JP3756345B2 - 窒化アルミニウム基焼結体とその製造方法及びそれを用いたサセプター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化アルミニウム基焼結体とその製造方法及びそれを用いたサセプターに関し、特に、耐プラズマ性に優れ、放射吸収率及び熱伝導率が大きく、しかも、載置した被処理物上の薄膜の特性を劣化させる虞がない窒化アルミニウム基焼結体とその製造方法及びそれを用いたサセプターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、IC、LSI、VLSI等の半導体装置の製造ラインにおいては、シリコンウエハ等の基板の表面に、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(Si3N4)等の絶縁膜や、シリサイド膜(WSi2)等の導体膜を形成するには、熱CVD法、プラズマCVD法等が好適に用いられている。
これらのCVD法においては、被処理物であるシリコンウエハをサセプターと称される試料台(台座)に載置し、所定の処理を施している。
【0003】
このサセプターは、プラズマ中での使用に耐え、かつ、全体を均熱に保つ必要があることから、耐プラズマ性に優れているとともに、熱伝導率が大きいことが要求される。
この様な特性を備えたサセプターの一種に、窒化アルミニウム焼結体を用いたものがある。
【0004】
しかしながら、この窒化アルミニウム焼結体を用いたサセプターでは、材料である窒化アルミニウム焼結体自体の色調が白いために、吸収する放射熱の量が少なく、したがって、放射エネルギーの熱変換効率が不十分であるという問題点があった。
例えば、このサセプターに外部の抵抗発熱体や赤外線ランプ等から赤外線を照射した場合、赤外線の吸収率が低いために熱変換効率が低くなってしまう。
【0005】
また、窒化アルミニウム焼結体は、それ自体が粒子、粒界、気孔等が三次元に連なった複雑な微細構造を有するものであり、また、焼成プロセス中に粒成長を伴うことから、結晶粒径の分布にある程度のひろがりが生じるのは避けられない。したがって、この窒化アルミニウム焼結体の表面に比較的大きな結晶粒子に起因する色むらが生じ、その結果、放射吸収率にばらつきが生じ、均熱性が低下するという問題点があった。
【0006】
さらに、耐プラズマ性が十分ではないために、プラズマが照射されることによってサセプターから粗大な粒子が発生・飛散し、サセプター上の被処理物に不具合が生じるという問題点があった。
例えば、半導体製造ラインにおいては、プラズマを照射した際に、窒化アルミニウム焼結体からパーティクルが発生し、このパーティクルがシリコンウエハ上や成膜される薄膜上に堆積し、金属配線を断線させたり、半導体層の特性を劣化させたり等の不具合が生じるという問題点があった。
【0007】
そこで、この窒化アルミニウム焼結体に、例えば、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)等の金属元素を添加したり、あるいは、この窒化アルミニウム焼結体の表面にAlON相やC相等の第2層を形成することにより、窒化アルミニウム焼結体を黒色化する試みが行われている。
また、窒化アルミニウム焼結体の耐プラズマ性を向上させるために、この窒化アルミニウム焼結体の表面に、気相合成法により高純度で組織が均一な窒化アルミニウム薄膜や、耐プラズマ性に優れた金属フッ化物やイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)等の薄膜を形成したサセプターが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、焼結体に金属元素を添加したサセプターでは、窒化アルミニウム焼結体の放射吸収率は向上するものの、添加物の影響により焼結体中の金属不純物濃度が高まるため、プラズマを照射した際にこの金属不純物がエネルギーを得て飛散し、被処理物や薄膜を汚染するという問題点があった。
特に、このサセプターを半導体装置の製造ラインで使用した場合、焼結体中の金属不純物によりシリコンウエハや半導体層が汚染され、得られた半導体装置の特性が大きく劣化してしまうこととなる。
【0009】
また、表面に第2層を形成したサセプターでは、第2層の熱伝導率が低いために、サセプターとしての熱伝導率が低下し、シリコンウエハ等の被処理物における均熱性が低下するという問題点があった。
さらに、これらのサセプターにおいては、結晶粒径に起因する色むらを改善するまでには至っていない。
【0010】
一方、耐プラズマ性の向上のために表面に薄膜を形成したサセプターでは、プラズマに対して耐食性を示すのは表面の薄膜部分のみであるため、短期的な耐プラズマ性の向上は認められるものの、長期に使用した場合、表面の薄膜はプラズマ照射によって消失してしまうために、当初の耐プラズマ性を長期間維持することは難しい。
