JP3679456B2 - 現在位置算出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の走行距離や進行方向等から車両の現在位置を算出する現在位置算出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ナビゲーションシステムにおいて、車両の現在位置は、ジャイロ等の方位センサにより測定した車両の進行方向、および、車速センサまたは距離センサにより測定した車両の走行距離に基づいて算出することが行われている。
【0003】
なお、車両の走行距離は、一般的には、トランスミッションの出力軸やタイヤの回転数を計測し、その回転数に、タイヤ1回転当りに車両が進む距離である走行距離係数を乗ずることにより求めることができる。
【0004】
しかしながら、算出した車両の現在位置と実際に車両が存在する位置との間には、誤差が生じることが多いので、この誤差を解消するために、例えば、特公平6−13972号公報に記載されているように、車両が走行している道路を推定し、推定した道路上に位置するように、算出した車両の現在位置を修正する、いわゆる、マップマッチングが行われている。このマップマッチングによれば、現在位置の精度を高めることができる。
【0005】
ところで、走行時には、タイヤの磨耗や温度変化による膨張等により、タイヤの直径、すなわち、走行距離係数が時々刻々と変化する。このため、走行距離を求める過程で誤差が発生し、走行距離に基づいて算出される現在位置の精度が低くなってしまう。例えば、タイヤ1回転当りの走行距離係数に、1%の誤差が生じると、100km走行した場合、1kmの誤差が発生してしまう。
【0006】
このような走行距離の誤差は、通常の道路を走行している場合は、上述したマップマッチングの技術により、ある程度修正できる。しかし、高速道路等の道路を走行する際には、マップマッチングで利用できるカーブや交差点等の特徴が道路にないことから、十分に現在位置を修正することができなくなる。
【0007】
さらに、一旦、算出した現在位置と実際に車両が存在する位置との間に1km程度の誤差が発生してしまうと、マップマッチングの技術によって現在位置を修正することは困難になる。
【0008】
そこで、走行距離の誤差をなくすために、従来は、
(1)交差点を曲がったとき(始点)から、次の交差点を曲がる(終点)までの道路と、車輪の回転数から求めた車両の走行距離とを比較することにより、走行距離係数を補正する技術、
(2)特公平6−27652号公報に記載されているように、2つのビーコン間の地図上の距離と、該2つのビーコン間を実際に走行して求めた車両の走行距離とを比較することにより、走行距離係数を補正する技術、
(3)特開平2−107958号公報に記載されているように、GPS衛星から発信された信号を用いて、車両の現在位置を算出するGPS受信装置を利用することにより、車両の走行速度を求め、求めた走行速度とタイヤの回転数とを比較することにより、走行距離係数を補正する技術、
が行われていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した(1)の技術では、交差点間の道路が少しでも曲がっていたり、車両が蛇行運転したりすると、走行距離係数を適切な値に補正することができなくなる。また、上述した始終点を正確に特定するのが難しいという問題もある。例えば、交差点内に複数車線がある場合には、どちらの車線を通って曲がるかによって始終点が異なってくるが、このような車線まで特定することは容易ではない。
【0010】
また、上述した(2)の技術でも、道路が直線でないと、走行距離係数を適切な値に補正することができないし、また、車両が利用できるビーコン設備を設けなければならないという問題点がある。
【0011】
また、上述した(3)の技術では、車両の走行速度が低い場合に、正確な走行速度を求めることができない場合があり、また、車両の走行速度の変化が大きい場合には、処理に時間がかかり、算出した走行速度に誤差が生じてしまう。このため、走行距離係数を適切な値に補正することができない場合があるという問題点がある。また、車両がトンネルや高架下や建物の影など、GPS信号を受信できない走行状態の場合には、GPS衛星を利用できないことから、走行距離係数を補正することができなくなるという問題もある。
【0012】
そこで、本発明は、後述するように、走行する道路の特徴の多少や車両の走行速度に関わらず、推定した現在位置における道路の方向と車両の進行方向との差、および、推定した道路の右左折に応じて、動的に、走行距離係数を適切な値に補正する技術を提供している。
【0013】
しかしながら、いずれの技術によって走行距離係数を補正した場合でも、例えば、車両のタイヤが交換されるなどの何らかの要因によって、走行距離係数の補正結果に誤りが生じると、求める走行距離の誤差が大きくなってしまい、従って、推定する現在位置の精度(マップマッチングの精度)が低下してしまう。
【0014】
そこで、このようなときには、走行距離係数を一旦初期値に戻して、補正をし直すことが好ましい。
【0015】
本発明の目的は、車両の走行に伴って補正されている、走行距離を求めるために用いられる走行距離係数を初期値に戻すことが可能な現在位置算出装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の現在位置を算出する現在位置算出装置において、
(1)少なくとも道路を記述した地図を表す地図データを記憶している地図データ記憶手段、
(2)車両の進行方向を検出する進行方向検出手段、
(3)車輪の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
(4)上記回転速度検出手段が検出した車輪の回転速度、および、設定された走行距離係数に応じて、車両の走行距離を算出する走行距離算出手段、
(5)上記走行距離算出手段が算出した走行距離、上記進行方向検出手段が検出した進行方向、および、上記地図データ記憶手段が記憶している地図データが表す地図に応じて、車両が走行している道路である走行道路と該走行道路上の車両の現在位置とを推定する現在位置推定手段、
(6)上記現在位置推定手段が推定した現在位置における走行道路の方向と、上記進行方向検出手段が検出した進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正する走行距離係数補正手段、
(7)上記現在位置推定手段が推定した現在位置の修正後の現在位置を含む、現在位置を修正する旨の修正指示を受付ける修正指示受付手段、
(8)上記修正指示受付手段が受付けた修正指示に含まれる、修正後の現在位置となるように、上記現在位置推定手段が推定した現在位置を修正する現在位置修正手段、
(9)上記修正指示受付手段が受付けた修正指示に応じて、上記走行距離係数を初期化する走行距離係数初期化手段、
を有するようにしている。
【0017】
例えば、上記走行距離係数初期化手段は、上記走行距離算出手段が算出した走行距離が所定の距離に達する前に、上記修正指示受付手段が修正指示を受付けた回数が所定の回数に達した場合に、上記走行距離係数を初期化するようにすることができる。
【0018】
また、上記目的を達成するために、本発明は、車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の現在位置を算出する現在位置算出装置において、
