JP3752987B2 - 水素吸蔵合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素貯蔵手段として水素燃料電池、水素貯蔵容器等に、或いは熱−化学エネルギー変換手段としてヒートポンプや蓄熱器等の用途に使用するのに適した水素吸蔵合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素を燃料として負極に供給し、正極に供給した酸素と反応させて電気を取り出す水素燃料電池は、化石燃料を使用する発電器とは異なり、運転中にCO2 、NOx 、SOx 等を発生しないクリーンなエネルギー源であり、またエネルギー変換効率が高いことから、小規模地域発電用および家庭発電用の発電システムや、電気自動車用の電池として、現在開発が進められている。
【0003】
この水素燃料電池においては、水素吸蔵合金を水素貯蔵手段として利用することができる。即ち、燃料の水素ガスを水素吸蔵合金に貯蔵しておき、この合金から水素ガスを少しずつ放出させて負極に供給するのである。この場合、水素吸蔵合金への水素の補給は、外部から供給した水素を合金に吸蔵させてもよく、或いは夜間の余剰電力など外部からの電気を燃料電池に供給し、燃料電池で発生した水素を水素吸蔵合金に吸蔵させることも可能である。
【0004】
また、水素吸蔵合金は、水素を吸蔵する時の水素化反応が発熱反応であり、水素を放出する時の分解反応が吸熱反応である。水素の吸蔵・放出反応が熱の吸収・放出を伴う可逆反応であるという性質により、水素吸蔵合金は熱−化学エネルギー変換機能を持つ。この機能を利用して、水素吸蔵合金を蓄熱や化学ヒートポンプに応用することも試みられている。
【0005】
例えば、燃料電池と同様にクリーンなエネルギー源である太陽熱 (例、ソーラー集熱器の温水) や清掃工場等の廃熱 (例、廃温水) の蓄熱と熱輸送に水素吸蔵合金を利用することができる。即ち、水素を吸蔵した合金に熱を供給すると、合金からの水素の放出に熱が利用され、熱は化学エネルギーとして水素吸蔵合金に保存される。次に、放出した水素を合金と反応させれば合金が発熱するので、その熱を適当な用途 (例、温室の加温) に利用する。
【0006】
水素吸蔵合金を応用したヒートポンプでは、まず水素を吸蔵した合金をある温度に加熱し水素を放出させる。次に放出した水素をその温度の平衡解離圧以上に加圧してから再度合金に水素を吸蔵させると、その温度より高い温度が得られる。これを利用して、熱を低温側から高温側に汲み上げることができる。
【0007】
以上に説明したような用途では、水素吸蔵合金は、下記(a) 式に示す気固相反応によって水素を可逆的に吸蔵・放出する。
(a) 2M+xH2 ⇔2MHX (M:水素吸蔵合金、右方向への反応が発熱反応)
即ち、平衡状態より水素圧力を高め、および/または温度を下げると、(a) 式の可逆反応が右方向に進み、合金の水素化が起こり、合金に水素が吸蔵される。逆に、水素圧力を低くし、および/または温度を上げると、水素化物が分解して水素が解離する左方向に反応が進行し、合金から水素が放出される。
【0008】
この可逆反応は、ニッケル−水素電池で負極として使用される水素吸蔵電極における下記(b) 式に示す電気化学的な可逆反応とは別の反応である。
(b) M+H2O+e-⇔OH- +MH
従って、クリーンエネルギーの利用拡大のために、水素吸蔵合金を前述したような用途に使用するには、既に実用化されているニッケル−水素電池用の水素吸蔵合金とは異なる、気固相での水素化・水素解離反応に適した水素吸蔵合金の開発が必要となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記(a) 式の反応を利用する水素貯蔵用の水素吸蔵合金における一般的な反応条件は、低温/高圧で吸蔵し、高温/低圧で放出するものであった。水素吸蔵合金の実用化が近づいた最近になって、常温、即ち、20℃前後という従来より高い温度と、高圧ガス取締法の対象外である約1MPa という従来より低い水素ガス圧力で水素化反応をさせて、水素を吸蔵させることが試みられるようになった。この場合、水素を放出させる時の脱水素反応の条件は、加熱源が一般に温水であることから、温度は100 ℃以下であり、水素圧力は大気圧、即ち、約0.1MPaとすることが有利である。このような条件下で多量の水素を吸放出する水素吸蔵合金は、水素燃料電池等の水素貯蔵用や、(廃)温水を利用した蓄熱、ヒートポンプ等の用途にとって極めて有用である。
