JP3749506B2 - 貼り合わせブロー成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロー成形時にブロー成形体の表面に不織布などの表皮シートを一体的に貼り合わせるブロー成形方法、すなわち貼り合わせブロー成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より実施されている貼り合わせブロー成形方法は、図17に示すように、一方の分割金型1の近傍に表皮シートSを平らな状態で吊り下げ、表皮シートSと分割金型2の間にパリソンPを押し出し、両分割金型1、2を型締めして表皮シートSとパリソンPを同時に挟み、パリソンP内にエアを吹き込んでブロー成形する。表皮シートSは裏面(パリソンP側)に該パリソンPと溶着する組成の樹脂が塗布されていたり、少なくとも裏面側がパリソンPと溶着する組成の樹脂からなり、エア圧で膨張するパリソンPにより分割金型1のキャビティ面1aに押し付けられてパリソンPと密着し、その保有する熱により該パリソンPの表面に溶着し貼り付く。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
表皮シートSは、両分割金型1、2の型締めが開始されると、軽く予圧されたパリソンPの外形に従って分割金型1のキャビティ内に多少引き込まれるが、型締めが完了して後は、ピンチオフ部(食い切り部)で周囲を止められるため、それ以上引き込まれない。型締め完了後、エア圧によりパリソンが膨張すると、表皮シートは多少伸び、パリソンの膨張に従って分割金型のキャビティ面に沿おうとするが、その伸びは十分ではない。
【0004】
従って、分割金型のキャビティが深い場合やキャビティのコーナー部の曲率が大きい場合などは、キャビティのコーナー部において表皮シートがパリソンの膨張を阻み、表皮シートとパリソンの双方がコーナー部形状に正確に沿わない(コーナーがでない)状態となり、特に表皮シートが厚くコシが強い場合は、表皮シートが3次元形状に変形しにくく、表皮シート及びパリソンが重なって大きいシワが生じることもある。また、ピンチオフ部(食い切り部)周辺の形状が平らでなく複雑な場合も、これと同様のことが起きていた。
さらに、表皮シートが薄い場合、パリソンの膨張力により表皮シートが破れたり、無理に引き伸ばされた表皮シートの布目を通してパリソンのプラスチックが表面に露出することもあった。
仮に分割金型のキャビティに沿う3次元形状の表皮シートを予め作成し、これをブロー成形の前にキャビティ内に配置すれば、上記の問題は解決される(例えば特開2002−86547参照)。しかし、複雑な3次元形状の表皮シートを予備的に作成することは大きいコストアップ要因であり、かつこれをキャビティに配置するのは、人手による危険な作業を伴う。
【0005】
一方、表皮シートが薄い場合やパリソンが薄い場合、あるいは冷却固化が早いABS樹脂等を使用する場合、分割金型に接触した表皮シートとパリソンが早く冷却して溶着が不十分となり、表皮シートが剥がれるという問題も起こる。表皮シートやパリソンの厚みを大きくしたり、分割金型の温度を上げることで冷却を遅らせ、表皮シートとパリソンの溶着力を強くすることはできるが、その場合、ブロー成形のサイクルタイムが伸び、ブロー成形体が重量アップし、それに伴いコスト高となる。さらに、分割金型の温度を上げると表皮シートのへたりが起き布の風合を損ねたり、カーペット等の起毛が倒れる等の問題も起きる。
【0006】
また、成形後のブロー成形体のパーティングライン(ピンチオフ部に対応)の外側には、パリソンとともに余分の表皮シートがバリとして付着しており、成形後の仕上げ作業としてこれを切除する必要がある。この切除は通常、人手によりナイフやハサミを用いて行われるが、これは丁寧に行わないとパーティングライン近傍の表皮シートに傷が付き、それを内装材として用いたときなど、傷が付いた箇所が表面に見えたりして外観が悪くなる。特に表皮シートとして厚みのある不織布を用いたとき、ブロー成形体の表面に貼り付いた不織布がブロー成形体の表面に盛り上がっているため、パーティングラインから余分の不織布だけをナイフやハサミできれいに切除するのは難しく、きわめて手間がかかる作業となる。
【0007】
