JP3757580B2 - 圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用空調装置等に用いられる圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用空調装置に用いられる圧縮機として、斜板式と称される圧縮機が知られている。この斜板式圧縮機は、例えば、特開昭59−113278号公報に示されるように、シリンダブロックの内部に円筒状の圧縮室を設け、この圧縮室に収容された流体圧縮部材としてのピストンにより被圧縮流体を圧縮するようになっている。
また、斜板式圧縮機はシリンダブロックの圧縮室を閉塞するカバー部材としてのハウジングを備えており、このハウジングとシリンダブロックとの間には、ハウジング内に形成された吸入室から圧縮室に被圧縮流体を吸入する吸入ポートと、ピストンにより圧縮された被圧縮流体をハウジング内に形成された吐出室に吐出する吐出ポートとを有するバルブプレートが介装されている。
また、上述した斜板式圧縮機はバルブプレートとハウジングとの間に金属製の吐出弁形成板を備えており、この吐出弁形成板とハウジングとの間に介装された板状のメタルガスケットにより吐出弁形成板とハウジングとの間を気密にシールしている。
【0003】
ところで、このような圧縮機の吐出弁は、複数の吐出弁が前述の金属製の吐出弁形成板として一体的に形成されているため、吐出ポートから吐出する被圧縮流体の圧力が高い場合には、リード式吐出弁が吐出弁形成板の弾性限度を越えて変形することがある。従って、このような吐出弁の変形等を防止するために、従来の圧縮機では吐出弁を挟んで吐出ポートと対向する側にリテーナを設け、このリテーナで吐出弁の開度を吐出弁形成板の弾性範囲内に規制していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような圧縮機では、吐出弁の開度を規制するリテーナが前述のメタルガスケットとして一体に形成されているが、このメタルガスケットの厚さが極めて薄いため、吐出ポートから吐出した被圧縮流体がリテーナに繰り返し当たると、リテーナが吐出弁から離れる方向に変形し、吐出弁の開度を吐出弁形成板の弾性範囲内に規制できなくなる虞れがあった。
そこで、このようなリテーナの変形を防止する対策として吐出弁形成板とハウジングとの間に介装されたメタルガスケットの厚さを厚くすることが考えられるが、メタルガスケットの厚さを厚くすると、メタルガスケットのシール性が損なわれるという問題があった。
この発明は、このような問題を解決するために成されたもので、シリンダブロックの圧縮室を閉塞するカバー部材と吐出弁形成板との間に設けられたメタルガスケットのシール性を損なうことなくリテーナの変形を防止することのできる圧縮機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明は、圧縮室を有するシリンダブロックと、前記圧縮室に収容された流体圧縮部材と、前記シリンダブロックに接合され、前記流体圧縮部材により圧縮された流体を受け入れる吐出室を有するカバー部材と、前記流体圧縮部材により圧縮された流体を前記吐出室に吐出する吐出ポートを有し、前記カバー部材と前記シリンダブロックとの間に設けられたバルブプレートと、前記吐出ポートを開閉するリード式吐出弁を形成し、前記バルブプレートと前記カバー部材との間に設けられた金属製の吐出弁形成板と、この吐出弁形成板と前記カバー部材との間に設けられ、金属薄板の両面にシール材をコーティングしてなる板状のメタルガスケットと、このメタルガスケットに形成され、前記吐出弁の開度を規制するリテーナとを備えた圧縮機において、前記リテーナの、前記吐出弁形成板を押圧する側に位置する基端部に対応する位置に前記カバー部材の内面から円筒状壁を突出させ、その先端に前記リテーナの基端部の変形を規制する規制部を設けたことを特徴とする。
このように構成すると、吐出ポートから吐出ガスが吐出される際に、リテーナに吐出ガスによる力が作用しても、リテーナの基端部の変形がカバー部材に設けられた規制部により規制され、その変形が防止される。また、変形防止のためにリテーナを構成するメタルガスケットの厚さを厚くする必要がなくなるので、カバー部材と吐出弁形成板との間に設けられるメタルガスケットのシール性を損なうことなくリテーナの変形を防止することができる。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の圧縮機において、前記規制部は、前記リテーナの基端部の上面に略沿った形状に形成されていることを特徴とする。
