JP3748923B2 - 防振クリップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、パネル側に立設されたスタッドボルトを利用して、各種の板状部品と所定パネルとを振動を吸収しながら固定するために使用される防振クリップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の車体パネル側にブラケット等の板状部品を固定する際に、一方に生じる機械的振動を他方に伝えることが好ましくないような場合には、通常は、板状部品とパネルと間に合成ゴム等で成形された振動吸収体を介在させて、当該振動吸収体の弾力性を利用して、上記の機械的振動を吸収している。
【0003】
その防振固定構造の一例を示すと、図10に示す如く、パネルP側にスタッドボルトBを立設し、部品31側に振動吸収体33を装着する切欠口付の取付孔32を開設する一方、振動吸収体33を円筒状体に成形して、該振動吸収体33の内側に金属カラー36を嵌入する貫通孔34を形成すると共に、同外周面に上記取付孔32の孔縁と係止する環状凹溝35を形成する構成となっている。
【0004】
そして、実際に、部品31をパネルP側に固定する場合には、まず、振動吸収体33をその環状凹溝35を介して部品31の取付孔32内に横方向から装着した後、振動吸収体33の貫通孔34内に金属カラー36を嵌入して、当該金属カラー36内にスタッドボルトBを挿入し、最後に、金属カラー36から外方に突出するスタッドボルトBの先端部をナット37で締め付けることにより、振動吸収体33を介在させた状態の下で、部品31がパネルP側に一定の間隔をおいて固定されることとなる。
従って、斯る防振固定状態の下では、部品31とパネルPの間に振動吸収体33が介在することとなるので、これにより、部品31側又はパネルP側に生じる機械的な振動が他方に伝わることを防止できる訳である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、従来の防振固定構造にあっては、確かに、部品31とパネルPの間に介在される振動吸収体33の弾力性を利用することにより、機械的振動を効果的に吸収することは可能となるが、反面、この為には、使用部材の点数が多くなるばかりか、特に、振動吸収体33を部品31側に組み付ける場合には、振動吸収体33を変形させながら、部品31の取付孔32内にその切欠口から無理矢理に押し込んで、取付孔32の孔縁に振動吸収体33の環状凹溝35を係止させた後、振動吸収体33の貫通孔34内に締付量を規制する金属カラー36を強制的に嵌入しなければならないので、その作業性が著しく低下してしまう大きな問題点を有していた。
しかも、この振動吸収体33の部品31側に対する組付作業が複数個所で要求されるような場合には、斯る作業性の問題点が一層顕著となる。
【0006】
又、図示する従来構造とは逆に、パネル側にナットを溶接して、当該溶接ナットに金属カラー内の上方から挿入されたボルトの先端部を螺合する構造のものも存在するが、この場合には、上記の問題点に加えて、部品が比較的小さいと、ボルトの締め付け螺合時に、部品が共回りする恐れがあるので、更に、作業性が問題視されることとなる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、斯かる従来の防振固定構造が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の防振クリップは、パネル側に立設されたスタッドボルトを利用して、部品とパネルとを振動を吸収しながら固定する防振クリップを前提として、内部に上記スタッドボルトを差し込むスリーブ本体を備え、当該スリーブ本体は、内周面にスタッドボルトのネジ面に係止する複数の弾性係止爪を形成し、外周面に下方へ傾斜する上弾性片と上方へ傾斜する下弾性片とを対の関係をもって延設して、当該上下の弾性片の各先端縁で部品側の取付孔の周面を上下方向から弾持する一方、スリーブ本体の外周面に切欠部を有するフランジ部を形成して、該フランジ部の切欠部と対応する外周面に上記上弾性片を一体に延設することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の防振クリップは、請求項1の下で、部品側の取付孔を長孔形状となす一方、スリーブ本体の外周面に一対の回転防止片を延設して、スリーブ本体を上記長孔状の取付孔内に挿入して90°回転させることにより、一対の回転防止片の先端縁を当該取付孔の短寸方向に位置する孔側面に弾接させることを特徴とする。
