JP3752559B2 - ミッドマウント型農作業機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はミッドマウント型農作業機に関し、詳しくは、農作業機の大型化に伴い作業装置が拡幅されても、作業装置の後側を昇降自在に支持するリンク機構部の充分な剛性を確保すると共に、農作業機の運転性をも高めるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カルチベータ、田植機、移植機、刈取機、施肥機等の各種農作業機には、作業目的に応じた耕耘装置、植付装置、移植装置、刈取装置、施肥装置等の作業装置を前後車輪間に配置したミッドマウント型の農作業機が存在している。これらミッドマウント型の農作業機は、通常、作業装置の後側と機体フレームとをリンク機構部を介して連結すると共に、昇降手段の駆動によりリンク機構部を変位させ作業装置を昇降可能にしている。
【0003】
図11(A)(B)は、従来のミッドマウント型農作業機の一つである田植機1を示しており、田植機1は、前後に延在する機体フレーム1aを支持する前輪1bと後輪1cとの間に作業装置である植付装置2を配置している。植付装置2は、後側2aをリンク機構部5を介して機体フレーム1aと連結し、前方部2bは機体フレーム1aに設けられた昇降手段である油圧シリンダ4で駆動される揺動部材3と連結している。
【0004】
リンク機構部5は、図12にも示すように、植付装置2の右後側2cを上下に配置されて平行状態を維持して変位する二本の右上リンク部材6−1と右下リンク部材6−2の夫々前端6−1a、6−2aと回動自在に連結しており、左後側2dも右側と同様に、上下二本の左上リンク部材7−1と左下リンク部材7−2の夫々前端7−1a、7−2aと連結している。
【0005】
右上リンク部材6−1及び左上リンク部材7−1の各後端6−1b、7−1bは、機体フレーム1aの幅方向に延在する棒状の連結部材8の夫々両端8a、8bと回動自在に連結されている。また、右下リンク部材6−2、左下リンク部材7−2の各後端6−2b、7−2bは、連結部材8の中央部8cより下方に設けたボックス部9の両側9a、9bに回動自在に連結されている。
【0006】
また、ボックス部9の後面からはローリング軸9cを後方に突設しており、このローリング軸9cを機体フレーム1aの軸受け部1dに取り付けてローリング軸9cを中心にして、リンク機構部5が、ローリング方向(図中の黒矢印方向)の回転を可能にし、機体フレーム1aが左右に傾斜しても植付装置2が水平状態を維持するようにしている。
【0007】
上記構成のリンク機構部5は、図11(A)(B)に示すように、油圧シリンダ4の揺動部材3の駆動による植付装置2の前方部2b側の変位に追従して、右上下リンク部材6−1、6−2、左上下リンク部材7−1、7−2は、各後端6−1b、6−2b、7−1b、7−2bを支点に上下の平行状態を維持して変位し、植付装置2を昇降させている。
【0008】
なお、機体フレーム1aの前方側部1eにはサイドマーカー1fを取り付けている。サイドマーカー1fは、側方へ突出する支持棒1gの先端にマーカー部1hを直交で且つ垂直方向に取り付け、マーカー部1hの下端を目安に田植機1の進行方向を確認しながら、田植機1を前進するようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
農作業の効率化を進める昨今において、一度に行える作業量を増加させるため農作業機の大型化が進んでおり、例えば、田植機では、図11(A)(B)に示すいわゆる6条植と呼ばれるタイプ田植機1より大型の8条植あるいは10条植といったタイプの田植機の使用も広がりを見せている。上記のような大型の田植機では植付装置の大きさ、特に、幅方向の寸法が拡大されていると共に重量も増加している。
【0010】
上記のような幅広の植付装置に対応するには、リンク機構部5も連結部材8の長さ寸法を長くする必要がある。このように連結部材8を長くするとリンク機構部5の剛性、特に幅方向の剛性が低下し、図12に示す機体フレーム1aの中心垂直軸Sを中心に対するヨーイング方向(図中、白矢印で示す)に荷重が付加されると、連結部材8に撓み等が発生し、植付装置を精度良く変位することが困難となる上に植付精度も低下する問題がある。
