JP3753455B2 - ビスフェノールa製造用触媒の再生方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は活性劣化したビスフェノールA製造用触媒の再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビスフェノールA〔2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン〕を製造するために、アセトンと過剰のフェノールを触媒の存在下で反応させることは知られている。この場合、触媒としては、スルホン酸型陽イオン交換樹脂(未変性樹脂)が用いられている。しかし、このものを触媒として用いる場合には、ビスフェノールAの異性体である2−(2′−ヒドロキシフェニル)−2−(4′−ヒドロキシフェニル)−プロパン(以下、単に2,4′−ビスフェノールAという)が相当量副生するため、ビスフェノールAの選択率が低下するという問題がある。そこで、この問題を解決するために、含イオウアミン化合物で変性した変性スルホン酸型陽イオン交換基(以下、単に変性スルホン酸基とも言う)と未変性スルホン酸型陽イオン交換基(以下、単に未変性スルホン酸基とも言う)の両方を含有する変性樹脂を用いることが提案されている(特開昭61−118407号公報、特公昭55−16700号公報、特公平3−36576号公報等)。
ところで、このような変性樹脂からなる触媒を用いてビスフェノールAを製造する場合、その活性は使用時間とともに、徐々に劣化し、ある期間使用した後には、新しい触媒と交換することが必要となる。
しかしながら、このような触媒交換は、その交換に多くの手間を要する上、経済的にも不利である。従って、劣化した触媒を工業的に有利に再生する方法の開発が要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、活性劣化したビスフェノールA製造用触媒を工業的に有利に再生する方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、含イオウアミン化合物で変性された変性スルホン酸型陽イオン交換基と未変性スルホン酸型陽イオン交換基の両方を含有する変性樹脂からなる活性劣化したビスフェノールA製造用触媒の再生方法において、活性劣化したビスフェノールA製造用触媒に、酸強度pKaが3以下の酸を含有するフェノール溶液を、乾物基準の触媒1kg当り0.01〜0.20kg/分で接触させた後、含イオウアミン化合物を含有するフェノール溶液を該触媒に接触させることを特徴とするビスフェノールA製造用触媒の再生方法が提供される。
【0005】
本発明で用いるスルホン酸型陽イオン交換樹脂は、従来よく知られているもので、ゲル型やポーラス型のものを用いることができるが、好ましくはゲル型のものが用いられる。その架橋度は、通常、2〜16%、好ましくは2〜6%の範囲に規定するのがよい。また、その平均粒径は、通常、0.2〜2mm、好ましくは0.4〜1.5mmである。このような未変性のスルホン酸型陽イオン交換樹脂は既に市販されており、例えば、ロームアンドハース社製アンバーライトやアンバーリスト、三菱化成社製ダイヤイオン等を好ましく用いることができる。
【0006】
本発明でスルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性に用いる含イオウアミン化合物も従来よく知られた化合物で、例えば、3−メルカプトメチルピリジン、3−メルカプトエチルピリジン、4−メルカプトエチルピリジン等のメルカプトアルキルピリジン;2−メルカプトエチルアミン、3−メルカプトブチルアミン、3−n−プロピルアミノ−1−プロピルメルカプタン等のメルカプトアルキルアミン(又はアミノアルキルメルカプタン);チアゾリジン、2,2−ジメチルチアゾリジン、シクロアルキルチアゾリジン、2−メチル−2−フェニルチアゾリジン、3−メチルチアゾリジン等のチアゾリジン;1,4−アミノチオフェノール等のアミノチオフェノール等が挙げられる。特に好ましくは、2−メルカプトエチルアミン及び2,2−ジメチルチアゾリジンである。前記した含イオウアミン化合物は、塩酸等の酸性物質の付加塩や第4級アンモニウム塩であることができる。
【0007】
スルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性は、その樹脂を水中又は有機溶媒中で含イオウアミン化合物と反応させることによって行うことができる。有機溶媒としては、フェノールやアセトンを用いることができるが、好ましくは水中で行う。反応温度としては、常温又は加温が採用され、反応時間は、特に長時間を必要とせず数分で充分である。均一に反応させるため、反応混合物を撹拌するのが好ましい。この反応においては、未変性樹脂中に含まれるスルホン酸型陽イオン交換基(未変性スルホン酸基)の一部、通常、3〜30%、好ましくは5〜15%が、変性スルホン酸型陽イオン交換基(変性スルホン酸基)に変換されるように行うのがよい。
【0008】
前記変性樹脂を用いてビスフェノールAを製造するには、前記変性樹脂を触媒として充填した反応器に対し、アセトンとフェノールを連続的に供給してその変性樹脂充填層を流通させるとともに、その間にアセトンとフェノールの反応を行い、得られたビスフェノールAを含む反応生成物を反応器から連続的に抜出す。反応温度はフェノールの融点以上の温度、通常、40〜100℃、好ましくは50〜90である。反応圧力は、1〜1.5気圧、好ましくは常圧ないし微加圧である。反応時間は15〜200分、好ましくは30〜120分である。フェノールの使用量は、アセトン1モルに対し、8〜20モル、好ましくは10〜16モルである。
【0009】
次に、本発明を図面を参照しながら説明する。
図1はビスフェノールA製造用反応器の説明図である。図1において、1は反応器、2は樹脂充填層(触媒充填層)を示す。
【0010】
反応器に触媒充填層を形成するには、先ず、ビスフェノールA製造用反応器1に対して、未変性のスルホン酸型陽イオン交換樹脂を充填し、未変性樹脂充填層2を形成する。未変性樹脂は、通常、含水物として市販されているが、このような含水未変性樹脂は、含イオウアミン化合物のフェノール溶液との接触に先立ち、あらかじめフェノールと接触させ、その樹脂中に含まれる水をフェノールと置換させるのが好ましい。
次に、バルブ5及びバルブ6を開いた状態で、含イオウアミン化合物のフェノール溶液を、ライン3を介して反応器底部に導入し、さらに未変性樹脂充填層2内を上方に流通させる。充填層2の上部空間には充填層2を流通してきたフェノール溶液が貯留し、その上部空間容積より過剰のフェノール溶液はこれをライン4を介して反応器外へ抜出す。前記フェノール溶液中の含イオウアミン化合物の濃度は、通常、0.1〜10wt%、好ましくは1〜5wt%である。また、未変性樹脂充填層2中を流通させるフェノール溶液の全供給量は、全未変性樹脂量の3〜30wt%、好ましくは5〜15wt%が変性樹脂に変換される量である。未変性樹脂充填層を流通させるフェノール溶液の流通速度は、乾燥物基準の樹脂1kg当り、0.01〜0.20kg/分、好ましくは0.02〜0.1kg/分である。
前記のようにして反応器内において未変性樹脂と含イオウアミン化合物との反応を行った後、バルブ5を開き、反応器内に存在するフェノール溶液を反応器外へ抜出す。このようにして、反応器1内には、変性スルホン酸基と未変性スルホン酸基の両方を含有する変性樹脂からなる触媒充填層2が形成される。このようにして形成された触媒充填層は、それに含まれる変性スルホン酸基がほぼ均一に分散したもので、触媒充填層底部と頂部における変性スルホン酸樹脂中の変性スルホン酸基の含有率の差は、通常、5%以内である。
前記のようにして反応器1内に変性樹脂からなる触媒充填層を形成する場合、フェノール溶液は、反応器底部からではなく、その頂部から下方に流通させることもできる。
【0011】
前記のようにして、反応器1内に未変性樹脂からなる触媒充填層を形成する場合、含イオウアミン化合物は、フェノール溶液として用いることが好ましい。含イオウアミン化合物をフェノール溶液として用い、これを未変性樹脂層2中を流通させるときには、含イオウアミン化合物と未変性スルホン酸基との反応速度が遅いために、充填層2中の未変性スルホン酸基と含イオウアミン化合物の急速な反応が防止され、両者の反応は未変性樹脂層全体にわたって、ほぼ均一化された状態で行うことができる。含イオウアミン化合物を水溶液として未変性樹脂層2中を流通させるときには、含イオウアミン化合物と未変性スルホン酸基との反応速度が速いために、未変性樹脂層の底部において急速な反応が起り、未変性樹脂層2の頂部付近において起る反応は少なく、樹脂層底部における変性スルホン酸基濃度は著しく大きく、一方、樹脂層頂部における変性スルホン酸基濃度は著しく小さいものとなる。
