JP3752669B2 - ドア開口部を有する耐震補強開口部の構造 - Google Patents
ドア開口部を有する耐震補強開口部の構造 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡略な構成で、建築計画に自由度を持たせることの可能なドア開口部を有する耐震補強開口部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、既存の鉄筋コンクリート造建築物の開口部に対する耐震補強構造には、ブレースが用いられる場合が多い。ただし、ブレースが負担する高い応力を建築物に直接伝達すると、該建築物に局部破壊を生じる可能性が高いため、実際にはブレース構面に枠を設けた枠付きブレースを構成し、これを用いることが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、枠付きブレース構面には、ドア開口を設けることが困難であり、建築計画の自由度を妨げていた。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は、簡略な構成で、建築計画に自由度を持たせることの可能なドア開口部を有する耐震補強開口部の構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のドア開口部を有する耐震補強開口部の構造は、上部横部材、下部横部材、及び対をなす縦部材により構成される枠組みと、該枠組みの内方で、枠組みの下方隅角部と前記上部横部材とを連結するようにハの字形状に配置されるブレースとにより構成されて、前記上部横部材の軸線上に形成されるハの字形状の前記ブレース各々の軸線の交点に対して、鉛直方向で同軸上に位置する下部横部材の所定部分が切り欠かれることにより形成されるドア開口部を有する枠付きブレースが、前記建築物の開口部の内周面に敷設されるアンカーボルトと、前記枠組みの外周面に設けられるスタッドジベルと、該スタッドジベル及びアンカーボルトを埋設するように前記枠組みの外周面と建築物の開口部の内周面との隙間に充填される充填材とを介して、前記建築物の開口部に一体的に嵌合されるドア開口部を有する耐震補強開口部の構造において、前記枠付きブレースのドア開口部には、鋼板が配置されており、前記枠付きブレースと対向する一方の面側に、スタッドジベルが設けられた該鋼板の両端部各々と、前記下部横部材のドア開口部側の端部とがあき重ね継ぎ手を形成し、前記充填材を充填されて両者が一体化されるとともに、前記鋼板の他方の面と、前記建築物の開口部の内周面が、固着手段により固着されて、該鋼板、及び前記枠付きブレースが、前記建築物の開口部に一体的に嵌合されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載のドア開口部を有する耐震補強開口部の構造は、前記下部横部材がH形鋼により構成されて、前記ドア開口部側の端部には、上下フランジと前記建築物の開口部と対向する側のウェブ面とにより形成される空洞部を覆うように支圧プレートが設けられることを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明におけるドア開口部を有する耐震補強開口部の構造を図1から図5に示す。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、既存の鉄筋コンクリート造による建築物2の開口部3には、耐震補強材として枠付きブレース5が配置されて、耐震補強開口部1が形成されている。前記枠付きブレース5は、前記建築物2の開口部3に嵌合する枠組み6と、該枠組み6の内方に配されたブレース8、及び斜材7とにより構成されている。
【0010】
前記枠組み6は、対をなして離間配置される縦部材12と、該縦部材12の上端部どうし、及び下端部どうしを各々連結するように、水平に配置される上部横部材10、及び下部横部材11とにより構成されている。これらは、何れもH形鋼よりなり、ウェブ面が前記建築物2の開口部3の内周面と平行となるように配置されている。また、これらのウェブ面で、前記建築物2の開口部3の内周面と向かい合う側、つまり前記枠組み6の外周面には、長手方向に所定の間隔をもって、複数のスタッドジベル9が、溶接等の固着手段により固着されている。
【0011】
該枠組み6の内方には、ハの字状に2本のブレース8が配置されている。該ブレース8は、前記枠組み6の下方隅角部14と、前記上部横部材10の中央部近傍を連結するようにガセットプレート21を介して締結されており、2本のブレース8の軸線の交点15は、前記上部横部材10の軸線と合致するように、設置されている。また、該ブレース8の軸線上の中点と、前記枠組み6の上方隅角部13とを連結するように、前記斜材7が配置されており、前記枠付きブレース5の横座靴を拘束する形式となっている。
【0012】
このような構成の前記枠付きブレース5は、前記下部横部材11において、2本の前記ブレース8における軸線の交点15と鉛直方向で同軸となる位置を中心とした一部分が切り欠かれており、これが枠付きブレース5のドア開口部16を形成している。
【0013】