【0011】
また、延長された連結部材8を両端で左右のリンク部材6−1〜7−2で支持するだけでは、重量の増加した植付装置に対応できず、ピッチング方向の剛性も不足し、スムーズで精度の高い植付装置の昇降に支障が生じる問題もある。なお、このような問題に対して、連結部材8に太い部材を採用することも想定されるが、8条植に適用される連結部材を、6条植の連結部材8と同様の剛性を確保するには、6条植の連結部材の約4倍もの断面積を有する太い部材を使用する必要があり、重量の増加や部材にかかるコスト面から現実的ではない。
【0012】
一方、苗の植え付けを整列した直線状態にするためには、田植機1が一直線に前進するようマーカー部1hの下端を運転中、運転席1jから適宜確認する必要がある。しかし、マーカー部1hの下端は、運転席1jからでは乗車時の支持枠1k等が間に介在し確認しにくい問題がある。また、マーカー部1hを確認するには、運転者が前方を見る状態から視点の移動量も大きくなるので、運転しながらのマーカ部1hの確認は、運転者に負担が大きい問題もある。
【0013】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、農作業機の大型化に伴い、幅広かつ重量の増加した作業装置を精度良く変位させることを課題としている。また、農作業機の進行方向の確認の容易化を図ることも課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、機体フレームを支持する前後車輪間に配置された作業装置を、上記作業装置の後側と上記機体フレームとをリンク機構部で連結していると共に、該作業装置の前側は機体フレームに設けられた昇降手段で駆動される揺動部材と連結され、該昇降手段により昇降自在としているミッドマウント型農作業機において、
上記リンク機構部は、上記作業装置の左右両側を上下いずれか一本あるいは上下二本の右リンク部材からなる右リンク部と、上下いずれか一本あるいは上下二本の左リンク部材からなる左リンク部で支持する一方、上記右リンク部と左リンク部との間を、上下二本の中間上リンク部材と中間下リンク部材からなる中間リンク部で支持して、幅広の作業装置に対する上記リンク機構部の剛性を確保する構成としていることを特徴とするミッドマウント型農作業機を提供している。
【0015】
上記のようにリンク機構部を構成すると、リンク機構部自体の重量増加を最低限に抑えた上で、幅広かつ重量の増加した作業装置を高精度で変位させることにも充分対応し得る剛性も確保できる。即ち、リンク機構部の幅方向に延在して各リンク部材の後端を取り付ける連結部材は、作業装置の幅広化に対応して長さを延長せざるを得ないが、右リンク部と左リンク部の間に、新たに上下の中間上リンク部材と中間下リンク部材からなる中間リンク部を設けることで、ピッチング方向の強度を補強して、要求される剛性を確保できる。
【0016】
上記中間リンク部は、機体フレームの中心付近に設けると、ローリング軸近辺の剛性が向上し、ピッチング方向の強度を高めるのに好適である。さらに、中間リンク部は、作業装置の幅寸法や機体フレームの配置状況に応じて複数設けるようにしてもよい。
【0017】
また、左右リンク部は、少なくとも一本のリンク部材を設ければ、必要最小限の剛性は確保でき、リンク機構部の重量増も最小限におさえられ、リンク機構部の変位追従性も維持できる。なお、作業装置の重量が重い時や特に幅が広い時などには、上下二本の左右リンク部材を設けて幅方向の両側の剛性を確保することが好ましい。
【0018】
左右リンク部において下側にリンク部材を設ける場合、中心に設けるボックス部に後端を直接取り付けるのが困難であれば、ボックス部の下方両側より第二の連結部材を突設し、この突設した第二の連結部材の両端に後端を取り付けるようにしてもよい。このように計二本の連結部材を設けると、ヨーイング方向の負荷に対する剛性も更に強化される上、使用する部材は従来と同様の断面積の太さのものを使用でき、コスト及び重量の上昇を低くおさえられる。
【0019】
