JP3750036B2 - 平版印刷版用修正液 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用修正液に関する。さらに詳しくは、金属支持体表面に親水性を付与するために全面に形成された多孔質の酸化被膜の上に、銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する平版印刷版において、不要画像部分を消去する際に使用する水性の修正液に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷用原版の作成の省力化と迅速化のため、従来のフィルム出力後、原版を作成する方式から、フィルムを介さず、直接原版を作成するコンピュータ・ツウ・プレート(以下、「CTP」と略す)方式が採用されはじめている(印刷学会誌33巻、第4号、230〜235頁参照)。
【0003】
CTP方式の場合、原版は、アルミニウム等の金属支持体の表面に、全面に多孔質の酸化被膜を形成させて親水性を付与し、当該酸化被膜の上に銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する方式である。具体的には、画像部は、上記多孔質の酸化被膜上にハロゲン化銀を含む層を形成し、コンピューターに接続したイメージセッターからレーザ光を照射し、露光して現像することにより得られる。
【0004】
そして、この画像部形成時において、原稿の汚れ、ゴミの付着、さらには傷等が原因で、印刷版面の必要画像形成部以外の箇所で、露光の過不足が発生し、不要画像部が印刷版に形成されることがある。また、製版後、一定の文字、画像等を削除したい場合がある。
【0005】
このような場合、不要画像部の消去(除去)は、従来の印刷業界で用いていた、例えば、塩化第二鉄を含有する修正液(「金属エッチング技術」第39頁、1986年アグネ社刊)や、銀と反応するメルカプト基化合物を含有する修正液(特公昭61−19986号公報)を使用して行うことが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、こららの修正液では、銀が酸化被膜の多孔質面に入り込んで析出しているため、不要画像部の消去が困難であった。
【0007】
さらに、消去性向上のために、過酷な処理を施すと、修正後における多孔質酸化被膜の親水性が低下する場合があった。親水性が低下すると、印刷時に印刷インキ(油性)を修正跡が受容しやすくなるため、印刷物に汚れが発生しやすくなる。
【0008】
上記の如くCTP方式における不要画像部の消去を、酸化被膜の親水性を低下させずに容易にできる修正液が、本発明者らが知る限りにおいては、未だ開発されていない。このため、CPT方式の普及が遅れているのが現状である。
【0009】
本発明は、上記にかんがみて、不要画像部を、酸化被膜の親水性を低下させずに、容易に消去することができる平版印刷版用修正液を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の平版印刷版用修正液は、上記課題を下記構成により解決するものである。
【0011】
金属支持体表面に親水性を付与するために全面に形成された多孔質の酸化被膜の上に、銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する平版印刷版において、不要画像部を消去する際に使用する水性の修正液であって、
下記成分を含有することを特徴とする平版印刷版用修正液。
【0012】
(a) 水溶性の酸化性金属塩、
(b) 強酸成分、
(c) 水溶性の極性基置換炭化水素。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の平版印刷版用修正液(以下、単に「修正液」と略すことがある)について、詳細に説明する。以下の説明において配合単位は、特に断らない限り重量単位とする。
【0014】
A.本願発明の修正液を適用可能な印刷原版は、アルミニウム等の金属支持体の表面に、全面に多孔質の酸化被膜を形成させて親水性を付与し、当該酸化被膜の上に銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成するものである。
【0015】
ここでは、CTPで製版する場合を例に採り説明するが、他の方式で、金属支持体の表面に、全面に多孔質の酸化被膜を形成させて親水性を付与し、当該酸化被膜の上に銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する場合にも、本発明の修正液は適用可能である。
【0016】
(1) 金属支持体の材質としては、CTPの場合には、一般にアルミニウム(アルミニウム合金を含む)を使用するが、CTP以外の場合、金属箔を紙、プラスチックフィルム等にラミネートしたものであっても使用可能である。
【0017】
(2) 酸化被膜は、砂目立て、種々の塩類による浸漬処理、メッキ処理、陽極酸化処理等により形成する。特に、砂目立て後、陽極酸化処理を行なうことが、十分な親水性及び銀捕獲性を有する酸化被膜が形成できて特に好ましい。
【0018】
