JP3748455B2 - 転炉の上吹き酸素ランス - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は転炉の上吹き酸素ランスに関し、詳しくは地金付着の少ない上吹き酸素ランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉による溶鋼の精錬は、転炉炉口直上より上吹き吹錬用酸素ランスを炉内に挿入し、その先端から高圧酸素を超音速で転炉内溶鋼に吹き付けることにより溶鋼中の炭素、珪素、リン等の不純物を酸化燃焼させてCOガスやスラグとして除去するものである。
【0003】
上記転炉における酸素供給条件として、▲1▼精錬時間短縮による生産能率向上の観点から単位時間当たりの酸素供給量(送酸量)の増加が要求され、同時に、▲2▼転炉内冶金反応(酸化燃焼反応)効率向上の観点から溶鋼の攪拌力強化が要求される。この両者を満たすため、従来より、いわゆる高動圧の「ハードブロー」吹錬が採用されてきた。
【0004】
上記「ハードブロー」吹錬により鋼浴にエネルギーが付与されると、鋼浴の攪拌力が強化される反面、炉内の溶鋼の飛散が激しくなり酸素ランス表面に付着する溶鋼量が増大するという問題が起きてきた。
【0005】
一般的に、転炉精錬は溶鋼の融点よりも150℃程度高い高温下で行われる。このため、溶鋼の熱間流動性は酸素ランス表面へ飛散付着した段階でも高く保持されており、吹錬中、炉内では溶鋼が酸素ランス表面に飛散付着しても流動性があるため自重落下し、酸素ランス表面に堆積することは少ない。
【0006】
吹錬後、炉体を傾動し出鋼するためランスを炉上に引き上げると、付着した溶鋼は空気冷却並びにランスを冷却している冷却水による抜熱により冷却され、付着地金が形成される。次の吹錬再開によりランスは再度炉内に挿入される。しかし、前述した付着地金は、溶鋼からの強力な熱輻射や飛散し付着した溶鋼からの熱伝導を受けても、再溶解されることは少ない。むしろ、吹錬再開により新たに飛散して来た溶鋼が付着地金に冷却されるので、溶鋼は付着地金上で堆積し肥大化してランス重量は増大する。このためランスを吊っているロープの強度が足らなくなって保持困難となったり、円滑な転炉操業に支障をきたす。従って、地金付着を防止する手段又は除去する技術の開発が急務である。
【0007】
このような地金付着を防止する技術の例として、上吹き酸素ランス表面への地金及びスラグ(以下、付着物という)の剥離を促進する物質(以下、剥離剤という)を吹き付け塗布する方法が特開平4−72008号公報に開示されている。この方法は転炉非吹錬時に剥離剤を吹き付け塗布することにより、地金の付着を防止する技術である。即ち、酸素ランスが上昇する過程で槌打装置によって酸素ランスを反復して叩き付着物を落とし、その後、酸素ランスが下降する過程で前記剥離剤を酸素ランス表面に吹き付けるものである。
【0008】
この方法によれば、剥離剤吹き付け作業工程は転炉非吹錬時に行うことができ、また、短時間内に行えるので非吹錬時の都度実施可能である。そして、付着物を除去した後に剥離剤を吹き付けるので剥離剤は容易に剥離することなく、十分な剥離効果が得られ酸素ランスへの地金及びスラグの付着防止を図ることができる。
【0009】
他方、付着地金を機械的に除去する技術の例として、転炉直上のランス昇降経路上にU字状の地金除去具をランスを囲んで配設する方法が特開平4−224614号公報に開示されている。この方法によれば、吹錬終了毎、酸素ランスがランス昇降経路に沿って炉上に引き上げられる過程で、地金が付着堆積していて太っている箇所はU字状の地金除去具に接触しながら抵抗を受け、付着地金は掻きむしられ機械的に除去される。ここで、U字状の地金除去具のアームはバネによって支持されており、ランスと付着地金との固着力がバネの支持力よりも強い場合、地金除去具のアームは上方に傾動して退避する機構を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特開平4−72008号公報に開示されている酸素ランス表面に剥離剤を吹き付け塗布する方法には、
