JP3746376B2 - イオン源によるイオン発生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空チャンバー内の気体の分子密度、すなわち真空度を測定するための電離真空計(イオンゲージ)や真空チャンバー内の残留ガスを分析する質量分析計(残留ガス分析計)に使われるイオン源によるイオン発生方法に関し、特に電子コレクターの吸着気体の電子衝撃脱離電子刺激脱離(Electron-Stimulated Desorption,以下ESD)による測定誤差を除去することができるイオン源によるイオン発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、10-5Pa以下の超高真空領域の電離真空計や残留ガス分析計には、電子電流制御型イオン源が用いられる。このイオン源は、熱陰極フィラメントまたは冷陰極エミッターアレーの様な電子エミッターから飛び出した電子を、陽極グリッド電極である電子コレクターの内外で振動させ、この振動電子が真空チャンバ内の気体分子に衝突することでイオンを発生させるものである。このようにして発生したイオンを、気体の種類に関係なく集めてそのトータル電流から圧力を求めるのが電離真空計(イオンゲージ)であり、このイオン流を質量/電荷比として分離してから測定するのが分圧計、即ち残留ガス分析計である。
【0003】
前記のイオン源において、電子コレクターの内外に振動する電子数は、電子コレクターに流す陽極電流を一定にすることにより制御される。熱陰極型イオン源の場合は、フィラメント温度が制御され、また最近注目されている冷陰極エミッターアレーの場合は、ゲートバイアスによって制御される。この電子電流制御型イオン源は、圧力に関係なく電子電流を一定に保つ方法であるため、得られるイオン電流強度は残留気体密度(圧力)に対して良い比例関係が成り立ち、安定で、信頼性も高い。
【0004】
しかしながら、電子エミッターから発射される電子は、100eV以上の運動エネルギーを持って電子コレクターに衝突するため、電子コレクターの表面に酸化層等として化学吸着している気体分子や物理吸着している気体分子が、中性分子、中性破片分子、中性原子或いはそれらのイオン等の様々な形の粒子として放出される。この現象は電子衝撃脱離(ESD)と称される。
【0005】
このESDがイオンの形で発生する確率は電子コレクターの表面が酸化されている場合が最大で、約10-5イオン/電子である。従って、高真空領域以下の真空度では問題とはならない。しかし、超高真空領域になると残留ガス分子のイオン化から得られるイオン電流は10-5イオン/電子以下となり、ESDの量が相対的に大きくなってくるため、無視できなってくる。
【0006】
ESDには中性種とイオン種とがある。これまではイオン種の影響が大と考えられてきたので、イオン種の除去に関しての真空ゲージの改良および残留ガス分析計の改良が行われてきた。これらイオン除去法の全ては、イオン源を飛び出すときのイオンの運動エネルギー差を利用して分離されてきた。即ち、ESDイオン種はイオン源内の最も高電位の電子コレクターから発生するので、そこから加速を受けてコレクター電極に向かうときの運動エネルギーが最大となる。これに対して、残留ガス分子がイオン化されるのは、スペースチャージ効果の程度によって異なるが、イオン源内の電子コレクターより10〜40V低い電位空間でイオン化される。従って、コレクターに向かうイオンのエネルギーも先のESDイオンに比べて10〜40eV低いことになる。このことを利用し、イオン源から出てくるイオンを、エネルギーアナライザーを通過させることによってエネルギー的に分離する方法が工夫されてきた。本件発明者及び特許出願人に係る特公平7-43293号公報に示された熱陰極イオンゲージでもこの方法によるESDイオン種の除去手段が用いられている。
【0007】
ESD中性種の発生確率は、ESDイオン種の発生確率に比べて約100倍大きいことが知られているが、これまではほぼ無視されてきた。その最も大きな理由は、電子コレクターの表面に吸着していた分子が、電子衝撃を受けて電子コレクターの表面から中性ESDとして離れてイオン源の中心に飛び込んだ場合、一部は再び別の振動電子によってイオン化される。しかし、同じ場所では、気相から飛び込んできた気体分子もイオン化されているので、2種類のイオンの間にエネルギー差は全く生じなく、ESD中性種と気相分子のイオンを分離することは不可能であったことによる。
【0008】
