JP3745736B2 - 冷菓注出用シリンダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイスクリームやヨーグルト等の冷菓注出装置に使用するシリンダに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来アイスクリームディスペンサとして、図12に示すようなものが知られている。これは、冷却器101の装備された冷凍室102内に、シリンダ103内にピストン104を摺動自由に嵌装した注出用シリンダ105が縦向きに設けられ、シリンダ103の上端の開口にキャップ106が取り付けられることで、ピストン104の上面側にアイスクリームのパックBが収容される収容室107が構成され、注出コック108を備えた注出部109と接続されているとともに、ピストン104の下面側が圧力室110とされている。そして、ポンプ111を駆動して作動流体xをタンク112から圧力室110に供給すると、ピストン104が上昇してパックBが圧縮され、注出コック108を開くことでパックB内のアイスクリームが注出されるようになっている。この種のものは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−297354号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の注出用シリンダ105では、ピストン104による加圧中にパックBを噛み込むおそれがあるという問題がある。通常、アイスクリームのパックBは2枚の弾性シートを張り合わせて形成されており、アイスクリームが詰められた場合は、図13に示すように、底の部分に張り合わされたエッジDが突出した状態となる。一方、従来のピストン104は、図14に示すように単に背の低い円柱形状であり、そのためピストン104の加圧中に、同図に示すように、パックBのエッジDがピストン104とシリンダ103の狭い隙間に入り込んで噛み込むおそれがあった。
本発明の冷菓注出用シリンダは上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、袋の噛み込みを防止するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、シリンダ内にピストンを摺動自由に嵌装し、このピストンの一側におけるシリンダの開放端にキャップを嵌着することで袋詰め冷菓が収容される収容室を構成し、前記ピストンの他側に作動流体を供給して前記袋を圧縮することで冷菓を注出するようにした冷菓注出用シリンダにおいて、前記ピストンにおける前記袋詰め冷菓に対する加圧面側に、シリンダの内周面との間に逃がし空間を構成すべく縮径部を形成したところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ピストンは、前記シリンダの内周面に摺接する摺接部と、外周部を除去する如くして小径とした加圧部とが同心に連設された段付き状に形成され、前記加圧部とシリンダの内周面との間に逃がし空間が構成されるようになっているところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記加圧部は、先端に向けて次第に縮径された円錐台形に形成されているところに特徴を有する。
請求項4の発明は、請求項1、請求項2または請求項3の発明において、前記キャップにおける前記袋詰め冷菓との当接面側に、シリンダの内面との間に逃がし空間を構成すべく縮径部を形成したところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
ピストンの加圧面側に縮径部を設けたことで、加圧面の周縁とシリンダの内周面との間に逃がし空間が構成され、冷菓を詰めた袋がその空間に逃げることで噛み込みが防止される。これにより、袋の損傷が未然に防止され、またピストンを円滑に摺動させることができる。
【0008】
<請求項2の発明>
冷菓の袋の噛み込みやすい部分が、逃がし空間の底の深い部分に退避するから、噛み込みがより確実に防止される。また、袋の端部は環状の狭い逃がし空間内で折り畳まれ、すなわち袋の折り畳まれる部分が少なくなってその部分に残存してしまう冷菓の量を減少させることができ、もって冷菓をより無駄なく注出することが可能となる。
<請求項3の発明>
加圧部の先端が径方向の中心側に逃がされているから、注出シリンダに装着された袋詰め冷菓の取出口に当たることが防止される。
<請求項4の発明>
