JP3758626B2 - 内燃機関の始動方法及び始動装置並びにそれらに用いる始動エネルギの推定方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関を始動させる方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射式の内燃機関を対象とした始動方法として、始動時に膨張行程にある気筒に燃焼を生じさせ、その燃焼で得られるエネルギを利用して内燃機関の始動を試みるとともに、燃焼開始後の機関回転数に基づいて始動の成否を判定し、始動不良と判断されたときにスタータモータを作動させて始動に必要なエネルギを補う方法が提案されている(特許文献1参照)。また、かかる始動方法に関連して、停止時に膨張行程にある気筒に燃料を噴射した後、燃料が十分に気化するのを待ってから点火を行う技術も知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−4985号公報
【特許文献2】
特開2000−4929号公報
【特許文献3】
特開平11−159374号公報
【特許文献4】
特開平7−119594号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の始動方法では、内燃機関を始動させるために与えるべき運動エネルギを燃焼開始前に把握しておらず、燃焼開始後において、始動の成否という観点からエネルギが足りていたか否かを事後的に判断しているに過ぎない。そして、始動失敗時に起動されるスタータモータのエネルギも特に制御されていない。従って、内燃機関の始動に必要な運動エネルギに対して、燃焼やスタータモータによって供給される運動エネルギに過不足が生じ、始動失敗や過回転が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、内燃機関の始動に必要なエネルギを適切に供給して確実な始動と無駄なエネルギ消費の排除とを実現できる内燃機関の始動方法及び始動装置を提供することを目的とする。また、これらの始動方法及び始動装置に適した始動エネルギ推定方法及び装置を提供することも併せて目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の内燃機関の始動方法は、内燃機関の始動に必要な運動エネルギを目標運動エネルギとして予め設定し、所定の始動エネルギ供給手段から、前記目標運動エネルギに応じて制御された運動エネルギを前記内燃機関に供給する内燃機関の始動方法であって、前記始動エネルギ供給手段として、前記内燃機関の気筒内に燃焼を生じさせて運動エネルギを供給する第1のエネルギ供給手段と、該第1のエネルギ供給手段とは異なる方法によって前記運動エネルギを供給する第2のエネルギ供給手段とを設け、前記内燃機関の始動が要求された場合、前記第1のエネルギ供給手段から運動エネルギを供給して前記内燃機関の始動を開始するとともに、前記目標運動エネルギと前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとの差に基づいて前記第2のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを制御することにより、前記内燃機関に対して前記目標運動エネルギを供給して上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
この始動方法によれば、予め目標運動エネルギを設定し、それに合うように始動エネルギ供給手段からエネルギを供給するようにしたので、始動に際して過不足なく運動エネルギを内燃機関に与えて内燃機関を確実に始動させることができる。また、エネルギの無駄な供給を抑え、内燃機関の始動時の過回転を防止して燃費や騒音等の過回転に起因する各種の問題の発生を阻止することができる。
【0008】
また、本発明の始動方法においては、まず第1のエネルギ供給手段から主体的にエネルギが供給され、その差分が第2のエネルギ供給手段から補われる。第2のエネルギ供給手段は差分に相当するエネルギを与えられる程度でよいので、小型化、軽量化に有利であり、これを車両等に搭載する際の制限も緩和され、コストも低減される。
【0009】
本発明において、前記第1のエネルギ供給手段は、前記内燃機関の気筒内に燃焼を生じさせて運動エネルギを供給する。第2のエネルギ供給手段は適宜に選択してよい。
【0010】
そして、燃焼に基づく運動エネルギを利用する場合には、内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて、前記第1のエネルギ供給手段が生じさせる燃焼エネルギを演算し、該燃焼エネルギの演算結果に基づいて前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを推定することができる(請求項2)。内燃機関において発生する燃焼エネルギは燃料混合気の状態方程式を利用してこれを算出することができる。また、内燃機関の機械的構成は予め判っているので、内燃機関にて発生する燃焼エネルギが与えられたならば、これを入力エネルギとして内燃機関にどのような挙動が発生するかは力学的に解析することができる。そして、内燃機関の挙動が判れば、その内燃機関に与えられた運動エネルギも力学的な演算によって推定することができる。このようにして運動エネルギを推定することにより、内燃機関に供給する運動エネルギを目標運動エネルギに対して正確に制御することができる。なお、前記燃焼エネルギから前記内燃機関の運動に伴う機械的損失によって消費されるエネルギを除いた値を前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとして推定することができる(請求項3)。機械的損失は、摩擦による損失に代表されるように、内燃機関の機械的構成やその挙動に応じて特定することができる。