(1)少なくとも道路を記述した地図を表す地図データを記憶している地図データ記憶手段、
(2)車両の進行方向を検出する進行方向検出手段、
(3)車輪の回転速度を検出する回転速度検出手段、
(4)GPS衛星から発信された信号を用いて、車両の現在位置を測定する現在位置測定手段、
(5)上記回転速度検出手段が検出した車輪の回転速度、および、設定された走行距離係数に応じて、車両の走行距離を算出する走行距離算出手段、
(6)上記走行距離算出手段が算出した走行距離、上記進行方向検出手段が検出した進行方向、および、上記地図データ記憶手段が記憶している地図データが表す地図に応じて、車両が走行している道路である走行道路と該走行道路上の車両の現在位置とを推定する現在位置推定手段と、
(7)上記現在位置推定手段が推定した現在位置における走行道路の方向と、上記進行方向検出手段が検出した進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正する走行距離係数補正手段、
(8)上記現在位置測定手段が測定した現在位置となるように、上記現在位置推定手段が推定した現在位置を修正する現在位置修正手段、
(9)上記現在位置測定手段が測定した現在位置と上記現在位置推定手段が推定した現在位置との差に応じて、上記走行距離係数を初期化する走行距離係数初期化手段、
を有するようにしている。
【0019】
例えば、上記走行距離係数初期化手段は、上記走行距離算出手段が算出した走行距離が所定の距離に達する毎に、上記現在位置測定手段が測定した現在位置と上記現在位置推定手段が推定した現在位置と差が所定の距離より大きくなったか否かを判定し、上記走行距離算出手段が算出した走行距離が上記所定の距離より大きい所定の距離に達する前に、上記2つの現在位置の差が所定の距離より大きくなったと判定した回数が所定の回数に達した場合に、上記走行距離係数を初期化するようにすることができる。
【0020】
【作用】
本発明の現在位置算出装置では、上記走行距離係数補正手段は、上記現在位置推定手段が推定した現在位置における走行道路の方向と、上記進行方向検出手段が検出した進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正する。
【0021】
しかしながら、例えば、車両のタイヤが交換されるなどの何らかの要因によって、上記走行距離係数補正手段による補正結果に誤りが生じると、上記走行距離算出手段が算出する走行距離の誤差が大きくなってしまい、従って、上記現在位置推定手段が推定する現在位置の精度が低下してしまう。
【0022】
ところが、本発明の現在位置算出装置では、上記走行距離係数初期化手段は、上記修正指示受付手段が受付けた修正指示に応じて、上記走行距離係数を初期化し、また、上記現在位置測定手段が測定した現在位置と上記現在位置推定手段が推定した現在位置との差に応じて、上記走行距離係数を初期化しているので、上記走行距離係数補正手段による補正結果に誤りが生じ、上記現在位置推定手段が推定する現在位置の精度が低下してしまっても、上記走行距離係数補正手段が、走行距離係数を補正し直すことができるようになる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本実施例の現在位置算出装置を適用したナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、本実施例に係るナビゲーションシステムは、車両のヨーレイトを検出することにより車両の進行方向の変化を検出する角速度センサ101と、地磁気を検出することにより車両の進行方向を検出する方位センサ102と、車両のトランスミッションの出力軸の回転速度に比例した時間間隔でパルスを出力する車速センサ103とを備えている。
【0026】
また、本実施例に係るナビゲーションシステムは、車両の現在位置およびその周辺の地図を表示するディスプレイ107と、ディスプレイ107に表示する地図の縮尺を切替える旨の指示をユーザから受付けるスイッチ104と、地図を表す地図データを記憶しているCD−ROM105と、CD−ROM105から地図データを読み込むドライバ106とを備えている。さらに、ディスプレイ107に表示された車両の現在位置の修正する旨の指示をユーザから受付けるスイッチ117を備えている。
【0027】
また、本実施例に係るナビゲーションシステムは、上述した各周辺機器の動作を制御するコントローラ108を備えている。
【0028】
コントローラ108は、角速度センサ101の出力値(アナログ信号)をディジタル信号に変換するA/D変換器109と、方位センサ102の出力値(アナログ信号)をディジタル信号に変換するA/D変換器110と、車速センサ103の出力パルス数を0.1秒毎にカウントするカウンタ116と、スイッチ104の押下の有無を入力するパラレルI/O111と、ドライバ106がCD−ROM105から読み込んだ地図データを転送するDMA(Direct Memory Access)コントローラ112と、ディスプレイ107に車両の現在位置およびその周辺の地図を表示する表示プロセッサ113とを有している。
【0029】
また、コントローラ108は、さらに、マイクロプロセッサ(MPU)114と、メモリ115とを有している。
【0030】
MPU114は、A/D変換器109を介して得た角速度センサ101の出力値、A/D変換器110を介して得た方位センサ102の出力値、カウンタ116がカウントした車速センサ103の出力パルス数、パラレルI/O111を介して得たスイッチ104の押下の有無、DMAコントローラ112を介して得た地図データを入力し、これらに基づいて処理を行うことにより、車両の現在位置を算出する。また、MPU114は、算出した車両の現在位置およびその周辺の地図を表示プロセッサ113を介してディスプレイ107に表示させる。
【0031】
なお、車両の現在位置の表示は、図2に示すように、既にディスプレイ107に表示している地図にマーク(ここでは、矢印)20を重畳して表示することにより行う。これにより、ユーザは、車両の現在位置を知ることができる。
【0032】
また、メモリ115は、MPU114が実行するプログラムおよび後述するテーブルを記憶しているROMと、MPU114がワークエリアとして使用するRAMとから構成されている。
【0033】
以下、本実施例に係るナビゲーションシステムの動作について説明する。
【0034】
まず、車両の進行方向および走行距離を算出する進行方向・走行距離算出処理について説明する。
【0035】
図3は進行方向・走行距離算出処理のフローチャートである。
【0036】
本処理は、一定周期、例えば、100mS毎に起動されるMPU114のプログラムルーチンである。
【0037】
図3に示すように、本処理では、まず、A/D変換器109から角速度センサ101の出力値を読み込む(ステップ301)。この角速度センサ101の出力値は、方向の変化(角速度)を示す値であるので、車両の相対的な進行方向しか検出できない。そこで、続いて、A/D変換器110から方位センサ102の出力値を読み込み(ステップ302)、読み込んだ方位センサ102の出力値が示す絶対的な方向、および、ステップ301で読み込んだ角速度センサ101の出力値が示す方向の変化を用いて、車両の進行方向Wを決定し、決定した進行方向WをRAMに保存する(ステップ303)。
【0038】
なお、進行方向Wの決定は、例えば、長い時間、車速が低いときには、角速度センサ101の誤差が大きいので、一定時間以上車速が低い場合には、方位センサ102の出力値が示す絶対的な方向のみを利用するという方法により行う。
