JP3743906B2 - 吊り金具用耐震補助具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、L形鋼に固定した吊り金具に装着することで、地震等の強い振動によっても吊り金具がL形鋼から外れないようにする吊り金具用耐震補助具であって、特に、サイズの異なる複数のL形鋼に対して一種類の部材で装着することができる吊り金具用耐震補助具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の補助具として、当出願人は先に特許第第2747667号公報に記載された吊り金具用耐震補助具を出願している。この補助具は、形鋼に固定した吊り金具の側面に係止する平面略U字形状の係止杆体と、形鋼に係止する固定板体とから成り、係止杆体の開放端部を固定板体に貫通させて夫々ナットをネジ止めし、吊り金具が地震その他の振動によっても落下しないように補強する金具である。
【0003】
先に特許された補助具によると、H形鋼やL形鋼に装着できるようにするため、形状が異なる固定板体を選択して使用している。例えば、H形鋼に装着するには、水平のフランジ上面に係止する係止片とフランジ下面に当接する屈曲片とを設けた固定板体を使用する。
【0004】
一方、L形鋼に装着する固定板体には、垂直なフランジの上端に係止する係止片を設け、この垂直なフランジの下端部で、水平なフランジ下面に沿った係止杆体と連結する。このタイプは、特に固定板体がフランジの垂直面に当接する広い板面を有するので、安定した固定力を有するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の補強具によると、2種類の固定板体を用意することで、H形鋼やL形鋼に装着することができる。ところが、L形鋼に装着する場合、L形鋼のサイズが異なると、更に、サイズ別の固定板体を複数種類用意しなければならない不都合が生じていた。
【0006】
すなわち、造営材として一般に使用されているL形鋼には、L-75(フランジ幅75mm)とL-90(フランジ幅90mm)と称するフランジ幅のサイズが異なった形鋼が使用されている。また、L-75には、フランジの厚みが異なった12mm厚と6mm厚との二種類があり、L-90には13mm厚と6mm厚との二種類があるので、この種の造営材として計4種類のL形鋼が使用されているのが現状である。
【0007】
先の特許発明でL形鋼に装着する固定板体は、固定板体上端を鉛直下方から斜め45°の角度に形成した係止片を、垂直なフランジの上端に係止し、一方、水平なフランジに沿って配設した係止杆体の開放端を、固定板体下端に開口した挿通孔に挿通して連結するものである。そこで、垂直フランジの幅、すなわち高さが異なると、この固定板体下端に設ける挿通孔の開口位置もフランジの高さに合わせて変更する必要がある。すなわち、ボルト挿通孔の開口位置をL-75の位置とL-90の位置とにそれぞれ合わせて開穿するために、固定板体の下端部における挿通孔を、上下に併設することになる。
【0008】
ところが、L-75やL-90には、更に、夫々厚みが異なるタイプもあるので、45°の角度に屈曲された係止片を垂直なフランジの上端に係止すると、L形鋼のフランジの厚みによって固定板体の係止位置が上下に移動し、この結果、L形鋼の種類によって固定板体の装着位置が上下に異なることになる(図6(イ),(ロ)参照)。すると、L-75の位置とL-90の位置とに合わせた挿通孔を、更に各厚みにより移動する範囲まで対応できる大きさに形成する必要が生じた。しかしながら、上下に併設する挿通孔を、移動分に対応する大きさに開穿すると、上下の挿通孔の距離Aが接近しすぎることになり、現実のプレス成形では挿通孔の開穿が不可能になっていた(図6(ハ)参照)。
【0009】
この対策のため、例えば上下の挿通孔をひとつにまとめ、上下に極めて長い長孔を形成する手段が考えられるが、この場合、挿通孔に固定した係止杆体が僅かな緩みでもずり落ちる可能性が高くなるので、耐震用の補強具として不適当であった。仮に、この極端に長い長孔に係止杆体の開放端を通してナットで固定しようとすると、ナット緊締時に固定板体がずり上がり、垂直フランジの上端部から係止片が外れたりするなど、装着作業の能率が低下する虞もあるといった他の不都合もあり、極端に長い長孔の構造は特許発明の補強具として採用することができなかった。
【0010】
この結果、先に特許された補助具において、特にL形鋼に装着する場合は、サイズ別の固定板体を新たに複数種類用意しなければならず、作業性の課題および生産管理上の課題が残されていた。先の特許発明では、この固定板体の上端部に設ける係止片をフランジの端部形状に合わせた湾曲形状に形成する構想もあったが成形工程において現実的ではなく、係止片を湾曲形状に形成する変わりに、斜め45°の係止片を設けた固定板体を、複数種類用意するのが現状である。
