD−ROM読み取りドライバ
17 ディスプレイ
18 コントローラ
Claims (2)
- 車両の現在位置を算出する現在位置算出装置であって、
車両の進行方位を検出する方位検出手段と、
車両の走行距離を算出する距離算出手段と、
道路地図を記憶する記憶手段と、
前記検出された車両の進行方位に基づいて車両が所定角以上旋回したか否かを判定する手段と、
前回車両が存在する可能性のある位置として求めた車両の候補点毎に、当該候補点と前記検出された進行方位および前記算出された走行距離とを用いて車両の仮想現在位置を推定する手段と、
前記推定された仮想現在位置毎に、車両の候補点を算出する手段と、
前記算出された車両の候補点各々の信頼度を算出する手段と、
前記算出された車両の候補点のうち、最も信頼度の高い候補点を現在位置に決定する手段とを有し、
前記候補点を算出する手段は、
前記仮想現在位置および前記検出された進行方位と、前記道路地図とを照合し、当該仮想現在位置および進行方位と基準値以上の相関度を有する道路が前記道路地図上に存在する場合に、当該道路上の位置を新たな候補点として算出すると共に、当該道路が前記道路地図上に存在しない場合に、当該仮想現在位置を新たな候補点として算出する処理を、前記推定された仮想現在位置毎に行い、
前記信頼度を算出する手段は、
候補点が仮想現在位置および進行方位と基準値以上の相関度を有する道路上の位置である場合、当該候補点の信頼度を当該候補点および当該仮想現在位置の相関度に応じた値に決定し、候補点が仮想現在位置である場合、当該候補点の信頼度を所定値に決定し、さらに、
車両が所定角以上旋回したと判定された場合、車両が所定距離走行する間、前記所定値に決定した信頼度を当該所定値よりも低い値に設定すること
を特徴とする現在位置算出装置。 - 請求項1に記載の現在位置算出装置であって、
車両の走行速度を算出する手段を有し、
前記信頼度を算出する手段は、前記車両が所定の速度以上の走行速度で所定角以上旋回した場合に前記所定値に決定した信頼度を当該所定値よりも低い値に設定すること
を特徴とする現在位置算出装置。
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ID=15310013
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-
1995
- 1995-06-08 JP JP14221295A patent/JP3596941B2/ja not_active Expired - Lifetime
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