【0012】
依って、本発明の防振クリップの下では、振動吸収手段たる上下の弾性片を介して、そのスリーブ本体を部品側に予め開設されている取付孔に取り付けた後、斯かる状態のまま、スリーブ本体の内部にパネル側に立設されたスタッドボルトの先端部を差し込むだけで、スタッドボルトのネジ面に対する複数の弾性係止爪の係止状態を得て、スリーブ本体がスタッドボルトにワンタッチで固定されると同時に、部品もパネル側に即座に固定される。
【0013】
又、この部品の固定状態にあっては、上記した上下弾性片の部品側の取付孔の周面に対する弾持作用で、部品側又はパネル側に生じる機械的な振動が他方に伝わることを有効に防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施の形態に基づいて詳述するが、該実施の形態のものも、パネルP2側に立設されたスタッドボルトBを利用することを前提として、板状部品P1とパネルP2とを振動を吸収しながら固定できる防振クリップとして開発されたものである。
【0015】
そこで、まず、実施の形態に係る防振クリップを説明すると、当該防振クリップは、図1・図2に示す如く、合成樹脂材料で成形されたスリーブ本体1を備え、その下端内周面に上内方に立ち上がる複数の弾性係止爪2を一定の間隔をおいて形成して、当該スリーブ本体1の内部に下端側からスタッドボルトBの先端部を差し込めば、上記各弾性係止爪2の外方への撓みで、スタッドボルトBの通過を許容しながら、最後に、該各弾性係止爪2をスタッドボルトBの対応するネジ面に弾性的に係止させることにより、スリーブ本体1自体をスタッドボルトBに固定できる構造となしている。尚、図中、3は、上端部側が連結されてスリーブ本体1の内周面に沿って突出する複数のガイドリブで、このガイドリブ3は隣接する各弾性係止爪2の間に個々に延在している。
【0016】
そして、本実施の形態にあっては、上記スリーブ本体1の外周中間に対向する切欠部5を有する円盤状のフランジ部4を形成して、該フランジ部4の各切欠部5と対応する外周面に、下方へ一定の角度をもって傾斜する一対の上弾性片6を一体に延設すると共に、当該各上弾性片6と対向するスリーブ本体1の下縁外周面に、逆に、上方へ一定の角度をもって傾斜する一対の下弾性片7を一体に延設して、これら対の関係にある一対の上弾性片6と一対の下弾性片7の各先端縁間で、後述する部品P1側の取付孔Hの周面を上下方向から弾持する構成となしている。
尚、上下の弾性片6・7は、図示する如く、その巾寸法については同寸となしているが、その長さ寸法については、上弾性片6の方が長寸となるように設定されている。
【0017】
又、この上下の弾性片6・7から90°変位したスリーブ本体1の対向する外周面には、下方に一定の角度をもって傾斜する短寸な一対の回転防止片8を一体に延設する構成を併せて採用している。
【0018】
この為、特に、実施の形態の下では、図1に示す如く、部品P1側に開設される取付孔Hを角長孔状となして、当該角長孔状の取付孔H内に対するスリーブ本体1の挿入時は、上記一対の回転防止片8を取付孔Hの長寸方向に沿って挿入し、そのまま、スリーブ本体1を90°回転させることにより、今度は、一対の回転防止片8の先端縁を取付孔Hの短寸方向に位置する各孔側面Haに弾接させて、スリーブ本体1の取付孔H内での回転を防止できる構成を積極的に採用している。
【0019】
依って、斯る構成の防振クリップを用いて、板状部品P1をパネルP2側に固定する場合には、まず、既述した如く、一対の回転防止片8が取付孔Hの長寸方向に位置する状態を得て、スリーブ本体1の下端側を部品P1の取付孔H内に挿入すると、一対の回転防止片8は何らの抵抗を受けずに取付孔H内を通過するが、一対の下弾性片7は取付孔Hの孔縁で内側に押されながら取付孔Hを通過して、完全に通過した時点で、一対の上弾性片6の各先端縁が部品P1の取付孔Hの上周面に弾接すると同時に、一対の下弾性片7の各先端縁が同取付孔Hの下周面に弾接して、図3に示す如く、当該取付孔Hの周面を上下方向から弾持する。