【0011】
また、第1のエネルギ供給手段として燃焼に基づく運動エネルギを利用する場合には、前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別し、前記第1のエネルギ供給手段により、前記膨張行程にある気筒から順次燃焼を生じさせてもよい(請求項4)。これにより、膨張行程にある気筒を始めとして、内燃機関の点火順序に従って各気筒に燃焼が順次生起されて燃焼に基づく運動エネルギが内燃機関に次々に与えられ、第2のエネルギ供給手段から与えられる運動エネルギを受けながら内燃機関が完爆状態へと円滑に移行する。
【0012】
本発明の始動方法において、内燃機関の燃焼に基づく燃焼エネルギを演算する場合には、前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別し、前記膨張行程にある気筒に対して前記内燃機関の停止中に燃料を噴射し、その燃料の噴射時期から当該気筒内で燃焼が開始されるまでの燃料混合気の拡散状態を考慮して前記燃焼エネルギの演算値を変化させることが望ましい(請求項5)。停止中に噴射された燃料の混合気は時間の経過とともに燃焼室外へ徐々に拡散し、拡散が進行するほど燃焼で得られるエネルギが減少する。従って、燃料噴射から燃焼開始までの拡散状態を考慮して燃焼エネルギを演算することにより燃焼エネルギをより正確に求めることができる。拡散状態は例えば燃料噴射時からの経過時間からこれを特定することができる。
【0013】
本発明の始動方法においては、前記第2のエネルギ供給手段として電動モータを使用してもよい(請求項6)。電動モータを利用すれば比較的容易にエネルギを制御することができる。
【0014】
本発明の内燃機関の始動装置は、内燃機関を始動させるための運動エネルギを供給する始動エネルギ供給手段と、前記内燃機関の始動時に前記始動エネルギ供給手段から前記内燃機関に与える運動エネルギを、当該内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして予め設定された目標運動エネルギに応じて制御するエネルギ制御手段とを備えた内燃機関の始動装置であって、前記始動エネルギ供給手段が、前記内燃機関の気筒内に燃焼を生じさせて運動エネルギを供給する第1のエネルギ供給手段と、該第1のエネルギ供給手段とは異なる方法によって前記運動エネルギを供給する第2のエネルギ供給手段とを備え、前記エネルギ制御手段は、前記内燃機関の始動要求に応答して前記第1のエネルギ供給手段から運動エネルギを供給して前記内燃機関の始動を開始させるとともに、前記目標運動エネルギと、前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとの差に基づいて前記第2のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを制御することにより、前記始動エネルギ供給手段から前記内燃機関に前記目標運動エネルギを供給させて、上述した課題を解決する(請求項7)。
【0015】
この始動装置によれば、目標運動エネルギに応じて始動エネルギ供給手段からのエネルギを制御することにより、本発明の始動方法と同様に、始動に際して過不足なく運動エネルギを内燃機関に与えて内燃機関を確実に始動させることができる。また、エネルギの無駄な供給を抑え、内燃機関の始動時の過回転を防止して燃費や騒音等の過回転に起因する各種の問題の発生を阻止することができる。また、第1のエネルギ供給手段から主体的にエネルギが供給され、その差分が第2のエネルギ供給手段から補われるため、第2のエネルギ供給手段は差分に相当するエネルギを与えられる程度でよい。従って、小型化、軽量化に有利であり、これを車両等に搭載する際の制限も緩和され、コストも低減される。
【0017】
本発明の内燃機関の始動装置は、上述した本発明の始動方法の好ましい態様を実現するために以下のような態様を備えることができる。すなわち、本発明の始動装置においては、前記エネルギ制御手段は、前記内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて前記第1のエネルギ供給手段が生じさせる燃焼エネルギを演算する手段と、前記燃焼エネルギの演算結果に基づいて前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを推定する手段とを備えてもよい(請求項8)。前記運動エネルギを推定する手段は、前記燃焼エネルギから前記内燃機関の運動に伴う機械的損失によって消費されるエネルギを除いた値を前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとして推定してもよい(請求項9)。
【0018】
また、本発明の始動装置においては、前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別する手段を備え、前記第1のエネルギ供給手段は、前記膨張行程にある気筒から順次燃焼を生じさせてもよい(請求項10)。前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別する手段と、前記膨張行程にある気筒内へ燃料を噴射する手段とを具備し、前記エネルギ制御手段は、前記膨張行程にある気筒への燃料の噴射時期から当該気筒内で燃焼が開始されるまでの燃料混合気の拡散状態を考慮して前記燃焼エネルギの演算値を変化させてもよい(請求項11)。前記第2のエネルギ供給手段として、電動モータが使用されてもよい(請求項12)。