本実施の形態において、前記ブレース8は、前記枠付きブレース5の鉛直軸方向の中心線から見てシンメトリーを形成し、前記交点15が前記上部横部材10の軸線の中央と合致するように設けられている。しかし、前記交点15の配置位置は、これにこだわるものではない。
【0014】
このような構成の該枠付きブレース5は、前記建築物2の開口部3に嵌合されるが、図2に示すように、前記建築物2の開口部3の内周面には、一方の端部4aが建築物2に埋設されるアンカーボルト4が配置されるとともに、建築物2の開口部3の内周面と前記枠組み6の外周面との隙間には、無収縮モルタル等によりなる充填材17が充填されている。前記アンカーボルト4の他方の端部4bと前記枠付きブレース5の外周面に設けられた前記スタッドジベル9とが充填材17に埋設されることにより、前記枠付きブレース5と前記建築物2とは強固に固着され、ドア開口部16を有する耐震補強開口部1が形成されることとなる。
【0015】
なお、本実施の形態において、図1に示すように、前記枠付きブレース5の下方隅角部14近傍に位置する前記アンカーボルト4、及びスタッドジベル9には、付着割れを防止することを目的に、スパイラル筋を用いている。
【0016】
上述する構成によれば、前記建築物2の開口部3の内周面にアンカーボルト4が配置されるとともに、前記枠付きブレース5の外周面にもスタッドジベル9が設けられて、これらが前記建築物2の開口部3の内周面と枠付きブレース5の外周面と隙間に充填される充填材17に埋設されることにより、建築物2と枠付きブレース5とが固着されることから、前記枠付きブレース5が、前記枠組み6を構成する下部横部材11の一部を切り欠かれて、ドア開口部16が設けられた場合においても、前記ブレース8から前記枠付きブレース5に伝達される応力をスムーズに前記建築物2へ伝達することが可能となる。
【0017】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に示したドア開口部16を有する耐震補強開口部1の構造は、前記枠付きブレース5の開口幅が、枠付きブレース5のスパンと比較して小さい場合に有効である。開口幅を大きく設けたい場合には、ドア下部に補強部材を追加することで枠付きブレース5の靭性を確保することとする。
【0018】
図3に示すように、前記耐震補強開口部1は、第1の実施の形態と同様な構成による前記枠付きブレース5が用いられている。なお、該枠付きブレース5の前記枠組み6を構成する下部横部材11を部分的に切り欠いて設けられたドア開口部16側の端部11aには、図4、図5に示すように、ウェブに垂直で、ウェブの前記建築物2の開口部3と対向する側、及び上下フランジの3辺に接するようにして支圧プレート20が溶接等の固着手段により固着されている。該支圧プレート20は、前記枠組み6に設けられたスタッドジベル9と相まって、前記建築物2と前記枠付きブレース5との間の応力伝達を前記充填材17を介してスムーズに行うものである。
【0019】
このような構成の前記枠付きブレース5と前記建築物2は、第1の実施の形態と同様に、前記建築物2の開口部3の内周面に設けられたアンカーボルト4と、前記枠付きブレース5の外周面に設けられた前記スタッドジベル9とが、前記建築物2の開口部3の内周面と前記枠付きブレース5の外周面との隙間に充填される充填材17に埋設されることにより強固に固着されて、前記耐震補強開口部1を構成している。
【0020】
ところで、図3に示すように、該耐震補強開口部1における枠付きブレース5の前記枠組み6の下部横部材11を部分的に切り欠いて設けられたドア開口部16側には、鋼板18が配置されている。該鋼板18は、その両方の端部18aが各々前記下部横部材11の前記ドア開口部16側の両端部11aと、あき重ね継ぎ手19を形成するようにして配置されている。
【0021】
図4に示すように、該鋼板18の両方の端部18aには、該鋼板18に対して垂直に設けられたリブプレート19が、短手方向に平行に複数設けられているとともに、該端部18a近傍には、前記建築物2の開口部3の内周面に設けられているアンカーボルト4を貫通する孔18bが、長手方向に所定間隔で複数設けられている。
【0022】
したがって、該鋼板18の取付は、前記建築物2の開口部3に設けられたアンカーボルト4を鋼板18の両方の端部18aに設けられた孔18bに貫通し、これらを溶接により固着して、前記建築物2と一体化する。これにより、前記アンカーボルト4の他方の端部4bは、前記鋼板18にスタッドジベルを設けたものと同様の形状を構成することとなる。このようなアンカーボルト4の他方の端部4b、及び前記リブプレート19を前記充填材17に埋設することにより、前記枠付きブレース5とも該鋼板18は、一体化するものである。
【0023】
なお、前記鋼板18の取付は、上述する方法に限るものではなく、前記鋼板18の両方の端部18aで、前記下部横部材11と対向する側の面には、あらかじめスタッドジベルを設けておくことにより、前記枠付きブレースと一体化し、前記建築物2の開口部3の内周面と鋼板18との間には、従来より用いられているエポキシ樹脂等を用いた鋼板接着工法を用いて接着することにより、前記建築物2と一体化してもよい。
【0024】
上述する構成によれば、前記ドア開口部16を前記鋼板を用いて補強することにより、該ドア開口部16に生じる引張力に対して有効に作用することが可能となる。