本発明は、このような従来の貼り合わせブロー成形の問題点に鑑みてなされたもので、分割金型のキャビティ形状に沿った外形状を有し、パリソンの膨張による表皮シートの破れやプラスチックの表面への露出がない貼り合わせブロー成形体を容易にかつ安全に得ることを第1の目的とする。さらに表皮シートとパリソンの溶着不足を防止することを他の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、表皮シートをプリフォーム金型で一方の分割金型のキャビティ内に押し込んでプリフォームするとともに該キャビティ面に沿うように配置し、続いてプリフォーム金型を外し、分割金型を閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする。これにより、プリフォーム体の成形及びキャビティ内への配置を簡易かつ安全に行うことができる。
【0009】
あるいは、表皮シートをプリフォーム金型でプリフォーム受け型に押し込んでプリフォームし、この表皮シートを前記プリフォーム金型により一方の分割金型のキャビティ内に押し込んで該キャビティ面に沿うように配置し、続いてプリフォーム金型を外し、分割金型を閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする。この場合、プリフォームされた表皮シートをプリフォーム金型により一方の分割金型のキャビティ内に押し込む際、さらにキャビティ面に沿った形状に整形することができる。同じく、プリフォーム体の成形及びキャビティ内への配置を簡易かつ安全に行うことができる。
【0010】
上記ブロー成形方法において、プリフォーム金型を加熱し、該プリフォーム金型により表皮シートを加熱することができる。この場合、表皮シートは、プリフォーム受け型又は分割金型のキャビティ内に押し込まれるときプリフォーム金型に接触して裏面側から加熱され、この加熱はプリフォーム金型と表皮シートが接触している間継続される。表皮シートをキャビティ内に押し込む前に、別途用意したヒーターで裏面側から予熱することもできる。
【0011】
表皮シートを裏面側(パリソンに貼り付けられる側)から加熱することは、パリソンとの溶着不足の防止に効果がある。加熱された表皮シートが相対的に低温の分割金型に接触しても、表皮シートの裏面側まではすぐには冷却せず、未だ熱い状態でパリソンと接触させることができる。また、加熱して成形することにより、主として熱可塑性樹脂からなる表皮シートを所望の形状に容易に可塑的にプリフォームすることができ、分割金型が表皮シートより相対的に低温に保持されていれば、キャビティ内に配置されたプリフォーム体(プリフォームされた表皮シートの意)に形崩れも起きにくい。表皮シートを裏面側から加熱することは、表皮シートの表面側のへたり防止にも有利である。
【0012】
また、上記ブロー成形方法において、加熱したプリフォーム金型で表皮シートを一方の分割金型のキャビティ内に押し込む場合、表皮シートをプリフォーム金型と分割金型の食い切り部で挟み、表皮シートの外周部分を溶断し分離しておくことができる。これにより、ブロー成形後、切除するバリに表皮シートが含まれなくなり、仕上げ作業の手間が軽減される。
【0013】
本発明の別の1つは、ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、一方の分割金型にそのキャビティ面の一部を構成するスライド金型が設置され、前記一方の分割金型を前記他方の分割金型に近づけ、その際に前記スライド金型を前記他方の分割金型のキャビティ面に向けて突出させ、表皮シートを他方の分割金型のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ面に沿うように配置し、続いていったん他方の分割金型を外し、分割金型を再び閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする。この場合、表皮シートを押し込む前に、表皮シートを裏面側から予熱してもよい。
【0014】