【0019】
さらに、本発明の内燃機関の始動方法は、内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる内燃機関の始動方法であって、前記燃料が噴射された気筒内の燃料混合気の状態に基づいて前記燃料によって得られる燃焼エネルギを演算する工程と、前記演算された燃焼エネルギに基づいて、前記燃焼によって前記内燃機関に与えられる運動エネルギを推定する工程と、前記燃焼エネルギを利用した内燃機関の始動の開始後に、前記内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして予め与えられる目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分に応じたエネルギを、燃焼とは異なる方法によって運動エネルギを供給するエネルギ供給手段により供給する工程と、を備えたものとして具現化されてもよい(請求項13)。
【0020】
また、本発明の内燃機関の始動装置は、内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる内燃機関の始動装置であって、前記内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして設定された目標運動エネルギを記憶する手段と、前記燃料が噴射された気筒内の燃料混合気の状態に基づいて前記燃料によって得られる燃焼エネルギを演算する手段と、前記演算された燃焼エネルギに基づいて、前記燃焼によって前記内燃機関に与えられる運動エネルギを推定する手段と、前記燃焼エネルギを利用した内燃機関の始動の開始後に、前記記憶された目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分に応じたエネルギを、燃焼とは異なる方法によって運動エネルギを供給するエネルギ供給手段により供給する手段と、を備えたものとして具現化されてもよい(請求項14)。
【0021】
これらの形態によれば、内燃機関の燃焼によって与えられる運動エネルギの目標運動エネルギに対する差分をスタータモータ等の別のエネルギ供給手段から補うことにより、内燃機関に始動用の運動エネルギを過不足なく与えて内燃機関を確実に始動させ、かつ内燃機関の始動時の過回転を防止して燃費や騒音等の過回転に起因する各種の問題の発生を阻止することができる。
【0022】
さらに、本発明の始動エネルギ推定方法は、内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる場合に適用される始動エネルギ推定方法であって、前記内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて前記燃焼エネルギを演算し、前記燃焼エネルギの演算結果に基づいて前記内燃機関の燃焼によって得られる運動エネルギを推定し、前記内燃機関の始動に必要な運動エネルギとして予め設定された目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分を、前記内燃機関の燃焼以外の手段によって供給されるべき運動エネルギとして決定するものである(請求項15)。
【0023】
また、本発明の始動エネルギ推定装置は、内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる内燃機関の始動装置に使用される始動エネルギ推定装置であって、前記内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして設定された目標運動エネルギを記憶する手段と、前記内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて前記燃焼エネルギを演算する手段と、前記燃焼エネルギの演算結果に基づいて、前記内燃機関の燃焼によって得られる運動エネルギを推定する手段と、前記目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分を、前記内燃機関の燃焼以外の手段によって供給されるべき運動エネルギとして決定する手段と、を備えたものである(請求項16)。
【0024】
これらの推定方法及び推定装置を利用することにより、内燃機関の燃焼によって得られる始動用の運動エネルギの目標運動エネルギに対する差分を特定し、スタータモータ等のエネルギ供給手段から、過不足なくエネルギを与えて本発明の始動方法又は始動装置を実現することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態に係る始動装置とこれが適用される内燃機関とを示している。図1において、内燃機関1は、例えば自動車に搭載される4サイクルエンジンとして構成されており、複数のシリンダ(気筒)2を含んでいる。なお、図1では単一のシリンダ2のみを示すが、他のシリンダ2の構成も同じである。以下の説明では、内燃機関1をエンジン1と表現することがある。
【0026】
各シリンダ2におけるピストン3の位相はシリンダ2の個数及びレイアウトに応じて互いにずらされている。例えば、4つのシリンダ2が一方向に並べられた直列4気筒エンジンであれば、ピストン3の位相はクランク角にして180°ずつずらされている。これにより、4つのシリンダ2のうちいずれか一つのシリンダ2は必ず膨張行程に該当する。また、エンジン1は、燃料噴射弁4からシリンダ2内の燃焼室5に直接燃料を噴射し、その噴射された燃料に基づく混合気に点火プラグ6から着火する筒内噴射式の火花点火内燃機関として構成されている。燃料噴射弁4から噴射される燃料にはガソリンが好適に用いられるが、他の燃料でもよい。さらに、エンジン1には、燃焼室5と吸気通路7及び排気通路8との間をそれぞれ開閉する吸気バルブ9及び排気バルブ10が設けられるとともに、各バルブ9,10を駆動するカム11,12、吸気通路7からの吸気量を調整するスロットルバルブ13、ピストン3の往復運動をクランク軸14に回転運動として伝達するコンロッド15及びクランクアーム16が設けられる。これらの構成は周知の内燃機関と同様でよい。
