JP3754744B2 - 粘着フィルム - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、人体や動物の身体の火傷,切傷,炎症部位等の創傷面に貼着してこれらを保護するために、もしくはあらかじめ手術周辺部に貼着して周辺皮膚表面雑菌の移動を防止するために用いる粘着フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、接着性を有しかつ酸素と水蒸気に対して高い透過性を有する通気性の、または逆に皮膚からの水蒸気の発散を防ぐ水蒸気非透過性の粘着フィルムが、例えば身体の火傷、切傷、炎症部位等の創傷面を保護する目的で、もしくは手術周辺部に貼着して周辺皮膚表面雑菌の移動を防止する目的で用いられてきている。そして、この粘着フィルムは身体の部分の形状に完全に追従しなければならず、しかも皮膚に直接貼着される関係上、基材が極めて薄いフィルム状もしくは箔状のものが要求されている。しかしながら、このように基材が薄いフィルム状または箔状の粘着フィルムは、その薄さのため貼着しようとする患部の表面積が大きくなればなるほど施用が非常に困難なものとなる。即ち、患部の表面積が大きくなるにつれて、貼着時にしわが入ったり、カールして接着剤同士がくっついてしまうというようなことが多くなるからである。
【0003】
ところで、このような問題を解決したドレープと称するいくつかの基材が薄いフィルム状または箔状の粘着フィルムが提案されている。例えば図7に示す粘着フィルムがあり、これは基材1の両端に粘着剤2の塗布されていない把持部分1aを設けたものである。この把持部分1aを持ってフィルム状または箔状の基材1を離型紙3より引き剥がして使用している。しかしながら、基材1が非常に薄いフィルム状または箔状であるため、この把持部分1aが自立できず、カールしたり,折れ曲がったりして取扱いにはなはだ不都合が生じる。
【0004】
これを解決するために、図8に示す粘着フィルムがあり、これは把持部分1a上に補強粘着テープ4を張りつけたものである。この粘着フィルムでは、被着体への貼着作業性は向上するが、補強粘着テープ4を基材1より引き剥がす時に基材1が伸びたり,破れたりする欠点の他、被着体への貼着後も端部に図7同様の非粘着部分が生じるので、貼着後に非粘着部分より剥がれやすいなどの患者の快適性を損なう恐れがある。
【0005】
また、これを解決するために、図9に示す粘着フィルムがあり、これは基材1の端部に把持片5を熱融着すると共にミシン目6を設けたものである。この把持片5と離型紙3の端末を持って、離型紙3を基材1より引き剥がして、基材1を患者の皮膚に貼着する。しかる後に、ミシン目6から基材1の端末を切り離し、把持片5を取り去る。しかしながら、このように離型紙3を剥離するとき、ともすればミシン目6より基材1が破断したり,ミシン目6より基材1の端部を切り離すときに端が伸びて、カールしたりすることがあり、貼着作業性に難点がある他、基材端部の被着体への密着性に問題がある。
【0006】
さらに、これを解決するために、図10に示す粘着フィルムがあり、これは基材1の端末に把持片5となる離型紙を平行に並べ、この把持片5と基材1とを剛性をもつ補強粘着テープ4で上部より貼り合わせたものである。しかしながら、この粘着フィルムでは離型紙3の剥離作業性は良好であるが、補強粘着テープ4は基材1の端部から剥がすことができない。つまり無理に剥がすと基材1が破れたり,伸びたりしてカールし、基材1端部が団子状になり基材1端部が肌に密着しないためである。即ち、この方法では最終的には把持片5を取り去って補強粘着テープ4で基材1の端部を肌に貼着させなければならない。その結果、図8および図9に示す粘着フィルムと同様に基材1の酸素と水蒸気に対する透過性や気密性を失い、粘着フィルムとしての機能を失うおそれがあるばかりでなく、補強粘着テープ4に剛性があるためゴワゴワして患者の快適性を損なうことにもなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来から提案されている粘着フィルムは、いずれも基材1の端末部分の貼着に問題があり、特に把持片5の除去並びに把持部分となる基材1の端末部分の機能が不十分なために、結果的に基材1そのものの機能をも阻害するという致命的な欠点を有している。
【0008】