▲1▼酸素ランス表面性状が滑らかでないと剥離効果が少ない。しかし、ランスの使用回数が増加するに従い表面の平滑性は劣化する。従って、使用回数の増加したランスは地金が付着し易い。
▲2▼剥離剤コストが高価である。
▲3▼剥離剤の濃度管理や液面残量管理などの点検保守性が悪い。
という問題点がある。
【0011】
近年、転炉生産能率向上及び転炉内の冶金反応効率向上の観点から、いわゆる「ハードブロー」吹錬が採用されており、この結果、炉内における溶鋼の飛散が激しくなり、酸素ランス表面への溶鋼の衝突頻度が増大していることは前述した通りである。これと同時に、鋼浴から酸素ランス表面に付与される輻射熱量も増大している。特に、「ハードブロー」吹錬によって酸素ランス表面への溶鋼の付着範囲は、転炉炉口部の高さと、転炉絞り部と転炉直胴部との境界の高さと、の間に位置する範囲(図1の斜線で示した部分、以下、「ランス中間部」と称す)に集中する傾向がある。即ち、溶鋼の衝突による衝撃力並びにヒートアタックはこのランス中間部に集中する。よってこの範囲に塗布した剥離剤は吹錬中に剥がれてしまい、剥離剤の効果が期待できない。
【0012】
このため、当該方法では、
▲1▼剥離剤を効果的に働かせるため槌打装置によって酸素ランスを反復して叩き付着物を落とす必要がある。
▲2▼上記の様な過程で酸素ランスと強力に固着堆積したり肥大化した地金を槌打装置によって機械的に反復して叩いてもこれら地金を十分に落とすことは困難である。
等の解決すべき問題点が残されている。
【0013】
一方、特開平4−224614号公報で開示されている酸素ランスの付着地金を機械的に除去する方法では、酸素ランスと付着地金との固着力がバネの支持力よりも強い場合、地金除去具のアームは傾動して上方に退避してしまう。このため、軽微な付着地金を除去するには有効であるが、強固な付着地金及び肥大化した地金は除去できないという問題点がある。
【0014】
さらに、最近「ハードブロー」吹錬が一般的に採用されるにおよび強固な付着地金が増大している。強固な付着地金を除去するためにはバネの支持力を強力にする必要がある。これを可能にするには、酸素ランス昇降駆動設備の増強やランスを吊っているロープ強度の増強を図る等の設備改造が必要となるという問題点がある。
【0015】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、安価で設備保守性が良く、しかも効率良く効果的に酸素ランス外筒表面に付着した地金を除去することのできる上吹き酸素ランスを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る転炉の上吹き酸素ランスは、上吹き酸素ランスが転炉内に挿入されたとき、転炉炉口部の高さ位置と、転炉絞り部と転炉直胴部との境界の高さ位置と、の間に位置する範囲に、当該酸素ランスの吹錬用酸素の供給経路と連通する複数の酸素ノズルが配置された、酸素ランス外筒表面に地金が付着するのを防止するための上吹き酸素ランスであって、前記酸素ノズルは当該酸素ランスの上下方向に所定の間隔で配置されてノズル列を形成すると共に、当該ノズル列は酸素ランスの円周方向に少なくとも2列以上配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
【作用】
酸素吹錬が開始されるとランス中間部の範囲に溶鋼は集中して付着し始める。本発明では、酸素ノズルを酸素ランスの内部から表面に貫通させたこと、即ち、酸素ノズルを吹錬用高圧酸素の供給経路に連通して設置させたことにより、吹錬と同期して吹錬用高圧酸素の一部が酸素ノズルから吹き出す。このため、上吹きランス外筒表面に付着する溶鋼は直ちに酸素により着火し溶解を開始するので、上吹きランス表面に堆積することはない。
