JP3756076B2 - 屋根の断熱防水構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コンクリート構造の屋根スラブや波形屋根などのような各種屋根の断熱防水構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート構造の屋根スラブは、断熱防水処理したり、水勾配をつけて雨水が円滑に排水される構造になっている。しかしながら、経時変化で劣化し、ついには水漏れなどを来すことがある。その場合は、再度、大がかりな断熱防水工事が必要となる。
【0003】
また、屋根スラブが太陽熱で過熱するのを抑制し、室内の温度上昇を抑えるために、屋上に土壌を敷設して芝生を植えたりしているが、断熱の効果が充分でないばかりか、スラブの防水が充分でない場合は、スラブの劣化を早めることになる。
【0004】
このような問題を解消するために、特開平7−305462号公報に記載のように、防水処理したスラブの上に、下駄脚状のパネルを敷設し、その上に、仕上げ表層材を敷設する構造も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構造では、パネル自体には防水作用がないので、経時劣化によって当初の防水処理が機能しなくなった場合は、従来構造と同じことである。したがって、一旦水漏れが発生したら、再度防水処理する必要がある。また、断熱が充分でなく、しかもコスト高となる。
【0006】
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、屋根自体の防水が不十分であったとしても、以降の防水が確実となり、しかも断熱も充分で、工事の簡素化によるコスト安な屋根の断熱防水構造を実現することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、ほぼ一定厚の非透水性の薄板材により、下部に一定の間隔で縦横に先細の中空凸部が形成された凹凸パネルを屋根の上に敷設すると共に、該凹凸パネルの隣接する端部同士を重ねたり接着してコーキングし、その上にコンクリートや土壌、砂、砂利などからなる遮断層を敷設して前記中空凸部の内部の窪み中に充填してなることを特徴とする屋根の断熱防水構造である。
【0008】
このように、ほぼ一定厚の非透水性の薄板材からなる凹凸パネルを屋根スラブやトタン屋根などの上に敷設するので、凹凸パネルの継ぎ目などを防水処理しておけば、屋根まで水が透過する恐れはない。したがって、屋根スラブが防水処理してなくても、あるいは当初の防水処理が劣化して水漏れする場合でも、以後の防水が確保される。
【0009】
また、前記パネルは、下部に一定の間隔で縦横に先細の中空凸部が配列されているので、屋根の上に敷設した場合、中空凸部の周りに連続した空間が形成される。そして、この空間が断熱作用を発揮するため、屋根スラブなどの断熱も確保される。
【0010】
中空凸部は先細状となっていて、下側が次第に細くなっているので、中空凸部と屋根スラブなどとの接触面積が小さい。その結果、中空凸部を経由して屋根スラブなどに伝わる熱量は極めて少なく、断熱がより効果的に行われる。
【0011】
凹凸パネルの上には、コンクリートや土壌、砂、砂利などからなる遮断層を敷設するので、太陽光が遮断される。その結果、前記の凹凸パネルの中空凸部の周りの空間による断熱作用と相まって、断熱が確実となる。また、前記のコンクリートや土壌、砂、砂利などからなる遮断層を敷設する際に、前記中空凸部の内部の窪み中に充填されるため、中空凸部が、凹凸パネルより上側を機械的に支持する脚として機能できる。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載の屋根の上において前記の中空凸部の周りに形成される空間を外気と連通させて、通風可能とした屋根の断熱防水構造である。
【0013】