この発明はかかる問題点を解消するためになされたもので、特に基材の離型紙からの剥離が容易であることは勿論のこと、基材端部の被着体への貼着が完全で、しかも貼着後における基材の酸素と水蒸気に対する高い透過性を有する通気性もしくは逆に皮膚からの水蒸気の発散を防ぐ水蒸気非透過性を損なわない粘着フィルムを得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る粘着フィルムは、プラスチックフィルムまたは箔からなる基材の片面に感圧性接着剤層を設けると共に、この感圧性接着剤層上に少なくとも指で掴める幅にその両端部もしくは片端部の長手方向にカットラインをいれて掴み部を形成した離型紙を貼着し、さらに前記掴み部に接する部位近傍の離型紙背面に所望の幅の把持片を接合せしめてなるものである。
【0010】
従って、この発明においては、基材上に把持片を設ける等の加工を一切行わないために、基材は常に均一性を有し、貼着時基材端末部の被着体への密着性を確保する働きを有する。また、粘着フィルムの製造時における基材への汚れの付着が防止できるという衛生機能を有する。さらに施用時においては離型紙にカットラインを入れて形成した掴み部が貼着時まで基材端部を保護するという基材端部保護機能を有する。また貼着後に掴み部を基材から引き剥がすに際して、基材内側方向より外側に向けて引き剥がすことにより基材端末にしわやカールを生じさせることなく被着体に容易にかつ完全に密着させることができるという働きを有する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6はこの発明の異なる実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図であり、基本構造としてプラスチックフィルムまたは箔からなる基材7とその片面に設けた感圧性接着剤層8とこの感圧性接着剤層8に貼着されかつカットライン9により掴み部10が形成された離型紙11と離型紙11に接合した把持片12とを備えている。そして、図1のものは2枚の掴み部10と2枚の把持片12とを有しかつそれぞれの把持片12が離型紙11の端部近傍にカットライン9より外側方向に位置するように接合されてなる粘着フィルム、図2のものは1枚の掴み部10と1枚の把持片12とを有しかつ把持片12が離型紙11の端部近傍にカットライン9より外側方向に位置するように接合されてなる粘着フィルム、図3のものは2枚の掴み部10と1枚の把持片12とを有しかつ把持片12が離型紙11の端部近傍にカットライン9より外側方向に位置するように接合されてなる粘着フィルム、図4のものは2枚の掴み部10と2枚の把持片12とを有しかつ2枚の把持片12がそれぞれ離型紙11の端部近傍にカットライン9より内側方向に位置するように接合されてなる粘着フィルム、図5のものは1枚の掴み部10と1枚の把持片12とを有しかつ把持片12が離型紙11の端部近傍にカットライン9より内側方向に位置するように接合されてなる粘着フィルム、図6のものは2枚の掴み部10と1枚の把持片12とを有しかつ把持片12が離型紙11の端部近傍にカットライン9より内側方向に位置するように接合されてなる粘着フィルムである。
【0012】
ここにおいて、図1〜図6に示すこの発明の各実施の形態は、基材7として、厚さ10μ〜100μmのフィルム状ないし箔状の熱可塑性樹脂であって、例えばポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂,ポリエステル樹脂,フッソ含有共重合体樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリ塩化ビニリデン樹脂が適宜選択されて使用される。そして、この中でも特に通気性を持つ箔またはフィルムとしてウレタンフィルムまたは箔が最適である。また、非通気性の基材7としては水蒸気不透過率の高いポリ塩化ビニリデンが好ましい。
【0013】
また、基材7のフィルムまたは箔は、透明であっても不透明であっても、着色されていても非着色であっても良いが、傷等の患部を上から見ながら貼着しなければならないような用途では、当然透明フィルムでなければならない。
【0014】
次に、感圧性接着剤層8としては、医療用としてカブレや刺激の少ない接着剤が選択される。そして、これらの主成分としては天然ゴム,水系高分子エマルジョン,熱可塑性ゴム,ポリウレタン,ポリアクリルエステルコポリマー等が適宜選択されて使用される。また、溶媒としては水系,溶剤系いずれも使用することができる。
【0015】