【0018】
また、ランス表面に飛散した溶鋼は、付着地金による冷却途中であり、未だ高温度を保持しており、酸素を吹き込むと容易に着火する。従って、ランスに付着した地金は酸素吹き込みによって着火発熱し、再溶解して酸素ランス表面上を伝わって自重落下する。
【0019】
この時、自重落下途中で溶鋼の温度は降下するが、酸素ノズルを所定の間隔で、しかも、上下方向に配置することにより温度降下した溶鋼は再びその下方に配設したノズルより吹き出す酸素によって再溶解し熱付与されるので流動性の低下が防止出来る。従って、冷却されつつある溶鋼はランス表面に留まることなく炉中に落下し地金付着は防止できる。
【0020】
また、本発明では、酸素ノズル列をランス中間部の円周方向に2列以上配設している。前述の酸素ノズルにより付着地金を再溶解した痕跡として当該酸素ノズル列の配設部には溶鋼、地金の付着がなく、吹錬中上下方向に地金の溶融、再溶解した溝が形成される。例えば、酸素ノズル列をランス円周方向に2列配設すると、付着地金は円筒方向に2分割され自重によって容易に落下する。
更に、本発明では、吹錬用高圧酸素の一部がランス表面のノズル孔より吹き出す。吹錬用酸素は高圧ゆえノズル孔は飛散溶鋼によって目詰まりすることはない。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1は、転炉設備において上吹き酸素精錬をしている図である。ここで、1は転炉炉口部、2は転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界、3はランス中間部と称し、転炉炉口部1の高さ位置と、転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界2の高さ位置との間に位置するランス部位(図1の斜線で図示したランス部分)である。「ハードブロー」吹錬実施に伴って、上吹き酸素吹錬中、当該ランス中間部3の表面には溶鋼が集中して飛散付着し、地金が堆積し易い部分である、4は転炉本体、5は上吹き酸素ランス、7は転炉直胴部、8は転炉絞り部、9はランス下部と称し、ランス中間部3の下方からランス先端までの範囲のランス部位である。
【0022】
10は転炉出鋼口、11は超音速酸素ジェットであって酸素ランス先端に配設してあるノズル(一般にはランス先端に3〜4個程度のラバールノズルを配設)よりを鋼浴に向かって噴射しており、鋼浴に強力な攪拌力を与え溶鋼の冶金反応促進に寄与している。12は転炉吹錬中の鋼浴面を示す、13は超音速酸素ジェットを鋼浴に噴射することにより炉中に飛散している溶鋼粒である。
【0023】
図2は、ランス中間部3を拡大して示す図で、ランス中間部3の外筒表面に配設した酸素ノズル列を示す図である。図2において、6は当該ランス中間部3に所定の間隔で上下方向に配設した酸素ノズル列である。当該酸素ノズルと酸素ランス内部とは連通しているので、転炉吹錬開始と同時に吹錬用高圧酸素が当該酸素ノズル列よりランス表面に噴射される。
【0024】
次に、350トン転炉にて上吹き酸素精錬を行い、本発明に係る酸素ノズルを使用して上吹きランス外筒表面に付着する溶鋼を酸素ランス表面上で再溶解し、酸素ランスへの地金付着防止ができた例を説明する。
【0025】
送酸条件として、酸素ランス外径400mmの上吹き酸素ランス5を用いて標準送酸流量60000Nm3 /Hrの「ハードブロー」吹錬によって上吹き酸素吹錬をした。ランス中間部3の範囲のランス表面には、図2に示した様に酸素ノズル列6を配設した。当該酸素ノズルの口径は直径2mmで、ノズル間隔は40mm一定、1列当りのノズル個数は100個とし酸素ノズル列6はランス上下方向(ランス長手方向)に所定の間隔で配設し、また、酸素ノズル列6は、ランス横断面の左右対称の位置に2列配置した。