さらに、本発明のミッドマウント型農作業機において、機体フレームの前方側部より側方へ突設する支持棒先端に直交する棒状のマーカー部を側方視で下端側を斜め前方に傾倒して、該マーカー部の下端を運転席から視認しやすくしていることが好ましい。
このようにマーカー部を傾倒させると、運転席からマーカー部の下端位置が従来に比べ前方に位置することとなり、支持枠等に遮られることなく確認でき、また、確認のため視点の移動量も低減され、確認に要する運転者の負担を低減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかるミッドマウント型農作業機を図面を参照して説明する。
図1、2は、本発明の実施形態にかかるミッドマウント型農作業機である田植機10を示しており、前後に延在する機体フレーム11を前輪12A及び後輪12Bで支持すると共に、これら前輪12Aと後輪12Bとの間に、作業装置として植付装置13を配置している。この田植機10は、いわゆる8条植タイプのものであり、田植機10及び植付装置13の幅寸法及び重量は、図11(A)(B)の従来の6条植タイプの田植機1及び植付装置2よりも増大している。
【0021】
植付装置13は、後側13aをリンク機構部16を介して機体フレーム11と連結され、前方部13bは機体フレーム11に設けられた昇降手段である油圧シリンダ14で駆動される揺動部材15と連結されている。
【0022】
リンク機構部16は、図3に示すように、植付装置13の右及び左後側13c、13dを支持する右リンク部17及び左リンク部18と、略中央後側13eを支持する中間リンク部19を有している。これら右リンク部17、左リンク部18、中間リンク部19の各後端は、幅方向に延在する上下2本の棒状の第一及び第二連結部材20、21に連結されている。
【0023】
これら第一及び第二連結部材20、21は、幅広の植付装置13に対応して、図12の従来の連結部材8より延長しているが、太さは同等の寸法のもの使用している。第一及び第二連結部材20、21は中央で上下に位置するボックス部22に固定されており、このボックス部22の後面よりローリング軸22aを後方へ突設している。ローリング軸22を機体フレーム11の下面に設けた軸受け部11dに嵌め込んで、リンク機構部16を介して植付装置13と機体フレーム11とを連結すると共に、リンク機構部16及び植付装置13を、ローリング軸22aを中心としたローリング方向の回転を可能にしている。
【0024】
右リンク部17は、上下二本の右上リンク部材17−1と右下リンク部材17−2からなり、前端17−1a、17−2aを植付装置13の右後側13cの上下箇所に回動自在に取り付けている。また、後端17−1b、17−2bは、第一及び第二連結部材20、21の夫々右端20a、21aに回動自在に取り付けている。これら、右上リンク部材17−1と右下リンク部材17−2は、植付装置13が昇降により変位しても、常に平行状態を維持している。
【0025】
また、左リンク部18は、右リンク部17と同様に、上下二本の左上リンク部材18−1と左下リンク部材18−2からなり、前端18−1a、18−2aを左後側13dの上下箇所に回動自在に取り付け、後端18−1b、18−2bを、第一及び第二連結部材20、21の左端20b、21bに回動自在に取り付けている。
【0026】
さらに、中間リンク部19は、上下二本の中間上リンク部材19−1と中間下リンク部材19−2からなり、前端19−1a、19−2aは、植付装置13の略中央後側13eの上下箇所に回動自在に取り付けられ、中間上リンク部材19−1の後端19−1bは、第一連結部材20の略中央箇所20cに回動自在に取り付けられ、中間下リンク部材19−2の後端19−2bは、第二連結部材21の略中央箇所21cに回動自在に取り付けられている。
【0027】
これら各リンク部材17−1〜19−2は、図12の従来のリンク部材6−1〜7−2と同等の太さの棒部材から形成されており、リンク機構部16における従来のリンク機構部5に対する重量増は、新たに設けた中間リンク部19、第二連結部材21に加えて第一連結部材20の延長分に対する重量分のみとして最低限におさえている。
【0028】