このように、屋根スラブなどの上において前記の中空凸部の周りに形成される空間を外気と連通させて、通風可能としたことにより、屋根スラブと凹凸パネルとの間の空間の空気が流通し、高温の空気が停滞するのを防止できるので、断熱効果がより確実となる。その結果、年間を通じて屋根スラブの温度変化が少ないため、コンクリート構造体の亀裂やひび割れなどの劣化を抑制できる。
【0014】
請求項3は、請求項1または請求項2に記載の凹凸パネルの上側を排水溝や排水管などの排水手段に導いてなる屋根の断熱防水構造である。
【0015】
このように、凹凸パネルの上側を排水溝や排水管などの排水手段に導いた構造とすることにより、凹凸パネルの上側の水は確実に排水されるため、凹凸パネルの下側に水漏れしたり、屋根スラブなどが水漏れしたりするのを確実に防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明による屋根の断熱防水構造が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は本発明による屋根の断熱防水構造の実施形態を示す断面図である。
【0017】
1はコンクリート構造の屋根スラブであり、外壁2の上に形成されている。屋根スラブ1の外周にはパラペット壁3が一体形成されている。屋根スラブ1は、従来の工法によって防水処理されていてもよいし、防水処理されているが劣化し雨漏りするスラブでもよい。あるいは、全く防水処理されていないスラブでもよい。
【0018】
このような屋根スラブ1の上に、非透水性の薄板材からなる凹凸パネル4が敷設されている。図2は凹凸パネル4の実施形態であり、(1)は凹凸パネル4を上側から見た斜視図、(2)は(1)図の凹凸パネル4を裏返した状態の斜視図である。この凹凸パネル4は、厚さが例えば1〜数mm程度の合成樹脂やアルミニウム、ステンレスなどのような非腐食性のパネルからなり、縦横に一定の間隔で凹凸を形成してある。
【0019】
すなわち、上側から見ると、縦横に一定間隔にすり鉢状の窪み5を形成してある。肉厚は全面にわたってほぼ一定しているので、この窪み5を裏側から見ると、円錐状の中空凸部6となる。したがって、屋根スラブ1の上にこの凹凸パネル4を敷いた場合は、中空凸部6以外の凹状の領域、すなわち中空凸部6の周りには、連続した空間7が形成される。
【0020】
また、図2(2)のように、中空凸部6が円錐状で先細なため、中空凸部6の下端6aと屋根スラブ1との接触面積が小さいので、凹凸パネル4より上側の熱が屋根スラブ1に伝わるのを最小限に抑制できる。
【0021】
これらの凹凸5、6の寸法や間隔は、屋根スラブ1の上に敷設するのに適する範囲で、任意に決定できる。図2の(3)(4)は凹凸パネルの断面形状である。(3)は、窪み5も中空凸部6も一定の周期で波形に形成されているので、窪み5と空間7の面積がほぼ同等である。これに対し、(4)の場合は、隣接中空凸部6・6の間隔を大きくして、窪み5の面積に対し、空間7の面積を大きくしてある。
【0022】
このように、窪み5と空間7との割合も、強度や変形などに支障がない範囲で、任意である。なお、中空凸部6の断面形状は、(4)に破線で示すように空間7側に膨らんだ曲面にしてもよく、逆に鎖線で示すように、窪み5側に引っ込んだ曲面にすることもできる。つまり、先細状であればよい。
【0023】
図1のように、このような凹凸パネル4を屋根スラブ1の上に敷きつめる。図1の凹凸パネル4は、空間7が半球状になっている。すなわち、図2(4)に鎖線で示す形状に近似している。
【0024】
凹凸パネル4の隣接する領域は、端部同士を重ねたり、接着してコーキングする。また、屋根スラブ1の外周部では、凹凸パネル4の外周端をパラペット壁3に接着してコーキングする。
【0025】
この凹凸パネル4の上側には、図示例ではコンクリート8を打設してある。窪み5の中にもコンクリートが充填され硬化する。14は補強用のワイヤーメッシュである。
【0026】
そして、コンクリート層8の最も低い位置を、既設の雨水パイプ9と連通させ、コンクリート層8の上に降った雨水を雨水パイプ9で排水する。あるいは、コンクリート層8の外周に排水溝を設け、外部に排水してもよい。