【0027】
エンジン1には、これを始動させるためのエネルギを供給する始動エネルギ供給手段として、シリンダ2内に燃焼を生じさせて始動用の運動エネルギを供給する手段(第1のエネルギ供給手段)が設けられている。この燃焼に基づくエネルギ供給手段は、エンジンコントロールユニット(ECU)20が図2及び図3に示したエンジン休止制御ルーチンを実行することにより実現される。また、エンジン1には、別のエネルギ供給手段(第2のエネルギ供給手段)としてスタータモータ17が設けられている。スタータモータ17は、減速歯車機構18を介してクランク軸14を回転させる周知の電動モータである。なお、スタータモータ17は、供給する電流又は電圧の制御により、エンジン1に与える運動エネルギを変更可能なものが用いられる。例えば、PWM制御により運動エネルギを制御可能な電動モータをスタータモータ17として用いることができる。
【0028】
ECU20はマイクロプロセッサ、及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺装置を含んだコンピュータとして構成され、ROMに記録されたプログラムに従ってエンジン1の運転状態を制御するために必要な各種の処理を実行する。一例として、ECU20は、吸気通路7の圧力に対応した信号を出力する吸気圧センサ21や、排気通路8の空燃比に対応した信号を出力する空燃比センサ22の出力信号を参照して、所定の空燃比が得られるように燃料噴射弁4の燃料噴射量を制御する。ECU20が参照するセンサとしては、上記のセンサ21,22の他にも種々設けられるが、特に図2及び図3の処理に関連して参照されるセンサとしては、燃焼室5の圧力に応じた信号を出力する圧力センサ23と、燃焼室5の温度に応じた信号を出力する温度センサ24と、クランク軸14の位相(クランク角)に応じた信号を出力するクランク角センサ25と、吸気側のカム11の位相(カム角)に応じた信号を出力するカム角センサ26とが設けられている。
【0029】
次に、図2及び図3に示すエンジン休止制御ルーチンを説明する。この休止制御ルーチンは、エンジン1に関する所定の停止条件が満たされたときにエンジン1の燃焼を一時的に停止させ、所定の再起動条件が満たされたときにエンジン1を再起動させるためにECU20が実行する処理であり、その再起動時の手順に関して本発明の始動方法が適用されている。なお、図2及び図3のエンジン休止制御ルーチンは、ECU20が実行する各種の処理と並行して実行される。エンジン1の停止条件及び再起動条件は、図2及び図3のルーチンとは異なるルーチンによってその成否が監視されており、停止条件が満たされると所定の停止要求が発せられ、再起動条件が満たされると所定の再起動要求が発せられる。停止条件は例えばエンジン1がアイドリング状態にあるときに肯定され、再起動条件はそのアイドリング状態から車両の発進に関連する操作、例えばアクセルペダルやクラッチペダルの踏み込み操作、変速機の操作等があったときに肯定される。つまり、図2及び図3のエンジン休止制御ルーチンは、車両の停止時にエンジン1を停止させ、発進前にエンジン1を再起動させる、いわゆるアイドリングストップを実現するための制御として位置付けられるものである。
【0030】
図2のエンジン休止制御ルーチンにおいて、ECU20はまずステップS1でエンジン1の停止要求があるか否かを判断する。要求がなければステップS20でエンジン1の通常の制御を指示してステップS1に戻り、エンジン停止要求を待つ。エンジン停止要求があるとステップS2へ進み、エンジン1を停止させるための制御を実行する。エンジン1が停止するとステップS3へ進み、クランク角センサ25及びカム角センサ26のそれぞれの出力信号を参照してクランク角θ及び吸気側のカム角φをそれぞれ検出し、それらの検出結果から膨張行程にあるシリンダ2を判別する。
【0031】
続くステップS4では、圧力センサ23及び温度センサ24の出力信号を参照して燃焼室5の圧力(燃焼室圧力)P、及び燃焼室5の温度(燃焼室温度)Tを取得する。また、クランク角θから燃焼室5の容積(燃焼室容積)V(θ)を取得する。燃焼室5の容積は、ピストン3の位置、シリンダ2の直径及びピストン3の頂面形状等に応じて定まるが、ピストン3の位置以外の値はクランク角θに拘わりなく一定であり、ピストン3の位置はクランク角θに応じて一義的に定まる。従って、燃焼室5の容積はクランク角θを変数とする関数で表現することができ、その関数にクランク角センサ25の出力信号に基づいて取得したクランク角θを代入すれば燃焼室容積V(θ)を求めることができる。
【0032】
その後、ステップS5で膨張行程にあるシリンダ2に吸入されている空気量Gaを次式(1)により算出する。
【0033】
【数1】
Ga=a・P・V(θ)/T ……(1)
但し、aは係数である。また、上記の通り、P、Tはそれぞれ燃焼室圧力及び燃焼室温度である。
【0034】
次のステップS6では、吸入空気量Gaに所定の係数bを乗じて再起動用燃料噴射量Gf(=b・Ga)を算出する。そして、ステップS7において、算出された量Gfの燃料を、ステップS3で判別した膨張行程にあるシリンダ2内に再起動用燃料として噴射する。この後、ステップS8で点火インターバルt0を計時するためのカウンタをスタートさせる。なお、ステップS6で使用される係数bは始動時における空燃比の目標値に従って設定すればよい。