ここで親水性とは、平版印刷版で印刷を行った際、湿し水で濡れて、印刷インクに反発する性質をいう。
【0019】
画像部の形成は、通常、前述のCTP方式で行う。
【0020】
B.本発明の修正液は、(a) 水溶性の酸化性金属塩、(b) 強酸成分、(c) 水溶性の極性基置換炭化水素、を必須成分とし、必要により、溶液安定化剤としてハロゲン化物が添加されているものである。
【0021】
(1) 水溶性の酸化性金属塩とは、それ自体還元し、他(例えば銀等の金属)を酸化する能力のあるものを言う。酸化性金属塩としては、第二鉄塩、第二銅塩、第二コバルト塩、クロム塩(III )のうちから1種または2種以上を選択して好適に使用できる。具体的には、塩化第二鉄、臭化第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅、硝酸第二銅、塩化第二コバルト、塩化第二クロム等を挙げることができる。これらのうちで、塩化第二鉄を使用することが、環境に対する安全性、取り扱い容易性の観点から、特に好ましい。
【0022】
これら酸化性金属塩は、銀と反応して銀を酸化(イオン化)させて溶解可能するものと解される。例えば、3価の鉄塩についての反応式は下記の如くになる。。
【0023】
Ag+Fe3+→Ag+ +Fe2+
(3価の鉄イオン自身は還元されて2価となるが、金属銀を酸化して銀イオンとする。)
酸化性金属塩の含有量は、1〜25%、望ましくは5〜20%、更に望ましくは、5〜15%であるものとする。1%未満であると、銀との反応が遅く、25%を越えると、修正液への溶解が困難となるからである。
【0024】
(2) 強酸成分としては、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、硫酸等の強酸を単独または併用して使用できるが、これらの強酸とリン酸等の無機酸と併用して調製してもよい。
【0025】
上記酸化性金属として塩化物を使用したとき、これらの内で塩酸が、還元された酸化性金属に対する溶解性に優れており望ましい。
【0026】
さらに、硝酸を塩酸と併用した場合には、反応性が向上する。硝酸は金属、金属塩と作用して金属、金属イオンを酸化する能力があるためである。
【0027】
強酸成分の含有量は、合計量で1〜20%、望ましくは2〜15%、更に望ましくは、5〜10%とし、このうち塩酸の含有量は、1〜15%、望ましくは 1〜10%とする。1%未満であると、前述の酸化性金属塩が加水分解して不溶物が発生するためである。また、25%を越えて添加してもそれ以上の効果は得られず、無駄である。
【0028】
(3) 水溶性の極性基置換炭化水素としては、炭化水素の水素原子を水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基のうちから選択される極性基で置換したものが好ましい。具体的には、下記のような化合物を挙げることができる。
【0029】
水酸基置換炭化水素(アルコール類及びそのエーテル類):メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ;グリセリン等のの多価アルコール類;ポリエチレングリコール類等、
カルボキシル基置換炭化水素(カルボン酸類及びその誘導体):酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、酪酸等、
スルホ基置換炭化水素(スルホン酸類):オキシエチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、プロピルスルホン酸等、
アミノ基置換化合物(アミン類);トリエタノールアミン、ジメチルアミン等。
【0030】
これら極性基置換炭化水素は、無機酸の存在下においても加水分解せず、かなり安定に存在することが可能であり、修正液中に存在させることにより、修正液全体の表面張力を低下させて、浸透性を向上させ、消去性を向上させる作用を奏する。
【0031】
極性基置換炭化水素の含有量は、0.5〜15%、望ましくは1〜10%であるものとする。0.5%未満であると、消去性の向上効果が少ないためである。また、15%を越えて添加してもそれ以上の効果は得られず、溶液に対する溶解性も悪くなるためである。
【0032】
(5) 本発明の修正液には、溶液安定化剤として、更に、下記ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化カルシウム、ハロゲン化アルカリの内から1種または2種以上を選択して添加することも可能である。
【0033】
ハロゲン化アンモニウム:塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム等、
ハロゲン化カルシウム:塩化カルシウム、臭化カルシウム等、
ハロゲン化アルカリ:塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等
この溶液安定剤の添加量は、通常、1〜20%であるものとする。20%を越えると、返って溶液安定性が低下する。
【0034】
C.上記修正液は、平版印刷版に汚れが発生したとき、従来と同様の方法で行う。例えば、印刷原版の画像不要部に、図1に示すようなフェルトペン型の修正器具10のフェルトチップ部14からしみ出してくる修正液を付着させて行う。