【0010】
このような条件で水素を吸放出する水素吸蔵合金に要求される水素吸放出特性について、図1に模式的に示す。図1は、横軸に水素濃度 (質量%、以下同じ) 、縦軸に水素平衡解離圧 (Peq, MPa) をとった圧力−組成等温線図 (P−C−T曲線)(以下、等温線図という) である。この等温線図は、一定温度で水素圧力を変化させながら平衡になる水素吸蔵量を測定することにより作製される。
【0011】
図1に示すように、上記条件下で水素の吸蔵と放出を行う場合の有効水素吸蔵量Vは、20℃、1MPa での水素吸蔵量V1と、100 ℃、0.1MPaでの水素吸蔵量V2との差として表すことができる。従って、有効水素吸蔵量Vを大きくするには、V1がより大きく、V2がより小さければよい。つまり、水素燃料電池をはじめとする水素貯蔵用や、蓄熱用、ヒートポンプ用といった用途に使用する水素吸蔵合金には、20℃、1MPa での水素吸蔵量V1が大きく、100 ℃、0.1MPaでの水素吸蔵量V2が小さく、有効水素吸蔵量Vが可及的に大きいことが求められる。
【0012】
また、水素吸蔵合金が軽量であることも望ましい。これは、特に水素燃料電池を電気自動車に搭載する場合に必要となる。さらに、また、水素貯蔵用や蓄熱用といった用途では、水素吸蔵合金を大量に使用することから、水素吸蔵合金の製造コストも重要であり、豊富かつ安価な原料から製造できる水素吸蔵合金が求められている。
【0013】
代表的な実用水素吸蔵合金であるMmNi5 系合金は、非常に平坦なプラトーを有し、前記条件での有効水素吸蔵量Vは約1質量%である。しかし、この合金は、Mm (希土類金属の混合物であるミッシュメタル) とNiといういずれも比較的高価な成分からなる合金であり、コスト的に不利である。
【0014】
軽量で安価なMgを用いた水素吸蔵合金であるMg2Ni 合金は、前記条件でV1は3.6 質量%と非常に大きいが、V2もまた約3.6 質量%であるので、この条件下での水素の放出は不可能である。
【0015】
Mg2Ni 合金の水素吸放出圧力の向上によるV2の低減については、元素置換による水素吸放出圧力の向上、非晶質化、ナノメートルスケール化による水素吸放出圧力の向上等がこれまでに報告されているが、前記条件で使用が可能となるような報告はない。
【0016】
V2の小さいMg系水素吸蔵合金として、AB2C9 合金 (A:希土類元素、B:Mg等のアルカリ土類元素、C:Ni他の遷移金属元素) が、100 ℃以下の温度で最大1.8 質量%の水素を放出することが特開平11−217643号公報に開示されている。しかし、この合金は高価な希土類元素を必須とする。
【0017】
Mgと同様に安価かつ軽量なCaをMgに加えた合金であるCa0.5Mg0.5Ni2 が、Mat. Res. Bull., Vol. 15 (1980) 275-283 に報告されている。この合金のV1は約1.7 質量%で、MmNi5 より大きいが、水素吸放出圧力が低く、V2は約1.3 質量%の大きさになるので、有効水素吸蔵量Vは0.4 質量%程度にすぎない。
【0018】
Journal of Alloys and Compounds 284 (1999) 145-154には、水素放出圧力の高いMg−Ca系合金としてCaMg2Ni9合金が報告されている。この合金は、MmNi5 系合金と同様に、非常にプラトーが平坦で、V2は0.1 質量%以下である。しかし、逆に水素吸放出圧力が高すぎるため、十分に水素を吸収させるためには温度を0 ℃付近まで下げなければならない。