【0039】
続いて、車速センサ103からの出力パルス数を0.1秒毎に計数したカウンタ116の計数値を読み込み(ステップ304)、読み込んだ計数値に、走行距離係数Rを乗ずることにより、0.1秒当りに車両が進んだ走行距離Lを求める(ステップ305)。なお、走行距離係数Rは、タイヤ1回転当りに車両が進む距離を示す値であり、その求め方については後述する。
【0040】
続いて、ステップ305で求めた走行距離Lを、RAMに保存されている走行距離Lの積算値ΣL1に加算し、積算値ΣL1が一定距離(例えば、2m)に達したか否かを判定し(ステップ306)、2mに満たない場合は、ステップ309に進む。また、積算値ΣL1が2mに達した場合は、積算値ΣL1を「0」に初期化すると共に(ステップ307)、後述するR初期化処理を起動してから(ステップ308)、ステップ309に進む。
【0041】
ステップ309では、ステップ305で求めた走行距離Lを、RAMに保存されている走行距離Lの積算値ΣL2に加算し、積算値ΣL2が一定距離(例えば、20m)に達したか否かを判定し、20mに満たない場合は、今回の処理を終了する。また、積算値ΣL2が20mに達した場合は、積算値ΣL2を「0」に初期化すると共に(ステップ310)、後述する現在位置算出処理を起動してから(ステップ311)、今回の処理を終了する。
【0042】
次に、車両の現在位置を算出する現在位置算出処理について説明する。
【0043】
図4は現在位置算出処理のフローチャートである。
【0044】
本処理は、図3のステップ308で起動されるMPU114のプログラムルーチンである。すなわち、本処理は、車両が進んだ距離が20mに達する毎に起動される。
【0045】
図4に示すように、本処理では、まず、RAMに保存されている進行方向Wを読み込む(ステップ401)。続いて、読み込んだ進行方向Wおよび20mに基づいて、車両の移動量を、緯度方向および経度方向の各々について算出し、さらに、これらの各方向についての移動量を、RAMに保存されている車両の現在位置B(前回の処理で修正した現在位置B)に加算して、現在の車両の現在位置Aを求める(ステップ402)。
【0046】
なお、ナビゲーションシステムの始動直後など、前回の処理で修正した車両の現在位置Bがない場合には、所定の位置を車両の現在位置Bとして用いることにより、現在位置Aを求めるようにする。
【0047】
続いて、ステップ402で求めた現在位置Aの周辺の地図を表す地図データを、CD−ROM105からドライバ106およびDMAコントローラ113を介して読み込み(ステップ403)、現在位置Aを中心とする所定の距離D内に存在する道路(線分)のうちから、ステップ401で読み込んだ進行方向Wとの間の角度のズレθがしきい値T以内にある全ての線分を選択する(ステップ404)。
【0048】
なお、道路は、例えば、図6に示すように、2点間を結ぶ複数の線分60〜63で近似し、これらの線分を、その始点および終点の座標によって表したものを用いるようになっている。図6に示した例では、線分62は、その始点(x3,y3)および終点(x4,y4)によって表される。
【0049】
続いて、ステップ404で選択した全ての線分に対して、現在位置Aから垂線を下し、該垂線の長さ(現在位置Aと線分との間の最短距離)lを求め(ステップ405)、エラーコスト=α×θ+β×lを求める(ステップ406)。
【0050】
ここで、α,βは、重み付け係数であり、これらは、車両が走行している道路を推定する際に、進行方向と道路との間の角度のズレθ、および、現在位置Aと道路との間の最短距離lのいずれを重視するかによって変化させることができる。例えば、現在位置Aとの間が近い道路を重視する場合は、αよりもβを大きくするようにする。
【0051】
各線分についてのエラーコストを求めたならば、エラーコストが最も小さい線分を、車両が走行している道路であると推定する(ステップ407)。
【0052】
最後に、車両が走行している道路であると推定した線分と現在位置Aからの垂線とが交差する点を、修正した現在位置Bとして、RAMに保存すると共に(ステップ408)、後述する第1のRsh変更処理を起動すると共に(ステップ409)、後述する第2のRsh変更処理を起動する(ステップ410)。
【0053】
続いて、RAMに保存されている走行距離Lの積算値ΣL3に20mを加算し、積算値ΣL3が一定距離(例えば、10km)に達したか否かを判定し(ステップ411)、10kmに満たない場合は、今回の処理を終了する。また、積算値ΣL3が10kmに達した場合は、積算値ΣL3を「0」に初期化すると共に(ステップ412)、後述するRa変更処理を起動してから(ステップ413)、今回の処理を終了する。
【0054】
ところで、上述したステップ404では、現在位置Aを中心とする所定の距離D内に存在する道路(線分)のうちから、進行方向Wとの間の角度のズレθがしきい値T以内にある全ての線分を選択するようにしているが、この距離Dは、前回の処理で推定した道路についてのエラーコストに基づいて決定するようにしてもよい。ここで、エラーコストに基づいて距離Dを決定する理由は、エラーコストが大きい場合は、前回の処理で修正した現在位置Bの精度に対する信憑性が低いと考えられるので、より広い範囲を検索して道路を探す方が、正しい現在位置Aを算出する上で適当であるからである。
【0055】
次に、現在位置およびその周辺の地図を表示する表示処理について説明する。
【0056】
図5は表示処理のフローチャートである。
【0057】
本処理は、一定周期、例えば、1S毎に起動されるMPU114のプログラムルーチンである。
【0058】
図5に示すように、本処理では、まず、スイッチ104が押下されて地図の縮尺の切替えが指示されているか否かを、パラレルI/O111が入力している内容を見て判断する(ステップ501)。スイッチ104が押下されている場合は、それに対応して、所定の縮尺フラグを設定する(ステップ502)。
【0059】
続いて、RAMに保存されている現在位置Bおよび進行方向Wを読み込み(ステップ503)、ステップ502で設定した縮尺フラグの内容に応じた縮尺の地図を、例えば、図2に示すように、表示プロセッサ113を介してディスプレイ107に表示する(ステップ504)。
【0060】
続いて、ディスプレイ107に表示された地図に重畳して、車両の現在位置Bと車両の進行方向Wを、例えば、図2に示すように、矢印20を用いて、表示プロセッサ113を介してディスプレイ107に表示する(ステップ505)。
【0061】
最後に、これらに重畳して、北を示す北マーク21および縮尺に対応した距離マーク22を、例えば、図2に示すように、表示プロセッサ113を介してディスプレイ107に表示する(ステップ506)。
【0062】
なお、本実施例においては、上述したように、矢印を用いて車両の現在位置および進行方向を示したが、車両の現在位置Bおよび進行方向Wの表示形態は、これらが明確に示されるものであれば、任意でよい。また、北マーク21等も同様である。
【0063】
次に、図3のステップ305で用いる走行距離係数Rの求め方について説明する。
【0064】
上述したように、車両の走行距離Lは、車速センサ103の出力パルス数に走行距離係数Rを乗じて算出する。しかし、タイヤの摩耗等によって、タイヤ1回転当りに車両が進む距離が変化するので、走行距離係数Rを固定値とすると、車両の走行に伴い、走行距離Lを正確に求めることができなくなってくる。