【0035】
修正器具10は、例えば、修正液をポリプロピレン繊維16にしみ込ませ、フェルトチップ固定部18を有するプラスチック円筒(修正器具本体)12に充填し、後端を閉じ栓20で封をして、フェルトチップ固定部18にフェルトチップ14を取り付けて調製する。なお、図例中、22はキャップである。
【0036】
【発明の作用・効果】
本発明の平版印刷版用修正液は、(a) 水溶性の酸化性金属塩、(b) 塩酸を必須とする強酸成分、(c) 水溶性の極性基置換炭化水素、を必須成分とする構成により下記のような作用・効果を奏する。
【0037】
上記必須三成分が協奏して、印刷原版の画像不要部における、銀を主体とする金属に作用して、銀を主体とする金属塩を酸化し可溶性とする。このため、銀を主体とする金属が多孔質酸化被膜上に形成されている場合にも、容易に除去可能である。即ち、不要画像部を、酸化被膜の親水性を低下させずに、容易に消去することができる。特に、CTPにより作成された印刷原版に最適である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0039】
(1) 印刷版の調製
銀錯塩平版印刷版(三菱製紙(株)製、シルバーデジプレートシステムで用いるプレート)をレーザ光で露光した後、指定現像液で現像処理を行い、印刷版上に画像を形成し、印刷原版を作成した。
【0040】
(2) 修正液の調製
<実施例1>
塩化第二鉄13.0部、35%塩酸15.5部(HCl:5.4部)、塩化アンモニウム8.4部、塩化カルシウム1.6部、を水46.0部に溶解させる。この溶液に、61%硝酸6.2部(HNO3 :3.8部)を加え混合後、さらに、イソプロピルアルコール9.3部を添加混合して修正液を調製した。
【0041】
<比較例>
実施例1において、水を55.3部とするとともに、イソプロピルアルコール無添加として、修正液を調製した。
【0042】
<実施例2>
実施例1において、水を53.7部とするとともに、イソプロピルアルコール9.3部の代わりに、トルエンスルホン酸1.6部を添加して修正液を調製した。
【0043】
<実施例3>
実施例1において、水を53.7部とするとともに、イソプロピルアルコール9.3部の代わりに、トリエタノールアミン1.6部を添加して修正液を調製した。
【0044】
<実施例4>
実施例1において、水を53.7部とするとともに、イソプロピルアルコール3.0部の代わりに、プロピオン酸1.6部を添加して修正液を調製した。
【0045】
<実施例5>
塩化第二鉄11.0部、塩化第二銅3.2部、臭化アンモニウム15.8部、35%塩酸18.9部(HCl:6.6部)を水40.0部に溶解後、セロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)7.9部を追加して溶解させて修正液を調製した。
【0046】
<実施例6>
実施例1において、塩化第二鉄13.0部の代わりに、塩化第二コバルト13.0部を使用して修正液を調製した。
【0047】
(3) 印刷試験
上記で調製した平版印刷版について、画像部の一部に上記修正器具を用いて修正液を塗布し、修正作業を行った。修正処理後の印刷版を、印刷機(リスロン26、小森印刷機械(株)製)に装着して印刷を行い、印刷物における修正後の汚れの有無を観察した。
【0048】
各実施例については、いずれも、塗布と同時に、画像部を形成する銀は溶解した。また、このようにして修正を行なった印刷原版を用い印刷試験したところ、修正液で修正した部分には、印刷インキは付着せず、画像部の修正が可能であることが確認されるとともに、修正後の耐刷性も1万枚以上であることが確認された。
【0049】
比較例の修正液を同様にして、印刷原版に塗布したところ、画像部の銀の溶解性が悪かった。印刷試験を実施したが、修正部にインキが少量付着して、修正が不完全であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の修正液に使用するフェルトペン型の修正器具の断面図
【符号の説明】
10 修正器具
12 修正器具本体
14 フェルトチップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用修正液に関する。さらに詳しくは、金属支持体表面に親水性を付与するために全面に形成された多孔質の酸化被膜の上に、銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する平版印刷版において、不要画像部分を消去する際に使用する水性の修正液に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷用原版の作成の省力化と迅速化のため、従来のフィルム出力後、原版を作成する方式から、フィルムを介さず、直接原版を作成するコンピュータ・ツウ・プレート(以下、「CTP」と略す)方式が採用されはじめている(印刷学会誌33巻、第4号、230〜235頁参照)。
【0003】
