JP3750899B2 - 杭と基礎スラブとの杭頭接合構造及びダンパー付き杭 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植え込みスタッド工法における杭と基礎スラブコンクリートとの杭頭接合構造及びこの杭頭接合構造に用いるダンパー付き杭に関する。
【0002】
【従来の技術】
植え込みスタッド工法において、既製杭の杭頭部に端部鋼板を載置し、この端部鋼板上に複数本のスタッドを溶接、または、機械的に植え込む工法が公知である。上記既製杭は、ほぼ長尺円筒状の杭体と、この杭体の杭頭部に固着した端部鋼板とから構成され、この既製杭を地中に埋設し、杭頭部と端部鋼板とを捨てコンクリートから露出させ、露出した端部鋼板の上面にほぼ等間隔をおいて長手棒状のスタッドを複数本垂直状に溶接、または、機械的に植設し、捨てコンクリート上にコンクリートを打設して基礎スラブを形成し、既製杭と基礎スラブコンクリートとの接合構造を構成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従前の植え込みスタッド工法では、既製杭と杭頭部の端部鋼板に溶接、または、機械的に植設した複数本のスタッドとの接合部分は、スタッドの数量を変えて接合強度をある程度調節することが可能であるが、剛接合に近い工法であるためスタッドにある程度の曲げモーメントが増加すると端部鋼板とスタッドの接合部分に破損が生じ、建造物の転倒問題を起こす危険性がある。また、この接合部分を強化すると、地震などにより杭体の許容耐力を越える荷重が作用した場合、杭頭部及び基礎スラブコンクリートが損傷および破損に至るという問題点がある。
【0004】
また、近年では、基礎との間に免震装置を介在させた建造物が提案されているが、この免震装置付き建造物では、特別な免震装置が必要となり、コスト高となるだけでなく建造物と杭頭接合構造との間に空間を必要とするという難点があり、特に建造物の高さに制限が有る場合は不向きである。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、杭の杭頭部および基礎スラブコンクリートの損傷および破壊を防ぐことができる免震性のある新規な杭と基礎スラブコンクリートの杭頭接合構造を提供するとともに、この新規な杭頭接合構造に用いる新規なダンパー付き杭を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る杭と基礎スラブコンクリートの杭頭接合構造は、杭の杭頭部に設けてある端部鋼材の上面にスタッドを垂直状に起立して植設し、該スタッドにこのスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填して設け、このダンパー材付きスタッドを基礎スラブ内に埋め込み配置してあることを特徴とする。
【0007】
上記杭が既製杭であるとよい。また、上記端部鋼材が鋼板であるとよいし、又は厚みのあるリング状の円筒であってもよい。さらに、上記スタッドが複数本であるとよい。
上記杭頭部の端部鋼板と基礎スラブとの間に潤滑材を介在してあるとよい。
上記杭頭部の端部鋼板を基礎スラブの底面と同一面に配置してある。
杭が鋼管杭であり、この鋼管杭の杭頭部の側面に複数本のスタッドを垂直状に溶接固着して植設し、該スタッドにこのスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填して設け、このダンパー材付きスタッドを基礎スラブ内に埋込み配置してある。
【0008】
本発明ダンパー付き杭は、杭の杭頭部に設けてある端部鋼材の上面にスタッドを垂直状に起立させて植設し、該スタッドにこのスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填して設けてあることを特徴とする。
上記杭が既製杭であるとよい。また、上記端部鋼材が鋼板であるとよいし、又は厚みのあるリング状の円筒であってもよい。さらに、上記スタッドが複数本であるとよい。
【0009】
本発明杭と基礎スラブとの杭頭接合構造では、基礎スラブに埋め込むスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填してあるから、地震等を受けて杭と基礎スラブとの間に変位作用が働いた際、スタッドがダンパー材内において変位し、杭と基礎スラブとの間の振動エネルギーを吸収し、杭頭部あるいは基礎スラブの損傷、破壊を防止する。
また、特に、パイプが基礎スラブとの付着を切る作用をなし、上記振動吸収作用と相まって、杭と基礎スラブ接合部の変形性能をさらによくし、振動エネルギーの吸収作用をさらによく働かせる作用がある。
さらに、端部鋼材と基礎スラブとの間に潤滑材を介在させた構造にあっては、杭と基礎スラブ接合部の変形性能をさらによくし、より大きい振動エネルギーの吸収作用を発揮する。
