JP3755877B2 - 異形線伸線用ダイヤモンドダイス及び異形線材の製造方法 - Google Patents
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【発明が属する技術分野】
本発明は、線材の断面を四角形特に、長方形、正方形に伸線加工するための異形線用ダイスに関するものである。そして得られた異形線材にねじれが少ない異形線用ダイス及びそのダイスを用いて異形線材を作る方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来家電製品や自動車などに使われている電動モータには巻線が使用されている。さらには、マイクロマシンなどに使うモータや、スピーカー用ボイスコイルなどの形状を小型化しようとする要望が高くなって来ている。断面が正方形の線は巻線にした時にスペース効率が高く、丸線に比べると同一パワーを27%少ない容積で出すことが出来る。このため、正方形の巻線を使うことにより携帯電話や車載用のスピーカーユニット、電子機器やモーターのコイルなどで大幅な小型化、軽量化、コスト低減を計ることが出来る。
【0003】
しかしながら、ねじれの少ない細線は従来のダイスを用いて作ることが出来なかった。従って従来の異形ダイスによる巻線の製造は、巻線断面の一辺が0.6mm以上の大きなサイズに限定されていた。ねじれの少ない線を作る方法は、薄い銅の板をスリッターを用いて切断して作っていた。しかしながらスリッターを用いると、切り口の形状が切刃が摩耗するに従いコーナー部のRが大きくなったり、同じ断面形状を維持することが大変難しいなどの課題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は従来の上記したような問題点を解決するために、ねじれの少ない異形線材を製造するためのダイス及びそのダイスによって線材を製造する方法を提供するものである。前記したようにねじれの少ない線材は、スリッターで銅の板を切断して作られていた。一方ダイスでねじれの少ない異形線材を伸線するには、ダイスのコーナー部の耐摩耗性を高めること、ねじれのないダイス孔の形状を明瞭にすることにある。このようにして初めて、従来のスリッター法を凌駕することが出来る。
【0005】
発明者らは、これらの問題点を解決するために種々の検討を加え、本願発明をなすに至った。しかしながらこのような新しい用途で使用するためには、ダイス穴の形状や加工方法だけで解決できるものではなかった。ダイス用素材にはいろいろあるが、その中から選び抜かれた素材でないと本願発明を達成できないことが明らかになった。本願発明は、コーナー部のRが0.02m以上0.6mm以下、中でも特にコーナー部のRが0.02mm以上0.06mm以下であって一辺が0.6mm以下のねじれの少ない異形線材を製造するダイス及びその線材を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、焼結ダイヤモンドをダイス本体に使い、ベアリング部の正面形状が異形でありかつコーナー部のRを0.02mm以上0.6mm以下とし、かつその他の部分は直線で構成されている異形線伸線用ダイヤモンドダイスとする。そして、前記焼結ダイヤモンドを構成するダイヤモンド粒子の平均粒径が、0.5μm以上6μm以下とすることで耐摩耗性の高いダイヤモンドダイスを提供することが出来る。なお、コーナー部のRは、より好ましくは0.02mm以上0.06mm以下とする。
【0007】
さらに、ダイス本体は、外周部に超硬合金製のサポートリングを有する焼結ダイヤモンドとすることが非常に効果的である。
【0008】
前記異形は正方形又は長方形のいずれかである。さらに具体的には、長方形又は正方形の相対する面の距離が、0.1mm以上0.6mm以下であることが好ましい。中でもねじれの少ない伸線をするためには、ダイスのベアリング部の長さが0.05mmから0.3mmであること、さらにはリダクション、ベアリング、バックリリーフ部の長さの合計が0.2mmから1.0mmであることが重要事項である。
【0009】
焼結ダイヤモンドに形成された穴の最大径hは、焼結ダイヤモンドの直径dに対して3%以上25%以下であることが好ましい。3%未満では焼結ダイヤモンドの大きさに対して穴が非常に小さいために焼結ダイヤモンドの素材の無駄が生じるためであり、25%以下とするのはこれを超えると穴のコーナー部より亀裂が入りやすくなるためである。また、焼結ダイヤモンドの厚みTは、焼結ダイヤモンドに形成された穴の最大径hの1.5倍以上10倍以下とするのが好ましい。1.5倍以上とするのは、穴のコーナー部より亀裂が入るのを防止するためであり、10倍以下とするのは穴のコーナー部のRの加工を高精度に行うためである。穴の大きさに対し焼結ダイヤモンドの厚みが厚すぎると、コーナー部のRを放電加工で行う場合に高精度加工が困難になる。