本発明のさらに別の1つは、ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、前記一方の分割金型を前記他方の分割金型に近づけ、表皮シートを他方の分割金型のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ面に沿うように配置し、続いていったん他方の分割金型を外し、分割金型を再び閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする。この方法は、分割金型が閉じたとき、一方の分割金型のキャビティの凸部又は凹部に他方の分割金型のキャビティの凹部又は凸部がはまり込むような関係にある場合に用いることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図15を参照して、本発明に係る貼り合わせブロー成形方法について、具体的に説明する。
まず、図1〜図3に示すブロー成形方法は、平らな表皮シートSをプリフォーム金型16で一方の分割金型11のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ11a内に配置する方式である。
【0016】
図1〜図3に示すように、分割金型11、12の近傍に、開閉自在の安全ドア13を隔ててプリフォーム装置14が設置されている。プリフォーム装置14は、分割金型11の前面側に側方から進退し得るフレーム15と、フレーム15に取り付けられ、該フレーム15の進退方向とは垂直に進退し得るプリフォーム金型16と、フレーム15に取り付けられ、プリフォーム金型16の前面に表皮シートSを平らな状態で吊り下げる吊り下げ部材17からなる。
プリフォーム金型16は、分割金型11のキャビティ11a内にはまり込む凸形状部、すなわち成形部16aを有する。成形部16aの形状をキャビティ形状11aにほぼ沿った形状にしておくことで、キャビティ形状11aに沿ったプリフォーム体を得ることができる。分割金型11の前面には係止突起11bが設置され、該係止突起11bに対応してプリフォーム金型16に嵌入穴16bが形成されている。さらに表皮シートSには、上端よりやや下位置に係止穴Fが開けられている。プリフォーム金型16は加熱手段を内蔵していてもよい。
【0017】
図1〜図3を参照してブロー成形方法を順に説明すると次のようになる。
(1)図1に示すように、表皮シートSは裏面側をプリフォーム金型16に向け、上端を吊り下げ部材17に係止されて吊り下げられ、プリフォーム金型16の前面側に位置している。
(2)安全ドア13が開き、フレーム15が前進し、プリフォーム金型16が分割金型11の前面にもたらされて、プリフォーム金型16の成形部16aが分割金型11のキャビティ11aの真正面に位置決めされる。
【0018】
(3)続いて、プリフォーム金型16が前進し、図2に示すように、成形部16aが表皮シートSをキャビティ11a内に押し込む。プリフォーム金型16の前進に伴い、表皮シートSに形成された係止穴Fが係止突起11bにはまり、表皮シートSの上端が吊り下げ部材17から外れ、表皮シートSが成形部16aによりキャビティ11a内に押し込まれてプリフォーム(塑性変形)され、係止突起11bはプリフォーム金型16の嵌入穴16bに嵌入する。なお、表皮シートSがキャビティ11a内に押し込まれるとき、表皮シートSの周囲がキャビティ11a内に引き込まれる。
(4)次に、プリフォーム金型16が後退し、分割金型11のキャビティ11a内にプリフォーム体Saが残される(図3参照)。
(5)続いて、図3に示すように、フレーム15が後退し、パリソンPが両分割金型11、12の間に押し出され、さらに両分割金型11、12が閉じてパリソンPを挟み、常法に従ってブロー成形が行われる。
【0019】
図4〜図6に示すブロー成形方法は、平らな表皮シートSをプリフォーム金型16でプリフォーム受け型18のキャビティ18a内に押し込んでプリフォームし、さらにプリフォーム金型16で分割金型11のキャビティ11a内に押し込んで配置する方式である。プリフォーム受け型18はプリフォーム金型16の真正面に配置され、プリフォーム金型16の方向に進退し、また、そのキャビティ18aは分割金型11のキャビティ11aとほぼ同様の形状を有する。プリフォーム金型16は加熱手段を内蔵していてもよい。
【0020】
図4〜図6を参照してブロー成形方法を順に説明すると次のようになる。
