JP3745305B2 - 集塵装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の技術として、例えばエアシャワー室を備えた集塵装置を用いた集塵技術が知られている。この集塵装置では、エアシャワー室内へノズルを用いて所定流速のエアシャワーを吐出し、当該エアをエアシャワー利用者の衣服等に当てることによって衣服等に付着した粉塵を除去するようになっている。また、この集塵装置では、衣服等から除去された粉塵は、エアシャワー室外の循環径路へ送られ、この循環径路に設置された集塵フィルター等の集塵手段によって補集されるようになっている。この集塵装置は、例えば集塵フィルターに補集された粉塵の量が増えるにつれてその集塵能力が低下するため、この集塵フィルターを定期的に清掃する必要がある。例えば、集塵フィルターの前後の差圧が所定値に達すると集塵フィルターを装置から取外し、フィルター表面に付着した粉塵をエアガン等を用いて吹き飛ばすことで集塵フィルターの清掃を行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような清掃作業は、集塵フィルターを取外すのに手間がかかり作業が面倒である。とりわけ粉塵濃度の高い含塵ガスの集塵処理では集塵フィルターの洗浄頻度が増えるため円滑な作業の妨げとなる。そこで、集塵フィルターによって補集された粉塵を、循環径路から径路外へ抜き出して回収する技術が提案されている。この技術では、例えば吸引ファンおよび回収フィルターを搭載した粉塵回収装置を循環径路に接続した構成を用いる。循環径路の集塵フィルターによって補集された粉塵は、吸引ファンによって径路外の粉塵回収装置へ吸引され、回収フィルターによって回収される。回収フィルターで処理された後のガスは粉塵回収装置の外部へ排気される。このような構成の集塵装置は、集塵フィルターの清掃頻度を低減させるのに有効である。しかしながら、このような構成では、回収フィルターで処理された後のガスが粉塵回収装置の外部へ排気されるため、粉塵回収装置の周辺環境が懸念されるという問題を抱えている。
【0004】
そこで本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うのに有効な集塵装置の構成技術を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の集塵装置は、各請求項に記載の通りに構成されている。すなわち、各請求項に係る発明は、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を行う集塵装置において、含塵ガスを受け入れて流通させる流通径路とは別に、この流通径路の一部を迂回する迂回径路を設け、流通径路で分離された粉塵を迂回径路を通過させこの通過過程において回収し、回収後のガスを流通径路へ戻すようにすることで、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を円滑に行うことができるようにした技術である。
【0006】
請求項1に記載の集塵装置は、第1の集塵部および第2の集塵部を有する。
第1の集塵部には、流通径路、粉塵分離手段等が設けられている。流通径路は粉塵を含む含塵ガスを受け入れて流通させる径路であり、この流通径路に設置された吸引ファン等の吸引力によって流通径路内を含塵ガスが移動する。粉塵分離手段は、含塵ガスに含まれる粉塵、好ましくは粒子径の粗い粉塵を選択的に分離、除去する構成を有する。
第2の集塵部には、迂回径路、導入手段、粉塵回収手段等が設けられている。迂回径路は、流通径路の粉塵分離手段よりも下流においてこの流通径路の一部を迂回する構成を有する。この迂回径路の入口は、粉塵分離手段によって分離された粉塵が滞留する位置において流通経路に接続され、この迂回径路の出口は、前記入口よりも若干下流位置において流通経路に接続されるのが好ましい。導入手段は、粉塵分離手段によって分離された粉塵を流通径路から迂回径路へ導入しこの迂回径路を流通させるものであり、例えば吸引ファンを用いて構成される。粉塵回収手段は、迂回径路を流通する粉塵を回収するものであり、例えば補集フィルター部材を用いて構成される。
このような構成により、流通径路の粉塵分離手段によって分離された粉塵は、主に迂回径路へ導入されフィルター部材を通過する過程においてこのフィルター部材によって回収されることとなる。また、フィルター部材を通過した後のガスは、全量迂回径路の出口から再び流通径路へ戻る構成ゆえ、このガスが外部に排気されることがない。このように、流通径路に滞留する粉塵の大部分を粉塵回収手段によって回収することができ、流通径路に設置される集塵フィルター等の目詰まりの発生頻度を低減させることができる。また、流通径路を迂回する迂回径路に粉塵回収手段を設けることで、粉塵回収手段から外部への排気の心配がなく周辺環境を清潔に維持することができる。
以上のように請求項1に記載した集塵装置によれば、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うことができる。
なお、ここでいう「粉塵」とは、各種の粉塵や煤塵、花粉、ウイルス等の病原体、たばこの粒子等を広く含む主旨である。また、本発明でいう「集塵」には、例えば、製品の分離・回収、あるいは大気汚染防止として用いられる工業用集塵だけでなく、特定の空間、例えばクリーンルームや住居空間の空気の浄化を目的としたいわゆる空気清浄の分野における集塵をも広く含むものとする。
【0007】
また、請求項2に記載の集塵装置では、第1の集塵部に、エアシャワー室、循環径路等を有する。エアシャワー室は、エアシャワー利用者が入室可能な領域であり、エアシャワー用ノズルを介してエアシャワーが供給される構成になっている。エアシャワー用ノズルは、エアシャワーの供給源に接続される。この供給源としては例えば装置内部を循環するエアや装置外部から受け入れたエアなどがある。このエアシャワーによって、エアシャワー利用者の衣服等に付着した粉塵が衣服等から除去される。従って、本発明でいう「エアシャワー」とは、実質的にはエアシャワー利用者の衣服等に付着した粉塵を除去可能な流量、圧力を有するエア流れを示すものである。
循環径路は、エアシャワー室のエアがその室外において循環して再びエアシャワー室へ戻る径路である。この循環径路によって請求項1に記載の流通径路が構成されるようになっている。すなわち、エアシャワー室において衣服等から除去された粉塵は、エアシャワー室のエアとともに循環径路を流通する。粉塵とエアが混合された含塵ガスは、この循環径路を流通するときに粉塵分離手段によって処理される。この粉塵分離手段によって分離された大部分の粉塵は迂回径路へ導入されて回収され、その他の粉塵は例えば粉塵分離手段の下流に設置された集塵フィルター等において集塵処理される。そして、処理後の清浄化されたエアはエアシャワー室へ戻される。この清浄化されたエアは、例えばエアシャワー用ノズルを通じてエアシャワー室内へ再度供給される。このような構成によれば、エアシャワー室内のエアを循環使用することができるため合理的である。
以上のように請求項2に記載した発明によれば、エアシャワー室を有する集塵装置において、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うのに有効である。
【0008】
また、請求項3に記載の集塵装置では、第1の集塵部に、更に集塵フィルターおよび洗浄装置が設けられている。この集塵フィルターは、粉塵分離手段の下流に配置されるものであり、フィルター自体がプリーツ状(襞状)に形成された形状を有する、いわゆるプリーツ型のフィルターを用いて構成される。このような集塵フィルターを用いることで集塵面積を増加させることができる。この集塵装置では、流通径路の粉塵分離手段によって処理されたガスと、迂回径路の粉塵回収手段によって処理されたガスが合流したガスが、この集塵フィルターを通過する過程において集塵処理される。これにより、集塵フィルターの上流面に粉塵が補集されることとなる。
洗浄装置は、集塵フィルターの洗浄を行うものであり、集塵フィルターへ向けて圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段を有する。好適には、集塵フィルターの下流面から上流面の方向へ向けて圧縮エア供給手段が圧縮エアを吐出する構成を用いる。これにより、集塵フィルターの上流面に捕集された粉塵は、圧縮エアの逆洗作用によって吹き飛ばされて、集塵フィルターが洗浄されることとなる。とりわけ、本発明の如くプリーツ型の集塵フィルターを用いたうえで、この集塵フィルターに圧縮エアを供給する構成とすることによって集塵フィルターの効果的な洗浄が可能となる。すなわち、プリーツ型に形成された集塵フィルターの襞の部分に圧縮エアが作用すると、襞に振動が生じそのふるい落し効果によって補集された粉塵が集塵フィルターからふるい落とされて、集塵フィルターが洗浄されることとなる。このように、本発明は、圧縮エアによる粉塵の吹き飛ばし効果のみならず、この吹き飛ばし効果に更に、プリーツ型の集塵フィルターに圧縮エアを作用させることにより得られるふるい落し効果を有機的に組み合わせることによって、従来技術にはない効果的な集塵フィルターの洗浄技術を実現するものである。
なお、導入手段が圧縮エア供給手段の作動に連動して作動し、集塵フィルターからふるい落とされた粉塵が導入手段によって迂回径路へ導入される構成であるのが好ましい。このような構成により、集塵フィルターの洗浄により発生する粉塵は、最適なタイミングで迂回径路へ導入され、粉塵回収手段によって回収される。
