JP3749464B2 - 多結晶シリコン製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体用の多結晶シリコンの製造に好適に使用される多結晶シリコン製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体用の多結晶シリコンは、シーメンス法と呼ばれる気相成長法により、クロロシラン類(主にトリクロロシラン)と水素の混合ガスから製造されている。この方法では、反応炉から未反応の原料ガスを含め、水素と塩化物の混合ガスが排出される。具体的には、その排ガスは主に水素を含み、他にHCl(塩化水素)、SiH3 Cl(モノクロロシラン)、SiH2 Cl2 (ジクロロシラン)、SiHCl3 (トリクロロシラン)、SiCl4 (四塩化珪素)及びポリマー(SiX Y ClZ )を含む。
【0003】
ポリマー(SiX Y ClZ )は、具体的にはSi2 HCl5 、Si2 2 Cl4 、Si2 Cl6 等であり、SiCl4 (四塩化珪素)より更に高沸点の物質であり、沸点以下では高粘性である。
【0004】
この排ガスは、原料ガスであるクロロシラン類及び水素を含んでいる。このため、排ガス中の塩化物が分離除去され、水素が回収される。回収された水素は原料ガスとして反応炉に再導入される。排ガス中から分離された塩化物についても、クロロシラン類が回収され、原料ガスとして利用される。このような水素回収のための排ガス処理方法としては、主に図1のような循環式の精製プロセスが用いられている。この精製プロセスを以下に説明する。
【0005】
反応炉1から排出された排ガスは、第1冷却系2に送られる。第1冷却系2は、ここでは2つの冷却器2a,2bからなり、1段目の冷却器2aで−10〜10℃程度に冷却された後、2段目の冷却器2bで−30℃以下に冷却される。これにより、排ガス中からSiH2 Cl2 (ジクロロシラン)、SiHCl3 (トリクロロシラン)、SiCl4 (四塩化珪素)及びポリマー(SiX Y ClZ )といった塩化物が除去され回収される。回収された塩化物は、再使用のために蒸留工程へ送られる。
【0006】
第1冷却系2で主に高沸点塩化物を除去された排ガスは、加圧器3を経て第2冷却系4へ送られる。第2冷却系4は、ここではシャワー塔4a、ポンプ4b及び冷凍機4cなどからなり、加圧器3で昇圧された排ガスをシャワー塔4aに導入し、−50℃以下に冷却された塩化物(液)をシャワー塔4a中で排ガスに散布することにより、排ガス中の殆どの塩化物を凝縮させて除去する。加圧器3は、第2冷却系4での塩化物の回収率を高めるために、排ガスを昇圧する。
【0007】
なお、第2冷却系4は、ここではシャワー塔4aを用いているが、多管式熱交換器を用いることも可能であり、多管式熱交換器を用いた方が設備を簡略化できる。
【0008】
第2冷却系4で更に塩化物を除去された排ガスは、微量塩化物除去系5へ送られる。微量塩化物除去系5は、選択的に切り替え使用される複数の活性炭吸着塔5aからなり、第2冷却系4でも除去できなかった微量塩化物を、活性炭により吸着し、極めて純度の高い水素ガスを精製して反応炉1へ供給する。
【0009】
活性炭吸着塔5aは、一定時間使用すると吸着能力がなくなり、水素ガス以外の成分を完全に吸着できなくなる。これを破過というが、破過が生じる前に吸着塔は再生済みの吸着塔に切り替えられ、使用後の吸着塔は加熱、キャリアガスのパージにより吸着した成分を放出して再生される。放出した成分は冷却などにより回収され、蒸留工程へ送られる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような多結晶シリコン製造装置における水素ガス回収のための排ガス処理プロセスでは、反応炉1から排出される排ガスにポリマー(SiX Y ClZ )及びシリコン微粉が含まれており、これらの含有に起因して、以下のような問題が生じている。
【0011】
反応炉1の出側配管では、排ガスが多くの塩化物を含んでおり、また排ガス温度が反応温度から常温へ低下する。この部分では、塩化物中の特に粘性のあるポリマーが配管内面に付着し、それがシリコン微粉の付着を促進することにより、短期間で配管内径が小さくなり、圧力損失が増大する。