【0010】
2又は3段のダイスを直列に並べ、その最終段のダイスが、焼結ダイヤモンドを使ったダイス本体とし、ベアリング部の正面形状においてコーナー部のRを0.02mm以上0.6mm以下とし、その他の部分は直線で構成されていて、銅又はステンレスの断面が円である線材を伸線することができる。なお、コーナー部のRは、より好ましくは0.02mm以上0.06mm以下とする。
【0011】
また、別の方法として、銅又はステンレスの断面が円である線材を圧延ロールにより成形した後、ダイス本体に焼結ダイヤモンドを使い、ベアリング部の正面形状においてコーナー部のRを0.06mm以上0.6mm以下とし、その他の部分は直線で構成されているダイスにより前記線材を伸線することにより異形線を製造することができる。圧延ロールを使った場合、コーナー部のRを小さくするのに限度があるため、0.06mm以上となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の異形ダイスについて図面を用いてその概要を説明する。図1は、ダイスケースに収めて使用できる状態の断面図である。ダイス本体1が本発明に関する部分であり、ダイス本体1を収納するケース2及びダイス本体1を取り付けるための焼結合金3とで構成されている。図2は、ダイス本体1の正面図である。ダイス本体1は、超硬合金製サポートリング4と焼結ダイヤモンド5からなる。そして中心部は、伸線されるべき線材が接触しながら通る傾斜部6と貫通穴7から構成される。傾斜部6はさらに細分化されていて、図3にその詳細を示す。図3は、図2のA−A断面図である。ダイス本体1の厚さがTで示されている。そしてDは超硬合金部の直径を示し、dはダイヤモンドの部分の直径を示す。6a、6b、6c、6d、6e、6fと順にベル、アプローチ、リダクション、ベアリング、バックリリーフ、エクジットに分かれる。このベアリング部6dを正面から見た形状が異形となっている。
【0013】
また、図4及び図5はダイス本体1についての第2の実施の形態を示したものである。ダイス本体1は焼結ダイヤモンド5のみからなり、超硬合金製サポートリングは設けられていないものである。これ以外の点すなわち焼結ダイヤモンド5の形状については、上記のものと同様である。
【0014】
ダイス用素材には、従来から単結晶ダイヤモンドや、焼結ダイヤモンドなどがある。そしてこれらのダイヤモンドは地球上で最も硬い材料とされていて、加工は困難を極める。いくら耐摩耗性に優れた材料でも加工できなければ使用できない。従って適度な加工性を持っていることは重要なことである。例えば上記した単結晶ダイヤモンドは、レーザーによる加工と、古来のダイヤモンド砥粒などによる研磨加工に限定される。これに対して、焼結ダイヤモンドは、レーザーの他に放電加工なども出来る。その理由は、焼結体の中には導電性のある金属結合材を含むから焼結体自身が導電性を持つからである。本願発明は、この加工性と密接に関係している。
【0015】
以上のようなことから、本願発明では焼結ダイヤモンドを用いた。単結晶ダイヤモンドでは、コーナー部のRが小さいものは製作が困難であり、仮に製作できたとしてもコ−ナー部の小さなRにより、亀裂などが発生しやすくなる。しかも、伸線加工時に一つのダイス当たりの線材変形量の多い本願発明用の材料には適していない。
【0016】
本発明で最も重要なことは、伸線した線材のねじれをなくすことである。断面が円形の線材を作るためのダイスでは、ねじれが発生しても、特別大きな支障はない。これに対して、異形線材で特に線材の断面形状が長方形や正方形の場合は、例えばコイルに巻き取ったとき、ねじれ部を巻いたときに巻き方が乱れる。このような意味からも異形線のねじれ防止は特に大きな課題である。
【0017】
そしてこのねじれが発生する原因は、ダイスの穴自体にねじれがあることや、ダイス中心軸に対して左右非対称になっていたりして伸線時にダイス面と線材の接触する面に異方性が生じることによる。この原因は、レーザーによる下穴加工の精度、その次の放電加工、さらなる研磨工程などあらゆる工程と関係がある。本願発明の対象とするサイズの下穴加工は、通常ダイスにレーザーを照射して貫通穴を設ける。その下穴に沿って放電加工する。放電加工はよく知られているように、放電電極を製作しておいて、その放電電極と被加工物との間に放電を起こして、その電気エネルギーにより焼結ダイヤモンドを除去する方法である。