以上のように請求項3に記載した集塵装置によれば、プリーツ型の集塵フィルターに圧縮エアを作用させる構成を用いることにより、流通径路に設置された集塵フィルターの洗浄を効果的に行うことができる。
【0009】
ここで、請求項3に記載の第1の集塵部は、請求項4に記載のように、更に、差圧情報検出手段および制御手段を備える構成であるのが好ましい。
差圧情報検出手段は、集塵フィルター前後の差圧に関する情報、すなわち集塵フィルターの上流側と下流側との間の圧力差に関する情報を検出する。この情報は、差圧自体であってもよいし、その差圧を示唆することができる代替情報であってもよい。制御手段は、差圧情報検出手段による検出情報に基づいて圧縮エア供給手段を作動させる。具体的には、例えば差圧情報検出手段で検出された差圧が予め定められた所定値になると圧縮エア供給手段を作動させる構成を用いる。集塵フィルターによる粉塵の集塵量が増えると、集塵フィルター前後の差圧が上昇し集塵能力が低下する。本発明では、集塵フィルター前後の差圧が上昇したと判断されたときに制御手段が圧縮エア供給手段を作動させ、集塵フィルターへ向けて圧縮エアを供給するようになっている。このような構成によれば、集塵フィルターの洗浄を最適なタイミングで行うことができ合理的である。
【0010】
また、請求項5に記載の集塵装置では、粉塵回収手段がパック型フィルターを用いて構成されている。ここでいう「パック型フィルター」とは、袋形状でありその袋内面に粉塵のフィルター補集面を有する構成のものをいう。このようなパック型フィルターを用いることにより、フィルター補集面に補集された粉塵は、フィルター交換時等にフィルターの外部に飛散しにくい。このパック型フィルターに掃除機用として市販されている紙パックフィルターを用いることで汎用性が高まる。
以上のように、請求項5に記載の集塵装置によれば、粉塵回収手段におけるフィルター交換時の作業を円滑に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施の形態の集塵装置100の構成を、図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本実施の形態の集塵装置100の側面図である。図2は集塵装置100におけるエアフロー図である。図3はエアシャワー装置200の斜視図である。図4は粗塵分離装置260を外部からみた斜視図である。図5は粗塵分離装置260の内部構成を示す斜視図である。図6は図5中のA−A線断面矢視図である。図7は中性能フィルター272の斜視図である。図8はエアシャワー用ノズル220の断面図である。図9は洗浄装置280の平面図である。図10は図9中のB−B線断面矢視図である。図11は粉塵回収装置300の平面図であり、図12は粉塵回収装置300の正面図である。
なお、本実施の形態は、焼却炉等で作業を行った作業者の衣服等に付着した粉塵、例えば、焼却灰、レンガ塵、ほこり、浮遊ダストのようにダイオキシン類を含むような粉塵をエアシャワー装置200によって効果的に除去、分離し、粉塵回収装置300によって回収することが可能な集塵装置100について記載するものである。
【0012】
図1〜図3に示すように、本実施の形態の集塵装置100は、大別にして、エアシャワー装置200と粉塵回収装置300等を備えている。このエアシャワー装置200が本発明における第1の集塵部を構成し、粉塵回収装置300が本発明における第2の集塵部を構成している。
エアシャワー装置200は、エアシャワー室210の周囲に天井構成部230、床構成部250、側壁構成部270等を備えている。なお、粉塵回収装置300は、接続ホース312,313を介してエアシャワー装置200と接続されるようになっている。
【0013】
エアシャワー装置200には、エアシャワー室210を開閉可能とする扉212が設けられている。作業者は、この扉212を開閉させてエアシャワー室210へ出入りする。扉212が閉鎖された際に、このエアシャワー室210はほぼ密閉に近い状態になる。
【0014】
天井構成部230には、天井部空間231とエアシャワー装置200の外部とを連通する排気口232が設けられている。従って、この天井部空間231のエアの一部を、この排気口232を通じてエアシャワー装置200の外部へ排気することができる。
【0015】
床構成部250には、エアシャワー室210に面するグレーティング214が設けられている。グレーティング214は、例えばSUS材を用いた格子状の平面に形成されている。このグレーティング214の表面には複数の突起(凹凸部)が形成されており、この突起形状が作業者の靴底の汚れを落とすように作用する。
【0016】
床構成部250に形成される床部空間251と、側壁構成部270に形成される側壁部空間271とは、可動板252によって区画されている。この可動板252は、本装置の運転条件下における床部空間251と側壁部空間271との圧力バランスにしたがって支軸を中心にして回動可能になっている。すなわち、可動板252は、床部空間251と側壁部空間271を連通する開放位置(図1中の二点鎖線で示す位置)と、連通しない閉鎖位置(図1中の破線で示す位置)との間で回動する。可動板252は、開放位置において床部空間251から側壁部空間271へのエアの移動は許容するが、閉鎖位置において側壁部空間271から床部空間251へのエアの移動は阻止する構成、いわゆる逆止弁の機構を用いた構成になっている。
【0017】
側壁構成部270には、粗塵分離装置260、中性能フィルター272、第1吸引ファン274、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルター276、差圧計278、中性能フィルター272の上方に配置された洗浄装置280等が配置されている。この粗塵分離装置260が本発明における粉塵分離手段に対応しており、中性能フィルター272が本発明における集塵フィルターに対応している。また、この側壁構成部270に制御盤290が設けられており、この制御盤290に内蔵された制御機構によって第1吸引ファン274等、各種機器の制御が行われるようになっている。この制御盤290によって本発明における制御手段が構成される。例えば、室内に配置された起動スイッチ(図示省略)を作業者が操作することによってエアシャワー装置200が作動状態に設定される。例えば扉212が開放された状態では、起動スイッチを操作してもエアシャワー装置200は作動しないように構成されている。また、室外に配置された切替スイッチ292を操作することによって、粉塵回収装置300を洗浄装置280と連動させて作動させる連動モードと、この粉塵回収装置300を洗浄装置280と連動させないで単独で作動させる単動モードとに切り替えることができるようになっている。
【0018】
粗塵分離装置260は、受け入れた含塵空気を相対的に塵濃度の異なる2種類の空気に分離することで、含塵空気から粉塵を除去する機能を有する。図4に示すように、この粗塵分離装置260は、ハウジング261に複数(本実施の形態では36個)の貫通孔262を備えている。また、図5および図6に示すように、この貫通孔262の各々に粗塵分離機構部263が搭載されている。粗塵分離機構部263は、筒状に形成された外筒部材264および内筒部材265、羽根部材266等によって構成されている。
【0019】
羽根部材266は、四片のスクリュー羽根266aを備え外筒部材264の上流側に固定されている。スクリュー羽根266aは、各々が湾曲した旋回形状を有する。羽根部材266は、スクリュー羽根266a自体が旋回する構成でないため、駆動機構等を設ける必要がなく構成を簡素化することが可能となる。図6に示すように、内筒部材265は、直管部265aとこの直管部265aから下流に向けて延びる拡管部265bとを有し、直管部265aが外筒部材264の下流側に挿入された挿設状態に(挿入長さL)なっている。また、この挿設状態では、直管部265aと外筒部材264との間に間隔Dの隙間部267が形成されている。すなわち、この内筒部材265が、外筒部材264の内部を中心側領域と周側領域とに区画する構成になっている。
【0020】
羽根部材266へ含塵空気が導入されると、この含塵空気にスクリュー羽根266aによって高速旋回流が付与される。この高速旋回流の遠心作用によって含塵空気中の粉塵は遠心方向へ移動することとなり、外筒部材264の周側領域に粉塵を主体とした流れが生じる。すなわち、外筒部材264の周側領域を相対的に塵濃度が高く、また相対的に粒子径の大きい粉塵を多く含む空気が流れ、外筒部材264の中心側領域を相対的に塵濃度が低い空気が流れる。このような空気の流れに対し内筒部材265が作用すると、周側領域に対応した隙間部267から相対的に塵濃度の高い空気が排出され、中心側領域に対応した空間部268から相対的に塵濃度の低い空気が排出されることとなる。これにより、空間部268から含塵空気中の塵濃度が低下した空気、すなわち集塵後の空気を取出すことができる。隙間部267を通過した粉塵は接続ホース312を通じて粉塵回収装置300へ移動し、空間部268を通過した空気は側壁部空間271の空気流れにしたがって中性能フィルター272の方向へ移動する。
【0021】
本実施の形態の粗塵分離装置260を用いることで、例えば、約90%の粉塵を除去することができる。この場合、約90%の粉塵が粉塵回収装置300によって回収され、残りの約90%の粉塵が中性能フィルター272によって集塵されることとなる。従って、中性能フィルター272で集塵される粉塵の量を減らすことができ、フィルターの目詰まりによる清掃頻度を低減させることができる。粉塵回収装置300を使用しない場合に比して中性能フィルター272の清掃頻度を、例えば1回/10日から1回/100日に延ばすことができる。