このESDの発生を少しでも小さくする対策としては、気体の吸着の起こりにくい金属材料を用いることも行われてきた。現在ESDの最も起こりにくいとされている金属材料は、白金イリジウム合金または白金被覆モリブデン線であり、現在市場に出回っている超高真空イオンゲージ等のイオン源の電子コレクターには、この2つの材料が使われている。
【0009】
白金が電子コレクターの材料として使われる理由は、化学的に安定であるうえ、1000℃までの高温加熱に耐えられることによる。つまりイオン源は測定に先立って電子コレクター内に含まれるガスと、表面に吸着しているESDの要因になる不純物を高温に上昇させてクリーンにする必要があるためである。金は化学的に最も安定な金属であるが、融点が低く、蒸気圧も高いので、高温脱ガスができないため、電子コレクターの材料としては不向きである。
【0010】
従来のイオン源において、上述の白金イリジウム製の電子コレクターや白金クラッドモリブデン製の電子コレクターをクリーンにする手段としては、電圧電流を通常のイオン源として使用する時の10倍から50倍に増して、電子衝撃により電子コレクターの温度を700〜1000℃に高めるか、または直径0.6〜1mm程度の一本の線材をスパイラル状にして直接これに電流を流して抵抗発熱により700〜1000℃温度まで高めかのいずれかの方法が採られている。しかしどちらの方法も、電子電流を1〜5mAとしてイオン源を通常の計測動作をさせる前に行われる脱ガス操作である。イオン源の通常の動作時には必ず1〜5mAの電子電流による温度上昇分である100〜200℃まで降温させた状態で使用される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、白金または白金合金製の電子コレクターを昇温によってクリーンにしてから使用する前記のような従来のイオン源では、10-10 Pa領域以下の極高真空においては、ESDイオンの発生が無視することができない(特公平7-43293号公報)。特にこれまで無視されてきた中性ESDは、このESDイオンより約2桁大きいことを考えると、ESDの影響を受けない電子電流制御型イオン源はまだ世の中に出現していないと言える。
【0012】
高温クリーニングに耐え、化学的に安定な白金または白金合金等の電子コレクターであっても、超高真空および極高真空の主成分ガスの水素ガスの吸着は避けられ無い。そこで、電子電流制御型イオン源において、ESDを完全に無くすには、電子コレクターの表面をクリーンにした後、電子コレクター表面に気体分子が再び吸着しない条件を作ってやることが大切である。
本発明は、このような従来のイオン源における課題に鑑み、イオン源の作動中における電子コレクターのガスの吸着を無くし、ESDの影響を受けない電子電流制御型イオン源によるイオン発生方法を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明では、真空チャンバー内に配置され、少なくとも電子エミッター1と電子コレクター2とイオンコレクター3との3つの電極で構成されるイオン源aにおいて、電子コレクター2の温度を電子コレクター2への電子衝撃以外の独立した手段で400℃から600℃の温度範囲に設定した状態でイオン源を作動させるようにしたものである。これは、ホットな固体表面にはガス分子が吸着しない性質を利用し、イオン源の作動中に電子コレクタ2にガス分子が吸着しないようにしたものである。
【0014】
すなわち、本発明によるイオン源によるイオン発生方法は、真空状態に維持される気密な真空チャンバー5と、この真空チャンバー5内に配置され、同真空チャンバー5内に電子を発射する電子エミッター1と、この電子エミッター1から発射された電子を保持し、且つ運動させる電子コレクター2と、真空チャンバー5内で発生したイオンを引き寄せ捕らえるイオンコレクター3とを有するイオン源を備えたイオン源において、前記電子コレクター2を加熱する加熱手段によりイオンの発生時に電子コレクター2の温度を400℃〜600℃の間に設定保持することにより、電子コレクター2内部からのガスの拡散を避けると共に、ガスの吸着を防止するものである。
【0015】
イオン源の作動時に、つまりイオンの発生時に、電子コレクター2を加熱することにより、その表面にガス分子が吸着するのが防止される。
例えば、電子コレクター2は電流を供給することで、その抵抗発熱により昇温させるが、電子コレクター2からのガスの拡散によるガス放出が増大する600℃以上の昇温は避けると共に、ガス分子の吸着を確実に防止できる温度範囲として、電子コレクター2の加熱温度を400〜600℃の範囲に設定する。