【0012】
第1冷却系2及び第2冷却系4でも機器内にポリマー及びシリコン微粉が付着して伝熱性能が低下し、更に多管式熱交換器を使用している場合は、伝熱管内径が小さくなって圧力損失が増大する。
【0013】
加圧器3においては、排ガス中にシリコン微粉が存在することにより、コンプレッサのシリンダーが損傷し、整備時期が早くなり、更には本体も損傷する危険性が高くなる。また、ポリマーはコンプレッサの熱により分解されてシリコン等の微粉となり、同様の悪影響をコンプレッサ等に与える。
【0014】
活性炭吸着塔5aにおいては、通常はガスが塔下部から塔上部へ流通する。このため、下部に充填されている活性炭にシリコン微粉が付着し、圧力損失が増大する。
【0015】
ポリマー及びシリコン微粉の付着による排ガスの流通障害に対しては、配管や機器を開放整備する必要があるが、ポリマーは空気中で発火するために、その整備は非常に危険であり、手間のかかる作業となる。活性炭吸着塔5aにおける圧力損失が大きくなった場合、塔下部のガス入口配管を開放整備する必要があり、その際は塔内の活性炭を全量抜き出す必要がある。一度抜き出した活性炭は事前に加熱脱着処理を行なっても大気中で発火しやすく危険であり、また大気中の水分と残留塩化物により、再使用は困難である。また処分するにしても強酸性のため中和作業が必要になり、コスト増を強いられることになる。
【0016】
本発明の目的は、水素ガス回収のための排ガス処理に伴うポリマー及びシリコン微粉の付着による種々問題を、簡単な手法で効果的に解決できる多結晶シリコン製造装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は、排ガス精製系統を構成する冷却系、加圧器等の構成機器の入側に樹脂製の微粉除去フィルタを設置した。しかし、ポリマーの除去については殆ど効力がなく、問題解決の効果は小さかった。そこで次に、樹脂製の微粉除去フィルタに代えて活性炭フィルタを設置した。
【0018】
その結果、ポリマーに関しては活性炭の粒子の表面上で吸着されるため効果的に除去されることが判明した。また、特に活性炭フィルタの表層部付近に集中して吸着するため、活性炭フィルタの厚さは極薄いものでも機能することが判明し、これより、ガス滞留時間が1秒以下程度の小型の活性炭フィルタで十分であるとの知見を得た。
【0019】
一方、シリコン微粉に関しても活性炭によって除去効果があることが確認できた。活性炭表面に吸着されたポリマーが、シリコン微粉に対する吸着剤として作用しているために、シリコン微粉の除去効果が高められているものと考えられる。また、本発明者は、活性炭フィルタの表層部付近に付着したポリマーの一部は、活性炭の触媒作用によってシリコン微粉に変化していること、更に従来は活性炭フィルタを設置していなかったために活性炭吸着塔5aのガス導入口付近で同様にシリコン微粉が生じていたことを知見した。これらのシリコン微粉はポリマーと混在して活性炭の表層部に蓄積し、活性炭吸着塔5aの圧損を増加させる一因となっていたのである。このような状況下で活性炭吸着塔5aの上流側に活性炭フィルタを設置すると、活性炭吸着塔5aでの圧損増加を防止することができる。また、活性炭フィルタは小型であるために交換が容易であり、活性炭フィルタが、並列に接続された切り替え用の活性炭フィルタ又はバイパス配管を装備していれば、更に交換が容易となる。
【0020】
本発明の多結晶シリコン製造装置は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、気相成長法によりクロロシラン類と水素の混合ガスから多結晶シリコンを製造する反応炉と、反応炉で発生する排ガスから水素ガスを抽出して反応炉へ再導入する循環式の精製系統とを備えた多結晶シリコン製造装置において、前記精製系統を構成する少なくとも1つの機器の上流側に、ガス滞留時間が1秒以下である活性炭フィルタを設置したものである。
【0021】
このような活性炭フィルタの設置により、ポリマー及びシリコン微粉の付着による配管閉塞や機器損傷等が効果的に回避される。
【0022】