CTP方式の場合、原版は、アルミニウム等の金属支持体の表面に、全面に多孔質の酸化被膜を形成させて親水性を付与し、当該酸化被膜の上に銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する方式である。具体的には、画像部は、上記多孔質の酸化被膜上にハロゲン化銀を含む層を形成し、コンピューターに接続したイメージセッターからレーザ光を照射し、露光して現像することにより得られる。
【0004】
そして、この画像部形成時において、原稿の汚れ、ゴミの付着、さらには傷等が原因で、印刷版面の必要画像形成部以外の箇所で、露光の過不足が発生し、不要画像部が印刷版に形成されることがある。また、製版後、一定の文字、画像等を削除したい場合がある。
【0005】
このような場合、不要画像部の消去(除去)は、従来の印刷業界で用いていた、例えば、塩化第二鉄を含有する修正液(「金属エッチング技術」第39頁、1986年アグネ社刊)や、銀と反応するメルカプト基化合物を含有する修正液(特公昭61−19986号公報)を使用して行うことが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、こららの修正液では、銀が酸化被膜の多孔質面に入り込んで析出しているため、不要画像部の消去が困難であった。
【0007】
さらに、消去性向上のために、過酷な処理を施すと、修正後における多孔質酸化被膜の親水性が低下する場合があった。親水性が低下すると、印刷時に印刷インキ(油性)を修正跡が受容しやすくなるため、印刷物に汚れが発生しやすくなる。
【0008】
上記の如くCTP方式における不要画像部の消去を、酸化被膜の親水性を低下させずに容易にできる修正液が、本発明者らが知る限りにおいては、未だ開発されていない。このため、CPT方式の普及が遅れているのが現状である。
【0009】
本発明は、上記にかんがみて、不要画像部を、酸化被膜の親水性を低下させずに、容易に消去することができる平版印刷版用修正液を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の平版印刷版用修正液は、上記課題を下記構成により解決するものである。
【0011】
金属支持体表面に親水性を付与するために全面に形成された多孔質の酸化被膜の上に、銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する平版印刷版において、不要画像部を消去する際に使用する水性の修正液であって、
下記成分を含有することを特徴とする平版印刷版用修正液。
【0012】
(a) 水溶性の酸化性金属塩、
(b) 強酸成分、
(c) 水溶性の極性基置換炭化水素。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の平版印刷版用修正液(以下、単に「修正液」と略すことがある)について、詳細に説明する。以下の説明において配合単位は、特に断らない限り重量単位とする。
【0014】
A.本願発明の修正液を適用可能な印刷原版は、アルミニウム等の金属支持体の表面に、全面に多孔質の酸化被膜を形成させて親水性を付与し、当該酸化被膜の上に銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成するものである。
【0015】
ここでは、CTPで製版する場合を例に採り説明するが、他の方式で、金属支持体の表面に、全面に多孔質の酸化被膜を形成させて親水性を付与し、当該酸化被膜の上に銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する場合にも、本発明の修正液は適用可能である。
【0016】
(1) 金属支持体の材質としては、CTPの場合には、一般にアルミニウム(アルミニウム合金を含む)を使用するが、CTP以外の場合、金属箔を紙、プラスチックフィルム等にラミネートしたものであっても使用可能である。
【0017】
(2) 酸化被膜は、砂目立て、種々の塩類による浸漬処理、メッキ処理、陽極酸化処理等により形成する。特に、砂目立て後、陽極酸化処理を行なうことが、十分な親水性及び銀捕獲性を有する酸化被膜が形成できて特に好ましい。
【0018】
ここで親水性とは、平版印刷版で印刷を行った際、湿し水で濡れて、印刷インクに反発する性質をいう。
【0019】
画像部の形成は、通常、前述のCTP方式で行う。
【0020】
B.本発明の修正液は、(a) 水溶性の酸化性金属塩、(b) 強酸成分、(c) 水溶性の極性基置換炭化水素、を必須成分とし、必要により、溶液安定化剤としてハロゲン化物が添加されているものである。
【0021】
(1) 水溶性の酸化性金属塩とは、それ自体還元し、他(例えば銀等の金属)を酸化する能力のあるものを言う。酸化性金属塩としては、第二鉄塩、第二銅塩、第二コバルト塩、クロム塩(III )のうちから1種または2種以上を選択して好適に使用できる。具体的には、塩化第二鉄、臭化第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅、硝酸第二銅、塩化第二コバルト、塩化第二クロム等を挙げることができる。これらのうちで、塩化第二鉄を使用することが、環境に対する安全性、取り扱い容易性の観点から、特に好ましい。
【0022】
