JP3744448B2 - 電波反射体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電波反射体及びその製造方法にかかり、特には、入射する電波の反射方向が特定されることのない電波反射体と、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車による道路交通の利便性及び安全性を向上させ、かつ、その高効率化を実現するため、ITS(高度道路交通システム)を導入することが検討されており、車載レーダーによって障害物を検知するAHS(走行支援道路システム)がITSの一環として提案されている。そして、このようなAHSの一例としては、自動車の前部に配備された電波レーダーから前方の道路面へと向かってミリ波以上の波長の電波を送信し、道路面上に設置済みの電波反射体で反射された電波を受信して自動車の自動走行を誘導する自動車誘導システムがある。
【0003】
この際における電波反射体としては特開平10−107540号公報で開示されたものがあり、この公報には、特定方向から入射する電波の周波数に共振し、その入射方向へと向かって電波を反射する放射素子が表面に配置された構成を有する電波反射体が示されている。すなわち、この電波反射体は、電波がある特定の一方向から入射し、かつ、その特定された入射方向へと向かって電波が反射されることを前提としており、具体的には、金属箔などのような導電材料からなる複数の放射素子が塗料などである絶縁体の表面上にアレイ状として印刷されたものとなっている。
【0004】
また、この公報中には、四角錐状のコーナリフレクタとして作用する凹部及び凸部が放射素子であるとし、かつ、電波の波長に対しては平滑と見做されない程度の大きさである複数の凹部及び凸部を絶縁体の表面上に整然と縦横に並列配置してなる構成を有する電波反射体も示されている。なお、このような構成とされた電波反射体であっても、特定された方向から入射する電波をそのまま入射方向へと向かって反射する構成であることに変わりはない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような電波反射体を用いてなる自動車誘導システムのみにAHSが限定されることはないのであり、車載レーダーで障害物を検知するシステムである一般的なAHSを構築する際には、道路周辺に配設されている各種の障害物を確実に検知することが必要となる。すなわち、AHSの実現にあたっては、道路周辺における様々な標示物や設置物、例えば、行き先標示板、遮音壁、ガードレール、縁石などのような物体そのものを障害物として確実に検知する必要がある。
【0006】
しかしながら、これらの物体が電波を反射しないものである場合には電波レーダーによる検出が不可能となり、物体の存在自体を検知することができない。そこで、一般的なAHSを構築する際にあっては、道路周辺に配設された標示物や設置物などのような物体が自ら電波を反射することが必要となる。しかも、この場合には、物体それぞれの位置や大きさが互いに異なっているため、ある特定の方向から入射する電波を反射するだけでは不十分であり、特定されない複数の方向から入射してくる電波であっても反射可能であることが必要とされる。
【0007】
このような必要があるにも拘わらず、特開平10−107540号公報で開示された電波反射体は、ある特定方向から入射してくる電波を同一の特定方向へと向かって反射するだけの機能しか有していない。すなわち、この電波反射体は、異なる複数の方向から入射してくる電波を、その入射方向が含まれた仮想平面内の全方向へと向かって反射するものとはなっていない。従って、道路周辺に配設される物体のそれぞれに対して従来の電波反射体を取り付けたとしても、やはり障害物となる物体を電波レーダーによって検出することはでき得ないのが実状である。
【0008】
一方、このような不都合を解消するため、既に周知のコーナリフレクタ、例えば、三角錐形状などとされた金属製のコーナリフレクタを障害物となる物体のそれぞれに取り付けたうえで電波反射体として利用することも考えられる。すなわち、正面方向から真っすぐ入射してくる電波をそのまま反射する金属平板などと比較した場合、コーナリフレクタは正面方向より少し位置ずれした方向から入射してくる電波をも反射し得るという点で優れている。
【0009】
しかしながら、これらのコーナリフレクタは、正面方向からほぼ30゜程度以上も傾斜した方向から入射してくる電波までは反射できないのが現実である。これに対し、車載レーダーで障害物を検知することが必要とされる一般的なAHSでは、正面方向とほぼ直交する程度にまで傾斜した方向を含む様々な方向から入射してくる電波を一定レベルの強さで反射し得る電波反射体が要望されているのであり、コーナリフレクタを電波反射体として使用する場合であっても要望を満たし得ないことは明らかである。