【0035】
続くステップS9では、圧力センサ23及び温度センサ24の出力信号を参照して燃焼室圧力P及び燃焼室温度Tを取得し、クランク角センサ25の出力信号を参照して燃焼室容積V(θ)を取得する。これらの値は、燃焼室5における燃料混合気の状態を示す物理量である。
【0036】
また、ステップS9においては、点火インターバルt0の計数値に基づいて混合気拡散係数c(t0)を取得する。図4に示すように、混合気拡散係数c(t0)は点火インターバルt0を変数とする関数として与えられるものであり、燃料噴射時(t0=0)から所定の時間Aが経過した時点でピーク値1をとり、その後は1から0に向かって徐々に値が低下する。混合気拡散係数c(t0)は、燃料混合気が時間の経過とともに燃焼室5外へ徐々に拡散し、その結果として、燃焼エネルギ(燃焼によって得られるエネルギ)が減少するため、これを燃焼エネルギの演算において反映させるために設けられた係数である。所定時間Aまでは係数c(t0)が増加するのは、噴射された燃料が気化して燃料混合気が形成されるまでに一定の遅れが存在するためである。但し、時間Aは一般には数十m秒、最大でも1秒以内である。
【0037】
点火インターバルt0と混合気拡散係数c(t0)との関係は予めシミュレーション又は実験にて求め、マップ又は関数としてECU20のROMに記録しておくことができる。ステップS9ではそのROMに記録されたマップ又は関数を利用して、点火インターバルt0に対応する混合気拡散係数c(t0)を取得する。
【0038】
次のステップS10では、ステップS7で噴射した燃料に基づく燃焼エネルギEc(t0)を次式(2)により算出する。
【0039】
【数2】
Ec(t0)=c(t0)・P・V(θ)/T ……(2)
続くステップS11では、燃焼エネルギEc(t0)に基づいてクランク軸14に与えられる運動エネルギEa(t1)を推定する。推定手法については後述する。なお、t1は点火時からの経過時間であり、運動エネルギEa(t1)は点火時からの経過時間の関数として運動エネルギEaを表していることを示す。運動エネルギEa(t1)の推定後はステップS12へ進み、エンジン1の再起動が要求されたか否かを判断する。そして、再起動が要求されていないときはステップS9へ戻り、燃料混合気の状態の判別と、その判別結果に基づく燃焼エネルギEc(t0)の演算と、それに基づく運動エネルギEa(t1)の推定とを繰り返す。
【0040】
ここで、運動エネルギEa(t1)の推定について説明する。任意の期間に発生する燃焼エネルギをEc、クランク軸14の回転運動エネルギをEaとすれば両者の間には次の関係がある。
【0041】
【数3】
Ec=Ef+Ea ……(3)
但し、Efはエンジン1の動作に伴う機械的損失、例えば摩擦による損失によって消費されるエネルギであり、クランク軸14の回転数(回転速度)Neの関数として特定される。回転数Neと損失エネルギEfとの関係は予めシミュレーション又は実験により求めておくことができる。また、燃焼エネルギEcと、そのエネルギEcに基づくクランク軸14の挙動との関係もシミュレーションによって特定でき、そのクランク軸14の挙動が判れば燃焼エネルギEcとクランク軸14の回転数Neとの関係も特定することができる。従って、点火時における燃焼エネルギEc(t0)が与えられたならば、これに対応する損失エネルギEfを特定し、その特定したエネルギEfを燃焼エネルギEc(t0)から減算することにより、最初の燃焼に基づいてクランク軸14に与えられる運動エネルギEaを求めることができる。
【0042】
また、内燃機関1の始動が開始された後は、シリンダ2の点火順序に従って他のシリンダ2にも順次燃焼が生起される。従って、2番目以降の燃焼によって得られるエネルギも同様の手法、つまり各シリンダ2における燃料混合気の状態を示す物理量P,V(θ)、Tによって各シリンダ2における燃焼エネルギEcを特定し(但し、この場合には連続した燃焼となるので、混合気拡散係数を考慮する必要はない。)、各回の燃焼で得られる燃焼エネルギEcに対応したクランク軸14の運動エネルギEaを求めることができる。そして、各回の燃焼に基づく運動エネルギEaを点火時からの経過時間t1に対応付けて合計することにより、エンジン1の燃焼によってもたらされるクランク軸14の運動エネルギEaを経過時間t1と関連付けた関数Ea(t1)として得ることができる。
【0043】
図5は上記に従って運動エネルギEa(t1)を推定した例を示し、図中の太線が最初の燃焼エネルギEc(t0)に基づく運動エネルギの推定値に対応している。この図から明らかなように、シリンダ2で燃焼が生じる毎に燃焼エネルギが追加されて運動エネルギの推定値Ea(t1)は増加するが、燃焼の間では機械的損失のために運動エネルギEa(t1)が低下する。一方、エンジン1を円滑に始動させるためには、図5に示したように点火時から連続的に増加し、所定レベルで平衡状態に達するような目標運動エネルギEt(t1)を必要とする。目標運動エネルギEt(t1)はエンジン1の機械的特性等によって定まり、予めシミュレーションや実験によってこれを求めておくことができる。一般に、運動エネルギの推定値Ea(t1)は、機械的損失等のために目標運動エネルギEt(t1)よりも相対的に小さく、従って、仮にエンジン1の燃焼のみで始動を試みた場合には図5のハッチング領域に相当するだけ運動エネルギが不足する。
【0044】
そこで、図2及び図3のエンジン休止制御ルーチンでは、図5のハッチング領域に相当するエネルギをスタータモータ17から補うことにより、目標運動エネルギEt(t1)を得るようにしている。
【0045】