このように構成すると、吐出ガス吐出時にリテーナが変形して規制されるとしても、リテーナ基端部の上面が規制部に局部的に接触しないので、リテーナの摩耗が抑制される。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の圧縮機において、前記規制部は、前記リテーナの基端部の円弧状と略同一の円弧状に形成されていることを特徴とする。
このように構成すると、吐出時にリテーナが持ち上げれても、リテーナの基端部の上面が規制部と略均等に当接するので、リテーナの摩耗が抑制される。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1、2または3記載の圧縮機において、前記規制部は、前記リテーナの基端部の上面と略同一の円弧に形成されている主表面部と、該主表面部と前記円筒状壁の外周面とを連結する円弧状の中間表面部とから形成されていることを特徴とする。
このように構成すると、リテーナの基端部が規制部に押圧されたときに、リテーナ上面と規制部下面との間に隙間ができるので、メタルガスケットのシール材が劣化しても前記隙間からシール材が吐出室にはみ出すことがなく、またリテーナの不測の変形が防止される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図4を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図2はこの発明の一実施形態に係る圧縮機の断面図であり、同図に示すように、圧縮機1はアルミニウムまたはアルミニウム合金等からなるフロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3を備えている。これらのフロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3は端面同士を突き合わせて接合されており、その接合部にはシールリング4が介装されている。
また、フロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3は中心部に貫通孔5をそれぞれ有しており、これらの貫通孔5には駆動軸6が挿入されている。この駆動軸6はフロント側シリンダブロック2の貫通孔5に嵌着されたラジアルベアリング7とリヤ側シリンダブロック3の貫通孔5に嵌着されたラジアルベアリング8とにより回転自在に支持されており、駆動軸6の軸方向中央部には、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる斜板9が装着されている。
【0010】
斜板9は駆動軸6の外周に嵌合するボス部9aを有しており、このボス部9aとフロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3との間には、斜板9を駆動軸6の軸方向中央部に回転可能に挟持する一対のスラストベアリング10が設けられている。また、斜板9はボス部9aの外周に円形状の斜板部9bを有しており、この斜板部9bは駆動軸6の軸方向に所定の角度で傾斜している。
【0011】
フロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3の内部には、複数の圧縮室(シリンダボア)11が貫通孔5を中心とする所定円周上に等間隔に設けられている。これらの圧縮室11は円筒状をなしており、各圧縮室11にはアルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる両頭型のピストン12が収容されている。
【0012】
ピストン12はフロント側円柱部12aとリヤ側円柱部12bとの間に前後一対の斜板係合部12cを有しており、これらの斜板係合部12cには、球面状のシュー受け座13が相対向して形成されている。そして、シュー受け座13には半球形状のシュー14が揺動自在に係合しており、これらのシュー14は駆動軸6の回転に伴って斜板9の斜板部9bを摺動するようになっている。
【0013】
フロント側シリンダブロック2のフロント側の面にはカバー部材としてのフロントハウジング16がシールリング15を介して接合され、また、リヤ側シリンダブロック3のリヤ側の面にはカバー部材としてのリヤハウジング18がシールリング17を介して接合されている。これらのフロントハウジング16およびリヤハウジング18はアルミニウム合金等により形成されている。また、これらハウジング16および18は、それぞれ内面から突出した同軸の二つの円筒状壁35、36を有している。そして、この各ハウジングの内部において、外周側の円筒状壁35の外側に吸入室19が形成され、更に、円筒状壁35、36間に環状の吐出室20が形成されている。