【0011】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく先の吊り金具用耐震補助具を更に改良したもので、サイズの異なる複数のL形鋼に対し、一種類の固定板体で装着可能にすることで、作業能率および生産管理上の合理化を図ることができる吊り金具用耐震補助具の提供を目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成すべく本発明の第1の手段は、L形鋼を使用した造営材Pの水平フランジP2に係止する略コ字状の開口部11と、この開口部11内の水平フランジP2を下から締め付け固定する締付ボルト12とを有する吊り金具10に装着する補助具であって、吊り金具10側面に係止する平面略U字形状の係止杆体1と、L形鋼の垂直フランジP1上端に係止して係止杆体1の開放端部1Aに連結する固定板体2とにより、吊り金具10を補強する吊り金具用耐震補助具において、固定板体2に開穿され、係止杆体1の開放端を挿通せしめる挿通孔2Aを、L形鋼のフランジのサイズ別に対応させて上下に複数対形成すると共に、固定板体1の上端に設けられ、L形鋼の垂直フランジP1上端に係止せしめる斜め45°の角度で傾斜する係止片2Bを屈曲部において二段階に分けて屈曲形成したことにある。
【0013】
第2の手段における係止片2Bは、係止片2Bの基端部で屈曲された鈍角部2Baと、係止片の先端側で屈曲された鋭角部2Bbとの2箇所で屈曲されている。
【0014】
第3の手段において、鈍角部2Baは、固定板体2から150°の角度に屈曲され、鋭角部2Bbは屈曲された鈍角部2Baから75°の角度に屈曲され、係止片2Bの先端部が固定板体2に対して斜め45°の角度で傾斜することを課題解消のための手段とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明耐震補助具は、L形鋼を使用した造営材Pの水平フランジP2に固定する吊り金具10に装着するもので、この吊り金具10が地震などによっても簡単に落下しないように補強する耐震補助具である(図2参照)。
【0017】
吊り金具10は、造営材Pの水平フランジP2に係止する略コ字状の開口部11と、この開口部11内の水平フランジP2を下から締め付け固定する締付ボルト12とを有する金具で、吊り金具10に連結した吊りボルトQを介して電気設備や空調設備等の機器を懸吊支持する。
【0018】
係止杆体1は、この吊り金具10の振動等による落下を防ぐために、吊り金具10側面に係止する平面略U字形状を成すもので、その一対の開放端1Aに夫々ナット3をネジ止めすることで、後述する固定板体2に連結する(図1参照)。また、係止杆体1の屈曲した中央部は係止部1Bであり、吊り金具10の側面に直接係止する。そして、吊り金具10に装着した係止杆体1を、L形鋼の水平フランジP2に沿って配設する(図2参照)。
【0019】
固定板体2は、L形鋼の垂直フランジP1上端に係止して係止杆体1の開放端部1Aに連結する部材で、係止杆体1と連結して吊り金具10を補強する。この固定板体2には、係止杆体1の開放端1Aを挿通する挿通孔2Aと、垂直フランジP1の上端部に係止する係止片2Bとを設けている(図1参照)。
【0020】
挿通孔2Aは、固定板体2の下端部近傍に開穿され、係止杆体1の一対の開放端1Aを挿通するもので、この挿通孔2Aを、L形鋼のフランジのサイズ別に上下に形成する(図4参照)。図示の挿通孔2Aは、上下の間隔Aを5mmに設定している。この間隔は、後述する係止片2Bを形成する際に、二段階に分けて屈曲形成することで可能になる。
【0021】
すなわち、係止片2Bは、L形鋼の垂直フランジP1上端に係止せしめる屈曲部分で、全体として斜め45°の角度で下方に傾斜しており、この係止片2Bを屈曲部分において二段階に分けて屈曲形成する(図3参照)。まず、係止片2Bの基端部側で屈曲する鈍角部2Baを形成する。この鈍角部2Baは、固定板体2から150°の角度に屈曲されている。次に、係止片の先端側で屈曲する鋭角部2Bbを形成する。この鋭角部2Bbは、鋭角部2Bbは屈曲された鈍角部2Baから75°の角度に屈曲されている。この結果、係止片2Bの先端部が固定板体2に対して斜め45°の角度で傾斜することになる。
【0022】
このように二段階に分けて屈曲した係止片2Bを、各サイズ別のL形鋼に係止すると、係止片2Bが垂直フランジP1の厚みによって上下することがなくなり(図5(イ),(ロ)参照)、上下の挿通孔2A相互の間隔Aがプレス成形に十分な間隔になり(図5(ハ)参照)、各挿通孔2Aを各サイズ別の位置に開穿することが可能になった。