【0026】
上記送酸条件にてヒートサイズ350トンの溶銑を上記350トン転炉に挿入し上吹き酸素吹錬を実施したところ、超音速酸素ジェット13を鋼浴に噴射することにより炉内で溶鋼が攪拌飛散し、ランス中間部3の範囲のランス表面全周に集中して溶鋼は付着した。 本実施例では、酸素ノズル列(2mm口径×100個×2列)より酸素流量700Nm3 /Hrを噴出することによりランス中間部3に付着した溶鋼地金を溶解できた。
【0027】
従来、地金付着及び肥大化によってランス交換する頻度は40ヒートに1回の割合で発生していた。また、ランス交換に至らないまでも、吹錬中または非吹錬中には人力や機械治具を使用して上吹きランスの付着地金を落とす作業が必要であった。本発明の成果として転炉操業上支障となる上吹きランスでの地金付着がなくなり、この種の作業は大幅に軽減された。また、本発明により付着地金の肥大化による交換が解消され、ランス交換原因はランス先端部の溶損のみの要因に限定された。この結果、ランス交換寿命は150ヒートまで延長できた。
【0028】
更に、本実施例では、酸素ノズル列の長さは40mm間隔×100個とし、およそ4メートルとした理由について説明する。本実施例で用いた350トン転炉の転炉炉口部1の高さ位置と、転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界2の高さ位置と、の間の距離(ここでは便宜上、転炉絞り部8の高さと言う)はおよそ3メートルである。
【0029】
ランス中間部3の範囲を決定する考え方として▲1▼吹錬条件に応じてランス高さを上下に変化させた場合でも、酸素ノズル列の最上端ノズルの高さは転炉炉口部1の高さを原則として越えないこと。▲2▼酸素ノズル列の長さは転炉絞り部8の高さと同等か、又は、若干酸素ノズル列を長く配設することが望ましい。また、本発明を大きさの異なる炉容積を持った転炉に適用する場合でも、上記▲1▼、▲2▼の条件を用いるのが望ましい。また、地金再溶解に必要な酸素ノズルからの酸素供給量は▲1▼酸素ノズル口径▲2▼ノズル間隔▲3▼酸素ノズル列の長さ(酸素ノズル個数)▲4▼酸素ノズル列数の増減等の要因によって決定されるが、転炉工場の置かれた操業条件(吹錬用高圧酸素の余裕)や吹錬条件(溶鋼飛散量、地金付着量の発生量)を考慮に入れて設計することが望ましい。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、上記の様に構成されているので、高価な剥離剤や大掛かりな除去装置を必要とせず簡単な構成により上吹きランス外筒表面への付着地金の発生を防止できる。更に、本発明では、吹錬用酸素と地金溶解用酸素とが連通しているので、溶鋼の飛散付着が開始する吹錬とこの飛散付着溶鋼を溶解するタイミングとを同期させているので、ランス表面での付着地金の除去を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた転炉設備において上吹き酸素精錬を実施している図である。
【図2】本発明の実施例に用いた酸素ノズル列を配設した上吹き酸素ランス中間部の拡大図である。
【符号の説明】
1 転炉炉口部
2 転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界
3 ランス中間部
4 転炉本体
5 上吹き酸素ランス
6 ランス中間部3に配設した酸素ノズル列
8 転炉絞り部
9 ランス下部
13 超音速酸素ジェットを鋼浴に噴射することにより炉中に飛散している溶鋼粒
【産業上の利用分野】