さらに、薄膜と窒化アルミニウム焼結体との間で組成、結晶構造、熱膨張率等が異なる場合には、温度の上昇と下降のサイクルを繰り返すことにより、薄膜に剥離、断裂等が生じる虞がある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、長期使用時の耐プラズマ性に優れ、放射吸収率及び熱伝導率が大きく、しかも、載置した被処理物上の薄膜の特性を劣化させる虞がない窒化アルミニウム基焼結体とその製造方法及びそれを用いたサセプターを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次の様な知見を得た。
気相合成された炭化珪素粉末を所定量窒化アルミニウム粉末に添加し、この混合粉末を結晶粒径が所定の値以下となるような条件下で加圧焼成することにより、金属元素を添加したり、あるいは第2相を形成したり等を行うことなく焼結体の黒色化を可能とし、また結晶粒界に起因する色むらの発生が無く、プラズマに対する耐食性に優れた素材が得られた。そして、この素材をサセプターに用いることにより、従来のサセプターにおける問題点を解決し得ることが明かとなった。
本発明者等は、以上の知見に基づき本発明を完成したのである。
【0013】
すなわち、本発明の請求項1記載の窒化アルミニウム基焼結体は、炭化珪素を0.1〜20重量%含有し、残部を窒化アルミニウム及び不可避不純物とした組成からなり、平均結晶粒径が20μm以下であり、かつ、CIE 1976明度L*が30以下であることを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の窒化アルミニウム基焼結体は、炭化珪素を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム及び不可避不純物に、イットリア、カルシア、マグネシアから選択された1種または2種以上を合計で1.0〜10.0重量%添加した組成からなり、平均結晶粒径が20μm以下であり、かつ、CIE 1976明度L * が30以下であることを特徴としている。
【0015】
請求項3記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法は、平均粒子径が10〜100nmの炭化珪素粉末を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム粉末を、10MPa以上の圧力下、1700〜2300℃の温度で焼成することを特徴としている。
【0016】
請求項4記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法は、請求項3記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法において、前記炭化珪素粉末を、気相反応法により気相合成したことを特徴としている。
【0017】
請求項5記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法は、請求項4記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法において、前記気相反応法は、プラズマCVD法であることを特徴としている。
【0018】
請求項6記載のサセプターは、基体が請求項1または2記載の窒化アルミニウム基焼結体により構成されていることを特徴としている。
【0019】
本発明の窒化アルミニウム基焼結体では、炭化珪素を0.1〜20重量%含有し、残部を窒化アルミニウム及び不可避不純物とした組成の焼結体の平均結晶粒径を20μm以下としたことにより、該焼結体における結晶粒径の分布がシャープになり、均一化される。これにより、結晶粒径に起因する色むらが無くなり、その結果、放射吸収率のばらつきが極めて小さくなり、均熱性が向上する。
また、CIE 1976明度L*を30以下としたことにより、該焼結体が黒色化され、放射吸収率が高まる。しかも、従来の様にAlON相やC相等の第2成分が無いので、熱伝導率が低下する虞が無く、均一性が低下することが無い。
【0020】
本発明の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法では、平均粒子径が10〜100nmの炭化珪素粉末を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム粉末を、10MPa以上の圧力下、1700〜2300℃の温度で焼成することにより、黒色化されることで放射吸収率が高く、結晶粒径に起因する色むらが無く均熱性に優れ、しかも気孔の無い緻密な焼結体が得られる。