【0027】
このように、コンクリート層8の上は排水設備を有しており、また凹凸パネル4は非透水性なため、屋上に雨が降ったりしても、凹凸パネル4の下側まで雨水が浸入することはない。
【0028】
したがって、凹凸パネル4の下の屋根スラブ1は必ずしも防水処理する必要はなく、経時劣化によって雨漏りする場合でも、凹凸パネル4によって防水が可能となる。
【0029】
凹凸パネル4の下側は、図2(2)の凹凸パネル4を裏返した状態になっているため、中空凸部6の周囲は空間7になっている。しかも、この空間7は、屋根スラブ1上の全面にわたって連通している。したがって、この空間7によって、屋根スラブ1への断熱が行われる。
【0030】
連通した空間7は、外気が出入りして換気されるように、通気管10、11、12が設けられている。通気管10は、屋根スラブ1を貫通するように上下方向の孔を開け、下端には、防虫網13を設けてあり、上端が、中空凸部6・6間に形成される空間7に開口している。この通気管10は、軒下やベランダの天井などに設けるのがよいが、最上階の室内や天井裏などに開けてもよい。
【0031】
通気管11は、パラペット壁3を貫通している。すなわち、外下がりの勾配がついており、内端は前記の空間7に開口し、外端は外部に開口している。そして、外端に防虫網13を設けてある。
【0032】
通気管12は、中空凸部6・6間に形成される空間7の上部と連通している。すなわち、空間7の上において、凹凸パネル4上のコンクリート層8に上下方向の貫通孔を開けてある。そして、この貫通孔の中に、逆U字状の管12を立ててある。管12の外端には、防虫網13を設けてある。
【0033】
このように、凹凸パネル4と屋根スラブ1との間に形成される空間7が、外気と連通しているので、外気と換気される。その結果、空間7中の過熱された空気が外部に排出されて、代わりに温度の低い外気が流入して来るので、断熱用の空間7中の空気の温度上昇を効果的に抑制できる。なお、換気は自然換気でもよく、機械的に強制換気してもよい。
【0034】
外気と換気するための通気手段として、3種類の通気管10、11、12を例示してあるが、これら以外の場所に、任意の向きの通気管を設けてもよい。
【0035】
図1において、中空凸部6で形成される空間7の高さは、例えば5cm前後が適しているが、この範囲外でも差し支えない。また、コンクリート層8の厚みは、5〜7cm程度がよいが、これに限定されない。
【0036】
図1の実施形態では、凹凸パネル4の上にコンクリートを打設してあるが、コンクリートに代えて、例えば軽量土壌などの土壌を敷きつめて、芝生などの植物を栽培することもできる。この場合は、土壌中に余分な水が溜まるのを防ぐために、雨水パイプ9を設ける。雨水パイプ9の上端にフィルターなどを設け、しかも土壌中の雨水が雨水パイプ9の中に導かれるように、雨水パイプ9の上端の開口を、土壌中に埋め込む。
【0037】
図1のコンクリート層と前記の土壌層を併用することもできる。すなわち、図1のコンクリート層8の上に土壌を敷きつめ、草花などを植えたり、野菜を栽培したりする。
【0038】
植物を栽培する必要がない場合は、凹凸パネル4の上に砂を敷いたり、玉砂利などの砂利や砕石などを敷設することもできる。このように、コンクリート8層を設けないで、凹凸パネル4の上に直接、砂利や土壌を敷く場合は、凹凸パネル4の外周に溝を設けて排水手段とすることができる。
【0039】
このように、凹凸パネル4としては、合成樹脂などからなる薄板製のパネルを用いるので、安価に製造できる。また、薄板ではあるが、その上にコンクリートや土壌や砂利などを敷きつめるため、凹凸パネル4が変形したりする恐れはなく、強度も維持できる。特に、中空凸部6の内部の窪み5には、コンクリートや土壌や砂利などが充填されるので、中空凸部6が、凹凸パネル4より上側を機械的に支持する脚として機能できる。
【0040】
また、凹凸パネル4の上のコンクリートや土壌や砂利などからなる遮断層によって太陽光が遮られるので、凹凸パネル4が太陽光で照射されるのを防止でき、空間7が太陽光で加熱されるのを防止できる。