【0010】
本発明はこのような要望に応えて創案されたものであり、車載レーダーで障害物を検知することが必要なAHSでも使用可能な電波反射体及びその製造方法、つまり、入射する電波の反射方向が特定されない電波反射体と、その製造方法とを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかる電波反射体は、上記目的を達成するため、電波の入射方向に向かって電波を反射する電波反射手段が基体の表面に設けられており、少なくとも2つ以上の入射方向に反射する電波反射体であって、
前記電波反射手段は、その入射方向へと向かって前記電波を反射する誘電体からなる電波反射素子であり、
前記電波反射素子の複数ずつを直線上に配置して複数の素子列が構成されており、かつ、これら素子列の各々を構成する前記電波反射素子それぞれの配置間隔が入射する電波の1/2波長のn倍(ただしnは整数)とされており、かつ、前記複数の素子列において少なくとも1つの素子列の前記nは他の素子列の前記nとは異なっており、
前記電波反射素子の誘電率は5以上であり、
前記電波反射素子は、電子部品の産業廃棄物からなることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明にかかる電波反射体は請求項1に記載したものであり、前記電波反射素子は、金属またはセラミックからなることを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1にかかる電波反射体の一例を示す斜視図、図2はその反射特性を示す説明図、図3は電波反射体の他の例を示す斜視図であり、図4はその製造方法を示す説明図である。なお、図1及び図3における符号1は、電波反射体を示している。
【0031】
本実施の形態にかかる電波反射体1は、図1で示すように、電波反射手段として機能する複数の凹部2及び凸部3と、これらの凹部2及び凸部3が一体として表面上に形成された基体4とから構成されている。そして、この際における電波反射体1は、その全体が金属またはセラミックを用いて製造されたものであり、凹部2及び凸部3のそれぞれは、ほぼ半球形状を有している。
【0032】
すなわち、この電波反射体1では、基体4の表面に形成された凹部2及び凸部3のそれぞれが異なる角度から入射した電波を、それぞれが入射方向に強く反射する特性を有しており、その結果、これらの凹部2及び凸部3が形成された基体4の表面は全体として2つ以上の入射方向に強く電波を反射する特性を有することになる。そこで、特定されない様々な方向から電波が入射してくる場合、つまり、電波の入射方向が特定されずに変化する場合であっても、その反射方向が1方向に特定されることは起こらず、入射してきた電波は複数の方向へと向かって強く反射される。このとき、複数の方向を細かく設計することにより、全方向へと向かって反射することが可能となる。
【0033】
従って、本実施の形態にかかる構成とされた電波反射体1を、道路周辺に配設された標示物や設置物、例えば、行き先標示板、遮音壁、ガードレール、縁石などである各種の物体それぞれに取り付けた場合には、これら物体の位置や大きさが相互に異なっており、しかも、自動車に配備された電波レーダーから送信されてくるミリ波以上の波長である電波の入射方向が変化することがあっても、入射してくる電波は電波反射体1でもって確実に反射される。そのため、車載レーダーで道路周辺の障害物を検知する必要がある一般的なAHSにおいても、電波反射体1を使用することが可能となる。
【0034】
そして、電波反射体1の反射特性を金属平板及びコーナリフレクタそれぞれの反射特性と比較検討すると、図2で示すような結果が得られる。すなわち、図2中の符号Xは電波反射体1の反射特性のピークを結んだ包絡線、符号Yはコーナリフレクタの反射特性、符号Zは金属平板の反射特性をそれぞれ表している。この結果によれば、金属平板及びコーナリフレクタのいずれと比較しても電波反射体1の方が良好な反射特性、つまり、電波の入射方向の広い範囲にわたって均一的な反射特性を有することが分かる。なお、図2の横軸は入射(反射)角度を示し、縦軸は反射レベルの強さを示している。
【0035】
ところで、図1で示した電波反射体1にあっては、凹部2及び凸部3のそれぞれが基体4の表面上に整然とした状態で並列配置されているが、このような配置状態に限定されることはなく、凹部2及び凸部3の各々が基体4の表面上に雑然とした状態、つまり、互いの配置間隔が一定していないような状態で配置されていてもよい。また、凹部2及び凸部3がほぼ半球形状を有している必然性はないのであり、円柱形状や多角柱形状、あるいは、多角錐形状などとされた種々雑多な異なる形状を有するもの同士であってもよいことは勿論である。
【0036】