【0022】
また、本実施の形態の粗塵分離装置260は、隙間部267や空間部268に粉塵が滞留しにくい構成であるゆえ、フィルター部材のように圧力損失が増大するのを極力抑えることができ、処理風量を上げることが可能となる。このような構成の粗塵分離装置260において、例えば1,700m3/hの処理風量で含塵空気を処理した場合、粒子径8μm以上の粉塵の補集効率(重量法)が93%で、粒子径15μm以上の粉塵の補集効率(重量法)が98%という集塵性能を得ることが可能である。また、そのときの圧力損失を270〜280Pa程度に抑えることができる。
【0023】
なお、粗塵分離装置260の処理風量、補集効率、圧力損失等の性能は、処理条件を適宜変化させることで変更可能である。例えば、含塵ガスの種類、粉塵の種類、大きさ、重さ等に応じて、粗塵分離機構部263の数や形状、より具体的には内筒部材265の挿入長さLや隙間部267の間隔Dを調整するこができる。また、粗塵分離装置260は、焼却炉内が低温や常温のときに使用する場合には樹脂や鋼板で製作され、焼却炉内が高温のときに使用する場合には耐熱鋼で製作されるのが好ましい。
【0024】
第1吸引ファン274はエアを吸引して吐出する構成を有し、この第1吸引ファン274によって側壁部空間271の中性能フィルター272からHEPAフィルター276へ至る径路にエアの上向流が付与されることとなる。これにより、エアに含まれる粉塵の集塵処理が、中性能フィルター272およびHEPAフィルター276を介して行われるようになっている。この第1吸引ファン274の能力は、エアの処理風量やその上流および下流の機器の圧力損失等に基づいて適宜設定される。
【0025】
図7に示すように、中性能フィルター272は、フィルター枠272aにフィルター部材(ろ布)273を組み込んだ構成を有する。フィルター部材273は、複数の襞が形成された構成、いわゆるプリーツ型のフィルターになっている。粉塵を含む粉塵エアがこのフィルター部材273を通過する際に、フィルター部材273のフィルター上流面273aに粉塵が捕集される。このフィルター部材273としては、例えば補集効率(GJS比色法)が90%程度のものを用いることができる。
【0026】
また、フィルター部材273は、フィルター枠272aに対して着脱可能になっている。従って、フィルター部材273のみを廃棄することが可能となり、フィルターとフィルター枠が一体に構成されたものに比してコストの低減を図ることが可能となる。
【0027】
差圧計278は、フィルター部材273に対応した位置に設置されている。この差圧計278は、フィルター部材273の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧(圧力差)を表示する一方、差圧ないしその差圧を示唆する検出値を制御盤290へ伝送する。そして、制御盤290に内蔵された制御機構は、例えば差圧計278で検出された差圧が予め定められた所定値に達したときに、後述する構成の洗浄装置280へ作動信号を出力するように設定されている。この差圧計278が本発明における差圧情報検出手段に対応している。
【0028】
HEPAフィルター276は、例えば極微細繊維層からなり、いわゆるDOPテストにおいて、所定の風量での0.3μmの粒子の補集効率が99.97%以上で、圧力損失が250Pa以下の性能を保障する超高性能のフィルターである。粉塵を含む含塵空気がこのHEPAフィルター276を通過する際に、HEPAフィルター276の上流側の面に粉塵が捕集される。
【0029】
側壁構成部270にはエアシャワー室210に面する複数個(本実施の形態では計12個)のエアシャワー用ノズル220が設けられ、天井構成部230にはエアシャワー室210に面する複数個(本実施の形態では計6個)のエアシャワー用ノズル220が設けられている。これらエアシャワー用ノズル220は、いずれもエアシャワー室210へ向けて後述する循環エアおよび高圧エアを供給する構成を有する。この循環エアと高圧エアとによってエアシャワー室210へ向けてエアシャワーが供給され、作業者の衣服等に付着した粉塵は、このエアシャワーによる吹き飛ばし効果によって衣服等から除去されることとなる。
この循環エアと高圧エアおよび第1吸引ファンによって付与されるエア流れによって、エアシャワー室210のエアが循環径路を循環する。この循環径路は、エアシャワー室210、天井部空間231、側壁部空間271、床部空間251等によって構成される。
【0030】
ここで、エアシャワー用ノズル220の詳細な構成を図8を参照しながら説明する。
図8示すように、各エアシャワー用ノズル220は、エアシャワー室210に面する壁部213に形成されたエアシャワー用ノズル設置孔213aに取り付けられており、概略的に見て第1ノズル221と第2ノズル222とから構成される。第2ノズル222は、第1ノズル221内に設けられるとともに、双方のノズル221,222は、結合片225を介して一体状とされている。
【0031】
第1ノズル221は、シーリング223を介してエアシャワー用ノズル設置孔213aに対し相対的に回動可能に取り付けられるとともに、シーリング224を介して循環エア供給管226に接続されている。第1ノズル221は球面状に形成され、第2ノズル222と一体状となって、シーリング223,224に対して相対的に回動することにより、エアシャワー用ノズル設置孔213a内にて適宜エア吐出方向を変化することができる。循環エア供給管226は側壁部空間271および天井部空間231と連通しており、側壁部空間271および天井部空間231を流通するエアが循環エアとして循環エア供給管226から継続的に吐出される。すなわち、第1吸引ファン274の上向流によって形成される循環エアの一部が、側壁部空間271および天井部空間231からエアシャワー室210へ向けて供給されるようになっている。
【0032】
一方、第2ノズル222は、高圧エア供給管227に接続されるとともに、既に述べたように結合片225によって第1ノズル221に一体的に接続されており、第1ノズル221の回動とともに一体的に可動とされている。すなわち、第1ノズル221からのエア吐出方向と、第2ノズル222からのエア吐出方向とは一致する構成とされている。高圧エア供給管227は、ソレノイドバルブ(図示省略)を介して例えばエアシャワー室210の室外に準備されたエア供給源(図示省略)に接続されている。このエア供給源としては、圧縮エアコンプレッサーやブロワ、高圧ボンベ等を用いるのが好ましい。このエア供給源から例えば25〜30m/secのエアを断続的に供給する構成を用いる。これにより、第2ノズル222から吐出される高圧エアを、第1ノズル221から吐出される循環エアよりも高圧とすることができ、第2ノズル222から吐出される断続流による粉塵の除去効果が高まる。
【0033】
このエアシャワー室210では、図3に示すように、ハンドガン形式の高圧エアダスター216が設けられ、さらに特に図示しないもののオゾン発生装置が設置されている。エアダスター216は、上記した一連のノズルとは異なり、作業者が適宜手動操作して特に汚れのひどい箇所に高圧エアを吹き付けるための手段である。
【0034】
次に、洗浄装置280の構成および作用を図9、図10を参照しながら説明する。なお、図10では、フィルター部材273の襞の形状を強調するように襞の構成を簡素化した状態で示している。
図9および図10に示すように、洗浄装置280は中性能フィルター272の上方に隣接して配置されている。この洗浄装置280は、フレーム281の支柱部材282に取付けられた複数個(本実施の形態では8個)の逆洗用ノズル283が設けられている。この逆洗用ノズル283は、いずれもその吐出口を水平線Lから斜め下方へ傾斜させた方向(傾斜角度θ)へ向けて固定されている。逆洗用ノズル283は、ソレノイドバルブ284およびエア供給配管285を介して、圧縮エア供給用のエア供給源に接続されている。これら逆洗用ノズル283等によって本発明の圧縮エア供給手段が構成されている。
【0035】
既に述べたように、このような洗浄装置280において、差圧計278で検出されたフィルター部材273の差圧が予め定められた所定値に達したときに、エア供給源の圧縮エアの供給が開始され、逆洗用ノズル283の吐出口からフィルター部材273のフィルター下流面273bへ向けて圧縮エアが吐出される。例えば、図9および図10中の二点鎖線で示す範囲に、圧縮エアが吐出されることとなる。この圧縮エアは、中性能フィルター272の差圧が所定値に低下するまで継続して吐出されてもよいし、あるいは所定時間吐出されてもよい。これにより、フィルター上流面273aに補集されている粉塵は、圧縮エアによる吹き飛ばし効果によって逆洗されることとなる。また、既に述べたように本実施の形態のフィルター部材273は、複数の襞が形成されたプリーツ型のフィルターであるため、この襞に圧縮エアが作用すると襞自体が図10中の矢印10および20で示す左右方向へ容易に振動する。その結果、フィルター部材273のフィルター上流面273aに捕集されている粉塵は、襞部に圧縮エアが作用することで得られるふるい落し効果によってフィルター部材273のフィルター上流面273aからふるい落とされる。
【0036】
なお、本実施の形態では、逆洗用ノズル283を傾斜させているため、極力少ない数のノズルによって広範囲に圧縮エアを供給することができる。逆洗用ノズル283の吐出口を傾斜させずに下向きに固定する場合は、ノズルの設置数を増やすか、あるいはノズルが中性能フィルター272に対して移動する構成を用いることによって、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0037】