(1)図4に示すように、表皮シートSは裏面側をプリフォーム金型16に向け、上端を吊り下げ部材17に係止されて吊り下げられ、プリフォーム金型16の前面側に位置している。
(2)プリフォーム金型16及びプリフォーム受け型18が互いに前進し、プリフォーム金型16の成形部16aが表皮シートSをプリフォーム受け型18のキャビティ18a内に押し込む。これにより、表皮シートSがプリフォームされ、表皮シートSの周囲がキャビティ18a内に引き込まれる。
(3)次に、プリフォーム受け型18が後退し、プリフォーム金型16の成形部16a上にプリフォーム体Saが残される。このプリフォーム体Saの上端は未だ吊り下げ部材17に係止されている。
【0021】
(4)安全ドア13が開き、フレーム15が前進し、プリフォーム金型16が分割金型11の前面にもたらされて、プリフォーム金型16の成形部16aが分割金型11のキャビティ11aの真正面に位置決めされる。
(5)続いて、プリフォーム金型16が前進し、図5に示すように、成形部16aが表皮シートSをキャビティ11a内に押し込む。プリフォーム金型16の前進に伴い、表皮シートSに形成された係止穴Fが係止突起11bにはまり、係止突起11bはプリフォーム金型16の嵌入穴16bに嵌入し、表皮シートSの上端が吊り下げ部材17から外れ、同時に、プリフォーム体Saがさらにキャビティ11aに沿う形状に整形される。
(6)次に、プリフォーム金型16が後退し、分割金型11のキャビティ11a内にプリフォーム体Saが残される(図6参照)。
(7)続いて、図6に示すように、フレーム15が後退し、パリソンPが両分割金型11、12の間に押し出され、さらに両分割金型11、12が閉じてパリソンPを挟み、常法に従ってブロー成形が行われる。
【0022】
図7に示すブロー成形方法は、平らな表皮シートSをプリフォーム金型26で一方の分割金型21のキャビティ21a内に押し込みプリフォームするとともに、該キャビティ21a内に配置する方式である。分割金型21のキャビティ21aの内面に、押し込まれた表皮シートS(プリフォーム体Sa)を保持する平面ファスナー23が取り付けられている。いうまでもなく、プリフォーム体Saを保持する手段はこれに限られない。
押し込まれた表皮シートSは、平面ファスナー23によりキャビティ21a内に保持され、ほぼ押し込まれたときの3次元形状を保つ。なお、表皮シートSの表面側は該平面ファスナー23に係合する材質(平面ファスナー22がオス型とすればメス型)とされる。図7に示すブロー成形方法は、図1〜図3に示す方法とほぼ同様に行われる。
【0023】
続いて、図8〜図12を参照し、より具体的な成形例について説明する。
ブロー成形されるのは、図8に示すように、自動車のドアのインナーパネルに取り付けられる内装板(2重壁中空板)31であり、内壁に外壁側に向けて嵌入する取っ手31a(アンダーカット状のくぼみ)が一体的に成形され、かつ取っ手31aの部分も含めて内面全体に表皮シートSが貼られている。
なお、従来は、この種の内装板は、貼り合わせブロー成形方法による成形が難しく、図18に示すように、内壁に大きめのくぼみ33が形成されたプラスチックの二重壁中空体をブロー成形し、その平面部分に表皮シートSを貼り、取付部材34(取付用の管34aが一体的に形成されている)をくぼみ33の奥に固定し、取っ手35(取付用のピン35aが一体的に形成されている)をくぼみ33に挿入するとともに、ピン35aを管34aにはめ込んで取っ手35を取付部材34に固定し、製造していた。
【0024】
図9〜図11に示すブロー成形方法は、図1〜図3で説明した方法を応用したもので、図1〜図3の一方の分割金型11に相当する分割金型41の一部が図12に示されている。図12の分割金型41において、その前面には、キャビティ41a、係止突起41b、スライド金型41c、ピンチオフ部41dが形成されている。
図9〜図11を参照して、内装板31のブロー成形方法を順に説明すると次のようになる。
(1)待機中の分割金型41の正面に、上端を吊り下げ部材43に係止された表皮シートSと、プリフォーム金型46がもたらされる(図9(a)〜(b))。プリフォーム金型46の前面には、分割金型41の凸部(スライド金型41cの部分)に対向する箇所に当該凸部がはまり込む凹部を有する成形部46aが配置され、係止突起41bに対向する箇所に係止部材46bが突出している。