【0065】
そこで、本実施例では、逐次、図4のステップ408で修正した現在位置B、図4のステップ407で推定した道路(現在位置Bが位置する道路)の方向(道路方向V)、および、図3のステップ303で決定した車両の進行方向Wを比較することにより、現在位置Bが、実際に車両が走行している位置に対して進んでいるか遅れているかを判断し、走行距離係数Rを動的に修正するようにしている。
【0066】
このような走行距離係数Rの修正は、例えば、以下に示すようにして行うことができる。
【0067】
すなわち、短期的に走行距離係数Rを補正するための補正係数Rshと、長期的に走行距離係数Rを補正するための補正係数Raとを導入する。そして、走行距離係数R=R0×(1+Ra+Rsh)に従って、動的に走行距離係数Rを修正する。なお、ここで、R0は、走行距離係数Rの初期値を示している。
【0068】
そして、MPU114が、補正係数Rshおよび補正係数Raを、後述する第1のRsh変更処理、第2のRsh変更処理、および、Ra変更処理の3つの補正係数変更処理を行うことにより、逐次変更する。
【0069】
なお、ナビゲーションシステムの始動直後には、初期化処理として、各補正係数変更処理で用いる各種変数(Σθ,Σ20θ,Σφ,Dx,Rsh,Ra,ΣA,F1〜F10)やフラグfを全て「0」に初期化しておく。
【0070】
まず、補正係数Rshを変更する第1のRsh変更処理について説明する。
【0071】
図7は第1のRsh変更処理のフローチャートである。
【0072】
本処理は、図4のステップ409で起動されるMPU114のプログラムルーチンである。すなわち、本処理は、車両が進んだ距離が20mに達する毎に起動される。
【0073】
図7に示すように、本処理では、まず、フラグfが「0」であるか否かを判定し(ステップ701)、「0」でない場合は、今回の処理を終了する。一方、フラグfが「0」である場合は、RAMに保存されている現在位置Bおよび進行方向Wを読み込み(ステップ702)、CD−ROM105からドライバ106を介して読み込んだ地図データが表す地図に記述されている道路のうちの、現在位置Bが位置する道路の道路方向Vを求める(ステップ703)。
【0074】
続いて、道路方向Vと進行方向Wとの間の角度の差である道路・車両方向差θを求め(ステップ704)、前回の処理で求めてRAMに保存しておいた道路方向Vと今回の処理で求めた道路方向Vとの間の角度の差である道路方向差φを求める(ステップ705)。ここで、道路方向差φの値の正負は、今回の処理で求めた道路方向Vが前回の処理で求めた道路方向Vを基準として左側にある場合を正とし、右側にある場合を負とする。また、道路・車両方向差θの値の正負は、例えば、道路方向Vを基準として、車両方向Wが左側にある場合を正とし、右側にある場合を負とする。
【0075】
なお、このとき、今回の処理で求めた道路方向Vを次回の処理で用いることができるようにするために、RAMに保存しておく(ステップ706)。
【0076】
続いて、ステップ704で求めた道路・車両方向差θの絶対値が3deg未満であるか否かを調べ(ステップ707)、3deg以上である場合は、道路・車両方向差θを、RAMに保存されている道路・車両方向差積算値Σθに加算し(ステップ715)、道路・車両方向差θに20mを乗じた値を、RAMに保存されている走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θに加算し(ステップ716)、ステップ705で求めた道路方向差φを、RAMに保存されている道路方向差積分値Σφに加算してから(ステップ717)、今回の処理を終了する。
【0077】
一方、ステップ704で求めた道路・車両方向差θが3deg未満である場合は、RAMに保存されている道路・車両方向差積算値Σθの絶対値が5deg以上であるか否かを調べ(ステップ708)、5deg未満である場合は、Σθ,Σ20θ,Σφを、全て「0」に初期化してから(ステップ714)、今回の処理を終了する。ここで、道路・車両方向差θの絶対値が3deg未満であるということは、3degを超える道路・車両方向差θの2回以上の連続が途絶えたことを意味している。
【0078】
一方、道路・車両方向差積算値Σθの絶対値が5deg以上である場合は、ステップ709〜ステップ712で、補正係数Rshを変更する。
【0079】
すなわち、まず、RAMに保存されている変数ΣAの値に、補正係数Raと補正係数Rshとの和に距離変数Dxを乗じた値を加算し(ステップ709)、距離変数Dxを「0」に初期化すると共に、補正係数Rshを変数Rshpに保存しておく(ステップ710)。ここで、変数ΣAは、各Ra+Rshの値に、該Ra+Rshの値で走行した距離を重み付けした値となり、この値は、後述する第2のRsh変更処理およびRa変更処理においても変更される場合がある。また、距離変数Dxは、常に、距離変数Dxが「0」に初期化された後に車両が走行した距離を表し、この距離は、やはり車速センサ103の出力パルス数に走行距離係数Rを乗じて求める。なお、補正係数Ra,補正係数Rsh,距離変数Dxは、RAMに保存されているものである。
【0080】
続いて、RAMに保存されている道路方向差積算値Σφから、3degを超える道路・車両方向差θが連続していた間に車両が走行していた道路が右折であったか左折であったかを判定する(ステップ711)。この判定は、道路方向差積算値Σφが正である場合は左折であると判定し、負である場合は右折であると判定する。
【0081】
続いて、RAMに保存されている走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θ、および、ステップ711で判定した右左折に応じて、補正係数Rshを変更する(ステップ712)。
【0082】
ここで、ステップ712の変更方法について、具体的に説明する。
【0083】
図10は、3degを超える道路・車両方向差θが連続していた間に車両が走行していた道路が左折である場合と右折である場合との各々の場合について、走行距離重み付け道路・車両方向差積分値Σ20θが正となる場合の道路・車両方向差θと、負となる場合の道路・車両方向差θとを表したものである。
【0084】
ここで、図10における状態1は、左折であり、かつ、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θが正である場合、すなわち、道路・車両方向差積算値Σθが正である場合を示しており、この場合には、現在位置Bは、実際の位置より遅れている。なぜならば、現在位置Bが左折すべき位置に達する前に、実際には車両が左折しているからである。
【0085】
また、状態2は、左折であり、かつ、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θが負である場合を示しており、この場合には、現在位置Bは、実際の位置より進んでいる。なぜならば、現在位置Bが左折すべき位置に達しているのに、実際には車両が左折していないからである。
【0086】
右折の場合も同様に考えることができ、状態3は、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θが負である場合を示しており、この場合には、現在位置Bは、実際の位置より遅れている。また、状態4は、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θが正である場合を示しており、この場合には、現在位置Bは、実際の位置より進んでいる。