キャップとシリンダとの間に袋を噛み込むことが防止される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をアイスクリームディスペンサに適用した実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図3により説明する。まず図1によって全体構造を説明する。符号1は断熱箱体からなる冷凍庫であって、内部が冷凍室2となっており、前面には開閉可能な断熱扉3が設けられている。冷凍庫1の底部側には機械室5が設けられ、脚片6を介して設置されている。冷凍室2の天井部分には、機械室5内に装備された冷凍機7と接続された冷却器8と、庫内ファン9とが装備されており、冷凍室2の奥面に設けられたダクト10を介して吸引された庫内空気が、冷却器8を通過する間に熱交換されて冷気が生成され、その冷気が庫内ファン9によって冷凍室2内に循環供給されるようになっている。これにより冷凍室2内は、アイスクリームAが注出可能な状態を維持しつつ冷却保存されるような冷却温度に維持される。
【0010】
冷凍室2内の前面側には流体圧シリンダ11が縦向きに配設されている。この流体圧シリンダ11は、シリンダ12内にピストン13が緊密にかつ摺動自由に嵌装されたものであって、作動流体はブラインX(不凍液)となっている。シリンダ12の上端にはキャップ22が着脱可能に被着され、ピストン13の上面との間にパック収容室20が構成されるとともに、ピストン13の下面側にブラインXが給排される圧力室24が構成されるようになっている。
【0011】
流体圧シリンダ11の構造をさらに図2,3によって詳細に説明する。
シリンダ12はさらに、長寸の下部シリンダ51と短寸の上部シリンダ52とから構成されている。上部シリンダ52は下部シリンダ51と比べて、外径寸法が同じで内径寸法が小さい厚肉に形成されており、上部シリンダ52の下端部外周に周設された嵌込突部53を、下部シリンダ51の上端部外周に周設された嵌込凹部54に嵌め込んで溶接することによって、一体的に繋がれている。この繋ぎ部分に形成された段差部55は、後記するピストン13における円柱部57の上面の周縁が突き当たることで、ピストン13が所定以上に上昇することを規制する。
【0012】
一方のピストン13は、背の低い円柱部57の上面中央部に、円錐台部58が連設された形状となっている。この円錐台部58の周面と、シリンダ12の内周面との間に、逃がし空間58Aが構成される。円柱部57の外周面には、上下2本の円周溝60が間隔を開けて形成されており、それぞれにピストンリング14が嵌着されている。また、円柱部57の下面の中央部には、断面円形をなすくり抜き孔59が形成されている。このくり抜き孔59の天井面は、上側の円周溝60よりも高い所に位置している。
【0013】
上記したシリンダ12の上部シリンダ52における断熱扉3と対応する壁面には、上縁から縦向きのU溝21が切られている。したがってパック収容室20内には、アイスクリームAの封入された伸縮性を有するパックBが、その取出口CをU溝21に嵌めつつ収納可能とされている。
キャップ22は、上部シリンダ52の上端部内に嵌合可能な厚肉の円盤部63の下面に、円錐台部64を下向きに連設した形状となっている。この円錐台部64の周面と、シリンダ12の内周面との間に、逃がし空間64Aが構成される。キャップ22の上面には取っ手65が設けられているとともに、円盤部63の外周面には、3本のピン66が120度間隔を開けて突設されている。一方、上部シリンダ52には、3本の係止溝67が同角度間隔を開けて形成されている。この係止溝67はJスロットと称されるものであって、上縁から下方に切られ、さらに円周方向の一方向に向けて切られた形状となっている。したがって、このキャップ22は、各ピン66を係止溝67の入り口に合わせて押し込んだのち、図3の時計回り方向に回動させることで抜け止め状態に装着されるようになっている。
【0014】
またシリンダ12の下端の外周には、フランジ69が溶接により固定され、その下面に底板70がビス止めによって固定されている。
上記のような構造の流体圧シリンダ11が、断熱扉3の裏面側にヒンジ16を介して設けられた支持板17上に載せられて固定され、また長さ方向の途中位置を同じく断熱扉3の裏面側に設けられた2本のベルト18で抱かれるようにして、上記のように縦向きに配設されている。
【0015】