さらに、ここでの電波反射体1が、図3で示すように、ほぼ半円形の断面を有する直線形状とされた凹部2及び凸部3のそれぞれが基体4の表面に一体として形成されたものであってもよく、このような構成である場合にも、前記したのと同様の電波反射作用が確保される。すなわち、電波反射体1は、換言すると、ある角度から入射した電波を反射する凹部2及び凸部3が基体4の表面に形成されたものであり、これらの複数が集まることによって全方向角度性能を有し、複数の入射方向に強く反射する電波反射体1であればよいことになる。
【0037】
なお、電波反射体1がセラミックからなる場合、このセラミックが有する誘電率は5以上であることが好ましい。すなわち、誘電率が5以上のセラミックからなる電波反射体1であれば、大きな反射効率を得ることが可能だからである。また、この際におけるセラミックは、電子部品の産業廃棄物であることが好ましいと考えられる。なぜならば、本実施の形態にかかる電波反射体1を製造する工場では、コンデンサなどの電子部品が製造されていることが多いため、電子部品の産業廃棄物を利用することとすれば、産業廃棄物を有効に再利用することが可能になるという利点が確保される。
【0038】
つぎに、本実施の形態にかかる電波反射体1の製造方法を説明する。まず、金属からなる電波反射体1を製造する際には、図4で示すようなプレス金型6、つまり、電波反射体1の凹部2及び凸部3と各別に対応する突起部7及び窪み部8の各々がキャビティの底面に形成された下型6aと、そのキャビティ内に嵌入される上型6bとからなるプレス金型6を用いたプレス成形法を採用し、下型6aのキャビティ内に配置されたうえで電波反射体1となる所定厚みの金属板9を上型6bでもって押圧することにより凹部2及び凸部3を基体4と一括して製造することが行われる。
【0039】
また、電波反射体1がセラミックからなる場合には、下型6aのキャビティ内に投入しておいたセラミック粉末を所定温度下で上型6bにより押圧して成形することが行われる。なお、電波反射体1の製造方法がプレス成形法に限定されることはなく、図示省略しているが、電波反射体1の凹部2及び凸部3を基体4と一括してダイキャスト成形法により製造する方法やインサート射出成形法により製造することも可能である。
【0040】
(実施の形態2)
図5は実施の形態2にかかる電波反射体の一例を示す斜視図であり、図6はその他の例を示す斜視図である。なお、図5及び図6における符号11は、電波反射体を示している。
【0041】
本実施の形態にかかる電波反射体11は、図5で示すように、電波反射手段として機能する複数の電波反射素子12、つまり、金属やセラミックからなるほぼ球形状などとされた粒体であり、かつ、入射する電波の周波数に共振し、その入射方向へと向かって電波を反射する電波反射素子12が、樹脂や塗料などからなる基体13上に搭載された構成を有している。そして、この際における電波反射素子12のそれぞれは、基体13の表面から露出する状態で搭載されており、必ずしも互いの配置間隔が一定しないような配置状態として基体13上に配置されている。なお、電波反射素子12が球形状である必然性はなく、例えば、円柱形状や多角柱形状、あるいは、多角錐形状などとされたものであってもよい。
【0042】
このような構成とされた電波反射体11であっても、実施の形態1と同様、基体13上に搭載された電波反射素子12のそれぞれが特定の領域ごとに異なる方向への反射特性を有していることになり、これらの電波反射素子12が搭載された基体13の表面は全体として広い反射特性を有することになる。そこで、特定されない様々な方向から電波が入射してくる場合でも、その反射方向が特定されることはなくなり、入射してきた電波は、従来の形態で説明した仮想平面内の全方向へと向かって一定レベルの強さで反射される。
【0043】
そのため、本実施の形態にかかる電波反射体11を道路周辺の配設された標示物や設置物に取り付けておいた場合には、自動車に配備された電波レーダーから送信されてくる電波の入射方向が変化することがあったとしても、入射してくる波は電波反射体11でもって確実に反射されることになり、車載レーダーで道路周辺の障害物を検知する必要がある一般的なAHSで電波反射体11を使用することが可能となる。なお、図5で示した電波反射体11にあっては、電波反射素子12のそれぞれが基体13の表面に雑然とした配置状態で搭載されているが、このような配置状態に限定されることはなく、これらの電波反射素子12が整然とした配置状態で搭載されていてもよいことは勿論である。
【0044】
また、本実施の形態にかかる電波反射体11では、図6で示しているように、電波反射素子12の複数ずつを直線状に配置して複数の素子列A,B,C,…を構成し、これら素子列A,B,C,…の各々を構成している電波反射素子12それぞれの配置間隔を互いに異ならせるようにしてもよい。そして、この際においては、素子列A,B,C,…の各々を構成している電波反射素子12それぞれの配置間隔を入射する電波の1/2波長の整数倍、つまり、1/2λ×nとしておくことが好ましい。すなわち、このような構成であれば、例えば、電波反射素子12同士の配置間隔d1がd1=1/2λ×1とされた素子列Aでは入射してきた電波が反射角度θ1で反射され、配置間隔d2がd1=1/2λ×2とされた素子列Bでは入射してきた電波が反射角度θ2で反射される。