【0019】
特開平11−264041号公報には、Ca1-a Mga (Ni1-x Mx ) Z (0<a <0.5 、0 <X ≦0.8 、2<Z<4.5)の30℃での有効水素吸蔵量が開示されている。この公報における有効水素吸蔵量は30℃の一定温度のものであり、本発明における有効水素吸蔵量Vとは異なるものである。この公報には100 ℃近辺での等温線図が示されていないのでV2を推測することができない。従って、前記条件での有効水素吸蔵量Vは不明であり、この合金が前記条件で水素の吸放出を行う用途に有用であることは示唆されていない。
【0020】
このように、常温〜100 ℃の温度および大気圧〜1.0MPaの範囲での有効水素吸蔵量Vが、大きく、且つ速やかに水素を吸放出することができ、安価な原料から得られる水素吸蔵合金は、未だに開発されていない。
【0021】
本発明は、上記範囲での有効水素吸蔵量Vが0.6 質量%以上と大きく、速やかに水素を吸放出し、安価で軽量かつ、繰り返し使用しても劣化しない水素吸蔵合金を提供することを課題とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記課題が
(1) 下記一般式(1) で表される組成を有する、温度0〜50℃、水素圧力0.5 〜1.1MPaの条件下で水素を吸蔵させ、温度60℃〜水の沸点、水素圧力0.01〜0.3MPaの条件下で水素を放出させることができる、有効水素吸蔵量が0.6 質量%以上の水素吸蔵合金。
【0023】
Ca1-xMgxNiZ ・・・・・(1)
上記式中、
0.60≦ x ≦0.85、
1.8 ≦ z ≦2.2
(2) 下記一般式(2) で表される組成を有する、温度0〜50℃、水素圧力0.5 〜1.1MPaの条件下で水素を吸蔵させ、温度60℃〜水の沸点、水素圧力0.01〜0.3MPaの条件下で水素を放出させることができる、有効水素吸蔵量が0.6 質量%以上の水素吸蔵合金。
【0024】
Ca1-xMgx(Ni1-yMy)z ・・・・・(2)
上記式中、
MはAl、Si、P、Cr、Mn、Fe、Co、CuおよびZnから成る群から選んだ少なくとも1種の元素であり、
0.60≦ x ≦0.85、
0 ≦ y ≦0.2 、
1.8 ≦ z ≦2.2
により解決される。
【0025】
なお、上記有効水素吸蔵量0.6 質量%以上というのは、20℃、1.1MPaと100 ℃、0.1MPaの条件下で測定したときの水素吸蔵量の差を言う。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、軽量性と低価格性を考慮して、CaとMgに着目した。種々のCa−Mg系合金のV1、V2を測定した結果、CaNi2 のCaサイトをMgに置換した場合、水素吸放出圧力を調整し、V1、V2を制御できることを見出した。また、NiサイトをAl、Si、P、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Znから選ばれる少なくとも1つ以上の元素に置換してもよいことも見出した。
【0027】
本発明の水素吸蔵合金は、温度0〜50℃、水素圧力 0.5〜1.1MPaの条件下で水素を吸蔵させ、温度60℃〜水の沸点、水素圧力0.01〜0.3MPaの条件下で水素を放出させるための水素吸蔵合金、即ち、 (廃) 温水を加熱源とする水素燃料電池等の水素貯蔵手段や蓄熱、ヒートポンプ等の熱−化学エネルギー変換手段として用いる水素吸蔵合金、として有用である。
【0028】
上記(1) 式で示される組成を持つ本発明の水素吸蔵合金では、CaサイトおよびMgサイトとNiサイトの比 (Z) は、CaNi2 での比の2に対して若干の増減が許容され、 1.8≦Z≦2.2 となる。Zが1.8 未満では、水素を放出しづらいCaMg2 が第2相として析出し、V2が増加する。Zが2.2 より大きくなると、V1が減少する。
【0029】