冷凍室2の底面の奥面側にはブラインXを貯留するタンク25が装備されている。このタンク25と圧力室24の底面にはそれぞれポート26,27が開口され、両ポート26,27間が、機械室5内に配管されたブライン流路28で接続されており、ブライン流路28の途中には、正逆両方向に駆動する可逆ポンプ29が介設されている。すなわち、可逆ポンプ29を正方向に駆動すると、タンク25内のブラインXが流体圧シリンダ11の圧力室24に供給され、一方、逆方向に駆動すると、圧力室24内のブラインXがタンク25側に還流されるようになっている。なお、圧力室24とタンク25との間は、別のエアー抜き管30で接続されており、そこに介設された電磁弁30Aは常には閉じられている。
【0016】
断熱扉3には、アイスクリームAの注出部35が設けられている。詳細には、断熱扉3に形成された取付孔36内に、前面を閉鎖した筒体37が断熱扉3の前方に突出して嵌着され、その中にT字管38がクリアランスを持って嵌装されて、その横管の開口がパックBの取出口Cと接続されている。また、縦管の上下両端はそれぞれ筒体37を貫通して上下に突出しており、下端が注出口40となっているとともに、上端側に注出コック41が装備されている。注出コック41はレバー42の回動操作によって弁体43を上げ下げするものであって、レバー42を図1の鎖線位置から実線位置に回動することにより注出口40が開放されるようになっている。
【0017】
また、断熱扉3の表面における注出部35の上方位置には、上記したブライン供給用の可逆ポンプ29のモータ(図示せず)の正方向の起動とその停止とを制御する常開式のマイクロスイッチ45が設けられている。そして、注出コック41の弁体43には操作板46が設けられており、注出口40を開口すべく弁体43が上昇操作されると、操作板46がアクチュエータを押圧してマイクロスイッチ45をオンさせる設定となっている。
なお、断熱扉3の前面における注出部35の下方位置には、アイスクリームAを入れる容器を載せる載置台48が設けられている。
【0018】
本第1実施形態は上記のような構造であって、続いてその作用を説明する。アイスクリームAを注出するには、載置台48に図示しない容器を置き、注出コック41のレバー42を図1の実線位置に回動して注出口40を開く。それに伴いマイクロスイッチ45がオンするので、可逆ポンプ29が正方向に駆動される。そうすると、図1の実線の矢線に示すように、タンク25内のブラインXが汲み上げられて流体圧シリンダ11の圧力室24内に供給されて加圧される。これによりピストン13が上昇してパックBが圧縮され、パックBの取出口CからアイスクリームAが流出し、注出口40から容器内に注出される。適量が注出されたら、注出コック41のレバー42を図1の鎖線位置に回動すると、マイクロスイッチ45がオフとなって可逆ポンプ29が停止し、また注出口40が閉じられて注出が停止される。以上の繰り返しにより、アイスクリームAが順次に注出される。
【0019】
注出が進んでパックB内のアイスクリームAを使い切ると、新たなパックBと交換される。その場合は以下のようにして行う。図示しないパック交換スイッチをオンすると、可逆ポンプ29が逆方向に駆動されることで、図1の破線の矢線に示すように、流体圧シリンダ11の圧力室24内のブラインXが吸引されてタンク25内に戻される。これにより圧力室24内が負圧に傾くことでピストン13が下降し、パック収容室20が大きく広がる。ピストン13がシリンダ12の底面に当たるまで下降したら可逆ポンプ29が停止する。そうしたら、断熱扉3を開けるとともにキャップ22を外し、使用済みのパックBを取り出して、それに代わって新たなパックBを収容することで、再度注出操作が可能となる。
【0020】
ここで、流体圧シリンダ11におけるピストン13の下面にはくり抜き孔59が形成されているので、注出を行うに際して圧力室24にブラインXが供給された場合に、図2の矢線に示すように、ピストン13を上昇させる力の他に、くり抜き孔59の周面を押圧する力が作用する。このような力が作用すると、円柱部57の外周面を外側に広げるように作用し、ピストンリング14の装着されたピストン13の外周がシリンダ12の内周面に強固に押し付けられる。そのため、ピストン13が多少傾いたとしても、ブラインXがピストン13の上面側に洩れることが確実に防止される。
また、ピストン13の上面側には円錐台部58が形成されており、その周面とシリンダ12の内周面との間が広げられて逃がし空間58Aが構成されているから、アイスクリームAを詰めたパックBの底部のエッジDもその逃がし空間58A内に逃がされて、噛み込むことがない。
【0021】