【0025】
(2)プリフォーム金型46が前進し、図9(c)に示すように、成形部46aが表皮シートSに当接し、これをキャビティ41a内に押し込む。このとき表皮シートSの周囲がキャビティ41a内に引き込まれる(特に下方部分がずり上がって引き込まれる)。これにより、表皮シートSは分割金型41のキャビティ41aにほぼ沿った形状に成形され、同時に、係止部材46bにより表皮シートSが係止突起41bに係止される。
(3)続いてプリフォーム金型46が後退し、吊り下げ部材43が外れ、分割金型41のキャビティ41a内にプリフォーム体Saが残される。また、パリソンPが押し出される(図10(d))。
【0026】
(4)両分割金型41、42が閉じ始め、内部が軽く予圧されたパリソンPを挟む(図10(e))。
(5)分割金型42内に配置されたエア吹込針45がパリソンP内部に突出し、続いて両分割金型41、42が完全に閉じ(ピンチオフ部41d、42dが閉じる)、エア吹込針45からエアが吹き込まれ、ブロー成形が行われる(図11(f))。
(6)スライド金型41cが後退し、両分割金型41、42が開き、貼り合わせブロー成形体Pa(内装板31)が取り出される(図11(g))。
【0027】
なお、上記ブロー成形体Paにおいて、ピンチオフ部41d、42dより外側にあるパリソンP及び表皮シートS(図11(g)に矢印で示す)は、バリとして切除する必要がある。
ここで、仮にプリフォーム金型46に分割金型41のピンチオフ部41dに対応するピンチオフ部(分割金型42のピンチオフ部42dと同様のもの)を形成し、加熱手段を内蔵させておき、プリフォーム金型46が表皮シートSを分割金型41のキャビティ41aに押し込んだとき(図9(c)の段階)、プリフォーム金型46のピンチオフ部と分割金型41のピンチオフ部41dを当接させ、ここで予め表皮シートSを溶断し分離することもできる。この場合、ブロー成形後、切除するバリに表皮シートSが含まれなくなる。
【0028】
図13及び図14に示すブロー成形方法は、プリフォーム金型を用いずに表皮シートを一方の分割金型のキャビティ内に押し込んでプリフォームし、キャビティ面に沿うように配置するものである。ブロー成形体は図9〜図11と同じ内装板であり、両方の分割金型のキャビティ面の形状も同一である(図9〜図11と同じ部位には同じ番号を付与している)。分割金型41に対向する分割金型51がキャビティ面の一部を構成するスライド金型51a、51bを有し、かつピンチオフ部51cの外側にスライドし得る係止部材51dが設置されている点が分割金型42と異なっている。スライド金型51a、51bは分割金型41の凸部(スライド金型41cの部分)を挟むように該凸部に対向して設置され、分割金型41、51が閉じた状態でこれが突出すると、分割金型41の凸部がスライド金型51a、51bの間にはまり込むような関係になっている。
【0029】
図13及び図14に記載されたブロー成形方法は、分割金型51自体で表皮シートSを他方の分割金型41のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ内に配置する点に特徴がある。これをごく簡単に順に説明すると次のようになる。
(1)待機中の分割金型41の正面に、上端を吊り下げ部材43に係止された表皮シートSが配置され、スライド金型51a、51b及び係止部材51dが突出した状態で、分割金型51が閉じる(図13(a))。この過程で、スライド金型51a、51bが表皮シートSに当接し、これをキャビティ41a内に押し込む。このとき表皮シートSの周囲がキャビティ41a内に引き込まれる(特に下方部分がずり上がって引き込まれる)。これにより、表皮シートSは分割金型41のキャビティ41aにほぼ沿った形状に成形され、同時に、係止部材51dにより表皮シートSが係止突起41bに係止される。
【0030】
(2)続いてスライド金型51a、51bが引っ込むと同時に分割金型51がいったん後退し、分割金型41のキャビティ41a内にプリフォーム体Saが残され、この状態で両分割金型41、51の間にパリソンPが押し出される(図13(b))。