【0021】
本発明のサセプターでは、基体を請求項1または2記載の窒化アルミニウム基焼結体により構成したことにより、長期間プラズマ照射された場合においても、該焼結体は消失してしまう虞が無く、当初の耐プラズマ性を長期間維持することが可能になる。
さらに、基体が単一の窒化アルミニウム基焼結体により構成されているので、温度の上昇と下降のサイクルを繰り返した場合においても、該焼結体に剥離、断裂等が生じる虞が無く、サセプターとしての信頼性が高まる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化アルミニウム基焼結体とその製造方法及びそれを用いたサセプターの一実施形態について説明する。
ただし、この実施の形態は、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0023】
本発明の窒化アルミニウム(AlN)基焼結体は、炭化珪素(SiC)を0.1〜20重量%含有し、残部を窒化アルミニウム(AlN)及び不可避不純物とした組成のもので、平均結晶粒径を20μm以下、かつ、CIE 1976明度L*を30以下とすることで黒色化が図られているものである。
【0024】
SiCは、AlN基焼結体の明度を調節し、耐プラズマ性を向上させる上で重要な化合物であり、その含有量は0.1〜20重量%の範囲である。その理由は、含有量が0.1重量%未満では白色化してしまうために十分な明度が得られず、耐プラズマ性の向上も認められないからであり、また、含有量が20重量%を越えると、緻密な焼結体が得られ難くなると共に、耐プラズマ性が大きく低下するからである。
【0025】
このSiCは、α−SiC、β−SiC、a−SiC(非晶質SiC)またはこれらの混合相のいずれでもよいが、中でも、β−SiCはアスペクト比が小さく、また分散性にも優れているので、AlN基焼結体中に少量存在するだけで、AlN基焼結体の色調をCIE 1976明度L*が30以下の黒色とすることができ、耐プラズマ性を向上させることができる。
【0026】
また、このAlN基焼結体の平均結晶粒径は20μm以下であることが必要である。その理由は、平均結晶粒径が20μmを越えると目視で確認できる色むらが発生し、熱効率の不均一の原因になると共に、耐プラズマ性が大きく低下するからである。平均結晶粒径が20μmを越えるAlN基焼結体をサセプターに適用した場合、プラズマ照射により発生するパーティクルの粒子径が増加し、得られた半導体に配線の断線等の不具合が発生する虞がある。
【0027】
また、このAlN基焼結体のCIE 1976明度L*は30以下とする必要がある。この明度L*はAlN基焼結体の表面における放射吸収の程度を表したものであり、その値が30以下とすることで外部からの放射エネルギーを熱として吸収する性能に優れたものとなる。
【0028】
このCIE 1976明度L*は、日本工業規格 JIS Z8729「色の表示方法」に規定されているもので、国際照明委員会(CIE)が推奨したCIE1976(L*a*b*色空間)(CIE LABと略記)の中で明度として定義される値で、完全拡散反射面を100、完全黒体を0として、その間の度合いを色の三刺激値の中のYの値に関連した式によって表すものである。この明度L*は、その値が小さいほど放射を100%吸収する完全黒体に近く、外部の発熱体やランプなどから放射されるエネルギーを熱として吸収する性能に優れている。
【0029】
このAlN基焼結体は、平均粒子径が10〜100nmのSiC粉末を0.1〜20重量%含有するAlN粉末を、10MPa以上の圧力下、1700〜2300℃の温度で焼成することにより得ることができる。
SiC粉末としては、例えば、プラズマCVD法により気相合成された平均粒子径が10〜100nmの微粉末を用いる。これにより、プラズマに対する耐食性、特にフッ素系プラズマに対する耐食性に優れたものとなる。
プラズマCVD法としては、高純度化を図ることが可能な高周波プラズマ(RFプラズマ)を用いたものが好適である。この高周波プラズマは、無電極であることにより、例えば、不純物濃度が1ppm以下のような超高純度SiC微粉末を得ることができる。
【0030】
プラズマCVD法により気相合成されたSiC粉末は、気相合成条件やその結晶相を特に限定するものではないが、AlN基焼結体の焼結性向上、及びその熱的および機械的特性の向上の点から、特に、β−SiC微粉末、非晶質SiC微粉末、もしくはこれらの混合相からなるSiC微粉末が好ましい。
中でも、β−SiC微粉末は、アスペクト比が小さく、分散性も優れているので、AlN粉末に少量混合するだけで、得られたAlN基焼結体の色調を黒色化することができ、耐プラズマ性も向上させることができる。
【0031】