さらに、実際にアイスクリームAのパックBに圧縮力を作用させる加圧面は、ピストン13の円錐台部58の上面であって、この加圧面の面積は、ピストン13の下面側においてブラインXの圧力を受ける受圧面の面積よりも小さい。そのためブラインXの圧力が作用した場合に、加圧面には面積に反比例した大きな加圧力が得られる。言い換えると、パックBを圧縮するに際して所定の加圧力を得たい場合に、ブラインXの圧力を小さく抑えることができ、可逆ポンプ29として容量の小さいものを使用することが可能となる。
【0022】
また、例えばピストンが単なる円形断面のものであると、パックBが圧縮される際に、常に底部側から折り畳まれるとは限らず、どの位置からでも折り畳まれる可能性がある。したがって、取出口C付近が先に折り畳まれて取出口Cを塞ぐおそれもある。その点、本実施形態のように、ピストン13に円錐台部58を設けた構造であると、パックBの底面の中央部分が主に加圧されて、それに伴って周縁部が加圧されることとなるので、図2に示すように、パックBは底部側から順次に折り畳まれるようにして圧縮される。したがって、パックBの取出口C付近が先に折り畳まれて取出口Cが塞がれてしまうことが避けられる。
また、キャップ22の下面側にも円錐台部64が形成されており、その周面とシリンダ12の内周面との間が広げられて逃がし空間64Aが構成されているから、パックBの上端側がその逃がし空間64A内に逃がされて噛み込むことがない。したがって、キャップ22の開け閉めをスムーズに行うことができる。
【0023】
<第2実施形態>
図4は本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、ピストン71の下面に形成されたくり抜き孔72の形状に変更が加えられている。このくり抜き孔72は上部側が半球形とされており、その天井がピストンリング14の嵌着位置よりも高い所に達している。なお、ピストン71の上面の角部にはC面73が形成されて、シリンダ12の内周面との間に逃がし空間73Aが構成されている。
この第2実施形態においても、圧力室24にブラインXが供給された場合に、同図の矢線に示すように、ピストンリング14の嵌着部分を外側に広げるような力が作用して、シール性を高めることができる。
【0024】
また、くり抜き孔72の天井側が半球形となっていると、ピストン71の上面において、その中心部と周縁部とで上向きに作用する力の大きさが異なるため、ピストン71が傾きにくくなる。
なお、くり抜き孔の形状は、上記の第1及び第2実施形態に示した形状に限らず、要はブラインXの圧力を受けてピストンにおけるピストンリングの嵌着部分を外側に広げる力を作用させ得る形状であればよい。
【0025】
<第3実施形態>
図5は本発明の第3実施形態を示す。この実施形態では、ピストン76の上面の形状に変更が加えられている。すなわち、ピストン76の加圧面となる上面77が球面形状とされている。これにより、ピストン76の上端側とシリンダ12との間に逃がし空間77Aが構成されている。第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態を図6及び図7によって説明する。
この第4実施形態のピストン81は、下面にくり抜き孔82の形成された下円柱部83の上面の中心に、縮径された上円柱部84が段付き状に形成された形状であって、上円柱部84とシリンダ12の内周面との間に、円筒状の逃がし空間84Aが構成される。なお、下円柱部83の外周面には、同様に上下2本の円周溝60が間隔を開けて形成され、それぞれにピストンリング14が嵌着されている。
本実施形態のピストン81によれば、パックBのエッジDの噛み込みやすい部分が、逃がし空間84Aの底の深い部分に退避するから、噛み込みは生じない。また、パックBの下端は、図7に示すように、主に狭い逃がし空間84A内で折り畳まれるようになり、すなわちパックBの折り畳まれる部分が少なくなることによって、その部分に残存してしまうアイスクリームAの量を減少させることができ、アイスクリームAをより無駄なく注出することが可能となる。
【0027】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態を図8ないし図11によって説明する。
この第5実施形態のピストン91は、以下のような構造的な特徴を有している。全体としては、図8及び図9に示すように、下部側に背の低い円柱形をなす摺接部92が設けられ、その上面中央部に、上端に向けて次第に縮径された円錐台形をなす加圧部93が段付き状に連設された形状となっている。この加圧部93の周面と、シリンダ12の内周面との間に、底の深い逃がし空間93Aが構成される。また、加圧部93を円錐台形としたことは、加圧部93の上端の外周縁が径方向の中心側に逃げていることを意味する。一方、摺接部92の下面の中心には、断面円形のくり抜き孔94が形成されている。このくり抜き孔94は、加圧部93の上端の径とほぼ等しい内径寸法を有し、天井面は摺接部92の上端まで達している。