次に、粉塵回収装置300の構成および作用を図1、図11および図12を参照しながら説明する。
この粉塵回収装置300は、主に粗塵分離装置260によって分離された粉塵を回収するものである。図11および図12に示すように、粉塵回収装置300は、箱型状に形成された装置本体301の底面の四箇所に自走を可能とするキャスター304を備えている。装置本体301には、吸入口302および排気口303、装置内部の点検を行う点検蓋305等が設けられている。吸入口202は、接続ホース312を介してエアシャワー装置200の側壁部空間271、具体的には粗塵分離装置260によって分離された粉塵に対応した位置に接続される。また、排気口303は、接続ホース313を介してエアシャワー装置200の側壁部空間271、接続ホース312の接続箇所よりも若干下流側に接続される。
【0038】
また、装置本体301の内部には、真空吸引を可能とする第2吸引ファン310、紙パックフィルター320が搭載されている。この第2吸引ファン310が本発明における導入手段に対応しており、紙パックフィルター320が本発明におけるパック型フィルター(粉塵回収手段)に対応している。に対応している。本実施の形態では、計6個の紙パックフィルター320が設置されており、第2吸引ファン310によって装置本体301の内部へ導入された含塵空気は、各紙パックフィルター320に並列的に供給される。この紙パックフィルター320は、袋形状でありその袋内面に粉塵のフィルター補集面を有する。この紙パックフィルター320としては、掃除機用に市販されているものを好適に用いることができる。このような紙パックフィルター320を用いることにより、フィルター交換作業が容易であり、紙パックフィルター320内に回収された粉塵がフィルター交換時に外部へ飛散しにくい。
【0039】
前記した切替スイッチ292を例えば連動モードにセットした場合、洗浄装置280が作動すると、この作動にあわせて第2吸引ファン310が真空吸引を開始する。これにより、粗塵分離装置260の下流部から装置本体301の内部を通って再び粗塵分離装置260の下流部へ戻る径路にエア流れが形成される。この径路が本発明における迂回径路に対応している。すなわち、接続ホース312,313等によって本発明の迂回径路が構成されている。これにより、粗塵分離装置260によって分離された粉塵は、接続ホース312を通じて粉塵回収装置300の紙パックフィルター320へ導入され、この紙パックフィルター320を通過する際にフィルター補集面に補集される。また、各紙パックフィルター320を通過したエアは合流したのち第2吸引ファン310、接続ホース313を介して全量が粗塵分離装置260の下流部へ戻る。このような構成によれば、粉塵回収装置300で処理されたエアが外部へ排気される心配がなく清潔である。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、エアシャワー装置200側の粗塵分離装置260で分離された粉塵の大部分を接続ホース312を通じて粉塵回収装置300へ導入することができるため、中性能フィルター272へ流入する粉塵の量を減らすことができる。これにより、中性能フィルター272の目詰まりの発生頻度を低減させることができ、その清掃頻度を延ばすことができる。粉塵回収装置300の清掃は紙パックフィルター320の交換によって可能となるため、従来の中性能フィルター272を取外して清掃する作業に比して作業が簡単である。また、粗塵分離装置260で処理された後のエアは接続ホース313を通じて全量エアシャワー装置200側へ戻す構成ゆえ、外部への排気の心配がなく周辺環境を清潔に維持することができる。従って、粉塵を含む含塵空気の集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うことができる。
また、本実施の形態によれば、清浄化されたエアはエアシャワー用ノズル220を通じてエアシャワー室210内へ再度供給されるため、エアシャワー室210内のエアを循環使用することができ合理的である。
また、本実施の形態によれば、プリーツ型のフィルター部材273に圧縮エアを供給することでフィルターの逆洗を行う構成としたため、圧縮エアによる粉塵の吹き飛ばし効果と、フィルター部材273の襞を振動させることによるふるい落し効果を得ることができ、フィルターの効果的な洗浄が可能となる。
また、本実施の形態によれば、フィルター部材273前後の差圧が所定値まで上昇したときにフィルター部材273に圧縮エアを供給する構成としたため、フィルター部材273の逆洗を最適なタイミングで行うことができ合理的である。また、本実施の形態によれば、中性能フィルター272の逆洗にあわせて粉塵回収装置300を作動させる構成としたため、逆洗時に発生する粉塵を最適なタイミングで粉塵回収装置300側へ吸引し回収することができる。従って、エアシャワー装置200側に粉塵の回収領域を確保する必要がない。
また、本実施の形態によれば、HEPAフィルター276を用いたため、粉塵の補集効率がほぼ100%に近くなり、清浄度合いの高い清浄空気を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、粉塵回収装置300に紙パックフィルター320を用いたため、フィルター補集面に補集された粉塵がフィルター交換時等にフィルターの外部に飛散しにくく、フィルター交換時の作業を円滑に行うことができる。
【0041】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0042】
(A)上記実施の形態では、逆洗用ノズル283を傾斜させて固定する場合について記載したが、逆洗用ノズル283の吐出口の向き、ノズル数、ノズルの設置形態等はこれに限定されるものではなく必要に応じて種々変更可能である。
例えば、逆洗用ノズルの設置数を増やしたうえでノズルの吐出口を傾斜させずに下向きに固定した構成を用いることができる。また、逆洗用ノズルの吐出口を傾斜させずに下向きとしたうえでノズルが中性能フィルター272に対して移動する構成を用いることができる。
【0043】
(B)また、上記実施の形態は、エアシャワー装置200で除去、分離された粉塵を粉塵回収装置300によって回収する場合について記載したが、エアシャワー装置200以外の機器、例えば工事現場等に設置される局所集塵機で除去、分離された粉塵を粉塵回収装置300によって回収する構成を用いることもできる。このような構成により作業者の負担を軽減することができる。
また、本発明を、製品の分離・回収、あるいは大気汚染防止として用いられる工業用集塵だけでなく、特定の空間、例えばクリーンルームや住居空間の空気の浄化を目的としたいわゆる空気清浄の分野における集塵技術に適用することもできる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うのに有効な集塵装置の構成技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の集塵装置100の側面図である。
【図2】集塵装置100におけるエアフロー図である。
【図3】エアシャワー装置200の斜視図である。
【図4】粗塵分離装置260を外部からみた斜視図である。
【図5】粗塵分離装置260の内部構成を示す斜視図である。
【図6】図5中のA−A線断面矢視図である。
【図7】中性能フィルター272の斜視図である。
【図8】エアシャワー用ノズル220の断面図である。
【図9】洗浄装置280の平面図である。
【図10】図9中のB−B線断面矢視図である。
【図11】粉塵回収装置300の平面図である。
【図12】粉塵回収装置300の正面図である。
【符号の説明】
100…集塵装置
200…エアシャワー装置
210…エアシャワー室
220…エアシャワー用ノズル
221…第1ノズル
222…第2ノズル
260…粗塵分離装置
272…中性能フィルター
273…フィルター部材
273a…フィルター上流面
273b…フィルター下流面
274…第1吸引ファン
276…HEPAフィルター
278…差圧計
280…洗浄装置
283…逆洗用ノズル
290…制御盤
300…粉塵回収装置
310…第2吸引ファン
312,313…接続ホース
320…紙パックフィルター
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の技術として、例えばエアシャワー室を備えた集塵装置を用いた集塵技術が知られている。この集塵装置では、エアシャワー室内へノズルを用いて所定流速のエアシャワーを吐出し、当該エアをエアシャワー利用者の衣服等に当てることによって衣服等に付着した粉塵を除去するようになっている。また、この集塵装置では、衣服等から除去された粉塵は、エアシャワー室外の循環径路へ送られ、この循環径路に設置された集塵フィルター等の集塵手段によって補集されるようになっている。この集塵装置は、例えば集塵フィルターに補集された粉塵の量が増えるにつれてその集塵能力が低下するため、この集塵フィルターを定期的に清掃する必要がある。例えば、集塵フィルターの前後の差圧が所定値に達すると集塵フィルターを装置から取外し、フィルター表面に付着した粉塵をエアガン等を用いて吹き飛ばすことで集塵フィルターの清掃を行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような清掃作業は、集塵フィルターを取外すのに手間がかかり作業が面倒である。とりわけ粉塵濃度の高い含塵ガスの集塵処理では集塵フィルターの洗浄頻度が増えるため円滑な作業の妨げとなる。そこで、集塵フィルターによって補集された粉塵を、循環径路から径路外へ抜き出して回収する技術が提案されている。この技術では、例えば吸引ファンおよび回収フィルターを搭載した粉塵回収装置を循環径路に接続した構成を用いる。循環径路の集塵フィルターによって補集された粉塵は、吸引ファンによって径路外の粉塵回収装置へ吸引され、回収フィルターによって回収される。回収フィルターで処理された後のガスは粉塵回収装置の外部へ排気される。このような構成の集塵装置は、集塵フィルターの清掃頻度を低減させるのに有効である。しかしながら、このような構成では、回収フィルターで処理された後のガスが粉塵回収装置の外部へ排気されるため、粉塵回収装置の周辺環境が懸念されるという問題を抱えている。