加えて、上記杭頭部の端部鋼材の上面を基礎スラブの底面と同一平面に配置してある構造にあっても、杭と基礎スラブ接合部の変形性能をさらによくし、より大きい振動エネルギーの吸収作用を発揮する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明杭と基礎スラブとの杭頭接合構造及びダンパー付き杭を図に示した実施例により説明する。
図中符号1は地中に埋設した公知の長尺円筒状の杭であり、PC鋼線を定着しているPHCコンクリート杭、同じくPRCコンクリート杭、あるいはPC鋼線のないSC杭等があるが、公知の円柱状の杭であってもよく、場所打ちコンクリート杭であってもよい。図示した実施例の杭1は、ほぼ円筒状の杭体2とこの杭体2の杭頭部3に固着した端部鋼材4とから構成されている。この端部鋼材4の上面に、ほぼ等間隔をおいて複数本のスタッド5を垂直状に起立させて溶接または機械的に植設してある。図に示した実施例では、端部鋼材4を鋼板にしてあるが、これは鋼板でなくともよく、厚みのあるリング状の円筒であってもよい。また、上記スタッドは長尺状の鉄丸棒であっても異形スタッドであってもよく、さらには複数本ではなく1本だけのものであってもよい。
【0011】
本発明では、このスタッド5に、このスタッド5との間に空隙をもたせてパイプ7を被せ、スタッド5とパイプ7との間の空隙中にダンパー材6を充填してある構造のものである。このダンパー材6はエポキシ系高分子材料、あるいはシリコーンゲル等の粘弾性体であることが好ましいが、鉛であってもあるいは巻き込んだ板バネであってもよい。
図1、2にこの好ましい実施例が示してある。また、上記パイプは円筒でも角筒でもよく、直管でなく変形されたパイプ例えば樽状のものまたは蛇腹状のものであってもよい。
【0012】
図中符号20が捨てコンクリートで、この捨てコンクリート20上に基礎スラブコンクリートを打ち込んで基礎スラブ21を形成し、この基礎スラブ21内に上記ダンパー材6を配設したスタッド5を埋め込み定着させて本発明杭頭接合構造を構成してある。
【0013】
本発明杭頭接合構造は杭1の杭頭部3に設けた端部鋼材4の上面と捨てコンクリート20の上面とを同一面としてある。
図2及び図3に示した符号22が端部鋼材4と基礎スラブ21との間に介在させた潤滑材であり、この潤滑材21はテフロン板であることが好ましいが、滑りのよい板材であればテフロン板に限定されることはない。
【0014】
図4に本発明杭頭接合構造の別の実施例が示してあり、この別の実施例では、杭1に鋼管杭を使用しており、この鋼管杭の杭頭部3の側面に複数本のスタッド5を垂直状に溶接固着して植設してあり、このスタッド5にパイプ7を被せ、スタッド5とパイプ7との間にダンパー材6を充填して構成し、このダンパー付きスタッドと杭頭部7とを基礎スラブ内に埋め込み定着させた構造としてある。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の好ましい実施例を記載する。
〔実施例1〕 上記ダンパー材が粘弾性体である上記請求項1〜8の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例2〕 上記粘弾性体がエポキシ系高分子材料である上記実施例1に記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例3〕 上記粘弾性体がシリコーンゲルである上記実施例1に記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例4〕 上記ダンパー材が鉛である上記請求項1〜8の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例5〕 上記スタッドが丸棒である上記請求項1〜8の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例6〕 上記スタッドが異形鉄筋である上記請求項1〜8の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例7〕 上記潤滑材がテフロン板である上記請求項6に記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
〔実施例8〕 上記スタッドが丸棒である上記請求項9〜13の何れかに記載のダンパー付き杭。
〔実施例9〕 上記スタッドが異形鉄筋である上記請求項9〜13の何れかに記載のダンパー付き杭。
【0016】
【発明の効果】
本発明杭頭接合構造は、杭の杭頭部に設けてある端部鋼材の上面にスタッドを垂直状に起立して植設し、スタッドにパイプを被せ、スタッドとパイプとの間にダンパー材を充填して設け、このダンパー材付きスタッドを基礎スラブ内に埋め込み配置してあるから、地震等により振動が加わった場合、杭と基礎スラブとの間の振動エネルギーを吸収し、杭頭部あるいは基礎スラブの損傷、破壊を防止できる効果を有する。
