JP3755855B2 - 発酵乳及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵が促進され、安定剤を添加しないにもかかわらず適度な硬度及び粘度を有し、離水が少なく、組織が安定し、風味のすぐれた乳酸菌発酵による発酵乳及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発酵乳は、牛乳等の獣乳を原料とし、乳酸菌あるいは酵母またはその両者により発酵させたものである。近年、消費者の健康志向の高まりとともに、発酵乳の消費は堅調に伸びている。また、消費者の嗜好のバラエティー化により、多種の発酵乳製品が製造、販売されている。一般に、発酵乳を性状と製法により分類すると静置型発酵乳、攪拌型発酵乳、液状発酵乳に分けられる。静置型発酵乳は、ハードタイプの発酵乳と称され、小売容器に充填して発酵させたプリン状の組織を有するものであり、以下のように製造される。まず、全脂乳、脱脂乳、脱脂粉乳、ショ糖、バター、ゼラチンや寒天等の安定剤等の原材料を混合して原料ミックスを調製し、これを50〜60℃で加温溶解し、均質化した後、殺菌、冷却して乳酸菌スターターを接種し、容器に充填して密封してから培養室や発酵トンネル内で発酵させ、適度な酸度になったところで直ちに 5℃に冷却して発酵を終了させ、最終製品とする。また、攪拌型発酵乳は、ソフトタイプの発酵乳と称され、原料ミックスに乳酸菌スターターを添加し、タンクで発酵後、カードを破砕して容器に充填したものであり、必要に応じてフルーツ、香料等を添加して、容器に充填して最終製品とする。また、液状発酵乳も、原料ミックスを攪拌型発酵乳と同様の方法で発酵させ、カードを破砕し、必要に応じて糖液を混合し、均質化して最終製品とする。本発明においては、上記のものを総称して発酵乳と称する。
【0003】
上記のように発酵乳の製造において、寒天やゼラチン等の安定剤を用いないと発酵乳の硬度の低下、離水の発生、粘度の低下等が生じるという問題があった。すなわち、静置型発酵乳は、硬度の低下や離水の問題があり、攪拌型発酵乳は、発酵により得られたカードをせん断力により破砕するため、粘度が著しく低下するといった問題があり、液状発酵乳は、発酵により得られたカードを均質化すると分離が生じるといった問題があった。そこで、このような発酵乳の硬度低下、離水、粘度低下、分離等の問題を解決するために、寒天、ゼラチン、ペクチン、増粘多糖類等の安定剤の添加が行われているが、安定剤を添加すると、ヨーグルト様の風味が損なわれる。また、天然嗜好の高まりからも安定剤の使用は好ましくない。このため、天然物である乳由来のホエータンパク質を用いたり、乳の無脂乳固形分を高めて発酵乳の組織を安定化させ、硬度、粘度の低下防止や離水を防止する試みも行われているが、ホエータンパク質の大量添加は風味の点で好ましくなく、無脂乳固形分を高めることはミネラル含量の増加につながり、塩味が強くなり、またコストの増大につながるといった問題があった。
【0004】
一方で、発酵乳の製造工程中、発酵は、最終製品の風味や酸味等の発酵乳のおいしさに影響を与える工程として重要である。しかしながら、従来から、発酵には、長時間を要することや発酵遅延等の問題があった。発酵遅延は生産性を低下させるばかりでなく、最終製品である発酵乳の組織が粗くなるといった組織劣化を招く。そこで、このような問題を解決するために、様々な試みがなされている。例えば、乳タンパク質を酵素分解することによって得られる非タンパク態窒素や酵母エキスを添加する方法が知られているが、これらを添加すると、発酵乳の豊かな風味を損ない、商品価値を著しく低下させるといった問題があった。