【0012】
前記のようにして形成された触媒充填層を有する反応器は、ビスフェノールA製造用反応器として用いられる。即ち、アセトンとフェノールとの混合液をライン4から反応器1内に導入し、これを触媒充填層2内を流通させる。この間にアセトンとフェノールとの反応が起り、ビスフェノールAを含む反応生物はライン3を通って反応器1から抜出される。
【0013】
前記のようにして反応操作を継続すると、触媒の活性(性能)が徐々に劣化してくる。触媒活性が所望活性より劣化したときには、バルブ6を閉にして反応器に対するアセトンとフェノールとの混合液の供給を停止する。
次に、バルブ5及び6を開いた状態でフェノール溶液をライン3を介して反応器底部に導入し、反応器内に残留するアセトン及びフェノールを置換した後、前記した未変性樹脂を変性樹脂に交換する方法と同様の方法により、含イオウアミン化合物のフェノール溶液を触媒充填層2に流通接触させる。これによって触媒充填層2の再生が達成される。
触媒充填層2の再生に用いるフェノール溶液中の含イオウアミン化合物としては、前記未変性樹脂の変性に用いたものと同じ化合物であることが好ましいが、必ずしも同じ化合物である必要はない。
【0014】
前記のようにして劣化触媒を再生する場合、その再生に先立ち、酸強度pKaが3以下の酸を含むフェノール溶液を触媒充填層2を流通接触させる。この場合の酸としては、その酸強度pKaが3以下のものであればよく、このような酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、くえん酸、トリクロル酢酸等が挙げられる。有機酸が好適であり、有機スルホン酸が特に好適である。フェノール中の酸濃度は、特に制限はないが、フェノール中に均一に溶解する濃度が好ましい。酸の総量は、少なすぎては効果がないので、少なくとも或る最少の総量を使用するのが好ましい。正確な最少有効量は、樹脂の劣化度等により、ケースバイケースで決定することができるが、パラトルエンスルホン酸を用いた最少有効量は乾燥触媒約10g当り、約1gが目安である。酸を含むフェノール溶液を触媒充填層に流通接触させるためには、バルブ5、6を開にした状態で、酸を含むフェノール溶液を、ライン3を介して反応器底部に導入し、さらに触媒充填層2内を上方に流通させる。触媒充填層2の上部空間には触媒充填層2を流通してきたフェノール溶液が貯留し、その上部空間容積より過剰のフェノール溶液はこれをライン4を介して反応器外へ抜出す。触媒充填層を流通させるフェノール溶液の流通速度は、乾物基準の触媒1kg当り、0.01〜0.20kg/分、好ましくは0.02〜0.1kg/分である。この操作により、変性スルホン酸基に結合する含イオウアミン化合物が除去され、未変性スルホン酸基が生成される。前記操作の終了後、バルブ5を開き、反応器内に存在するフェノール溶液を反応器外へ抜出す。このようにして、反応器内には、未変性スルホン酸基を含む未変性樹脂充填層が形成される。前記のようにして酸を含むフェノール溶液を触媒充填層に流通接触させる場合、フェノール溶液は反応器底部からではなく、反応器頂部から下方に向けて流通させることもできる。
【0015】
酸を含むフェノール溶液と触媒充填層との接触温度は、フェノールが液状を示す温度であればよく、通常は、40〜100℃であり、好ましくはフェノールとアセトンとの反応温度である。酸を含むフェノール溶液は、水を含んでいてもよいし、水を含まなくてもよいが、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下の含水フェノールであることが好ましい。このような酸を含むフェノール溶液を用いる前処理を施した触媒充填層は、必要に応じ、フェノールを触媒充填層2を流通接触させて触媒充填層に残存する酸を溶出除去した後、前記触媒の再生処理に付す。
触媒の再生処理に先立ち、前記前処理を行うことにより、その触媒活性(性能)が新触媒とほぼ同レベルにまで再生された再生触媒を得ることができる。
【0016】