【0016】
前記電子コレクター2の具体的な構造としては、スパイラルコイル状のもの等を使用することもできるが、例えば縦に半割半円筒状とした2個の格子状のグリッド21を円筒形に組み立てると共に、円筒の上面側でこれらグリッド21を直列に接合した構造とすることもできる。このような構造とすることで、イオンコレクター3の上方部を塞ぐことが可能であり、感度の低下を防ぐことができる。
【0017】
電子コレクター2を通電により400℃から600の温度に保った場合、この電子コレクター2から放出される赤外線が、真空チャンバー等の壁部に吸収されると、壁の温度が上昇してガス放出が増大する。そこで、イオン源の少なくとも電子コレクター2と電子エミッター1とを、輻射率0.1以下の低輻射率の真空チャンバー5の壁で囲むことによって、赤外線が反射され、真空壁の温度上昇を抑えることができる。
【0018】
冷陰極エミッターアレー型の電子エミッター1は半導体リソグラフィーや薄膜作成技術の進展により製作が可能になった素子であり、数10ミクロンの微小スペースに10000個近くのエミッ夕ーが集積され、数mAの電子を真空中に放出させることが可能である。この素子の最大の欠点は過度の電流負荷とイオン衝撃に弱いことである。従って、この素子をイオンゲージの電子エミッター1として使用した場合、このエミッターアレーからの電子衝撃で電子コレクター2のガス出しをすることができないことは明らかである。即ち、電子コレクター2のガス出しを電子衝撃で行うには、通常500V、50mA以上の電子が必要であるので、電子エミッター1から取り出すことはできない。このため従来は、このエミッターアレー型の電子エミッター1に加えて、熱陰極フィラメントを別に用意し、ガス出しはこの熱陰極フィラメントからの電子を用いて行う方法が提案されている。
【0019】
しかし、このような対策を施したとしても、エミッ夕―アレー型の電子エミッター1を保護することは次の理由により困難である。
即ち、電子コレクターのガス出しの初期状態においては、―時的ではあれ、その周辺の圧力は10-3から10-2 Paの上昇が起こる。このとき電子衝撃により多量のイオンが発生し、このイオンは電子エミッター1を500eVのエネルギーで衝撃するので電子エミッター1のチップ先端はたちまち破壊されてしまう。
この点、本発明のイオン源では、電子コレクターの昇温脱ガスを、抵抗加熱だけで行うことができるので、エミッターアレー型の電子エミッター1へのイオン衝撃が全く発生しない。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
図1は、本発明によるイオン源によるイオン発生方法を極高真空計の一種であるエクストラクター型ゲージに適用した例を示したものである。
このイオン源は、極高真空に維持されるベリリウム銅合金製の円筒形の真空チャンバ5を有し、この真空チャンバ5の中央部に、電子コレクター2が配置されると共に、この電子コレクター2の側方に電子を発射する電子エミッター1が配置されている。電子コレクター2の下方にイオンコレクター3が配置され、このイオンコレクター3の先端の周囲には、凹曲面状のイオンリフレクタが配置されている。
【0021】
電子コレクター2は直径1mmの白金クラッドモリブデン線を直径約14mmの7回巻スパイラル状としたもので、前記ハウジング5のほぼ中央に配置されている。この電子コレクター2には白金・白金ロジウム等の熱電対8が溶接され、電子コレクター2の温度を高精度で測定できるようになっている。
この電子コレクター2には、加熱電源4が接続され、同電子コレクター2に加熱電流を通電できるようになっている。また、電子コレクタ2にバイアス電源6が接続され、電子コレクタ2にバイアス電圧が印加される。
【0022】
電子エミッター1はスピント型コールドエミッターと称されるマルチフィールドエミッターを使用するのがよい。この電子エミッター1には、ゲート電源11が接続され、例えばゲート電圧を70〜80Vにして約1mAの電子電流を引き出すことができる。さらに、この電子エミッター1には、バイアス電源11によりバイアス電圧が印加される。この電子エミッター1は熱を出さないので、電子エミッター1による電子コレクター2の温度上昇を無視することができる。
【0023】