一方、国内における発酵乳の消費は堅調に伸びており、その原料として主に、生乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、バター等が使用されているが、これら乳素材の生産が消費の伸長に追いつかず、原料の調達は現在逼迫した状況にあるといわれており、これらの乳素材に代替でき、しかもコストの安いものが求められているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安定剤を添加しない発酵乳であって、適度な硬度及び粘度を有し、離水が少なく、組織が安定し、風味がすぐれ、しかも安価な乳酸菌発酵による発酵乳とその製造方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、発酵が促進されて発酵時間が短縮され、しかも上記のようなすぐれた品質の乳酸菌発酵による発酵乳及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、発酵乳の製造に用いる原料ミックスに乳タンパク質濃縮物を一定量配合することにより、適度な硬度及び粘度を有し、離水が少なく、組織が安定し、風味のすぐれた発酵乳が得られることを見いだした。さらに本発明者らは、乳タンパク質濃縮物と脱乳糖パーミエートとを配合すると、発酵が促進され発酵時間が短縮されて、上記のすぐれた品質の発酵乳が得られることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、原料ミックス中に乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを配合してなる乳酸菌発酵による組織の安定した発酵乳に関する。また本発明は、原料ミックス中の乳タンパク質濃縮物由来のタンパク質濃度が1〜15重量%になるように乳タンパク質濃縮物を配合して原料ミックスを調製し発酵させることにより得られる乳酸菌発酵による組織の安定した発酵乳に関する。また本発明は、原料ミックス中の乳タンパク質濃縮物由来のタンパク質濃度が1〜15重量%及び脱乳糖パーミエートが 1〜8重量%になるように乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを配合して原料ミックスを調製し発酵させることにより得られる乳酸菌発酵による組織の安定した発酵乳に関する。
【0007】
本発明における乳タンパク質濃縮物は、脱脂乳を除菌用膜(Micro Filtration)等で除菌した後、透析濾過膜(Dia Filtration)や限外濾過膜(Ultra Filtration)により膜処理された保持液(リテンテート)を殺菌または滅菌後、濃縮、乾燥させて得られ、タンパク質を50重量%以上含有する粉末である。また前記保持液、濃縮液等もタンパク質を固形分当り50重量%以上含有する液体であれば乳タンパク質濃縮物として用いられる。乳タンパク質濃縮物は、一般にMPC(Milk Protein Concentrate)またはTMP(Total Milk Protein)と呼ばれており、本発明では、以下、これらを総称してMPCと記す。また、脱乳糖パーミエートは、MPCを調製する過程において、膜処理により生じる透過液(パーミエート)を濃縮して乳糖を結晶化させ、濾過または遠心分離により結晶化した乳糖を除去した母液、または母液を乾燥させて得られる、乳糖を40重量%以上、ミネラルを10重量%以上含有する粉末である。また、前記母液も、乳糖を固形分当り40重量%以上、ミネラルを固形分当り10重量%以上含有する液体であれば脱乳糖パーミエートとして用いられる。本発明では、以下、脱乳糖パーミエートの粉末をDLP(Delactosed Permeate Powder)と記す。このようなDLPを原料ミックスに添加することにより、発酵乳の発酵促進の効果が得られるが、発酵を促進させることができるのは、DLPが脱脂乳を濃縮したときの膜透過成分であるため、もとの脱脂乳に含まれる低分子のペプチド等の非タンパク態窒素が含まれていて、この非タンパク態窒素が乳酸菌の成長を助長させるためであると考えられる。
【0008】
また、上記のように調製されたMPCは、タンパク質を高濃度に含有し、乳糖やミネラルの含有量が少ないため、これを原料ミックスに配合すると発酵乳の無脂乳固形分中のタンパク質含量を高めることができる。すなわち、無脂乳固形分は通常のミックスと同様であるが、タンパク質含量が高くなるため、安定剤を添加しないにもかかわらず、適度な硬度 (40〜60g/cm2)及び粘度 (50〜60 poise:ポアズ) を有し、離水の少ないものとなり、さらに組織が安定し、風味のすぐれた発酵乳が得られる。なお、一般に、安定剤を添加しないで発酵乳を調製した場合、硬度 5〜30g/cm2 、粘度10〜40 poiseを有するものとなる。また、本発明でいう無脂乳固形分とは、乳由来のタンパク質、乳糖、ミネラルを意味し、これらは発酵乳の原料ミックスでは、全脂乳、脱脂乳、脱脂粉乳等からなる原料乳に由来するものである。本発明においては、MPCを用いることにより無脂乳固形分中のタンパク質含量を通常の原料ミックス中のタンパク質含量以上に調整することができる。さらに本発明において、MPCとともに配合されるDLPは、非タンパク態窒素を含有し、これが乳酸菌の生育を助長するため発酵乳の発酵を促進させるこができ、さらにDLPには香気成分が含有されているので、発酵乳の風味が良好になる。