【0018】
放電加工性の容易な材料の場合は、一つの電極で多数の加工が出来る。しかしながら、本発明のようにダイヤモンドを加工する場合は、一つのダイス用の穴を加工するために複数個の放電電極が必要である。そこで出来るだけ形状をそろえた電極をあらかじめ準備しておいて、複数本の電極で加工する。放電により電極自体の形状が変形すると、次の電極に取り替える。
【0019】
一つの問題はこのときに起こる。即ち電極の付け替え精度と、その電極の形状のバラツキに基づきダイスの孔形状が同一ではないことによる。上記のような原因で形成された段差などの寸法バラツキは、その後の研磨加工などで修正することは極めて困難である。従ってできる限り電極の交換回数を減少させ、寸法精度の高い電極を用い、位置精度よく取り付けなければならない。それでも現在の技術では、4回が限界である。4回を越えると、伸線された異形線にねじれが発生する。また、加工用の電極が長くなると電極が放電加工により消耗し、高精度な電極の製造が困難となる。
【0020】
以上のことから、放電加工時に除去する材料の体積は少ない方が形状精度は維持されやすく高精度な加工ができるので、焼結ダイヤモンドの厚さは出来るだけ薄い方がよいことになる。超硬合金製のサポートリングを備え、かつ1.3mm以下の厚さを持つ焼結ダイヤモンドは、市販の一般素材としては入手できなかった。なおここで焼結ダイヤモンドの厚さとは、図3においてTで示される値である。そして、この種の焼結ダイヤモンドは、超高圧高温下で焼結され、その後温度を下げてダイス用素材を超高圧焼結用の容器から取り出す。この時、熱による残留応力と、超高圧を除荷することによる応力のバランスが微妙に保たれている。これの厚さを変更すると従来よく割れが発生した。従って、ダイス素材を薄く加工するのは、従来タブーとされていた。
【0021】
ダイスには、伸線方向にかかる力と、線を細くするためのダイスの半径方向にかかる力とがある。いずれにしろ銅や金やステンレスのような金属線を伸線するわけであるから、上記の力に耐えるだけの強度が必要である。本発明で用いた焼結ダイヤモンドは、以下の点に特徴がある。
【0022】
ダイヤモンドダイス用の焼結ダイヤモンドは、焼結体メーカーがその大きさなどの諸元と伸線に適した径を決め、それをダイスメーカーに販売している。そして、ダイス加工時の製品歩留まりは75%程度と非常に低く、ダイスの割れ原因を追及しているが未だ解決できていない。いつも割れの原因が、素材メーカー側にあるのかダイスの加工者側にあるのか議論が続いている状態である。従って、ダイス用の素材を、ダイス加工メーカーが勝手に加工して任意の形状とすることはタブーとされている。
【0023】
本発明者らは、伸線された直径とダイヤモンドダイス部の直径の関係について種々検討した。市販のダイヤモンドダイス用素材には、推奨最大適用穴径hの焼結ダイヤモンドの直径dに対する比率(h/d×100)が45%から65%である。推奨最大適用穴径とは、最大穴径以下の穴にして使用できるという意味である。そして経済性の観点から、その最大穴径の付近の穴径で製品は作られる場合が多い。異形線用の最大穴径を、正方形の穴の場合その対角線の長さと定義する。同様に他の多角形でも、穴を横切る最大長さを最大穴径とする。この時前記したような大きな比率では、異形線を線引きすることは出来ないことが判った。恐らくは、異形線には必ずコーナー部がありその部分への応力集中によりコーナー部から割れが発生するからである。
【0024】
この割れを抑える方法が2つある。一つは、焼結ダイヤモンドの厚さを厚くすることである。しかしながら、本発明ではダイス穴に要求される精度から、1.3mm以上にすることが出来ないことは既に述べたとおりである。残された方法が、焼結ダイヤモンド部の直径を大きくして、コーナー部からの割れを抑えることである。本発明においては、前述の比率(h/d×100)の値は25%以下でなければならない。それ以上では、コーナー部からの割れを防ぐことが出来ない。さらに好ましくは、20%以下である。
【0025】
本願発明のダイス本体では、先ず第1に、焼結ダイヤモンドの外周をサポートリングで補強していなければならない。こうしなければ前記した応力に耐えることが出来ない。それも超高圧焼結時に、超硬合金と共に焼結して、ダイヤモンドの部分とサポートリングが強固に接合していなければならない。また、第2の実施の形態のようにサポートリングを設けず、焼結ダイヤモンドの外径を大きくしてコーナー部からの割れを防ぐことも可能である。この場合、サポートリングが無いので、素材のコスト面で有利である。但し、この場合は前述の比率(h/d×100)は10%以下とする必要がある。また、異形ダイスのコーナー部のRを小さくするには、用いるダイヤモンド粒径が小さくなければならない。本願発明で用いるダイヤモンドの平均粒径は6μm以下好ましくは3μm以下が望ましい。