すなわち、図2のステップS12においてエンジンの再起動が要求されていた場合、ECU20は図3のステップS13へと処理を進め、点火インターバルカウンタをリセットするとともに点火カウンタによる経過時間t1の計時を開始する。そして、ステップS14で膨張行程にあるシリンダ2の燃料混合気に対する点火を実行し、ステップS15で次式により点火カウンタの経過時間t1に応じたスタートアシストエネルギEs(t1)を算出する。
【0046】
【数4】
Es(t1)=Et(t1)−Ea(t1) ……(4)
つまり、経過時間t1における目標運動エネルギEt(t1)に対する運動エネルギEa(t1)の差分をスタートアシストエネルギEs(t1)として求める。なお、目標運動エネルギEt(t1)はECU20のROMに予め記憶され、必要に応じて参照される。
【0047】
続くステップS16では、スタータモータ17からクランク軸14に対してスタートアシストエネルギEs(t1)を供給できるようにスタータモータ17を駆動制御する。そして、ステップS17でエンジン1が継続して燃焼を続けられる完爆状態が得られたか否かを判断し、完爆状態でなければステップS15へ戻ってスタートアシストエネルギEs(t1)の算出以下の処理を繰り返す。完爆状態か否かは、例えばクランク角センサ25が検出するクランク角の変動によって判別することができる。そして、完爆状態が得られるとステップS18へ進んで点火カウンタをリセットし、その後にステップS1へ戻る。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、エンジン1が始動する際に必要な運動エネルギが目標運動エネルギEt(t1)として予め設定され、その目標運動エネルギEt(t1)と燃焼によって得られる運動エネルギEa(t1)との差分に相当するスタートアシストエネルギEs(t1)がスタータモータ17からエンジン1に供給される。従って、エンジン1には目標運動エネルギEt(t1)が過不足なく供給され、エンジン1を無駄なく円滑に始動させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、予め目標運動エネルギEt(t1)を把握しており、しかも、燃焼によって得られる運動エネルギについてもその範囲が予想できるため、スタータモータ17から与えるべきエネルギについてもこれを事前に大まかに把握することができる。従って、不必要に大きなスタータモータ17を搭載する必要がなく、スタータモータ17の搭載に関する制限が緩和され、かつスタータモータ17に関するコストも低減される。つまり、従来の方法では始動に必要なエネルギを何ら把握せず、結果的にエネルギが不足するときにスタータで補なうだけなので、どの程度のエネルギをスタータから補うべきかが把握されておらず、スタータに余裕を見込んで大出力のものを用いる必要があった。これに比して本実施形態ではスタータモータ17の適正なサイズが予想できるので、従来と比較してスタータモータの小型軽量化を図ることができる。
【0050】
以上の実施形態では、ECU20が、エネルギ制御手段、燃焼エネルギを演算する手段、運動エネルギを推定する手段、及び膨張行程にある気筒の判別手段として機能する。また、ECU20が膨張行程にあるシリンダ2に対応する燃料噴射弁4に対して燃料噴射を指示することにより、燃料を噴射する手段が実現される。さらに、ECU20のROMが、目標運動エネルギを記憶する手段として機能する。
【0051】
目標運動エネルギは様々な観点からこれを定めることができる。一例として、エンジン1の完爆状態が得られる理論的な最小運動エネルギとして目標運動エネルギを定めることができる。この場合には始動時に消費するエネルギを最小限に抑えることができるので、アイドリングストップを実行する場合のようにエンジン1の停止及び再起動が頻繁に繰り返されるような場合に好適である。
【0052】
但し、本発明の始動方法はアイドリングストップ時における再起動に限定されず、例えばイグニッションキーのオン操作に対応した始動時にもこれを適用できる。なお、目標運動エネルギを理論上の最小値に設定した場合には、乗員がエンジン1の始動に気付かないほど始動時の騒音や振動が小さくなり、そのためにエンジン1の始動に失敗したものと誤解するおそれがある。このような懸念があるときは、目標運動エネルギを理論上の最小値よりも意図的に大きく設定し、乗員がエンジン1の始動を確実に感じ取れるようにしてもよい。
【0053】
その他にも、内燃機関と電動モータとを併用するハイブリッド車両におけるエンジンの再起動時等、内燃機関を始動させるあらゆる場合に本発明は適用できる。
【0054】
上記の実施形態では第2のエネルギ供給手段として電動モータを利用したが、本発明ではこれに限らず、種々の装置を第2のエネルギ供給手段として利用してよい。例えば、第2のエネルギ供給手段として、始動制御の対象となる内燃機関とは別の内燃機関を利用してもよいし、空気圧等の流体の圧力によってエネルギを蓄え、始動時にその蓄えたエネルギを放出する装置を利用してもよい。
【0055】
上記の実施形態では、燃焼室内の燃料混合気の状態を表す物理量として燃焼室圧力P及び燃焼室温度Tをそれらに対応するセンサ23,24によって直接的に検出しているが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、燃焼室圧力や燃焼室温度に相関する物理量(エンジン冷却水の水温やエンジン停止時からの経過時間)を検出し、それらの物理量からマップや関数を利用して燃料混合気の状態を特定してもよい。
【0056】
さらに、上記では、第1のエネルギ供給手段から供給する運動エネルギが目標運動エネルギに対して不足する場合について説明したが、第1のエネルギ供給手段から供給するエネルギが目標運動エネルギを超えているときに第2のエネルギ供給手段から負の運動エネルギを供給して(つまり、クランク軸の回転に対する抵抗を与えて)、エネルギの合計値を目標運動エネルギに合わせる場合も本発明の範囲に含まれる。