【0020】
次いで、今度は、上下の弾性片6・7による弾持状態を維持したまま、スリーブ本体1を90°回転させると、図4に示す如く、一対の回転防止片8の先端縁が取付孔Hの短寸方向に位置する各孔側面Haに弾接するので、これにより、スリーブ本体1は回転が規制された状態をもって部品P1側に取り付けられる。
【0021】
そこで、後は、スリーブ本体1の内部にパネルP2側に立設されているスタッドボルトBの先端部を差し込めば、図5に示す如く、当該スタッドボルトBのネジ面に対する各弾性係止爪2の係止状態を得て、スリーブ本体1がスタッドボルトBにワンタッチで固定されると同時に、部品P1がパネルP2側に即座に固定される。
【0022】
従って、実施の形態の下では、従来の防振固定構造と比較すると、使用部材の点数の大巾な削減を図りながら、部品P1のパネルP2に対する固定作業が頗る容易となる利点を有すると共に、その固定状態にあって、縦方向の振動が加わった場合には、これを上下対の関係にある上弾性片6と下弾性片7の弾持作用で効果的に吸収し、逆の横方向の振動が加わった場合には、スタッドボルトBのネジ面に係止している各弾性係止爪2の弾性変形で効果的に吸収することが可能となるので、いずれにしても、部品P1側又はパネルP2側に生じる機械的な振動が他方に伝わることを防止できる訳である。
特に、横方向の防振効果を大ならしめる上では、各弾性係止爪2の寸法を可能な限り長く設定することが好ましい。
【0023】
次に、参考例に係る防振クリップを説明すると、当該防振クリップも、基本的には、内周面に複数の弾性係止爪2を形成したスリーブ本体1を前提とするものではあるが、上記した実施の形態と異なるところは、図6に示す如く、合成ゴム等の弾性材料で独立成形された弾性体10を別に備える点にある。
【0024】
当該弾性体10は、図7にも示す如く、上記スリーブ本体1の外周部に嵌着できる大きさの円筒状を呈し、その上端開口縁側の外周面に、スリーブ本体1の円盤状フランジ部4より大径な環状フランジ部11を形成すると共に、該フランジ部11の下位外周面に、下向きの傾斜案内面12aを備える環状膨出部12を形成して、当該環状フランジ部11の下面と環状膨出部12の上端縁の間に、部品P1側に開設されている取付孔Hの孔縁を係止する環状凹溝13を画成する一方
、その側壁内に上方が開放されて上記環状膨出部12の途中まで至る環状空部14を形成する構成となっている。
尚、この参考例の下では、実施の形態とは異なり、部品P1側に丸孔状の取付孔Hを開設するものとする。
【0025】
依って、斯る構成の防振クリップを用いて、板状部品P1をパネルP2側に固定する場合には、まず、スリーブ本体1のフランジ部4と弾性体10のフランジ部11とが当接するまで、弾性体10をスリーブ本体1の外周部に嵌着して、部品P1側の取付孔H内に押し込むと、上記環状空部14から得られる変形と、環状膨出部12の傾斜案内面12aのガイド作用を得て、弾性体10が当該取付孔H内を比較的スムーズに通過して、自身の環状凹溝13内に取付孔Hの孔縁を係止するので、これにより、図8に示す如く、防振クリップが部品P1側に取り付けられる。
尚、この取り付け状態にあっては、図示する如く、弾性体10の環状フランジ部11が取付孔Hの周面に直に接触して、スリーブ本体1側のフランジ部4が当該周面に接触することを防止している。
【0026】
そこで、後は、同様に、スリーブ本体1の内部にパネルP2側に立設されているスタッドボルトBを差し込めば、図9に示す如く、当該スタッドボルトBのネジ面に対する各弾性係止爪2の係止状態を得て、スリーブ本体1がスタッドボルトBにワンタッチで固定されると同時に、部品P1がパネルP2側に即座に固定される。
しかも、この部品P1の固定状態にあっては、実施の形態のものと同様に、スタッドボルトBの対応するネジ面に各弾性係止爪2が係止しているので、部品P1が不用意に脱落する心配も決してない。
【0027】