【0026】
本発明の別の特徴は、ベアリング部の長さが0.05mmから0.3mmの範囲になければならない。この程度の長さでないと、リダクションやベアリングの形成が困難である。伸線加工時にリダクション部は最もよく摩耗する部分であり、ダイスの寿命はリダクション部の寿命と同じである。従って、実際に使用できるようにするためには、焼結ダイヤモンドの耐摩耗性が極めて高くなければならない。
【0027】
このためには、耐摩耗性の高いダイヤモンドの含有量の高い焼結ダイヤモンドを使う必要がある。また前記したように、ダイヤモンドの粒子径が0.5から6μmでなければならないが、このような微細粒子であって、且つダイヤモンドの含有量が90から95体積%でなければならない。ダイヤモンド粒子が小さくなると、その含有率が下がるがそのような材料では、耐摩耗性が不足していて実用化できない。
【0028】
従って、焼結ダイヤモンドの中でダイヤモンドの含有量が、90から95体積%なければならない。従来の異形ダイスでは、80から90体積%の焼結ダイヤモンドが用いられていた。しかしながらこのようにダイヤモンドの量が少ないものでは、耐摩耗性と強度が不足していて、薄いダイスとすることができない。薄くなければ、ダイスの孔の寸法精度が不足する。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
本発明のダイヤモンドダイスの第1の例として、図4及び図5に示す形状のものを製作した。図4は正面図であり、図5は図4のB−B断面図である。ダイス本体1の材料として、平均粒径5μmのダイヤモンド粒子で構成される焼結ダイヤモンドのみからなる厚みが2.5mmのダイス用ブランクを準備した。この素材は、一般に市販されているもので、焼結ダイヤモンド5のみからなる円柱状のものである。焼結ダイヤモンド5の直径dは、5.2mmであり、ダイス本体1の直径Dもこれに相当する。この素材をワイヤー放電加工により切断して厚みを1.1mmまで薄くし、切断面をダイヤモンド砥石により研削加工した。
【0030】
次に下穴の加工を行った。加工の手順として、先ずレーザーにより焼結ダイヤモンド5の中央部にテーパー状の下穴を形成した。この下穴の大きさの最小径は0.1mmの丸穴である。その後、型彫放電加工機により所定の異形ダイス形状に成形し、粒径3μmのダイヤモンド研磨材を使用して、超音波加工により研磨加工を行った。さらに、ダイヤモンド研磨材の粒径を順次小さくしていき、最終的に0.25μm未満の研磨材で仕上げの研磨をした。このようにして作製したダイス本体1をステンレス製のケース2に固定した。この固定方法は、焼結合金3により固定するものとした。
【0031】
以上の方法により、ベアリング部6dの穴のサイズが、一辺は0.35mm、コーナー部のRの大きさは30μmのダイスを得た。穴の最大径hは0.49mmであり、焼結ダイヤモンド5の外径dとの比率(h/d×100)は9.4%である。このダイヤモンドダイスにより、一辺が0.38mmの銅線の伸線加工をした結果、コーナー部のRは30μmであり、線材表面の光沢も優れたものであった。
【0032】
(実施例2)
本発明のダイヤモンドダイスの例として、図2および図3に示す形状のものを製作した。図2は正面図であり、図3は図2のA−A断面図である。ダイス本体1の材料として、平均粒径3μmのダイヤモンド粒子で構成される焼結ダイヤモンド及び超硬合金からなる厚みが2.3mmのダイス用ブランクを準備した。この素材は、一般に市販されているもので、中央部が焼結ダイヤモンド5、周囲が超硬合金4からなる円柱状のものである。焼結ダイヤモンド5の直径dは、4mmであり、超硬合金4の直径Dは8.1mmである。この素材をワイヤー放電加工により切断して厚みを1.1mmまで薄くし、切断面をダイヤモンド砥石により研削加工した。
【0033】
次に下穴の加工を行った。加工の手順として、先ずレーザーにより焼結ダイヤモンド5の中央部にテーパー状の下穴を形成した。この下穴の大きさの最小径は0.1mmの丸穴である。その後、型彫放電加工機により所定の異形ダイス形状に成形し、粒径3μmのダイヤモンド研磨材を使用して、超音波加工により研磨加工を行った。さらに、ダイヤモンド研磨材の粒径を順次小さくしていき、最終的に0.25μm未満の研磨材で仕上げの研磨をした。このようにして作製したダイス本体1をステンレス製のケース2に固定した。この固定方法は、焼結合金3により固定するものとした。