(3)分割金型51が再び閉じ始め、内部が軽く予圧されたパリソンPを挟む(図14(c))。あとは、図11に示したと同様の工程でブロー成形が行われる。
【0031】
図15及び図16に示すブロー成形方法は、プリフォーム金型を用いずに表皮シートを一方の分割金型のキャビティ内に押し込んでプリフォームし、キャビティ面に沿うように配置する点で、図13及び図14に示すブロー成形方法と共通している。ブロー成形体は図13及び図14のものと同種の内装板であるが、一方の分割金型61のキャビティ面の形状が図13のものと異なり、そのためブロー成形体の形状は若干異なる(図13と同じ部位には同じ番号を付与している)。分割金型41、61が閉じたとき、分割金型61のキャビティ面41aの凸部及び凹部の一部に分割金型のキャビティ面61aの凹部及び凸部がはまり込むような関係になっている。
【0032】
図15及び図16に記載されたブロー成形方法も、分割金型61自体で表皮シートSを分割金型41のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ内に配置する点に特徴がある。これをごく簡単に順に説明すると次のようになる。
(1)待機中の分割金型41の正面に、上端を吊り下げ部材43に係止された表皮シートSが配置され、分割金型61が閉じる(図15(a))。この過程で、分割金型61のキャビティ面の凸部が表皮シートSに当接し、これをキャビティ41a内に押し込む。このとき表皮シートSの周囲がキャビティ41a内に引き込まれる(特に下方部分がずり上がって引き込まれる)。これにより、表皮シートSは分割金型41のキャビティ41aにある程度沿った形状に成形され、同時に、係止部材61dにより表皮シートSが係止突起41bに係止される。
(2)続いて分割金型61がいったん後退し、分割金型41のキャビティ41a内にプリフォーム体Saが残され、この状態で両分割金型41、61の間にパリソンPが押し出される(図15(b))。
(3)分割金型61が再び閉じ始め、内部が軽く予圧されたパリソンPを挟む(図16(c))。あとは、図11に示したと同様の工程でブロー成形が行われる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、プリフォーム体の成形及びキャビティ内への配置を簡易かつ安全に行うことができ、このプリフォーム体を用いることで、ブロー成形時にパリソンの膨張が阻まれず、キャビティ形状に正確に沿った形状の貼り合わせブロー成形体が得やすく、かつ膨張するパリソンから表皮シートに無理な力が加わらないので、表皮シートが破れたり、無理に引き伸ばされた表皮シートの布目を通してパリソンのプラスチックが表面に露出することも防止できる。
また、表皮シートを裏面側から加熱することで、仮に表皮シートやパリソンの厚みを小さくしても表皮シートとパリソンの溶着性を改善でき、軽量で低コストの貼り合わせブロー成形体を得ることができる。さらに、溶着性の改善のために分割金型を特に加熱する必要がなく、ブロー成形のサイクルタイムを短縮でき、表皮シートのへたり等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る貼り合わせブロー成形方法を説明する概念図で、表皮シートのプリフォーム前の斜視図である。
【図2】 同じくプリフォーム時(分割金型への押し込み時)の斜視図である。
【図3】 同じくプリフォーム後、ブロー成形前の斜視図である。
【図4】 本発明に係る別の張り合わせブロー成形方法を説明する概念図で、表皮シートのプリフォーム前の斜視図である。
【図5】 同じく分割金型への押し込み時の斜視図である。
【図6】 同じくプリフォーム後、ブロー成形前の斜視図である。
【図7】 本発明に係る別の貼り合わせブロー成形方法を説明する概念図で、表皮シートのプリフォーム前の斜視図である。
【図8】 本発明を適用して製造される内装板の一部を示す斜視図である。
【図9】 その内装板を製造する貼り合わせブロー成形方法の工程を説明する要部断面図である。
【図10】 同じくその工程を説明する要部断面図である。
【図11】 同じくその工程を説明する要部断面図である。
【図12】 同じくその工程に用いる分割金型の一部を示す斜視図である。