【0023】
図中、符号2Cは、固定板体2の強度を高める補強用ビードである(図4参照)。この補強用ビード2Cは、挿通孔2Aを開穿したことで強度が低下した固定板体2を補強するものである。図示の補強用ビード2Cは、挿通孔2Aに沿って上下に伸びた左右一対の補強用ビード2Cを形成することで、特に、係止杆体1と固定板体2との連結部分を強化している。
【0024】
図7及び図8は、他の実施例を示している。図示の固定板体2は、係止片2Bを横から屈曲して形成している。このように、係止片2Bの屈曲形状は、固定板体2の上端部を実際に屈曲形成する他、屈曲部分を切り抜いて形成することも可能である。尚、この実施例においても、係止片2Bを、鈍角部2Baと鋭角部2Bbとの二箇所で二段階に屈曲した形状は変らない(図8参照)。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、上述の如く構成したことにより当初の目的を達成する。
【0026】
すなわち、固定板体2に開穿され、係止杆体1の開放端を挿通せしめる挿通孔2Aを、L形鋼のフランジのサイズ別に対応させて上下に複数対形成すると共に、固定板体1の上端に設けられ、L形鋼の垂直フランジP1上端に係止せしめる斜め45°の角度で傾斜する係止片2Bを屈曲部において二段階に分けて屈曲形成したことにより、サイズの異なる複数のL形鋼に対し一種類の部材で装着可能になった。
【0027】
また、係止片2Bは、係止片2Bの基端部で屈曲された鈍角部2Baと、係止片の先端側で屈曲された鋭角部2Bbとの2箇所で屈曲するだけで良いので、特別な成形機材等を必要とせず、また製造工程も単純化されるので安価な提供ができる。
【0028】
更に、鈍角部2Baは、固定板体2から150°の角度に屈曲され、鋭角部2Bbは屈曲された鈍角部2Baから75°の角度に屈曲され、係止片2Bの先端部が固定板体2に対して斜め45°の角度で傾斜しているので、最も確実な係止力を得ることができる。この結果、仮に吊り金具10が大きく揺れて、吊り金具10が支持している荷重が固定板体2に直接加わっても、係止片2Bの変形を防止し、吊り金具10の落下を防止することができるなど、吊り金具用の耐震補助具として最適な構成になっている。
【0029】
このように本発明によると、サイズの異なる複数のL形鋼に対し一種類の部材で装着可能にすることで、作業能率および生産管理上の合理化を図ることができ、吊り金具用の耐震補助具として最適な構成であるなどといった有益な種々の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明補助具の一実施例を示す分解斜視図。
【図2】本発明補助具の装着状態を示す斜視図。
【図3】本発明係止片の係止状態を示す側面図。
【図4】本発明固定板体の一実施例を示す正面図。
【図5】(イ)乃至(ハ)は本発明係止具による係止状態と挿通孔の位置を示す説明図。
【図6】(イ)乃至(ハ)は従来の係止具による係止状態と挿通孔の位置を示す説明図。
【図7】本発明固定板体の他の実施例を示す斜視図。
【図8】本発明固定板体の他の実施例を示す側面図。
【符号の説明】
P 造営材 P1 垂直フランジ
P2 水平フランジ
1 係止杆体 1A 開放端
1B 係止部
2 固定板体 2A 挿通孔
2B 係止片
2Ba 鈍角部
2Bb 鋭角部
2C 補強用ビード
3 ナット
10 吊り金具
11 開口部
12 締付ボルト
Claims (3)
- L形鋼を使用した造営材の水平フランジに係止する略コ字状の開口部と、この開口部内の水平フランジを下から締め付け固定する締付ボルトとを有する吊り金具に装着する補助具であって、吊り金具側面に係止する平面略U字形状の係止杆体と、L形鋼の垂直フランジ上端に係止して係止杆体の開放端部に連結する固定板体とにより、吊り金具を補強する吊り金具用耐震補助具において、固定板体に開穿され、係止杆体の開放端を挿通せしめる挿通孔を、L形鋼のフランジのサイズ別に対応させて上下に複数対形成すると共に、固定板体の上端に設けられ、L形鋼の垂直フランジ上端に係止せしめる斜め45°の角度で傾斜する係止片を、屈曲部において二段階に分けて屈曲形成したことを特徴とする吊り金具用耐震補助具。
- 前記係止片は、係止片の基端部で屈曲された鈍角部と、係止片の先端側で屈曲された鋭角部との2箇所で屈曲された請求項1記載の吊り金具用耐震補助具。
- 前記鈍角部は、固定板体から150°の角度に屈曲され、前記鋭角部は屈曲された鈍角部から75°の角度に屈曲され、係止片の先端部が固定板体に対して斜め45°の角度で傾斜する請求項2記載の吊り金具用耐震補助具。
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