なお、リヤハウジング18はリヤ側シリンダブロック3との接合側端面に複数のネジ穴21を有しており、これらのネジ穴21には締付ボルト22がフロントハウジング側から螺嵌されている。
【0014】
フロント側シリンダブロック2とフロントハウジング16との間にはフロント側バルブプレート23が介装され、またリヤ側シリンダブロック3とリヤハウジング18との間にはリヤ側バルブプレート24が介装されている。これらのバルブプレート23,24とフロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3との間には金属からなる吸入弁形成板25(図1参照)が介装されており、各吸入弁形成板25にはバルブプレート23,24に設けられた吸入ポート26を開閉する吸入弁27が形成されている。
【0015】
一方、バルブプレート23,24とフロントハウジング16およびリヤハウジング18との間には、吐出弁形成板28がそれぞれ設けられている(図1参照)。これらの吐出弁形成板28は吸入弁形成板25と同様に金属からなり、各吐出弁形成板28にはバルブプレート23,24に設けられた吐出ポート29を開閉する吐出弁30が形成されている。なお、吸入弁形成板25とフロント側シリンダブロック2およびリヤ側シリンダブロック3との間にはガスケット31が介装されている。
【0016】
吐出弁形成板28とフロントハウジング16およびリヤハウジング18との間には金属薄板の両面にシール材をコーティングしてなる板状のメタルガスケット32が設けられ(図1参照)、これらのメタルガスケット32には、吐出弁30の開度を規制するリテーナ33が一体に形成されている。
【0017】
メタルガスケット32は、図4に示すごとく、最内側の環状部32a、中間位置の環状部32bおよび最外側の環状部32cとを有している。これら三つの環状部32a、32b、32cは吸入室19および吐出室20の境界壁をそれぞれシールし、さらに、最内側の環状部32aは、吐出弁形成板を所定位置に保持する機能をも有している。
また、上記三つの環状部32a、32b、32cは複数の半径方向のリブ331、332、333、334および吐出弁30の開度を規制するリテーナ33により互いに連結されている。また、各リテーナ33は、各吐出弁30を挟んで吐出ポート29と対向するように配置されている。
【0018】
リテーナ33は、ガスケットを側方外側から見たときに、最内側の環状部32aと中間位置の環状部32bとの間に延びており、最内側の環状部32a側から側方外側へ緩やかな傾斜を有する傾斜部33aを以て始まり、中間位置の環状部32bに対し急な傾斜を有する傾斜部33bを以て終わるように構成されている。そして、このリテーナ33は、緩やかな傾斜を有する傾斜部33aによりリード式吐出弁30の開度を規制している。
リテーナ33の緩やかな傾斜を有する傾斜部33aの基端部は、図1に示されているように規制部34により吐出弁形成板28側に押圧されている。
【0019】
規制部34は、円筒状壁36の端面に形成された主表面部34aと、円筒状壁36の端面と外周面とを連結する円弧状の中間表面部34bからなる。この中間表面部34bは、図1に示されるように半径rの円弧に形成されている。一方、主表面部34aは、吐出作用時にリテーナ33の過剰な変形を押さえるものであるが、リテーナ33の許容範囲内での変形時に当接することができれば良い。したがって、主表面部34aは、吐出ガスのガス圧が作用していないときには、リテーナ33の緩やかな傾斜を有する傾斜部33aの上面との間にわずかな隙間が生ずるように設定されていても良い。
【0020】
各規制部34の主表面部34aは、吐出時に、緩やかな傾斜を有する傾斜部33aの基端部の上面が規制部34の主表面部34aに局部的に当接することのないように、主表面部34aがリテーナ33の傾斜部33aの上面に沿うように形成されているのが好ましい。
理想的には、リテーナ33の傾斜部33aの基端部の上面が略円弧状に形成されており、吐出時リテーナ33が持ち上げられるときに、各リテーナが規制部34の主表面部34aに均等に当接できるように、主表面部34aが傾斜部33aの基端部の上面と略同一の円弧Rに形成されていることが望ましい。
加えて、中間表面部34bが前記のように構成されていることにより、リテーナ33の傾斜部33aと規制部34との間に円筒状壁36の外周側に漸次拡大する隙間が形成される。このため、メタルガスケット32のシール材が劣化しても前記隙間からシール材が吐出室20にはみ出すことがなく、またリテーナ33の不測の変形を防止できる。
【0021】