本発明は転炉の上吹き酸素ランスに関し、詳しくは地金付着の少ない上吹き酸素ランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉による溶鋼の精錬は、転炉炉口直上より上吹き吹錬用酸素ランスを炉内に挿入し、その先端から高圧酸素を超音速で転炉内溶鋼に吹き付けることにより溶鋼中の炭素、珪素、リン等の不純物を酸化燃焼させてCOガスやスラグとして除去するものである。
【0003】
上記転炉における酸素供給条件として、▲1▼精錬時間短縮による生産能率向上の観点から単位時間当たりの酸素供給量(送酸量)の増加が要求され、同時に、▲2▼転炉内冶金反応(酸化燃焼反応)効率向上の観点から溶鋼の攪拌力強化が要求される。この両者を満たすため、従来より、いわゆる高動圧の「ハードブロー」吹錬が採用されてきた。
【0004】
上記「ハードブロー」吹錬により鋼浴にエネルギーが付与されると、鋼浴の攪拌力が強化される反面、炉内の溶鋼の飛散が激しくなり酸素ランス表面に付着する溶鋼量が増大するという問題が起きてきた。
【0005】
一般的に、転炉精錬は溶鋼の融点よりも150℃程度高い高温下で行われる。このため、溶鋼の熱間流動性は酸素ランス表面へ飛散付着した段階でも高く保持されており、吹錬中、炉内では溶鋼が酸素ランス表面に飛散付着しても流動性があるため自重落下し、酸素ランス表面に堆積することは少ない。
【0006】
吹錬後、炉体を傾動し出鋼するためランスを炉上に引き上げると、付着した溶鋼は空気冷却並びにランスを冷却している冷却水による抜熱により冷却され、付着地金が形成される。次の吹錬再開によりランスは再度炉内に挿入される。しかし、前述した付着地金は、溶鋼からの強力な熱輻射や飛散し付着した溶鋼からの熱伝導を受けても、再溶解されることは少ない。むしろ、吹錬再開により新たに飛散して来た溶鋼が付着地金に冷却されるので、溶鋼は付着地金上で堆積し肥大化してランス重量は増大する。このためランスを吊っているロープの強度が足らなくなって保持困難となったり、円滑な転炉操業に支障をきたす。従って、地金付着を防止する手段又は除去する技術の開発が急務である。
【0007】
このような地金付着を防止する技術の例として、上吹き酸素ランス表面への地金及びスラグ(以下、付着物という)の剥離を促進する物質(以下、剥離剤という)を吹き付け塗布する方法が特開平4−72008号公報に開示されている。この方法は転炉非吹錬時に剥離剤を吹き付け塗布することにより、地金の付着を防止する技術である。即ち、酸素ランスが上昇する過程で槌打装置によって酸素ランスを反復して叩き付着物を落とし、その後、酸素ランスが下降する過程で前記剥離剤を酸素ランス表面に吹き付けるものである。
【0008】
この方法によれば、剥離剤吹き付け作業工程は転炉非吹錬時に行うことができ、また、短時間内に行えるので非吹錬時の都度実施可能である。そして、付着物を除去した後に剥離剤を吹き付けるので剥離剤は容易に剥離することなく、十分な剥離効果が得られ酸素ランスへの地金及びスラグの付着防止を図ることができる。
【0009】
他方、付着地金を機械的に除去する技術の例として、転炉直上のランス昇降経路上にU字状の地金除去具をランスを囲んで配設する方法が特開平4−224614号公報に開示されている。この方法によれば、吹錬終了毎、酸素ランスがランス昇降経路に沿って炉上に引き上げられる過程で、地金が付着堆積していて太っている箇所はU字状の地金除去具に接触しながら抵抗を受け、付着地金は掻きむしられ機械的に除去される。ここで、U字状の地金除去具のアームはバネによって支持されており、ランスと付着地金との固着力がバネの支持力よりも強い場合、地金除去具のアームは上方に傾動して退避する機構を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特開平4−72008号公報に開示されている酸素ランス表面に剥離剤を吹き付け塗布する方法には、
▲1▼酸素ランス表面性状が滑らかでないと剥離効果が少ない。しかし、ランスの使用回数が増加するに従い表面の平滑性は劣化する。従って、使用回数の増加したランスは地金が付着し易い。