また、リンク機構部16は、上記のように重量の増加は必要最小限におさえていても、中間リンク部19を設けることでリンク機構部16に必要な剛性を確保し、延長された第一及び第二連結部材20、21に撓み等が生じにくいようにしている。即ち、図2に示すように、作業中において圃場等から抵抗を受けて植付装置13にヨーイング方向(図中の実線矢印方向)の荷重が付加された場合でも、リンク機構部16の耐ヨーイング方向の剛性は第一及び第二連結部材20の両端部及び略中間部を、左右リンク部17、18及び中間リンク部19を支持しているため、剛性が確保され規定値以上の撓みも発生せず、所要の植付精度を確保している。
【0029】
植付装置13の昇降においても、中間リンク部19を設けることにより、延長した第一及び第二連結部材20の剛性を維持しているので、幅及び重量の増加した植付装置13を規定の精度で昇降している。さらに、凹凸の激しい圃場における作業に伴う移動において、図1の矢印方向であるピッチング方向の負荷が植付装置13へ付加されても、機体の中心位置となるローリング軸22a附近は中間リンク部19でリンク機構部16の剛性も確保されているため、作業に支障が生じるような振動や撓みは発生していない。このようなリンク機構部16は、田植機以外のカルチベータ、移植機、刈取機、施肥機等の各種ミッドマウント型農作業機に適用可能である。
【0030】
なお、リンク機構部16は上記形態に限定されるものではなく、作業装置の種類等によっては左右リンク部17、18を上下二本のリンク部材で形成するのではなく、図4(A)(B)のリンク機構部16’、16”のように左右リンク部17’、18’、17”、18”を上下いずれか1本のリンク部材のみで構成すると共に、連結部材20’、21”も上下いずれか1本にして、軽量化を図るようにしてもよい。
【0031】
また、作業装置が10条植の植付装置となったように、作業装置が更に拡幅された場合は、図5に示すように、左右リンク部17”’、18”’間に計二つの中間リンク部19A”’、19B”’を設けてリンク機構部16”’を構成するようにしてもよい。このように複数の中間リンク部19A”’、19B”’を設けると、リンク機構部16”’の幅方向寸法が伸びても、連結部材20”’の断面寸法を必要以上に太さにすることなしにヨーイング、ピッチングといった各方向の負荷に対して所要の剛性を確保できる。
【0032】
なお、植付装置13は、田植機10の自走による移動時やトラック等による搬送時は、機体フレーム11に設けたフックレバーによる操作で、植付装置13が下降しないようにしている。しかし、さらに強固な固定が必要な場合は、図6(A)(B)に示すように、植付装置13の前後左右を機体フレーム11の前後に設けた第一及び第二固定バー25、26を介してネジ止めすることにより、植付装置に過大な負荷が加わった場合でも、幅広で重量のある植付装置13を確実に機体フレーム11に固定するようにしている。
【0033】
第一固定バー25は、一方の端部25aを機体フレーム11側への回転可能な取り付け支点としており、他方の端部25bに穴部25cを設けて植付装置13への固定側としている。作業中は、機体フレーム11と平行となるように一方の端部25aをナット27で締め上げており、一方、移動、搬送時等には、ナット27を緩め、第一固定バー25を下方に降ろし、穴部25cを植付装置13の固定用ボルトに挿通してナットにより固定している。
【0034】
第二固定バー26も第一固定バー25と同様であり、一方の端部26aを機体フレーム11に取り付け、植付装置13の固定時は、下降して他方の端部26bの穴部26cを、植付装置13の後支持部13fに取付固定している。このような固定で、ヨーイング、ピッチング方向の種々の荷重が加わっても、植付装置13及び可動するリンク機構部16等に過度の負荷が伝わらず、可動部分を保護するようにしている。
【0035】
また、図7(A)(B)(C)に示すように、植付装置13の各植付部13gの後端には、植付作業の終了した苗箱を収容する空箱入れ30を取り付けている。空箱入れ30は、棒材でボックス状に形成されており、下端前方30aからは逆L字形状に突出する引っ掛け部30bを設けると共に、上部前方30cからは係止片部30dを前方に突設している。引っ掛け部30bは、植付部13gの後側下部の水平支持部13hに係合すると共に、係止片部30dは植付部13gの背面より後方へ突設する支持ブラケット13jにノブボルト31で螺合係止し、空箱入れ30を容易に脱着可能にしている。このように空箱入れ30を植付部13gから特別な工具等を用いずに取り外せるようにすることで、植付部13のメンテナンスの際、空箱入れ30を容易に取り外してメンテナンス箇所へのアクセス性を高めている。