【0004】
そこで本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うのに有効な集塵装置の構成技術を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の集塵装置は、各請求項に記載の通りに構成されている。すなわち、各請求項に係る発明は、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を行う集塵装置において、含塵ガスを受け入れて流通させる流通径路とは別に、この流通径路の一部を迂回する迂回径路を設け、流通径路で分離された粉塵を迂回径路を通過させこの通過過程において回収し、回収後のガスを流通径路へ戻すようにすることで、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を円滑に行うことができるようにした技術である。
【0006】
請求項1に記載の集塵装置は、第1の集塵部および第2の集塵部を有する。
第1の集塵部には、流通径路、粉塵分離手段等が設けられている。流通径路は粉塵を含む含塵ガスを受け入れて流通させる径路であり、この流通径路に設置された吸引ファン等の吸引力によって流通径路内を含塵ガスが移動する。粉塵分離手段は、含塵ガスに含まれる粉塵、好ましくは粒子径の粗い粉塵を選択的に分離、除去する構成を有する。
第2の集塵部には、迂回径路、導入手段、粉塵回収手段等が設けられている。迂回径路は、流通径路の粉塵分離手段よりも下流においてこの流通径路の一部を迂回する構成を有する。この迂回径路の入口は、粉塵分離手段によって分離された粉塵が滞留する位置において流通経路に接続され、この迂回径路の出口は、前記入口よりも若干下流位置において流通経路に接続されるのが好ましい。導入手段は、粉塵分離手段によって分離された粉塵を流通径路から迂回径路へ導入しこの迂回径路を流通させるものであり、例えば吸引ファンを用いて構成される。粉塵回収手段は、迂回径路を流通する粉塵を回収するものであり、例えば補集フィルター部材を用いて構成される。
このような構成により、流通径路の粉塵分離手段によって分離された粉塵は、主に迂回径路へ導入されフィルター部材を通過する過程においてこのフィルター部材によって回収されることとなる。また、フィルター部材を通過した後のガスは、全量迂回径路の出口から再び流通径路へ戻る構成ゆえ、このガスが外部に排気されることがない。このように、流通径路に滞留する粉塵の大部分を粉塵回収手段によって回収することができ、流通径路に設置される集塵フィルター等の目詰まりの発生頻度を低減させることができる。また、流通径路を迂回する迂回径路に粉塵回収手段を設けることで、粉塵回収手段から外部への排気の心配がなく周辺環境を清潔に維持することができる。
以上のように請求項1に記載した集塵装置によれば、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うことができる。
なお、ここでいう「粉塵」とは、各種の粉塵や煤塵、花粉、ウイルス等の病原体、たばこの粒子等を広く含む主旨である。また、本発明でいう「集塵」には、例えば、製品の分離・回収、あるいは大気汚染防止として用いられる工業用集塵だけでなく、特定の空間、例えばクリーンルームや住居空間の空気の浄化を目的としたいわゆる空気清浄の分野における集塵をも広く含むものとする。
【0007】
また、請求項2に記載の集塵装置では、第1の集塵部に、エアシャワー室、循環径路等を有する。エアシャワー室は、エアシャワー利用者が入室可能な領域であり、エアシャワー用ノズルを介してエアシャワーが供給される構成になっている。エアシャワー用ノズルは、エアシャワーの供給源に接続される。この供給源としては例えば装置内部を循環するエアや装置外部から受け入れたエアなどがある。このエアシャワーによって、エアシャワー利用者の衣服等に付着した粉塵が衣服等から除去される。従って、本発明でいう「エアシャワー」とは、実質的にはエアシャワー利用者の衣服等に付着した粉塵を除去可能な流量、圧力を有するエア流れを示すものである。
循環径路は、エアシャワー室のエアがその室外において循環して再びエアシャワー室へ戻る径路である。この循環径路によって請求項1に記載の流通径路が構成されるようになっている。すなわち、エアシャワー室において衣服等から除去された粉塵は、エアシャワー室のエアとともに循環径路を流通する。粉塵とエアが混合された含塵ガスは、この循環径路を流通するときに粉塵分離手段によって処理される。この粉塵分離手段によって分離された大部分の粉塵は迂回径路へ導入されて回収され、その他の粉塵は例えば粉塵分離手段の下流に設置された集塵フィルター等において集塵処理される。そして、処理後の清浄化されたエアはエアシャワー室へ戻される。この清浄化されたエアは、例えばエアシャワー用ノズルを通じてエアシャワー室内へ再度供給される。このような構成によれば、エアシャワー室内のエアを循環使用することができるため合理的である。
以上のように請求項2に記載した発明によれば、エアシャワー室を有する集塵装置において、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うのに有効である。
【0008】
また、請求項3に記載の集塵装置では、第1の集塵部に、更に集塵フィルターおよび洗浄装置が設けられている。この集塵フィルターは、粉塵分離手段の下流に配置されるものであり、フィルター自体がプリーツ状(襞状)に形成された形状を有する、いわゆるプリーツ型のフィルターを用いて構成される。このような集塵フィルターを用いることで集塵面積を増加させることができる。この集塵装置では、流通径路の粉塵分離手段によって処理されたガスと、迂回径路の粉塵回収手段によって処理されたガスが合流したガスが、この集塵フィルターを通過する過程において集塵処理される。これにより、集塵フィルターの上流面に粉塵が補集されることとなる。
洗浄装置は、集塵フィルターの洗浄を行うものであり、集塵フィルターへ向けて圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段を有する。好適には、集塵フィルターの下流面から上流面の方向へ向けて圧縮エア供給手段が圧縮エアを吐出する構成を用いる。これにより、集塵フィルターの上流面に捕集された粉塵は、圧縮エアの逆洗作用によって吹き飛ばされて、集塵フィルターが洗浄されることとなる。とりわけ、本発明の如くプリーツ型の集塵フィルターを用いたうえで、この集塵フィルターに圧縮エアを供給する構成とすることによって集塵フィルターの効果的な洗浄が可能となる。すなわち、プリーツ型に形成された集塵フィルターの襞の部分に圧縮エアが作用すると、襞に振動が生じそのふるい落し効果によって補集された粉塵が集塵フィルターからふるい落とされて、集塵フィルターが洗浄されることとなる。このように、本発明は、圧縮エアによる粉塵の吹き飛ばし効果のみならず、この吹き飛ばし効果に更に、プリーツ型の集塵フィルターに圧縮エアを作用させることにより得られるふるい落し効果を有機的に組み合わせることによって、従来技術にはない効果的な集塵フィルターの洗浄技術を実現するものである。
なお、導入手段が圧縮エア供給手段の作動に連動して作動し、集塵フィルターからふるい落とされた粉塵が導入手段によって迂回径路へ導入される構成であるのが好ましい。このような構成により、集塵フィルターの洗浄により発生する粉塵は、最適なタイミングで迂回径路へ導入され、粉塵回収手段によって回収される。
以上のように請求項3に記載した集塵装置によれば、プリーツ型の集塵フィルターに圧縮エアを作用させる構成を用いることにより、流通径路に設置された集塵フィルターの洗浄を効果的に行うことができる。
【0009】
ここで、請求項3に記載の第1の集塵部は、請求項4に記載のように、更に、差圧情報検出手段および制御手段を備える構成であるのが好ましい。
差圧情報検出手段は、集塵フィルター前後の差圧に関する情報、すなわち集塵フィルターの上流側と下流側との間の圧力差に関する情報を検出する。この情報は、差圧自体であってもよいし、その差圧を示唆することができる代替情報であってもよい。制御手段は、差圧情報検出手段による検出情報に基づいて圧縮エア供給手段を作動させる。具体的には、例えば差圧情報検出手段で検出された差圧が予め定められた所定値になると圧縮エア供給手段を作動させる構成を用いる。集塵フィルターによる粉塵の集塵量が増えると、集塵フィルター前後の差圧が上昇し集塵能力が低下する。本発明では、集塵フィルター前後の差圧が上昇したと判断されたときに制御手段が圧縮エア供給手段を作動させ、集塵フィルターへ向けて圧縮エアを供給するようになっている。このような構成によれば、集塵フィルターの洗浄を最適なタイミングで行うことができ合理的である。