【0028】
摺接部92の外周面には、その中央高さよりも上方の位置において円周溝95が切られており、そこにピストンリング96が嵌着されている。ピストンリング96は、図10に示すように、円周溝95に嵌着された場合には摺接部92の外周面から突出するようになっているが、その突出した部分の下面には、ほぼ半円形断面をなす凹溝96Aが全周にわたって形成されている。
また、ピストンリング96の嵌着位置の下方には、別の円周溝97が形成されている一方、上記したくり抜き孔94の内壁には、円周溝97に開口する4個の通孔98が90度間隔を開けて形成されている。
【0029】
続いて、上記した構造の特徴に基づく格別の作用効果を説明する。
注出が進んでピストン91が上昇位置に近付いた場合、例えば、前記第4実施形態のように、ピストン81の形状が下円柱部83と上円柱部84とを段付き状に連設した形状であると、パックBの取出口Cのフランジ部E(シートと接着されている部分)にピストン81の上端が当たり、さらにピストン81が上昇した場合に、その当たった部分を支点としてピストン81が傾くおそれがある。
その点この実施形態によれば、ピストン91の加圧部93が上端に向けて次第に縮径された円錐台形に形成され、すなわち加圧部93の上端の外周が径方向の中心側に逃げているため、図8に示すように、ピストン91が上昇位置に近付いた場合でも、パックBの取出口Cにおけるフランジ部Eに当たるおそれがなく、ピストン91が上昇位置に至った場合でも、フランジ部Eに当たることに起因したピストン91の傾きが防止される。
【0030】
一方、仮にピストン91が傾いたとしても、本実施形態に係るピストンリング96の装着位置により、シール性に有利となる。すなわち図11の実線に示すように、ピストン91が傾いた場合、例えば摺接部92の外周面の一側(同図の左側)における下方側が、シリンダ12の内周面から離れることになるが、摺接部92の下端位置で離れる量aに比べて、中央高さ位置で離れる量bの方が小さい。本実施形態では、摺接部92の中央高さ位置よりも少し上にピストンリング96が嵌着されているから、例えばピストンリング96が摺接部92の下端部に嵌着されている場合と比較すると、上記のようにピストン91が傾いた場合であってもピストンリング96の浮き量が小さく留められ、ピストンリング96の押さえ代を確保することができる。もって高いシール性を得ることができる。
また、ピストンリング96における摺接部92の外周面から突出した部分の下面には、凹溝96Aが形成されているから、注出を行うに際して圧力室24にブラインXが供給された場合に、ピストンリング96の凹溝96Aに圧力が加わることにより凹溝96Aの外壁を外側に広げるように作用する。すなわち、凹溝96Aの外壁がシリンダ12の内周面に強固に押し付けられることになり、ピストン91が多少傾いたとしてもシール性が確保される。
【0031】
また、この種のアイスクリームディスペンサにおいて、設置後に初めて稼働するような場合には、図1を参照して説明すると、ポンプ29の吐出側の配管やピストン13の下面側にエアーが残存した状態となる。係る状態から注出操作が行われて圧力室24にブラインXが供給されると、残ったエアーも一緒に圧力室24に戻されて加圧されるのであるが、エアーは圧縮性流体であるため、まずエアーが限界まで圧縮されてそののちブラインXにより加圧されてピストン13が上昇するという現象を呈し、ピストン13の上昇運動が安定性を欠いたものとなる。例えば、ポンプ29の運転時間を制御して定量注出を行おうとした場合等に、簡単には対応できないという問題がある。
【0032】
そこで前記した第1実施形態では、圧力室24とタンク25の底面との間がエアー抜き管30で接続され、圧力室24側の流入口が、ピストン13が下降位置に達したときにピストン13のくり抜き孔59の天井面の下の僅かな隙間を開けた高さ位置まで突出して設けられているとともに、エアー抜き管30の途中に常閉式の電磁弁30Aが介設されている。
そして設置後に初めて稼働するような場合には、注出コック41を開いてマイクロスイッチ45をオンさせると、可逆ポンプ29が正方向に駆動されてブラインXがタンク25から圧力室24側に供給されるとともに、エアー抜き管30の電磁弁30Aが開放される。そうすると、残存したエアーはブラインXの供給とともにピストン13の下面側に押し戻され、くり抜き孔59の天井部分から流入口に入り、エアー抜き管30を通ってタンク25内に排出される。圧力室24並びにエアー抜き管30からエアーが抜き出されたら、電磁弁30Aが閉じてそれ以降閉じた状態に保持される。これにより、圧力室24内にはブラインXのみが満たされた状態となって、それ以降ブラインXが供給されると、正規にブラインXの圧力を受けてピストン13が安定して上昇駆動されるといった工夫がされている。