【0009】
また、本発明は、発酵乳の製造において、原料ミックスに乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを配合することを特徴とする組織の安定した発酵乳の製造方法に関する。
【0010】
本発明では、原料ミックスにMPCとともにDLPを配合する以外は、常法にしたがって発酵乳を製造する。まず、水、生乳、脱脂粉乳、バター、クリーム及びMPCをホモミキサーを用い、適宜混合して、原料ミックスを調製する。MPCは原料ミックス中のタンパク質濃度が 1〜15重量%となるように配合し、これを均質圧 0〜500kg/cm2 で均質処理を行い、MPCを完全に溶解させる。MPCは、上記のように処理されたものを用いることができる。すなわち、脱脂乳を除菌用膜等で除菌した後、DF膜やUF膜により膜処理したものを殺菌または滅菌後、濃縮、乾燥させたもの、あるいは保持液や濃縮液も用いることができる。さらに、一般に市販されているMPCも使用可能である。尚、MPC由来のタンパク質濃度が1%未満の場合目的とする効果が期待できず、15%を超えると風味や組織に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0011】
さらに、MPCとともに原料ミックスに配合するDLPは 1〜 8重量%の範囲で添加すればよく、特に好ましくは、1.5 〜5 重量%添加するのがよい。DLPの添加量が1%未満の場合は目的とする効果が期待できず8%を超えると風味に悪影響を与える。また、ミネラル、乳糖、核酸やアミノ酸等の非タンパク態窒素成分を適宜添加してもよい。その添加量はミネラルの場合、通常の原料ミックスの無脂乳固形分中のミネラル組成と同量あるいはその1〜 3倍量を添加することができ、乳糖の場合、原料乳の無脂乳固形分、すなわち無脂乳固形分中の乳タンパク質やミネラルの含量に応じて、最終的に目的の無脂乳固形分濃度となるように任意に調整するために添加量を適宜調整して、添加すればよく、非タンパク態窒素の場合、原料ミックス中に 0.1 重量%以下を添加することもできる。また、乳脂肪源として配合するバターやクリームの代わりに、高濃度クリーム及びその類似品を配合することもできる。この高濃度クリームとは、殺菌または滅菌された生クリームをUF膜や分離機を用いて脂肪分50〜80重量%まで濃縮したものである。
【0012】
次いで、原料ミックスを殺菌する。殺菌は、プレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、ジャケット付きタンク等を用いることができ、70〜140 ℃で、1秒〜30分間行えばよく、好ましくは、90〜95℃で 1分〜10分間行うとよい。さらに加熱殺菌した原料ミックスをプレート式熱交換機、チューブラー式冷却機、ジャケット付きタンク等を用いて、40〜50℃に冷却する。これに乳酸菌スターターを 1〜8重量%添加し、乳酸菌の生育に好適な温度(乳酸菌によって異なるが、以下に示す乳酸菌であれば32〜43℃前後)に保持して 1〜24時間程度、好ましくは 2〜4時間程度発酵させ、乳酸酸度が0.7〜1.1%に達した時点で発酵を終了させて、静置型発酵乳を得ることができる。このとき、使用する乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus) 、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌スターターであれば特に制限されることはない。また市販の乳酸菌スターターも用いることができる。
【0013】