電子コレクター2の下方には、ベリリウム銅合金製の真空チャンバ5に連続する直径10mmの穴7があいており、この穴7は電子コレクター2内で発生するイオンを穴7の下に引き出すと共に、穴7の下方のイオンコレクター3側に加速する役目を持つ。銅合金製の真空チャンバ5は、輻射率が0.1以下と小さいので、電子コレクター2を加熱した時の熱を吸収しにくく、真空チャンバ5のガス放出を抑えることができる。
【0024】
真空チャンバ5におけるイオンを引き出すための前記の穴7の下側の部屋には、半球状の凹面鏡からなるイオンリフレクター8が配置され、このイオンリフレクタ8は、前記電子コレクター2と同電位に保持されている。このイオンリフレクター8の中央にφ1mm程度の穴が開けられ、この穴から針状のイオンコレクター3が挿入され、このイオンコレクター3の先端が前記電子コレクター3の中心軸上に向けて設置されている。このイオンコレクター3には、微少電流計9が接続され、この微少電流計9を介してイオンコレクター3でトラップしたイオンがアースに流れるようになっている。
【0025】
このようなイオン源では、真空チャンバー5内を図1において図示していない真空ポンプにより減圧しながらベーキングする。ベーキング終了の後、常温に戻しながらさらに真空チャンバー5を減圧する。真空チャンバー5内が所定の真空度に達した後、電子エミッター1から電子を発射する。この電子は、電子コレクター2で保持されると共に振動され、真空チャンバー5内の分子に衝突する。これによって真空チェンバー5内にイオンが発生する。このイオンは、電子コレクター2に印加したバイアス電圧によりアース電位側のイオンコレクター3側に引かれ、これがアースに流れるときに微少電流計9で電流が測定され、真空チャンバー5内の分子密度、すなわち気圧が測定される。
【0026】
このようなイオン源の作動時において、電子コレクター2を加熱することにより、その表面にガス分子が吸着するのが防止される。電子コレクター2は加熱電源4から電流を供給することで、その抵抗発熱により昇温させるが、後述するように、イオンコレクター内部からのガスの拡散によるガス放出が増大することがない600℃以下の温度であって、ガス分子の吸着を確実に防止できる400℃以上の温度範囲に設定する。
【0027】
電子コレクター2を通電により400℃から600の温度に保った場合、この電子コレクター2から放出される赤外線が、真空壁に吸収されると、壁の温度が上昇してガス放出が増大する。しかし前述のように、電子コレクター2と電子エミッター1が輻射率0.1以下の低輻射率の真空チャンバー5で囲まれているため、赤外線は反射され、真空壁の温度上昇を抑えることができる。
なお、図1で示したのは、イオン源を極高真空計の一種であるエクストラクター型ゲージに適用した例であるが、微少電流計9の手前に質量分析手段を配置して測定するようにすれば、イオン源を残留ガス分析計に適用できることはもちろんである。
【0028】
また図1では、スパイラルコイル状の電子コレクター2を使用したが、次に電子コレクター2の他の形状について説明する。
図1に示したような、スパイラルコイル状の電子コレクター2の場合、イオンコレクター3と反対側も開放しているため、電子コレクター内の約半分のイオンは上方に逃げてしまい、感度の低下を招く。またスパイラルコイル状の電子コレクター2は長い一本の線を両端で支えるだけであるから、電子コレクター2を高温クリーニングするとき、軟化により電子コレクター2が変形してしまうことがある。
【0029】
図4はこのようなスパイラルコイル状の電子コレクター2の欠点を解消できる改良された電子コレクター2’の構造を示す。例えば、線径0.5mmの白金クラッドモリブデン線からなる円弧状の上下2本の横線22の間に、同材質の線径0.2mmの複数の縦線を縦に平行に溶接して架設し、直径約14mmの半円筒縦割状のグリッド21を構成している。この半円筒縦割状のグリッド21の上の横線22には、約45゜離れた位置に白金クラッドモリブデン線からなる線径0.8mmの2本の上部接続線24を溶接している。また、半円筒縦割状のグリッド21の下の横線22には、互いに45゜離れた位置に白金クラッドモリブデン線からなる線径0.8mmの支持線25、26とをそれぞれ溶接している。
【0030】
図4に示すように、このようなグリッド21を2個用意し、このグリッド21の内周側を互いに向かい合わせると共に、前記上部接続線24を円筒の上面中心の接合点27で溶接する。これにより、一対のグリッド21が円筒形に組み立てられると共に、上部接続線24で互いに固定され、且つ直列に接続され、円筒格子籠状の電子コレクター2’が構成される。この電子コレクター2’の下部の支持線25と26は、4本の電子コレクター2’用真空電流導入端子に接続され、大気側で25と26が束ねられ、1本の電流線で図1の加熱電源4に接続される。