本発明の水素吸蔵合金におけるCaサイトのMg置換率 (X) は好ましくは、0.60≦X≦0.85である。
Xが0.60より小さいと、図2に示す100 ℃での等温線図のカーブの平坦部が、図2のX=0.50の曲線に示すように小さくなり、V2が著しく大きくなるため、有効水素吸蔵量Vが低下する。また、Xが0.60未満では繰り返しの水素吸蔵放出による合金の劣化が著しく、Xを0.60以上とすることでこれを改善できる。CaNi2 はCaの原子半径が0.197nm 、Niが0.125nm と差が大きく、Caに大きな圧縮応力が働くため不安定な合金である。原子半径0.160nm のMgをCaに置換することで圧縮応力が緩和され、X=0.60以上でその効果が顕著になるためと推測される。Xの値が0.60以上になると、図2のX=0.65の曲線に示すように、100 ℃での等温線図のカーブの平坦が大きくなり、V2が低下するので、有効水素吸蔵量Vが大きくなる。
【0030】
Xの上限値は0.85以下であることが望ましい。Xが0.85より大きくなると主相がC15型ラーベス相から水素を吸蔵しづらいC36型ラーベス相に変化してしまい、図3に示すようにV1が減少してしまうからである。
【0031】
本水素吸蔵合金におけるNiサイトの他金属Mによる置換率 (Y) の好ましい範囲は、0 ≦Y≦0.2 である。ここでMは、Al、Si、P、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Znのうち1つ以上の元素を表す。Yが0.2 より大きいと、水素化されづらい第2相が生成し、V2が増加して有効水素吸蔵量Vが著しく低下するからである。
【0032】
本発明の水素吸蔵合金の製造は、原料粉末を圧縮成型し、不活性雰囲気中で焼結する焼結法、原料を高周波加熱、アーク加熱等により溶解して凝固させる溶解法のいずれによっても可能である。
【0033】
合金化を行う処理温度としては、焼結法の場合600 ℃〜1250℃、溶解法の場合には1250℃以上の温度が好ましい。また原料としてはCa、Mg、Ni等の純金属に加えてCaMg2 、CaNi2 、MgNi2 等の母合金を使用することも可能であり、その形状は焼結法の場合には粉末が好ましいが、溶解法の場合は粉末以外にインゴットも使用可能である。
【0034】
なお、有効水素吸蔵量0.6 質量%以上というのは、この値以下では実用化が難しいからである。
本発明の水素吸蔵合金は、温度0〜50℃、水素圧力 0.5〜1.1MPaの条件下で水素を吸蔵させ、温度60℃〜水の沸点、水素圧力0.01〜0.3MPaの条件下で水素を放出させるのに有用である。
【0035】
水素吸蔵時の温度は0〜50℃であるので、多くの地域では加熱または冷却を必要とせずに常温で合金に水素を吸蔵させることができる。水素吸蔵時の水素ガス圧力は1.1MPa以下であるので、高圧ガス取締法の範囲外であり、比較的安全かつ簡便に水素ガスを取り扱うことができる。水素吸蔵時の水素ガス圧力の下限は水素放出時の圧力より高ければよいが、水素吸蔵量を考慮して0.5MPa以上とする。
【0036】
水素放出時の温度は、ソーラー集熱器の温水や廃温水を熱源として利用できる温度が好ましいので、上限は水の沸点とする。下限は60℃以上が好ましい。これは、温度が低すぎると、水素の放出量が少なくなるからである。水素放出時の水素ガス圧力は、吸蔵時の圧力より低ければ良いが、0.01MPa 以上、0.3MPa以下の範囲がよい。高すぎると水素放出量が少なく、低すぎると減圧に手間がかかりすぎる。放出圧力は、0.1MPa付近の大気圧とすれば、加圧や減圧が不要で簡便であることから好ましい。
【0037】
本発明の水素吸蔵合金は、水素燃料電池において、燃料である水素ガスの貯蔵手段として使用するのに適している。この場合、例えば、次のようにして水素吸蔵合金を使用することができる。
【0038】