上記のようにして得られるカードを攪拌して破砕し、100kg/cm2 以下で均質処理することにより、攪拌型発酵乳を得ることができる。また、得られたカードを攪拌して破砕し、必要に応じて10〜40%の糖液を混合し、100〜250kg/cm2 で、均質処理することにより、液状発酵乳を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定して解釈されるものではない。
【0015】
[参考例1]
MPC(ALAPRO4850, New Zealand Dairy Board社製、タンパク質含量82.6%)を4.3kg 、バター 4.0kg、上白糖 8kg、乳糖 5.5kg、リン酸二水素カリウム376g 、クエン酸三カリウム97g 、クエン酸三ナトリウム 158g 、塩化カルシウム75g 、塩化マグネシウム 51g、及び水77.6kgをホモミキサーで混合し原料ミックスを調製した。この原料ミックスを50℃まで加熱し、80kg/cm2で均質処理した。次いで、プレート式殺菌機で90℃、10分間殺菌し、プレート式熱交換機を通過させて、42℃に冷却した。これにヨーグルトスターター(MRC32、雪印乳業製)を 4重量%添加し、100ml の容器に充填し、42℃で発酵させ、乳酸酸度が0.75%になったところで 5℃まで冷却し、静置型発酵乳を得た。これを参考品1とした。
【0016】
【実施例1】
MPC(MPC80、DMV社製、タンパク質含量80.5%) 6.2kg、バター 3kg、上白糖10.5kg、DLP(ミネラル含量24%、乳糖含量58%)3.1kg 、乳糖0.2kg 、水77.0kgをホモミキサーで混合し原料ミックスを調製した。この原料ミックスを50℃まで加熱し、80kg/cm2で均質処理した。次いで、プレート式殺菌機で90℃、10分間殺菌し、プレート式熱交換機を通過させて、42℃に冷却した。これにヨーグルトスターター(MRC32、雪印乳業製)を 4重量%添加し、100mlの容器に充填し、42℃で発酵させ、乳酸酸度が0.75%になったところで 5℃まで冷却して、静置型発酵乳を得た。これを本発明品1とした。
【0017】
[比較例1]
実施例1と無脂乳固形分が同じになるように、脱脂粉乳 9.5kg、バター 3kg、上白糖10.5kg、水77kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスを調製した。この原料ミックスを用い実施例1と同様の方法で発酵乳を得た。これを試料1とした。また、実施例1とタンパク質含量が同じになるように、脱脂粉乳14.7kg、バター 3kg、上白糖10.5kg、水71.8kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスを調製した。実施例1と同様の方法で発酵乳を得た。これを試料2とした。
【0018】
[試験例1]
本発明品1、試料1及び試料2の無脂乳固形分、脂肪、タンパク質含量を表1に示す。また、硬度及び離水の測定と、風味及び組織について官能評価を行った。測定及び評価方法を以下に示す。硬度の測定は、レオナー(山電株式会社製)を用いて行った。すなわち100mlの容器に充填した試料に直径16mmのプランジャーを速度1mm/秒で陥入させ、試料が破断したときの破断応力 (g/cm2)を測定し、硬度とした。離水の測定は、5 ℃で 1週間保存した試料をアイスクリームスクープ(直径45mm)を用いて、半球状にすくい、平らな面を下にして、ステンレス製のメッシュ(編目幅0.4mm)上にのせ、10℃で 2時間放置し、下に落ちた液体を漏斗で集めその体積を測定した。なお、スクープですくった半球状の試料の体積は、29mlであった。官能評価は10人のパネラーに各試料を食してもらい、風味と組織について、大変良い:4点、良い:3点、悪い:2点、大変悪い:1点で評価し、その平均点で示した。塩味については、感じるか否かについて評価した。
【0019】
【表1】
【0020】
本発明品1は試料1と比べて無脂乳固形分は同量であり、タンパク質含量が高く、また試料2と比べると無脂乳固形分の含量は低く、タンパク質含量は同量である。試験の結果は、本発明品1と試料1を比べると本発明品1の方が硬度が高く、離水も少ないものであった。また、本発明品1と試料2を比べると硬度はほぼ同様であったが、試料2は塩味を感じるものであった。官能検査によれば、本発明品1は試料1及び2に比べ風味及び組織について良好な評価を得た。