ここにおける活性炭フィルタは、ポリマー及びシリコン微粉を除去するだけであるので、塩化物の除去に使用される活性炭吸着塔と異なり、少量の活性炭で効力を発揮し、ガス滞留時間で言えば1秒以下で十分である。
【0023】
即ち、排ガス中のポリマー及びシリコン微粉の除去の点からは、ガス滞留時間は1秒以下で十分であり、1秒を超えると除去効果が飽和し、活性炭量のみが無用に増加し、経済性が低下する。ガス滞留時間の下限については、除去効果確保のために0.05秒が好ましい。このガス滞留時間は0.1〜0.8秒が特に好ましい。
【0024】
活性炭フィルタは又、上から下へガスを流通させる構成が好ましい。排ガス流量が多いため、下から上、右から左などではフィルタ内の活性炭に流動状態となる部分が発生する。この活性炭フィルタは、例えば下から上へフィルタ保持フレーム、下面スクリーンフィルタ、活性炭、上面網を積層した構造である。この構造であれば、活性炭に対して重力もガス圧も上から付加されるため、流動状態が発生しない。上から下へガスを流通させる構成とは、斜めであってもよく、フィルタ部分でのガス流れベクトルに下向き成分が含まれていればよいということである。
【0025】
活性炭フィルタは、並列に接続された切り替え用の活性炭フィルタ又はバイパス配管を装備する構成か好ましい。これにより、活性炭の交換時に操業を停止する必要がない。
【0026】
精製系統については、構成機器としての第1冷却系、加圧器、第2冷却系及び微量塩化物除去系を直列に接続したものが好ましい。
【0027】
この場合の活性炭フィルタは、構成機器を接続する配管の何れか、若しくは反応炉と第1冷却系を接続する配管に設置される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は前述したとおり循環式の排ガス精製系統を備えた多結晶シリコン製造装置の一例についてその構成を示す系統図であり、活性炭フィルタの設置推奨位置を▲1▼〜▲5▼で示している。また、図2は活性炭フィルタの構成図である。
【0029】
本実施形態の多結晶シリコン製造装置では、反応炉1から排出される排ガスが第1冷却系2、加圧器3、第2冷却系4及び微量塩化物除去系5を順番に通過し、水素ガスに精製されて反応炉1へ戻る。第1冷却系2、加圧器3、第2冷却系4及び微量塩化物除去系5の各構成及び機能は前述したとおりである。前述した装置と異なるのは、機器間を接続する配管の少なくとも1箇所に活性炭フィルタが設置される点である。
【0030】
活性炭フィルタの設置箇所としては、反応炉1の出側配管▲1▼、第1冷却系2の入側配管▲2▼(▲1▼▲2▼はいずれも反応炉1と第1冷却系2を接続する配管)、加圧器3の入側配管▲3▼(第1冷却系2と加圧器3を接続する配管)、加圧器3の出側配管▲4▼(加圧器3と第2冷却系4を接続する配管)、第2冷却系4の出側配管▲5▼(第2冷却系4と微量塩化物除去系5を接続する配管)などを挙げることができる。
【0031】
▲1▼〜▲5▼のいずれも活性炭フィルタの設置箇所として有効であり、▲1▼の場合は全工程におけるポリマー及び微粉付着を防止できるが、ガス圧が小さいため、ガス流の障害とならないように断面積の大きなフィルタが要求される。▲2▼▲3▼の場合もほぼ同様に、大部分の工程におけるポリマー及び微粉付着を防止できるが、ガス圧が小さいため、ガス流の障害とならないように断面積の大きなフィルタが要求される。
【0032】
これに対し、加圧器3より下流側の▲4▼▲5▼では、上流側での配管閉塞等を防止できないが、ガス圧が高いために、フィルタ断面積の縮小が可能になる。
【0033】
活性炭フィルタは、図2に示すように、円筒形状をした縦型容器6と、縦型容器6の上端面に接続されたガス導入管7と、縦型容器6の下端面に接続されたガス排出管8とを備えており、縦型容器6内には下から上へフィルタ保持フレーム、下面スクリーンフィルタ9、活性炭10及び上面網11が積層して配置されてる。
【0034】
排ガスは、活性炭フィルタ内を上から下へ流通する。これにより、排ガス中のポリマーが活性炭表面で捕捉される。また、排ガス中のシリコン微粉も捕捉される。排ガスが上から下へ流通することにより、流動状態が阻止される。
【0035】