これら酸化性金属塩は、銀と反応して銀を酸化(イオン化)させて溶解可能するものと解される。例えば、3価の鉄塩についての反応式は下記の如くになる。。
【0023】
Ag+Fe3+→Ag+ +Fe2+
(3価の鉄イオン自身は還元されて2価となるが、金属銀を酸化して銀イオンとする。)
酸化性金属塩の含有量は、1〜25%、望ましくは5〜20%、更に望ましくは、5〜15%であるものとする。1%未満であると、銀との反応が遅く、25%を越えると、修正液への溶解が困難となるからである。
【0024】
(2) 強酸成分としては、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、硫酸等の強酸を単独または併用して使用できるが、これらの強酸とリン酸等の無機酸と併用して調製してもよい。
【0025】
上記酸化性金属として塩化物を使用したとき、これらの内で塩酸が、還元された酸化性金属に対する溶解性に優れており望ましい。
【0026】
さらに、硝酸を塩酸と併用した場合には、反応性が向上する。硝酸は金属、金属塩と作用して金属、金属イオンを酸化する能力があるためである。
【0027】
強酸成分の含有量は、合計量で1〜20%、望ましくは2〜15%、更に望ましくは、5〜10%とし、このうち塩酸の含有量は、1〜15%、望ましくは 1〜10%とする。1%未満であると、前述の酸化性金属塩が加水分解して不溶物が発生するためである。また、25%を越えて添加してもそれ以上の効果は得られず、無駄である。
【0028】
(3) 水溶性の極性基置換炭化水素としては、炭化水素の水素原子を水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基のうちから選択される極性基で置換したものが好ましい。具体的には、下記のような化合物を挙げることができる。
【0029】
水酸基置換炭化水素(アルコール類及びそのエーテル類):メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ;グリセリン等のの多価アルコール類;ポリエチレングリコール類等、
カルボキシル基置換炭化水素(カルボン酸類及びその誘導体):酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、酪酸等、
スルホ基置換炭化水素(スルホン酸類):オキシエチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、プロピルスルホン酸等、
アミノ基置換化合物(アミン類);トリエタノールアミン、ジメチルアミン等。
【0030】
これら極性基置換炭化水素は、無機酸の存在下においても加水分解せず、かなり安定に存在することが可能であり、修正液中に存在させることにより、修正液全体の表面張力を低下させて、浸透性を向上させ、消去性を向上させる作用を奏する。
【0031】
極性基置換炭化水素の含有量は、0.5〜15%、望ましくは1〜10%であるものとする。0.5%未満であると、消去性の向上効果が少ないためである。また、15%を越えて添加してもそれ以上の効果は得られず、溶液に対する溶解性も悪くなるためである。
【0032】
(5) 本発明の修正液には、溶液安定化剤として、更に、下記ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化カルシウム、ハロゲン化アルカリの内から1種または2種以上を選択して添加することも可能である。
【0033】
ハロゲン化アンモニウム:塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム等、
ハロゲン化カルシウム:塩化カルシウム、臭化カルシウム等、
ハロゲン化アルカリ:塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等
この溶液安定剤の添加量は、通常、1〜20%であるものとする。20%を越えると、返って溶液安定性が低下する。
【0034】
C.上記修正液は、平版印刷版に汚れが発生したとき、従来と同様の方法で行う。例えば、印刷原版の画像不要部に、図1に示すようなフェルトペン型の修正器具10のフェルトチップ部14からしみ出してくる修正液を付着させて行う。
【0035】
修正器具10は、例えば、修正液をポリプロピレン繊維16にしみ込ませ、フェルトチップ固定部18を有するプラスチック円筒(修正器具本体)12に充填し、後端を閉じ栓20で封をして、フェルトチップ固定部18にフェルトチップ14を取り付けて調製する。なお、図例中、22はキャップである。
【0036】
【発明の作用・効果】
本発明の平版印刷版用修正液は、(a) 水溶性の酸化性金属塩、(b) 塩酸を必須とする強酸成分、(c) 水溶性の極性基置換炭化水素、を必須成分とする構成により下記のような作用・効果を奏する。
【0037】
上記必須三成分が協奏して、印刷原版の画像不要部における、銀を主体とする金属に作用して、銀を主体とする金属塩を酸化し可溶性とする。このため、銀を主体とする金属が多孔質酸化被膜上に形成されている場合にも、容易に除去可能である。即ち、不要画像部を、酸化被膜の親水性を低下させずに、容易に消去することができる。特に、CTPにより作成された印刷原版に最適である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0039】