▲2▼剥離剤コストが高価である。
▲3▼剥離剤の濃度管理や液面残量管理などの点検保守性が悪い。
という問題点がある。
【0011】
近年、転炉生産能率向上及び転炉内の冶金反応効率向上の観点から、いわゆる「ハードブロー」吹錬が採用されており、この結果、炉内における溶鋼の飛散が激しくなり、酸素ランス表面への溶鋼の衝突頻度が増大していることは前述した通りである。これと同時に、鋼浴から酸素ランス表面に付与される輻射熱量も増大している。特に、「ハードブロー」吹錬によって酸素ランス表面への溶鋼の付着範囲は、転炉炉口部の高さと、転炉絞り部と転炉直胴部との境界の高さと、の間に位置する範囲(図1の斜線で示した部分、以下、「ランス中間部」と称す)に集中する傾向がある。即ち、溶鋼の衝突による衝撃力並びにヒートアタックはこのランス中間部に集中する。よってこの範囲に塗布した剥離剤は吹錬中に剥がれてしまい、剥離剤の効果が期待できない。
【0012】
このため、当該方法では、
▲1▼剥離剤を効果的に働かせるため槌打装置によって酸素ランスを反復して叩き付着物を落とす必要がある。
▲2▼上記の様な過程で酸素ランスと強力に固着堆積したり肥大化した地金を槌打装置によって機械的に反復して叩いてもこれら地金を十分に落とすことは困難である。
等の解決すべき問題点が残されている。
【0013】
一方、特開平4−224614号公報で開示されている酸素ランスの付着地金を機械的に除去する方法では、酸素ランスと付着地金との固着力がバネの支持力よりも強い場合、地金除去具のアームは傾動して上方に退避してしまう。このため、軽微な付着地金を除去するには有効であるが、強固な付着地金及び肥大化した地金は除去できないという問題点がある。
【0014】
さらに、最近「ハードブロー」吹錬が一般的に採用されるにおよび強固な付着地金が増大している。強固な付着地金を除去するためにはバネの支持力を強力にする必要がある。これを可能にするには、酸素ランス昇降駆動設備の増強やランスを吊っているロープ強度の増強を図る等の設備改造が必要となるという問題点がある。
【0015】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、安価で設備保守性が良く、しかも効率良く効果的に酸素ランス外筒表面に付着した地金を除去することのできる上吹き酸素ランスを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る転炉の上吹き酸素ランスは、上吹き酸素ランスが転炉内に挿入されたとき、転炉炉口部の高さ位置と、転炉絞り部と転炉直胴部との境界の高さ位置と、の間に位置する範囲に、当該酸素ランスの吹錬用酸素の供給経路と連通する複数の酸素ノズルが配置された、酸素ランス外筒表面に地金が付着するのを防止するための上吹き酸素ランスであって、前記酸素ノズルは当該酸素ランスの上下方向に所定の間隔で配置されてノズル列を形成すると共に、当該ノズル列は酸素ランスの円周方向に少なくとも2列以上配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
【作用】
酸素吹錬が開始されるとランス中間部の範囲に溶鋼は集中して付着し始める。本発明では、酸素ノズルを酸素ランスの内部から表面に貫通させたこと、即ち、酸素ノズルを吹錬用高圧酸素の供給経路に連通して設置させたことにより、吹錬と同期して吹錬用高圧酸素の一部が酸素ノズルから吹き出す。このため、上吹きランス外筒表面に付着する溶鋼は直ちに酸素により着火し溶解を開始するので、上吹きランス表面に堆積することはない。
【0018】
また、ランス表面に飛散した溶鋼は、付着地金による冷却途中であり、未だ高温度を保持しており、酸素を吹き込むと容易に着火する。従って、ランスに付着した地金は酸素吹き込みによって着火発熱し、再溶解して酸素ランス表面上を伝わって自重落下する。