本発明者らの研究によれば、触媒の活性劣化は、触媒中の変性スルホン酸基が被毒を受けてその機能停止に起因することが見出された。本発明の触媒再生の原理は、触媒中に変性スルホン酸基を新しく導入し、これにより触媒活性を復元させることにある。活性劣化した触媒に、前処理を行わずに、直接含イオウアミン化合物のフェノール溶液を接触させる再生方法においては、触媒中の未変性スルホン酸基の一部が変性スルホン酸基に変換される。従って、この場合には、機能停止した変性スルホン酸基はそのまま触媒中に残存し、未変性スルホン酸基の数が減少することとなり、その結果、再生触媒は、完全には新触媒の活性レベルにまでは再生されず、その未変性スルホン酸基の数の減少分だけその活性は低くなる。一方、活性劣化した触媒に、酸を含むフェノールを接触させた後、含イオウアミン化合物のフェノール溶液を接触させる再生方法においては、被毒した変性スルホン酸基に結合した含イオンアミン化合物が酸により除去され、未変性スルホン酸基となった後、含イオウアミン化合物と反応し、未変性スルホン酸基の一部が変性スルホン酸基に変換される。従って、この場合には、再生触媒中に機能停止した変性スルホン酸基は残存せず、未変性スルホン酸基の数の減少も起らない。その結果、再生触媒は、ほぼ完全に新触媒の活性レベルにまで再生される。
【0017】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0018】
参考例1
ビスフェノールA製造用反応器に対する触媒の充填を図1に示した反応器を用いて行った。この場合、反応器1としては、内径:120mm、高さ:1.5mの円筒容器からなり、反応器頂底部に多孔板(孔径:約0.1mm)を配設したものを用いた。
【0019】
先ず、この反応器1に対し、水を吸収して湿潤状態にある含水率65wt%の未変性のスルホン酸型陽イオン交換樹脂(平均粒径:0.5mm、商品名「アンバーライト118−H、ローム&ハース社製)を10kg充填し、未変性樹脂充填層2を形成した。次に、バルブ5及びバルブ6を開き、ライン3を介してフェノール流通させ、ライン4より反応器外へ抜き出しながら未変性樹脂にフェノールを接触させて樹脂中の水をフェノールと置換させた。
次いで、このようにして形成された未変性樹脂充填層を有する反応器1に対し、ライン3及びバルブ5を介して、2−メルカプトエチルアミン(MEA)の3wt%フェノール溶液を樹脂充填層の全重量(乾燥物基準)の1.3倍導入するとともに、未変性樹脂層2中を循環流通させた。この場合の樹脂とフェノール溶液の接触温度は70℃であり、樹脂充填層を通過したフェノール溶液の循環量は、樹脂充填層の重量(乾燥物基準)の6倍であり、フェノール溶液の樹脂充填層に対する供給速度は、乾燥物基準の樹脂1kg当り、0.05kg/分である。
以上のようにして樹脂充填層に対するフェノール溶液を供給した後、反応器内のフェノール溶液を反応器外部へ除去した。このようにして形成された樹脂充填層中の変性スルホン酸基含有率の分布を調べたところ、樹脂充填層の頂部における変性樹脂中の変性基含有率は約9.8%であり、一方、その底部における変性樹脂中の変性スルホン酸基含有率は約10.2%であり、変性スルホン酸基は樹脂層中ほぼ全体的に均一に分布していることが確認された。
【0020】
参考例2
参考例1において、MEAフェノール溶液の代りに、2,2−ジメチルチアゾリジン(DMT)のフェノール溶液を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合も、得られた触媒充填層中の変性基の分布はほぼ均一であった。
【0021】
実施例1
参考例1で得られた内部に触媒充填層を形成した反応器1に対し、試薬アセトン(和光純薬工業社製、試薬特級)4.7wt%と試薬フェノール(和光純薬工業社製、試薬特級)95.3wt%からなる混合液をライン4を介して反応器1に導入し、反応生成物をライン3を介して抜出した。この場合、反応温度は70℃とし、触媒と混合液との接触時間は70分とした。
前記のようにして連続反応して得られた500時間目の反応生成物を分析した結果、ビスフェノールAの生成率は7.00モル%であり、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率は0.28モル%であった。
【0022】
前記のようにして3000時間連続的に反応操作を行うと、ビスフェノールAの生成率が4.88モル%に低下し、またその異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率が0.37モル%に上昇した。
この時点において反応操作を停止し、以下の触媒再生処理を行った。