【0087】
そこで、ステップ712では、まず、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θの正負、および、ステップ711で判定した右左折に応じて、図11に示すように、補正係数Rshを修正するための変数Taの正負を決定する。そして、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θの絶対値の大きさに応じて、変数Taの絶対値の大きさを決定する。なお、変数Taの絶対値の大きさは、予め用意しておいたテーブルAに従って決定することができる。テーブルAは、走行距離重み付け道路・車両方向差積算値Σ20θの絶対値の大きさと変数Taの絶対値の大きさとを対応付けて記述したテーブルである。
【0088】
続いて、このようにして求めた変数Taの絶対値の大きさと変数Taの正負とから、変数Taの値を決定し、ステップ710でRAMに保存しておいた変数Rshp(前回の処理で変更された補正係数Rshを示す。)に、決定した変数Taの値を加算することにより、補正係数Rshを変更し、RAMに保存しておく。
【0089】
さて、図7に戻って、補正係数Rshを変更したならば、フラグfを「1」に設定する(ステップ713)。
【0090】
最後に、Σθ,Σ20θ,Σφを全て「0」に初期化してから(ステップ714)、処理を終了する。
【0091】
次に、補正係数Rshを変更する第2のRsh変更処理について説明する。
【0092】
図8は第2のRsh変更処理のフローチャートである。
【0093】
本処理は、図4のステップ410で起動されるMPU114のプログラムルーチンである。すなわち、本処理は、車両が進んだ距離が20mに達する毎に起動される。
【0094】
図8に示すように、本処理では、まず、RAMに保存されている距離変数Dxが300mに達しているか否かを判定し(ステップ801)、300mに達していない場合は、今回の処理を終了する。距離変数Dxは、図7のステップ710で「0」に初期化された後、車両が300m以上走行した場合に、300mに達することになる。
【0095】
一方、距離変数Dxが300mを超えている場合は、RAMに保存されている変数ΣAの値に、補正係数Raと補正係数Rshとの和に距離変数Dxを乗じた値を加算し(ステップ802)、補正係数Rshを、予め用意したテーブルBを用いて変更する(ステップ803)。
【0096】
すなわち、ステップ803では、まず、変数Tbの絶対値を、テーブルBを参照することによって決定し、変数Taの正負と変数Tbの正負とが一致するように、変数Tbの正負を決定する。テーブルBは、変数Taの絶対値と変数Tbの絶対値とを対応付けて記述したテーブルである。この対応は、変数Taの絶対値の大きさが所定の割合で小さくなった値が変数Tbの絶対値となるように定めている。具体的には、変数Taは、対応する変数Tbより1桁程度大きい値とする。
【0097】
そして、図7のステップ710でRAMに保存しておいた変数Rshp(図7のステップ712で変更される前の補正係数Rshを表す。)に、決定した変数Tbの値を加算することにより、Rshを変更する。
【0098】
最後に、フラグfおよび距離変数Dxを「0」に初期化してから(ステップ804)、今回の処理を終了する。
【0099】
次に、補正係数Raを変更するRa変更処理について説明する。
【0100】
図9はRa変更処理のフローチャートである。
【0101】
本処理は、図4のステップ413で起動されるMPU114のプログラムルーチンである、すなわち、本処理は、車両が進んだ距離が10kmに達する毎に起動される。
【0102】
図9に示すように、本処理では、まず、RAMに保存されている変数ΣAの値に、補正係数Raと補正係数Rshとの和に距離変数Dxを乗じた値を加算する(ステップ901)。
【0103】
続いて、RAMに保存されている9つの変数F1〜F9を、1つずつずらして、変数F2〜F10とし(ステップ902)、変数F1に、以下の式に従って求めた値を設定する(ステップ903)。
【0104】
F1={(ΣA+10km)/10km}−1
続いて、変数F1〜F10の値の平均をとり、この平均値を、以降の補正係数Raとする(ステップ904)。
【0105】
最後に、ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ,Dxを「0」に初期化すると共に、フラグfを「0」に初期化してから(ステップ905)、今回の処理を終了する。
【0106】
以上、補正係数Rshおよび補正係数Raを変更する処理の内容について説明した。以下では、実際の車両の走行において、これらの処理によって、どのように補正係数Rshおよび補正係数Raが変更されていくかについて、図12に示す道路を車両が走行している場合を例にして説明する。
【0107】
いま、図12において、a地点に車両が存在するときに、図9に示したRa変更処理が実行されて、補正係数Raが変更され、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ,Dx、および、フラグfが「0」に初期化されたものとする。そして、a地点からb地点までの間は、車両が進んだ距離が20mに達する毎に、図7に示した第1のRsh変更処理が実行されるが、このとき、ステップ704で求めた道路・車両方向差θが3deg未満であるとする。
【0108】
この場合、a地点からb地点までの間は、ステップ707で、道路・車両方向差θが3deg未満であると判定され、ステップ708で、道路・車両方向差積算値Σθが5deg未満であると判定されるので、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ、および、フラグfは、ステップ714で、再度、「0」に初期化される。一方、距離変数Dxは、この間も増加している。
【0109】
次に、b地点から20m離れたc地点に車両が達すると、図7に示した第1のRsh変更処理が実行されるが、このとき、ステップ704で求めた道路・車両方向差θが4degであるとし、c地点から20m離れたd地点に車両が達すると、図7に示した第1のRsh変更処理が実行されるが、このとき、ステップ704で求めた道路・車両方向差θが3deg未満であるとする。
【0110】
この場合、c地点で実行される第1のRsh変更処理においては、ステップ707で、道路・車両方向差θが3deg以上であると判定され、ステップ715〜ステップ717で、各変数Σ20θ,Σφ,Σθが更新される。しかし、その後、d地点で実行される第1のRsh変更処理において、ステップ707で、道路・車両方向差θが3deg未満であると判定され、ステップ708で、道路・車両方向差積算値Σθが5deg未満であると判定されるので、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ、および、フラグfは、ステップ714で、再度、「0」に初期化される。
【0111】
このように、図7に示した第1のRsh変更処理においては、道路・車両方向差θが3deg未満であり、かつ、道路・車両方向差積算値Σθが5deg未満である場合には、単に、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ、および、フラグfを「0」に初期化するだけである。これは、3deg未満の道路・車両方向差θや、連続せずに1回だけ3deg以上5deg未満となった道路・車両方向差θは、走行距離係数Rの誤り以外の要因による誤差である可能性があると考え、このような道路・車両方向差θが、補正係数Rshおよび補正係数Raを変更する際に無視されるようにするためである。