【0019】
この時、自重落下途中で溶鋼の温度は降下するが、酸素ノズルを所定の間隔で、しかも、上下方向に配置することにより温度降下した溶鋼は再びその下方に配設したノズルより吹き出す酸素によって再溶解し熱付与されるので流動性の低下が防止出来る。従って、冷却されつつある溶鋼はランス表面に留まることなく炉中に落下し地金付着は防止できる。
【0020】
また、本発明では、酸素ノズル列をランス中間部の円周方向に2列以上配設している。前述の酸素ノズルにより付着地金を再溶解した痕跡として当該酸素ノズル列の配設部には溶鋼、地金の付着がなく、吹錬中上下方向に地金の溶融、再溶解した溝が形成される。例えば、酸素ノズル列をランス円周方向に2列配設すると、付着地金は円筒方向に2分割され自重によって容易に落下する。
更に、本発明では、吹錬用高圧酸素の一部がランス表面のノズル孔より吹き出す。吹錬用酸素は高圧ゆえノズル孔は飛散溶鋼によって目詰まりすることはない。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1は、転炉設備において上吹き酸素精錬をしている図である。ここで、1は転炉炉口部、2は転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界、3はランス中間部と称し、転炉炉口部1の高さ位置と、転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界2の高さ位置との間に位置するランス部位(図1の斜線で図示したランス部分)である。「ハードブロー」吹錬実施に伴って、上吹き酸素吹錬中、当該ランス中間部3の表面には溶鋼が集中して飛散付着し、地金が堆積し易い部分である、4は転炉本体、5は上吹き酸素ランス、7は転炉直胴部、8は転炉絞り部、9はランス下部と称し、ランス中間部3の下方からランス先端までの範囲のランス部位である。
【0022】
10は転炉出鋼口、11は超音速酸素ジェットであって酸素ランス先端に配設してあるノズル(一般にはランス先端に3〜4個程度のラバールノズルを配設)よりを鋼浴に向かって噴射しており、鋼浴に強力な攪拌力を与え溶鋼の冶金反応促進に寄与している。12は転炉吹錬中の鋼浴面を示す、13は超音速酸素ジェットを鋼浴に噴射することにより炉中に飛散している溶鋼粒である。
【0023】
図2は、ランス中間部3を拡大して示す図で、ランス中間部3の外筒表面に配設した酸素ノズル列を示す図である。図2において、6は当該ランス中間部3に所定の間隔で上下方向に配設した酸素ノズル列である。当該酸素ノズルと酸素ランス内部とは連通しているので、転炉吹錬開始と同時に吹錬用高圧酸素が当該酸素ノズル列よりランス表面に噴射される。
【0024】
次に、350トン転炉にて上吹き酸素精錬を行い、本発明に係る酸素ノズルを使用して上吹きランス外筒表面に付着する溶鋼を酸素ランス表面上で再溶解し、酸素ランスへの地金付着防止ができた例を説明する。
【0025】
送酸条件として、酸素ランス外径400mmの上吹き酸素ランス5を用いて標準送酸流量60000Nm3 /Hrの「ハードブロー」吹錬によって上吹き酸素吹錬をした。ランス中間部3の範囲のランス表面には、図2に示した様に酸素ノズル列6を配設した。当該酸素ノズルの口径は直径2mmで、ノズル間隔は40mm一定、1列当りのノズル個数は100個とし酸素ノズル列6はランス上下方向(ランス長手方向)に所定の間隔で配設し、また、酸素ノズル列6は、ランス横断面の左右対称の位置に2列配置した。
【0026】
上記送酸条件にてヒートサイズ350トンの溶銑を上記350トン転炉に挿入し上吹き酸素吹錬を実施したところ、超音速酸素ジェット13を鋼浴に噴射することにより炉内で溶鋼が攪拌飛散し、ランス中間部3の範囲のランス表面全周に集中して溶鋼は付着した。 本実施例では、酸素ノズル列(2mm口径×100個×2列)より酸素流量700Nm3 /Hrを噴出することによりランス中間部3に付着した溶鋼地金を溶解できた。