【0010】
また、請求項5に記載の集塵装置では、粉塵回収手段がパック型フィルターを用いて構成されている。ここでいう「パック型フィルター」とは、袋形状でありその袋内面に粉塵のフィルター補集面を有する構成のものをいう。このようなパック型フィルターを用いることにより、フィルター補集面に補集された粉塵は、フィルター交換時等にフィルターの外部に飛散しにくい。このパック型フィルターに掃除機用として市販されている紙パックフィルターを用いることで汎用性が高まる。
以上のように、請求項5に記載の集塵装置によれば、粉塵回収手段におけるフィルター交換時の作業を円滑に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施の形態の集塵装置100の構成を、図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本実施の形態の集塵装置100の側面図である。図2は集塵装置100におけるエアフロー図である。図3はエアシャワー装置200の斜視図である。図4は粗塵分離装置260を外部からみた斜視図である。図5は粗塵分離装置260の内部構成を示す斜視図である。図6は図5中のA−A線断面矢視図である。図7は中性能フィルター272の斜視図である。図8はエアシャワー用ノズル220の断面図である。図9は洗浄装置280の平面図である。図10は図9中のB−B線断面矢視図である。図11は粉塵回収装置300の平面図であり、図12は粉塵回収装置300の正面図である。
なお、本実施の形態は、焼却炉等で作業を行った作業者の衣服等に付着した粉塵、例えば、焼却灰、レンガ塵、ほこり、浮遊ダストのようにダイオキシン類を含むような粉塵をエアシャワー装置200によって効果的に除去、分離し、粉塵回収装置300によって回収することが可能な集塵装置100について記載するものである。
【0012】
図1〜図3に示すように、本実施の形態の集塵装置100は、大別にして、エアシャワー装置200と粉塵回収装置300等を備えている。このエアシャワー装置200が本発明における第1の集塵部を構成し、粉塵回収装置300が本発明における第2の集塵部を構成している。
エアシャワー装置200は、エアシャワー室210の周囲に天井構成部230、床構成部250、側壁構成部270等を備えている。なお、粉塵回収装置300は、接続ホース312,313を介してエアシャワー装置200と接続されるようになっている。
【0013】
エアシャワー装置200には、エアシャワー室210を開閉可能とする扉212が設けられている。作業者は、この扉212を開閉させてエアシャワー室210へ出入りする。扉212が閉鎖された際に、このエアシャワー室210はほぼ密閉に近い状態になる。
【0014】
天井構成部230には、天井部空間231とエアシャワー装置200の外部とを連通する排気口232が設けられている。従って、この天井部空間231のエアの一部を、この排気口232を通じてエアシャワー装置200の外部へ排気することができる。
【0015】
床構成部250には、エアシャワー室210に面するグレーティング214が設けられている。グレーティング214は、例えばSUS材を用いた格子状の平面に形成されている。このグレーティング214の表面には複数の突起(凹凸部)が形成されており、この突起形状が作業者の靴底の汚れを落とすように作用する。
【0016】
床構成部250に形成される床部空間251と、側壁構成部270に形成される側壁部空間271とは、可動板252によって区画されている。この可動板252は、本装置の運転条件下における床部空間251と側壁部空間271との圧力バランスにしたがって支軸を中心にして回動可能になっている。すなわち、可動板252は、床部空間251と側壁部空間271を連通する開放位置(図1中の二点鎖線で示す位置)と、連通しない閉鎖位置(図1中の破線で示す位置)との間で回動する。可動板252は、開放位置において床部空間251から側壁部空間271へのエアの移動は許容するが、閉鎖位置において側壁部空間271から床部空間251へのエアの移動は阻止する構成、いわゆる逆止弁の機構を用いた構成になっている。
【0017】
側壁構成部270には、粗塵分離装置260、中性能フィルター272、第1吸引ファン274、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルター276、差圧計278、中性能フィルター272の上方に配置された洗浄装置280等が配置されている。この粗塵分離装置260が本発明における粉塵分離手段に対応しており、中性能フィルター272が本発明における集塵フィルターに対応している。また、この側壁構成部270に制御盤290が設けられており、この制御盤290に内蔵された制御機構によって第1吸引ファン274等、各種機器の制御が行われるようになっている。この制御盤290によって本発明における制御手段が構成される。例えば、室内に配置された起動スイッチ(図示省略)を作業者が操作することによってエアシャワー装置200が作動状態に設定される。例えば扉212が開放された状態では、起動スイッチを操作してもエアシャワー装置200は作動しないように構成されている。また、室外に配置された切替スイッチ292を操作することによって、粉塵回収装置300を洗浄装置280と連動させて作動させる連動モードと、この粉塵回収装置300を洗浄装置280と連動させないで単独で作動させる単動モードとに切り替えることができるようになっている。
【0018】
粗塵分離装置260は、受け入れた含塵空気を相対的に塵濃度の異なる2種類の空気に分離することで、含塵空気から粉塵を除去する機能を有する。図4に示すように、この粗塵分離装置260は、ハウジング261に複数(本実施の形態では36個)の貫通孔262を備えている。また、図5および図6に示すように、この貫通孔262の各々に粗塵分離機構部263が搭載されている。粗塵分離機構部263は、筒状に形成された外筒部材264および内筒部材265、羽根部材266等によって構成されている。
【0019】
羽根部材266は、四片のスクリュー羽根266aを備え外筒部材264の上流側に固定されている。スクリュー羽根266aは、各々が湾曲した旋回形状を有する。羽根部材266は、スクリュー羽根266a自体が旋回する構成でないため、駆動機構等を設ける必要がなく構成を簡素化することが可能となる。図6に示すように、内筒部材265は、直管部265aとこの直管部265aから下流に向けて延びる拡管部265bとを有し、直管部265aが外筒部材264の下流側に挿入された挿設状態に(挿入長さL)なっている。また、この挿設状態では、直管部265aと外筒部材264との間に間隔Dの隙間部267が形成されている。すなわち、この内筒部材265が、外筒部材264の内部を中心側領域と周側領域とに区画する構成になっている。
【0020】
羽根部材266へ含塵空気が導入されると、この含塵空気にスクリュー羽根266aによって高速旋回流が付与される。この高速旋回流の遠心作用によって含塵空気中の粉塵は遠心方向へ移動することとなり、外筒部材264の周側領域に粉塵を主体とした流れが生じる。すなわち、外筒部材264の周側領域を相対的に塵濃度が高く、また相対的に粒子径の大きい粉塵を多く含む空気が流れ、外筒部材264の中心側領域を相対的に塵濃度が低い空気が流れる。このような空気の流れに対し内筒部材265が作用すると、周側領域に対応した隙間部267から相対的に塵濃度の高い空気が排出され、中心側領域に対応した空間部268から相対的に塵濃度の低い空気が排出されることとなる。これにより、空間部268から含塵空気中の塵濃度が低下した空気、すなわち集塵後の空気を取出すことができる。隙間部267を通過した粉塵は接続ホース312を通じて粉塵回収装置300へ移動し、空間部268を通過した空気は側壁部空間271の空気流れにしたがって中性能フィルター272の方向へ移動する。
【0021】
本実施の形態の粗塵分離装置260を用いることで、例えば、約90%の粉塵を除去することができる。この場合、約90%の粉塵が粉塵回収装置300によって回収され、残りの約90%の粉塵が中性能フィルター272によって集塵されることとなる。従って、中性能フィルター272で集塵される粉塵の量を減らすことができ、フィルターの目詰まりによる清掃頻度を低減させることができる。粉塵回収装置300を使用しない場合に比して中性能フィルター272の清掃頻度を、例えば1回/10日から1回/100日に延ばすことができる。
【0022】
また、本実施の形態の粗塵分離装置260は、隙間部267や空間部268に粉塵が滞留しにくい構成であるゆえ、フィルター部材のように圧力損失が増大するのを極力抑えることができ、処理風量を上げることが可能となる。このような構成の粗塵分離装置260において、例えば1,700m3/hの処理風量で含塵空気を処理した場合、粒子径8μm以上の粉塵の補集効率(重量法)が93%で、粒子径15μm以上の粉塵の補集効率(重量法)が98%という集塵性能を得ることが可能である。また、そのときの圧力損失を270〜280Pa程度に抑えることができる。
【0023】
なお、粗塵分離装置260の処理風量、補集効率、圧力損失等の性能は、処理条件を適宜変化させることで変更可能である。例えば、含塵ガスの種類、粉塵の種類、大きさ、重さ等に応じて、粗塵分離機構部263の数や形状、より具体的には内筒部材265の挿入長さLや隙間部267の間隔Dを調整するこができる。また、粗塵分離装置260は、焼却炉内が低温や常温のときに使用する場合には樹脂や鋼板で製作され、焼却炉内が高温のときに使用する場合には耐熱鋼で製作されるのが好ましい。