【0112】
次に、d地点からe地点までの間に、車両が進んだ距離が20mに達する毎に、図7に示した第1のRsh変更処理が実行されるが、このとき、ステップ704で求めた道路・車両方向差θが、2回以上連続して3deg以上になったものとする。
【0113】
この場合、d地点からe地点までの間は、ステップ715〜ステップ717で、各変数Σ20θ,Σφ,Σθが更新される。従って、e地点では、Σφは、d地点からe地点までの間の道路方向差φの積算値を表し、Σθは、d地点からe地点までの間の道路・車両方向差θの積算値を表し、Σ20θは、d地点からe地点までの間の道路・車両方向差θに20mを重み付けした値の積算値を表していることになる。
【0114】
次に、e地点から20m離れたf地点に車両が達すると、図7に示した第1のRsh変更処理が実行されるが、このとき、ステップ704で求めた道路・車両方向差θが3deg未満であるとする。
【0115】
この場合、ステップ707で、道路・車両方向差θが3deg未満であると判定され、ステップ708で、道路・車両方向差積算値Σθが5deg以上であると判定されるので、ステップ709〜712で、上述したように、補正係数Rshが変更される。
【0116】
また、ステップ709で、ΣA(この時点では「0」)の値に、距離変数Dx(距離変数Dxが「0」に初期化されたa地点からf地点までの距離を表す。)を乗じた値が加算され、ステップ710で、距離変数Dxが「0」に初期化される。このΣAは、後に、図9に示したRa変更処理で補正係数Raを変更するために用いられる。
【0117】
また、ステップ713で、フラグfが「1」に設定され、ステップ714で、補正係数Rshを変更するために求めておいた各変数Σ20θ,Σθ,Σφが「0」に初期化される。
【0118】
この結果、この後車両が300m走行したg時点で、図8に示した第2のRsh変更処理が実行されて、フラグfが「0」に解除されるまでは、図7に示した第1のRsh変更処理は、ステップ701で、実質的にスキップされることになる。
【0119】
次に、f地点(距離変数Dxが「0」に初期化された地点)から300m離れたg地点に車両が達すると、図8に示した第2のRsh変更処理が実行されるので、ステップ801で、距離変数Dxが300m以上であると判定される。そして、ステップ802で、ΣAに、f地点で補正係数Rshが変更されてから現在まで用いられていた補正係数Raと補正係数Rshとの和に距離変数Dxを乗じた値が加算され、ステップ803で、上述したように、補正係数Rshが変更される。
【0120】
この結果、f地点からg地点までの間の300mの区間は、f地点で変更された補正係数Rshを用いて走行距離係数Rが求められ、g地点以降は、g地点で変更された補正係数Rshより小さな値が、補正係数Rshとして用いられて、走行距離係数Rが求められることになる。
【0121】
これにより、始めの300mの区間は、補正係数Rshを適当と思われる値より大きくすることにより、走行距離係数Rを正しいと思われる値より意図的に大きくして、c地点からd地点までの間に蓄積された現在位置Bのズレを、この300mの区間を車両が進む間に少しずつ修正し、その後に、補正係数Rshを小さくして、走行距離係数Rを正しいと思われる値に設定し直すことができる。
【0122】
300mの区間をかけて現在位置Bのズレを少しずつ修正するのは、現在位置Bを表すマーク20がジャンプして表示されることなく、スムーズに移動されるようにするためである。また、この300mの区間で、図8に示した第2のRsh変更処理が実質的に実行されなくするのは、正しいと思われる値より意図的に大きくした走行距離係数Rで走行している間は、図8に示した第2のRsh変更処理は、適当な補正係数Rshを変更するよう動作しないからである。
【0123】
この後、g地点で実行される第2のRsh変更処理において、ステップ804で、フラグfおよび距離変数Dxが「0」に初期化される。フラグfが「0」に初期化されることにより、図7に示した第1のRsh変更処理は、再度、a地点からの処理と同様に、道路・車両方向差θに従って動作できるようになる。
【0124】
さて、さらに、a地点から10km離れたh地点に車両が達すると、図9に示したRa変更処理が実行される。
【0125】
Ra変更処理においては、まず、ステップ901で、ΣAに、現在まで用いられていた補正変数Raと補正係数Rshの和に距離変数Dx(ステップ7のステップ709または図8のステップ802で最後にΣAを変更してからの距離を表す。)を乗じた値が加算される。この結果、ΣAは、a地点からf地点までの10kmの区間で用いられた各(Ra+Rsh)に、該(Ra+Rsh)が有効であった走行距離を重み付けした値の積算値となる。
【0126】
そして、ステップ902で、9つの変数F1〜F9(初期値として、全て「0」が設定されている。)が、1つずつずらされて、変数F2〜F10とされ、ステップ903で、{(ΣA+10km)/10km}−1がF1の値として設定される。ここで、{(ΣA+10km)/10km}−1は、a地点からh地点までの間で求められた走行距離Lの積算値ΣL3(≦10km)中に含まれる、補正係数Raおよび補正係数Rshの影響によって補正された走行距離Lの割合に、近似的に比例した値となる。従って、F10〜F1の平均値は、過去100km中に含まれる、補正係数Raおよび補正係数Rshの影響によって補正された走行距離Lの割合に、近似的に比例した値となる。
【0127】
そこで、ステップ904では、この平均値が、新たな補正係数Raとして変更される。なお、この平均値に適当な定数を乗じた値が、新たな補正係数Raとして変更されるようにしてもよい。そして、ステップ905で、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ,Dx、および、フラグfが「0」に初期化される。
【0128】
h地点以降は、a地点からの処理と同様な処理が繰返されることになる。
【0129】
なお、上述したように、変数Taは、対応する変数Tbより1桁程度大きい値としているので、図7のステップ712で求められる変数Taは、それまでの補正係数Rshに比べて、1桁程度大きい値となる。従って、ステップ712では、変数Ta自体を新たな補正係数Rshとして処理するようにしてもよい。
【0130】
以上、説明してきたように、道路方向Vと進行方向Wとの間の角度の差である道路・車両方向差θから、走行距離Lを求めるために用いる走行距離係数Rの誤差を見積り、これを補正する。従って、車両の走行状態に関わらず、走行距離係数Rを適切な値に補正を行うことができると共に、交差点等の特徴が少ない道路を車両が走行した場合でも補正を行うことができるようになる。
【0131】
このように、本実施例では、常に、適切な値に走行距離係数Rを補正することができるので、より良い精度で走行距離Lを求めることができ、より良い精度で車両の現在位置Aを求めることが可能となる。
【0132】
さらに、本実施例では、ユーザがスイッチ117を押下して、ディスプレイ107におけるマーク20の表示位置(車両の現在位置B)を修正する指示を入力したときに、走行距離係数Rを初期値R0に初期化することができるようにしている。