燃料電池の運転前に、常温で水素吸蔵合金に 0.5〜1.1MPaの加圧水素ガスを常温で供給して、合金に水素ガスを常温で吸蔵させる。燃料電池を運転する際には、温水を熱源として水素吸蔵合金を60〜100 ℃に加熱し、水素ガス圧力を大気圧に下げると、水素ガスが放出されるので、それを燃料電池の負極に一定流量で供給する。この水素ガスは、正極に供給された酸素含有ガス (通常は空気) 中の酸素と反応して発電し、水になる。
【0039】
水素ガスの放出が終了したら、水素吸蔵合金の温度を常温に下げ、上記の加圧水素ガスを再び供給して、水素ガスを合金に吸蔵させる。水素吸蔵合金からなる水素貯蔵容器を複数設置しておき、交互に使用することで、水素燃料電池を連続運転することができる。
【0040】
水素燃料電池の種類は、燃料として水素を使用するものであれば特に制限されない。現在開発中のアルカリ型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型等のいずれにも適用できる。中でも好ましいのは、常温で運転可能で、酸素供給源として空気を使用できる固体高分子電解質型燃料電池である。固体高分子型燃料電池は、100 ℃以下で作動するコンパクトな電池とすることができ、小規模地域発電や家庭用発電システムとして実用化の動きがあり、また自動車用電源として使用する試みもある。
【0041】
本発明の水素吸蔵合金は、熱−化学エネルギー変換手段として、蓄熱やヒートポンプに利用することもできる。この場合も、水素の吸蔵時および放出時の温度および水素ガス圧力の条件は、上記と同様でよい。
【0042】
本発明の水素吸蔵合金は、前述した条件で水素の吸蔵と放出を行った場合に、0.6 質量%以上という大きな有効水素吸蔵量を与えるので、所定量の水素を貯蔵するのに必要な水素吸蔵合金の量を低減させることができ、装置を小型化することができる。また、水素の吸蔵と放出もすばやく起こる。さらに、CaとMgを多く含むため軽量で、低コストの合金であるので、大量使用に適している。
【0043】
【実施例】
Ca、Mg、Ni、ならびに場合によりAlもしくはCrを原料として、次に述べるように、焼結法または溶解法により水素吸蔵合金の試料を作製した。使用原料はいずれも純度99質量%以上の市販品であった。焼結法と溶解法のいずれも、作業はすべてアルゴン雰囲気中で実施した。
【0044】
焼結法による水素吸蔵合金試料の作製
原料を所定組成となるように秤量配合し、乳鉢で粉砕して、粒径100 μm以下の混合粉末を得た。この混合粉末を、9.8MPaの荷重の油圧プレスを用いて、直径10 mm ×厚さ5mmのペレット状に成形し、圧粉体とした。得られた圧粉体を、電気抵抗炉を用いて900 ℃で2時間加熱して焼結させ、合金化した。得られた焼結体を、粒径100 μm以下の粉末になるまで乳鉢で粉砕した。
【0045】
この粉末を用いて、成形、焼結、粉砕の工程をもう一度繰り返して、粉末状の水素吸蔵合金の試料を得た。各組成の粉末を湿式化学分析して、試料中の各元素の比率を求めた結果、焼結中に揮発した元素はなく、所望の合金組成となっていることを確認した。
【0046】
溶解法による水素吸蔵合金試料の作製
原料を所定の組成となるように秤量配合し、真空高周波溶解炉にて各試料を約数kgずつ溶解し、平板状の水冷鋳型に厚さ約1〜2cmとなるように鋳込んで溶解試料を作製した。作製した合金試料の粉末を湿式で化学分析し、試料中の各元素の比率を求めた。その後、本合金試料を数cm角程度の大きさに粉砕したものを、アルゴン気流中にて800 ℃で10時間保持する熱処理を行った。この試料についても、溶解および熱処理中に揮発した元素はなく、所望の合金組成になっていた。
【0047】
こうして作製した水素吸蔵合金の組成と作製法を表1に示す。
表1に示した各水素吸蔵合金の試料の組織をX線回折により調べた結果、CaサイトのMg置換率の値が0.85以下での場合、組織はC15ラーベス構造を主相とすることが判明した。一方、Xが0.85より大きい場合は組織はC36ラーベス相を主相とすることがわかった。
【0048】