このSiC微粉末は、非酸化性雰囲気のプラズマ中に、シラン化合物またはハロゲン化珪素と炭化水素との混合ガスからなる原料ガスを導入し、反応系の圧力を1気圧未満から0.1Torrの範囲で制御しつつ気相反応させることにより得ることができる。
【0032】
このSiC粉末の平均粒子径は10〜100nm(0.1μm)とする。平均粒子径の上限のより好ましい値は30nm以下である。
この平均粒子径のSiC粉末を使用することにより、焼成時にSiCは容易にAlNに固溶することとなり、組成が均一なAlN基焼結体が得られる。このAlN基焼結体は、粒界層中に組成の異なる物質、例えば未反応のSiC等の偏析がないため、耐プラズマ性に優れている。また、このAlN基焼結体をサセプターに適用すると、プラズマ照射時にパーティクルが発生する虞が無い。
なお、平均粒子径を10nm以上とした理由は、10nm未満では微細すぎるために取り扱いが難しく、またコスト的にも不利となるからである。
【0033】
このSiC粉末の含有量は、SiC粉末とAlN粉末を含む混合粉末に対して0.1〜20重量%であることが必要である。その理由は、含有量が0.1重量%未満では、充分な明度が得られず、かつ耐プラズマ性の向上が認められず、また、含有量が20重量%を越えると、焼成時に粒成長が進み過ぎて緻密な焼結体が得られにくくなると共に、耐プラズマ性が大きく低下するからである。
【0034】
AlN粉末としては、特に限定はされないが、例えば、アルミナ還元法、アルミニウムの直接窒化法等により得られた一般に市販されているものを使用することが可能である。また、AlN粉末の平均粒子径は、焼成後の平均結晶粒径が20μmを越えないような範囲のものであればよく、例えば、0.1〜10nmの範囲とされる。
また、AlN基焼結体の焼結性を向上させるために、焼結助剤として、イットリア(Y2O3)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)から選択された1種または2種以上を合計で1.0〜10.0重量%添加してもよい。
【0035】
このSiC粉末とAlN粉末を含む混合粉末を、粉末成形機等で加圧成形して所定の形状の圧粉体としてもよく、また、ホットプレス(HP)等の加圧焼結機の加圧容器中に充填してもよい。なお、加圧成形の方法は特に限定する必要はなく、公知の成形方法を用いればよい。また、成形に際しては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチルセルロース等の有機化合物をバインダーとして用いてもよく、また、必要に応じてステアリン酸もしくはステアリン酸塩等の分散剤を添加しても良い。
【0036】
加圧焼結法としては、短時間で高密度、高強度の焼結体が得られるホットプレス(HP)、高温等方加圧焼結(HIP)等が好適に用いられる。
加圧焼結の際の圧力は、10MPa以上とする必要がある。
AlN基焼結体は、加圧焼結時にSiCが拡散によりAlNの結晶格子内へ侵入するが、加圧焼結時の一軸圧力が増加するに従ってSiCの拡散量が増加し、該焼結体の色調も、白色から灰白色へ、さらには黒色へと変化する。
特に、10MPa以上の一軸圧力下で焼結することにより、得られたAlN基焼結体の明度L*は、全てのものが30以下になる。したがって、このAlN基焼結体は放射エネルギーの吸収量が多くなり、外部から放射されたエネルギーを熱として吸収する効率が優れたものとなる。
【0037】
加圧焼結の際の焼成温度は、1700〜2300℃の温度範囲とする必要がある。その理由は、焼成温度が1700℃未満では、SiCのAlN結晶格子中への拡散が不十分で、得られたAlN基焼結体の色調も黒色化せず、また焼結体の密度も高くならないからであり、一方、2300℃を越えると、加圧焼結の際にAlNの分解反応が進行し、焼結体中の気孔数が増加して焼結体の密度が大幅に低下し、緻密なAlN基焼結体が得られないからである。
また、加圧焼結の際の雰囲気は、特に限定されるものではなく、真空雰囲気、N2ガス等の不活性雰囲気、COガス等の還元性雰囲気のいずれの雰囲気も使用可能である。
【0038】
このようなAlN基焼結体にあっては、炭化珪素を0.1〜20重量%含有し、残部を窒化アルミニウム及び不可避不純物とした組成の焼結体の平均結晶粒径を20μm以下とし、CIE 1976明度L*を30以下としたので、結晶粒径に起因する色むらが無く、放射吸収率のばらつきが極めて小さく、均熱性が向上する。また、色調が黒色となることから、外部から放射として加えられたエネルギーを熱として吸収する効率が高まる。
【0039】
このようなAlN基焼結体の製造方法にあっては、平均粒子径が10〜100nmの炭化珪素粉末を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム粉末を、10MPa以上の圧力下、1700〜2300℃の温度で焼成するので、放射吸収率が高く、結晶粒径に起因する色むらが無く均熱性に優れ、しかも気孔の無い緻密な焼結体が得られる。