従って、参考例の下でも、従来の防振固定構造と比較すると、使用部材の点数の大巾な削減を図りながら、部品P1のパネルP2に対する固定作業が頗る容易となるばかりか、その固定状態にあっては、部品P1とパネルP2との間に弾性体10が介在することは勿論であるが、特に、部品P1の取付孔Hに対しては、弾性体10の環状フランジ部11と環状凹溝13と環状膨出部12が介在することとなるので、部品P1側又はパネルP2側に生じる機械的な振動が他方に伝わることを有効に防止できる訳である。
【0028】
しかも、参考例にあって、横方向の振動が加わった場合には、スタッドボルトBのネジ面に係止している弾性係止爪2の弾性変形に加えて、環状空部14の変形でも、当該振動を効果的に吸収することが可能となるので、極めて合理的な防振効果が期待できる。依って、環状空部14はそれなりの存在意義を有するものではあるが、必ず、存在しなければならないものではない。仮に、環状空部14を形成しない場合には、弾性体10を単独で部品P1側の取付孔Hに先付けして、後から、スリーブ本体1を当該弾性体10の内部に嵌着しても、結果的には、部品P1側に対する上記と同様な取り付け状態が得られることとなる。
【0029】
【発明の効果】
以上の如く、本発明に係る防振クリップは、上記構成の採用により、従来の防振固定構造とは異なり、使用部材の点数の削減を図りながら、部品のパネルに対する固定作業を大巾に簡略化することが可能となった。
その上、振動吸収手段たる上下弾性片の部品の取付孔の周面に対する弾持作用で、部品側又はパネル側に生じる機械的な振動が他方に伝わることを有効に防止できるので、防振効果の向上も期待できることとなる。
又、部品側に開設される取付孔に関しても、従来の如き切欠口を有するものに限定されることがないので、部品自体の剛性のアップを図り、その使用範囲の拡大も期待できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る防振クリップを部品側の取付孔とパネル側のスタッドボルトの関係をもって示す分解斜視図である。
【図2】 (A)はスリーブ本体の平面図、(B)は同正面図、(C)は図2AのA−A線断面図である。
【図3】 防振クリップを部品側に取り付けた状態を示す要部断面図である。
【図4】 一対の回転防止片が取付孔の孔側面に弾接した状態を示す要部断面図である。
【図5】 部品をパネルに固定した状態を示す要部断面図である。
【図6】 本発明の参考例に係る防振クリップを分解して示す斜視図である。
【図7】 弾性体を示す断面図である。
【図8】 防振クリップを部品側に取り付けた状態を示す要部断面図である。
【図9】 部品をパネルに固定した状態を示す要部断面図である。
【図10】 従来の防振固定構造の一例を分解して示す要部斜視図である。
【符号の説明】
1 スリーブ本体
2 弾性係止爪
4 円盤状フランジ部
5 切欠部
6 上弾性片
7 下弾性片
8 回転防止片
10 弾性体
11 環状フランジ部
12 環状膨出部
13 環状凹溝
14 環状空部
P1 部品
H 取付孔
Ha 取付孔の短寸方向に位置する孔側面
P2 パネル
B スタッドボルト

Claims (2)

  1. パネル側に立設されたスタッドボルトを利用して、部品とパネルとを振動を吸収しながら固定する防振クリップであって、内部に上記スタッドボルトを差し込むスリーブ本体を備え、当該スリーブ本体は、内周面にスタッドボルトのネジ面に係止する複数の弾性係止爪を形成し、外周面に下方へ傾斜する上弾性片と上方へ傾斜する下弾性片とを対の関係をもって延設して、当該上下の弾性片の各先端縁で部品側の取付孔の周面を上下方向から弾持する一方、スリーブ本体の外周面に切欠部を有するフランジ部を形成して、該フランジ部の切欠部と対応する外周面に上記上弾性片を一体に延設することを特徴とする防振クリップ。
  2. 部品側の取付孔を長孔形状となす一方、スリーブ本体の外周面に一対の回転防止片を延設して、スリーブ本体を上記長孔状の取付孔内に挿入して90°回転させることにより、一対の回転防止片の先端縁を当該取付孔の短寸方向に位置する孔側面に弾接させることを特徴とする請求項1記載の防振クリップ。
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