【0034】
以上の方法により、ベアリング部6dの穴のサイズが、一辺は0.35mm、コーナー部のRの大きさは30μmのダイスを得た。穴の最大径hは0.49mmであり、焼結ダイヤモンド5の外径dとの比率(h/d×100)は12%である。このダイヤモンドダイスにより、一辺が0.38mmの銅線の伸線加工をした結果、コーナー部のRは30μmであり、線材表面の光沢も優れたものであった。
【0035】
(比較例)
比較例として、超硬合金製のダイスを製作した。ベアリング部6dの形状は上記と同じものとするため、放電加工により下穴の成形加工後、ダイヤモンド研磨材で研磨加工をして仕上げた。なお、放電加工の電極は加工に従い徐々に溶けるため、下穴を成形するのに片側のみからすることはできず、上下両側から加工した。以上のようにして穴の加工をしたが、コーナRの大きさは、40μmまでしか加工できず、これ以上小さなRに加工することはできなかった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のダイヤモンドダイスは、ダイス本体が焼結ダイヤモンドからなるので、穴が小さく、さらにコーナー部のRが小さい、高精度な異形線用ダイスを得ることが出来る。また、本発明のダイヤモンドダイスを製造するには、焼結ダイヤモンドを使い、レーザーと放電加工によりダイス形状を成形するものであるので、穴が小さくさらにコーナー部のRが小さい異形線用のダイスが容易にしかも高精度に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のダイヤモンドダイスの使用状態を示す断面図である。
【図2】本発明のダイス本体の例を示す正面図である。
【図3】本発明のダイス本体で、図2のA−A断面図である。
【図4】本発明のダイス本体の第2の例を示す正面図である。
【図5】本発明のダイス本体の第2の例で、図4のB−B断面図である。
【符号の説明】
1 ダイス本体
2 ケース
3 焼結合金
4 超硬合金製サポートリング
5 焼結ダイヤモンド
6 傾斜部
6a ベル
6b アプローチ
6c リダクション
6d ベアリング
6e バックリリーフ
6f エクジット
7 ダイス穴
Claims (7)
- 外周部に超硬合金製のサポートリングを有する焼結ダイヤモンドをダイス本体とし、前記ダイス本体の厚みを1.3mm以下とし、ベアリング部の正面形状が異形でありかつコーナー部のRを0.02mm以上0.6mm以下とし、かつその他の部分は直線で構成され、前記異形は正方形又は長方形で、その相対する面の距離が0.1mm以上0.6mm以下であり、前記焼結ダイヤモンドの厚みTの前記焼結ダイヤモンドに形成された穴の最大径hに対する比率(T/h)は、1.5以上10以下であることを特徴とする異形線伸線用ダイヤモンドダイス。
- 前記焼結ダイヤモンドを構成するダイヤモンド粒子の平均粒径が、0.5μm以上6μm以下であることを特徴とする請求項1記載の異形線伸線用ダイヤモンドダイス。
- ダイスのベアリング部の長さが、0.05mm以上0.3mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の異形線伸線用ダイヤモンドダイス。
- ダイスのリダクション、ベアリング、バックリリーフ部の長さの合計が、0.2mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の異形線伸線用ダイヤモンドダイス。
- 前記焼結ダイヤモンドに形成された穴の最大径hの前記焼結ダイヤモンドの直径dに対する比率(h/d×100)は、3%以上25%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の異形線伸線用ダイヤモンドダイス。
- 2又は3段のダイスを直列に並べ、その最終段のダイスが、請求項1に記載のダイヤモンドダイスであり、銅又はステンレスの断面が円である線材を伸線することにより異形線を製造する方法。
- 銅又はステンレスの断面が円である線材を圧延ロールにより成形した後、請求項1に記載のダイヤモンドダイスのうち、ベアリング部の正面形状においてコーナー部のRを0.06mm以上0.6mm以下のダイスにより前記線材を伸線することにより異形線を製造する方法。
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