【0040】
このようなAlN基焼結体を用いてサセプターの基体を構成することにより、色調が黒色で色むらがなく、高い熱伝導率、高い放射吸収性を備えたものとなる。また、プラズマに対する耐食性、特にフッ素系プラズマに対する耐食性に優れたものとなるので、このサセプターを熱CVD装置に用いた場合には、プラズマクリーニングを行うことができ、更に、プラズマCVD装置にも用いることができる。
【0041】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
「AlN基焼結体の作製」
プラズマCVD法により平均粒子径が30nmのβ−SiC微粉末を気相合成した。ここでは、原料ガスとしてSiH4とC2H4とを用い、反応系の圧力を0.08Torrに制御した状態で、高周波によりアルゴン熱プラズマを励起し、このアルゴン熱プラズマ中で気相合成した。
【0042】
次いで、このβ−SiC微粉末と、市販のAlN粉末((株)トクヤマ製、平均粒径0.6μm)を表1に示した比率で混合し、この混合粉末をイソプロピルアルコール(溶媒)と共にボールミルにチャージし、このボールミルを所定時間ランニングさせてスラリーとした。
次いで、このスラリーをスプレードライヤー等を用いて噴霧乾燥させ、造粒粉とした。次いで、この造粒粉を黒鉛製のホットプレス容器に充填し、一軸加圧力20MPa、窒素雰囲気中1気圧、1800℃の条件下で2時間焼成し、円板状のAlN基焼結体を得た。
【0043】
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
「平均結晶粒径」
AlN基焼結体の平均結晶粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、インターセクト法により測定した。
【0044】
「スパッタ痕サイズ及び耐プラズマ性」
プラズマ照射後のAlN基焼結体の表面のスパッタ痕サイズを以下の方法で測定した。
得られたAlN基焼結体をECRエッチング装置内に設置し、このAlN基焼結体に、CF4ガス中で電圧500V、電流0.16Aを印加して発生させたCF4プラズマを1000分間照射することにより、プラズマ暴露を行った。
【0045】
そして、プラズマ照射によって削られた跡であるAlN基焼結体の表面のスパッタ痕を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、1mm2中に存在する上位10個のスパッタ痕の平均値をスパッタ痕サイズとした。
また、測定により得られたスパッタ痕サイズは、飛散したパーティクルのサイズと同等であると推定し、耐プラズマ性を評価した。
【0046】
「明度L*及び色調(黒色化度)」
カラーアナライザー((有)東京電色センター製TCー1800MKII)により、AlN基焼結体の表面のJIS Z8729に規定する明度L*を測定し、AlN基焼結体の色調(黒色化度)を評価した。
【0047】
(実施例2〜5)
β−SiC微粉末とAlN粉末の混合比率を表1に示す割合に変更した点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
(実施例6〜7)
一軸加圧力を表1に示す圧力に変更した点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
実施例1〜7に用いたAlN粉末のみを原料粉とした点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
(比較例2)
β−SiC微粉末とAlN粉末の混合比率を表1に示す割合に変更した点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
(比較例3)
市販のSiC粉末(イビデン(株)製、平均結晶粒径0.3μm)と実施例1〜7に用いたAlN粉末を表1に示す割合で混合した混合粉末を使用した点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
(比較例4)
一軸加圧力を表1に示す圧力(3MPa)に変更した点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
(比較例5)
一軸加圧力を表1に示す圧力(4MPa)に変更した点の他は、実施例1と同様に行い、AlN基焼結体を得た。
次いで、このAlN基焼結体の平均結晶粒径、スパッタ痕サイズ、明度L*を測定し、耐プラズマ性、色調(黒色化度)を評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例1〜7のAlN基焼結体は全て黒色であるが、比較例1、4のAlN基焼結体は白色、比較例3のそれは灰緑色、比較例5のそれは灰白色であった。