【0058】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の始動方法及び始動装置によれば、予め目標運動エネルギを設定し、それに合うようにエネルギを供給するようにしたので、始動に際して過不足なく運動エネルギを内燃機関に与えて内燃機関を確実に始動させ、かつ無駄なエネルギ消費を排除して内燃機関の始動時の過回転を防止し、燃費や騒音等の過回転に起因する各種の問題の発生を阻止することができる。また、第1のエネルギ供給手段から主体的にエネルギが供給され、その差分が第2のエネルギ供給手段から補われる。第2のエネルギ供給手段は差分に相当するエネルギを与えられる程度でよいので、小型化、軽量化に有利であり、これを車両等に搭載する際の制限も緩和され、コストも低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る始動装置とこれが適用される内燃機関との構成を示す図。
【図2】図1のECUが実行するエンジン休止制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図3】図2に続くフローチャート。
【図4】図2の処理で参照される混合気拡散係数を示す図。
【図5】目標運動エネルギと運動エネルギの推定値との関係を示す図。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 シリンダ(気筒)
3 ピストン
17 スタータモータ(第2のエネルギ供給手段)
20 ECU
21 吸気圧センサ
22 空燃比センサ
23 圧力センサ
24 温度センサ
25 クランク角センサ
26 カム角センサ
Claims (16)
- 内燃機関の始動に必要な運動エネルギを目標運動エネルギとして予め設定し、所定の始動エネルギ供給手段から、前記目標運動エネルギに応じて制御された運動エネルギを前記内燃機関に供給する内燃機関の始動方法であって、
前記始動エネルギ供給手段として、前記内燃機関の気筒内に燃焼を生じさせて運動エネルギを供給する第1のエネルギ供給手段と、該第1のエネルギ供給手段とは異なる方法によって前記運動エネルギを供給する第2のエネルギ供給手段とを設け、前記内燃機関の始動が要求された場合、前記第1のエネルギ供給手段から運動エネルギを供給して前記内燃機関の始動を開始するとともに、前記目標運動エネルギと前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとの差に基づいて前記第2のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを制御することにより、前記内燃機関に対して前記目標運動エネルギを供給することを特徴とする内燃機関の始動方法。 - 内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて、前記第1のエネルギ供給手段が生じさせる燃焼エネルギを演算し、該燃焼エネルギの演算結果に基づいて前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを推定することを特徴とする請求項1に記載の始動方法。
- 前記燃焼エネルギから前記内燃機関の運動に伴う機械的損失によって消費されるエネルギを除いた値を前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとして推定することを特徴とする請求項2に記載の始動方法。
- 前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別し、前記第1のエネルギ供給手段により、前記膨張行程にある気筒から順次燃焼を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の始動方法。
- 前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別し、前記膨張行程にある気筒に対して前記内燃機関の停止中に燃料を噴射し、その燃料の噴射時期から当該気筒内で燃焼が開始されるまでの燃料混合気の拡散状態を考慮して前記燃焼エネルギの演算値を変化させることを特徴とする請求項2に記載の始動方法。
- 前記第2のエネルギ供給手段として、電動モータを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の始動方法。
- 内燃機関を始動させるための運動エネルギを供給する始動エネルギ供給手段と、
前記内燃機関の始動時に前記始動エネルギ供給手段から前記内燃機関に与える運動エネルギを、当該内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして予め設定された目標運動エネルギに応じて制御するエネルギ制御手段と、
を備えた内燃機関の始動装置であって、