【0031】
この電子コレクター2’では、上方の接合点27で接合された上部接続線24は、円筒形の電子コレクター2’の上面を塞ぐ蓋の役目を果たすので、上方から逃げるイオンを無くすることができる。
また、この電子コレクター2’への通電加熱時は、加熱電源から一方のグリッド21側の線径0.8mmの支持線25、26を介して流れ込んだ電流は、線径0.5mmの下側の横線22から線径0.2mmの縦線23へ順次分散し、さらに線径0.5mmの上側の横線22に集合し、さらに線径0.8mmの上部接続線24の接合点27で一度合流し、他方のグリッド21を逆に流れ、その支持線28、29から加熱電源に流れ出る。これにより、電子コレクター2’の全体の電流密度が均一となり、全体に一様な昇温が可能となる。
【0032】
図5は、線材の溶接ではなく、金属板を打ち抜きやエッチングすることにより、前記と同様の一対の縦割半円筒状の一対のグリッド21を作った例である。例えば、厚さ0.1mmの白金−イリジウム合金(例えば、8:2)の板をケミカルエッチングにより図5のように切り抜き、一対のグリッド21を形成する。この例では、加熱通電時に、各部を流れる電流密度が一様になるように板の幅を決めることが好ましく、これにより加熱温度の均一性をより高くすることができる。図5に矢印で示すように、このエッチングした板を曲げ、円筒形のグリッドとする。そして、これらの内周側を互いに向かい合わせると共に、上部接続線24を円筒形の上部中心で溶接することにより、前述した図4とほぼ同じ形状の電子コレクター2を得ることができる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明の実施例について、具体的な数値をあげて且つ詳細に説明する。まず、図1に示すようなイオン源を搭載したエクストラクター型イオンゲージをテストした真空システムについて図2を用いて説明する。
ベリリウム銅合金製の真空チャンバー5の内壁面は電解研磨されてガス放出が非常に小さくなっている。この真空チャンバー5にはテストゲージ12として、図1に示すイオンコレクター3、イオンリフレクター8及び微少電流計9からなるエクストラクター型ゲージが接続され、圧力モニター13として市販の10-11 Pa台まで計測できる極高真空ゲージが接続されている。また、真空チャンバー5には、超高真空用オールメタルL型バルブ14を介して、磁気浮上型極高真空ターボ分子ポンプ15が接続され、さらにこの磁気浮上型極高真空ターボ分子ポンプ15にロータリポンプ16が接続され、テスト状態の真空が得られる。
【0034】
このシステムは250℃の温度で約1日間ベーキングした後、18℃の室内に約1日間放置すると3×10-10 Paの極高真空に達した。この状態から、図1の加熱電源4に10Aの電流を流すと、電子コレクター2の温度は920℃を示した。また、この時の輻射熱で電子エミッター1は約450℃に昇温されるので、十分な電子エミッター1の脱ガス操作ができた。この920℃昇温による電子コレクター2の脱ガス操作は8×10-9Paの十分な低い真空状態で3日間連続して行った。その後、電子コレクター2への通電を止めると真空は初めの3×10-10 Paまで回復した。
【0035】
次に図1に示したように、電子エミッター1と電子コレクター2にそれぞれの電源を接続し、電子コレクター2の温度とイオンコレクター3の電流との関係を調べた。この時に電子エミッター1と電子コレクター2に与えられたアース電位に対するバイアス電圧は次の通りである。
電子コレクター2のバイアス :200V
イオンリフレクター8のバイアス :200V
電子エミッター1のバイアス :50V
電子エミッター1の電流 :1mA
電子エミッター1に対するゲート電位:70〜100V
イオンコレクター3の電位 :0V
【0036】
この時の電子コレクター2の温度とテストゲージ12のコレクタ電流との関係を図3に示す。
図1の電子コレクター2に通電する加熱電流が0において、1mAエミッションの電子電流により加熱された電子コレクター2の温度は120℃であった。次に、電子コレクター2に電流を流し、電子コレクター2の温度を徐々に上昇させていくと、テストゲージ12のコレクタ電流は徐々に減る。そして、560℃で最小値を示し、電子コレクター2の温度が120℃の時に比べて約1/15まで減少した。
【0037】