また、特にスタッドにパイプを被せ、スタッドとパイプとの間にダンパー材を充填してあるから、パイプが基礎スラブとの付着を切る作用をなし、上記振動吸収作用と相まって、杭と基礎スラブ接合部の変形性能をさらによくし、振動エネルギーの吸収作用をさらによく働かせる効果がある。
さらに、端部鋼材と基礎スラブとの間に潤滑材を介在させた構造にあっては、杭と基礎スラブ接合部の変形性能をさらによくし、より大きい振動エネルギーの吸収作用を発揮する効果がある。
同様に、上記杭頭部の端部鋼材の上面を基礎スラブの底面と同一平面に配置してある構造にあっても、杭と基礎スラブ接合部の変形性能をさらによくし、より大きい振動エネルギーの吸収作用を発揮する。
加えて、本発明杭頭接合構造では、杭と基礎スラブとの間で振動エネルギーを吸収する構造としてあるから、従前の免震装置付き建造物と相違し、建造物と基礎スラブとの間に空間を必要とせず、建造物の高さに何らの悪影響を及ぼさない効果を有する。
【0017】
また、本発明ダンパー付き杭によれば、スタッドにパイプを被せ、スタッドとパイプとの間にダンパー材を充填して設けた杭を既製杭として製造しておき、このダンパー付き既製杭を現場に運ぶことによって現場作業を容易なものとすることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明杭頭接合構造の好ましい実施例を示す一部縦断斜視図である。
【図2】 図1図示の好ましい実施例の縦断正面図である。
【図3】 図1図示の好ましい実施例の別の変形実施例を示す縦断正面図である。
【図4】 本発明杭頭接合構造に鋼管杭を使用した実施例を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
1 杭
2 杭体
3 杭頭部
4 端部鋼材
5 スタッド
6 ダンパー材
7 パイプ
20 捨てコンクリート
21 基礎スラブ
22 潤滑材
23 ナット
Claims (13)
- 杭の杭頭部に設けてある端部鋼材の上面にスタッドを垂直状に起立して植設し、該スタッドにこのスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填して設け、このダンパー材付きスタッドを基礎スラブ内に埋め込み配置してあることを特徴とする杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 上記杭が既製杭である上記請求項1に記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 上記端部鋼材が鋼板である上記請求項1又は2に記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 上記端部鋼材が厚みのあるリング状の円筒である上記請求項1又は2に記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 上記スタッドが複数本である上記請求項1〜4の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 上記杭頭部の端部鋼材と基礎スラブとの間に潤滑材を介在してある上記請求項1〜5の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 上記杭頭部の端部鋼材の上面を基礎スラブの底面と同一平面に配置してある上記請求項1〜5の何れかに記載の杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 杭が鋼管杭であり、この鋼管杭の杭頭部の側面に複数本のスタッドを垂直状に溶接固着して植設し、該スタッドにこのスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填して設け、このダンパー材付きスタッドを基礎スラブ内に埋込み配置してあることを特徴とする杭と基礎スラブとの杭頭接合構造。
- 杭の杭頭部に設けてある端部鋼材の上面にスタッドを垂直状に起立させて植設し、該スタッドにこのスタッドとの間に空隙をもたせてパイプを被せ、スタッドとパイプとの間の空隙中にダンパー材を充填して設けてあることを特徴とするダンパー付き杭。
- 上記杭が既製杭である上記請求項9に記載のダンパー付き杭。
- 上記端部鋼材が鋼板である上記請求項9又は10に記載のダンパー付き杭。
- 上記端部鋼材が厚みのあるリング状の円筒である上記請求項9又は10に記載のダンパー付き杭。
- 上記スタッドが複数本である上記請求項9〜12の何れかに記載のダンパー付き杭。
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