先ず、パラトルエンスルホン酸を3重量%含むフェノール(含水率:0.3wt%)を、バルブ5及び6を開いた状態にしてライン4及びバルブ6を介して反応器内に導入し、触媒充填層2に流通接触させた後、ライン4から抜出した。この場合の触媒充填層2とパラトルエンスルホン酸含有フェノールとの接触温度は70℃であり、また、そのフェノールの触媒充填層に対する供給速度は、乾物基準の触媒1kg当り0.05kg/分である。
前記操作を120分間行った後、そのパラトルエンスルホン酸含有フェノールに代えて、フェノールを前記と同様の条件で120分間供給した。
次に、バルブ5及び6を開いた状態にして、2−メルカプトエチルアミンの3wt%フェノール溶液4.6kgをライン3及びバルブ5を介して反応器内に導入するとともに、触媒充填層2中を循環流通させた。この場合の触媒充填層とフェノール溶液の接触温度は70℃であり、触媒充填層に供給したフェノール溶液の循環量は、触媒の重量(乾物基準)の6倍であり、フェノール溶液の触媒充填層に対する供給速度は、乾燥物基準の触媒1kg当り、0.05kg/分である。 以上のようにして触媒充填層に対するフェノール溶液を供給した後、反応器内のフェノール溶液を反応器外部へ除去した。このようにして形成された触媒充填層中の変性スルホン酸基含有率の分布を調べたところ、触媒充填層の頂部における変性樹脂中の変性スルホン酸基含有率は約10.1%であり、一方、その底部における変性樹脂中の変性スルホン酸基含有率は約10.2%であり、変性スルホン酸基は樹脂層中ほぼ全体的に均一に分布していることが確認された。
次に、バルブ5及び6を開いた状態にして、反応器1に対して前記と同様にして試薬アセトンと試薬フェノールの混合液を供給して反応を行った。
前記のようにして連続反応して得られた500時間目の反応生成物を分析した結果、ビスフェノールAの生成率は6.92モル%であり、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率は0.28モル%であり、触媒はほぼ完全に再生されたことが確認された。
【0023】
比較例1
実施例1において、パラトルエンスルホン酸のフェノール溶液を用いた前処理を行わない以外は、同様にして実験を行った。連続反応して得られた500時間目の反応生成物を分析した結果、ビスフェノールAの生成率は6.13モル%であり、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率は0.28モル%であり、触媒は、新触媒の活性レベルのほぼ88%にまで再生されたことが確認された。
【0024】
実施例2
実施例1において、反応器1として、参考例2で得られた内部に触媒充填層を形成した反応器を用いた以外は同様にして試薬アセトンと試薬フェノールとの反応を行った。前記反応を連続的に行うとともに、その500時間目の反応生成物を分析した結果、ビスフェノールAの生成率は7.05モル%であり、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率は0.29モル%であった。前記のようして3000時間連続的に反応操作を行うと、ビスフェノールAの生成率が4.95モル%に低下し、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率が0.39モル%に上昇した。この時点において反応操作を停止し、以下の触媒再生処理を行った。先ず、パラトルエンスルホン酸を3重量%含むフェノールを、バルブ5及び6を開いた状態にしてライン4から導入し、触媒充填層2に流通接触させた後、ライン3から抜出した。この場合の触媒充填層2とパラトルエンスルホン酸含有フェノールとの接触温度は70℃であり、また、そのフェノールの触媒充填層に対する供給速度は、乾物基準の触媒1kg当り0.05kg/分である。前記操作を120分間行った後、そのパラトルエンスルホン酸含有フェノールに代えて、フェノールを前記と同様の条件で120分間供給した。次に、バルブ5及び6を開いた状態にして、2,2−ジメチルチアゾリジンの3wt%のフェノール溶液6.8kgをライン3及びバルブ5を介して導入するとともに、触媒充填層2中を循環流通させた。この場合の触媒充填層とフェノール溶液の接触温度は70℃であり、触媒充填層に供給したフェノール溶液の循環量は、触媒の全重量(乾物基準)の6倍であり、フェノール溶液の触媒充填層に対する供給速度は、乾燥物基準の触媒1kg当り、0.05kg/分である。