【0036】
さらに、図8にも示すように田植機10は、機体前部の左右の側部10a、10bに前方から側方へ可倒式のサイドマーカー33を設けている。サイドマーカー33は、側部10a、10bより突設し可倒可能な支持棒33aの先端に、ワイヤー状で下端にキャップ部33bを設けたマーカー部33cを設けている。マーカー部33cは支持棒33aに対して直交状態で取り付けられているが、支持棒33aが側方部10a、10bより突出するように倒した状態で、支持棒33aより下端のキャップ部33bが前方に位置するように傾倒させている。なお、キャップ部33bから支持棒33aまでの距離は、調整具33dで適宜調整可能である。
【0037】
上記のようにマーカー部33cを傾倒させることで、機体フレーム11の中央付近に設けられた運転席10cからキャップ部33b確認が、支持枠10dと重なることなく容易となり、キャップ部33bの案内で田植機10を植付方向に沿って運転しやすくしている。また、キャップ部33bが従来より前方に位置することで、運転者がキャップ部33bを確認する際の視点の移動量も削減され、確認に係る運転者の負担も軽減している。
【0038】
また、図9(A)に示すように田植機10は植付装置13に苗箱を補給する作業者が着座する補助者座席10eを機体フレーム11の後部に設けているが、補助者座席10eの両側となる機体後端10fには、開閉する安全柵35を立設している。安全柵35は、機体後端10fより上方へ立設するパイプ状の支柱部35aの上端35bに、略矩形状の柵部35cを回転自在に取り付けている。また、支柱部35aの上端35bには柵部35cの開閉範囲を係止規制する係止ガイド部36を設けている。
【0039】
係止ガイド部36は、図9(B)に示すように、前方壁部37と内側壁部38を有し、これら前方壁部37と内側壁部38に柵部35cの下桟部35dを通過させるガイド開口部37a、38aを切り欠いている。内側壁部38のガイド開口部38aは、前端から後端へ下方に傾斜させており、前方壁部37のガイド開口部37aは、内側端部を内側壁部38のガイド開口部38aの前端高さと連続させると共に外側へ向けて上方へ傾斜させ、外側端部には窪部37bを設けている。
【0040】
このようにガイド開口部37a、38aを形成することで、柵部35cは開放状態から閉鎖状態に至る90度の角度範囲で開閉されるようにしている。即ち、作業者の乗り降りの際は、柵部35cを開放状態にすると下桟部35dはガイド開口部37aの外側端部の窪部37bに入り込み係止されている。また、作業者が乗り込んだ後は、柵部35cを後方へ回転して閉鎖状態にしている。この際、下桟部35dは窪部37bより抜け出て、下方に傾斜していくガイド開口部37a、38aを通過することになるので、柵部35cの自重により回転はスムーズに行われる。また、閉鎖状態で柵部35cに機体内側から外方へ荷重が加わっても、下桟部35dが傾斜したガイド開口部38aの後端で保持されているので、それ以上開放されることもなく、バランスを崩した場合などの作業者を確実に受け止めて作業者の転落を防止している。
【0041】
なお、上記したサイドマーカー33や安全柵35は、幅広の田植機10に限定されることなく、種々のミッドマウント型農作業機に適用することが可能である。
【0042】
一方、図10は、変形例の一人乗りのミッドマウント型の田植機50であり、作業装置である植付装置53は、植付部53a上方に苗箱自動供給装置53bを設けると共に植付部53aの後方に空箱収納装置53dを設けることにより、植付装置53の前後長が拡大し、それに伴い植付装置53の昇降スペースを確保するため機体フレーム51が前後方向に延長されたタイプである。機体フレーム51の延長化により後輪52をチェーン55を介して駆動する機体フレーム51側の駆動軸54の位置も後方へ移動されている。
【0043】