【図13】 別の貼り合わせブロー成形方法の工程を説明する要部断面図である。
【図14】 同じくその工程を説明する要部断面図である。
【図15】 さらに別の貼り合わせブロー成形方法の工程を説明する要部断面図である。
【図16】 同じくその工程を説明する要部断面図である。
【図17】 従来の貼り合わせブロー成形方法を説明する概念図である。
【図18】 従来の内装板の構造を説明する組立図である。
【符号の説明】
11、12、41、42、51、61 分割金型
51a、51b スライド金型
11a、12a、41a キャビティ
16、26、46 プリフォーム金型
16a 成形部
17 吊り下げ部材
18 プリフォーム受け型
21 分割金型
23 平面ファスナー
31 内装板
31a 取っ手
S 表皮シート
Sa プリフォーム体
P パリソン

Claims (8)

  1. ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、プリフォーム金型を加熱し、表皮シートを前記加熱したプリフォーム金型で一方の分割金型のキャビティ内に押し込んでプリフォームするとともに該キャビティ面に沿うように配置し、続いてプリフォーム金型を外し、分割金型を閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする貼り合わせブロー成形方法。
  2. 前記加熱したプリフォーム金型で表皮シートを一方の分割金型のキャビティ内に押し込んだとき、表皮シートをプリフォーム金型と分割金型の食い切り部で挟み、表皮シートの外周部分を溶断し分離することを特徴とする請求項1に記載された貼り合わせブロー成形方法。
  3. ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、表皮シートをプリフォーム金型でプリフォーム受け型に押し込んでプリフォームし、この表皮シートを前記プリフォーム金型により一方の分割金型のキャビティ内に押し込んで該キャビティ面に沿うように配置し、続いてプリフォーム金型を外し、分割金型を閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする貼り合わせブロー成形方法。
  4. プリフォームされた表皮シートをプリフォーム金型により一方の分割金型のキャビティ内に押し込む際、さらにキャビティ面に沿った形状に整形することを特徴とする請求項3に記載された貼り合わせブロー成形方法。
  5. プリフォーム金型を加熱し、該プリフォーム金型により表皮シートを加熱することを特徴とする請求項3又は4に記載された貼り合わせブロー成形方法。
  6. 加熱したプリフォーム金型で表皮シートを一方の分割金型のキャビティ内に押し込んだとき、表皮シートをプリフォーム金型と分割金型の食い切り部で挟み、表皮シートの外周部分を溶断し分離することを特徴とする請求項5に記載された貼り合わせブロー成形方法。
  7. ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、一方の分割金型にそのキャビティ面の一部を構成するスライド金型が設置され、前記一方の分割金型を他方の分割金型に近づけ、その際に前記スライド金型を前記他方の分割金型のキャビティ面に向けて突出させ、表皮シートを他方の分割金型のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ面に沿うように配置し、続いていったん他方の分割金型を外し、分割金型を再び閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする貼り合わせブロー成形方法。
  8. ブロー成形時に表皮シートをブロー成形体の表面に一体的に貼り合わせる貼り合わせブロー成形方法において、一方の分割金型を他方の分割金型に近づけ、表皮シートを他方の分割金型のキャビティ内に押し込み、プリフォームするとともに該キャビティ面に沿うように配置し、続いていったん他方の分割金型を外し、分割金型を再び閉じてパリソンを挟み、ブロー成形を行うことを特徴とする貼り合わせブロー成形方法。
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