【0021】
【実施例2】
MPC(ALAPRO4850, New Zealand Dairy Board社製、タンパク質含量82.6%)を6.5kg 、バター 4kg、上白糖10.5kg、DLP(ミネラル含量24%、乳糖含量58%)3.1kg 、乳糖 4kg、水71.9kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスを調製した。この原料ミックスを50℃まで加熱し、80kg/cm2で均質圧で均質処理した。次いで、プレート式殺菌機で90℃、10分間殺菌し、プレート式熱交換機を通過させ、42℃に冷却した。これにヨーグルトスターター(MRC32、雪印乳業製)を 4重量%添加し、42℃で発酵させ、酸度が1.10%になったところで 5℃まで冷却した。得られたカードを30rpm で攪拌しながら破砕した。異性化糖(フラクトB-30、二村化学工業製)5.5kg、温水44kg、香料 0.5kgを混合し、プレート式殺菌機で90℃に達するまで殺菌し、プレート式熱交換機を通過させ、5 ℃まで冷却して糖液を調製した。前記の発酵後、破砕したカードと糖液を2 対 1の割合で混合し、150kg/cm2 の均質圧で均質化し、液状発酵乳を得た。これを本発明品2とした。
【0022】
[比較例2]
実施例2と無脂乳固形分が同じになるように、脱脂粉乳13.6kg、バター 4kg、上白糖10.5kg、水71.9kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスとした。実施例2と同様の方法で液状発酵乳を得た。これを試料3とした。また、実施例2とタンパク質含量が同じになるように、脱脂粉乳15.9kg、バター 4kg、上白糖10.5kg、水69.6kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスを調製した。この原料ミックスを用い実施例2と同様の方法で液状発酵乳を得た。これを試料4とした。
【0023】
[試験例2]
本発明品2、試料3及び4の無脂乳固形分、脂肪、タンパク質含量を表2に示す。また、分離の測定は、試料50mlを内径 2cmの試験管に入れ、5 ℃で 1週間静置後の上澄液量を試料液量当りの容量%で表した。風味と組織について官能評価を試験例1と同様に行った。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明品2は試料3と比べると無脂乳固形分は同量、タンパク質含量は高く、また試料4と比べると無脂乳固形分含量が低くタンパク質含量は同量である。分離の測定結果は、本発明品2と試料3を比べると本発明品3の方が分離の少ないものであった。また、本発明品2と試料4を比べると試料4は塩味が感じられ、味の点で好ましくなかった。官能検査によれば、本発明品2は試料3及び4に比べ風味及び組織において良好な評価を得た。
【0026】
【実施例3】
MPC(MPC80、DMV社製、タンパク質含量80.5%) 6.5kg、バター 4kg、上白糖10.5kg、DLP (ミネラル含量37%、乳糖含量58%)3.1kg 、乳糖4kg 、水71.9kgをホモミキサーで混合し、 原料ミックスを調製した。この原料ミックスを50℃まで加熱し、80kg/cm2で均質処理した。次いで、プレート式殺菌機で90℃、10分間殺菌し、プレート式熱交換機を通過させ、42℃に冷却した。これにヨーグルトスターター(MRC32、雪印乳業製)を 4重量%添加し、42℃で発酵させ、酸度が1.10%になったところで 5℃まで冷却した。これを羽根付き攪拌機を用いてカードを破砕して攪拌型発酵乳を得た。これを本発明品3とした。
【0027】
[比較例3]
実施例3と無脂乳固形分が同じになるように、脱脂粉乳10.5kg、バター 4kg、上白糖10.5kg、水75.0kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスとした。実施例3と同様の方法で液状発酵乳を得た。これを試料5とした。