【0045】
さらに、以降の素子列C,…でも同様にして電波が反射角度θ3,…で反射されるため、このような構成とされた電波反射体11においては、特定されない様々な方向から入射してくる電波が、その入射方向を含む仮想平面内の全方向へと向かって反射されることとなり、その反射方向が特定されることがなくなるという作用が容易に確保される。なお、電波反射素子12がセラミックからなる場合には、大きな反射効率を得るため、誘電率が5以上のセラミックであることが好ましい。また、これらの電波反射素子12となるセラミックが、電子部品の産業廃棄物であっても差し支えないことは勿論である。
【0046】
さらにまた、実施の形態2にかかる電波反射素子12を製造するに際しては、実施の形態1における電波反射体1を製造する場合と同様、プレス成形法やダイキャスト成形法、あるいは、インサート射出成形法が採用されることになり、これらの製造方法を採用して製造された電波反射素子12は、引き続いて樹脂や塗料などである基体13上に搭載される。そして、別体として製造された電波反射素子12が基体13上に搭載されるのに伴って完成した電波反射体11は、道路周辺の標示物や設置物に取り付けられることになり、一般的なAHSで自動車の電波レーダーから送信されてくる電波を反射するものとして使用される。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の発明にかかる電波反射体によれば、基体の表面に一体として設けられた電波反射手段である凹部及び凸部により、入射する電波がその入射方向を含む仮想平面内の全方向へと向かって一定レベルの強さで反射される。従って、特定されない様々な方向から入射してくる電波の場合、つまり、入射方向が特定されずに変化する電波が入射する場合であっても、その反射方向が特定されることはなくなるという効果が得られる。
また、セラミックの有する誘電率が5以上であるため、大きな反射効率を得ることができる。
さらに、基体上に搭載された電波反射手段である電波反射素子の全体により、入射する電波が入射方向を含む仮想平面内の全方向へと向かって一定レベルの強さで反射される。そのため、特定されない様々な方向から電波が入射してくる場合であっても、その反射方向が特定されてしまうことはなくなり、確実に反射されるという効果が得られる。
【0049】
請求項2の発明にかかる電波反射体によれば、電子部品の産業廃棄物であるとしているので、産業廃棄物を有効に再利用することが可能になるという効果が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる電波反射体の一例を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1にかかる電波反射体の反射特性を示す説明図である。
【図3】実施の形態1にかかる電波反射体の他の例を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1にかかる電波反射体の製造方法を示す説明図である。
【図5】実施の形態2にかかる電波反射体の一例を示す斜視図である。
【図6】実施の形態2にかかる電波反射体の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 電波反射体
2 凹部
3 凸部
4 基体
11 電波反射体
12 電波反射素子
13 基体

Claims (2)

  1. 電波の入射方向に向かって電波を反射する電波反射手段が基体の表面に設けられており、少なくとも2つ以上の入射方向に反射する電波反射体であって、
    前記電波反射手段は、その入射方向へと向かって前記電波を反射する誘電体からなる電波反射素子であり、
    前記電波反射素子の複数ずつを直線上に配置して複数の素子列が構成されており、かつ、これら素子列の各々を構成する前記電波反射素子それぞれの配置間隔が入射する電波の1/2波長のn倍(ただしnは整数)とされており、かつ、前記複数の素子列において少なくとも1つの素子列の前記nは他の素子列の前記nとは異なっており、
    前記電波反射素子の誘電率は5以上であり、
    前記電波反射素子は、電子部品の産業廃棄物からなることを特徴とする電波反射体。
  2. 前記電波反射素子は、金属またはセラミックからなることを特徴とする請求項1に記載の電波反射体。
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