前記始動エネルギ供給手段が、前記内燃機関の気筒内に燃焼を生じさせて運動エネルギを供給する第1のエネルギ供給手段と、該第1のエネルギ供給手段とは異なる方法によって前記運動エネルギを供給する第2のエネルギ供給手段とを備え、前記エネルギ制御手段は、前記内燃機関の始動要求に応答して前記第1のエネルギ供給手段から運動エネルギを供給して前記内燃機関の始動を開始させるとともに、前記目標運動エネルギと、前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとの差に基づいて前記第2のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを制御することにより、前記始動エネルギ供給手段から前記内燃機関に前記目標運動エネルギを供給させることを特徴とする始動装置。 - 前記エネルギ制御手段は、前記内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて前記第1のエネルギ供給手段が生じさせる燃焼エネルギを演算する手段と、前記燃焼エネルギの演算結果に基づいて前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギを推定する手段とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の始動装置。
- 前記運動エネルギを推定する手段は、前記燃焼エネルギから前記内燃機関の運動に伴う機械的損失によって消費されるエネルギを除いた値を前記第1のエネルギ供給手段から供給される運動エネルギとして推定することを特徴とする請求項8に記載の始動装置。
- 前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別する手段を備え、前記第1のエネルギ供給手段は、前記膨張行程にある気筒から順次燃焼を生じさせることを特徴とする請求項7に記載の始動装置。
- 前記内燃機関の停止時の状態に基づいて当該停止時に膨張行程にある気筒を判別する手段と、前記膨張行程にある気筒内へ燃料を噴射する手段とを具備し、前記エネルギ制御手段は、前記膨張行程にある気筒への燃料の噴射時期から当該気筒内で燃焼が開始されるまでの燃料混合気の拡散状態を考慮して前記燃焼エネルギの演算値を変化させることを特徴とする請求項8に記載の始動装置。
- 前記第2のエネルギ供給手段として、電動モータが使用されることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の始動装置。
- 内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる内燃機関の始動方法において、
前記燃料が噴射された気筒内の燃料混合気の状態に基づいて前記燃料によって得られる燃焼エネルギを演算する工程と、
前記演算された燃焼エネルギに基づいて、前記燃焼によって前記内燃機関に与えられる運動エネルギを推定する工程と、
前記燃焼エネルギを利用した内燃機関の始動の開始後に、前記内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして予め与えられる目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分に応じたエネルギを、燃焼とは異なる方法によって運動エネルギを供給するエネルギ供給手段により供給する工程と、
を備えることを特徴とする内燃機関の始動方法。 - 内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる内燃機関の始動装置において、
前記内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして設定された目標運動エネルギを記憶する手段と、
前記燃料が噴射された気筒内の燃料混合気の状態に基づいて前記燃料によって得られる燃焼エネルギを演算する手段と、
前記演算された燃焼エネルギに基づいて、前記燃焼によって前記内燃機関に与えられる運動エネルギを推定する手段と、
前記燃焼エネルギを利用した内燃機関の始動の開始後に、前記記憶された目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分に応じたエネルギを、燃焼とは異なる方法によって運動エネルギを供給するエネルギ供給手段により供給する手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の始動装置。 - 内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる場合に適用される始動エネルギ推定方法であって、
前記内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて前記燃焼エネルギを演算し、前記燃焼エネルギの演算結果に基づいて前記内燃機関の燃焼によって得られる運動エネルギを推定し、前記内燃機関の始動に必要な運動エネルギとして予め設定された目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分を、前記内燃機関の燃焼以外の手段によって供給されるべき運動エネルギとして決定することを特徴とする内燃機関の始動エネルギの推定方法。 - 内燃機関の停止中に膨張行程にある気筒内に燃料を噴射し、その燃料の燃焼によって得られる燃焼エネルギを利用して内燃機関を始動させる内燃機関の始動装置に使用される始動エネルギ推定装置であって、
前記内燃機関を始動させるために必要な運動エネルギとして設定された目標運動エネルギを記憶する手段と、
前記内燃機関の気筒内における燃料混合気の状態を表す物理量に基づいて前記燃焼エネルギを演算する手段と、
前記燃焼エネルギの演算結果に基づいて、前記内燃機関の燃焼によって得られる運動エネルギを推定する手段と、
前記目標運動エネルギと、推定された運動エネルギとの差分を、前記内燃機関の燃焼以外の手段によって供給されるべき運動エネルギとして決定する手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の始動エネルギ推定装置。
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