したがって、実施例1〜7のAlN基焼結体は熱伝導率に優れ、放射を熱として吸収する効率の高いものであった。
【0056】
また、実施例1〜7及び比較例1〜3のAlN基焼結体をサセプターの基体とし、このサセプターにCF4プラスマを照射した際に発生するパーティクルのサイズを比較したところ、実施例1〜7のAlN基焼結体を用いたサセプターは、比較例1〜3のそれよりも小さく、耐プラズマ性に優れていることがわかった。
【0057】
また、実施例1、6、7及び比較例4、5のAlN基焼結体が示す一軸加圧力と色調の関係から、焼結時の一軸加圧力が10MPa以上の圧力下では黒色のAlN基焼結体が得られるが、一軸加圧力が10MPa未満下では白色または灰白色のAlN基焼結体しか得られないことがわかった。
【0058】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明の窒化アルミニウム基焼結体によれば、炭化珪素を0.1〜20重量%含有し、残部を窒化アルミニウム及び不可避不純物とした組成の焼結体の平均結晶粒径を20μm以下としたので、該焼結体における結晶粒径が均一化されることで結晶粒径に起因する色むらを無くすことができ、放射吸収率のばらつきを極めて小さくすることができ、均熱性を向上させることができる。
【0059】
また、CIE 1976明度L*を30以下としたので、色調が黒色となり外部から放射として加えられたエネルギーを熱として吸収する効率を高めることができる。さらに、従来の様にAlON相やC相等の第2成分が無く、熱伝導率が低下する虞や、均一性が低下する虞が無い。
【0060】
本発明の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法によれば、平均粒子径が10〜100nmの炭化珪素粉末を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム粉末を、10MPa以上の圧力下、1700〜2300℃の温度で焼成するので、放射吸収率が高く、結晶粒径に起因する色むらが無く均熱性に優れ、しかも気孔の無い緻密な焼結体を得ることができる。
また、通常の加圧焼結法を適用することができるので、高価、かつ複雑な製造装置が不要となり、特性に優れた窒化アルミニウム基焼結体を簡便に作製することができる。
【0061】
本発明のサセプターによれば、基体を請求項1または2記載の窒化アルミニウム基焼結体により構成したので、プラズマに対する耐食性に優れたものとなり、プラズマに曝されても粗大なパーティクルが発生する虞が無く、長期間プラズマ照射された場合においても当初の耐プラズマ性を長期間維持することができる。
【0062】
しかも、色調を黒色とするための金属元素等の不純物元素を一切含まないので、半導体を汚染する虞が無く、熱CVD装置やプラズマCVD装置等に適したサセプターとすることができる。
さらに、基体が単一の窒化アルミニウム基焼結体により構成されているので、温度の上昇と下降のサイクルを繰り返した場合においても、該焼結体に剥離、断裂等が生じる虞が無く、サセプターとしての信頼性を高めることができる。
Claims (6)
- 炭化珪素を0.1〜20重量%含有し、残部を窒化アルミニウム及び不可避不純物とした組成からなり、
平均結晶粒径が20μm以下であり、かつ、CIE 1976明度L*が30以下であることを特徴とする窒化アルミニウム基焼結体。 - 炭化珪素を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム及び不可避不純物に、イットリア、カルシア、マグネシアから選択された1種または2種以上を合計で1.0〜10.0重量%添加した組成からなり、
平均結晶粒径が20μm以下であり、かつ、CIE 1976明度L * が30以下であることを特徴とする窒化アルミニウム基焼結体。 - 平均粒子径が10〜100nmの炭化珪素粉末を0.1〜20重量%含有する窒化アルミニウム粉末を、10MPa以上の圧力下、1700〜2300℃の温度で焼成することを特徴とする窒化アルミニウム基焼結体の製造方法。
- 前記炭化珪素粉末は、気相反応法により気相合成してなることを特徴とする請求項3記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法。
- 前記気相反応法は、プラズマCVD法であることを特徴とする請求項4記載の窒化アルミニウム基焼結体の製造方法。
- 基体が請求項1または2記載の窒化アルミニウム基焼結体により構成されていることを特徴とするサセプター。
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