【0033】
ここで本第5実施形態では、図8に示されるようにピストンリング96が摺接部92の中央高さよりも少し上の位置に嵌着されているので、摺接部92の下端側とシリンダ12の内周面との間に環形の深い隙間Sができ、そこにもエアーが溜まることになる。このままで上記のようにエアー抜きを行うべく初めにブラインXを供給したとしても、隙間Sはくり抜き孔94から遮断された状態となって、この隙間Sからのエアー抜きは難しい。
その点本実施形態では、くり抜き孔94の内壁から摺接部92の外面に開口した通孔98が形成されているので、上記のようにエアー抜きを行うべくブラインXが供給された場合に、隙間Sに溜まったエアーも通孔98を通ってくり抜き孔94側に逃がされ、エアー抜き管30により外部に抜き出すことができる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本発明は、注出用シリンダの作動流体としてブライン以外の他の液体を用いたもの、あるいはエアーを用いたものにも適用することができる。
(2)上記実施形態に言うアイスクリームとは、ソフトアイスクリームとハードアイスクリームの両方を含んでおり、また本発明は、ヨーグルトやシャーベット等の他の冷菓の注出装置全般に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係るアイスクリームディスペンサの全体構造を示す断面図
【図2】 流体圧シリンダの一部切欠断面図
【図3】 その一部切欠分解斜視図
【図4】 本発明の第2実施形態に係るピストンを示す流体圧シリンダの部分断面図
【図5】 本発明の第3実施形態に係るピストンを示す流体圧シリンダの部分断面図
【図6】 本発明の第4実施形態に係るピストンを示す流体圧シリンダの部分断面図
【図7】 その注出が進んだ状態の部分断面図
【図8】 本発明の第5実施形態に係るピストンを示す流体圧シリンダの部分断面図
【図9】 そのピストンの正面図
【図10】 そのピストンリングの形状を示す部分拡大断面図
【図11】 ピストンの傾き状態を示す概略断面図
【図12】 従来のアイスクリームディスペンサの断面図
【図13】 アイスクリームのパックの外観斜視図
【図14】 パックが噛み込んだ状態を示す拡大断面図
【符号の説明】
A…アイスクリーム B…パック D…エッジ X…ブライン 11…流体圧シリンダ 12…シリンダ 13…ピストン 20…パック収容室 22…キャップ 24…圧力室 29…加圧ポンプ 57…円柱部 58…円錐台部 58A…逃がし空間 64…円錐台部 64A…逃がし空間 71…ピストン 73…C面 73A…逃がし空間 76…ピストン 77…(球面形状の)上面 81…ピストン 84…上円柱部 84A…逃がし空間 91…ピストン 92…摺接部 93…加圧部 93A…逃がし空間

Claims (4)

  1. シリンダ内にピストンを摺動自由に嵌装し、このピストンの一側におけるシリンダの開放端にキャップを嵌着することで袋詰め冷菓が収容される収容室を構成し、前記ピストンの他側に作動流体を供給して前記袋を圧縮することで冷菓を注出するようにした冷菓注出用シリンダにおいて、
    前記ピストンにおける前記袋詰め冷菓に対する加圧面側に、シリンダの内周面との間に逃がし空間を構成すべく縮径部を形成したことを特徴とする冷菓注出用シリンダ。
  2. 前記ピストンは、前記シリンダの内周面に摺接する摺接部と、外周部を除去する如くして小径とした加圧部とが同心に連設された段付き状に形成され、前記加圧部とシリンダの内周面との間に逃がし空間が構成されるようになっていることを特徴とする請求項1記載の冷菓注出用シリンダ。
  3. 前記加圧部は、先端に向けて次第に縮径された円錐台形に形成されていることを特徴とする請求項2記載の冷菓注出用シリンダ。
  4. 前記キャップにおける前記袋詰め冷菓との当接面側に、シリンダの内面との間に逃がし空間を構成すべく縮径部を形成したことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の冷菓注出用シリンダ。
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