【0027】
従来、地金付着及び肥大化によってランス交換する頻度は40ヒートに1回の割合で発生していた。また、ランス交換に至らないまでも、吹錬中または非吹錬中には人力や機械治具を使用して上吹きランスの付着地金を落とす作業が必要であった。本発明の成果として転炉操業上支障となる上吹きランスでの地金付着がなくなり、この種の作業は大幅に軽減された。また、本発明により付着地金の肥大化による交換が解消され、ランス交換原因はランス先端部の溶損のみの要因に限定された。この結果、ランス交換寿命は150ヒートまで延長できた。
【0028】
更に、本実施例では、酸素ノズル列の長さは40mm間隔×100個とし、およそ4メートルとした理由について説明する。本実施例で用いた350トン転炉の転炉炉口部1の高さ位置と、転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界2の高さ位置と、の間の距離(ここでは便宜上、転炉絞り部8の高さと言う)はおよそ3メートルである。
【0029】
ランス中間部3の範囲を決定する考え方として▲1▼吹錬条件に応じてランス高さを上下に変化させた場合でも、酸素ノズル列の最上端ノズルの高さは転炉炉口部1の高さを原則として越えないこと。▲2▼酸素ノズル列の長さは転炉絞り部8の高さと同等か、又は、若干酸素ノズル列を長く配設することが望ましい。また、本発明を大きさの異なる炉容積を持った転炉に適用する場合でも、上記▲1▼、▲2▼の条件を用いるのが望ましい。また、地金再溶解に必要な酸素ノズルからの酸素供給量は▲1▼酸素ノズル口径▲2▼ノズル間隔▲3▼酸素ノズル列の長さ(酸素ノズル個数)▲4▼酸素ノズル列数の増減等の要因によって決定されるが、転炉工場の置かれた操業条件(吹錬用高圧酸素の余裕)や吹錬条件(溶鋼飛散量、地金付着量の発生量)を考慮に入れて設計することが望ましい。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、上記の様に構成されているので、高価な剥離剤や大掛かりな除去装置を必要とせず簡単な構成により上吹きランス外筒表面への付着地金の発生を防止できる。更に、本発明では、吹錬用酸素と地金溶解用酸素とが連通しているので、溶鋼の飛散付着が開始する吹錬とこの飛散付着溶鋼を溶解するタイミングとを同期させているので、ランス表面での付着地金の除去を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた転炉設備において上吹き酸素精錬を実施している図である。
【図2】本発明の実施例に用いた酸素ノズル列を配設した上吹き酸素ランス中間部の拡大図である。
【符号の説明】
1 転炉炉口部
2 転炉絞り部8と転炉直胴部7との境界
3 ランス中間部
4 転炉本体
5 上吹き酸素ランス
6 ランス中間部3に配設した酸素ノズル列
8 転炉絞り部
9 ランス下部
13 超音速酸素ジェットを鋼浴に噴射することにより炉中に飛散している溶鋼粒
Claims (1)
- 上吹き酸素ランスが転炉内に挿入されたとき、転炉炉口部の高さ位置と、転炉絞り部と転炉直胴部との境界の高さ位置と、の間に位置する範囲に、当該酸素ランスの吹錬用酸素の供給経路と連通する複数の酸素ノズルが配置された、酸素ランス外筒表面に地金が付着するのを防止するための上吹き酸素ランスであって、前記酸素ノズルは当該酸素ランスの上下方向に所定の間隔で配置されてノズル列を形成すると共に、当該ノズル列は酸素ランスの円周方向に少なくとも2列以上配置されていることを特徴とする、転炉の上吹き酸素ランス。
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