一方、この発明に用いられる感圧性接着剤層8の粘着力は、被着体特に人体または動物の皮膚に対し、100g/10mm〜800g/10mmの粘着力が必要である。これは100g/10mm以下では粘着力が弱すぎ、皮膚の発汗や動き等によって剥がれてしまう恐れがあるからであり、800g/10mm以上では粘着力が強すぎ、誤着や取り替え時の剥離においてかえって皮膚を痛めてしまう恐れがあるからである。
【0016】
さらに、離型紙11の材質としては、通常医療用粘着フィルムの離型紙として用いられるものであって良いが、シリコーン処理されたクラフト紙,グラシン紙またはシリコーン処理されたポリエチレンをラミネートしたクラフト紙,グラシン紙等が好適に用いられる。
【0017】
また、この離型紙11の感圧性接着剤層8からの剥離力は、略0.5g/10mm〜30g/10mm、より好適には略1g/10mm〜10g/10mmが要求される。その理由は、0.5g/10mm以下の軽い力で剥離できるような場合は保管や運搬中の衝撃や動きで離型紙11が剥がれてしまい、感圧性接着剤層8がむき出しになる恐れがあるからである。また、30g/10mm以上の重い剥離力では、施用にあたって感圧性接着剤層8からの剥離に手間取ったり,離型剤層の層間剥離を引き起こしたりして好ましくないからである。
【0018】
さらに、この離型紙11の片端部もしくは両端部に設けた掴み部10を形成するためのカットライン9は、基材7が切断されることなく離型紙11のみあるいは離型紙11及び感圧性接着剤層8に完全に切り込まれる必要がある。なぜなら、基材7にまでカットライン9が到達していると、把持片12と掴み部10をもって基材7から離型紙11を引き剥がす際、掴み部10が基材7ごとカットライン9より破断してしまうためである。また、カットライン9が逆に離型紙11に完全に切り込まれていないと、掴み部10と把持片12をもって引き剥がすときに把持片12が離型紙11から外れたり、離型紙11がカットライン9の位置近傍で引き裂けたりあるいは離型紙11が層間剥離を起して好ましくないためである。
【0019】
さらにまた、この把持片12の幅は掴み部10の幅より広くても,狭くてもあるいは同じでも良いが、好ましくは把持片12の幅と掴み部10のどちらかの幅が他方の幅よりも広いことが好ましい。
また、掴み部10の幅は少なくとも指で掴める幅即ち略1cm以上から製品幅の1/4を超えない大きさが適当である。なぜなら、掴み部10の長さが略1cm未満の場合は、施用時、把持面積が小さすぎて持ちにくく、作業がやりにくい。また製品幅の1/4を超えると製品としての形状をなさない。
【0020】
また、把持片12の幅長さは、離型紙11に接着する幅を除いて略1cm以上で製品幅の1/3を超えない幅長さが適当である。この把持片12の幅長さを調節することにより被着体に対する有効な透視面積が確保でき、これにより作業性がさらに良くなる。
【0021】
一方、把持片12を構成するフィルムは、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミド,ポリ塩化ビニル,ポリエステルなどのプラスチックフィルムであっても良いし、クラフト紙,グラシン紙等の紙素材であっても良いが、把持したときに適度な摩擦抵抗を有するものが望ましい。
【0022】
さらに、把持片12はカットライン9に接する部位近傍の離型紙11の背面に図1〜図6に示すように一定の接合幅を持つように接合されるが、図1〜図3に示すようにカットライン9より外側方向へ位置するように接合しても良いし、逆に図4〜図6に示すようにカットライン9より内側方向に位置するように接合しても良い。また、把持片12と離型紙11とを接合する接合部13の接合強度は略40g/10mm以上の強度が必要であるが、さらに好ましくは100g/10mm以上の接合強度を持つことが望ましい。これは離型紙11と感圧性接着剤層8との剥離強度を超えることが必要であり、さらに基材7と離型紙11とを剥離するときに生じる剛性抵抗に耐える必要があるためである。なお、把持片12と離型紙11とを接合するに際しては、粘着剤、接着剤で接合する他、熱融着接合させてもよい。
【0023】