また、実施例3とタンパク質含量が同じになるように、脱脂粉乳14.7kg、バター 4kg、上白糖10.5kg、水70.8kgをホモミキサーで混合し、原料ミックスを調製した。この原料ミックスを用い実施例4と同様の方法で液状発酵乳を得た。これを試料6とした。
【0028】
[試験例3]
本発明品3、試料5及び試料6の無脂乳固形分、脂肪、タンパク質含量を表3に示す。また、粘度及び離水の測定と風味、組織及び塩味について官能評価を行った。粘度の測定は、B型粘度計(東京計器製)を用い、試料100ml を測定カップにとり、測定プローブ(ロータNO.4)を挿入し、60rpm/分で測定を行った。30秒後、回転が安定し、粘度が一定となった段階で測定値を読み取り、試料の粘度(poise(p))として示した。なお、離水の測定及び官能評価は試験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
本発明品3は試料5と比べると無脂乳固形分は同量、タンパク質含量は高く、また試料6と比べると無脂乳固形分含量は低くタンパク質含量は同量である。試験の結果は、本発明品3と試料5を比べると本発明品3の方が粘度が高く、離水も少ないものであった。また、本発明品3と試料6を比べると本発明品3の方が好ましい粘度となり、離水も少なかった。また、試料6は塩味が感じられ味の点で好ましくなかった。官能検査によれば、本発明品3は試料5及び6に比べ風味及び組織について良好な評価を得た。
【0031】
【実施例4】
MPC(ALAPRO4850, New Zealand Dairy Board社製、タンパク質含量82.6%)を4.3kg 、バター 4.0kg、上白糖8kg 、DLP(ミネラル含量18%、乳糖含量71%)4.3kg 、乳糖 3.7kg、水77.7kgを用いて、参考例1と同様の方法で静置型発酵乳を得た。これを本発明品4とした。
【0032】
【試験例4】
参考例1で得られた参考品1及び本発明品4の無脂乳固形分、脂肪、タンパク質含量を表4に示す。なお、参考品1と本発明品4は、ミネラル成分が同等になるように調整した。また、硬度、離水の測定と風味及び組織について官能評価を行った。測定及び評価方法は、試験例1と同様の方法で行った。さらに、発酵時間を測定した。これらの結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
本発明品4は、これと組成が同じになるように調製した参考品1に比べ、硬度が高く、離水も少ないものであり、発酵時間も短縮され、発酵促進の効果が確認された。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、原料ミックスにMPCを配合することにより、安定剤を添加しないにもかかわらず適度な硬度及び粘度を有し、離水が少なく、組織が安定し、風味のすぐれた乳酸菌発酵による発酵乳を得ることができる。しかもMPCは、安価に入手出来るため、製造コストを低減することも可能となる。さらにMPCとDLPを配合することにより、乳酸菌の発酵を促進し、発酵時間を短縮し、工業的に有利に発酵乳を製造することができる。また、得られた発酵乳は、さらに風味のすぐれたものとなる。
Claims (4)
- 原料ミックス中に乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを配合してなる乳酸菌発酵による組織の安定した発酵乳。
- 原料ミックス中の乳タンパク質濃縮物由来のタンパク質濃度が1〜15重量%及び脱乳糖パーミエートが 1〜8重量%になるように乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを配合して原料ミックスを調製し発酵させることにより得られる請求項1に記載の組織の安定した発酵乳。
- 乳タンパク質濃縮物がタンパク質を50重量%以上含有するものである請求項1又は2に記載の発酵乳。
- 発酵乳の製造において、原料ミックスに乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを配合することを特徴とする乳酸菌発酵による組織の安定した発酵乳の製造方法。
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