このように構成される圧縮機1では、リテーナ33の傾斜部33aの基端部が規制部34の主表面部34aにより吐出弁形成板28側に押圧されているため、吐出ポート29から吐出する被圧縮流体によりリテーナ33が吐出弁30から離れる方向に変形することが抑制される。従って、吐出弁形成板28とフロントハウジング16およびリヤハウジング18との間に介装されたメタルガスケット32の厚さを厚くする必要がないので、メタルガスケット32のシール性を損なうことなくリテーナ33の変形を防止することができる。
【0022】
なお、上述した一実施形態では、この発明を斜板式圧縮機に適用した場合について説明したが、斜板式圧縮機以外の圧縮機、例えば、クランク式の往復動型圧縮機、ロータリー式圧縮機、スクロール型圧縮機等についても適用可能である。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、シリンダブロックの圧縮室を閉塞するカバー部材と吐出弁形成板との間に設けられたメタルガスケットのシール性を損なうことなくリテーナの変形を防止することができる。
請求項2に係る発明によれば、上述した効果に加えて、吐出作用時にリテーナが規制されたとき、リテーナの上面が規制部に局部的に当たらないので、リテーナの摩耗を抑制することができる。
請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る発明の効果に加えて、吐出時にリテーナが持ち上げられても、リテーナの上面が規制部に均等に当接するので、リテーナの摩耗を抑制することができる。
請求項4に係る発明では、メタルガスケットのシール材が吐出室にはみ出すことがなく、メタルガスケットの劣化によるリテーナの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2に示す圧縮機の詳細構成を説明するための断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る圧縮機の概略構成を説明するための断面図である。
【図3】図2に示す圧縮機のカバー部材としてのリヤハウジングを示す図である。
【図4】図1におけるメタルガスケットの平面図である。
【符号の説明】
2…フロント側シリンダブロック、3…リヤ側シリンダブロック、6…駆動軸、9…斜板、11…圧縮室、12…ピストン、14…シュー、16…カバー部材としてのフロントハウジング、18…カバー部材としてのリヤハウジング、19…吸入室、20…吐出室、23…フロント側バルブプレート、24…リヤ側バルブプレート、26…吸入ポート、27…吸入弁、28…吐出弁形成板、29 吐出ポート、30…吐出弁、32…メタルガスケット、33…リテーナ、33a…リテーナの緩やかな傾斜を有する傾斜部、33b…リテーナの急な傾斜を有する傾斜部、34…規制部、34a… 主表面部、34b…中間表面部。

Claims (4)

  1. 圧縮室を有するシリンダブロックと、
    前記圧縮室に収容された流体圧縮部材と、
    前記シリンダブロックに接合され、前記流体圧縮部材により圧縮された流体を受け入れる吐出室を有するカバー部材と、
    前記流体圧縮部材により圧縮された流体を前記吐出室に吐出する吐出ポートを有し、前記カバー部材と前記シリンダブロックとの間に設けられたバルブプレートと、
    前記吐出ポートを開閉するリード式吐出弁を形成し、前記バルブプレートと前記カバー部材との間に設けられた金属製の吐出弁形成板と、
    この吐出弁形成板と前記カバー部材との間に設けられ、金属薄板の両面にシール材をコーティングしてなる板状のメタルガスケットと、
    このメタルガスケットに形成され、前記吐出弁の開度を規制するリテーナとを備えた圧縮機において、
    前記リテーナの、前記吐出弁形成板を押圧する側に位置する基端部に対応する位置に前記カバー部材の内面から円筒状壁を突出させ、
    その先端に前記リテーナの基端部の変形を規制する規制部を設けたことを特徴とする圧縮機。
  2. 前記規制部は、前記リテーナの基端部の上面に略沿った形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧縮機。
  3. 前記規制部は、前記リテーナの基端部の円弧状と略同一の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の圧縮機。
  4. 前記規制部は、前記リテーナの基端部の上面と略同一の円弧に形成されている主表面部と、
    該主表面部と前記円筒状壁の外周面とを連結する円弧状の中間表面部とから形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の圧縮機。
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