この時の圧力モニター13が示す圧力は一定で、3×10-10 Paを示したままであった。このことから、前記テストゲージ12のコレクター電流の減少は電子コレクター2の表面からの中性ESDが減少したことを意味している。なぜなら、テストゲージ12はエクストラクタ型ゲージであるから、ESDイオンの多くは、イオンリフレクター8で吸収されてしまい、イオンコレクター3には到達しない。また、通常は電子コレクター3を温度上昇させれば、ガス放出の増大が起こり、圧力モニター13の指示は増大する。しかし圧力モニター13の指示は同じでありながら、テストゲージ12のコレクターの電流は逆に減少したことからESDが減ったことは明らかである。つまり電子コレクター2の表面にガスが吸着しなくなったからにほかならない。
【0038】
さらに電子コレクター2の温度を上昇させていくと、圧力モニター13の指示は上昇に転じた。この時、テストゲージ12のイオン電流コレクターも増大し始めたことから、560℃を越えては電子コレクター2内からのガス拡散が増し、ガス放出の増大が起こったことを意味している。即ちガス吸着を少なくできるとは言っても略600℃を越えてはいけないことを意味している。これが、電子コレクター2の温度を400〜600℃に設定する理由である。
【0039】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によるイオン源によるイオン発生方法では、ガス分子の吸着を極小に抑えることができるため、ESDを根本から無くすることができる。すなわち、ESDの中性種、イオン種のどちらも著しく小さくすることが可能になり、超高真空および極高真空領域の真空測定精度が飛躍的に向上する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるイオン発生方法に使用するイオン源の例を示す概略縦断側面図である。
【図2】 同イオン源を使用して電子コレクタの加熱温度とESD低減効果との関係を調べる試験装置の例を示す概略系統図である。
【図3】 同試験装置を使用して試験した結果として、本発明によるイオン発生方法時の電子コレクタの加熱温度とテストゲージのコレクター電流との関係を示す概略系統図である。
【図4】 前記イオン源に使用する電子コレクタの他の構造を示す斜視図である。
【図5】 前記イオン源に使用する電子コレクタのさらに他の構造を示す構成部材の展開図である。
【符号の説明】
1 電子エミッター
2 電子コレクター
3 イオンコレクター
4 電子コレクターの加熱電源
5 真空チャンバー
21 グリッド

Claims (5)

  1. 真空状態に維持される気密な真空チャンバー(5)と、この真空チャンバー(5)内に配置され、同真空チャンバー(5)内に電子を発射する電子エミッター(1)と、この電子エミッター(1)から発射された電子を保持し、且つ運動させる電子コレクター(2)と、真空チャンバー(5)内で発生したイオンを引き寄せ捕らえるイオンコレクター(3)とを有するイオン源を備えた電離真空計又は質量分析計(残留ガス分析計)に使用されるイオン源において、前記電子コレクター(2)を加熱する加熱手段によりイオンの発生時に電子コレクター(2)の温度を400℃〜600℃の間に設定保持することにより、電子コレクター(2)内部からのガスの拡散を避けると共に、該電子コレクター2の表面上にガスの吸着を防止することを特徴とするイオン源によるイオン発生方法。
  2. 前記加熱手段は通電により電子コレクター(2)の内部抵抗発熱で加熱する加熱電源(4)であることを特徴とする請求項1に記載のイオン源によるイオン発生方法
  3. 前記電子コレクター(2)は、半円筒縦割状のグリッド(21)の2個を対向させて円筒形に組み立てると共に、それら該半円筒縦割状のグリッド2個を直列に接合してなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のイオン源によるイオン発生方法
  4. 前記電子エミッター(1)と電子コレクター(2)とは、輻射率0.1以下の真空チャンバー5の壁で囲まれていることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のイオン源によるイオン発生方法
  5. 前記電子エミッター(1)は、冷陰極エミッターアレー型であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のイオン源によるイオン発生方法
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