次に、図1,図4の粘着フィルムの施用例について述べれば、離型紙11の背面に接着した一方の把持片12を一方の手に持つかあるいは一人が持ち、この一方の把持片12と同じ側の掴み部10とこの掴み部10と同位置の基材7端部とを他方の手で持つかあるいはもう一人が持って、一方の把持片12が接合されている離型紙11を一方の把持片12によって基材7からゆっくりと引き剥がした後または引き剥がしつつ、基材7の感圧性接着剤層8面が順次被着体に接するように基材7を掴み部10ごと被着体に貼着する。次いで、掴み部10を基材7の内側から外側方向に向けて剥離し、基材7の端末を浮かせることなくかつしわやカールをつくることなく被着体に密着させるように貼着して終了する。このような施用方法はきわめて簡単でかつ安全である。即ち、基材7の端部が貼着作業の最終まで掴み部10により保護されているので、きわめて薄いフィルムや箔で構成されている基材7の端部に生じるしわやカールの心配をすることなく貼着することができるからである。なお、幅広い基材7を例えば患者の背中等に貼着するときは、図1,図4のように両端部に把持片12を有するものを用いて、三人で作業し、二人が基材7の両端部をもって支えつつ、一人が離型紙11の剥離と貼着作業を行えば、基材7の端末及び中央部にしわやカールを生じさせることなく、わけなく貼着することができる。そして、図2,図3,図5,図6の粘着フィルムでは、一端部の把持片12から施用すれば良い。
【0024】
【実施例】
次に、この発明による粘着フィルムの実施例を示す。即ち、長さ50cm,幅30cm,厚さ30μmの透明なウレタンフィルムからなる基材7の片面に感圧性接着剤層8としてアクリル粘着剤20μmを塗布した図1に示すような形状の粘着フィルムを作成し、その性能を調べると共に実用に供したところ表1のような結果を得た。
【0025】
【表1】
【0026】
なお、この場合の各構成部位の寸法サイズは表2のようなものであった。
【0027】
【表2】
【0028】
表1から認められるようにこの発明の粘着フィルムの性能及び実用結果はきわめて満足のいくものであった。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば貼着時における良好な作業性を確保しつつ、貼着後は被着体に対し良好な密着状態を保持し、患者の快適性を損なうことがないし、また基材上に把持片を設ける等の特別な加工を必要としないために、基材の伸びや曲がりを防ぐことができると共に基材へのゴミや埃の付着あるいは汚れを防止できるし、さらに離型紙をカットして形成した掴み部が貼着時の最後まで基材端部を保護しているので、基材端部にしわやカールが生じるのを防ぐことができるし、さらにまた基材を被着体に貼着後掴み部を基材から引き剥がすに際して、基材内側より外側に向けて引き剥がすことにより基材端末を被着体に容易にかつ完全に密着させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図である。
【図2】この発明の異なる実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図である。
【図3】この発明の異なる実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図である。
【図4】この発明の異なる実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図である。
【図5】この発明の異なる実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図である。
【図6】この発明の異なる実施の形態を示す粘着フィルムの縦断側面図である。
【図7】従来の粘着フィルムを示す縦断側面図である。
【図8】従来の異なる粘着フィルムを示す縦断側面図である。
【図9】従来の異なる粘着フィルムを示す縦断側面図である。
【図10】従来の異なる粘着フィルムを示す縦断側面図である。
【符号の説明】
7 基材
8 感圧性接着剤層
9 カットライン
10 掴み部
11 離型紙
12 把持片
Claims (1)
- プラスチックフィルムまたは箔からなる基材の片面に感圧性接着剤層を設けると共に、この感圧性接着剤層上に少なくとも指で掴める幅にその両端部もしくは片端部の長手方向にカットラインを入れて掴み部を形成した離型紙を貼着し、さらに前記掴み部に接する部位近傍の離型紙背面に、離型紙に接着する幅を除いて1cm以上で製品幅の1/3を超えない幅長さを持つ把持片を40g/10mm以上の接合強度が保持されるように所望の幅に接合せしめてなることを特徴とする粘着フィルム。
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