【0133】
例えば、車両のタイヤが交換されるなどの何らかの要因によって、走行距離係数Rの補正結果に誤りが生じると、求める走行距離Lの誤差が大きくなってしまい、従って、ディスプレイ107にマーク20として表示される現在位置Bの精度が低下してしまうが、本実施例では、これに対処する方法として、走行距離係数Rを一旦初期値R0に初期化することにより、走行距離係数Rの補正をし直すことができるようにしている。
【0134】
以下、走行距離Rを初期化するR初期化処理について説明する。
【0135】
走行距離係数Rは、上述したように、R=R0×(1+Rsh+Ra)に従って求められている。そこで、走行距離係数Rを初期値R0に初期化するためには、補正係数Rshおよび補正係数Raを「0」に初期化すればよい。
【0136】
図13はR初期化処理のフローチャートである。
【0137】
本処理は、図3のステップ308で起動されるMPU114のプログラムルーチンである。すなわち、本処理は、車両が進んだ距離が2mに達する毎に起動される。
【0138】
なお、ナビゲーションシステムの始動直後には、初期化処理として、本処理で用いられる各種変数(ΣL4,cnt)を全て「0」に初期化しておく。
【0139】
図13に示すように、本処理では、まず、RAMに保存されている走行距離Lの積算値ΣL4に、2mを加算する(ステップ1301)。
【0140】
続いて、スイッチ117が押下されたか否かを判定し(ステップ1302)、押下されていない場合は、今回の処理を終了する。一方、スイッチ117が押下されている場合は、積算値ΣL4が3kmに達しているか否かを判定する(ステップ1303)。
【0141】
なお、スイッチ117が押下されているということは、ユーザが、現在位置Bの修正後の位置を指定していることを意味しているので、このとき、指定された位置に基づいて、現在位置Bおよびマーク20を修正する。
【0142】
積算値ΣL4が3kmに達している場合は、積算値ΣL4およびカウンタcntを「0」に初期化してから(ステップ1307)、今回の処理を終了する。
【0143】
一方、積算値ΣL4が3kmに達していない場合は、RAMに保存されているカウンタcntのカウント値に「1」を加算し(ステップ1304)、加算した結果のカウント値が「5」に達しているか否かを判定する(ステップ1305)。カウンタcntのカウント値が「5」に達していない場合は、今回の処理を終了する。
【0144】
一方、カウンタcntのカウント値が「5」に達している場合は、補正係数Rshおよび補正係数Raを「0」に初期化する(ステップ1306)。このとき、さらに、上述した第1のRsh変更処理,第2のRsh変更処理,Ra変更処理で用いられる、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ,Dx、および、フラグfも「0」に初期化して、図12に示したa地点に車両が存在する状態になるようにする。
【0145】
最後に、積算値ΣL4およびカウンタcntを「0」に初期化してから(ステップ1307)、今回の処理を終了する。
【0146】
なお、図13に示した例では、走行距離Lの積算値ΣL4が3kmに達する前に、スイッチ117が押下された回数が5回に達した場合に、補正係数Rshおよび補正係数Raを「0」に初期化することにより、走行距離係数Rを初期値R0に初期化しているが、スイッチ117が押下される毎に、走行距離係数Rを初期値R0に初期化するようにしてもよい。
【0147】
また、本実施例では、ユーザがスイッチ117を押下することで、走行距離係数Rを初期値R0に初期化することができるようにしているが、図14に示すように、GPS衛星から発信された信号を用いて車両の現在位置を測定するGPS受信装置118を設け、GPS受信装置118が測定した現在位置と図4のステップ408で修正した現在位置Bとの差に応じて、走行距離係数Rを初期値R0に初期化するようにしてもよい。
【0148】
このようにする場合は、R初期化処理は、図15に示すようになる。
【0149】
なお、ナビゲーションシステムの始動直後には、初期化処理として、本処理で用いられる各種変数(ΣL4,cnt)を全て「0」に初期化しておく。
【0150】
図15に示すように、本処理では、まず、RAMに保存されている走行距離Lの積算値ΣL4に、2mを加算する(ステップ1501)。
【0151】
続いて、GPS受信装置118が測定した現在位置CおよびRAMに保存されている現在位置Bを読み込み(ステップ1502)、読み込んだ現在位置Cと現在位置Bとの差δを求める(ステップ1503)。
【0152】
続いて、求めた差δがしきい値S以上であるか否かを調べ(ステップ1504)、しきい値S未満である場合は、今回の処理を終了する。
【0153】
一方、求めた差δがしきい値S以上である場合は、積算値ΣL4が3kmに達しているか否かを判定し(ステップ1505)、達している場合は、積算値ΣL4およびカウンタcntを「0」に初期化してから(ステップ1509)、今回の処理を終了する。
【0154】
なお、求めた差δがしきい値S以上であるということは、現在位置Bと現在位置Cとの誤差が大きいことを意味しているので、このとき、現在位置Bを現在位置Cに修正すると共に、マーク20も修正する。
【0155】
一方、積算値ΣL4が3kmに達していない場合は、RAMに保存されているカウンタcntのカウント値に「1」を加算し(ステップ1506)、加算した結果のカウント値が「5」に達しているか否かを判定する(ステップ1507)。カウンタcntのカウント値が「5」に達していない場合は、今回の処理を終了する。
【0156】
一方、カウンタcntのカウント値が「5」に達している場合は、補正係数Rshおよび補正係数Raを「0」に初期化する(ステップ1508)。このとき、さらに、上述した第1のRsh変更処理,第2のRsh変更処理,Ra変更処理で用いられる、各変数ΣA,Σ20θ,Σφ,Rsh,Σθ,Dx、および、フラグfも「0」に初期化して、図12に示したa地点に車両が存在する状態になるようにする。
【0157】
最後に、積算値ΣL4およびカウンタcntを「0」に初期化してから(ステップ1509)、今回の処理を終了する。
【0158】
なお、図15に示した例では、走行距離Lの積算値ΣL4が3kmに達する前に、現在位置Cと現在位置Bとの差δがしきい値S以上となった回数が5回に達した場合に、補正係数Rshおよび補正係数Raを「0」に初期化することにより、走行距離係数Rを初期値R0に初期化しているが、現在位置Cと現在位置Bとの差δがしきい値S以上となる毎に、走行距離係数Rを初期値R0に初期化するようにしてもよい。
【0159】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、車両の走行の伴って補正されている、走行距離を求めるために用いられる走行距離係数を、初期値に戻すことが可能な現在位置算出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の現在位置算出装置を適用したナビゲーションシステムの構成を示すブロック図。
【図2】ディスプレイの表示例を示す説明図。
【図3】本実施例における進行方向・走行距離算出処理のフローチャート。
【図4】本実施例における現在位置算出処理のフローチャート。
【図5】本実施例における表示処理のフローチャート。
【図6】道路の表現形式を示す説明図。
【図7】本実施例における第1のRsh補正処理のフローチャート。