【0041】
図示実施形態では、屋根スラブ1がほぼ水平になっているが、波形のトタン板などを用いた傾斜した屋根にも本発明を応用できる。ただし、波形屋根の場合は、勾配を工夫したり、土壌などの流出を防止する手段を設けることで、緑化も可能である。したがって、本発明は、屋根スラブ1以外の各種の屋根にも適用できる。
【0042】
【発明の効果】
請求項1のように、ほぼ一定厚の非透水性の薄板材からなる凹凸パネルを屋根の上に敷設するので、凹凸パネルの継ぎ目などを防水処理しておけば、屋根スラブまで水が透過する恐れはない。したがって、屋根スラブが防水処理してなくても、あるいは当初の防水処理が劣化して水漏れする場合でも、以後の防水が確保される。
【0043】
また、前記パネルは、下部に一定の間隔で縦横に先細状の中空凸部が配列されているので、屋根の上に敷設した場合、中空凸部の周りに連続した空間が形成される。そして、この空間が断熱作用を発揮するため、屋根スラブなどの断熱も確保される。
【0044】
中空凸部は先細状となっていて、下側が次第に細くなっているので、中空凸部と屋根スラブなどとの接触面積が小さい。その結果、中空凸部を経由して屋根スラブなどに伝わる熱量は極めて少なく、断熱がより効果的に行われる。
【0045】
凹凸パネルの上には、コンクリートや土壌、砂、砂利などからなる遮断層を敷設するので、太陽光が遮断される。その結果、前記の凹凸パネルの中空凸部の周りの空間による断熱作用と相まって、断熱が確実となる。また、前記のコンクリートや土壌、砂、砂利などからなる遮断層を敷設する際に、前記中空凸部の内部の窪み中に充填されるため、中空凸部が、凹凸パネルより上側を機械的に支持する脚として機能できる。
【0046】
請求項2のように、屋根スラブなどの上において前記の中空凸部の周りに形成される空間を外気と連通させて、通風可能としたことにより、屋根スラブと凹凸パネルとの間の空間の空気が流通し、高温の空気が停滞するのを防止できるので、断熱効果がより確実となる。その結果、年間を通じて屋根スラブの温度変化が少ないため、コンクリート構造体の亀裂やひび割れなどの劣化を抑制できる。
【0047】
請求項3のように、凹凸パネルの上側を排水溝や排水管などの排水手段に導いた構造とすることにより、凹凸パネルの上側の水は確実に排水されるため、凹凸パネルの下側に水漏れしたり、屋根スラブなどが水漏れしたりするのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による屋根の断熱防水構造の実施形態を示す断面図である。
【図2】 凹凸パネルの実施形態であり、(1)は凹凸パネルを上側から見た斜視図、(2)は(1)図の凹凸パネルを裏返した状態の斜視図、(3)(4)は凹凸の各種形状の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 屋根スラブ
2 外壁
3 パラペット壁
4 凹凸パネル
5 窪み
6 円錐状の中空凸部
7 空間
8 コンクリート層
S 太陽
9 雨水パイプ
10・11・12 通気管
13 防虫網
Claims (3)
- ほぼ一定厚の非透水性の薄板材により、下部に一定の間隔で縦横に先細の中空凸部が形成された凹凸パネルを屋根の上に敷設すると共に、該凹凸パネルの隣接する端部同士を重ねたり接着してコーキングし、その上にコンクリートや土壌、砂、砂利などからなる遮断層を敷設して前記中空凸部の内部の窪み中に充填してなることを特徴とする屋根の断熱防水構造。
- 前記の屋根の上において前記の中空凸部の周りに形成される空間を外気と連通させて、通風可能としたことを特徴とする請求項1に記載の屋根の断熱防水構造。
- 前記の凹凸パネルの上側を排水溝や排水管などの排水手段に導いてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋根の断熱防水構造。
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