以上のようにして触媒充填層に対するフェノール溶液を供給した後、反応器内のフェノール溶液を反応器外部へ除去した。このようにして形成された樹脂充填層中の変性スルホン酸基含有率の分布を調べたところ、触媒充填層の頂部における変性樹脂中の変性スルホン酸基含有率は約9.8%であり、一方、その底部における変性樹脂中の変性スルホン酸基含有率は約9.9%であり、変性スルホン酸基は樹脂層中ほぼ全体的に均一に分布していることが確認された。次に、バルブ5及び6を開いた状態にして、反応器1に対して前記と同様にしてアセトンとフェノールの混合液を供給して反応を行った。前記のようにして連続反応して得られた500時間目の反応生成物を分析した結果、ビスフェノールAの生成率は6.85モル%であり、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率は0.28モル%であり、触媒はほぼ完全に再生されたことが確認された。
【0025】
比較例2
実施例2において、パラトルエンスルホン酸のフェノール溶液を用いた前処理を行わない以外は、同様にして実験を行った。前記のようにして連続反応して得られた500時間目の反応生成物を分析した結果、ビスフェノールAの生成率は6.05モル%であり、また、その異性体である2,4’−ビスフェノールAの生成率は0.26モル%であり、触媒は、新触媒の活性レベルのほぼ87%にまで再生されたことが確認された。
【0026】
実施例3
実施例1において、パラトルエンスルホン酸の3wt%フェノール溶液に代えて、ベゼンスルホン酸の3wtフェノール溶液を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合にも、再生触媒は、ほぼ完全に新触媒の活性レベルにまで再生することが確認された。
【0027】
実施例4
実施例2において、パラトルエンスルホン酸の3wt%フェノール溶液に代えて、ベンゼンスルホン酸の3wtフェノール溶液を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合にも、再生触媒は、ほぼ完全に新触媒の活性レベルにまで再生することが確認された。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、活性劣化したビスフェノールA製造用触媒を、その反応器に充填した状態において容易に再生することができ、その産業的意義は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】反応器の説明図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 樹脂充填層(触媒充填層)
5、6 バルブ
Claims (2)
- 含イオウアミン化合物で変性された変性スルホン酸型陽イオン交換基と未変性スルホン酸型陽イオン交換基の両方を含有する変性樹脂からなる活性劣化したビスフェノールA製造用触媒の再生方法において、活性劣化したビスフェノールA製造用触媒に、酸強度pKaが3以下の酸を含有するフェノール溶液を、乾物基準の触媒1kg当り0.01〜0.20kg/分で接触させた後、含イオウアミン化合物を含有するフェノール溶液を該触媒に接触させることを特徴とするビスフェノールA製造用触媒の再生方法。
- 請求項1において、活性劣化したビスフェノールA製造用触媒の充填層に、前記酸強度pKaが3以下の酸を含有するフェノール溶液を、乾物基準の触媒1kg当り0.01〜0.20kg/分で流通させることを特徴とするビスフェノールA製造用触媒の再生方法。
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---|---|---|---|
JP15850895A JP3753455B2 (ja) | 1995-06-01 | 1995-06-01 | ビスフェノールa製造用触媒の再生方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP15850895A JP3753455B2 (ja) | 1995-06-01 | 1995-06-01 | ビスフェノールa製造用触媒の再生方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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