【0025】
また、前記下部横部材11の端部に支圧プレート20を配置することにより、前記下部横部材11に設けられたスタッドジベル9と相まって、前記枠付きブレース5から建築物2にスムーズに応力伝達が図られるものである。
【0026】
【発明の効果】
請求項1に記載のドア開口部を有する耐震補強開口部の構造によれば、上部横部材、下部横部材、及び対をなす縦部材により構成される枠組みと、該枠組みの内方で、枠組みの下方隅角部と前記上部横部材とを連結するようにハの字形状に配置されるブレースとにより構成されて、前記上部横部材の軸線上に形成されるハの字形状の前記ブレース各々の軸線の交点に対して、鉛直方向で同軸上に位置する下部横部材の所定部分が切り欠かれることにより形成されるドア開口部を有する枠付きブレースが、前記建築物の開口部の内周面に敷設されるアンカーボルトと、前記枠組みの外周面に設けられるスタッドジベルと、該スタッドジベル及びアンカーボルトを埋設するように前記枠組みの外周面と建築物の開口部の内周面との隙間に充填される充填材とを介して、前記建築物の開口部に一体的に嵌合されることから、前記ブレースから前記枠付きブレースに伝達される応力をスムーズに前記建築物へ伝達することが可能となる。
【0027】
また、請求項1に記載のドア開口部を有する耐震補強開口部の構造によれば、前記枠付きブレースのドア開口部には、鋼板が配置されており、前記枠付きブレースと対向する一方の面側に、スタッドジベルが設けられた該鋼板の両端部各々と、前記下部横部材のドア開口部側の端部とがあき重ね継ぎ手を形成し、前記充填材を充填されて両者が一体化されるとともに、前記鋼板の他方の面と、前記建築物の開口部の内周面が、固着手段により固着されて、該鋼板、及び前記枠付きブレースが、前記建築物の開口部に一体的に嵌合されていることから、ドア開口部に生じる引張力に対して有効に作用することが可能となる。
【0028】
請求項2に記載のドア開口部を有する耐震補強開口部の構造によれば、前記下部横部材がH形鋼により構成されて、前記ドア開口部側の端部には、上下フランジと前記建築物の開口部と対向する側のウェブ面とにより形成される空洞部を覆うように支圧プレートが設けられることから、前記下部横部材に設けられたスタッドジベルと相まって、前記枠付きブレースから建築物にスムーズに応力伝達が図られることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るドア開口部を有する耐震補強開口部の平面図を示す図である。
【図2】 本発明に係るドア開口部を有する耐震補強開口部の断面図を示す図である。
【図3】 本発明に係るドア開口部を有する耐震補強開口部に鋼板を用いた場合の平面図を示す図である。
【図4】 本発明に係る枠付きブレースの下部横部材と鋼板のあき重ね継ぎ手を示す図である。
【図5】 本発明に係る枠付きブレースの下部横部材を示す図である。
【符号の説明】
1 耐震補強開口部
2 建築物
3 開口部
4 アンカー
4a 一方の端部
4b 他方の端部
5 枠付きブレース
6 枠組み
7 斜材
8 ブレース
8a 一方の端部
8b 他方の端部
9 スタッドジベル
10 上部横部材
11 下部横部材
12 縦部材
13 上方隅角部
14 下方隅角部
15 交点
16 ドア開口部
17 充填材
18 鋼板
18a 端部
18b 孔
19 リブプレート
20 支圧プレート
21 ガセットプレート
Claims (2)
- 上部横部材、下部横部材、及び対をなす縦部材により構成される枠組みと、該枠組みの内方で、枠組みの下方隅角部と前記上部横部材とを連結するようにハの字形状に配置されるブレースとにより構成されて、
前記上部横部材の軸線上に形成されるハの字形状の前記ブレース各々の軸線の交点に対して、鉛直方向で同軸上に位置する下部横部材の所定部分が切り欠かれることにより形成されるドア開口部を有する枠付きブレースが、
前記建築物の開口部の内周面に敷設されるアンカーボルトと、前記枠組みの外周面に設けられるスタッドジベルと、該スタッドジベル及びアンカーボルトを埋設するように前記枠組みの外周面と建築物の開口部の内周面との隙間に充填される充填材とを介して、
前記建築物の開口部に一体的に嵌合されるドア開口部を有する耐震補強開口部の構造において、
前記枠付きブレースのドア開口部には、鋼板が配置されており、
前記枠付きブレースと対向する一方の面側に、スタッドジベルが設けられた該鋼板の両端部各々と、前記下部横部材のドア開口部側の端部とがあき重ね継ぎ手を形成し、前記充填材を充填されて両者が一体化されるとともに、
前記鋼板の他方の面と、前記建築物の開口部の内周面が、固着手段により固着されて、
該鋼板、及び前記枠付きブレースが、前記建築物の開口部に一体的に嵌合されていることを特徴とするドア開口部を有する耐震補強開口部の構造。 - 請求項1に記載のドア開口部を有する耐震補強開口部において、
前記下部横部材がH形鋼により構成されて、
前記ドア開口部側の端部には、上下フランジと前記建築物の開口部と対向する側のウェブ面とにより形成される空洞部を覆うように支圧プレートが設けられることを特徴とするドア開口部を有する耐震補強開口部の構造。
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