上下に位置する駆動軸54と後輪52の後輪軸52aの位置関係は、後輪軸52aを駆動軸54より前方に位置させて両者を介在するチェーン55を垂直ではなく下方を前方にした斜め配置で駆動力を伝達している。上記のような配置にすることで、機体フレーム51が延長しても、前輪56と後輪52のホイールベースは延長されていない。このようにホイールベースを延長しないことで、機体の旋回性も維持されており、圃場の枕地での方向転換もハンドルを何度も切り返すことなく、一回のハンドル操作で行うことができる。よって、機体が大型化しても機体の操作及び取扱性は大型でないタイプと同等のレベルを確保している。
【0044】
なお、機体後部の運転席51aは、駆動軸54が後方に移動したことに加え、苗箱自動供給装置53bへの苗箱補給を容易にするため、後方かつ高い位置に配置している。上記のような駆動軸54に対する後輪52の前方配置は、図10の一人乗りの田植機50だけでなく、図1に示す二人乗りの田植機10等のミッドマウント型農作業機へも適用可能である。
【0045】
【発明の効果】
上記した説明より明らかなように、本発明のミッドマウント型農作業機を用いると、機体の大型化に伴い作業装置の重量および幅方向の寸法が増大しても、昇降する作業装置を変位して支持するリンク機構部の剛性を、中間リンク部を設けることで規定レベルに維持できるため、作業装置の作業精度等を悪化させずに所要の作業性を確保できる。また、リンク機構部を構成する各リンク部材は、太径の部材ではなく従来と同等の寸法のものを使用しているので、リンク機構部の重量増を最小限におさえてスムーズな変位を維持して作業装置の昇降性を確保できる。
【0046】
また、サイドマーカーは、マーカー部を下端が前方となるように傾斜することで、運転席から確実に確認できるため進路方向も容易に判断でき、苗の植え付け配列も直線状に整列しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態にかかるミッドマウント型農作業機の側面図である。
【図2】 実施形態のミッドマウント型農作業機の平面図である。
【図3】 リンク機構部の斜視図である。
【図4】 (A)(B)はリンク機構部の変形例の斜視図である。
【図5】 リンク機構部の別の変形例の平面図である。
【図6】 (A)(B)は作業装置の前後の固定バーの概略図である。
【図7】 (A)(B)(C)は脱着式の空箱入れの概略図である。
【図8】 サイドマーカーを示す機体前部の概略図である。
【図9】 (A)は安全柵を示す機体後部の概略図、(B)は安全柵の要部拡大図である。
【図10】 変形例の田植機の側面図である。
【図11】 (A)(B)は従来の田植機の植付装置の昇降状態を示す側面図である。
【図12】 従来のリンク機構部の斜視図である。
【符号の説明】
10 田植機
11 機体フレーム
13 植付装置
16 リンク機構部
17 右リンク部
18 左リンク部
19 中間リンク部
20 第一連結部材
21 第二連結部材
22 ボックス部
22a ローリング軸
25 第一固定バー
26 第二固定バー
30 空箱入れ
33 サイドマーカー
35 安全柵

Claims (2)

  1. 機体フレームを支持する前後車輪間に配置された作業装置を、上記作業装置の後側と上記機体フレームとをリンク機構部で連結していると共に、該作業装置の前側は機体フレームに設けられた昇降手段で駆動される揺動部材と連結され、該昇降手段により昇降自在としているミッドマウント型農作業機において、
    上記リンク機構部は、上記作業装置の左右両側を上下いずれか一本あるいは上下二本の右リンク部材からなる右リンク部と、上下いずれか一本あるいは上下二本の左リンク部材からなる左リンク部で支持する一方、上記右リンク部と左リンク部との間を、上下二本の中間上リンク部材と中間下リンク部材からなる中間リンク部で支持して、幅広の作業装置に対する上記リンク機構部の剛性を確保する構成としていることを特徴とするミッドマウント型農作業機。
  2. 上記作業装置は6条植乃至10条植のいずれかの複数条植えの幅広の植付装置からなる請求項1に記載のミッドマウント型農作業機。
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