以上を確認した上で、ジーベルト方式の水素吸蔵量測装置を用いて、表1に示す条件で水素吸蔵量V1およびV2を測定して、有効水素吸蔵量V=V1 −V2 を求めた。これらのV1、V2、Vの値も表1に併せて示す。
【0049】
【表1】
表1から、合金の組成によって、V1およびV2の値はさまざまに変化するが、V1−V2として算出される有効水素吸蔵量Vは、水素吸蔵合金が本発明の範囲内の組成を持つ場合に0.6 質量%以上と大きくなり、本発明の水素吸蔵合金は実際に活用できる有効水素吸蔵量が大きく、実用性が高いことがわかる。また、合金の製法が焼結法と溶解法のいずれであっても、有効水素吸蔵量Vが大きいという本発明の効果が得られた。
【0050】
実施例と比較例を対比するとわかるように、Ca1-x Mgx (Ni1-yMy) z のXが0.60未満である場合、V2 が増加するために有効水素吸蔵量が低下している。Xが0.85より大きい場合、主相が水素を吸蔵しづらいC36ラーベス構造となるため、比較例15では本発明の実施例8に比較しV1 が著しく減少し、有効水素吸蔵量も小さくなっている。
【0051】
また、Ca1-x Mgx (Ni1-yMy ) z のYが本発明の範囲外である比較例16、17は水素を吸蔵しづらい第二相の割合が大きくなり、V1 が著しく減少した結果、有効水素吸蔵量が小さくなった。
【0052】
Ca1−X Mgx(Ni1−yMy)zのZが本発明の範囲より小さい比較例13は水素を放出しづらい副相CaMg2の割合が大きくなりV2が増加して有効水素吸蔵量が減少した。またZが本発明の範囲より大きい比較例14は水素を吸蔵しづらいNi相の割合が大きくなりV1が減少して有効水素吸蔵量が減少した。
【0053】
【発明の効果】
本発明に係る水素吸蔵合金は、従来材に比べて軽量かつ低価格であり、温水を加熱源とした場合に使い勝手のよい、常温〜100 ℃、大気圧〜1.0MPaの範囲での有効水素吸蔵量がこの従来材以上に大きいので、実用に適した水素吸蔵合金である。従って、本発明の水素吸蔵合金は、水素燃料電池の水素供給源である水素貯蔵容器や、ヒートポンプ、蓄熱等の用途に有用である。また、水素吸蔵時に冷媒が不要であり、水素放出時には廃温水を利用できるので、環境問題に有利に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有効水素吸蔵量Vの概念を示す圧力−組成等温線図である。
【図2】 Ca1-x Mgx Ni2 の組成を有する水素吸蔵合金において、CaサイトのMg置換率Xが0.65および0.50である場合の温度100 ℃での圧力−組成等温線図を示す。
【図3】 Ca1-x Mg x Ni2の組成を有する水素吸蔵合金において、CaサイトのMg置換率Xが0.90、および0.65である場合の、温度20℃での圧力−組成等温線図を示す。
Claims (2)
- 下記一般式(1) で表される組成を有し、温度0〜50℃、水素圧力0.5 〜1.1MPaの条件下で水素を吸蔵させ、温度60℃〜水の沸点、水素圧力0.01〜0.3MPaの条件下で水素を放出させることができる、有効水素吸蔵量0.6 質量%以上の水素吸蔵合金。
Ca1-xMgxNiz ・・・・・・(1)
上記式中、
0.60≦ x ≦0.85、
1.8 ≦ z ≦2.2 - 下記一般式(2) で表される組成を有する、温度0〜50℃、水素圧力0.5 〜1.1MPaの条件下で水素を吸蔵させ、温度60℃〜水の沸点、水素圧力0.01〜0.3MPaの条件下で水素を放出させることができる、有効水素吸蔵量0.6 質量%以上の水素吸蔵合金。
Ca1-xMgx(Ni1-yMy)z ・・・・・(2)
上記式中、
MはAl、Si、P、Cr、Mn、Fe、Co、CuおよびZnから成る群から選んだ少なくとも1種の元素であり、
0.60≦ x ≦0.85、
0 ≦ y ≦0.2 、
1.8 ≦ z ≦2.2
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