【0024】
第1吸引ファン274はエアを吸引して吐出する構成を有し、この第1吸引ファン274によって側壁部空間271の中性能フィルター272からHEPAフィルター276へ至る径路にエアの上向流が付与されることとなる。これにより、エアに含まれる粉塵の集塵処理が、中性能フィルター272およびHEPAフィルター276を介して行われるようになっている。この第1吸引ファン274の能力は、エアの処理風量やその上流および下流の機器の圧力損失等に基づいて適宜設定される。
【0025】
図7に示すように、中性能フィルター272は、フィルター枠272aにフィルター部材(ろ布)273を組み込んだ構成を有する。フィルター部材273は、複数の襞が形成された構成、いわゆるプリーツ型のフィルターになっている。粉塵を含む粉塵エアがこのフィルター部材273を通過する際に、フィルター部材273のフィルター上流面273aに粉塵が捕集される。このフィルター部材273としては、例えば補集効率(GJS比色法)が90%程度のものを用いることができる。
【0026】
また、フィルター部材273は、フィルター枠272aに対して着脱可能になっている。従って、フィルター部材273のみを廃棄することが可能となり、フィルターとフィルター枠が一体に構成されたものに比してコストの低減を図ることが可能となる。
【0027】
差圧計278は、フィルター部材273に対応した位置に設置されている。この差圧計278は、フィルター部材273の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧(圧力差)を表示する一方、差圧ないしその差圧を示唆する検出値を制御盤290へ伝送する。そして、制御盤290に内蔵された制御機構は、例えば差圧計278で検出された差圧が予め定められた所定値に達したときに、後述する構成の洗浄装置280へ作動信号を出力するように設定されている。この差圧計278が本発明における差圧情報検出手段に対応している。
【0028】
HEPAフィルター276は、例えば極微細繊維層からなり、いわゆるDOPテストにおいて、所定の風量での0.3μmの粒子の補集効率が99.97%以上で、圧力損失が250Pa以下の性能を保障する超高性能のフィルターである。粉塵を含む含塵空気がこのHEPAフィルター276を通過する際に、HEPAフィルター276の上流側の面に粉塵が捕集される。
【0029】
側壁構成部270にはエアシャワー室210に面する複数個(本実施の形態では計12個)のエアシャワー用ノズル220が設けられ、天井構成部230にはエアシャワー室210に面する複数個(本実施の形態では計6個)のエアシャワー用ノズル220が設けられている。これらエアシャワー用ノズル220は、いずれもエアシャワー室210へ向けて後述する循環エアおよび高圧エアを供給する構成を有する。この循環エアと高圧エアとによってエアシャワー室210へ向けてエアシャワーが供給され、作業者の衣服等に付着した粉塵は、このエアシャワーによる吹き飛ばし効果によって衣服等から除去されることとなる。
この循環エアと高圧エアおよび第1吸引ファンによって付与されるエア流れによって、エアシャワー室210のエアが循環径路を循環する。この循環径路は、エアシャワー室210、天井部空間231、側壁部空間271、床部空間251等によって構成される。
【0030】
ここで、エアシャワー用ノズル220の詳細な構成を図8を参照しながら説明する。
図8示すように、各エアシャワー用ノズル220は、エアシャワー室210に面する壁部213に形成されたエアシャワー用ノズル設置孔213aに取り付けられており、概略的に見て第1ノズル221と第2ノズル222とから構成される。第2ノズル222は、第1ノズル221内に設けられるとともに、双方のノズル221,222は、結合片225を介して一体状とされている。
【0031】
第1ノズル221は、シーリング223を介してエアシャワー用ノズル設置孔213aに対し相対的に回動可能に取り付けられるとともに、シーリング224を介して循環エア供給管226に接続されている。第1ノズル221は球面状に形成され、第2ノズル222と一体状となって、シーリング223,224に対して相対的に回動することにより、エアシャワー用ノズル設置孔213a内にて適宜エア吐出方向を変化することができる。循環エア供給管226は側壁部空間271および天井部空間231と連通しており、側壁部空間271および天井部空間231を流通するエアが循環エアとして循環エア供給管226から継続的に吐出される。すなわち、第1吸引ファン274の上向流によって形成される循環エアの一部が、側壁部空間271および天井部空間231からエアシャワー室210へ向けて供給されるようになっている。
【0032】
一方、第2ノズル222は、高圧エア供給管227に接続されるとともに、既に述べたように結合片225によって第1ノズル221に一体的に接続されており、第1ノズル221の回動とともに一体的に可動とされている。すなわち、第1ノズル221からのエア吐出方向と、第2ノズル222からのエア吐出方向とは一致する構成とされている。高圧エア供給管227は、ソレノイドバルブ(図示省略)を介して例えばエアシャワー室210の室外に準備されたエア供給源(図示省略)に接続されている。このエア供給源としては、圧縮エアコンプレッサーやブロワ、高圧ボンベ等を用いるのが好ましい。このエア供給源から例えば25〜30m/secのエアを断続的に供給する構成を用いる。これにより、第2ノズル222から吐出される高圧エアを、第1ノズル221から吐出される循環エアよりも高圧とすることができ、第2ノズル222から吐出される断続流による粉塵の除去効果が高まる。
【0033】
このエアシャワー室210では、図3に示すように、ハンドガン形式の高圧エアダスター216が設けられ、さらに特に図示しないもののオゾン発生装置が設置されている。エアダスター216は、上記した一連のノズルとは異なり、作業者が適宜手動操作して特に汚れのひどい箇所に高圧エアを吹き付けるための手段である。
【0034】
次に、洗浄装置280の構成および作用を図9、図10を参照しながら説明する。なお、図10では、フィルター部材273の襞の形状を強調するように襞の構成を簡素化した状態で示している。
図9および図10に示すように、洗浄装置280は中性能フィルター272の上方に隣接して配置されている。この洗浄装置280は、フレーム281の支柱部材282に取付けられた複数個(本実施の形態では8個)の逆洗用ノズル283が設けられている。この逆洗用ノズル283は、いずれもその吐出口を水平線Lから斜め下方へ傾斜させた方向(傾斜角度θ)へ向けて固定されている。逆洗用ノズル283は、ソレノイドバルブ284およびエア供給配管285を介して、圧縮エア供給用のエア供給源に接続されている。これら逆洗用ノズル283等によって本発明の圧縮エア供給手段が構成されている。
【0035】
既に述べたように、このような洗浄装置280において、差圧計278で検出されたフィルター部材273の差圧が予め定められた所定値に達したときに、エア供給源の圧縮エアの供給が開始され、逆洗用ノズル283の吐出口からフィルター部材273のフィルター下流面273bへ向けて圧縮エアが吐出される。例えば、図9および図10中の二点鎖線で示す範囲に、圧縮エアが吐出されることとなる。この圧縮エアは、中性能フィルター272の差圧が所定値に低下するまで継続して吐出されてもよいし、あるいは所定時間吐出されてもよい。これにより、フィルター上流面273aに補集されている粉塵は、圧縮エアによる吹き飛ばし効果によって逆洗されることとなる。また、既に述べたように本実施の形態のフィルター部材273は、複数の襞が形成されたプリーツ型のフィルターであるため、この襞に圧縮エアが作用すると襞自体が図10中の矢印10および20で示す左右方向へ容易に振動する。その結果、フィルター部材273のフィルター上流面273aに捕集されている粉塵は、襞部に圧縮エアが作用することで得られるふるい落し効果によってフィルター部材273のフィルター上流面273aからふるい落とされる。
【0036】
なお、本実施の形態では、逆洗用ノズル283を傾斜させているため、極力少ない数のノズルによって広範囲に圧縮エアを供給することができる。逆洗用ノズル283の吐出口を傾斜させずに下向きに固定する場合は、ノズルの設置数を増やすか、あるいはノズルが中性能フィルター272に対して移動する構成を用いることによって、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0037】
次に、粉塵回収装置300の構成および作用を図1、図11および図12を参照しながら説明する。
この粉塵回収装置300は、主に粗塵分離装置260によって分離された粉塵を回収するものである。図11および図12に示すように、粉塵回収装置300は、箱型状に形成された装置本体301の底面の四箇所に自走を可能とするキャスター304を備えている。装置本体301には、吸入口302および排気口303、装置内部の点検を行う点検蓋305等が設けられている。吸入口202は、接続ホース312を介してエアシャワー装置200の側壁部空間271、具体的には粗塵分離装置260によって分離された粉塵に対応した位置に接続される。また、排気口303は、接続ホース313を介してエアシャワー装置200の側壁部空間271、接続ホース312の接続箇所よりも若干下流側に接続される。
【0038】