【図8】本実施例における第2のRsh補正処理のフローチャート。
【図9】本実施例におけるRa補正処理のフローチャート。
【図10】本実施例において判定する道路車両方位差を示す説明図。
【図11】本実施例において算出する変数Taの正負の決定の仕方を示す説明図。
【図12】補正係数を変更する処理の説明に用いる道路を表す説明図。
【図13】本実施例におけるR初期化処理のフローチャート。
【図14】本実施例の現在位置算出装置を適用したナビゲーションシステムの別の構成を示すブロック図。
【図15】本実施例におけるR初期化処理の別のフローチャート。
【符号の説明】
101…角速度センサ、102…方位センサ、103…車速センサ、104…スイッチ、105…CD−ROM、106…ドライバ、107…ディスプレイ、108…コントローラ、109,110…A/D変換器、111…パラレルI/O、112…DMAコントローラ、113…表示プロセッサ、114…マイクロプロセッサ、115…メモリ、116…カウンタ。

Claims (6)

  1. 車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の現在位置を算出する現在位置算出装置において、
    少なくとも道路を記述した地図を表す地図データを記憶している地図データ記憶手段と、
    車両の進行方向を検出する進行方向検出手段と、
    車輪の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    上記回転速度検出手段が検出した車輪の回転速度、および、設定された走行距離係数に応じて、車両の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
    上記走行距離算出手段が算出した走行距離、上記進行方向検出手段が検出した進行方向、および、上記地図データ記憶手段が記憶している地図データが表す地図に応じて、車両が走行している道路である走行道路と該走行道路上の車両の現在位置とを推定する現在位置推定手段と、
    上記現在位置推定手段が推定した現在位置における走行道路の方向と、上記進行方向検出手段が検出した進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正する走行距離係数補正手段と、
    上記現在位置推定手段が推定した現在位置の修正後の現在位置を含む、現在位置を修正する旨の修正指示を受付ける修正指示受付手段と、
    上記修正指示受付手段が受付けた修正指示に含まれる、修正後の現在位置となるように、上記現在位置推定手段が推定した現在位置を修正する現在位置修正手段と、
    上記修正指示受付手段が受付けた修正指示に応じて、上記走行距離係数を初期化する走行距離係数初期化手段と
    を有することを特徴とする現在位置算出装置。
  2. 請求項1記載の現在位置算出装置において、
    上記走行距離係数初期化手段は、
    上記走行距離算出手段が算出した走行距離が所定の距離に達する前に、上記修正指示受付手段が修正指示を受付けた回数が所定の回数に達した場合に、上記走行距離係数を初期化することを特徴とする現在位置算出装置。
  3. 車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の現在位置を算出する現在位置算出装置において、
    少なくとも道路を記述した地図を表す地図データを記憶している地図データ記憶手段と、
    車両の進行方向を検出する進行方向検出手段と、
    車輪の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    GPS衛星から発信された信号を用いて、車両の現在位置を測定する現在位置測定手段と、
    上記回転速度検出手段が検出した車輪の回転速度、および、設定された走行距離係数に応じて、車両の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
    上記走行距離算出手段が算出した走行距離、上記進行方向検出手段が検出した進行方向、および、上記地図データ記憶手段が記憶している地図データが表す地図に応じて、車両が走行している道路である走行道路と該走行道路上の車両の現在位置とを推定する現在位置推定手段と、
    上記現在位置推定手段が推定した現在位置における走行道路の方向と、上記進行方向検出手段が検出した進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正する走行距離係数補正手段と、
    上記現在位置測定手段が測定した現在位置となるように、上記現在位置推定手段が推定した現在位置を修正する現在位置修正手段と、
    上記現在位置測定手段が測定した現在位置と上記現在位置推定手段が推定した現在位置との差に応じて、上記走行距離係数を初期化する走行距離係数初期化手段と
    を有することを特徴とする現在位置算出装置。
  4. 請求項3記載の現在位置算出装置において、
    上記走行距離係数初期化手段は、
    上記走行距離算出手段が算出した走行距離が第1の所定の距離に達する毎に、上記現在位置測定手段が測定した現在位置と上記現在位置推定手段が推定した現在位置と差が第2の所定の距離より大きくなったか否かを判定し、上記走行距離算出手段が算出した走行距離が上記第2の所定の距離に達する前に、上記2つの現在位置の差が第3の所定の距離より大きくなったと判定した回数が所定の回数に達した場合に、上記走行距離係数を初期化することを特徴とする現在位置算出装置。
  5. 車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の走行距離および進行方向に基づいて、地図中に記述されている道路のうちの、車両が走行している道路である走行道路と該走行道路上の車両の現在位置とを推定する現在位置算
    出装置において、車両の走行距離を求めるための走行距離係数を補正し初期化する方法であって、
    推定した車両の現在位置における走行道路の方向を求め、
    求めた走行道路の方向と車両の進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正し、
    外部から入力される、推定した車両の現在位置を修正する旨の指示に応じて、推定した車両の現在位置を修正すると共に、上記走行距離係数を初期化することを特徴とする走行距離係数補正/初期化方法。
  6. 車輪の回転に伴い移動する車両に搭載されるナビゲーションシステムに備えられ、車両の走行距離および進行方向に基づいて、地図中に記述されている道路のうちの、車両が走行している道路である走行道路と該走行道路上の車両の現在位置とを推定する現在位置算
    出装置において、車両の走行距離を求めるための走行距離係数を補正し初期化する方法であって、
    推定した車両の現在位置における走行道路の方向を求め、
    求めた走行道路の方向と車両の進行方向との差に応じて、上記走行距離係数を補正し、
    GPS衛星から発信された信号を用いて、車両の現在位置を測定し、
    測定した車両の現在位置と推定した車両の現在位置との差に応じて、推定した車両の現在位置を修正すると共に、上記走行距離係数を初期化すること
    を特徴とする走行距離係数補正/初期化方法。
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