活性炭フィルタに並列的にバイパス管を接続し、活性炭フィルタ内の活性炭を交換する際にパイパス管を使用することにより、活性炭の交換中も操業を継続することができる。同様に、活性炭フィルタに並列的に別の活性炭フィルタを接続することによっても、活性炭交換中の操業継続が可能となる。
【0036】
図1に示した排ガス精製系統において活性炭フィルタを設置しない場合、主に第1冷却系においてポリマーと微粉による熱交換器チューブの閉塞が発生し、コンプレッサの整備頻度が4回/年以上と多かった。
【0037】
これを受けて、その精製系統の▲1▼、即ち反応炉の出側配管に活性炭フィルタを設置した。活性炭部分の直径は660mm、厚さは300mmであり、活性炭の平均粒径は2mmである。排ガスの流速は1000Nm3 /hr、活性炭フィルタにおけるガス滞留時間は約0.5秒であった。ポリマー及び微粉の付着による閉塞等は、系統全体で発生しなくなった。そのため、例えば第1冷却系の整備も2回/年程度の定期整備のみでよくなった。活性炭フィルタにおける活性炭の交換頻度は3ヵ月に1回であった。
【0038】
ちなみに、微量塩化物除去系における活性炭充填塔の規模は、活性炭フィルタと比べ、▲1▼▲2▼▲3▼に活性炭フィルタを設置した場合で約50倍、▲4▼▲5▼に活性炭フィルタを設置した場合で150〜300倍になる。
【0039】
図1に示した排ガス精製系統において、加圧器と多管式熱交換器からなる第2冷却系の間に活性炭フィルタを設置した。活性炭フィルタにおける活性炭部分の直径は220mm、厚さは300mmであり、活性炭の平均粒径は2mmである。排ガスの流速は1000Nm3 /hr、活性炭フィルタにおけるガス滞留時間は約0.4秒であった。多管式熱交換器の伝熱管における閉塞は発生しなくなった。
【0040】
活性炭フィルタにおける圧損は、いずれにおいても1×10-2MPa以下であった。この圧損としては、系統全体における圧損の増加を回避するために2×10-2MPa以下が好ましい。
【0041】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明の多結晶シリコン製造装置は、反応炉で発生する排ガスから水素ガスを抽出して反応炉へ再導入する循環式の精製系統を構成する少なくとも1つの機器の上流側に活性炭フィルタを設置することにより、その排ガス処理に伴うポリマー及びシリコン微粉の付着による配管閉塞、機器損傷等を回避できる。従って、配管や機器の開放整備が不要となり、操業の安全性、経済性等が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】循環式の排ガス精製系統を備えた多結晶シリコン製造装置の一例をついてその構成を示す系統図である。
【図2】活性炭フィルタの構成図である。
【符号の説明】
1 反応炉
2 第1冷却系
3 加圧器
4 第2冷却系
5 微量塩化物除去系
▲1▼〜▲5▼ 活性炭フィルタの設置推奨位置
6 活性炭フィルタの縦型容器
7 ガス導入管
8 ガス排出管
9 下面スクリーンフィルタ
10 活性炭
11 上面網

Claims (4)

  1. 気相成長法によりクロロシラン類と水素の混合ガスから多結晶シリコンを製造する反応炉と、反応炉で発生する排ガスから水素ガスを抽出して反応炉へ再導入する循環式の精製系統とを備えた多結晶シリコン製造装置において、前記精製系統を構成する少なくとも1つの機器の上流側に、ガス滞留時間が1秒以下である活性炭フィルタを設置したことを特徴とする多結晶シリコン製造装置。
  2. 前記活性炭フィルタは、上から下へガスを流通させる構成である請求項1に記載の多結晶シリコン製造装置。
  3. 前記活性炭フィルタは、並列に接続された切り替え用の活性炭フィルタ又はバイパス配管を装備する請求項1又は2に記載の多結晶シリコン製造装置。
  4. 前記精製系統は、構成機器として直列に接続された第1冷却系、加圧器、第2冷却系及び微量塩化物除去系を有し、前記活性炭フィルタは、これらの構成機器を接続する配管の何れか、若しくは反応炉と第1冷却系を接続する配管に設置されている請求項1、2又は3に記載の多結晶シリコン製造装置。
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