また、装置本体301の内部には、真空吸引を可能とする第2吸引ファン310、紙パックフィルター320が搭載されている。この第2吸引ファン310が本発明における導入手段に対応しており、紙パックフィルター320が本発明におけるパック型フィルター(粉塵回収手段)に対応している。に対応している。本実施の形態では、計6個の紙パックフィルター320が設置されており、第2吸引ファン310によって装置本体301の内部へ導入された含塵空気は、各紙パックフィルター320に並列的に供給される。この紙パックフィルター320は、袋形状でありその袋内面に粉塵のフィルター補集面を有する。この紙パックフィルター320としては、掃除機用に市販されているものを好適に用いることができる。このような紙パックフィルター320を用いることにより、フィルター交換作業が容易であり、紙パックフィルター320内に回収された粉塵がフィルター交換時に外部へ飛散しにくい。
【0039】
前記した切替スイッチ292を例えば連動モードにセットした場合、洗浄装置280が作動すると、この作動にあわせて第2吸引ファン310が真空吸引を開始する。これにより、粗塵分離装置260の下流部から装置本体301の内部を通って再び粗塵分離装置260の下流部へ戻る径路にエア流れが形成される。この径路が本発明における迂回径路に対応している。すなわち、接続ホース312,313等によって本発明の迂回径路が構成されている。これにより、粗塵分離装置260によって分離された粉塵は、接続ホース312を通じて粉塵回収装置300の紙パックフィルター320へ導入され、この紙パックフィルター320を通過する際にフィルター補集面に補集される。また、各紙パックフィルター320を通過したエアは合流したのち第2吸引ファン310、接続ホース313を介して全量が粗塵分離装置260の下流部へ戻る。このような構成によれば、粉塵回収装置300で処理されたエアが外部へ排気される心配がなく清潔である。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、エアシャワー装置200側の粗塵分離装置260で分離された粉塵の大部分を接続ホース312を通じて粉塵回収装置300へ導入することができるため、中性能フィルター272へ流入する粉塵の量を減らすことができる。これにより、中性能フィルター272の目詰まりの発生頻度を低減させることができ、その清掃頻度を延ばすことができる。粉塵回収装置300の清掃は紙パックフィルター320の交換によって可能となるため、従来の中性能フィルター272を取外して清掃する作業に比して作業が簡単である。また、粗塵分離装置260で処理された後のエアは接続ホース313を通じて全量エアシャワー装置200側へ戻す構成ゆえ、外部への排気の心配がなく周辺環境を清潔に維持することができる。従って、粉塵を含む含塵空気の集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うことができる。
また、本実施の形態によれば、清浄化されたエアはエアシャワー用ノズル220を通じてエアシャワー室210内へ再度供給されるため、エアシャワー室210内のエアを循環使用することができ合理的である。
また、本実施の形態によれば、プリーツ型のフィルター部材273に圧縮エアを供給することでフィルターの逆洗を行う構成としたため、圧縮エアによる粉塵の吹き飛ばし効果と、フィルター部材273の襞を振動させることによるふるい落し効果を得ることができ、フィルターの効果的な洗浄が可能となる。
また、本実施の形態によれば、フィルター部材273前後の差圧が所定値まで上昇したときにフィルター部材273に圧縮エアを供給する構成としたため、フィルター部材273の逆洗を最適なタイミングで行うことができ合理的である。また、本実施の形態によれば、中性能フィルター272の逆洗にあわせて粉塵回収装置300を作動させる構成としたため、逆洗時に発生する粉塵を最適なタイミングで粉塵回収装置300側へ吸引し回収することができる。従って、エアシャワー装置200側に粉塵の回収領域を確保する必要がない。
また、本実施の形態によれば、HEPAフィルター276を用いたため、粉塵の補集効率がほぼ100%に近くなり、清浄度合いの高い清浄空気を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、粉塵回収装置300に紙パックフィルター320を用いたため、フィルター補集面に補集された粉塵がフィルター交換時等にフィルターの外部に飛散しにくく、フィルター交換時の作業を円滑に行うことができる。
【0041】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0042】
(A)上記実施の形態では、逆洗用ノズル283を傾斜させて固定する場合について記載したが、逆洗用ノズル283の吐出口の向き、ノズル数、ノズルの設置形態等はこれに限定されるものではなく必要に応じて種々変更可能である。
例えば、逆洗用ノズルの設置数を増やしたうえでノズルの吐出口を傾斜させずに下向きに固定した構成を用いることができる。また、逆洗用ノズルの吐出口を傾斜させずに下向きとしたうえでノズルが中性能フィルター272に対して移動する構成を用いることができる。
【0043】
(B)また、上記実施の形態は、エアシャワー装置200で除去、分離された粉塵を粉塵回収装置300によって回収する場合について記載したが、エアシャワー装置200以外の機器、例えば工事現場等に設置される局所集塵機で除去、分離された粉塵を粉塵回収装置300によって回収する構成を用いることもできる。このような構成により作業者の負担を軽減することができる。
また、本発明を、製品の分離・回収、あるいは大気汚染防止として用いられる工業用集塵だけでなく、特定の空間、例えばクリーンルームや住居空間の空気の浄化を目的としたいわゆる空気清浄の分野における集塵技術に適用することもできる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粉塵を含む含塵ガスの集塵処理および粉塵の回収処理を円滑に行うのに有効な集塵装置の構成技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の集塵装置100の側面図である。
【図2】集塵装置100におけるエアフロー図である。
【図3】エアシャワー装置200の斜視図である。
【図4】粗塵分離装置260を外部からみた斜視図である。
【図5】粗塵分離装置260の内部構成を示す斜視図である。
【図6】図5中のA−A線断面矢視図である。
【図7】中性能フィルター272の斜視図である。
【図8】エアシャワー用ノズル220の断面図である。
【図9】洗浄装置280の平面図である。
【図10】図9中のB−B線断面矢視図である。
【図11】粉塵回収装置300の平面図である。
【図12】粉塵回収装置300の正面図である。
【符号の説明】
100…集塵装置
200…エアシャワー装置
210…エアシャワー室
220…エアシャワー用ノズル
221…第1ノズル
222…第2ノズル
260…粗塵分離装置
272…中性能フィルター
273…フィルター部材
273a…フィルター上流面
273b…フィルター下流面
274…第1吸引ファン
276…HEPAフィルター
278…差圧計
280…洗浄装置
283…逆洗用ノズル
290…制御盤
300…粉塵回収装置
310…第2吸引ファン
312,313…接続ホース
320…紙パックフィルター
Claims (5)
- 粉塵を含む含塵ガスの集塵処理を行う集塵装置であって、
第1の集塵部および第2の集塵部を有し、
前記第1の集塵部は、前記含塵ガスを受け入れて流通させる流通径路と、この流通径路において前記含塵ガスから粉塵を分離する粉塵分離手段とを備え、
前記第2の集塵部は、前記粉塵分離手段よりも下流において前記流通径路の一部を迂回する迂回径路と、前記粉塵分離手段によって分離された粉塵をこの迂回径路へ導入し流通させる導入手段と、この迂回径路を流通する粉塵を回収する粉塵回収手段とを備えていることを特徴とする集塵装置。 - 請求項1に記載した集塵装置であって、
前記第1の集塵部は、エアシャワー用ノズルを介してエアシャワーが供給されるエアシャワー室と、このエアシャワー室内のエアがその室外において循環する循環径路とを備え、この循環径路によって前記流通径路が構成されていることを特徴とする集塵装置。 - 請求項1または2に記載した集塵装置であって、
前記第1の集塵部は、更に、前記粉塵分離手段の下流に配置される集塵フィルターと、この集塵フィルターの洗浄を行う洗浄装置とを備え、
前記集塵フィルターは、襞付きのフィルター形状を有するプリーツ型に構成され、前記洗浄装置は、前記集塵フィルターへ向けて圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段を備えていることを特徴とする集塵装置。 - 請求項3に記載した集塵装置であって、
前記第1の集塵部は、更に、前記集塵フィルター前後の差圧に関する情報を検出する差圧情報検出手段と、制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記差圧情報検出手段による検出情報に基づいて前記圧縮エア供給手段を作動させるように構成されていることを特徴とする集塵装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載した集塵装置であって、
前記粉塵回収手段は、パック型フィルターを用いた構成であることを特徴とする集塵装置。
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