(1) 印刷版の調製
銀錯塩平版印刷版(三菱製紙(株)製、シルバーデジプレートシステムで用いるプレート)をレーザ光で露光した後、指定現像液で現像処理を行い、印刷版上に画像を形成し、印刷原版を作成した。
【0040】
(2) 修正液の調製
<実施例1>
塩化第二鉄13.0部、35%塩酸15.5部(HCl:5.4部)、塩化アンモニウム8.4部、塩化カルシウム1.6部、を水46.0部に溶解させる。この溶液に、61%硝酸6.2部(HNO3 :3.8部)を加え混合後、さらに、イソプロピルアルコール9.3部を添加混合して修正液を調製した。
【0041】
<比較例>
実施例1において、水を55.3部とするとともに、イソプロピルアルコール無添加として、修正液を調製した。
【0042】
<実施例2>
実施例1において、水を53.7部とするとともに、イソプロピルアルコール9.3部の代わりに、トルエンスルホン酸1.6部を添加して修正液を調製した。
【0043】
<実施例3>
実施例1において、水を53.7部とするとともに、イソプロピルアルコール9.3部の代わりに、トリエタノールアミン1.6部を添加して修正液を調製した。
【0044】
<実施例4>
実施例1において、水を53.7部とするとともに、イソプロピルアルコール3.0部の代わりに、プロピオン酸1.6部を添加して修正液を調製した。
【0045】
<実施例5>
塩化第二鉄11.0部、塩化第二銅3.2部、臭化アンモニウム15.8部、35%塩酸18.9部(HCl:6.6部)を水40.0部に溶解後、セロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)7.9部を追加して溶解させて修正液を調製した。
【0046】
<実施例6>
実施例1において、塩化第二鉄13.0部の代わりに、塩化第二コバルト13.0部を使用して修正液を調製した。
【0047】
(3) 印刷試験
上記で調製した平版印刷版について、画像部の一部に上記修正器具を用いて修正液を塗布し、修正作業を行った。修正処理後の印刷版を、印刷機(リスロン26、小森印刷機械(株)製)に装着して印刷を行い、印刷物における修正後の汚れの有無を観察した。
【0048】
各実施例については、いずれも、塗布と同時に、画像部を形成する銀は溶解した。また、このようにして修正を行なった印刷原版を用い印刷試験したところ、修正液で修正した部分には、印刷インキは付着せず、画像部の修正が可能であることが確認されるとともに、修正後の耐刷性も1万枚以上であることが確認された。
【0049】
比較例の修正液を同様にして、印刷原版に塗布したところ、画像部の銀の溶解性が悪かった。印刷試験を実施したが、修正部にインキが少量付着して、修正が不完全であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の修正液に使用するフェルトペン型の修正器具の断面図
【符号の説明】
10 修正器具
12 修正器具本体
14 フェルトチップ
Claims (7)
- 金属支持体表面に親水性を付与するために全面に形成された多孔質の酸化被膜の上に、銀を主体とする金属を析出させて親油性の画像部を形成する平版印刷版において、不要画像部を消去する際に使用する水性の修正液であって、
下記成分を含有することを特徴とする平版印刷版用修正液。
(a) 水溶性の酸化性金属塩、
(b) 強酸成分、
(c) 水溶性の極性基置換炭化水素。 - 前記酸化性金属塩の含有量:1〜25重量%、前記強酸成分の含有量:1〜30重量%、前記極性基置換炭化水素の含有量:0.5〜15重量%、水その他添加剤:残部であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用修正液。
- 前記極性基置換炭化水素が、炭化水素の水素原子を水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基のうちから選択される極性基で置換したものであることを特徴とする請求項2記載の平版印刷版用修正液。
- 前記酸化性金属塩が、第二鉄塩、第二銅塩、第二コバルト塩、クロム塩(III )のうちから選択される1種または2種以上からなるものであることを特徴とする請求項3記載の平版印刷版用修正液。
- 前記強酸成分が、塩酸を必須成分とすることを特徴とする請求項4記載の平版印刷版用修正液。
- 溶液安定化剤として、更に、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化カルシウム、ハロゲン化アルカリの内から1種または2種以上が選択して添加されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用修正液。
- フェルトペン型の修正器具本体に、請求項6記載の平版印刷版用修正液が封入されてなり、先端のフェルトチップから修正液がしみ出し可能とされていることを特徴とする平板印刷用修正器具。
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